水たまりの中の青空 (光子の言い分:四)
仲居たちの間では評判が悪く、三水閣の女将もまた苦々しく思っている。しかしこの旅館の主には、金を稼ぐ雌鶏が大事だ。傍若無人に振る舞う光子に対し、大物然とした度量の大きさを示したがる客が少なからずいた。地位の高い層が多く、そんな中で一人、光子の振る舞いに興味を覚えた人物がいた。風変わりな女たちを指名してくる、ある大物政治家だった。三十路を過ぎた里江が、仲居頭として腕を振るっていられるのも、このKという政治家に可愛がられたからだった。「フェミニストとして世に知られた、えら~い政治家さんなんですよ」と、里江に教えられた。「女性を大事にしない国家は、必ず衰退していく」。「考えてもみなさい。世の男どもにはすべからく、おっ母さんがいる」。「みな、おっ母さんのお腹を痛めてこの世に出てきたんだ」。「十月十日という長い月日で育んで...水たまりの中の青空(光子の言い分:四)
2021/05/30 08:00