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敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
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住所
岐阜市
出身
伊万里市
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2014/10/10

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  • ボク、みつけたよ! (四十四)

    一月二日です。いよいよ物語りも佳境に入りますので。今日の予定では長崎のオランダ商館に行ってみようかと思っているんですが、その前にどうしても立ち寄りたい場所があるんです。虹ノ松原海水浴場、佐賀県の唐津湾なんですけどね。小学二年生ぐらいじゃないかと思うんですが。夏休みのあいだ中、その海水浴場に滞在しました。といって、別荘があるとかそういったことじゃないですよ。海の家の一角を借り切ってのことです。両親はそこを拠点にして、あちこちに商売で出かけていました。実はこれからお話しするのは、その折のことだったかどうかはっきりしません。場所もどこだったかまったくわからない、ある学校でのことです。最近では聞きませんが、わたしが中学を卒業する前にある講座が開かれました。実際に料理が出たかどうかまでは記憶にないのですが、マナー教室とい...ボク、みつけたよ!(四十四)

  • ボク、みつけたよ! (四十三)

    「男の沽券に関わる」と、男の美学から口にしないという逃げ口上を考えちゃうんです。でも実のところは修羅場になるのがいやなわけで、怖いわけです。いままで、誰にもいつのときでも、本音を吐露したことがないわたしです。どんなに辛辣なことばを投げつけられても、体をかわしつづけてきちゃったんです。まともに反論することはありませんでした。おのれに非がないと思っていても「面目ない」とばかりに頭を下げてしまうんです。それで収まるならいいじゃないか、とばかりに。言い訳をしないことが男の美学だとばかりに応じてきました。「男らしいじゃないか」。昭和の御代では、それでよかったのかもしれません。いっぱしの男として、クドクドだらだらと言い訳をしないことが、ある意味立派なこととして見られたかもしれないです。でもいまは、平成そして令和の時代ですし...ボク、みつけたよ!(四十三)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百九十九)

    ピンクのエプロンに身を包んだ小夜子――割烹着姿がまだ幅を利かせていてるなか、新時代の女を自認する小夜子の面目躍如だ。エプロンを身に付けた小夜子は、いつも機嫌がいい。ルンルンとおさんどんに精を出している。「小夜子。どうだろう、そろそろ」「なあに、そろそろって」「うん。だからな、月が変わったらな……」歯切れの悪い武蔵のことばに「月がかわったら、なあに?」と、あくまでとぼけてしまう。分かっている、分かっているのだ。そしてそのことが、小夜子を不機嫌にさせる一因だとも知っているのだ。「いやなにな、そろそろご挨拶にな、行こうかと」振り向いた武蔵の眼前に、眉間にしわをよせた小夜子がいた。「挨拶って、なあに?なにしに、どこに行くのかな、タケゾーは」軽やかなトーンの声が、武蔵の耳に鋭くつきささる。「いや、もういいかな、と。茂作さ...水たまりの中の青空~第二部~(百九十九)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百九十八)

    「今日はね、お刺身よ。タケゾーはお肉が多いでしょうから、お魚しか食べさせてあげない」「なに言ってる、刺身は好物だ。酒にぴったりじゃないか」「お昼はどうしてるの?外に食べに出てるの?ひとり、じゃないわよね。どうせ取引先と一緒に、でしよ?あたしなんかいっつも、お茶漬けさらさらなのに」暗に、休みの日にはステーキを食べさせて、とにおわす小夜子だ。「ばか言うな、そんなことはないさ。いつもざるだよ。近所の店から、ざるそばを出前させてるさ」「うそ!タケゾー、嘘うそいてる」「うそなもんか、小夜子にうそなんか吐くものか」「うそよ、ぜったいうそよ」あくまで言い張る小夜子。「どうしてそう思うんだ?こんやの小夜子はおかしいぞ」「だって、だって……。タケゾー、いつも元気だから。あたしが疲れているときでも元気だから。夜、元気だから。夜遅く...水たまりの中の青空~第二部~(百九十八)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百九十七)

    時折ふとした折に襲ってくる恐怖感、そして急き立てられるような焦燥感。不安で不安でたまらなくなってしまう。アナスターシアという存在の大きさを、いまさらながら感じる小夜子だ。「帰ったぞ!」このひと言が、どれ程に小夜子を和ませることか、安心感を与えることか。しかしそれが腹立だしい小夜子でもある。「お帰りなさーい!」二階にいても居間にいても台所にいても、武蔵の声に吸いこまれるように飛んでむかえに出る小夜子。そのくせ武蔵の顔を見たとたんに、不機嫌な顔を見せる。「今日は何をしたんだ?」。膨れっつらの小夜子を、腕に抱きこんで上がる武蔵。「いっぱい、したわよ。お洗濯でしょ、それからお部屋のおそうじ。お台所のふきそうじもしたんだから。階段もふきそうじしようかと思ったけど、ご用聞きが来ちゃったから。明日、やるのよ」顔のほころびを感...水たまりの中の青空~第二部~(百九十七)

  • ボク、みつけたよ! (四十二)

    話を戻します。まいどまいど、横道にそれてすみません。校舎の裏手に車を回したところで、思わず「ああ!」と叫んでしまいました。見覚えのある大木と、その横に土俵が見えました。あれえ……。でも土俵はあっちではなく、こっちのはずじゃ……。すみません。あっちやらこっちやらでは、どこなのかわかりませんよね。車の進行方向の向こうがあっちで、敷地にそってまがってそしてまたまがってすぐの停車した場所がこっちなんです。土俵の上に屋根があるんですが、大木の枝がおおいかぶさっています。台風の進路によっては、屋根をおしつぶしませんかねえ。少し心配です。確か、相撲が体育の授業にはいっていると聞いた気がします。やせぎすだったわたしは、それがいやでいやでしてね。というのも、小学校の朝礼前に乾布摩擦という、わたしにしてみればしごきのような活動があ...ボク、みつけたよ!(四十二)

  • ボク、みつけたよ! (四十一)

    そうでした、学校です。当然ながら、まるで違います。当時は木造でしたが、いまはコンクリートの校舎です。正門前に立ちますが、まるで思い出せません。車をうごかして、裏手にまわることにしました。運動場なんですが、意外に小さいです。もっと広く大きかった記憶なんですが。敷地に沿ってまがると、せまい道路です。大型の車がきたらすれ違えないかもしれません。学校のフェンスをこするか、相手の車が畑に落ちてしまうか、どちらかでしょうね。いっそのこと一方通行にしてしまえばいいのに、なんて勝手なことを考えてしまいました。そういえば、こんなことがありました。いくつだったか、五十過ぎたころでしたか。両側が畑のせまい道で、ここはすれ違うことはできません。半分以上を過ぎたところで、中型の車がはいってきました。当然ながらわたしが走っていることには気...ボク、みつけたよ!(四十一)

  • ボク、みつけたよ! (四十)

    吉野ヶ里遺跡公園を後にして、福岡県柳川市の昭代第一小学校へ向かいました。小学何年生だったか、低学年には違いありませんが新入生ではなかったはずです。幼稚園児だった頃に伊万里市をはなれて、それからどこに移り住んだか。柳川市?いや待て、もう一ヶ所、どこかの……そうだ!大分県の佐伯市に入ったような……。そこで幼稚園に入る予定だったのが、今でいう引きこもりになったのか、通ったという記憶がありませんね。それじゃ、佐伯市の小学校に入学した?うーん……。新入学したのはどこの小学校だったのか、まるで記憶がない……。昭代第一小学校前でお店――駄菓子屋さんだと思っていたら、実際は酒屋さんでした。店の横にビール瓶やら酒瓶が山積みされていました。失礼ながら、小学校の真ん前なんですが。でも、少しばかりの文具もありましたけど。たまたまお店の...ボク、みつけたよ!(四十)

  • ボク、みつけたよ! (三十九)

    短いトンネルを抜けると、真っ青な――どこまでも突き抜けるような、まさに青藍の空がありました。なんだか空気が変わった気がしますよ、同じ地のはずなんですがねえ。でも現代においても、都会から田舎へと移動すると、空気が変わる気がしませんか?ほら、よく言うじゃないですか。「空気が美味い」って。弥生時代なんですよ、ここは。現代でもそうなんですが、巫女さんて女性ですよね。「なんでですかね」。そんな疑問を持ったことはありませんか、あなたは。神さまは男と決まっている?そう考えると、納得できるんですが。それとも、外を守るのは男の仕事、内を守るのは女の仕事、そういうことでしょうか。もっとも現代では崩れていますよね。でも、わたしの両親は共働きでした。化粧品販売を中心とした雑貨店を開いていました。郷里の伊万里市では、けっこうな存在だった...ボク、みつけたよ!(三十九)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百九十六)

    「ねえねえ、タケゾー。町子さん、すっかり元気になってくれた。あたしのおかげですなんて、手を合わせるのよ。看護婦さんたちもね、そう言ってくれるの。恥ずかしくなっちゃう」目を輝かせて武蔵に病院でのことを小夜子が話し始めた。キラキラと輝くその瞳をじっと見つめて、武蔵の頬も緩みっぱなしだ。「そこまで回復したか。小夜子は、そこらの医者よりもずっと名医だな。まだ頑張ってみるか?」「もちろんよ。退院されるまで付きそうつもりよ」「小夜子。昨日、お前の実家に行かせたよ」突然の、寝耳に水の武蔵のひと言に、言葉を失ってしまった。見る見る顔が紅潮し、わなわなと唇が震える。「ど、どうして!なんでいきなり行ったのよ!あたしから前もって連絡しなきゃ怒るわよ、きっと」「あたし、タケゾーのお嫁さんになるって、決めてないわよ!タケゾーが勝手に思っ...水たまりの中の青空~第二部~(百九十六)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百九十五)

    「社長、お客さまです」うつむいたままで徳江が声をかける。“こんな社長、見たことないわ。ほんとにベタ惚れなのね”と思いつつも、嫉妬心がまるで湧いてこない。「お、そうか。お通ししろ」愛人でもある徳江に、悪びれることなく小夜子を抱いたまま答える武蔵。小夜子もまた気恥ずかしさなど、まるでない。「じゃ、行くね」「まあ、待て。見せびらかしてやる。あっという間に広がるぞ。これだからな」と、口の前に手でラッパを作った。恰幅の良い、と言うよりは太り気味の男が、つるっ禿げの頭を手巾で拭きながら入ってきた。たれ目のその男、好人物を絵に描いたような風体だ。「高田さん、どうもどうも」「ごぶさたですわ、社長。おや、こちらの女性は?初めてお目にかかりますな」ぺこりと頭を下げて「初めまして、小夜子と申します」と行儀良い小夜子。目を細めて見やる...水たまりの中の青空~第二部~(百九十五)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百九十四)

    「社長、お早うこざいます」晴れ晴れとした表情で、五平が武蔵を迎えた。「おう、ご苦労だったな。どうだった、怒り心頭ってところか?」「はあ、まあ。突然でしたから、あんなものでしょう。しかし最後は納得してもらえましたよ」「嘘を付け!渋々ってところだろうが。娘を手放すってのは、売るのも同然だ。あ、すまん。五平には嫌なことを思い出させたか?」「良いんです、社長。ま、少しごねられましたがね。最後には分かってもらえました」「まあいいさ。俺が出向いた時に頭を下げればすむことだ。問題は小夜子だな。挨拶に行ったと知ったらどんな顔をすることやら」即断即決を旨とする武蔵が、ぐずぐすと先延ばしにしてきた小夜子との婚姻をやっと決断したというのに、当の本人に伝えていない。信じられぬ思いで「社長、話してないんですか?らしくもないですな。万が一...水たまりの中の青空~第二部~(百九十四)

  • ボク、みつけたよ! (三十八)

    元旦です。平成32(2019)年が明けました。5月には令和元年となるんですよね、実に感無量です。さてさて、それでは出発です。どうしてでしょうか、予定変更をしてしまいました。当初予定では、近辺の秋月城町探索をと思っていました。別段、ホテルの出発時間が遅れたわけではありません。ただ単に、歩くことが億劫に感じられただけです。ですが、これが大正解!幸先の良いスタートでした。10:50頃でしたか、吉野ヶ里遺跡に着いたのは。この地は、故郷である佐賀県が誇る、卑弥呼女王の地、だったかもしれないのです。さあ、いざ、弥生時代へ!と意気込んで階段を上がると、な、なんと!はっぴ姿の若者と、観客たちでいっぱいです。なんだか、若者たちがせわしなく動いています。入場券を買おうかと窓口に行ったものの、ちょっと気になります。「何かあるんですか...ボク、みつけたよ!(三十八)

  • ボク、みつけたよ! (三十七)

    今夜の宿泊は、福岡県朝倉市という街中にあるホテルです。福岡市からは少し離れた場所になるのですが、何より料金が安いところを検索してのことです。ホテル前の一角に身障者マークのある駐車場ががありましたので、ありがたく停めさせてもらいました。だってそうでしょう?一般車のスペースだと一台分減るじゃないですか。わたしがここに停めれば、一台分の一般向けが空くわけですし。決して楽しようとしているわけではありませんので――いや確かに入り口に近いという利点はあります。しかしそれだからと言うわけではありませんので。何度も繰り返すのは怪しいですって?そりゃ……。いえ、あなたの邪推です、それは。翌朝は、7:00に起床しました。新年を独りで迎えたという寂寥感を抜きにすれば、実にさわやかな目覚めでした。いつもどんよりした疲労感におそわれつつ...ボク、みつけたよ!(三十七)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百九十三)

    知らぬ間に眠りこけていた茂作が目を覚ましたのは、少し外が白々とし始めたころだった。「ううぅ、ぶるる。いかんいかん、こんな所で寝てしもうたか。もう夜が明ける。また、一日がはじまるのか」皆がうらやむ茂作の一日、それは茂作にとっては地獄の日々だった。これといってすることのない、無為な一日。日がな一日を囲炉裏端で過ごすことが多くなった茂作だ。日々の糧を得るために忙しく動く村人を、なんの感慨も無く見つめる茂作。そのまなこからは光が失われている。「のんびりできて、ほんとに茂作さぁは幸せものじゃて」そんな言葉のかげに、村人のさげすみの色を感じる。「おちぶれたものよ、茂作も」「タキさんがおったころは、働きものじゃったに」「娘がべっぴんさんだけに、おかしゅうなってしもうたの」はたから見れば、ほおけた老人に見えてしまっている。茂作...水たまりの中の青空~第二部~(百九十三)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百九十二)

    「なにを言うんじゃ!先夜の佐伯ご本家にたいする失礼も、このことからじゃろうが!お前がなんと言おうとこの話はまとめるんじゃ!これは竹田本家の命じゃ」普段ならば、ここでシュンとしてしまう茂作だ。しかし、ことは小夜子の結婚話とあっては、茂作も引き下がれない。「小夜子の一生のこと、いくらご本家といえども口出しは無用にお願いしたいものですわ」「まあまあ、繁蔵さん茂作さん。落ち着いて話しましょうや。じつはな、茂作さん。わしがついてきとるのは、ご報告がありましての。実は、今日お見えになった加藤さんから、村に寄付金をいただきましたんですわ。ご本家と茂作さんお二人さまからと言うことで、それぞれ十万円をの」寝耳に水のことだった。茂作だけならず竹田本家名での寄付など、思いも寄らぬ。外堀を完全にうめられては、いかんともし難い。蜘蛛の巣...水たまりの中の青空~第二部~(百九十二)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百九十一)

    村長室に通された五平が、「竹田茂作さんと竹田繁蔵さん名義で、それぞれ十万円寄付をさせていただきます。ご確認していただきたい」と、札束をテーブルの上にわざと、ドンと音を立てておいた。「それはどうも、ご奇特なことで。で?竹田さんとはどういったご関係でございますか?」「それは、まあ、その内に分かりますでしょう。今は、詮索無用にねがいますかな」勿体ぶった言い方で煙に巻いた。ではありがたく、と手を出そうとする助役を押しとどめて、「加藤さんでしたか。失礼ですが、どこぞの会社関係の方で?」と、村長が五平に念を押した。「いや、これは失礼。富士商会という会社の専務をやらせてもらっております。御手洗というのが社長でして」そこまで言うと、喉をうるおすためとばかりに茶をすすった。「こりゃあ、うまいお茶ですなあ。こちらで生産しておられる...水たまりの中の青空~第二部~(百九十一)

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