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敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
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岐阜市
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伊万里市
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2014/10/10

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  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百六十七)

    “待て待て、急いては事を仕損じるぞ。それとも、据え膳喰わぬは男の恥か?いやいや、小夜子は俺の伴侶になる女だ。そこらの女どもと一緒にしちゃいかん”小夜子のおでこに軽く触れて「もう休め。明日、ビフテキでも食べよう。小夜子、好きだもんな。牛一頭分、平らげさせてやるぞ」と、体を横たえさせた。「タケゾーも、眠ろうよ。小夜子と一緒に寝ようよ」武蔵の手を握り、小夜子の隣へと誘った。「そうだな、寝ような。一緒に寝ような。これからずっと一緒に寝ような」小夜子が体をずらして、武蔵の入り込む隙間を作った。ありえないことだ、小夜子が他人のために己を譲ることは。これまでの、僅か20年足らずの人生だけれども。あのアナスターシアにですら、心を許している相手だというのに、己の、分だけは譲らなかった。今、ベッドの上で体をずらしたということは、小...水たまりの中の青空~第二部~(百六十七)

  • ボク、みつけたよ! (二十)

    血の池地獄ですね、そうでした。ちょっと気を許すと、すぐに横道にそれちゃいます。性格が移り気というわけではないですよ。気が散りやすい、これは当てはまるかもしれませんが。どこが違うんだ!とお叱りを受けそうですが、集中するときは集中しますんでね。はい、これからは愚痴のオンパレードになります。覚悟して読んで下さいね。「いままでだって十分に愚痴だらけだったぞ」ですって?すみませんねえ、わたし自身はそんな風には考えていなかったものですから。googlemapで確認しますと、「距離は2.6kmで歩いて34分」とあるんですよね。それで、地図上に貴船城があるのですが、右手に見ながらのルートになっています。が、が、です。わたしは左手に見ながら歩いたわけです。ということは、より海岸寄りに歩いたことになります。時間にしても、実感として...ボク、みつけたよ!(二十)

  • ボク、みつけたよ! (十九)

    鬼山って、地獄なのか天国なのか分からぬ部分もありました。動物園なの?植物園なの?なんて思っちゃいましたよ。入るとすぐに、ワニがわんさかと居るわけですよ。70頭ほどを飼育しているらしいですよ。ここなんか、息子を連れてきたら、ワアワア泣いて手に負えなかったでしょうね。案外わたしもまた、だったかもしれないですがね。そこを過ぎると今度は温室部屋を通ることになって、南国系の植物がいっぱいでした。種々雑多なサボテンがあり、その見事さにうっとりしちゃいました。見惚れてしまいました。それにしても、なんでここの名称は鬼山地獄なんですかね、天国みたいなんですがねえ。鬼山さんという方が創設されたのかと思ったら、そうではなくて地名なんだそうです。そうだ、そうだよ。別府には、鬼伝説があったじゃないか。中学時代に学校の図書館で読みあさった...ボク、みつけたよ!(十九)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百六十六)

    小夜子の精神状態が見えない現在、どう接すれば良いのか分からない。“普段通りにしてください”。往診した医者は言う。たかが町医者の下した診断だ、信頼して良いものか迷ってしまう。逡巡してしまう。おとぎ話の世界にいるがごとき小夜子なのだ。話を合わせるといっても、そのままおとぎ話の住人になってしまうのではないかと危惧される。アーシアは睡眠薬過剰摂取だと理解している。そして死亡したことも伝わっている。しかしそれでもアーシアとの会話を、小夜子は口にした。アーシアの死を、現実のものとして受け入れられないでいる。いずれは受け入れさせねばならぬとしても、そのいずれをいつにするか。悩む武蔵だ。即断即決が心情の武蔵だが、こればかりはそうもいかない。“医者に相談してみるか、素人考えは生兵法だ”。“俺が、独断専行の権化と言われるこの俺が、...水たまりの中の青空~第二部~(百六十六)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百六十五)

    「実はな、小夜子。そのアナ、なんとか……がな、アーシアって呼ばせてくれ。アーシアはな、睡眠薬の飲みすぎだったんだ。聞いたか?アーシアから」小夜子の反応をうかがいながら、武蔵はゆっくりと話を続けた。「ううん、何にも。そう、睡眠薬を飲んでたの?やっぱり、早く小夜子が行ってあげれば良かったのね」「そうだな、ほんとにそうだな。けど、俺が寂しくなるがな。小夜子、落ち着いて聞いてくれよ。五平の調べによるとだ」突然小夜子の指が、武蔵の声を遮った。武蔵の唇に手を当て、小夜子が口を開いた。「ちょっと待って。アイス、溶けてない?タケゾーにも上げようと思ってね、アーシアには一つしか上げなかったのよ。偉いでしょ、小夜子。タケゾーのことも、キチンと考えてるんだから」テーブルのアイスに手を伸ばして、「おかしいわ、おかしいわよ。こんなの、絶...水たまりの中の青空~第二部~(百六十五)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百六十四)

    一礼をして立ち去ろうとする五平を「すまんが、ニ、三日会社を休むぞ」と、呼び止めた。「もちろん、そうなさってください。とに角、一日も早い回復を祈ってますよ」やっとその気になってくれたかと安堵の気持ちを覚える五平だが、その一方で、女のことで会社を休むなどまるで考えられない武蔵なのに、と不安の陰が過りもした。「そうだった、今日のパーティはどうした」思い出したように言う武蔵に対し「大丈夫です。あちらさんは家族の異変に対しては、我々の想像が出来ぬほどに寛大ですから。フィアンセだと告げたら、自分のことのように心配してくれましたから」と、安心してくれてばかりに笑顔を見せた。がその瞬間に、こんな時に笑顔というのは似つかわしくないかもと思った。しかし武蔵もまた、「そうか、安心した」とかすかに笑みのある表情を見せた。「さてと、小夜...水たまりの中の青空~第二部~(百六十四)

  • ボク、みつけたよ! (十八)

    すみませんねえ、しつこくて。ですが、ある意味、わたし自身を知るためには通らねばならぬエピソードなんですよね。それじゃ、[BlueNote]に戻りますか。地獄巡りについては、もうすこし待ってくださいな。演奏は素晴らしかったです。CDリリース記念コンサートだということでして、初めにピアノのソロ演奏です。軽快にリズム感あるメロディーが流れていきます。時折観客席にー日本の歌舞伎で言えば流し目ですかねーチラリチラリと顔を向けます。途端に、激しい拍手と歓声が上がりました。その後クラリネットが入り、シンガーの登場でした。最後に、万雷の拍手が起こり、ドラムとベースの登場です。やはり、ドラムがないジャズは「○○のないコーヒー」(なつかしいフレーズですね)と同様に、締まりのないものですよね。陶酔感漂う表情で、小気味よく叩かれるスネ...ボク、みつけたよ!(十八)

  • ボク、みつけたよ! (十七)

    [BlueNote]ご存じですか?レコードのレーベルなんですけどね。我々団塊世代にとっては、[BlueNote]という文字は絶大なる言葉なんです。高校時代なんですが、もう寄ると触るとその話ばかり(というのは大げさですかね)、結構花が咲いたもんですわ。マイルスだモンクだ、いやアートブレイキーだ、俺はコールマンだと。要するに、熱病の如くにのめり込んだジャズ音楽の聖地みたいなもんだったわけです。案外のところ、一部のマニアックな会話だったかもしれませんが。わたしのように格好付けたがりの、エセ愛好者も居たと思いますから。正直なところ、わたし、とりたててジャズが好きだということはありません。どころか「格好付けてんじねえよ!」という感じでした。ミーハー的感覚で、本場のジャズを本場である[BlueNote]でのライブ演奏を聴き...ボク、みつけたよ!(十七)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百六十三)

    「ああ、これですか。ご所望のアイスです。ドライアイスを入れさせてますから大丈夫だとは思います、、、」五平が言い終わらぬうちに、小夜子の手が伸びる。「ちょうだい、ちょうだい!」「小夜子、二階で食べてろ。五平と少し話があるから」「はーい!」小夜子の明るい返事が、五平を驚かせた。電話から聞こえてきた様子はただ事ではなかった。今にも後追いをするのではないか、そんな不安に刈り立たせるものがあった。「そんな不思議そうな顔をするな。空元気だよ、空元気だ」「でしょうね」「明日が心配だ。明日も元気なら明後日だ。とにかく気を紛らわすことだ。バタバタさせて、疲れさせて、何も考える時間を与えないようにしなくちゃな」「へえー」。にやつく五平に、「何だよ、その『へえー』は」と、少し声を強くした。「いや、感心したんです」と、顔の前で手を振る...水たまりの中の青空~第二部~(百六十三)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百六十二)

    負の時代を経ての今なのだが、小夜子には我慢ができない。晴れやかな輝かしい道を歩きたい小夜子にとって、あってはならぬ道程だ。たとえ今の生活を失っても、消し去りたい思いを抱く小夜子だ。アナスターシアだけでいい、アナスターシアとの出会いだけでいい。そう思い続けた小夜子だ。しかし今、そのアナスターシアが消えた。光り輝くはずだった未来が、消滅してしまった。なのに小夜子には、他人事のように思える。「かわいそうな人」と、小夜子が呟く。そこにいるのは、己ではない別の人間だ。日々を泣き明かすであろう人、将来に絶望するであろう人、それは決して小夜子ではなかった。「タケゾー」と呼んだ小夜子、快活に振舞う小夜子。別人格の如き小夜子、しかしいつまでその小夜子でいられるのか。小夜子から、正三への思いが一気に薄らいだ。思いかえしてみればあく...水たまりの中の青空~第二部~(百六十二)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百六十一)

    再度の連絡が入ったときには、もう夜になっていた。「えらいことです、武さん。小夜子さんの話は、ほんとのことでした。トーマスに頼んだところ、詳しい事情が分かりました」「なんだ、ほんとのこととは。なにを、興奮してるんだ」五平が武蔵を武さんと呼ぶのは、余程に慌てている時だ。「どうやら昨年あたりなんですがね、アなんたらという娘っ子が体調を崩していたらしいですわ。そこで小夜子さんに出会って、惚れると言ったら変ですが、ご執心となったらしいです」「なんで分かるんだ、そんなことが」女が女に惚れる、そんなことは考えたこともない武蔵だ。確かに、男が男に惚れるということは分かる。俠気のある男に出逢った経験のある武蔵であり、己自身もそうありたいと憧れの気持ちを抱いたこともある。そして今、その俠気のある男として、五平は勿論のこと会社の従業...水たまりの中の青空~第二部~(百六十一)

  • ボク、みつけたよ! (十六)

    すみません、横道にそれすぎました。海地獄です。なんで海地獄なんですかね。海に面しているわけでもないし、大きな池がありますが-ああひょっとして、この池が大きいから海に例えたのかな?きれいなコバルトブルーですしねえ。父の話によると、わたしが幼少のみぎりに連れられてきた折には「うみ、うみ」と大騒ぎしたらしいんです。全然覚えていないのですけれど。大はしゃぎしたのはいいのですが、突然に泣き出したというのです。金棒を持った鬼が池のそばに立っていて、それを見た途端に金縛りに遭ったように立ちすくんだらしいです。「おしっこを漏らして大変だった」なんて言われたのですが、ホントの事かどうかは定かではないですよ。そうか、「息子の怖がりはわたし譲りだったのか、そうかそうなんだ」。変なところで嬉しくなってしまいます。池からは少し離れていま...ボク、みつけたよ!(十六)

  • ボク、みつけたよ! (十五)

    「おいで、ベンガルトラだよ」。「檻の中だから大丈夫さ。寝ているよ」。何度声をかけても入ろうとはしないんです。「抱っこしてあげるから」。そう言ってもだめでした。みるみる涙を浮かべて、今にもこぼれそうになっていました。ならばと、人だかりのしているライオンの檻の前に行きました。けど、雌ライオンが寝転がっているだけなんですよね。抱え上げて見せたものの「ねてるねえ」です。猛々しさにはほど遠くて。裏手に回ってみると、驚いたことに雄ライオンが立っていたんです。頑丈な檻とガラスに遮られているとはいえ、間近で観るそれは、さすがに百獣の王たる威圧感がありましたよ。「お前は何者だ」。そう問われたような気がしました。じっとわたしを見つめているんです。威嚇の表情をするでもなく、さりとて媚びるような風でもなく、「我に何用だ」とばかりに、わ...ボク、みつけたよ!(十五)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百六十)

    「専務を呼んでくれ」電話の向こうが騒がしい。今朝、「小夜子を連れてくることにした。俺のお姫さまを、皆に紹介しようと思う」と、告げたばかりだ。「ウオー!社長の奥さまに会えるんだ」「床の間にずっと飾られたんでしょ?早く、お会いしたいわ!」と、皆口々に、待ち遠しさを言い合った。その小夜子が倒れたと聞かされて、全社員に動揺が走った。「熱を出してみえるとか」。「パーマとかの薬に酔われたんじゃ?」。果ては、「ひょっとして、お目出度かしら?」などと、言い出す者さえ居た。「おう、五平か。心配かけたな、もう大丈夫だ。相当なショックを受けたらしい。それでだ、早急に調べて欲しいことがある。ファッションモデルの、アナ何とかと言う名だ。消息を調べてくれ。正確な名前?女の子に聞け、知ってる筈だ。何でも、ロシア娘らしい。それから、今日は戻ら...水たまりの中の青空~第二部~(百六十)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百五十九)

    小夜子の変事を外出先で聞かされた武蔵は、その足で自宅へ戻った。武蔵の目に入った小夜子は、ソファに腰掛けてじっと一点を凝視している。背筋をピンと伸ばして、時に笑みを浮かべる。連絡を受けた小夜子は「取り乱しています、泣き叫んでいます」と、狂女だと言わんばかりだった。しかし眼前にいる小夜子は凜として、何ごともなかったかのように見える。「大丈夫だぞ、もう。話してみろ、何があった?」。小夜子の前に座り武蔵が声をかけた。武蔵が小夜子の意識の中に入った途端に「ヒクッヒクッ」としゃくり始めて「アーシアがね、アーシアがね、、、」と呟く。しかしその後が続かない。何度も「アーシアが」という名前が漏れるだけだった。「アーシアがどうした?」“やれやれ、またアーシアと来たか。何者だ、アーシアってのは。調べなくちゃいかんな、本格的に”少々辟...水たまりの中の青空~第二部~(百五十九)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百五十八)

    「さよこさん。あなた、さよこさんよね。大丈夫?」「行かなきゃ、行かなきゃ。アーシアが淋しがってるわ」突然立ち上がった小夜子は、夢遊病者のように、ふらふらと店を出ようとする。「ち、ちょっと。危ないわ、そんな状態じゃ。ああ、どうしょう」「ご家族に連絡を入れたら?」「ご家族と言われても、…。そうだわ!さっき貰ったメモに、会社の電話番号が。すぐかけてみるわ」「さよこさん!ちょっと待って!迎えに来てもらいますからね」外に出ようとする小夜子を、松子が必死の力で押し止めた。「そうなんです、心ここにあらず、といった感じなんです。すぐ来て頂けますか?はい、看板は出しております。電柱に矢印がありますから、それを見落とさないよう、お願いします。それじゃ、ごめんくださいませ」受話器を置くと、すぐさま長椅子で呆然としている小夜子の隣に座...水たまりの中の青空~第二部~(百五十八)

  • ボク、みつけたよ! (十四)

    坊主地獄は、あっという間に回り終えました。ご存じだと思いますが、泥がボコボコと盛り上がって、さながら坊主頭のごとくに見えることからの命名でした。国道500号線を走り、いよいよ「べっぷ地獄めぐり]へ向かいます。時間は9時半を回ったところですから、駐車場に余裕はあると思うのですが。と心配する暇もなく、到着です。5分、もかかりましたでしょうか。上り坂となっていますが、係員のおじさんが手招きしています。車に貼ってある身障者マークを見つけてくれて、誘導してくれました。ありがとさん、です。海・山・鬼石坊主地獄の三ヶ所が隣り合っていまして、すぐ傍らにかまど地獄があります。そして少し歩きましたが、白池地獄とこれまた隣り合うように鬼山地獄です。&、そう、アンドです。後述しますが、大変なことになった、血の池地獄と竜巻地獄の2ヶ所で...ボク、みつけたよ!(十四)

  • ボク、みつけたよ! (十三)

    七時前に、コンビニに立ち寄ることにしました。眠くてたまらんのです。普段ですと、夜の十時台にベッドに入ります。遅くなっても、十一時を少し過ぎたぐらいですかね。まあ、休みの前日となると、十二時を回ることがありますが。で翌朝の起床は、八時半ぐらいでしょうか。時には九時近くになることもありますけどね。ということは、十時間近くの睡眠となります。眠りが浅いのでしょうかね、そのくらいの時間でなければ、仕事に支障が出るんです。午後からの仕事で四時間なんですが、もうヘトヘトです。年齢もなんですが、心臓が常人の半分程度しか機能していませんから。お医者さんに言われているんです。「無理をしないこと、これが大前提ですから。だるくなったり眠気に襲われたりしたら、すぐに休むこと」。耳にたこができるほど聞かされていることです。なのに、この大冒...ボク、みつけたよ!(十三)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百五十六)

    武蔵の元に、百貨店からの手紙が届いた。普段ならば気にもとめずに武蔵に渡すのだが、武蔵の名前と共に、小夜子様と宛名書きしてある。わざわざ連名にしていることから、これは自分宛だと気付いて、すぐに開封した。季節の挨拶と共に、来月にファッションショーを開くとあった。最上席を用意したので、是非にも小夜子に来て欲しいとある。デザイナーとして、小夜子にとって運命の扉を開けてくれたマッケンジーの名があった。しかしモデルたちの中にアナスターシアの名前がない。怪訝に思いつつも、「御手洗小夜子様」という後付けの宛名が気になった。差出人が企画部門・坂田とそして外商部門・高井の名前がある。“タケゾーの仕業ね、まったくもう”。眉間にしわを寄せつつも、悪い気はしない。明日の午後には、アメリカ将校のガーデンパーティに出席することになっている。...水たまりの中の青空~第二部~(百五十六)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百五十五)

    「今夜の寄り合いは、わし抜きかい?わしに聞かせたくないことでもあるのかい?」と、茂作が現れた。意地悪げに、ギロリと正左ヱ門を睨みつける。「いや別に、そんなことは」「茂作。あんたは声をかけても、いっつも出て来んからよ」「ほおじゃ、ほおじゃ」「今夜はどういう風の吹き回しかい?」「ふん。お邪魔だったかいの?わしは」「茂作、いいかげんにせんか!」と、本家の繁蔵が怒鳴りつけた。普段ならば縮こまる茂作だが、今は恐いもの知らずだ。「本家じゃからて、そう怒鳴りなさんな。わしには聞かせとうない話が、佐伯ご本家からあったんじゃろ?おおかた、正三お坊ちゃんの嫁取りじゃろうが」どこで聞いたのかと、顔色を変える正左ヱ門だ。ここにいる全てが、今の今まで知らずにいたのだ。佐伯本家の中でも、使用人は勿論のこと家人すら知らない。母親のタカだけだ...水たまりの中の青空~第二部~(百五十五)

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