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  • 2025年5-6月展覧会拾遺

    ■すみだ北斎美術館企画展『北斎×プロデューサーズ蔦屋重三郎から現代まで』(2025年3月18日〜5月25日)大河ドラマ『べらぼう』人気を当て込んでか、今年は浮世絵や江戸文化をテーマにした展覧会が多い。私は、もともと浮世絵にあまり関心はないのだが、今年だけはぜんぶ見てやろう!とひそかに決めている。本展は、江戸のメディア王と評され、北斎の才能に早くから目をつけていた蔦屋重三郎をはじめ、浮世絵師と版元の関係を取り上げる。蔦屋重三郎には、初代没後に婿養子になって店を継いだ二代目がいたことを詳しく知る。北斎とのかかわりは二代目のほうが強いそうだ。ドラマでおなじみ、鶴屋、西村屋も詳しく紹介されていた。■東京都立中央図書館企画展示『情報、江戸を駆ける!蔦屋重三郎が生きた時代の出版文化』(2025年1月24日~5月25日...2025年5-6月展覧会拾遺

  • 歳を重ねて見えるもの/映画・さらば、わが愛 覇王別姫

    〇陳凱歌監督『さらば、わが愛/覇王別姫』(Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下)映画『国宝』ブームの影響か否か知らないが、『さらば、わが愛/覇王別姫』の再上映があると聞いて、慌ててチケットを取って見て来た。私は1994年の日本初上映、2007年の特集上映「中国映画の全貌」でも見ているので三度目になる。同じ映画を三度も劇場で見たことは、この作品しかない。冒頭、無人の劇場(体育館みたいな無機質な空間)に、項羽と虞姫の扮装をした二人が稽古のために入ってくる。照明係の老人(たぶん)の声が「四人組がいなくなって、ずいぶんよくなった」と語りかけ、これが文化大革命終結後の場面であることを伝える。それから、物語は過去へ。1924年の北京、女郎の私生児である小豆子(字幕では小豆)は、母親によって京劇の劇団に預けられる。実質...歳を重ねて見えるもの/映画・さらば、わが愛覇王別姫

  • 在地に生きた人々の記録/幕末社会(須田努)

    〇須田努『幕末社会』(岩波新書)岩波書店2022.1幕末、すなわち西暦でいうと19世紀前半の日本社会について、まず前提となる江戸時代の社会枠組みを確認したのち、「天保期(1830-1844)」「弘化から安政期(1845-1860)」「万延から文久期(1860-1864)」「元治から慶応期(1864-1868)」の順に語っていく。このように時代を小さく刻んだ解説は初めてで、ちょっと面白かった。江戸時代、治者となった武士は平和をつくり出し、百姓の生命と家の存続を保障する役割を担った(仁政)。また武士は武力を独占したが、これを行使するのではなく畏怖させることで民衆を支配した(武威)。この考え方は元禄期頃から浄瑠璃や歌舞伎を通じて民衆に共有され、社会の安定を生んでいたが、幕末には揺らぎ始める。享保期(18世紀前半...在地に生きた人々の記録/幕末社会(須田努)

  • 「推し」は天平写経と元代墨蹟/写経と墨蹟(根津美術館)

    〇根津美術館企画展『はじめての古美術鑑賞-写経と墨蹟-』(2025年5月31日~7月6日)「はじめての古美術鑑賞」シリーズ。2019年の「絵画のテーマ」以来の開催という認識で合っているだろうか?それにしても「写経と墨蹟」って渋すぎるだろ!と思いながら見に行った。開催趣旨では「確かに、その内容は決して易しくありません」と認めつつ、「一点一点を丁寧にみてゆくと、どこかに『推せる』ポイントが見つかるのではないでしょうか」と述べる。展示室の前半は写経。冒頭は、我が国最古の大般若経『和銅経』で「写経は1行17文字が基本です」という基本情報から教えてくれる。『和銅経』が標準的な料紙を使用しているのに対して、次の『神亀経(大般若経)』は、通常の3~4紙に相当する「長麻紙」を用いている。へえ~知らなかった。『聖武天皇勅願...「推し」は天平写経と元代墨蹟/写経と墨蹟(根津美術館)

  • 能公演を初鑑賞/大江山ほか(宝生能楽堂)

    〇宝生能楽堂六月宝生会定期公演・午後の部(6月21日、15:30~)3月に野村萬斎さんの「MANSAIボレロ」を見て以来、能狂言への関心が高まっている。さらに先日、サントリー美術館の展覧会『酒呑童子ビギンズ』を見て、「酒呑童子絵巻」と影響関係のある演目「大江山」を、ぜひ見てみたいと思うようになった。試しに検索してみたら、この宝生会定期公演で「大江山」が掛かることを発見した。迷った末に前日の金曜日、オンラインでチケットを取って、行ってみることにした。私の母は狂言が好きで、その影響で私も中学生~大学生くらいまで、ときどき狂言を見に行っていた。しかし能はほとんど見たことがない。当日まで「人生初」だと思っていたが、ブログを検索したら、2008年に奈良の興福寺で薪能を見ていた。しかしこれは旅先のついでで、能公演その...能公演を初鑑賞/大江山ほか(宝生能楽堂)

  • 恋の手本となりにけり/映画・国宝

    〇李双日監督『国宝』(TOHOシネマズ日本橋)原作は全く知らなかったが、出演者もいいし、題材にも興味があるので、公開されたら必ず見に行こうと決めていた。そして比較的早めに見に行ったのだが、作品の重量に圧倒されて、なかなか感想をまとめられなかった。物語の始まりは1964年(これはネットで調べた)、上方の歌舞伎役者の花井半二郎は、興行先の長崎で、地域の顔役・立花組の宴会に顔を出し、座興の舞台に立った女形の少年に魅了される。少年・喜久雄は立花組の組長の息子だった。しかし、その日、武装した敵対勢力の襲撃を受けて喜久雄の父親は命を落とす。天涯孤独となった喜久雄は父親の仇を討とうとするが失敗。半二郎は喜久雄を引き取り、部屋子として育てることに決める。半二郎には喜久雄と同い年の息子・俊介がいた。二人は競い合いながら成長...恋の手本となりにけり/映画・国宝

  • 大横川岸遊歩道のサクラ

    先週は職場がイベントウイークで、落ち着いた時間が全く取れなかった。年寄りをあまり働かせないでもらいたい。。。さて、私のマンションの窓の下を通る大横川岸の遊歩道は、護岸工事のため、昨年夏頃からずっと通行止めだった。サクラの季節に一時的に立ち入りが許可されたが、サクラが終わると、また通行止めになっていた。それが、最近ようやく完全解除されたようである。嬉しかったのは、遊歩道の入口に、新たなサクラ(?)が植樹されたこと。奥に続くのが、ピンク色のソメイヨシノの桜並木であるのに対して、この位置には、真っ白な花をつける別種の桜の木があったのだ。品種が受け継がれているかは、来春にならないと分からない。受け継がれているといいな。かつての大木とは比べようもない若木だが、育っていくのを見守りたい。なお、川面には相変わらず工事船...大横川岸遊歩道のサクラ

  • 不昧公との縁/花ひらく茶と庭園文化(荏原畠山美術館)

    〇荏原畠山美術館開館記念展III(急)『花ひらく茶と庭園文化-即翁と、二万坪松平不昧夢の茶苑』(2025年4月12日~6月15日)リニューアル開館記念展の第3部は、畠山即翁をはじめ、近代茶人の憧れの存在だった大名茶人・松平不昧の茶の湯と庭園づくりに着目する。第1展示室、この日は曇り空で室内が暗かったので、天井の金の波模様が目立って美しかった。『古瀬戸肩衝茶入(銘:円乗坊)』は、不昧にも評価された大名物。円筒形の無骨な姿だが、本能寺の変で被災したという由緒に心惹かれる。即翁の茶道具コレクションは、全体にシンプルで自然志向で好き。特に模様も色変わりもない『備前八角水差』や無文で筒形の『東陽坊釜』(辻与次郎作)も気に入った。不昧公遺愛の品だという『唐物籐組茶籠』は、女性持ちの巾着袋くらいの小さなバスケットで、ち...不昧公との縁/花ひらく茶と庭園文化(荏原畠山美術館)

  • 暴力と差別の由来/イスラエルについて知っておきたい30のこと(早尾貴紀)

    〇早尾貴紀『イスラエルについて知っておきたい30のこと』平凡社2025.2パレスチナ・ガザ地区の状況は、断片的なニュースから推測しても本当に惨いらしい。しかし私はイスラエル・パレスチナ問題について、きちんと思考できるほどの知識がないので、一から勉強するつもりで読んでみた。本書は30の疑問と回答を通じて、十字軍とレコンキスタから今日に至るユダヤ人の歴史が分かるようになっている。十字軍は、イスラーム統治下のエルサレムを奪回するための運動だったが、ヨーロッパでは、イスラーム教徒だけでなくユダヤ教徒への攻撃・迫害も強まった。1492年、グラナダが陥落し、レコンキスタが完成する。直後にスペインでは、ユダヤ教徒にキリスト教への改宗を迫る追放令が出された。同年8月に出港したコロンブス船団の乗組員の大半は、改宗と追放を逃...暴力と差別の由来/イスラエルについて知っておきたい30のこと(早尾貴紀)

  • マンガ原作の武侠SF/中華ドラマ『異人之下』

    〇『異人之下』全27集(優酷、2023年)見たい新作ドラマが途切れていたので、2023年公開で気になっていた本作を見てみた。原作は『一人之下』というウェブ漫画で、2018年には日中合作のアニメにもなっているらしい。へえ、全く知らなかった。ストーリーは、漫画原作らしく速いテンポでどんどん進む。平凡な大学生の張楚嵐は、ただ一人の家族だった祖父を幼い頃に失っていた。祖父の張懐義は、常人にない能力を持つ「異人(アウトサイダー)」の一人で、張楚嵐はその能力を受け継ぐとともに、成長するまで封印することを言い渡されていた。大人になった張楚嵐は、異人の一味に次々に襲われ、祖父から受け継いだ「炁体源流」の秘術を解禁する。この世界には、多くの異人が存在じており、いくつかの勢力グループがあった。張楚嵐を助けてくれたのは、表向き...マンガ原作の武侠SF/中華ドラマ『異人之下』

  • 2025年5月関西旅行:MIHOミュージアム、細見美術館

    ■MIHOミュージアム春季特別展『うつくしきかな-平安の美と王朝文化へのあこがれ-』(2025年3月15日~6月8日)先週末の関西旅行の記録、ようやく最終日に到達である。日曜は朝イチ、石山駅から路線バスに乗ってMIHOミュージアムに向かった。本展は、古筆をはじめ、工芸品や仏教美術、琳派の源氏物語図屏風、歌仙絵など、貴族文化の誕生から桃山初期に興る王朝文化への憧れがこめられた作品を織り交ぜて展観する。冒頭は二月堂焼経、賢愚経断簡(大聖武)などの古経と小さな誕生仏(飛鳥時代)、迦楼羅の伎楽面(奈良時代)など、大陸文化の香り高い「王朝前史」から始まる。そして王朝文化のあゆみが始まるのだが、『宝相華鳳凰文平胡籙』は初めて見たような気がする。ニワトリのような鳳凰が2羽ずつ対面で4羽、螺鈿で描かれている。宝相華には青...2025年5月関西旅行:MIHOミュージアム、細見美術館

  • 2025年5月関西旅行:悠久なる雅楽(国立文楽劇場)

    〇国立文楽劇場令和7年5月特別企画公演・第29回特別企画公演『悠久なる雅楽-天王寺楽所の楽統』(2025年5月31日、14:00~)先週末、関西旅行2日目の続き。土曜の午後は、奈良から大阪に移動して、雅楽公演を見た。開場してすぐ2階に上がると、ロビーに長い列ができていた。なんだろう?と思って「最後尾」の札を持っているお姉さんに聞いたら、ステージ見学の列だという。「申し込んでいないんですけど…」と躊躇していたら「どうぞ、どうぞ」と並ばせてくれた。しかし私から数人後ろのお客さんで「終了」になってしまったので、運がよかったというべきかもしれない。ステージ上には、朱塗の高欄で囲われた四角い舞台がしつらえてあり、舞台上には鞨鼓や鼓、琵琶や筝などの楽器が展示されていた。また舞台後方には、楽人・舞人の衣装も並んでいた(...2025年5月関西旅行:悠久なる雅楽(国立文楽劇場)

  • 2025年5月関西旅行:龍谷ミュージアム、京都文化博物館など

    ■龍谷ミュージアム春季企画展『大谷探検隊吉川小一郎-探究と忍耐その人間像に迫る-』(2025年4月19日~6月22日)関西旅行初日に訪ねた展覧会をあと2つ。明治時代後期、大谷探検隊の隊員として中国や中央アジアに赴いた吉川小一郎(よしかわこいちろう、1885-1978)の人間像に迫る。大谷探検隊が将来し、龍谷大学図書館に入った西域の文物や古文書、吉川家が所蔵する写真帖や現地から送られた書簡などが展示されていた。加えて、吉川が16歳で、同い年の大谷尊重(光明。光瑞の弟)の「相談役」になったというのが、ちょっと庶民には窺い知ることのできない世界で、興味深かった。■京都文化博物館特別展『和食〜日本の自然、人々の知恵〜』(2025年4月26日~7月6日)科博での開催を見逃していたので、巡回先の京都で見ることにした。...2025年5月関西旅行:龍谷ミュージアム、京都文化博物館など

  • 2025年5月関西旅行:帰ってきた泉屋博古館(リニューアル)

    〇泉屋博古館リニューアル記念名品展I『帰ってきた泉屋博古館いにしえの至宝たち』(2025年4月26日~6月8日)関西旅行初日。京博のあとは、見たかった展覧会を順番に訪ねた。まずは1年の改修工事を経て再開した同館へ。建物へのアプローチがちょっときれいになった感じがした。玄関を入ると、新しいチケット売り場のカウンターができ、グッズ売り場が広くなるなど、細やかな改修が施されている。しかし基本構造は変わっていないのかな、と思いながら、企画展示室のある2号館に向かったら「←(左向きの矢印)」が表示されていて戸惑った。今まで企画展示室の入口は右手の奥だったのだ。左手に進むと、遮光性の高い黒い扉が開いて、初めて見る空間が現れた。なるほど、以前の展示室の突き当りに(狭いながらも)新しい展示室を設けたわけだ。冒頭には能面の...2025年5月関西旅行:帰ってきた泉屋博古館(リニューアル)

  • 2025年5月関西旅行:美のるつぼ(京都国立博物館)

    〇京都国立博物館大阪・関西万博開催記念・特別展『日本、美のるつぼ-異文化交流の軌跡-』(2025年4月19日~6月15日)5月最後の金曜に年休を取って、2泊3日で関西で遊んできた。最大の目的はこの展覧会、「大阪・関西万博開催記念」の3企画のうち、最後に残していた展示である。10:30頃に京博に到着して、入場待ちの列がないことにほっとする。会場内は、まあまあ我慢できる程度の混み具合だった。最初の展示室に入ったとたん、名前を呼ばれて振り向いたら、三重県在住の友人だった。お互い仕事持ちなので「金曜に、なんでいるの」と笑い合ってしまった。展示は、開催中の大阪万博に敬意を表して(?)明治政府が当時、欧米各地で開催された万博に出品した美術品から始まる。この場合、やっぱり薩摩焼だよね。そして江之島を描いた蒔絵額。「世界...2025年5月関西旅行:美のるつぼ(京都国立博物館)

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