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敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
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岐阜市
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伊万里市
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2014/10/10

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  • ボク、みつけたよ! (十二)

    横道にそれてしまいました。これからも話の途中であちこちと寄り道するかもしれません、どうぞ辛抱強くお付き合いくださいな。どこまででしたっけ?フェリーの乗船前でしたね。16:30頃でしたか、車が動き始めました。シートを倒してのんびりしていましたので、慌ててエンジンをかけました。フェリーの乗船口に向かって出発です。大きくゲートを開いた様は、さながら鯨でした。その鯨の口に向かって、ゆっくりとスタートです。初めてのフェリーです、どんな感じなんでしょうか。ワクワクと不安とが入り交じっての、不思議な感覚です。ああ、ひどい目にあった!プン、プン!です。もう二度とフェリーは利用しません、もしするとしたら、個室にします。何を怒っているのか、ですって。結局は、わたしの期待が大き過ぎたせいかもしれませんがね。1番)レストランでの夕食が...ボク、みつけたよ!(十二)

  • ボク、みつけたよ! (十一)

    入院時は、正直のところ「どうでもいいや」といった自暴自棄な気持ちでしたねえ。離婚してまだ半年も経っていない、確か五十三歳だったと思います。娘が高一のときだった筈ですから。でその部屋に、わたしに遅れること二日後でしたか、視覚・聴覚障害者の入院がありました。大変でしたよ、それが。気の毒だとは思うのですが、とにかく大声を発せられるわけです。病室って静かでしょ?テレビにしてもイヤホン使用ですからねえ。会話にしても他人に聞こえないようにと小声じゃないですか。家族の方は手の平に文字を書いての会話をされているのですが、その返事が大声になってしまうのです。ご当人はその認識がないらしくーまあねえ、聞こえが悪いのですからそれも当然と言えば当然なことですが。すぐさま家族の方が大声を出さないようにと手の平に書き込まれるのですが、中々に...ボク、みつけたよ!(十一)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百五十四)

    村の寄り合い所に集まった村人たちが、口々に噂話で日々の憂さを晴らしにかかっていた。「しかし竹田の本家も情けない」「そうよ、そうよ。畑を借りて耕しとるとか」「それとも借金のかたに取り上げたのかいの」「それがて、借りてた金を利子を付けて返したそうな」「そりゃまた豪気なことよ、利子を付けてかいな。あやかりたいものよ」「ほんに、ほんに」本音が出たところに、息せき切って佐伯本家の当主である正左ヱ門がかけこんできた。「遅うなって」「なんの。それじゃ、始めようかの」「茂作が、まだじゃが」「構わんさ。いっつも来んから、声なんぞかけてへんわ」「ま、いい。今夜は良い話での。うちの正三の縁談が決まったのよ」「ほんまですかいな、それは」「ほんに、おめでたいことで」そこかしこで祝いの言葉が飛び交った。佐伯本家からの差し入れだと、酒が振舞...水たまりの中の青空~第二部~(百五十四)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百五十三)

    コックリコックリと、茂作が陽光の中で至福の時を過ごしている。縁側の向こう側の花壇も雑草だらけとなってしまった。小夜子が作っていた花々も、水をやる者が居なくては見るも無惨に枯れてしまった。最近は小夜子の夢を見ることも、とんと少なくなった。少し前までは、小夜子の夢を毎夜の如くに見ていた。きらびやかな服に身を包み一条の光に導かれて、ホール中央に現れる。その後ろに、多勢のバックダンサーを従えての登場。大きく両手を広げて歓声に応える小夜子がいる。「小夜子、小夜子、、、」。何度か呼んでみるが、年老いた茂作の声は大歓声にかき消されてしまう。「ほら、ここにお出で」小夜子の白い手が茂作に向けられ、手招きをする。夢遊病者の如くにふらふらと、小夜子に近寄る茂作。茂作?いや、そこには小夜子にかしずく正三がいた。正三が小夜子の前にひざま...水たまりの中の青空~第二部~(百五十三)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百五十二)

    「う、う、うぅぅ」押し殺した声が隣の部屋から聞こえてくる。「みね!」うめくように叫びながら、障子を勢い良く開けた。「源之助、さま……」すがるような、それでいて身体を捩って顔を背けるみねの姿が、そこにあった。「みね。お前が愛しい、愛しいぞ!やはりだめだ、お前と別れるなど、到底できぬ」「源之助さま、源之助さま。そのお言葉だけで、結構でございます。みねは、十分でございます」しっかりと抱き合った二人に、女将の目から大粒の涙が溢れ出た。そして意を決しって、二人に告げた。「そこまで二人が思いあっているならば、みね。源之助さまの妾におなり」予想だにしない女将の言葉に、源之助は耳を疑った。「なにをバカな!そんなこと、できるわけがない。みねを妾などと、正気の沙汰じゃない!」激しく詰る源之助に、みねの口から「源之助さま。みねは、お...水たまりの中の青空~第二部~(百五十二)

  • ボク、みつけたよ! (十)

    翌日に早速クリニックを受診しましたが、すぐに入院設備のある病院を紹介されました。そこで入院となり諸々の検査を受けました。二日、いや三日後でしたか、狭心症と診断されて大学病院へ移りました。そこでもまた検査検査の日を送り――前の病院と同じ検査のようですが、どうして二度手間をかけるんでしょうかね。お金が勿体ないと思うんですよね。結局の所ほぼ二週間あまり後にステント手術ということになりました。こんな大ごとになるとは想像もしていなかったので、ビックリです。この頃はと言えば離婚後でして、一人暮らしなんですよね。世話をしてくれる人間がいないということで、少々気まずくてばつの悪い思いをしました。6人の大部屋でして、患者さん全員に付き添いの方がいました。色々と世話をしてみえます。けれどもわたしには一人も付いていません。日当を支払...ボク、みつけたよ!(十)

  • ボク、みつけたよ! (九)

    忘れていました、ETCカード初デビューです。「おっそ!」ですか?ETCカードだと安くなるとは聞いていましたがね、ETC機器にお金がかかるでしょ。ほら、わたしは、身障者割引が使えるじゃないですか。でですね、大した差額じゃないだろうと、高をくくっていたのです。ところが、聞くところによると、ETC割引後に身障者割引がきくはずだと。使い道のないギフトカードが12,000円ほどありましたので、決断しました。こんなことなら、もっと早くに取り付ければ良かったと、そう後悔しても後の祭りでした。そういえば、何年前になりますかね、出雲大社に電車で向かったときです。JRを使ったのですが、身障者割引のことがまるで頭になくて、半額利用しませんでした。結構な金額でしたから、一泊のホテル代ぐらいは浮いたと思いますよ。まあいいや、ETCのこと...ボク、みつけたよ!(九)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百五十一)

    次第に昨夜の記憶が甦ってきた。宿舎に帰ったものの、襲いくる絶望感と寂しさに耐え兼ねて、ふらふらとこの橘屋まで来てしまった。「酒!」「承知いたしました。それじゃ、離れの方へどうぞ」ぶっきら棒な正三を初めて見る、女将。尋常ではない正三だと、仲居に告げた。「いいこと、多少のご無理にも応えてちょうだい。万が一にも悶着にならないよう、気を付けてちょうだい」「はい、心します。」ベテラン仲居に対応させるなど、最大級に気を使う女将だった。そして、源之助への報告をした。「そうか…、相当に堪えたようだな」。源之助の口調から「女性がらみね。正三坊ちゃんも、苦しまれるのね。相手の女性もさぞかし、のことでしょうに」と、感慨に耽る女将だ。源之助が官吏になりたての頃、この橘屋に足繁く通った。今の正三と同じように、源之助もまた将来を嘱望されて...水たまりの中の青空~第二部~(百五十一)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百五十)

    その夜、夢を見た。いや、夢であってほしいと、切に願う正三だ。じっとりと首に汗を掻いている。起き上がった布団の上で「あり得ない、あり得ないことだ」と、何度も頭を振った。夢の中の、久方振りの小夜子は銀幕のスターかと見紛うほどに、光り輝いていた。傲然と正三の前に立ち、居すくまる正三を見下ろしている。大きく胸元の開いたドレスに身をまといーそう。あの折の、百貨店でのファッションショーのポスターにあったドレスを身にまとっていた。軽く顎を上げて左肩をほんの少しいからせて、両手を腰に当て左足をすりだしている。「これまでね」とでも言いたげにうっすらと開けられた口が呟いている。「許してください、本意ではありません。僕の預かり知らぬところの、出来事なのです。酔っていたのです、前後不覚になっていたのです」「そうだ!プロジェクトです。僕...水たまりの中の青空~第二部~(百五十)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~(百四十九)

    奥方が退室すると、正三を隣に呼び寄せての小声になった。「あの嘉代は、元次官の娘だ。しかし権藤の奴、どこでどう手を回したのか大蔵省次官の娘を娶りよった。大蔵と言えば省の中の省だ。何とか代議士を頼って運動してみたが、やはり負けた。元次官には申し訳がない、まったく。嘉代はそのことについてひと言も不平不満を言わん。しかし不憫でな、次官の娘として育ったのに」一点を見つめる源之助、苦渋に満ちた表情の源之助、初めて見る叔父の、生の姿だった。「いいか、正三。男は、仕事で名を成さねばならん。そして名誉ある地位に就かねばならん。由緒ある佐伯家の跡取として、恥じぬ地位にな。その為にも、嫁は厳選せねばならん。心配はいらん、私が見つけてやる」やっと正三に、話が見えてきた。“小夜子さんのことか?お父さんから話が来たんだな。冗談じゃない!僕...水たまりの中の青空~第二部~(百四十九)

  • ボク、みつけたよ! (八)

    さあもういいでしょう、渋滞解消といきたいですよね。大して走っていませんが桂川PAで休憩です。距離的には短いですが、予定通りなんです、多賀SAが予定外だったんです。どういうのですかねえ、こういう性格というのは。当初決めたコース通りに走らないと、気持ちが落ち着かないんです。などというくせに、予定をすぐに変えたりもするんですけどね。ああ、そういえば……。何年前だったか、このPAで事故に遭いました。それこそ、ぶつけられました。こちらの責任はゼロです。全面的に相手が悪いのです。警察の到着を待つと言うことになり、わたしも車の中で待つことに。これって、今回の旅行時ではなく、少し前の話ですので。免許証がいるなと思って、鞄を漁ってみました。えっ!です。ない、ない、ないんです!車のグローブボックスかと中をかき回すも、ない!焦りまし...ボク、みつけたよ!(八)

  • ボク、みつけたよ! (七)

    話が少し逸れてしまいました。さあそれでは、わたしの[ルーツ探しの旅]へ出発です。平成31(2018)年、12月30日。当日は、まったく雪の気配なし。前夜の雪が嘘のようですわ。晴天に恵まれて、出発です。わたし、晴れ男なんですよね。天気予報にも負けませんし、たとえ出発時に雨が降っていても、目的地に到着時には雨上がりとなっています。大体8割程度の勝率です。ただ、雨男やら雨女同伴事には、少し下がります。ですけど、5割以下にはなりませんから。高速に乗るのはホントに久しぶりで、少し緊張気味です。速度が80kmに達した時点で、固定することに。といっても、オートクルーズとかいった機能はありません。あくまで自分の足でコントロールです。今走らせている車は、ローン・レンジャー号(別名:ダイハツ製のミラ・ジーノクラシック)です。。わた...ボク、みつけたよ!(七)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~(百四十八)

    「今夜はこの部屋にしよう」と正三が通されたのは、初めて入る源之助の書斎だった。大きな窓を背にした幅五尺ほどの無垢材机があり、壁には天井まで隙間なく蔵書が整理されていた。塵ひとつないない部屋は、源之助を如実に現している。緊張の面持ちで立ちすくむ正三に、粗末なソファを指し示した。局長室の模様替えの折に、処分予定の物だった。来客用というよりは、仮寝用にと持ち込んだ。自宅に客を呼ぶことのない源之助で、家族ですら入室を許されない部屋だった。「ま、座りなさい。いいか、正三!お前もいつかは家を持つことになる。その折には、書斎を作りなさい。人間、独りになれる部屋が必要だ。瞑想ができる部屋が、だ。ところで正三お前は、この逓信省で何を為すつもりだ?」「は、はい?」思いも寄らぬ問いかけに、ぐっと言葉に詰まってしまった。「そんな、何を...水たまりの中の青空~第二部~(百四十八)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~(百四十七)

    「はい、佐伯ですが」「お初でございます。わたくし、富士商会の代表を務めさせて頂いております、御手洗武蔵と申します」虚を突かれた源之助だった。外部に公表していない、一部の人間しか知らぬ電話に、武蔵がかけてきたのだ。“この男、どういう男だ。政府関係者に繋がりがあるのか?こりゃあ、迂闊なことはできんぞ”「先ほどは留守をしておりまして、大変失礼いたしました。局長さま直々のお電話だということで、早速連絡をさせて頂きましたが。何ですか、竹田小夜子嬢のことだとか?」慇懃な武蔵の口調に、源之助はつい椅子から立ち上がってしまった。「いやいや、早速のお電話、恐縮です。実はですな、竹田小夜子嬢は私の見知りおきでして。上京していると聞き及びましたので、消息を調べていましたところ、何ですか御社にお世話になっていると聞き及びまして。実家の...水たまりの中の青空~第二部~(百四十七)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~(百四十六)

    「お帰りなさい!社長」階下から、社長を迎える声がした。慌てて部屋から飛び出した五平は、階段下で立ち話をしている武蔵を急かした。「社、長!大変な事態ですよ。早く上がってきてください」「何をそんなにうろたえてるんだ、五平らしくもない」息せき切って、社長室の扉を荒々しく閉じた。「あの、小娘のことです。逓信省の、えーと、簡易保険局局長の佐伯源之助なる人物からの電話らしいですわ。で、そんな社員はいない、と返事したらしいんですわ。いや、あたしが留守の時でして」メモ書きを見ながら、五平は不安げに告げた。「ふん、そんなもの。研修中で社員登録していなかった、とでも言っておけばいいさ」武蔵は、事もなげに素っ気なく答えた。「いやしかしですなあ、未成年ですし。親の了解も取らずに、社長宅に入れたんですから。相手は、なにせ官吏さまですから...水たまりの中の青空~第二部~(百四十六)

  • ボク、みつけたよ! (六)

    どうせ九州の生まれ故郷に帰るのなら住んだ町すべてを回ってみよう、そう思い立って記憶の限りの小学校を書き出しました。生まれ故郷である佐賀県伊万里市立伊万里小、福岡県柳川市立昭代第一小、福岡県久留米市立篠山小、そして福岡県中間市立中間小学校です。卒業したのは岐阜市立木之本小学校です。ただ残念なことに、最初に入学したはずの大分市の小学校時代が思い出せないのです。もう一つ言えば、大分市には幼稚園児の折に引っ越したはずです。そして幼稚園に通うことになったはずなのですが、慣れずに通わなかったと記憶しています。小学校入学前の年次だったと思います。ですが、まるで記憶がないのです。すっぽりと抜け落ちています。ただ覚えていることが、ひとつだけあります。大分駅を降り立ったのは夜でした。見上げればたくさんの星が瞬いていたことを、おぼろ...ボク、みつけたよ!(六)

  • ありがとうございます!

    信じられないことが起きていました。「よもやよもや」の、コンコンチキですよ。使い方が違うかな?3,000,000以上が存在するgooブログさんにおいて、まさか、トップ10入りしていたなんて。「スタッフにアピール」にて、わたしのブログが紹介されたらしく、ものすごい方に訪問して頂けていました。10月6日:7,607人(21位)これだけでも驚きなのに、10月7日:15,517人(9位)という数字に。初め観たときは、目の錯覚だと思い、見直した折には「4月1日か?」と、何かの冗談だろうと思っちゃいましたよ。すべては、「スタッフにアピール」に掲載して頂けたおかげですね。感謝、感謝で、ありがとうございます。ただまあ、明日には……。いやいや、ネガティブに捉えずに、ポジティブに行くぞ!「そう言えば……」と思い出して頂き、再来訪の折...ありがとうございます!

  • ボク、みつけたよ! (十一)

    入院時は、正直のところ「どうでもいいや」といった自暴自棄な気持ちでしたねえ。離婚してまだ半年も経っていない、確か五十三歳だったと思います。娘が高一のときだった筈ですから。でその部屋に、わたしに遅れること二日後でしたか、視覚・聴覚障害者の入院がありました。大変でしたよ、それが。気の毒だとは思うのですが、とにかく大声を発せられるわけです。病室って静かでしょ?テレビにしてもイヤホン使用ですからねえ。会話にしても他人に聞こえないようにと小声じゃないですか。家族の方は手の平に文字を書いての会話をされているのですが、その返事が大声になってしまうのです。ご当人はその認識がないらしくーまあねえ、聞こえが悪いのですからそれも当然と言えば当然なことですが。すぐさま家族の方が大声を出さないようにと手の平に書き込まれるのですが、中々に...ボク、みつけたよ!(十一)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~(百四十五)

    源之助は弁護士に全てを任せる気でいたが、正三があれ程にこだわる小夜子に会ってみたくなった。とりあえず電話を入れて来訪の意思を伝えた。しかしそこに小夜子は居るはずもなく、富士商会へ就職したと聞かされた。加藤も、まさか武蔵宅へ転がり込んだとも言えず、会社の寮に入ったらしいとの返事をした。“ほう、とりあえずはまともな生活を送っているのか。まあ、正三が惚れたという娘だ、そうであってくれなくては困るというものだ”と、受話器を持ったまま頷く源之助だった。翌日の午後に、源之助自身が富士商会へ電話をかけた。秘書にかけさせようかとも思ったが、受付の様子で会社が分かるものだと思った。「はい、富士商会でございます」「ああ、そちらに、竹田小夜子なる女性が勤務していると思うのですが、電話に出していただけますかな」「失礼ですが、どちら様で...水たまりの中の青空~第二部~(百四十五)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~(百四十四)

    「おいおい、褒めてるんだぞ。いいか、お前を、坊ちゃんと呼ぶということはだ、お前を一段上の人間と考える素地があるということだ。残念ながら、今のお前はまだ半人前だ。他の者に認められていないだろう。今回のプロジェクト入りで、少しは認めさせることができたろうが、今日の体たらくでは……。とに角酒を飲め。赤坂でも銀座でも、一流の店に行け。一人じゃないぞ、大勢を連れ歩け。今は仕方がない、金をどんどん遣え。軍資金の心配はするな。お前のお父さんから、たっぷり回ってくる。そうだな、週一回は行け。いいな、私の贔屓の店を教えてやる。格の違いを、見せ付けるんだ。それから、女も抱け。女将連中には連絡をしておいてやる。一流の女を抱け。場末の女はいかんぞ。間違っても、あの小娘はいかん、いいな!」語気鋭く、源之助の厳命が下った。反抗を許さぬ、強...水たまりの中の青空~第二部~(百四十四)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~(百四十三)

    “何て、こった。何てことを、この僕は、、、。ああ、小夜子さんに会わせる顔がない”顔面蒼白の正三だった。激しい後悔の念に苛まれながら、頭を掻き毟った。白いシーツの上に、正三の髪の毛が無数に落ちた。床の中から、気だるそうに女が声を掛けてきた。正三は、その言葉に弾かれたように立ち上がった。「:34*;%&$#・・」女から発せられた言葉も、今の正三には異国語に聞こえた。「放っといてくれ!」女の差し出すワイシャツを引ったくるようにして、正三は部屋を出た。“小夜子さん、小夜子さん、、、ごめんなさい、、酔ってたんです、酔ってたんです、、”呪文のように、何度も何度も呟きながら、歩を進めた。その夜、正三は叔父である源之助の前で小さくなっていた。背筋をピンと伸ばしての正座を余儀なくされていた。「正三。今日、役所を欠勤んだそうだな。...水たまりの中の青空~第二部~(百四十三)

  • ボク、みつけたよ! (五)

    もう少し前段のようなものを聞いてください。小学生の折には、作文でよく褒められました。昔々に「計画学習」という教材誌がありました。団塊の世代の方ならば、ひょっとして覚えてらっしゃるかもしれませんね。それに投稿した詩やら作文で賞を頂いたことがあります。誰もが本人の体験談だと思いました。小学生なのですから、それが当然のことでしょう。しかしそれが事実として書いたように見せかけて、実は作り話なのです。実際には体験をしていない事象を、さも事実であったかの如くに書いたのです。こう書けばきっと先生は喜んでくれる、大人は感心してくれる、そんな思いで書いていたのです。忖度という言葉は、現在においてほぼ毎日のように新聞やらテレビのニュース番組で飛び交う言葉ですが、あの折のわたしにピッタリです。例えば小学三年か四年生のときに、一旦離れ...ボク、みつけたよ!(五)

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