chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
フォロー
住所
岐阜市
出身
伊万里市
ブログ村参加

2014/10/10

arrow_drop_down
  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (十一)

    「なんだと、こら!60台だからアダルトは観ないだと。糖尿病で、お〇〇チンが勃たないだと。寝ぼけたことを言うな、こら!だからこそ、観たんだよ。ほんとに勃たないかどうか、確認したんだろ?しのごの言わずに、だまって払えばいいんだよ。それとも、これから家まで押しかけようか。奥さんにバレても良いのかよ!子供らに知られても良いのかよ!それとも、『アダルトに狂ったエロジジイです!』って、近所に触れまわってやろうか。ええ、どうなんだよ、こら!」「あたし、ひとりぐらしなんで。妻とは、もうなん年も前に離婚してますし。子どもたちは、いちにん前になってまして、独立しています」じつのところ、パソコンは古いながらもなんとか動いている。ほこりをかぶっているのは事実なのだが、2年ほど前まではつかっていた。そう、彼の言うアダルトサイトの動...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(十一)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (二)娘

    四つ角のビル前に所在なく立ちすくむ、まだあどけなさの残る少女に、赤いほほ紅と真っ赤な口紅を無造作に塗りたくった唇に郷愁を覚え、思わず声をかけていた。連れだって喫茶店のドアを押した。BGMに耳を傾けつつ、男はとりとめもなく話している少女にときおり相づちを打った。なにか楽しいことを喋っているらしく、ときおりコロコロと笑い転げている。男には心地よいリズムのように感じられるそのお喋りも、きのうに再就職の件で連絡を取った友人からの情報が気になり、いまは耳に入らない。BGMをさえぎって男の耳に飛びこんできたのは、絹だとか糸だとかそういった単語だった。そしてBGMがテンポの早い曲に変わると、男ははじめて口を開いた。「で、どうなんだい?」少女は、やっと男が口を開いたことが余ほど嬉しかったらしく、自分の話を聞いていなかった...[淫(あふれる想い)]舟のない港(二)娘

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (十三)横道にそれてしまいました。

    横道にそれてしまいました。これからも話の途中であちこちと寄り道するかもしれません、どうぞ辛抱づよくおつきあいくださいな。どこまででしたっけ?フェリーの乗船前でしたね。16:30ごろでしたか、車が動きはじめました。シートを倒してのんびりしていましたので、慌ててエンジンをかけました。フェリーの乗船口にむかって出発です。大きくゲートを開いた様は、さながら鯨でした。その鯨のくちに向かって、ゆっくりとスタートです。はじめてのフェリーです、どんな感じなんでしょうか。ワクワク感と不安な思いとが入りまじっての、フシギな感覚です。ああ、ひどい目にあった!プン、プン!です。もうにどとフェリーは利用しません、もしするとしたら、個室にします。なにを怒っているのか、ですって。結局は、わたしの期待が大きすぎたせいかもしれませんがね。...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(十三)横道にそれてしまいました。

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (十七)この間、見つからないようにと

    「この間、見つからないようにとここに置いたんだった。それを忘れていたよ。うん、大丈夫だ。すべて揃っている。ひとつでもなくしていたら同志たちに顔むけができないところだった。まあしかし俗人がこれを見たとしても、なんのことやらちんぷんかんぷんだろうが。これを理解できるのは、同志のなかでもかぎられたエリートだけだがね」一子さんをとなりに座らせて、わら半紙をさも愛おしげに撫でられています。「幹部連にかわいがられている河合くんなんぞには、天地がひっくり返っても理解できまい。あの幹部連にしても、わざわざぼくの所にレクチャーを受けにくるしまつなんだから。でね、父さんに一子から頼んでくれないか。すこしまとまったお金がほしいんだ。参考書代だとかなんとか、うまく話してくれよ。一子にはあまい父さんだから」すこし考えこまれた一子さ...愛の横顔~RE:地獄変~(十七)この間、見つからないようにと

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百五十一)

    朝の10時に出社し、夕方は4時に退社する。朝の出勤時には「おはよう!きょうもがんばりましょうね」と、明るく声をかけている。社長室にはいると、徳子が「昨日の売り上げは、荷の入荷は、」と説明にくる。うんうんと頷きつつも、特段なことのない毎日で、「ありがとう」のひと言で終わる。その後は、来客があれば社長室で応対し、なければ閉じこもっている。余ほどのことがなければ、外回りすることはなくなっている。新規開拓も一段落し――というより、「これ以上販売先を増やすな」と、耳を疑うような指示がでた。「弱肉強食です」と言いはる服部にたいし、竹田が冷厳な事実をしめした。「これ以上の商品配達はムリだ」。前日に荷物を積みこみ、翌朝に交通渋滞のはげしいなかを、複数台のトラックが出発する。しかし夜の七時をまわっても届けきれない。「もう店...水たまりの中の青空~第三部~(四百五十一)

  • ポエム ~黄昏編~ (jisatsu)

    青い空俺は憎かっただからだからこそ白いペンキを投げつけたパァーッと広がったその白に青い空は驚いていただのにいつの間にか雲になっていた白い雲俺は憎かっただからだからこそ黒いペンキを投げつけたバサーッと覆いかぶさった黒に白い雲は驚いていただのにいつの間にか雨になっていた強い雨俺は憎かっただからだからこそ赤いペンキを投げつけたペチャッと居座った赤に強い雨は驚いていただのにいつの間にか太陽になっていた赤い太陽俺は憎かっただからだからこそ心臓に斧をふるったサァーッと飛び散る真紅の血赤い太陽は驚いていただのにいつの間にか意識が途絶えていた=背景と解説=何に対する怒りなのか、嘆きなのか、涙なのか……突然にあふれ出す涙に対し、どうしていいのか分からずにいたわたしでした。最近「死」というものが、ベッドに入る度に頭を過るよう...ポエム~黄昏編~(jisatsu)

  • 小説・二十歳の日記 十二月十五日 (曇り)

    きょうは、いい日だ。It'sniceday!チコからの手紙がとどいた。24日のイブの日、仕事がキャンセルになったから、こっちに来てくれるってさ。いっしょにイブを過ごしましょう、だって。素晴らしい!のひと言だ。ドアを開けると、まず半畳ほどの土間。左手に三畳かな?台所があって右がトイレ。ひとり用の小っちゃなテーブルに丸イス。その上に、コップとしょうゆ差し。ガラス戸を開けると、六畳のへや。そして小さいながらも、ベランダ付き。そのベランダに、これまた小っちゃな洗濯機。洗濯ものはロープを張って、そこに干しっぱなしだ。清水の舞台からとびおりたつもりで買った、2ヶ月分の給料にあたる30'000円弱のコンポーネントステレオがある。気のいい電気屋のおじさんが、安物だけどヘッドホンをおまけしてくれた。アパートの壁がうすくてさ...小説・二十歳の日記十二月十五日(曇り)

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (十)

    受話器をおいて離れたところ、電話をきられると思ったのか、またぞんざいな言葉に変わった。「こら、田中!かってなことするな!聞いてるのか、こら!返事しろよ、こら!」がなり立てる声が、玄関でひびいている。外にまで聞こえはしないかと、あわてて受話器をとった。「ごめんなさい、どうも。この歳になると、すぐに腰にきちゃうものですから」「あ、そう。腰がわるいんだ。つらいよね、それって。うちのおやじもね、椎間板ヘルニアってのに、なっちゃってさ。知ってる?椎間板ヘルニアってね、大変なのよ。ま、いいや。でね、毎日でんわはできないけど、メールを送ってるのよ。おやじはうまくメールできないからね、『うん』とか『ああ』とか、返させてるの。あんた。メール、やってるよね。息子さんから、返事くるのかな?」親孝行な息子さんじゃないか、あんがい...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(十)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (一)男

    二十代前半に構想して書き上げた作品です。アダルト系だったものを、抑え気味に書き直してみました。時代は、昭和の…そうですねえ。四十年代の中頃、いざなぎ景気が終わりとなった頃のお話です。同期の先陣を走っていた男が、ひとつのミスで転落していく様と、交際中だった女性との別れがおとずれ、新たな恋に走りはしたものの…麗子とミドリ…頭を空っぽにして、どうぞふたりの女性をみてくださいな。----------------まだ明けやらぬ朝もやの中、プライドの高さをその薄汚れた白っぽいトレンチコートにほのめかせ、三十路の旅も半ばの男が足早に歩いている。街灯の下でタバコに火を点けた。険しかった表情もタバコを吸い込む度にほぐれてきた。ひとつひとつのビルを確かめ、頷きながら歩いている。ビル街には、カツーン・カツーンとひびく男の靴音以...[淫(あふれる想い)]舟のない港(一)男

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (十二)入院時は、正直のところ

    入院時は、正直のところ「どうでもいいや」といった自暴自棄な気持ちでしたねえ。離婚してまだ半年も経っていない、たしか五十三歳だったと思います。娘が高一のときだったはずですから。でその部屋に、わたしに遅れることふつか後でしたか、視覚・聴覚障害者の入院がありました。大変でしたよ、それが。気の毒だとは思うのですが、とにかく大声を発せられるわけです。病室って静かでしょ?テレビにしてもイヤホン使用ですからねえ。会話にしても他人に聞こえないようにと小声じゃないですか。家族の方は手のひらに文字を書いての会話をされているのですが、その返事が大声になってしまうのです。ご当人はその認識がないらしく――まあねえ、聞こえが悪いのですからそれも当然と言えばとうぜんなことですが。すぐさま家族の方が大声を出さないようにと手のひらに書き込...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(十二)入院時は、正直のところ

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (十六)失礼しました。

    失礼しました。わたしのことはさておきまして、小夜子さんのおはなしを聞くことに。ああまた善三さんが吠えてらっしゃいます。こんどは立ちあがって威圧されます。「小夜子!あの国賊がおまえの一生をだいなしにしたんだろうが。それがあんな男を最後までかばいよって。どうだ。いまからでもいいから、ほんとのことを話してみんか」「だから善三さん。その話をこれから聞かせてくださるんですから」思わず言ってしまいました。わたしのお仲人さんである善三さんをたしなめてしまいました。「まあまあ、まだそんな無粋なことを。これから可憐なしょうじょの恋物語りを、そして正夫とのことをお話しするのですから」「まあいいさ。いまさらのことか。職も辞していることだし。もう口をはさむことはない。存分に話をすればいい」善三さんは仏頂づらでどっかとすわりこまれ...愛の横顔~RE:地獄変~(十六)失礼しました。

  • [青春群像]にあんちゃん ((大みそかのことだ。)) (一)

    大みそかのことだ。年越しじゅんびで忙しくたちまわる職員のなかに、次男のすがたがあった。施設にたいする強引な孝男のはたらきかけで、ほのかの復職とともに次男の就職がきまった。「次男の面倒をみていただければ、今後のことはわたしが責任を持って…」暗に施設へのえんじょをもうしでる孝男に、施設側としてはありがたい話ではあった。慢性的な人手不足になやむ介護業界で、とくに若い男性はのどから手がでるほどにほしい人材だ。「はあ…。あの息子さんですか」としぶる施設長にたいし「素行が心配でしょうが、なあに、ほのかが居ますから。ツグオも、ほのかの言うことはスナオに聞くやつですよ」入居ちゅうの坂本を殴打したことがネックになると考えた孝男の、切り札ともいうことばだった。次男の殴打じけんは聞いた孝男だが、その理由まではきかされていない。...[青春群像]にあんちゃん((大みそかのことだ。))(一)

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百五十)

    ひととおり回りきってしまうと、小夜子の日常に空いたじかんが増えはじめた。毎回まいかい小夜子が同伴するわけにもかない。ときに新規開拓のためのお供を、とたのまれることはあった。服部から全営業にたいして「新規営業開拓においては、社長を同伴するように」と指示がだされていた。社員に否はない。ありがたい話なのだ。商談がスムーズにいきやすい。小夜子に気を取られた相手が、当の営業との話を上の空で聞いていたということが多々あった。ただ、契約後に「すこし値引きしてくれ」という依頼があったりはする。初回はやむをえぬこととして、「次回からは値を下げますから」で、シャンシャンとする。苦笑いをしつつも、「もうかったな、そいつは」と服部も苦わらいだ。トラブル処理についても然りだった。「どうしてくれるんだ!」と怒鳴りつける客も、小夜子に...水たまりの中の青空~第三部~(四百五十)

  • ポエム ~黄昏編~(漁り火)

    沖に見える漁り火の彼方夜光虫が波の背に揺れる暗い浜辺の二つの足跡寄せる波が少しずつ消してゆく雲に陰る月一瞬の光の途絶えの下(もと)触れ合う唇長い夜ならではのこと蒼い月の囁きを耳にする時その瞳は青い炎を燃やすその時その瞳はやはり青い炎をフラメンコの命に変えて燃やし続ける=背景と解説=分かりにくいですよね単語ごとの意味は明瞭だと思いますが文になると途端に分かりにくいわたしの、ひょっとして悪い癖(?)揺れ動く思いを夜光虫と呼び変えて消される足跡が二人の別れを暗示している触れあう唇を求め合う唇としようかとも考えていたようですが別れという暗示を示唆するためにもふれあうと言う単語にした蒼い月が青い炎そしてフラメンコへここが一番のキモなんですけどね漢字を変えることによるどんな効果を狙ったのか……蒼い=心象青い=現象のつ...ポエム~黄昏編~(漁り火)

  • 小説・二十歳の日記 十二月三日 (雪)

    [再会]寒いあさだとは思っていたけど、まさか雨が雪にかわるなんて。初雪だ。しかしおどろいた。これが偶然というものだろうか。でも、ステキなぐうぜんだった。なんとはなしに通りかった、あの市民会館。ベトベトの雪道のせいで、いつもとちがう帰り道だった。裏道をやめて、大通りをあるいた。その通用門で、たったひとときにせよ、ぼくにバラ色の夢を見せてくれたあの女性歌手に会えるとは。降りしきる雪の中、傘がないらしく肩をふるわせていた。目が合ってしまったとき、「良かったら、はいりませんか?」と、声をかけていた。自分でも信じられないほど、自然に。ぼくにとっては、革命的なことだ。おそらく、耳たぶまで真っ赤になっていたろう。その女性歌手は、ぼくのことを知るはずがない。あの、長文の手紙を書いた偏執狂だとは。[着物姿]だれも彼女が歌手...小説・二十歳の日記十二月三日(雪)

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (九)

    「ほら、みろ。持ってるだろうが、田中さんよ。嘘はいけないよ。ひとつうそをつくとね、際限なくつきつづけなくちゃならないんだよ。そんなこと、出来るわけないよね」猫なで声で、優しくさとすように言ってきた。「ほんとなんです、インターネットはやってないんです」ひっしの思いで、反論した。よわよわしい声ではだめだ。もっとはっきりと説明して、キチンと分かってもらわねばと、おのれに言いきかせた。しかしそう思えども、ふるえ気味のこえが出るだけだった。「分かった、わかったよ。信用してやるよ、田中さん。パソコンは使ってないんだね。けどさ、ケータイ持ってるでしょ?」「携帯電話ですか?はい、持ってます」「じゃさ、たとえば、お子さんとは電話ではなしてる?正直に言ってよ、ウソはだめだよ」あいての静かなこえに、わたしの興奮状態もすこしおさ...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(九)

  • スピンオフ作品 ~ 名水館女将、光子! ~ (三十一)(そして、いま……:二)

    背筋をピンと伸ばした光子の姿は、凜としていた。老舗旅館である明水館の女将としての風格を十分に感じさせる。本人の口からこぼれた、自分自身を貶めるようなことばですら、光子という女将の品格を落とすものには、武蔵には感じられなかった。「地獄を見ました」ということばの中に、その壮絶な日々を乗り越えきった光子という女性の度量を感じた。「武蔵さま、ありがとう存じます。そのおことば、胸にひびきました。これまでにも似たようなお話は、多々いただきました。ですがそれらすべてが『ふたりで儲けましょう』であり、また男と女の関係を期待されてのことでございます。それはそれで光栄なことなのですが。わたくしの分は、ここまででございましょう。これ以上は無理というものでございます」。武蔵にしっかりと視線をとどけながら、なおも続けた。「若いころ...スピンオフ作品~名水館女将、光子!~(三十一)(そして、いま……:二)

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (十一)翌日にさっそく

    翌日にさっそくクリニックを受診しましたが、すぐに入院設備のある民間病院を紹介されました。そこで入院となりもろもろの検査を受けました。ふつか、いや三日後でしたか、狭心症と診断されて大学病院へうつりました。そこでもまた検査けんさの日をおくり――まえの病院とおなじ検査のようですが、どうしてにど手間をかけるんでしょうかね。お金がもったいないと思うんですよね。結局のところほぼ2週間あまり後にステント手術ということになりました。こんな大ごとになるとは想像もしていなかったので、ビックリです。このころはと言えば離婚後でして、ひとり暮らしなんですよね。世話をしてくれる人間がいないということで、少々気まずくてばつの悪い思いをしました。6人の大部屋でして、患者さん全員につきそいの方がいました。いろいろと世話をしてみえます。けれ...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(十一)翌日にさっそく

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (十五)気の強いお嬢さんだな

    「気の強いお嬢さんだな。驚いたよ、これは」手ぬぐいで拭かれながら笑っていらっしゃいます。そしてわたくしたち3人の輪の中にお入りになり、すこしのあいだ談笑しました。三郎さまは無類の映画好きでして、中でもチャップリンの[街の灯]と[モダンタイムス]がお好きなようで。それらの解説を身振り手ぶりを交えて、汗だくになりながらしてくださいました。[街の灯]は、めしいの娘と貧乏な男との恋愛物語りだったのですが、三郎さまときたら情感たっぷりにお話してくださいました。そして最後に資本家の横暴さを説かれます。[モダンタイムス]では、精神を患った労働者と、薄幸の少女とのお話を、涙なみだの物語りとして聞かせていただき、社会の冷酷さを力説されます。そしてそのためには「あなたたち婦女子もしっかりと勉強をして社会に立ち向かうべきだ」と...愛の横顔~RE:地獄変~(十五)気の強いお嬢さんだな

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百四十九)

    「幸いですねえ。徳子の機転で銀行への連絡がはやかったんで、小切手の現金化はまぬがれました。といって喜ぶようなことじゃないんです!」さらに怒気の入った五平の声が、社長室にひびいた。1階の事務室にまでとどく有様だった。「専務。すこし声を抑えてください。階下(した)にまできこえます」あわてて竹田が五平を落ち着かせようとすると、徳子が社長室のドアを閉めた。ここ日本橋に移ってから、いや富士商会が起ち上がってはじめてのことだった。いつも開けっぴろげだった武蔵の部屋がとじられた。そのことで、いかに五平の怒りが大きいことかと全社員が知ることになった。金額の多寡ではなく、社長が詐欺まがいの与太話にひっかかってしまった、そのことがどれほどに大きな問題点であるかを、当の小夜子はもちろん全社員にもかくにんさせておきたかったのだ。...水たまりの中の青空~第三部~(四百四十九)

  • ポエム ~黄昏編~(雨の日曜日)

    それは雨のふる日曜日のこと人気のない浜辺でわたしは夏の落しものを探して歩いたの肩を冷たく濡らしていく雨でさえわたしの心を知っているのに夏のあなたは今どこに……もしもあなたに逢えたらことばなんかいらないたゞもう一度あなたの口づけが……=背景と解説=すみませんねえかっこつけすぎですね自分をね、多分慰めているのだと思いますよ映画のワンシーンみたいな設定でしょ?「ことばなんかいらない」なんてね「もう一度あなたの口づけが」アホか!もう恥ずかしくて穴にでも入りたい気分ですですがあの若いころの自分がとても愛おしく感じるんですよねひたすらに自分を愛そうとしているそんな努力を続けている自分がポエム~黄昏編~(雨の日曜日)

  • 小説・二十歳の日記 九月十八日 (晴れ)

    [理性]晴れ・曇り・雨・雪、ほかにいの?ないよなあ。おゝ、神よ!人を愛するとき……、なぜ理性をうしなう?……しばらく、休もう。小説・二十歳の日記九月十八日(晴れ)

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (八)

    「ああ。だったら、やっぱりまちがいだ。わたし、きのうは仕事で留守でしたから。それじゃ忙しいので」受話器を置こうとすると「ちょ、ちょ、ちょっと、待てって。あんたがそういう態度にでるのなら、けっこうだ。こっちもね、それなりの対応を取らせてもらうから」と、口調がすこしぞんざいになってきた。「それなりと言われてもですね、わたし田中じゃないですから。それじゃこれで」「待てって、言ってんだよ、こら!じゃ、なんて名前だよ、こら!」とつぜん、ことばがやくざ調になった。「ま、いいや。あんたが田中じゃないって言いはるんなら、それでもいい。とにかく、料金をはらってくれや」やわらかく落ちついた声が、とつぜんに低くドスのきいた声に変わった。「聞こえてるんかい!返事せんかい!」豹変したそのこえが耳にはいると、たかびしゃな口の利き方を...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(八)

  • スピンオフ作品 ~ 名水館女将、光子! ~ (三十)(そして、いま……)

    差しつさされつ飲む、このひとときは、たがいにとって至福の時間だった。ときおり、ふすまの外から「女将さん、申し訳ありません」と遠慮がちに声がかかる。しかしすこしの時間を離れるだけで、すぐにまた戻ってくる。武蔵はその間、所在なく庭先に目をやっている。本館の池泉回遊式庭園とは異なり、熱海地区では珍しい枯山水の庭園様式をとっている。大女将の決断で造り上げたということで、その真意については光子も知らないという。ただ、石や砂などを用いて水の流れを表現するのは「あたくしの人生そのものなのです」と、珍しく酔ったおりに繰り言が飛び出したという。「無味乾燥だったということじゃないのよ」。「光子さん、あなたなら分かってくれるわね」。正直のところは、大女将の真意は分からないという。ただ推測するに、おのれを偽りつづけたその悔悟の念...スピンオフ作品~名水館女将、光子!~(三十)(そして、いま……)

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (十)さあ、着きました。

    さあ、着きました。こんかいは、比較的スムーズでした。そう、あくまで「比較的」です。阪神高速四号湾岸線から降りるばしょを、やっぱり間違えました。「道なりに……」なんてナビが言うものですから、二車線の左側を走っていました。そうしたら、そのまま出口になっちゃって。早すぎたんですよ、ここでは。「南港中出口」ではなく、「南港北出入口」を出ちゃったんです。おかげで一般道を、あっちに行ったりこっちに行ったりしながら、「あそこに建物が見える」「あれって船じゃないか」と、右に左にへと……。でも、なんとか着きました。時間は……、15:50です。20分だけの遅れです。もっとも、順調にいけば15:00には着いているかも、というところでしたがね。乗船手つづきをすませて、現在、車にて待機中ですの16:05です。忘れていました、ETC...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(十)さあ、着きました。

  • どうしたことでしょう?

    どうしたことでしよう?先月の10月25日(金)に退院してからというもの、起床時が早いのですよ。就寝時間が早ければ問題はないのですが、入院前と同じく夜更かしがとまりません。午前様がほとんどです。たまに早寝しても、といっても11時半過ぎなのですが、夜中に目覚めてしまって。そうなんです、困ったことに、2時間程度で目覚めてしまったのです。それ以来、午前様となっても、2~3時間程度で夜中に目覚めるようになってきました。高齢者特有の、夜尿というわけではありません。ついでですからトイレに行きますが、ほとんどがチョロチョロで我慢できないほどではありません。困るのは、空腹感です。こんにゃくゼリーでごまかしてきましたが、この4、5日ほど、それだけでは眠れません。とうとう昨夜は、カップラーメンを食してしまいました。けさの血糖値...どうしたことでしょう?

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (十四) 三本のラムネが

    三本のラムネが、ポンポンポンと、音を上げます。シュワーっと、勢いよく泡が吹きでてまいります。ほのかな甘いかおりが鼻先をくすぐります。お店の仕事場にあふれている、あのあまい匂いとはまったくちがったものです。青春まっただ中の乙女たちの、あふれ出る汗のにおいでございました。さっそくにものどに味合わせてやりたいのでございますが、淑女にはそのような、店先でのラッパ飲みなどできるはずもございません。三人同時にかけだして、角をまがったさきの神社にとびこみました。拝殿のかいだんに腰をかけて、三人が一斉に、せーの!と声を上げてラムネのラッパ飲みでございます。勢いよく流しこんだがためにのどをはげしい痛みがおそい、むせてしまいました。でも、その刺激がまたうれしくて、再度ながし込みました。炭酸がのどを通るたびに、ピリリピリリと針...愛の横顔~RE:地獄変~(十四)三本のラムネが

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百四十八)

    前もって聞かされていた小夜子で、いくどか同席もした。恫喝してくる相手にたいして、五平のたいどは一貫していた。じっと目をつむって相手の話がおわるのを待ち、ひと呼吸おいてから「帰れ!女のいざこざはその場で決着をつけるもんだ。話にならん!」と一喝する。それでも食い下がる相手にたいしては、闇市を取り仕切ったシルクハットで有名な小津親分をちらつかせてだまらせた。しかし今回ばかりは勝手がちがった。相手もさるもので、女同伴としたのだ、泣き落としをはかってきた。しかも、小夜子ひとりだ。おなみだ頂戴の話をかたらせた。「お腹にややができたんですけど」と、驚きのことばがでてきた。さすがにこれには小夜子も動揺をかくせない。「それって、武蔵は知ってたの?いつだったかしら、あなたとは」嫁ぐまえの話ならば小夜子もなっとくする。しかし万...水たまりの中の青空~第三部~(四百四十八)

  • ポエム ~黄昏編~(桃源)

    星の輝きが霧に閉ざされ時の流れも止まった中ぼくは君と歩いているそれだけで幸せなぼくけれど君は不満たらたら……手をつないで!抱きしめて!キスして!様々に君はせがんでくる触れ合うものは心だけでいい肌の触れ合いが永遠を約束してくれるわけじゃない君にガラスのドレスを着せたいガラスの帽子にそしてガラスの靴も弱い月明かりでもきっと七色に輝くだろうそんなのイヤ!靴ズレしちゃう!どうして君は夢に酔えないの?どうして桃源に入ってくれないの?=背景と解説=まあ、妄想の世界に入り込んだのでしょう。夢想と現実の区別がつかないーつけたくない、が正解かもー精神状態じゃないですかね。ふれあうことを求めているのは、多分男のわたしだったと思うんですよ。だけどそれを拒否されるんじゃんないか、そんな不安な気持ちって、男性諸君、男子諸君、君たち...ポエム~黄昏編~(桃源)

  • 小説・二十歳の日記 九月八日 (曇り)

    [軽い火傷]どうにもぐずついた天気がつづく。ことしの夏は、冷夏だそうだ。秋が早いとか。なんだか天気が、ぼくの感情に左右されるみたいに思える。ま、ぐうぜんの一致だろう。だいたい、天気のことを気にするのは、楽しいとき、若しくは悲しいとき位のものだもんナ。どうやら、先輩の話にすこし誇張はあったものの、半分は当たっていた。やっぱり、物足りないということらしい。ぼくが年下であること、そのために彼女がリードしなければならなかったこと、疲れたということだった。グイグイと引っぱる男性がこのみだということだ。「冷却期間をおきましょう」と言われたが、たぶん駄目だろう。まあしかし、かるい火傷ですみそうだ。しばらくは落ち込むだろうが、そのうち時間がたすけてくれるさ。……だけど、忘れ去るまでのあいだ、どうしたらいい。……とにかく、...小説・二十歳の日記九月八日(曇り)

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (七)

    「ピュルルル、ピュルルル……」玄関先に置いてある電話機の呼び出し音が、けたたましく鳴り出した。電話がかかるとは、珍しいことだ。時計を見ると、もう十時近くを指している。寝坊をしてしまったと、慌ててベッドを出た。もういい加減起きなくてはと、今度は素早くベッドを出た。しつこく鳴り響く電話に出ると、「はい、どちらさん?」と不機嫌に答えた。「あ3、やっと出てくれたね。だめだよ、田中さん。こっちも忙しいんだからさ」こんな失礼な言い方をされては、こちらも黙っていられない。「そちらこそ失礼でしょ!わたし田中じゃありませんから。番号ちがいですよ」「なに言ってるの、田中さん。きのう、女の子が電話したときには、出てくれたじゃないの」と、相手は引きさがらない。「ああ。だったら、やっぱりまちがいだ。わたし、きのうは仕事で留守でした...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(七)

  • スピンオフ作品 ~ 名水館女将、光子! ~(二十九)(明水館女将! 光子:五)

    そうそう、あの佳枝さんですが、里江さんと入れ替わるような形で巣立って行かれました。お迎えに上がられた女将さんも、精進されての立派なお姿に涙ぐんでおられました。佳枝さんもお世話になった大女将との別れがよほどに辛いらしく、おいおいと折角の化粧が台無しになるほどに大泣きされて、それは大変でございました。大女将のごしどうは、瑞祥苑の女将とは大違いでございまして、それこそ手取り足取りでございました。寝室にしましても同室にされました。そういった意味では、佳枝さんにとってはどうなのでございましょう。「ありがたいですわ、ほんとうに。母の愛情など、わたくしまったく知りません。おばあさまはご存じの気性ですので、婆やまかせといった観でしたから。家庭というものが、わたくしの場合は……」と、涙ぐまれます。それがご本心ならばよろしい...スピンオフ作品~名水館女将、光子!~(二十九)(明水館女将!光子:五)

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、敏ちゃんさんをフォローしませんか?

ハンドル名
敏ちゃんさん
ブログタイトル
敏洋 ’s 昭和の恋物語り
フォロー
敏洋  ’s 昭和の恋物語り

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用