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敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
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住所
岐阜市
出身
伊万里市
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2014/10/10

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  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (二百六十三)

    資料に目を落としながら、怪訝な表情を見せた。「うん?北海道はどうした?青森までしかないぞ。まさか青函連絡船だから止めたなんていうんじゃないだろうに。どうせなら、全国総ナメと行こうや」「分かりました、すぐにも調べます。ところで社長、なんで東北はだめだったんで?手が回らなかったと言えばそうなんですが、らしくないと思ってたんですが」「いや、どうということはないんだ。ただ何となくでは、納得できんだろうな。」「らしくないです、まったく社長らしくない。まさか方角が悪いなんて言いませんよね」「東北出身なんだよ、俺は。良い思い出がなくってな。あやうく間引きされかかったんだよ。母親の乳の出が悪くて、虚弱体質に育っちまってな。ひょろひょろだったよ。いま風に言えば、聞くも涙語るも涙さ。お涙チョーダイものよ」「そりゃあ、ご苦労な...水たまりの中の青空~第二部~(二百六十三)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (二百六十二)

    式後の武蔵は、以前にも増して商売に精を出した。持てる財を使い果たしたということもあるが、それにも増して事業欲がムクムクとわき出していた。ひとり小夜子を残して会社に立ち戻った武蔵は、「新婚旅行に出かけられるんじゃ?」と言う五平に「そんなものは、いつでも行けるさ。猛烈に働きたいんだよ、今は。すかんぴんになっちまったことだしな」と、笑う。昨年早々のことだ。「社長。東北の名産品あたりを、売(ばい)してみませんか?細いながらもつてはありますが」と、進言する五平に対して「いや、まだいい」と、腰を上げない武蔵だった。「面白いと思うんですがね。もう安物ばかりのご時世でもないと思いますが」と、なおも食い下がる五平に「その内にな」と、にべもない。なぜ東北物を扱わないのか、いや東北地方の話そのものを嫌がるのか、武蔵の心底が分か...水たまりの中の青空~第二部~(二百六十二)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (二百六十一)

    小夜子が去ってからの茂作は、己でも予期せぬ日々を送った。本家の心配をよそに、茂作自身も寂しさに耐え切れぬだろうと考えていたが、あにはからんや嬉々として村中を飛び回っている。繁蔵の村長出馬を受けて、繁蔵本人はもちろんのこと大婆さままでもが、茂作に頭を下げたのだ。かつては土間に座らせての対応をしていた茂作に、だ。いまでは座敷にあげて歓待する。しかも、三日と空けずに夕食だなんだと歓待する。そして村長選に向けての作戦を、茂作と共にはかっている。作戦と言っても、陳情やら相談を持ちかけてくる村人宅にでむき、村長選のことをにおわすのだ。「兄の繁蔵が役場におれば、わしも色々とやりやすくなる。むこへの連絡も、役場の電話を使えることになろうし」しかし実のところ、茂作の心内は穏やかではない。“あんな大正男の金に目がくらみよって...水たまりの中の青空~第二部~(二百六十一)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (二百六十)

    「お怒りになるでしようか?ご相談と言うのは、他でもありません」いったんは口を開いたものの、また無言がつづいた。時計の針は、七時十分過ぎを指している。特急は、七時三十四分発のはずだ。あるようでない時間だ。列車の到着時にバタバタと走り回りたくはない。小夜子の顔に険が表れ始めたことに気づいた幸子が、あわててことばをつないだ。「あつかましいとお思いになるかもしれませんが、小夜子さまにおすがりしたいのです」「ですから、何をなさりたいの?それを言ってくれなきゃ、お返事のしようがないわ!」焦れったさから、つい声を荒げてしまった。「申し訳ありません。あたし、自立した女性になりたいのです。小夜子さまには、とうてい及ばないことは分かっております。でも、少しでも小夜子さまに近づきたいのです。以前に仰られていた、自立した女性にな...水たまりの中の青空~第二部~(二百六十)

  • 恨みます (二十三)

    雨の上がった、翌朝。「堀井くん。どうかな?上客になってくれそうかな。なんにしても、じっくりと、ねっちりと、成仏させなさい。君も早くランクアップしなくちゃ、な」「はい、頑張ります」直立不動で、頭を深々と下げる一樹だった。俯いたままで、ニタニタとにやついてもいた。“へっ。言われなくても、頑張るよ。おいしい、おいしいものが、待ってるんでね。ねっ!奥、さん。”と、ななめまえに陣取る社長夫人の加代をぬすみ見た。加代もまた、顔を下に落としつつ、上目遣いで一樹を見ていた。“頑張るのよ、早くランクアップしなさい。あたしは、テータスのない男は、相手にしないからね”「沢木専務、よろしく指導頼むよ」「分かりました、社長」知ってか知らずか、上機嫌で一樹と沢木の肩をたたいて、社長室に消えた。「よくやった。この女をうまく使えば、ラン...恨みます(二十三)

  • 恨みます (二十二)

    一樹さんのお役、、、むっ、むうぅぅ」「小百合!」一気に手元に引き寄せると、そのまま小百合の唇を奪った。突然のことに目を丸くしながら“なに、なに?どういうこと?”と、いまが理解できない小百合だった。“ありがとさん、です。これから、いい思いをさせてやっから。上客になってくれ、頼むぜ。おブス、さん”一樹の素っ頓狂な声が部屋に響いた。「なんだよ、これえ!こんなん、ありい?なんで、おっぱい、小さく見せるかなあ?」小百合への問いかけというよりは、驚嘆の声を上げた一樹だった。Fカップはあろうかという乳房が、窮屈に閉じ込められた布切れから解放され、ぶるるんと大きく揺れた。心の準備がまるでないままの、突然の凶事に思えた。その時、小百合の頭の中に恐ろしい考えが、浮かんだ。“やっぱり、痴漢行為は、あの男の人じゃなくて。一樹さん...恨みます(二十二)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (二百五十九)

    迎えの車が時間通り、六時半に来た。太陽は山かげから顔をだしていない。駅までは三十分ほどかかる。特急列車との接続を考えて、始発はやめにした。「そんなにあわてて出ることもなかろうに」という茂作のことばに、ほだされる思いが小夜子の中に生まれてのことだった。物陰からじっと見つめる茂作に気付いた小夜子だが、素知らぬ振りをして戸口を出た。「行ってしまうのか、小夜子。もう会えぬかもしれぬわしを置いて、行ってしまうのか。いつお迎えが来るかも分からぬわしを置いて、行ってしまうのか」ぶつぶつと気弱な言葉を吐きつつ、見送る茂作だった。「ふふ……気が付いたかしら?幸恵さん」車中で、幸恵に問い掛ける。「なにを、ですか?」「お爺さまったら、声をかけることもできずに。あれで隠れていたつもりなのかしらね、丸見えだったわ」思わず後ろを振り...水たまりの中の青空~第二部~(二百五十九)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (二百五十八)

    茂作のことが気になりだした小夜子だが、思いつめた幸恵を見ていると、むげな態度もとりづらくなっていた。「申し訳ありません。小夜子さまのお立場も考えずに、勝手なことを申しました。あら、もう日が落ちてしまいました。こんな時間までもうしわけありません。まだお話したいことがいっぱいありますのに……」このまま立ち去るのが心残りだとばかりに、すがるような視線を小夜子に投げかける。家中に入れてもらえないかと、目が訴えている。しかし小夜子には、身支度がすんでいない。それよりなにより、いまの憔悴しきった茂作を見られたくない。「小夜子さま。明日のお帰りを、お見送りさせていただけませんか。よろしかったら、駅までお送りさせていただけませんか」これ以上の無理強いはできぬと、とっさに浮かんだ思いをことばに変えた。ぶしつけであることは分...水たまりの中の青空~第二部~(二百五十八)

  • 水たまりの中の青空 第二部 (二百五十七)

    大粒の涙が、拭いても拭いても溢れ出てくる。幸恵のハンカチが使い物にならなくなってしまい、小夜子の差し出すハンカチもすぐに、涙でぐしょぐしょになってしまった。「そんなことになっていますの、それは大変ね。で、お母さまの具合はいかがですの?大事にならなければおよろしいのだけれど。でも、正三さんも……。男は、良き伴侶を得てこそ、大仕事を成しとげることができますものね。そんな女性をお選びになって、ご出世の道を自らお断ちになるとは。正三さんらしくありませんわね。でも最後にお会いした時は、堂々としてらしたのに。そうね、きっと一時の気の迷いですわよ。そのうちに、お目が醒められますわ。大丈夫!過去のこととはいえ、あたくしが選んだ正三さんですもの」勝ち誇ったように幸恵を見下ろす小夜子がいた。それみたことか!と目を細める小夜子...水たまりの中の青空第二部(二百五十七)

  • 恨みます (二十)

    「小百合さん。ありがとう、ありがとう。あなたはやっぱり、心のきれいなひとだ」キッチンで泣きつづける小百合を抱きよせて、耳元でささやいた。と、とつぜんに小百合の体が、小刻みにふるえはじめた。「どうした?」あわてて小百合から離れると、うつむいた小百合をのぞき込んだ。「ごめんなさい、ごめんなさい」体をふるえさせながらも、ただあやまる小百合だった。“なんだよ、これって。なんで、ふるえるんだよ。寒い?っていうか、こわがってる?俺を。どうしてだよ。かんぺきだろう、いままで。うーん、こんなことって、聞いてないぞ。ど、どうすりゃ、いいんだよ”=======訳のわかんない状態になっちまったら、突拍子もない事態になっちまったら、なんでもいいから抱きしめてろ。いいんだよ。相手がいやがろうがなにしようが。ダメなときはなにをやって...恨みます(二十)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~(二百五十六)

    茂作には聞かせたくないと、外に出た。「正三兄さんの小夜子さまへの仕打ち、あたし納得がいきません。そりゃ烈火のごとくに怒った父に、恐れを為すのはわかります。あんなに怒った父を見たこと、あたしありませんでした。でもでも、音信不通状態をつづけるなんて、あんまりだと思います。たしかに秘密のお仕事で、外部との連絡をいっさい禁じられてはいたのですが。でも、でもやっぱり……」と、結局のところは、正三を擁護する言葉で終わった。「いいのよ、もう。ご縁がなかったということ、正三さんとは。それでいまは、どうしてらっしゃるの?お仕事もお忙しいでしょうけれど、どなたかとご婚約の話があるのでしょうね」たっぷりの皮肉を込めた小夜子なのだが、幸恵には届かない。「はい。仕事が忙しいのは相変わらずなのですが、実は、良からぬ話が聞こえてまいり...水たまりの中の青空~第二部~(二百五十六)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (二百五十五)

    いそいそと荷物を詰めている小夜子の後姿を、茂作が恨めしげに見ている。「お父さん、夕べは飲みすぎてない?お銚子は一本までにしてね。夕食をね、お茂さんにお願いしたから。もし本家でご馳走になる時は、早く連絡してあげてよ。それから、いくら本家からの頼みだからって、無理しちゃだめよ。あまり熱を入れるのはやめてね。村長さんを支持している人たちとのいさかいなんかに、巻き込まれないようにしてよ。本当を言うと、武蔵は良く思ってないの。身内に政治家がいるとね、大変なんだって。手が後ろに回るようなことに巻き込まれないかって、心配してたわ。あたしも、なんだか嫌な予感がするし。もう本家の言いなりにはならないでね」身支度を終えた小夜子が、囲炉裏端で背を丸けてお茶をすする茂作のそばで、あれこれと話しかける。。「ああ、分かってる。わしも...水たまりの中の青空~第二部~(二百五十五)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (二百五十四)

    小夜子詣でのとなりで、同じようにいやそれ以上に、茂作詣でがあった。武蔵が残した言葉は、小夜子の思う以上に大きかった。「茂作さんに言ってくだされば結構です」。このひと言で、茂作の存在感がぐんと増した。「どんなことでも、茂作さぁに言えばええ。村長に頼むよりなんぼか確かじゃて」村の角々でこんな声が聞かれた。床に就いている小夜子の耳に、秋の夜長の虫たちほどの声声声が聞こえてくる。「娘の進学なんじゃけれど」「家の前の道が、雨が降るたんびにぬかるんで」「ばばの家がいたんでしもうて、というて借りるあてもないし」そして帰り際には必ず「小夜子嬢さんに、ちょこっと挨拶を」と、付け加えていく。今ほど、武蔵の妻となった実感を感じることはない。ひしひしと、感じさせられている。武蔵の財力と権力に群がってくる村人たち。それらは皆、かつ...水たまりの中の青空~第二部~(二百五十四)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~(二百五十三)

    奥の部屋で横になりながら、ガーデンパーティを思い起こした。鹿鳴館を想像していた小夜子で、あまりのざっくばらんさに、拍子抜けしてしまった。家を出る時の、あの緊張感。不安の高まりから、武蔵の腕をぐっと握った小夜子だった。こわばった表情を見せながら車に乗り込んだ小夜子だった。「なんだ、なんだ。敵討ちにいくんじゃないぞ、おいしいものを食べにいくんだから。肩から力を抜いて、大きく息を吸い込んでゆっくり吐け。そうそう、肩を上下させて。どうだ、落ち着いたか?きれいだぞ、小夜子。みんなびっくりだ、お姫さまだってな。なあ、運転手君。可愛いだろう、俺の小夜子は」と、大はしゃぎだ。「はあ、まったくです。お姫さまですか、確かにです。東映の時代劇映画のお姫さまですよ、本当に。いやあ、ありがたいです。わたしも今日一日楽しい日になりそ...水たまりの中の青空~第二部~(二百五十三)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (二百五十二)

    小夜子の話が、一旦、止まった。なにごとかと、ざわつきだした。「お疲れかしら」いう声があちこちから飛んだが、「ごめんなさいね。ちょっと自慢話というか、奢りだって言われないかとおもいましたの」と、らしからぬことに「そんなことありません。ぜひ、つづきをお聞かせください」と、催促の声が上がった。「小夜子さまのお話が信じられないなんていうひとがいたら、承知しないわよ!そんなひとは、すぐにここから立ち去りなさい!」つよい口調の声が、部屋にひびいた。「そうよ、そうよ!帰りなさい!」「レディファースト。ご存じないわよね」聞き慣れぬことばに、みながうなづく中、英語教師が声をあげた。「女性を大事にするという、西洋文化の代名詞だ。いままでの日本は女性を下に見る傾向があったが、これからはちがうぞ。竹田嬢は、その先鞭だな。おめでと...水たまりの中の青空~第二部~(二百五十二)

  • 恨みます (十九)

    「そうですか。あたし、マズかったでしょうか。こんなあたしですから、もう二度とないと、思うんですけど」「あまい!それは、あまいよ。やっぱり、訴えるべきだったんだ」語気鋭く、一樹が言い放った。「でも実は。以前、一度訴えたんです」「ええっ?前にもあったの!あ、ごめん。こんな言い方は失礼だよね」「いえ、いいんです」話し辛そうな表情を見せる小百合に、一樹は「話してよ、気が楽になるかもよ」と、催促した。「交番で、男の人に、逆ギレされて。あたし、ブスだから」「なに言ってるの。そんなの、関係ないよ」いつの間にか、一樹が小百合の隣に来ていた。願望として抱いたことが、いま現実となっていた。一樹にしてみれば、小百合を見ないですむ位置に移っただけのことだったが。「今日と同じように、『こんなブス相手に、しませんよ』って。そしたら警...恨みます(十九)

  • 恨みます (十八)

    「あの…ひとつ、聞いてもいいですか?」聞きたい、でも聞くのが恐い…。逡巡する気持ちが強く、ことばがとぎれてしまう。小百合は、意を決して思いを吐き出した。。「どうして、会社のそばにいらっしゃったんですか?」「偶然に、なんて、通用しないよね」一樹は、小百合の目をのぞき込んだ。大きめの目の中に、嘘はやめてと訴える光があった。「実はね、あなたが早退すること、分かってたんだ。だから、待ってたんだ(あんたをカモるためだよ。これが、本心さ)」「ど、どういうことですか?」目を丸くして、小百合は一樹の次のことばを待った。「ぼくの姉も、以前、チカンに襲われたことがあるんだ。で、やはりあなたのように体調を崩しちゃって」「お姉さんも、ですか?あっ、そうですよね。一樹さんのお姉さんだったら、きっとお綺麗でいらっしゃるから」(ちょっ...恨みます(十八)

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