0008「いつか、あの場所で…」
「大空に舞え、鯉のぼり」5「さくら、ごめんな。あとよろしく」<よろしくって。>そんな…。「まったく…」高太郎君はまだ何か言いたげだったけど、私の方へ来て一言。「こっち」「えっ?」私が何のことか分からなくて戸惑っていると…。「鯉のぼり」私と目を合わせないでまた一言。そのまま行ってしまう。<ちょっと待って…。>私は彼の後を追って家の裏手へ。こんなところにも庭があるんだ。彼は上を見て、「ほら」っと指さす。私はその指先を見上げる。「わーっ、大きいーィ」思わずつぶやいちゃった。大きな鯉が風に揺れている。まるで生きているみたい。私は団地サイズの鯉のぼりしか見たことがなかった。こんな大きな鯉を間近で見られるなんて…。「あのさ、こんなの普通だって」<…そうなんだ。>「ここ、けっこう眺めいいだろ。海だって見えるんだぜ」「…...0008「いつか、あの場所で…」
2024/06/26 18:00