水たまりの中の青空 ~第二部~ (二百六十三)
資料に目を落としながら、怪訝な表情を見せた。「うん?北海道はどうした?青森までしかないぞ。まさか青函連絡船だから止めたなんていうんじゃないだろうに。どうせなら、全国総ナメと行こうや」「分かりました、すぐにも調べます。ところで社長、なんで東北はだめだったんで?手が回らなかったと言えばそうなんですが、らしくないと思ってたんですが」「いや、どうということはないんだ。ただ何となくでは、納得できんだろうな。」「らしくないです、まったく社長らしくない。まさか方角が悪いなんて言いませんよね」「東北出身なんだよ、俺は。良い思い出がなくってな。あやうく間引きされかかったんだよ。母親の乳の出が悪くて、虚弱体質に育っちまってな。ひょろひょろだったよ。いま風に言えば、聞くも涙語るも涙さ。お涙チョーダイものよ」「そりゃあ、ご苦労な...水たまりの中の青空~第二部~(二百六十三)
2022/07/26 08:00