chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
フォロー
住所
岐阜市
出身
伊万里市
ブログ村参加

2014/10/10

arrow_drop_down
  • 水たまりの中の青空 (光子の言い分:四)

    仲居たちの間では評判が悪く、三水閣の女将もまた苦々しく思っている。しかしこの旅館の主には、金を稼ぐ雌鶏が大事だ。傍若無人に振る舞う光子に対し、大物然とした度量の大きさを示したがる客が少なからずいた。地位の高い層が多く、そんな中で一人、光子の振る舞いに興味を覚えた人物がいた。風変わりな女たちを指名してくる、ある大物政治家だった。三十路を過ぎた里江が、仲居頭として腕を振るっていられるのも、このKという政治家に可愛がられたからだった。「フェミニストとして世に知られた、えら~い政治家さんなんですよ」と、里江に教えられた。「女性を大事にしない国家は、必ず衰退していく」。「考えてもみなさい。世の男どもにはすべからく、おっ母さんがいる」。「みな、おっ母さんのお腹を痛めてこの世に出てきたんだ」。「十月十日という長い月日で育んで...水たまりの中の青空(光子の言い分:四)

  • ポエム・ポエム・ポエム =番外編= ~佳き女よ~ (よきひとよ)

    佳き女よ雨の降る日に花を愛でる女よ佳き女よ雪の積る日に花を労わる女よ佳き女よ恋獄の炎に焼かれる吾を抱かん佳き女よその赤き唇もて吾を誘わん佳き女よその乳房もて吾を惑わさん佳き女よかぐわしき香にて吾を狂わさん佳き女よいつの日も吾と共に戯れん佳き女よ命果つるまで吾と共に歩まん佳き女よいつまでも吾を愛でん(背景と解説)この作品、セクハラ、になるでしょうか。女性蔑視、と感じられるでしょうか。基本的に、女性崇拝者だと自認するわたしなんですが。以前に所属していた同人会において、発表した作品のすべて(といっても良いと思いますが)で、その女性蔑視的傾向を感じると講評されました。どの部分ですか?と反論しても良かったのですが、やめました。おそらくは不毛の議論に入ってしまう気がしましたもので。感性というものは個人個人で違うものであり、...ポエム・ポエム・ポエム=番外編=~佳き女よ~(よきひとよ)

  • 水たまりの中の青空 (光子の言い分:三)

    ではそこでのわたくし、「人のこころを失ってしまったわたくしでございます。まさに、武蔵さまが仰った地獄を見ました」と申し上げた、わたくしのことでございます。好いた殿方に裏切られた、それだけでも女にとっては十分に地獄ではございます。ですが、まだ入り口に立っただけのことでございました。先ほど申し上げましたが、料理旅館という体をとってはおりますが、その実態は売春宿に他なりません。まあ、高級という冠がつくやもしれませんが。さかのぼりますれば、江戸の世において旅籠には飯盛り女という者がおりましたこと、殆どの方はお聞き及びと存じます。その通りでございます。ただ、一応、仲居の方にも選択権があるとか。どうしても気に入らぬ客ならば断っても良いとのこと。但しその場合には、そのお客さまの一晩のお遊び代を負担せねばならぬ決まりだそうで。...水たまりの中の青空(光子の言い分:三)

  • 水たまりの中の青空 (光子の言い分:二)

    それでは三郎さんとの逃避行生活をお話しいたしましょうか。汽車内でのことは、ほとんどが眠りについておりましたのでさほどに申し上げることはございません。ああそうでございますね、三郎さんがどこの駅でしたでしょうか、お弁当を買い求めてくださいました。冷めた幕の内弁当でございますが、旅館での賄いのようにはいきませんですが、結構美味しく食べられましたわ。色々と面白いお話を交えながらの食事でございまして、久しぶりに心の底から楽しめたお食事でございました。その後眠くなったと、わたくしの膝を枕にしようと奮闘される三郎さんでしたが、汽車の席は座るものでございます。諦められました。ですが、清二の折とは違い、わたくしの気持ちの中には甘えさせてあげたいとという思いが溢れておりました。汽車の中でのこと、他にでございますか。取り立ててござい...水たまりの中の青空(光子の言い分:二)

  • 水たまりの中の青空 (光子の言い分:一)

    あらあら、まあ。ずいぶんな言われようですこと。でもまあ、それは、女の勲章とでも思うことにいたしましょうか。けれども昔々の大昔ですのに、そんなにお気になりますの?ならば、わたくしのことですから、わたくし自身がおしゃべりしてもよろしいでしょうに。確かに、わたくしという、光子という女を創り上げてくださいましたお方のことばでしたら、確かなことで間違いはないと思います。でもでも、やはり殿方でいらっしゃいますから、女の細かなこと――こころのひだといったものはお分かりにならないでしょうから。「嘘は吐かないように」ですか?それはもちろんですわ。「自分をかばうな」ですか?そんなにお疑いなら、もしも嘘を言ったり自分に都合の良いことだけしか言わなかった折には、その旨仰ってくださいましな。それでは、わたくしからお話を。大阪と言いまして...水たまりの中の青空(光子の言い分:一)

  • よもやま話に、花! (自慢話は……)

    すこし時期が戻るのですが。11月のいつだったですかね?ちょっと覚えていませんが。以前にお話ししたと思うのですが、騒音問題のことです。何年前に発生しましたかね、3.4年かな?もっとになるかな。いやあ、非道かったですねえ、ほんとに。10m、いやもうちょっと離れているかな。こちら側まで聞こえるほどの音だったらしいです。「らしいです」というのは、わたしの留守時のことなんで。「あれじゃあ、驚くは」と、聞かされました。いつもは夜間なのですが、ある日、昼日中にあったらしいんです。とにかくですね、なんどか警察を呼びましてね、わたしも立ち会うのですが、相手がドアを開けない限り警察官といえども、勝手に踏み込むわけにはいかないみたいで。それにしても、もうちょっと大きくドアを叩かないと、相手には聞こえない筈なんですがね。まあ夜間だとい...よもやま話に、花!(自慢話は……)

  • ポエム・ポエム・ポエム =番外編= ~なんで???~

    わーい、自由だーい!どんなもんだい!たっぷりと、時間があるぞお!どんなもんだい!お金だって、ほらっ、この通り!夏休み中、しっかりと、バイトしたもんね!だれかあ、アソボウよお!東京に、行った新幹線で、行った修学旅行以来だだーれも、知らないだーれも、話しかけないだーれも、見向きもしない足が、すくんじゃった体が、金縛り状態だ頭が、ビビッてた檻の中から、周りを見回してた田舎もんが!そんな声が聞こえてきた誰も口を開いていない、声で聞いたんじゃないよーだ。お前だって、あんただって、田舎もんだったろうがあ!って、言い返してやった。けど、なーんもない。つまんねえの!(背景と解説)「つまんねえの!」このひと言に尽きます。そうそう、気がつかれましたか?句点(。)のない箇所があるでしょ?あれ、忘れたんじゃないですよ。読点(、)だけ打...ポエム・ポエム・ポエム=番外編=~なんで???~

  • 水たまりの中の青空 (光子の駆け落ち:三)

    その日の昼過ぎ、あの三郎が顔を腫れ上がらせて、明水館に転がり込んできた。背広の袖口が破れ、ズボンには泥がこびりついている。泥の乾き具合から見て、まだすこしの時間しか経っていないことが分かる。騒然とした中、光子の指示の元に昨夜三郎が泊まった部屋に運び込まれた。すぐに医者を、と光子の指示かあるものと思っていたが、聞こえたのは驚くものだった。場に居合わせた二人の仲居に対して「他には漏らさぬように」と、厳命してきたのだ。「お客さまのたっての希望です」ということばも付け加えられた。一時間ほど後に、上気した表情の光子が番頭に対して「近江さまをお医者さまに診てもらうことになりましたから」と言い残して、三郎と共に出かけていった。「行ってらっしゃいませ」と声をかけつつも、何かしら違和感のようなものを感じた。旅館に転がり込んできた...水たまりの中の青空(光子の駆け落ち:三)

  • 水たまりの中の青空 (光子の駆け落ち:二)

    日一日と、光子への周りの視線が変わってきた。子を失った母親という憐憫の視線が次第に、子を産まぬ女という蔑視さえ感じるようになった。そもそもが清子を産んだ後に、二子、三子を産もうとする気配のないことに疑念が持たれていた。そして清子の死という事態を迎えて、導火線に火が付いた。光子の年齢からしてためらう必要など何もないはずなのだから、もうそろそろおめでたの話が出ても……と、口の端にのりはじめた。折に触れてかばってくれた珠恵からも、言葉には出さないが「もうそろそろ」という声が聞こえてくる気がしている光子だった。合原家という家系を考えたとき、光子は言わずもがなで清二もまた妾の息子ということで他所者として扱われている。二人の間にまた娘が産まれたとして、女将を継ぐだろう事は想像に難くない。しかしそれが果たしてその娘に良いこと...水たまりの中の青空(光子の駆け落ち:二)

  • 水たまりの中の青空 (光子の駆け落ち:一)

    清子の死から一年ほどが経ち、明水館を覆っていたどんよりとした黒雲が取れかかった頃、関西から客が来た。ビジネス関係の客は来ても、観光で訪れる人はいない。宿帳に、京都市近江三郎と書かれた折には、皆が皆、おや?と思った。案内をする仲居には、ビジネス目的とも思えず無論観光目的とも思えない。不思議な感覚に囚われながら部屋に案内した。「素泊まりで結構ですから。部屋も庭に面しているとか海の眺望が良いとか、そんな贅沢は言いません」。安い部屋で良いからと力説したが、ならば明水館ではなくもっと格下の旅館でいいのではないか、そんなことも仲居たちの間で交わされることばだった。挨拶に来た光子に対し「あなたが若女将ですか。お噂は伺っております。申し遅れました。ぼくは芦田権左衛門の親戚筋の者です。母方の繋がりなので、おじさん、いえ大おじの権...水たまりの中の青空(光子の駆け落ち:一)

  • よもやま話に、花! (よもやよもやの、長編に?)

    [水たまりの中の青空]が第2部に入るということで、すこし冷却期間を持とうかなと考えました。旅館の女将である光子に関して、わたし自身が惚れ込んでしまったわけです。これは思いもかけぬ事でした。小夜子という女性に惚れ込んでいながら、他の女性に心が動かされるとは、実生活の自分を見てしまったようで釈然としません。本編の中で、「人のこころを失ってしまったわたくしでございます。まさに、武蔵さまが仰った地獄を見ました」なんて言うものですから、一体全体どんな地獄を見たというのか、と気になり始めました。原案的なものをと思っていましたので、本音を言えば、2回程度長くても3回ぐらいのものにするつもりでした。先ずは、従業員やら同業の他旅館関係者に、思いっきり光子の悪口を言わせる。その上で、「それの何が悪いの!」とばかりに、光子の言い分を...よもやま話に、花!(よもやよもやの、長編に?)

  • 水たまりの中の青空 (周囲の目:三)

    光子が若女将修行に打ち込めば打ち込むほどに、従業員たちの反発はひどくなった。明水館の仲居ともなると、一応は名の通った商家の娘やら出自のはっきりとした娘たちが多く、世間的にも庶民という立場ながらも格の高さを誇っていた。それがどこの馬の骨とも分からぬどこぞの村からやってきた小娘に、どう紛れ込んだのかと訝る仲居たちを尻目に、あれよあれよと若女将の地位にまで上り詰めたのだ。突然に現れた跡取り息子の嫁という立場ではあるものの、清二が惚れ込んだ娘だとされているけれども「案外のところ、光子がたぶらかしたんじゃないの」という陰口が囁かれているのだ。ここぞとばかりに反発がひどくなった。そんな中、ただひとり光子をかばう者がいた。「大女将、どうされたんですか。若女将を追い出す良い機会ですよ。なんでしたらわたしが音頭を取って、仲居たち...水たまりの中の青空(周囲の目:三)

  • ポエム・ポエム・ポエム =番外編= ~なんで??~

    とうとう来てくれなかった……しょんぼり帰るぼくにいたずら?…神様の……セント=バレンタイン=デー零時を過ぎて帰ると、ドアの前にリボン付のプレゼント二人して食べるつもりだったのだろうかチョコと、フライドチキンふたつ置手紙のないプレゼント“Buwa-kuA!”もうひとりのoreが言う。約束、してたわけじゃないもんナ。oreの勝手な思い込み。oreの超能力の、効果なし!フォースが不足してんのかな?今度逢ったら、ツン!って、してやろう。今度逢ったら、ソッコー、キスしてやろう。今度逢ったら、セカチュー、してやろう。今度逢ったら……今度逢ったら…………(背景と解説)いやあ、女々しさ満載ですわ。弱さを前面に出してますなあ。「今度逢ったら、」って、何回繰り返しても繰り返したりない。ねえ、逢えなかったんですよ、というより約束がな...ポエム・ポエム・ポエム=番外編=~なんで??~

  • 水たまりの中の青空 (周囲の目:二)

    無事出産を終えて明水館に戻ったとき、大女将の珠恵を始め、番頭に板長そして仲居頭の豊子たちの出迎えを受けた。然も、玄関口でだ。初めてのことだった、これほどの人に笑顔で出迎えられるのは。思わず後ずさりをした。娘だけを取り上げられて、光子はそのまま叩き出されるのではないか、そんな思いにとらえられていた。「お帰りなさい、若女将!」。「お帰り。さあさあ早く入りなさい、奥の部屋で休むと良いわ」。珠恵の優しい言葉は心底のもので、温かい慈愛が感じられるものだった。そしてそのことばで、やっと光子はこの合原家の一員となったことを実感した。それは突然のことだった。珠恵がお使いから帰ったところを見た清子が「おばあちゃま、おかえりなさい!」と、通りの向かい側に飛び出した。急ブレーキ音とともに、ドン!という音が響いた。珠恵がオート三輪の接...水たまりの中の青空(周囲の目:二)

  • 水たまりの中の青空 (周囲の目:一)

    「光子さん、あなた、何様のつもり?若女将と周りから言われて、いい気になってませんか!いいこと、若女将というのは、雑用係みたいなものですよ。仲居たちの手が足りないところを補っても、頼まれてからでは遅いんです。気配りが足りませんよ、あなたは。豊子に聞きましたよ、『そんなことをするために、若女将になったんじゃありません』って、ご不浄の掃除を嫌ったんですって?」。「ご不浄の掃除はね、最も大切な仕事の一つです。ここで気分良く滞在して頂けるかどうか、それが決まると言っても過言ではありませんからね」と、きつい言葉で詰られた。「女将さん、違います。後でやりますって言ったんです。清二さんがお腹が痛いと言いますので、お薬が切れていましたし、ちよっと買い物に行くつもりで、、、」「口答えはやめて!清二に聞いたら、それほどでもなかったと...水たまりの中の青空(周囲の目:一)

  • よもやま話に、花! お正月のこと

    令和2年12月31日。予定では、豊川稲荷の参詣をして、伊良湖あたりのホテルに一泊する予定でした。翌日の元旦には、[日出の石門・岸の石門]あたりで、初日の出を観ることを考えていたんですがえ。新型コロナウィルス騒ぎで、令和2年の旅行から中止の連発です。令和2年3月京都御所ツアー(高御座及び御帳台の見学)の中止は、ほんと痛かったですわ。もうこれで、永遠に、テレビ等ではなく実際に観覧できるチャンスはなくなったと思いますよ。残念、残念、無念なり!!!です。2014年12月29日、山陰:出雲大社参詣からスタートした、年末年始の長期間旅行も、2019年~2020年にかけての、京阪神:四国旅行で終えてしまった。そして令和3年(2021年)元旦、巣ごもり正月スタートです。全国各地、もちろん岐阜においても猛威を振るっている[COV...よもやま話に、花!お正月のこと

  • 水たまりの中の青空 (大女将の引退:一)

    十年近く経ったたとき、何の前触れもなく栄三が倒れた。脳卒中だった。すぐに往診で医師が駆けつけたけれども、自宅での治療は無理だと病院に搬送された。「暫く前に頭が痛いと仰ってました」。「めまいがすると言われていました」。「手足がしびれると聞きました」。一つ一つの症状が軽くすぐに収まってしまったが為に、珠恵に伝えられることはなかった。「若女将の教育がお忙しそうでしたので」と、異口同音に皆が言った。「それに旦那さんは冗談がお好きで、いっつもわたしたちを笑わせてくださいましたので……」と、消え入るような声もあった。そのことが同業者の間に知られると、長年の不平不満がついに爆発したのだと周囲からは受け止められた。「そうね、わたしのせいですね。わたしが夫をないがしろろにしてきたせいですね」。憔悴しきった顔でこぼす姿は、大女将の...水たまりの中の青空(大女将の引退:一)

  • ポエム・ポエム・ポエム =番外編= ~なんで?~

    ちょっとよそ見をしていたら、みんな離れていった……みんなちがう道を、歩いていっちゃった……たくさんの、想い出がのこった。だけどそれを、消し去ろうとするboku。ほゝをつたう、水滴……涙じゃないモン!ぬぐっても、拭っても、つたう水……ひとりぼっちの部屋で灯りを消して……今日だけは今夜だけは許してください涙が止まりません。拭っても拭っても溢れ出てきます。勘弁してくださいもう許してください。今夜は明るい月です。でも歪んで見えます、雨降りのように。かべぎわに腰をおろして、膝を抱えてみます。少しずつですが、冷えた体が温まります。ついでに、心も温まってくるようです。でもやっぱり、bokuのとなりにいて欲しいんです。(背景と解説)この作品は、離婚時に創ったものです。よくよく考えたら、若い頃ーそう!十代にしっかりと味わったはず...ポエム・ポエム・ポエム=番外編=~なんで?~

  • 水たまりの中の青空 (名水館の女将、珠恵)

    光子にとって、寝耳に水のことだった。事前に告げられたことではなかった。えっ?という表情――口をぽかんと開けて、目を大きく見開き――で、思わず珠恵を見た。(そんな!清二なんかと夫婦だなんて、絶対にいやだ。こんな男、こんな卑劣な男となんて、絶対にいや)。しかし、若女将にするという珠恵の言葉が、グルグルと光子の仲で渦巻いている。夢にも思わなかった「若女将」という言葉が、こんなにも魅力的なものだとは、今の今まで思いもしなかった。と同時に、大きな不安が襲ってきた。(こんな自分で務まるのか)。しかしそんな思いはすぐに消えた。(そんなことじゃない。誰が付いてくるの?)。(みんなに馬鹿にされている今の自分に、一体誰が……)。(女将さんの後ろ盾があるわ)。(表面だってはそうでしょうけど、裏に回れば馬鹿にするに決まってる)。(あた...水たまりの中の青空(名水館の女将、珠恵)

  • 水たまりの中の青空 (若女将誕生!)

    次第に光子のお腹が目立ち始め、仲居の仕事をさせるわけには行かなくなった。常連客から「おめでたなの?いいわねえ」と祝福の言葉がかけられるようになった。中には「少し早いけど、お祝いの品代わりに」と、多額の心付けを手渡す者が出てきた。少額ならば「ありがとうございます」と受け取れるのだが、封筒に入った、然もその膨らみ方は尋常ではない。「とんでもございません」と辞退をすると、光子にではなく女将の珠恵に渡すようになった。そして「旦那さんって、どんな人なの?」という言葉かけがあり、珠恵も答えに窮してしまう。「次回おいでになった折にでも」とごまかしてはみるものの、そろそろ決断の時が来たと考える珠恵だった。実のところ、心は決まっていた。ただどのようにそれを告げれば良いのか、いやそうではなく、誰に告げれば良いのかで迷いがあった。当...水たまりの中の青空(若女将誕生!)

  • 水たまりの中の青空 (冷たい視線)

    栄三から珠恵に告げられたことばは、清二の純な想いなどまるで図られてれない、光子に対する温情のかけらもない冷酷なものだった。「光子の色仕掛けに清二がはまってしまった」。名水館の跡取り息子である清二に取り入ろうとした光子の策略だ、と告げたのだ。そんな娘ではない、と珠恵には思えた。しかし断じる栄三に対して反論して良いものかと考えてしまう。仮にも夫なのだ、栄三は。そして、清二は行く行くは跡取り息子となる。単なる一従業員のことを慮る必要はなかろう、そうも考える珠恵だった。しかし何かが引っかかる。このまま捨て去るには惜しい娘だ、そんな思いが消えない。いっそ堕ろさせようか、そしてなかったことにしてしまおうか……。逡巡する珠恵に対して、栄三がとんでもない提案をした。「どうだろう、清二の嫁として光子を迎えられないだろうか」。栄三...水たまりの中の青空(冷たい視線)

  • 水たまりの中の青空 (清二の告白)

    年に一度の、従業員に対する評価を行う日が来た。昨年までは珠恵と番頭、そして板長という三人だったが、番頭からの強い進言もあり、今年から栄三の席が用意された。「先代女将には口を出させるなと言われていますしねえ」と迷う珠恵に対して板長の進言が加わり、ならばと認めた。栄三にしてみれば(今さらですか)という思いを抱えつつも、仲居たちの愚痴話を聞かせて欲しいという珠恵のことばに、それならばと同席をした。あくまで参考意見として聞くのですからと念を押されてのことではあったが、いざその場になると栄三の熱弁は止まらなかった。仲居たちの不満を珠恵に告げ、板長には清二の処遇について頼み込み、果ては番頭に対してまで己の裁量権を少しは認めてくれと談判した。口出しせぬ事を条件としたはずなのに、あまりのことに「この場から離れて」と、珠恵が一喝...水たまりの中の青空(清二の告白)

  • ひさびさの、四方山話でもひとつ。(売り込み?)

    久方ぶりに、四方山話でもしましょうか。読み方は、ご存じでしょうけれども「よもやま」ですよね。使い方としては、「よもやま話に花が咲く」と言った風に、いろんな話をしたときなどに使われています。でもね、ちょっとここで考えてみたいことがあるんですよ。当て字でも何でなく、四方山なんですが、四方の山って、山の話が語源なんでしょうか。気になって辞書を引いてみました。そうしたら、「四方八方」が「よもやも」と読まれていたことから、少しなまって「よもやま」になったと……。まあねえ、確かに、山の話ではないので、四方八方での噂話が集まってきた人たちによって広まり……、というところでしょうか。もっと詳しい、もしくは正確な事柄をご存じの方がおられたら、教えて頂けませんかねえ。専門知識に乏しいわたしです、分からないことはすぐにインターネット...ひさびさの、四方山話でもひとつ。(売り込み?)

  • 水たまりの中の青空 (清二という男)

    京都で修行をしていたという清二の触れ込みが、実は真っ赤な嘘だったことが明らかになったのは、当人が厨房に立ったときだった。「何ができる?」と板長に問われた折に、キョトンとした表情を見せた。問われるままに話し始めたことは、そのまま大女将の知ることとなった。「想像はしていました。料亭の名前を聞いても、はぐらかされましたからねえ」。「仕込みますか」という板長に対し「その必要はありません。厨房については、すべてあなたにお任せしていますから」と、傲然と言い放った。(かわいそうなものだ、あの子も)。しかしだからといって、今さら板前修業をさせるわけにはいかない。何の基礎もない人間に忙しい時間をつぶしてまでは無理だ。必然、板長の時間を割かねばならないのだ。(嘘を吐いた親が悪い。まあ、女将の代替わりを待つしかないだろう)。父親であ...水たまりの中の青空(清二という男)

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、敏ちゃんさんをフォローしませんか?

ハンドル名
敏ちゃんさん
ブログタイトル
敏洋 ’s 昭和の恋物語り
フォロー
敏洋  ’s 昭和の恋物語り

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用