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2014/11/23

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  • ブログ引っ越しします

    gooブログ終了にあたり、私も引っ越しいたします。いままでお読みくださったみなさま、どうもありがとうございました。◾️引っ越し先(アメブロ)https://ameblo.jp/miolemon8/もしよろしければ引っ越し先もお訪ねいただけたらうれしいです。熱心に交流をしてこなかったですし、最近は記事のアップも滞りがちでしたのに、宣伝だけして恐縮ですが。やはり少しさみしさがあるものですね。約11年間、本当にお世話になりました。ささやかな私の生活に寄り添ってくださり、ありがとうございました。ブログ引っ越しします

  • こぼれる季節

    街の隅々から花がこぼれる季節枝葉からは光がこぼれわたしも思わずこぼしてしまう子どもの頃に見ていた景色もうその思い出を支える人々もぽろぽろとこぼしてこぼれていってしまった手のひらですくってもすくっても時はこぼしていくし時みずからもこぼれていくけれどあたらしい光もまた未来からこぼれてくるそう信じられるような気がする季節こぼれる季節

  • 留守番

  • してしまうこと

    階段を上りきった時ただ四角く刳り抜いただけのような開け放ってあった窓から水の線とコンクリートの線それは同時に空の線三つを組み合わせた図形が目に入り海がそこにあることを波の音が小さく胸の中で砕けるように感じて不意に思い出が生まれていたと知った真摯な思いなど持ち合わせていないけど感動などという言葉で呼ぶこともなく見ていた景色が感覚の波を絶え間なく繰り寄せて引いていったあとに現れる絵は大抵時代遅れだからもうどこだったかも思い出せないのだけどわたしは思い出によっていまの景色を見ているだから歳をとるほどに鏡の中のように景色は深くなっていくだから自分のつまらなさやくだらなさを超えて自分のことを大切にしてしまうしてしまうこと

  • 夜の純粋

    夜の帷が降りてくる。それはわたしをすり抜けたことばがあったからで、ほんとうは体は夜を透明にすり抜けてしまう。だからあなたもわたしもいる。ねんねん夜が神秘的になり。夜に染められるものは実は何もない。暗さという光に包まれているようなのだ。ぬばたまということばのおもたげな感触を、体なのか心なのか意識は、無意識の中で、しっかりとはかっていて、ゆめのなかにはひとと、こんぜんいったいとなった夜がねがえりをうっている。ぬばたまは小さな黒い実なのだそうだ。ぬばたまは言葉として学び、髪のような黒いものの枕詞だと教わったので、枕もすっかり重たくなってしまった。駅から家までのまっすぐな道に、病院がアーチのようにまたがる。どういう経緯でそうなったのか歴史は知らないけれど、てんてんと道を挟んで棟が分かれ、棟と棟とを、2階部分にあた...夜の純粋

  • テーブル

    切手貼った見飽きた顔でもはや退化手紙を書くということは明日のお天気は曇りから雨ぽてとさらだからあげなっとうほとんどすべてが循環なのだと思うと不思議だ誰かのかけらの寄せ集めが今日のわたしになっているわたしは無数の過去の世界からできているなのに何十年も変わらずに手相の筋も薄いまま喫茶店でつぶす時間ってなんだろうコーヒーカップを前に湿度や風が大事だったりもして自分に対して居留守を使ってみるのも手だだまされるのは駆け出しのセールスマンくらいか他の人にはうざいくらいなのにわたしは居るところにしか居ないなのにこの広く困ったことばかり起こる世界でいつもここに居る布団があったら入りたい窓の向こうの枝葉が揺れているそのまた向こうに雲の割れ目があってそこだけにっこり笑顔のように明るいテーブル

  • 時空を超えた話

    前職で、朝、日経新聞の読み合わせをしていた習慣が残り、いまも通勤電車では日経新聞に目を通すことにしている。座れたら寝るし、読みながらうつらうつらしていることも多いのだけれど。「春秋」蘭で、9月に亡くなった写真家細江英公について触れられていた。28歳の時に三島由紀夫の自宅へ撮影に行き、庭にあったホースをくわえさせたり、ぐるぐる巻きにしたりと無茶なことをした、とのエピソードに興味が湧いた。ネット検索してみると、ちょうどフジフイルムスクエアで企画写真展をやっているとのこと。上野の東京都美術館で開催されている『田中一村展』に行った後、立ち寄ってみることにした。東京ミッドタウンに着いて、降り始めた雨を避けるようにフジフイルムスクエアに駆け込む。ところが、フロアを見てまわっても、それらしき展示がない。『鎌鼬(かまいた...時空を超えた話

  • 最高の時は演出できない、という恐れ3

    ※行為を目指す人、状態を目指す人(行為を目指す人も、行為後の達成感など、最終的には状態を目指しているのかもしれないけれど、きっかけとしては行為することに気持ちが動くのでは)状態を目指すと、受け身になりがち?「最高の時は演出できない、という恐れ」というタイトルで書いてみた雑記1では、心身は時々刻々と変化していくから、「最高の時」は、偶然にしか得られないのではないか、と考えた。2では、自分はなぜ計画を立てるのが苦手なのか、それは、自分がいつも、偶然得られるような感覚的な「最高の時」を求めてしまうからなのではないか、と考えた。3では、私とは、まるで違うタイプの人について考えてみる。ある友人は週末を利用して登山に行く。その実現のため、平日のうちに家事を片付けておくらしい。仕事を終えた夜のうちにてきぱきと。えー!ず...最高の時は演出できない、という恐れ3

  • 「最高の時」は演出できない、という恐れ 2

    たとえば、七月から九月の間で夏休みを三日取っていいですよ、と言われたとする。三連休とくっつけて海外に行こう、といった計画を立てるなら、必然的に休みを取る日は絞られてくる。しかし、まだ新人(この歳で)で、いつが忙しいかもまだよくわかってないし、業務のコントロールも難しいし、さすがにそれは無理かな、と考え、三日間を自由にバラバラに取る、と考えると話が違ってくる。私は途方に暮れてしまう。一体いつ休みを取って、それを何に充てたらいいのか。いずれの日にも必然性がないのに、それらを任意でどこかに当てはめなければならない難しさ!そんなふうになってしまうのは、もしかして、私がその休みによって得たいものが「偶然だけがもたらしてくれるような快感」だからなのではないか。いつ、どのように休みを取れば、そんなことは可能になるのか…...「最高の時」は演出できない、という恐れ2

  • 温め直す

    パンを求めてわたしたちは島を回転した海からの風で息も髪も鳥も乱れて濁点を忘れてきた自分で乏しい点々をつけながら島の、鳥の、輪郭をなぞっていく幾億光年を湛えているような深さの青い実が落ちていたそれはとてもそれはとてもわたしに珍しく美しく大いなる背のような岬に出るまでの繁みの中でどんなに注がれても比喩としての重さしかない光と陰がまだらになっているあたりで幾億光年という言葉そのものも光と陰でできている中でちいさな洞に闇とひと続きになっている蛙がいたその体には軽くても蛙泥も含んだ重みがあるそのひとみ別の次元を呑んだような静けさ冷たくはないのか滴る水に足を畳んで岬を行って帰ってきてもまだ同じ形に乏しいあかりをとらえてたわたしたちはようやくパンを手に入れた海原に雲間から夕陽が落とすカーテンのようなオーブントースターの...温め直す

  • 「最高の時」は演出できない、という恐れ 1

    転職先の新しい職場はこれまでよりも朝がゆっくり。楽でいいと思ったけど、通勤電車の混雑がピークになってしまうので、結局、始業の一時間前に出勤するようになった。職場の近くのファミマで淹れたてコーヒーを買っていくのは前職からの習慣。私は朝が弱く、布団から身を引き剥がすのも大変だし、生まれたてのゾンビ……、じゃなかった、死にたてのゾンビみたいに世を儚んで、フラフラしながら通勤電車に乗っている。電車を降りたら、重い体を引きずって、ようやく職場に着く。不要な荷物をロッカーに放り込んで、パソコンのスイッチを入れて席に座ると、買ってきたアイスコーヒーを手元に引き寄せる。慌てるのが苦手な、のんびりタイプのゾンビなので、始業時間に業務をスムーズに開始できるように、大量に届くメールを仕分けしたり、自分のフォルダを整理したり、と...「最高の時」は演出できない、という恐れ1

  • 春にそよぐ

    春の夕暮れ久しぶりによく晴れていた昏くなっていく青空には淡いピンク色のゆるやかなリボン神宮球場の横を歩いていたらわっと届いた歓声になんだか疲れているのになんだかにぎやかでうれしくなった人工の光強くなっていく周囲のビルの名前盛り上がってくるヤクルトファンだった父夕食どきによく野球を見ていたテレビが点いていれば私もなんとなく見てなんとなくお気に入りの選手ができたりして赤いグローブのブンブン丸とか結婚して家を出てそういうこともなくなったスポーツ観戦には興味がない大勢の人と興奮のもとに連帯することにもだけどにぎやかだとうれしいのはなぜだろう歳を重ねるにつれ親族は減りさみしくなっていく身辺街灯が静かに照らす夜道のようにひっそりしている私の内面自分では出せないエネルギーをたくさんの誰かが放出して大気を満たしているそん...春にそよぐ

  • 今日のお天気 2024/5/31

    夜になると、「ああ今日もなんとか終わった。ようやく布団に入れる」などと、うれしく思って、一日が終わることを大喜びしている。そうやって何気なく過ごす一日一日に、私は確実に歳を取り、感じて考えて過ごしていることを、惜しむことなく忘れてしまう。私の人生は、重さのない感じた考えたことの見えない山積でしかないのに。5/26(日)に日本の南の海上で発生した台風一号は、今日、温帯低気圧に変わった。傘を差して家を出る。台風ではなくなったとはいえ、今日も雨。このところ、身体なのか、気持ちなのか、疲れが取れない感じがする。のんびりできる時間もあるのに、なんだか休んだ気がしない。重く感じる体で家を出ると、雨だけど、ベタベタせずに、ひんやりした空気が心地いい。道路の横断歩道のあたりにできた水たまりが細長い銀色の川のように見えて、...今日のお天気2024/5/31

  • すぐれている、という名前

    誰それが優秀、とか、優れている、というときの、「優秀」「優れている」というのは、様々にある特徴のうちのひとつの名前なのではないか、とふと思うことがある。ピアノの技術が優れている、記憶力が優れている、といった言い方であれば、それはそうなのかもしれないけれど、ある人を指して「優れている」というのは、一体どういうことなのだろう、と思ったりする。人がそのように誰かのことを評価することを違和感なく聞いてしまうし、自分自身ももしかして誰かのことをそんなふうに言ったりしているかもしれないのだけれど。人が「優秀」「優れている」というのは、一体どういうことなのだろうか。何かの分野で名を成したり、目立った業績を残したり、物事をどんどん進めることができたり、など、成果を出している、ということなのだとは、私にも分かっているけれど...すぐれている、という名前

  • あどけない足音

    窓を閉めて風を閉め出すと夜は静かな箱になる玄関からリビングまでの廊下四つの扉に囲まれた細長い空間を部屋着で裸足で歩く私の足音が浮き上がり耳の道に入ってきたあどけないあしおとだったとがらないアピールしないクエスチョンマークの足形の見えそうなひっそりした音影が自分から離れてしまう話を聞いたことがある足音も自分から離れてしまうことがあるのだ離れないと聞こえないいつも離れているのにいつもは聞こえないあんたがたどこさあたしはひとりでもあんたがたは複数だよリズミカルにもなるよ引きずるようにもできるもったいつけたり連弾したりいろんな色合いつけていろんな連れ合いあるはずなのだけどわたしのはペタリペタリ重くもなく軽くもなく無垢のように色がなかった外から見える家々は過去と未来を孕んでその壁の向こうの棕櫚の葉の形鮮明に染め抜く...あどけない足音

  • 感じると考える

    〜〜*簡単な目次*〜〜1.ピアノの練習をきっかけに考えたこと2.目標を持つこと3.私の「感じる」そして「考える」〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜1.ピアノの練習をきっかけに考えたこともうすぐピアノの発表会がある。選択した曲は私のレベルではとても難しく、どうしたら少しでも美しく弾けるだろうかと悩みつつ練習している。テンポが早い上に、オクターブでの跳躍も多く、なんとなくの練習ではいつまで経っても弾けるようにならない。音も多い。ペダルも難しい。自然かつ美しい表現ができるようになるには、私のレベルでは、どれほどの細かい配慮と組み立て、それを実現するための練習が必要かと思ってしまう。自宅には電子ピアノしかなく、これで練習することも効果はあると思っていたけれど、今回、その限界をあらためて感じた。そうなると、これまでにも、たくさ...感じると考える

  • 雪の日

    レースのカーテンを開けて覗くと予報通りの雪模様のように降る困るなぁと思うのに大人なのに子どものようにはしゃぐ隠れた気持ちがあるちょっと買い物行ってくるなんてさっきも出かけて帰ってきたばかり迎え雪暗くなり始めた空からバッティングセンターみたいに白いつぶてがびゅんびゅん飛んでくるこちらが速いみたい奥へ奥へ吸い込まれていく雪の日

  • 架空線

    冬の日太陽の重みで光の帯が空に上がり路地は淡い色に沈み始めている曲がるにつれて折れるにつれて壁が金色に塗られたり梅が咲いたりなどする文学者二人の対談を聞いていた寒さに負けていたのか温かい室内では溶け出した泥のようにわたしはうつらうつらした書物、形、言葉、心、詩、といった言葉がうわずみでぐるぐるしていた外に出ると雲ひとつない青空に知らされる冷たい空気とそれを留めさせない風と縮こまる体にもよくみると芯に温かさがあってわたしはろうそく文学者二人の話を聞きながらその背景にろうそくのようなペンキのような粘土のようなでたらめなしみを見たそれがわたしだと思ったいろんな時にいろんな場所にベシャッと投げつけられるひろがりわたしの人生と光の届かない道で思うと不思議な気がする他の誰にとってもわたしの「わたしの人生」は他愛無い見...架空線

  • 感じる

    以前、「考える」について書いた。考える-詩と写真*ミオ*少し前、『考える』について、考えていた。『考える』についての考えは、少しずつ発展していったのだけれど、「もっとよく考えて整理したい」と思いながら、別のことに関心...gooblogその中で、「『考える』は分解していくと、たくさんの小さな『感じる』があるだけなのではないか」と書いた。ところで、先日、布団の中で夢うつつに、「『感じる』はどこから来るのだろう」と思った。みんな、それぞれ自分の感覚が正しいと思うのは仕方がない気がした。みんな、それぞれ感じているのだもの。自分自身でそれを否定することはとても難しい。表面的には、「私は間違っている」と思うこともできるかもしれない。でももっと身体感覚のような、自分では「感じている」とも思っていないような部分で、人は...感じる

  • みかん

    部屋を流れる朝の光の川その中洲にたたずんでみかんの皮をむく皮にくっついた薄皮がむけ果肉があらわれるまだむかれていないほうの丸い皮の外側に橙色を消さない透明なしずくがひと粒こんなつるりとした肌の内側にこんな涙をためていたなんてとあらわれる明かりその汁を味わいたいと手にとったみかん偶然の重なる傾きではじめて見えることそのときわたしは時間と光のプールを泳いでいた目はいつも開いているただまぶたがすべてを見ないですむために蓋をしているだけひとみの丸みにやさしく沿うように涙で覆われている地球その丸みにやさしく沿ってこぼれ落ちずずっと湛えてられているしずくいつもうるおっている無数の情報のプールに浸るそのうるおい閉じられることのないまぶた代わりに夜がゆっくりひと回りする外側にしかいられないわたしたちいっしょにいたくてこぼ...みかん

  • あけましておめでとうございます

    今年は一年の幕開けが、大変なことになってしまいましたね。前日には楽しい気持ちで紅白を見ていたのに。普通の暮らしは当たり前じゃないということ、あらためて感じさせられました。そして大災害に限らない、いろんなことが起こり得る世界。それを忘れず、毎日に、そして一緒にいられる人、新たに出会う人、物事に感謝して生活しよう、と思いました。年末もなんとなく通り過ぎてしまったほどに、ブログ、すっかりご無沙汰してしまいました……。転職活動、2月の発表会に向けたピアノの練習、読書、など、深刻なのか、のんきなのか、わからないような毎日です。(詩も少しずつ書いています)いずれについても、はっと自分を知らされる瞬間があり、急に焦ってみたり。年齢だけは重ねて、中身は未熟で恥ずかしい限りです。自分のことばかりでなく、まわりを見て、大切に...あけましておめでとうございます

  • 読むこと、書くこと

    ほのかにあかく流れていく時間を日々惜しむことはできるでしょうか空へ時間へ挑むようにそびえる建物も冬に向かって早くなっていく一日を引き延ばそうとがんばっているわたしはあきらめに似た気持ちで憧れている毎日読むこと、書くこと特に、読むこと平らなわたし無力な人で感じることしかできないグラスに残った氷が溶けていくそこから漏れだした液体を少しずつ飲む音楽のように流れるそれを急いで味わってしまうことはできないのわたしの読むことにかかる時間は社会の回り続ける速さにうまく噛み合わないけれどわたしはそれで百年二百年を少しのことのように一日や一瞬をとてもとても長く光のように旅することを知ったどんなに急いでいてもひとの時間は変わらない同じ太い光の柱で生まれてから死ぬまで焦らずに触れることのできるものたくさんの紙のやわらかさ読みき...読むこと、書くこと

  • 夕日の思い出

    夕日が山の間に隠れてしまうと海海は静かに揺れている無数のさざなみ一つ一つに律儀に空の模様を繰り返して桟橋に残る人と空はもうくらいのに空の色捨象し統合して淡いけれども明るい桃色と水色を繰り返しなだらかな無数の水面に写して不思議に明るい夕暮れひとりひとり私たちしずかに揺れている私たちひとりひとりも空を写し海を写して桃色と水色見分けもつかずみずからのおもてに繰り返している不思議に明るい夕暮れ夕日の思い出

  • 眠り

    眠りは不思議な生き物毎晩欠かさずわたしのもとを訪れるわたしになんの取り柄もなく創造力のきらめきもなくつまらなくても闇の中にそこだけほのかな意識となったわたしに両側から黒い腕をからめて広く柔らかな背中に乗せ暗い世界で音楽のように飛翔する境界は波のように定まらず眠りはあいまいな生き物だから温度を感じられることは稀誰かの話を聞いているけれど粒はあいまいになりそれは縁がレース飾りのように波打つ切手ハルだけで満たされているわたし自身の道のりで詩にはなかなか出会えないけれど眠りがどれほど大きなポケットを備えているのかは計り知れない成長していく家や美しい階段とっておきの感情を素朴に用意しておく込められたメッセージが閉じられた循環でありながらどこからでも出たり入ったりして浸潤の容易な膜のように「印象」という形を受け取り与...眠り

  • 十箇条的な②

    “とりあえず”何かを決める、をしない。“とりあえず”何かに決める、をしない。“とりあえず”何かをする、をしない。“とりあえず”を取り去る。“いま”を大切に。十箇条的な②

  • 不思議な

    「不思議な」に続く言葉を考えてみる「不思議な」に続けて面白くなる言葉は見つけるのはむずかしいぞなぜなら、不思議なことに「不思議な」はどんな言葉についていても不思議じゃないからだ巻き貝に負けないくらいのひねりが必要なのではなかろうか不思議な時間不思議な夢不思議な友人不思議な家族不思議な家不思議な音楽不思議な石不思議なストーリー不思議な本不思議な毎日不思議な平凡不思議な髪型不思議なとうもろこし不思議なメガネ不思議な夜景不思議な正解(意外とありそう)不思議なアリバイ不思議な変態(もともと不思議なものにつけると正常に近づく?)不思議な未成年不思議な怒り不思議な気持ち不思議な天気不思議な電気不思議な伝記不思議な午前零時不思議な宇宙人(むしろ絶対不思議なものにつけてみた)不思議な不思議な

  • 十箇条的な①

    「考える」ことは座ってやらない十箇条的な①

  • 考える

    少し前、『考える』について、考えていた。『考える』についての考えは少しずつ発展していったのだけれど、「もっとよく考えて整理したい」と思いながら、別のことに関心が移り、「まとめたいと思ってたけど、具体的に何をだっけ?」という状態になっていた。最初のほうに考えたことは霞んでしまって見えなくなってしまった。それが、とある本を読んでいて、『考える』を考えて最初に思ったこと、『考える』を自分が考え始めたきっかけをふいに思い出した。忘れないように書いておきたい。「考えなさい」「考えましょう」とよく言われるけれど、『考える』という言葉がそもそもすごく抽象的だよなぁ、具体的に何をしたら『考えた』ことになるんだろう、といつも思っていた。そんな疑問を持ちながら本を読んだり自分の感覚や思うことの跡を辿ったりしてしばらく過ごして...考える

  • 夏の月

    地下鉄の改札を出て階段を上り地上に出るとちょうど月があるこの季節この時間まもなく半月という絵のような鮮やかさを見て先日は美しい三日月を見ていた時がリングでつながっていく明るいというのも違うまるで毎日洗いたてのような光わたし生まれたばかりじゃないよね世界は老いることがないいつも新しい美しさを持っているきっとわたしたちも新しいおどろきに毎日脱皮している夏の月

  • たくさんの窓

    仕事に一生懸命になって。自分なりに。そうしたら転職したくなって。転職活動(と引き継ぎ)で忙しくなっちゃって。(気持ちだけ)ブログをまったく更新していませんでした。これまでの自分の人生で一番大切にしていたのかもしれない部分からだんだん自分の気持ちが離れていくような気がしてメタメタ認知していくと、それを大切にしていたのは未熟だったからなのかななど、思ったりしてでもメタメタメタメタ認知すると人並みでなくてもいいのかもしれなくてむしろ歪みこそが大切にすべき自分なのかもしれなくてところで、この写真を撮った日の夜は布団に入って目をつむったときにこの空を見ていて世界にはたくさんの窓がある、と思いました。物理的な窓はもちろんいろんな人がいろんな窓を世界に開けて世界を見ているのだろうなと思いました。だから見えるものはまった...たくさんの窓

  • もったいない

    【勿体(もったい)】態度などが重々しいこと。威厳があること。【勿体無い】(有用な人間や物事が)粗末に扱われて惜しい。有効に生かされず残念だ。大辞林より今後のこと、それとともにこれまでのこと、考えていて、もったいない、という言葉には、何かが想定されている、とふと思った。高校生の頃、「この時間がもったいない」と思った場面を覚えている。必死で何かを目指していたわけでもなかったのに。30年ほど経ったいま、あの頃のあれは、一体何に対してもったいなかったんだろう、と思う。私は一般的には真面目な人間に分類されるほうだと思うけれど、時々、その真面目さがアリバイ作りのように感じたりする。「いえいえ、私はその時間、真面目にやってましたよ」と言いたいだけの真面目さ。始末が悪いのが、それが他人に言い訳するためではなく、自分に言い...もったいない

  • 消灯の前のわずかな

    人生の中で、意味に使える時間はほんのわずかしかない。それは、何より、自分が意味を信じられていないから。それなら、意味に、なんの意味が?それは意味に何か意味があると、信じていたい、希望よりももっと弱い、部屋に落ちている、暮れ方の窓の光のような、人生の後ろ髪のような、わずかな未来の余韻。消灯の前のわずかな

  • 二階

    病院のあとすぐ家に帰らず自宅の最寄り駅まで戻ってからビル二階にある喫茶店に入った窓に向かって置かれたソファ席に沈み本を開く『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』本を開くと同時にいろんなページが開いてしまって信号で停まる車や横断歩道を渡る人々をその向こうの建物やその向こうの曇っている空を泳ぎながらいろんな思いつきや考えごとを渡り歩いた金本位制、利子率、株価の暴落手綱を離した意識は暴れ馬のようにあっちの柵こっちの柵を踏み倒し乗り越えて驚くほど取り留めがなかった我に返ると心持ち斜めにした膝を折ってソファに座っているだけだったたるみたかったのかもしれない若い頃はたるみが許されると計算していたあちこちが物理的にたるみ始める40代ともなるとこころのたるみをさらけだすことははばかられた遊びに行くでもなくおいしいも...二階

  • からだの展開

    前半分を切り取った建物の構造図開かれた階層になってそれぞれの階のあちらこちらにいくつもの診療科が棲みついている今年のからだこれは物理だ形骸化したからだとは何かX線にアピールされて戸惑っているわたしとは歳を取らないこころだと思っていたのにアイデンティティは植物の根のようにさまざまな栄養を抱き込んでモザイクみたいになっているからだの不調さえ符牒のようにわたしを印づけるように思われてくるこころの流れた跡と同じくらいに診断された原因や病名名付けられた異物が新しい栄養素としてさっそくわたしの根に取り込まれていく今朝、まだ明るくなったばかりの青空に沁みながらわたしは地上を歩いていたはだかになった木々の挑戦的な成長の先まだ白い光を宿している月跡を残しながらきっと変わらぬこの光景そう思う間に何十年を駆け抜けてわたしの符牒...からだの展開

  • 詩は

    アカデミックスキルについての本を読んでプレゼンテーションでは自分が言いたいことを言うのではなく、相手が聞きたいことを言うのだという。それはとてももっともなことだと思い、詩も、もしかしてそうなのかな、と思ったけれど。少しして、詩は、むしろ自分が言いたいことをいかにして読ませるか、のほうなのではないかと思った。他人にとってはつまらないこと、でもわたしにとってはとてもおもしろいこと、たとえば、体の不調さえ自分のアイデンティティになろうとすること、それをモザイクのように感じていること。そう気づいたときの充実した感触。わたしにとっておもしろいことは、恐らく他人にとっては他愛のないことばかり。でもそれらが何よりも大きな人生の不思議であり、わたしが人間であることの意味でもあるような気がしてくる。詩は

  • 飛び立つ

    自由な裸足を求めてぼくは飛び立つ小さな窓から覗いていると飛行機の羽がパタパタし遠くの煙が見えたり隠れたりし揺れとともにぼくらはスピードを増し曇天を映してちりめんのように光る海と平行になる煙が雲に届く様を眺めながら薄めたようなブルーグレーの空に向かって身を投げ出した街は小さくなって精密機械の半導体が並んだ基盤のようになり0.001マイクロの人いきれがからまりをほどいて遠ざかる靴を空っぽにして裸足はぼくにぴったりのサイズだからどこまで遠くに行けるだろうとても遠くに行くためにぼくはぼくにぴったりとしていようこの空っぽに包まれた裸足からスタートしたいから自由になったらなりふりかまわず好きにするなりふりかまわず好きなだけ役に立たない細部にこだわるんだ数時間の雲を縫って進んだ機上の旅がおわりに近づきたどり着いたその土...飛び立つ

  • 見えるもの見えないもの

    わたしには見えないわたしの顔を通りすがりの見知らぬ人は一瞥で見ることができるわたしの瞳はこの小ささが巨大なスクリーン広い空も海も山も雲の乱舞も一度に収めることができる通りすがりの人も風景を湛えたわたしのこの瞳を見ることができるでもこの瞳が何を見ているか見ることはできない実は濁っていること実は希望が見えていること実は不安も見えるということわたしも他の人のそれを見られないただ想像するだけ見えるもの見えないもの

  • 2023年の抱負

    新年あけましておめでとうございます。旧年中も、わたくしごとにお付き合いいただき、ありがとうございました。本年も少しずつ記事をアップできればと思っております。少しずつ、楽しい記事にできれば、と思っております。どうぞよろしくお願いいたします。さて、今回の年越し読書はこちら。國分功一郎先生の『暇と退屈の倫理学』です。このタイトルからして私の人生のテーマかもしれない、と思いましたが、本書を読み、人類のテーマであったのだとわかりました。まだ読んでいる途中ですが、私自身は、ある程度、人生の退屈をいかに回避するかが出来上がりつつあります。ただ、これも、年齢や環境によるものも大いにあるのかもしれず、恐らく数年、数十年後には別のやり方を見つけなければいけないのだろうな、という予感はしております。本書の本質のところをまだ理解...2023年の抱負

  • あたたかい布団にくるまっていると

    あたたかい布団にくるまっていると子どもみたいなことをかんがえてしまう暗闇の中では目をつむっているのか開いているのかわからなくなる見えないってどういう感じ目をつむるってどういう感じそう思うとわからないとても簡単なことだ試しに目をつむってみればでもそう思って目をつむると天井のない宇宙でブラックホールに吸い込まれていくような心地がする宇宙でも心地って、ありますかあたたかい布団にくるまっていると

  • 平均律クラヴィーア

    ブラームスのインテルメッツォOp.117-2をいったん卒業することにしたあと、次は何の曲を練習しようかな、としばし考えた。ピティナはこれまでフリーステップでしか参加したことがなく、フリーはそれぞれの人のレベルに応じて、評価をしてくださるものなので、今度は23ステップで参加してみたいと思っている。23ステップはレベルが指定されている「課題曲」を演奏し、各レベルの合格を目指すというもので、自分のレベルをより、客観的に、絶対評価的に?頂ける。自分のレベルでは、どんな曲をやったらよいか、現在はピアノを習っていないが、こういうときが一番、先生につきたいと感じる瞬間かもしれない。とりあえず、23ステップに参加するには、「課題曲」を選ばなくてはならない。ちょうどその頃、久しぶりにまたグレン・グールドのバッハの曲ばかり収...平均律クラヴィーア

  • 備忘録

    シベリウスについて調べるシリアスに調べる樅の木について調べる樅の木の枝ぶりわたしの生きる力わたしにも何か書けることがあるか調べるわたしの感情に、大人しい起伏に、つながる水脈(みお)があるかどうか『樅の木』という風景の奥行で『樅の木』という字面は雪をかぶっているように見える父を失って母がどれほど寂しいのかわたしには見えていないと思った『寂しい』という字面がかすれて見えた実家の時計は次々に止まった父が入院中にもわざわざ家から持って来させ身に付けていた腕時計母の腕時計や目覚まし時計まで健やかさ朗らかさが少しずつ古びて埃をかぶっていくわたしはわたしであるだけでは腕時計をつけたお父さんの頼もしかった腕かっこよかった腕腕を失った腕時計暗さと雪の白さが領分を守りながらひとつになっているとき踏み固めていく足取りの光と影は...備忘録

  • 若いみそら

    灰色猫の毛並みのような雲の隙間に驚くほど若い空が現れる同じ空を見たことがあるもう15年も前のこと不安で憂鬱で若かったがいまも同じくらい不安で憂鬱で若くない15年の間に3回引っ越して3回勤め先を変えたたくさんの人に出会ったでもそれは世界の人口の1億分の1くらいいろんなとんちんかんな努力をして成長したつもりでも他の人にはわからない知識や知恵よりも、皺やシミが増えたことくらいしかわたしもときどきわからない若いかんじは苦いに似ている若い空がひろがる遠慮深げに退いていく雲の縁は白く光っているだんだん若い空が見えなくなってくる最後になつかしさみたいにオレンジ色になって夜に隠れる月が出る若いみそら

  • すべての月

    たくさんの目の中に皆既月食があったたったひとつの月はいま赤銅色のカーテンに覆われたたったひとつの宇宙にはたくさんの銀河がありそう思うわたしはひとつだと思えたそういう目がたくさんあってどれひとつとして月をこぼすものはなかったすべての月

  • だらしない文章

    ビジネス文書ではないのだから。良い文章には、適量のだらしなさが必要なのかもしれない。だらり、としているところに、気持ちよくなるこころ。それは休日のからだの私、でもあるか。ひとのこころのおもしろさは、もやもやとした自分でも把握できない周縁の繁み、なのではないかしら。さきほどふと思ったこと。私にとっての詩へのスタンスは、いや、詩にとっての私へのスタンス、いやいや、つまりは、私の生活の中での詩の位置とは。クリーム入りのビスケットサンドからはみ出たクリーム。これだ!これが理想なのではないか。しっかりとしたビスケットがあって、それは仕事かもしれないし、何か勉強(個人的な興味による研究でもいいな)でもいい、積み上げのしやすいものがまず中心にあって、それらにぎゅっと根を詰めることによって、はみ出すクリームが、おいしい。だらしない文章

  • 寄り道注意

    『日々学び』カテゴリの記事を書こうと、あるイベントが、いつあったかを調べるために日記をひっくり返していたら、読み耽ってしまった。一生懸命書いてる詩より、日記のほうが良い文章になるのはなぜなのか……。(あくまで自分感覚)そして、ようやくイベントの箇所を見つけたけれど、ここから書くのでいいのか?など思い始めたら、頭に靄がかかって、さらに日記に読み耽ってしまう。寄り道ばかりの人生だ……。そしてこの『日々学び』カテゴリも、さらなる寄り道、というか迷宮を生み出しているとしか思えない。まだなぜこのカテゴリを作ったか、の記事しか書いてないのに。寄り道注意

  • 日々学び(読書含む)

    いましている行動は、いまの瞬間だけで見ると、たとえば、ただある本を読んでいるだけ、になる。でも実は、いまこの本を手に取っているのには、自分自身も忘れそうになっている、きっかけの連鎖の結果だということをふいに思った。それらを振り返ることができるようにしたら、その時々で考えていたことを俯瞰して、全体として、こういうことかと、また新たな学びにつなげられるのではないかと思った。そこで、新しく「日々学び(読書含む)」カテゴリを作ることにしました。結局、何のために、何を目指して、学んでいるかがあいまいなまま、というのが、私の残念なところではあるのだけれど。毎度ながら、自分のために書いているような記事ばかりであきれてしまいますが。どんなことでもいいので、記事の中で、何かに、興味を持ってもらえたなら、うれしいです。日々学び(読書含む)

  • ブラームス 3つの間奏曲 Op.117-2

    いつまでも同じ曲にこだわるので、ピアノの先生に、「いいかげん次の曲に進んだら?人生であと何曲弾けると思うの?」と聞かれてハッとしたのに、やっぱり延々同じ曲を練習してしまう。そんなに弾いているなら、どれほど上手くなっているか、と思われるかもしれませんが、ちょっとずつをダラダラ続けているので、なかなか上手にならない→延々と練習し続ける、という悪循環。いや、好循環?そのようなわけで、もしかしてもう、3年も経つ!?2019年に発表会で弾いたブラームスのインテルメッツォOp.117-2を延々練習しているのでした。この曲は本当に味わい深い美しい曲で、いつかピティナのステップで弾いて、いったん卒業しようと思いました。ピティナのステップは、誰でも申し込めば、ピアノの先生数名に演奏を聴いてもらって講評を頂くことができます。...ブラームス3つの間奏曲Op.117-2

  • 記号論の続き(なのか?)

    そのときどきで、考えていることがあっても、上手に書き留めておかないと、忘れてしまったら、そよ風のように、もうどこにも残らない。だからせめて、暴風は困るかもしれないけれど、草を分けて風の通る道くらいは残しておきたい(大げさ)。上手に書き留める、というのは文章うんぬんよりも、どこに書くか、ということが大事だなと思う。どこかに書いてあったとしても、もう二度と見ない場所なら、ないのと同じことだから。と、考えてくると、やっぱりブログに残すのがいいのかもしれない、という結論。あとで見返しやすいし、ブログに書いたことは、なぜかけっこうよく覚えている。非常に前置きが長くなってしまったけれど、記号論。『記号論への招待』を読んでから、考えたこと。最近、自分が受け身な人間であることにあらためて気づいた。これから変わるかもしれな...記号論の続き(なのか?)

  • しおり

    一冊の本の中にいくつもしおり入っている読みかけの本ふと手にとってまた違うページ読み始めてしまうから時間に迫られ後ろ髪ひかれながらことばの手ざわり紙の手ざわり心の手ざわりページのあいだいくつもいくつも挟まっていくしおり

  • 苦手なものにこそ才能がある?

    現在『記号論への招待』(著者池上嘉彦)を読んでいるのですが、「記号内容」とは「指示物」なのか「意味」なのか、というところで、はっとして、ここしばらく、なんとなく考えていたことが立ち上がってきたので、書き留めておきたいと思います。(『記号論への招待』を読むきっかけについても書きたかったのですが、そうすると、いつまでも本題に辿り着けそうにないので諦めました。今度そこも書きたいです)「人間が当事者となるような伝達では、多くの場合、同じ価値を有しているとされる一連の対象(指示物)に適用できるように記号内容が規定されているのが普通である」記号内容は、指示物そのものを表すよりも、意味を表すことが、人の伝達においては一般的なのですが(たとえば、木と言ったら、ある一本の木を特定するわけではなくて、これこれこういうものを木...苦手なものにこそ才能がある?

  • 記憶の記録

    毎日ではないけれど、感じたこと思ったこと考えたことを、書きたい時に書くノートがあって、そこにもっといろいろ記録をしようと最近思っている。時事ネタ。買った本、読んだ本。買ったCD。最近よく聴いている音楽。こういうことって、ぜーんぶ忘れてしまうから。いつ何をやってた、くらいは多少覚えていても、何を感じて何を思って何を考えていたか。その時どんな本を読んでいて、どんな音楽を聴いていたか。戦争なんかが起こって、家が焼かれてしまったら、災害が起こって、家がなくなってしまったら、日記も失われて、そのような記憶は全部失われてしまうのだなぁと思いつつ。私の感動は、現実を何も映していないのに、なぜ、こんなに記録をしておきたいと思うのでしょうか。とりあえず、今日、突然、ドホナーニの『4つのピアノ曲Op.2より第3番間奏曲へ短調...記憶の記録

  • 夏の夕暮れ

    階段に差し掛かると香ばしい匂いがしていた一段上がるたび、匂いの濃度は微妙に変化し踊り場をくるりと回って新たな階を上り始めると同じ匂いがまた新しく感じられる夏の夕暮れもうつくつくぼうしが鳴き始めている光のあざやかさ青春のように感じている夏の夕暮れ

  • 朝の重力

    眠りが記憶を洗って目覚めれば軽くなっている薄らとひらく部屋は明るんでいる大きく揺らいでいた価値観感覚という芯のもとに戻ってくるとても地味だけど落ち着くこうして一日一日と皺を重ねながらもまたさまざまにひらいていく希望を一日一日また薄めながら次第にまざっていく色合い誰の心を染めることなくても文字になることができればまたわすれられてもきっと部屋に訪れた空の明るさを見ていたレンズのような透明なわたしが残っている朝の重力

  • ミス バラード

    ミスバラードまたもや犯してしまったミス薔薇のように胸に残る間に音楽会へと流れた乏しくなっていく明るいホールを後にしてもバラード第4番がまだ流れているその流れの中で大江戸線がカーブの闇から抜け出してくるホームへと入ってくる行き先を光らせてくたびれてじぶんをてばなすと文字……の森に意味もなく溺れたいなにを読んでいたのと聞かれても幸福な光がこぼれていたので拭いていた拭っても拭っても落ちないのでとうれしさもこぼれてきっと笑ってしまうミスバラード

  • コンタクト

    コンタクトを外すと地球がぼやける地球はいつもコンタクトを外しているだからわたしのことぼやけて見えるんでしょうコンタクト

  • 晴れているのに

    晴れているのに池には雨が降っているように見えるそれは水の中の生き物が生み出す波紋だ水面は緑色だったのに目がほぐれて青空と雲が浮かびあがる晴れているのに

  • 今日というコップ

    今夜もひとつ言葉を注ぎ足そう今日がいっぱいになってコップから月がこぼれる今日というコップ

  • 湯舟

    湯舟に浮かんでいるのはそれは湯舟に沈んでいた沈んでいた浴室の灯りあたたかいものに浸され揺れ私の体を透過していた私の体は半透明だった重なっていた重ねていた幼年期の思い出は考えてみると未来への予感が揺れていた湯舟のような空に沈んでいたそのような景色に私が浮かんでいた求めるというよりは遠く歩くというよりは眠る湯舟

  • 2022年3月5日の夢の話

    今朝は6時に起きて二度寝をしたせいか、たくさんの夢を見た。見たことを、覚えている。病院なのだろうか、学生であるらしい私は、本を持って、女友達と二人で歩いている。私は彼女に本の説明をしている。作家の○○先生にばったりお会いする。笑顔だけで挨拶を交わす。先生は、医者ということになっていて、その資格の更新講習(があることになっている)を受けるらしい。友人と私が、病院の廊下にある、患者が診察を待つような横長のベンチに座っていると、その傍らの大きなスペースで、○○先生を含め、講習を受けている先生たちの、奇妙に激しい体操が始まっていた。場面が変わり、実家のマンション。駐車場までのアプローチで、高校時代の友人とテニスをしている。すでに夜のような暗さで、飛んでいったボールが見えない。テニスをやめて部屋に戻ろうというとき、鍵が落...2022年3月5日の夢の話

  • 森のことづて、のこと

    よくぼうはたくさんあるしたい、いたい、もある糞虫がいた。ということはほ乳類がいたいたいもあったきぎはいきていたヤク四千年前のすぎのもりらせんかいだんをおりていくとキョボク立ち上がってくるジカンさかのぼってくるワタシ匂いを嗅いでいる四千年前の縄文時代に埋もれた森がわたしによみがえるときわたしもよみがえるミトコンドリアの時代からレンメンとつづいてきたレンサのわたししたい!よみがえる!いたい!もよみがえる!こは!うまれない!たえてひさしくなりけれどキノカオリ……いきていてむしのむかしをたずねては琥珀のゆかりいにしえの森原始の欲望生きていて生きて空を見たい毛細血管としてわたしの感覚の枝葉の影を透かし広げるレースのように広がっていく森のことづて、のこと

  • 日本語な自然

    不自然が自然になるまで、自然が不自然になるまで、無造作に、日本語を書いてみようと思う。何も書くべきことがない、と嘆く私には、景色の記憶、記憶の景色が、無数にはびこっていて、どこかに触れると蜘蛛の巣のように、揺れる、が拡がる。日本語な自然

  • 夢のはなし

    夢をほとんど見ないという人は、実は覚えていないだけなのだという。夢をほとんど見ないと言う人を、起きている時間が充実している人なのかも、と感じてしまうのは、自分が夢と親しい人間だからなのかもしれない。先日の夜、布団で書きかけの詩を繕っていた。電気を消して、横になると、ある一文が浮かんだ。とても良いのではないか、と思った。忘れないように復唱した。夢うつつで。忘れないはずだと思った。闇の中に明らかに見えているもの。次の日、いま思えば案の定だ、思い出せなかった。「わたしの」の続きが思い出せなかった。感覚は残っているのに。今朝はトイレに行きたいと思って起きたのが朝の5時半だった。それまで、夢を見ていた。倉庫のような場所で、最初は数匹の犬が出たり入ったりしているのを確認していた。それがいつのまにか家の中ということになってい...夢のはなし

  • 秋の陽

    まだ15時過ぎだというのに、秋の陽は落ちるのが早く、方向を捉えてしまうと、まっすぐに飛んでくる光の矢に向かって前進するような歩みになってしまう。交差点に出て、角度を開くと、黄金色に染めあげられた壁面や枝葉の間を、そしていっそう濃くなる影の間をゆっくりと、また違う種類の緩慢さで歩くことになる。道は、太陽に向かって、分度器の役割を果たしている。まっすぐなものはもちろん、なぜか同じ景色に戻ってきてしまう魔をつくりだす曲線、であったりもしながら、先端をつなぎ続けて平面に起した蜂の巣状であることを思い出す。首都高の下に入ると、まるで夜のようなのに、歩道橋の目隠し用のパネルが強い光をしっかりと受けとめて、受けとめきれずに、こちらへと、濃厚なオレンジ色を憧れのようにこぼしている。まぶしさに思わず、一歩一歩あがっていく足元の階...秋の陽

  • 砂糖が固まらないようにする道具

    砂糖が固まらないようにする道具ないかな使おうとすると固まっていて困るんだよね朝のコーヒーとか急ぐ急ぐからそのまま忘れて急いでるときにまた困る何かないかな砂糖の容器に入れておくもの湿気を出す?何をどう考えたら良いのやらわからない。もやもやしている。溶けるがいい!あ、メモ書きがあった「改善しないといけない。何か。なぜ?→目的→原因」なぜ、そんなメモを書いたのかもはやわからないなぜ、なぜの次に目的が来るのかなぜは理由こういう理由だからこういう目的目的の次なぜ原因?パンっ!どこに行きたい?理由お腹空いたパンダ!コメダ!と腹にカネ込め飛び出した目的(パン)が膨らむ、から原因(身体)がソーセージのようにぶら下がる、から原因?理由じゃないの?理由は干しぶどう、みたいなものでしょうなぜ改善しなくてはいけないのかなぜ、より良く、...砂糖が固まらないようにする道具

  • 夜想曲2

    胸が音符をかき分けてぽたんぽたんとためらいながら落ちてくる思いと痛み湯船で膝頭を水面から沈めたりのぞかせたりするように見えない線を上下させていま感じていることが隠されているのかもしれないほんとうと露のような透明にねじれた金色の線未来からの景色と釣り合っているかを確かめるように思い出すことで学び続ける頭の中の雨をなだめながらもっと深くへもっと、とこわれる街灯の明かりがじんわり開きかけた貝のようなカーテンの足あとをたどると夜の向こうにある夜の満ち足りない砂漠のような海がこぼれる部屋の中の頭の傾きに向かってグラスの水も重心を移しどこからか拾った光の粒を投げ返す手には何も持たないで生誕から指の先まで塩を舐めて(暮らすような)あなたの美しい幾世を思い出す夜想曲2

  • ブルーノート

    前回の記事に、最近お気に入りの曲としてクープランの『神秘のバリケード』を挙げました。なぜお気に入りになった(=その曲を初めて知った)かというと。きっかけは、音楽好きの友人が誘ってくださった鈴木優人チェンバロ@ブルーノート東京でした!なぜかしら、私、ブルーノートは一般人は行けないところだと思っていました。その感覚は、あらためて考えてみると、「青山のあたりにあるらしいけど、一般の人には入り口が見つけられないようになっているらしい」という、子どもじみたものでした。恐らく名門ジャズクラブという謳い文句→有名人が、ブルーノートに行ったことを書いていた→私には縁がなさそう→そもそもどこにあるの?(青山あたりにあるらしいけど、それらしいの見たことない)という流れから、いつのまにか育まれたイメージと思われます。ところが行くとな...ブルーノート

  • 0記念日

    ついに、アクセス件数が昨日0になってしまった!ブログ開設以来、初!の快挙?昨今のコロナ感染者数の増加と比べてなんという違い。このところ、仕事とピアノにかまけてしまった。詩もちょろちょろ書いてはいるのですが、詩誌に投稿することもサボりがち。会社で毎月出している通信の身内向けコラムを書くことで、満たされてしまっているのかも。読んでいるのなんて、ほんの数人だろうし、他人が読んで面白いことを書けているのか自信はないけれども、不思議な楽しさがあって。大げさだけど、夢中になってしまう。こういう、売り上げに全く貢献しないところに一生懸命になってしまうのが、いかにも仕事ができないヒト……。最近お気に入りの曲。クープランの『神秘のバリケード』。意味不明のタイトルと言われているそうですが、私は……「気持ちわかるよ、クープラン」とい...0記念日

  • たくさんの窓

    空ほどたくさんの角度から窓という枠で切り取られているものはある?それでいてすべてつながっていてひとつだひとつ?と言えるのならばひとつ、と言うのならば命もたったひとつ土から切れ目なくつながっているひとつなのかもしれない骨がいつまでも残っているのは夜の街から消えない灯のようだ不思議なものだどのようにわたしたち色を得て形を得て気持ちになったのだろうかどのようにして灰になり文字になっていくのだろうか華やかなドレスもいずれ文字として崩れよみがえるのはひとりの思いの輝きの輪の中足踏みしているとスタンプスタンプ馬になった気がする走るのが得意な馬には土踏まずがない歩くのが好きなわたしにはまだアーチ残っているどんなひともこの土の上で時代の装いと共に生き様々なアーチを描きながら土の中へとマーチしていく文字へ文字へと崩れながらくたび...たくさんの窓

  • 想像上の問題

    整理が苦手なタイプの典型で、想像上の問題に悩むことがよくある。たとえば、小説を書いたこともないのに、「小説を書くにあたって難しいのは……」など考えたりする。しかもそこで覚える困難というのが、プロットを考えるとか、登場人物の書き分け、などではなく、天気の描写なのだった。季節によって、植物が変化することや、日の長さが違うことは、まあわかる。でも本当に大事なのは、光や影のニュアンスの違い。それらにふいに気が付いて、いつのまにか受けている印象。呼び起こされる記憶や、ある事柄に関して突然進んだように思える理解。そのとき、どんなに鮮やかでも、雲のように、時が経つと跡形もなくなり、そんな感覚があったことさえ思い出せなくなる。まだ感覚の残っているうちに書き留めておくしかない。思えば、物として触ることのできない何かを、書くことが...想像上の問題

  • すきなしごとについてのよしなしごと

    この人にどう思われる、とかあの人は仕事ができる、とかその人はえばりやだ、とか私は仕事ができない、とかそういう掃いても掃いても積もっていく塵のような雑念を除けば、仕事をしていて、作業として楽しくないことはそんなに多くない(けっきょくどっち!?)。そんな中でも、特に。ほのかに。好きだったりするのは、あまり仕事じゃないことだったりするのが、いかにも私……。会社でちょっとした通信を出していて、その本文のほうを担当することもあるけれど、それよりも、社内の関係者向けの送付状へ、プチコラム的なものを書くのが悩ましいながらも密かな楽しみ。スペースの関係で500字程度で収めるため、削除削除、していく作業が、文章が長くなりがちな私には良い勉強です。そのささやかな私の文章を楽しみにしてる、と言ってくれる人がいて、その言葉を卵のように...すきなしごとについてのよしなしごと

  • 路面白く

    木曜日黙禱日喪ったひと思い出すひとのうれしさ悲しさ木漏れ日のようにおもっていますはかっています闇に手かざしまぶしい、あなた、ですわたしわすれてしまったそのことあなたずっとおぼえてて黙って祈る心、しろく路面くらくわたしの路は迷路あなたの路もきっと迷路きっともっと迷路モザイクの美しい路わたしは明日はたしかにいるいっしょにいる翳りの中でそのようにhope望んでいる路面白く

  • ミカン星人

    私はミカン星人だ。近頃つくづくそう思う。人生のキーワードを決めるのはどうかと思いついた。もちろん変更も可能で。未完成人ですから。キーワード、というところが良いでしょう。目的、とか、目標、とか、人生で成し遂げたいこと、なんていうと大気圏を一気に突き抜けるような難しさだけれど、キーワードなら、お気楽です。ショーケースでお菓子を選ぶように、うーん、これとこれと……これかな?なんてね。これなら未完成人でもできそう。キーワードを決めることで、ぐねぐねしていく毎日に、少しは芯が通りそう。ふと手にとって、運命的に感じるほど100分de名著のブルデュー『ディスタンクシオン』に共感してしまった私は、ぐらぐらなので、キーワードという、宙づりな感じが、いま、すごくしっくりきます!!目的とか目標という言葉には、正解があるものと私は無意...ミカン星人

  • 重ね着

    冬を過ごしていない部屋にも松ぼっくりはあって襟のように合わせていくダイヤで螺旋階段を祈るやがて暖炉の火が伝える熱を頬が受けとめる絵に笑みに重ね着

  • 小さな灯り

    いまどきの家はキッチン用にいくつも電気のスイッチがある。わたしはいつも換気扇のスイッチの横に並んでいる、コンロのところだけを照らすスイッチを押す。先日、電球が切れてしまったが、そのことを思い出すのはいつも火を使おうとするときで、ネジで止まっているカバーを開けると鍋の中の食材にホコリが落ちるので、いつもまたあとにする、ことになる。代わりに、廊下やリビング用の照明のスイッチと並んだ、キッチン全体を照らす電気のスイッチを押して、テレビ番組のように隅々までパッと明るくなった料理が終わる頃には、コンロの上の電球が切れていることなど、すっかり忘れてしまう。料理に取りかかる前に思い出す、ということがようやくできた昨日、カバーを開けて、切れた電球を外し、このあとショッピングセンターへ出かけるらしい夫に渡して「これと同じものを買...小さな灯り

  • 金平糖

    ホテルの庭に面したレストランでテーブルクロスと明るい紅茶に目を細めた新緑の季節窓からは金平糖のように色がぽろぽろこぼれてきて一瞬の間を置いてそれが風の音だと気がつくいつしかそれは笑い声木漏れ日がティーカップの中あの人の瞳のような感じやすい液体にやさしい影を作っていたティーカップの丸みの向こうに蟻の小さな尻がのぞいていた笑ってこぼれそうになるので早く紅茶を飲んでしまいなさいよと言うのだけれどその琥珀色の液体に浸るくろいともしろいとも見える影を壊さないようにするそういう遊びだったのでわたしたちはいっそう笑った金平糖

  • 薔薇の形の……

    確かに、それは薔薇の形のチョコレートで昨年ロンドンで買ったお土産の一つ名残惜しくずっと箱を取ってありある日ふと見ると小さくも可憐な薔薇が咲いていました。まさかそんなことが!どうやって!恐る恐る顔を近づけてみると……ピンク色の輪ゴムでした。輪ゴムさえ薔薇に変えてしまうさすがはバッキンガム宮殿。薔薇が輪ゴムに戻るまでの時間確かにわたしは魔法の中にいました。(ちなみに輪ゴムは、色が似ているからと夫が箱の上に置いたそう。まさか薔薇になっているとは思いもせずに)薔薇の形の……

  • 2020/07/19

    この新しい時代に、適応して生きていこうとすると、とんでもなくリベラルである必要があるように思う。それがとても困難なことのように感じてしまうのは、自分を超えてリベラルであるためには、自分の良い悪いの感覚を信じてはいけない、と自分に言い聞かせ続けることだから。保守的なのは、これまでコツコツ建ててきた安定した世界観や、大切にしてきたものを、これからも守っていきたいからで、それらをゴミ箱に捨てて、いまここから新しく出発しなくてはいけないなんて途方に暮れてしまう。でもそんなふうに感じるのは、これまで、自分の感覚を崩されることなく生きてこられたからで、そんな私の「良い」の範囲はとても狭いものなのだろう。2020/07/19

  • 夜想曲

    胸が音符をかき分けるぽたんぽたんと落ちてくるいまも覚えている不安を線として感じ湯船で膝頭を水面から沈めたりのぞかせたりしながら不安を線として感じチューニングしていたこと意識の上げ下げで未来を定められる気がした覚醒のような錯覚そのように世の中や人生という漠としたものについて不安や恐れを抱いていることがあった見えない線を上下させていま感じていることが隠されているのかもしれないほんとうや透明にねじれた金色の線や未来からの景色に釣り合っているかを確かめる思い出すことで危うい均衡を学び続ける頭の中の雨は眠らずにもっと深くへ、とこわれる街灯の明かりがじんわりと開きかけた貝のようなカーテンの足跡をたどるとわたしの目が少し明るくなり窓の向こうにある夜の満ち足りない砂漠のような海がこぼれる部屋の中の頭の傾きに向かってグラスの水も...夜想曲

  • 五月の落ち葉

    今日は天気が悪いという予報だったにも関わらず、午後には雲が漂白されちぎれて、青空も見え始めたので気持ちが良く、約束の時間はあったものの、そう急ぐでもなく歩いていた。とある曲がり角ではしばみ色のつやつやした落ち葉が無数に散らばっていた。五月なのに?と思って見上げた。同じ形のつやつやした緑が繁っていた。秋の落ち葉とは異なり、地面に落ちてから変色したのかもしれないと、だいぶ経ってから気が付いた。堀江敏幸さんの『正弦曲線』を少しずつ読んでいる。読みながら、恥じ入る。詩を書きながら、読む。恥じ入る。だから、楽しい。差があるから。その差の中に、無数の感触と感覚と経験、無数の言葉と文体と本、無数の作家や詩人や写真家、そして無数の街、時間、記憶……がある。そして世界を夢見るために何よりも大切なもの部屋に入る光の筋を際立たせる塵...五月の落ち葉

  • あまかわ

    晴れた朝には都心の高層ビルからでも富士山がくっきりと見える鳥のように森やビルや高速道路を飛び越えて目は一瞬で辿り着く同じ場所で見下ろすとあまり手入れのされていないざっくばらんなわたしの手がある爪があり薄い甘皮が名残惜しそうに爪にくっついて1ミリほど伸びている富士山を照らす光がビルの無数ある窓の1つに差し込んで爪と甘皮にうっすらとつやのカーブを描く抵抗のない証しにまだまだ父の娘だという気がしてくるもう父はいないしわたしは四十も過ぎているのだけれど同じ光それでまた街を見返す活発に活動する人々の活躍音のない景色の中にひとつひとつ念入りに隠されていると思うワクワクするグラフや激しく行き来するドキュメント小さな頭の中にグローバルをいっぱいに詰め込んでうめき嘆きよろこんで無数の表情が毎日ひっそりと捨てられ経済といううねりに...あまかわ

  • への字が好き

    への字が好き口を見ればおあいにくさまでもへいきのへへいわのへへいしのへヘロインのへ……ヘブンのへ!への字が好き

  • 今夜はムーン

    大昔にはコソコソ生きていることもあったのかもしれないけれど、いまは地球上の至るところで繁殖している。ヒト。目に見えないものすごく小さな戦士たちにやられて、縛られて、現在かなりのダメージだ。まるでガリバー旅行記だ。経済活動が低下して、温室効果ガスが急激に減っているらしい。「青空が見えるぞ」というつぶやきが各地で発せられているらしい。いまは青ざめている地球なのだ。そして今夜はスーパームーン。これら4枚の写真の中に、偽物の月がひとつ、紛れ込んでいます。さてどれでしょう。今夜はムーン

  • 浅い力で朝焼けの

    浅い力で朝焼けの明るい色をひとめくり愛し合う恋人たち間を泳ぐあなぐまの合い言葉は悪魔的アナグラム愛想尽かされる前に赤ん坊は歩き始めてあなたの責任と言うアルコールに浸りアルコーヴに耽る嵐のあとにもしずけさはありあるいは浅葱の味噌汁もよし青い地球を外から見れず頭を振っても星パラパラこぼれない新しい夜に向かって挨拶をして明日にひとつの灯り明後日にふたつの灯り「あ」からすべてが誕生するという浅い夢を見ていた浅い力で朝焼けの

  • 疲れましたら

    近頃、少々お疲れ気味。そのせいか、一分の休みもなく何かを読んでいたいと思う。電車を乗り換えながら、料理をしながら、シャワーを浴びながら、髪を洗いながら、本を読みたい。誰かがそんなふうに感じた時に、読みたいと思ってもらえるような文章を書けたら良いでしょうね。そう思って、こんな時こそ、自分の詩を読んでみようと思う。こんな時に読んでも、何か感じることができたなら、何かがふわっと立ち上がったなら、私しか読まなくても、いいし。じゃなくて、良い詩。でも、疲れた時は、評価したり批判したりする自分の気持ちから逃れたいと思っていて、それなのに、いかにも批判的な目で読んでしまう自分の詩など、開く前から、「チッ」とか思ってしまう。いやいやほんとうに批判的な目で見ることができたなら、もっと良い詩が書けるでしょ?そもそも批判的に見られな...疲れましたら

  • 掃除をしながら、動物が泣かないことを思う

    先日、家の掃除をしていたとき、具体的には、机の下や、ちょっとしたカーペットの下を、屈んだり、めくったりして、クイックルワイパーで埃を拭き取りながら、動物が泣かないことについて考えていた。最近、ポテチがとまらない。体がしょっぱいものを求めてしまう。しょっぱいものが欲しいのに、手に入れる、というか、口に入れる、ことができなかったら、つらいだろうな、と思った。猿にしょっぱいものを舐めさせて、その後をついていって水場を探すブッシュマンだったか、のドキュメンタリーを思い出した。動物は、過酷だ(人だって過酷なのだけど。私がいまたまたま、呑気な暮らしが許されているだけで)。先日は、『ダーウィンが来た!』で、群れから追い出されてしまったメスライオン(だったかな?すべての記憶が曖昧)が、子供たちを連れて水場に行き、ようやく喉の渇...掃除をしながら、動物が泣かないことを思う

  • 記念すべき日

    2月6日、自分のブログを見ると「開設1999日目」とあるのが目に留まった。明日は記念すべきブログ開設2000日目か、何か投稿しよう、と思った。しかしその日、2月7日はバタバタして完全にブログ開設2000日目を忘れて過ごしてしまった。翌日、そのことに気が付いて、あらら〜、記念すべき2000日目過ぎちゃったわー!と思ったけれど、その記念すべき日の夜には、岩波文庫『失われた時を求めて』の美装ケースが届いていたのだ!まったく関係ないけれど……。※美装ケースは、14巻の帯についている「応募券」を送ると漏れなくもらえます!さっそくしまってみる。でも、サイズがぴったりすぎて箱を閉じてしまうと本を手に取らなくなってしまうのでは!という懸念。そしてこれまで貼ってきた付箋たちがすべて寝てしまうのではないかという懸念。無駄にもう一回...記念すべき日

  • 人工的

    人工的な香りが好きだ……と、おしゃれ着洗いのエマールで洗濯したセーターに軽くアイロンを当てて、ふわっと立ち昇ってきた匂いを嗅いで思った。外国人の香水も、外国に慣れていない私には、いまだに異国情緒を感じさせる魔法を持っている。「人工的」と言えば、大抵その後にはあまり肯定的ではない言葉が続くし、私も続けがちだ。「人工的」とはあまり良くない言葉として捉えられている。でも待てよ……。ふと、アイロンの熱気が温かく気持ちの良い冬の夜、あ、今の時代、特にこれからの時代、「人工的」というのは、温かい響きであるな、と思った。人間でなければできないと言われてきたことがことごとく、ロボットにもできるよ、AIならもっとうまくできるようになるよ、人なんて、いらないよ、という時代。詩は、小説は、人工的な物が読みたいな。ロボット的な物でなく...人工的

  • 昨日書いたことだけど……

    昨日書いたことだけど、嘘だったかもしれない。私に書けないのは嘘ではなくて、「虚構」だったかも。「虚構」にこそリアルがある、ということも多く、あるのだろうし。別にリアリティとか、追求しているわけではないのだけれど。嘘ならいつも書いているのかも。本当のつもりで。龍馬も泳いだ鏡川に自転車が落ちていました。これは本当のこと。でも龍馬が鏡川で泳いだのが本当かどうかはわかりません。龍馬歴史館では、乙女姉さんが持っている釣竿の先につけた紐を、腰のところに結んで、鏡川で泳ぎの指導を受けているの図の蝋人形を見たけれど。龍馬も泳いだ鏡川昨日書いたことだけど……

  • ある日のちいさなぜつぼう

    要するに、私に嘘は書けない。致命的だ。漂泊的だ。脅迫的だ、の間違いだ。リュウゼツランのシロップ。ぜんぜん関係ないけれど、「ゼツボウ」ニヒッパラレタ。竜・舌・蘭。蘭舌竜もいるのかもしれない。蘭のような舌を持つ竜。ところが、竜舌蘭はまったく蘭ではなかった。ほとんどサボテンのような植物だったのだ!ところが、ああいう多肉植物をなんでもかんでも「サボテン」と呼ぶのもまた間違いなのだ。サボテン科の植物のみがサボテンなのである。ちなみに私は英米文学科だったが、それを名乗ってはいけない気がする。竜舌蘭のような舌を持つ竜ならば、竜舌蘭舌竜、という名前になるのでしょうか。ある日のちいさなぜつぼう

  • 表層で固まる

    とまっているようなのに流動的なものなので表層で固まり皺が生まれる固まらないなめらかな水分の上で湯葉のように皺を寄せている流動的なものなので表層で固まり皺が生まれる表層で固まり揺れて割れてわれわれわゆらゆらゆれおれおにくるくるとくちびるに皺を張り付け長いこと喋り続けていた横に縦に収縮を繰り返してぬぐえない条痕になるわれわれわゆらゆらゆれおれおにくるくるとるるるるるステンドグラスの模様が石に描かれ造作なく歪み滑るように表層がことばを滑ってゆくその下にあるものを透かしながら表層で固まる

  • ビル

    1階に1人ずつビルの1階に1つのルビ1つのビルの1つ1つの窓に1つの顔というルビ誰も何も窓の羅列が街を歪ませて夢見てきたこと人はいつまでも実現させず先延ばしにして楽しんでいるビル

  • 2020/01/11

    第3回から参加していた全14回の『新訳でプルーストを読破する!』のセミナーがついに終わってしまった。このさみしさ。楽しいことというのは、終わった後がつらい。そういうつらさ、とか、がっかりさ、を味わうのが嫌で、あまり期待しない、とか、あまり前のめりでいかない、とか、若い頃からしてきた気がする。あるときから、そんなんでいいのか?と思うようになる。がっかりしても、さみしくなっても、それが嫌だから、したいことさえしないというのは、むしろ人生に対して不誠実なのでは、というくらいの気持ちになってきた。少し。今回のセミナーもとても楽しかった。みんなで読むということがこんなに楽しいとは。そして本日のゲスト、新訳を出された吉川一義先生のお話、たとえば、主人公の祖母が亡くなる場面の翻訳に関するお話も、それこそ凄みがあって、その時、...2020/01/11

  • キンチョーの冬

    先日、夢を見た。ピアノの発表会が予定されていて、その前に一度リハーサルとして、公共の商業施設の広場で小さな演奏会をしましょう、ということになる。会場に着いてから、曲を覚えてもいないし、楽譜も持ってきていないことに気が付いて、はっとする。よくある悪夢だ。それなのに、数日間はこの夢を思い出して充実感を味わっていた。興味があることを学んでいるときの、粒の詰まったような満たされたような気持ち。焦りはある。少し前に知り合いから発表会に出ないかと誘われた。一月下旬。五分ほどの曲をたった一曲弾くだけなのだけれど、私はその一曲を仕上げるのさえ、間に合うのかなぁと思うようなレベルなので、そんな夢を見たようだ。趣味というのは不思議で、他人から見ればつまらない自己満足にすぎないのだろうけれど、自分にとっては小さな人生ほどの世界なのだ...キンチョーの冬

  • 思い出

    携帯電話を呼吸器につないだらわたしのスイッチを切る場所も指紋も薄れゆく代わりにワルツのように駆け下りてくる月明かりもしもし元気だった?ふくよかな笑い声甘えさせる声いつかこんな日が来るんだと思っていた日はこんな日を信じていなかったね電話でなければ届かない距離言いたいことがあるわけではないけれど思い出したことをぽつぽつ伝える電話ならすぐにつながると思ってたいまは無線の時代だからグーテンベルクのおかげで活版印刷のおかげで?そうわたしはいつも誰かの言葉を真似て秋のように鮮やかな落ち葉を踏んだ知り直すときの衝撃を紙に書き少ない力で動かしていこうとする電話という距離は近く姿を見ている時のわたしは憂いを思い出した空は鳩の翼になって首を傾けオレンジの光線を射るねえあなたってしあわせねひたひた満ちてくる眠りの中で毎晩、ひとつの町...思い出

  • 星々

    よく考えるととても悲しいことなのかもしれないけれど。そんなことは大したことではないと軽く考えてしまう。よく考えなくてもとても悲しいことだったはずなのに。まるで何事もなかったかのように軽く考えられてしまう。愛し方さえもスタイルのひとつにすぎなかったかのように。ひとりにとってのすべてなのに。物悲しい時間。ぴったりの音楽が頭の中を流れていたのでピアノのところへ行く。手に移し、まるでそういう海だったかのように浸ってしまう。遥か、バラ色の空と海の間に動かない徴。イメージの部屋の窓がひらいて外は内になり内は外になる。あなたは遠く、どこまでも広がっていく。幼い頃のわたしは。羊歯の葉のような手の甲をひろげて先生は同じところを続けて三回間違えずに弾けないと許してくれなかった。永遠に思えた。楽譜は色とりどりのクレヨンで染まってわた...星々

  • いつまでも

    灰色の景色の中に人は少なくわたしはゆっくり坂を下っていった向かい風のように次々飛び立っていく鳥たちこの世に生を受けてふかふかとタオルのように吸収体であるコップの外側にびっしり吸いつく玉の色のように見えない水分をかき集め印象を色として青ざめていく無作為な心の軌道の中で誰かの言葉ひとつで発生する気持ちそこから広がっていく歪な同心円これもきっと何かの縁往く道と還る道がそっとハイタッチするように白く幾度も交わっているひとりでは思い出すことが多すぎて体液が熱く砂糖を煮詰めたように粘った泡がきらきら光り炭酸水のコップを首筋に当てパチパチと冷たい拍手で巡る温度を下げていくわたしはなんと答えるべきだったのかどこか暗がりで眠らずに起きていて「わたし」に逆巻く野生が向かう道を探し続けるそういう遺伝子であれはるかな日々をついばんで目...いつまでも

  • 未来を手放して

    未来を手放してわたしはいまとわたしにどっぷりと浸り込んだするもわたしはわたしを離れていった細い隅っこのねじれたカーテンに濃密であろうと脇目も振らずこの街のどこかスタンドをつけてひっそりとノートを開きスタンプを押しているインクの染み方ゴムのなじみ方文字の離れ方夜との重なり方一個一個、耳と指を使って確かめていく左手を右肩においてゆっくり首をまわす体を労っても心は放っておいてもいいそう思うと楽だったたんたんとんとんと語りかけるようにだれのためにもなにのためにもならない仕事を続け月のように満ちていくとこぼれそうになった指折り数えていくわたしを一番強くしたものはわたしを一番弱くしたあれから何年バラというバラは枯れた乾いた土に水を遣る行為が感覚となる包丁で大根の皮を剥き密かに気に入っているペンで返事を書く毎日会社に行くたわ...未来を手放して

  • 五里霧中

    最近、年齢について考える。人生は長いと思っていたのだろう。いつか、自分にとって大事なことができると思っていた。いつかはなかなか来ず、はや42。あと約20年で60歳か。あっという間だなぁ。これっ!と思うものに、なかなか出会うことなく過ごしてきてゆるやかに死。じゃなくて詩。そしていまはプルーストセミナーに夢中になっている。ああどうして仕事でないことは、こんなに楽しいのでしょう。本に限らず、日々、ゆるやかに発見するあれこれ。けっこういいこと考えた!と思うけれど、そんなことはとっくに言われていることだったり、そもそも浅はかな考えだったりする。仕事にするとなったら大変だ。秀でたり早かったりしなくてはいけない。成果を出さなくてはいけない。人を喜ばせなくてはいけない。仕事でなければ、こんな発見をした!とひとりで喜んでいられる...五里霧中

  • 湿地帯

    太陽が傾いて光が彼女を立体にした瞳の本当の色が浮かびあがった水面のように揺れた見えているすべてそれが手の平でないという保証はなかった本気でなど生きられないただ大事にしたい人を思い出しながら絹のように風を待とううるおっていたい湿地帯

  • 夢の中で

    今朝、見た夢の中で、私は、敵対する人、訝しく思っている人と、なぜか行動を共にしなければならなくなる。一緒にバイクに乗ってどこかへ向かっている。目的地への道の途中で、何か済ませる用事があるのか、立ち寄ったところで、その人が何か話をする。それが、とても素晴らしいのだ。私がその人に感じている警戒心、決して心を許してはいけない、と思っていることを、その人はわかっていて、わかっていることをわかっているぞ、と誇示するわけでもなく、払拭しようとするわけでもなく、感動や共感を得ようとする下心もなく、適切な距離を保ったまま、ただ淡々と、それでいて私の気持ちの位置に立って、話してくれる。風のようにさわやかで、その風でそよぐ木々のように静かで、その木々の立つ森のようになんの意図も押し付けもなく、その森に少しの重みもなく落ちている光の...夢の中で

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