水たまりの中の青空 ~第二部~ (百六十七)
“待て待て、急いては事を仕損じるぞ。それとも、据え膳喰わぬは男の恥か?いやいや、小夜子は俺の伴侶になる女だ。そこらの女どもと一緒にしちゃいかん”小夜子のおでこに軽く触れて「もう休め。明日、ビフテキでも食べよう。小夜子、好きだもんな。牛一頭分、平らげさせてやるぞ」と、体を横たえさせた。「タケゾーも、眠ろうよ。小夜子と一緒に寝ようよ」武蔵の手を握り、小夜子の隣へと誘った。「そうだな、寝ような。一緒に寝ような。これからずっと一緒に寝ような」小夜子が体をずらして、武蔵の入り込む隙間を作った。ありえないことだ、小夜子が他人のために己を譲ることは。これまでの、僅か20年足らずの人生だけれども。あのアナスターシアにですら、心を許している相手だというのに、己の、分だけは譲らなかった。今、ベッドの上で体をずらしたということは、小...水たまりの中の青空~第二部~(百六十七)
2021/11/30 08:00