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1件〜100件

  • 大都会・北京の片隅で/中華ドラマ『歓迎光臨』

    〇『歓迎光臨』全37集(東陽正午陽光影視、三次元影業)平凡な人々の、小さな喜怒哀楽を大事に掬い上げたようなドラマ。毎回、大笑いしながら、最後には登場人物全てが愛おしくなっている。さすが安定の正午陽光作品である。北京の五つ星ホテルに勤めるドアボーイ(門童)の三人組、張光正、王牛郎、陳精典は、宿舎を出て部屋を借り、共同生活を始めることにした。主人公の張光正は東北出身、就職6年目。人柄の良さだけが取り柄で、特に夢も野望もない。引っ越し先では、サンルームを自分の専有スペースとすることができて大満足。ところが、窓の下の公園では、毎朝、近所のおばさんたちが集まり、大音響で「広場舞」を楽しんでいることが分かり、不運を呪う。しかし、幸運もやってきた。あるとき、ホテルの玄関で、正義感の強い美女と出会って一目惚れし、人生の目...大都会・北京の片隅で/中華ドラマ『歓迎光臨』

  • はじける禅画/仙厓ワールド(永青文庫)

    〇永青文庫初夏展『仙厓ワールド-また来て笑って!仙厓さんのZenZen禅画-』(2022年5月21日~7月18日)同文庫は、設立者・細川護立が集めた仙厓義梵(1750-1837)の作品100点以上を所蔵する。2016年の秋冬展に続く第2弾となる本展では、兄弟子にあたる誠拙周樗(せいせつしゅうちょ、1745-1820)など、仙厓周辺の禅僧による書画をあわせて展示し、知られざる禅画コレクションの一端を紹介する。2016年の『仙厓ワールド-来て見て笑って!仙厓さんのゆるカワ絵画-』は、もちろん見に行ったが、104点を完全入替の4期に分けての公開だったので、コレクションの4分、かなり前後期入れ替えがある。4階の展示室は、はじめに神仏や道釈人物画が並んでいて楽しかった。『出山釈迦図』はなかなかのイケメン。『観音図』...はじける禅画/仙厓ワールド(永青文庫)

  • 2022街中のアジサイ

    このところ、慌ただしい日々が続いている。職場では、イベントと作業が重なり、平日深夜も土日も緊張が続いた。実際に発生した仕事の量は多くないのだが、つねに待機を強いられる状況で辛かった。2月に亡くなった父の遺産相続関係はまだ片付いていない。弟が税務署に相談に行ったり考えたりしているのを、あまり口を挟まずに傍観している。ひとりになった母のところへは、毎週一回、必ず面会に通っている。これは武蔵境駅前のアジサイ。趣味の楽しみもあきらめたくはないので、時間を算段して、美術館や博物館にも行っているし、アイスショーのライブビューイングにも行っている。来週末は、なんと生観戦のチケットが取れたので、金と日に静岡へ遠征する。金曜は有休を取るが、職場のオンライン会議には1時間だけ参加する予定。優雅な老後は、いつになったら来るのだ...2022街中のアジサイ

  • 詩情と水彩画/ただいま やさしき明治(府中市美術館)

    〇府中市美術館「発見された日本の風景」連携展・孤高の高野光正コレクションが語る『ただいまやさしき明治』(2022年5月21日~7月10日)いつも「春の江戸絵画まつり」を見に行っている同館で、明治絵画の展覧会があるというので見てきた。明治期に来日した外国人画家たち、そして西洋画を学んだ日本人画家たちが、日本の風景を描いた作品は、当時、多くが欧米諸国に渡ってしまった。高野光正氏は、これら、海外に流出した絵画約700点を蒐集して里帰りさせており、本展では展示替えを含め約300点を紹介する。例によって何も予習せずに行ったので、最初の展示室「忘れられた画家」笠木治郎吉の作品特集(18点展示)で衝撃を受け、慌てて、高野光正コレクションの説明パネルを読んで、上記の概要を知った。笠木治郎吉(1870-1923)は五姓田芳...詩情と水彩画/ただいまやさしき明治(府中市美術館)

  • アジアの架け橋/琉球(東京国立博物館)

    〇東京国立博物館沖縄復帰50年記念・特別展『琉球』(2022年5月3日~6月26日)本展は、アジアにおける琉球王国の成立、および独自の文化の形成と継承の意義について、琉球・沖縄ゆかりの文化財と復興の歩みから総合的に紐解くもので、展示替えを含めて全363件という大規模展覧会である。私は本展の「琉球」が、歴史上の琉球王国(15~19世紀)を指すのか、地域としての琉球列島のことなのか、あまり予習せずに来てしまったので、会場の入口で、あ、これは「琉球王国」の展覧会なのだと理解した。第1章は「万国津梁アジアの架け橋」と題して、琉球王国とアジア各地との交易の様子を紹介する。旧首里城正殿の鐘である『万国津梁の鐘』は、本物を見たのは初めてかもしれない。東シナ海を往来する船(船体に目玉を描いた独特の外観)や、那覇港の賑わい...アジアの架け橋/琉球(東京国立博物館)

  • 国民食の誕生/パスタでたどるイタリア史(池上俊一)

    〇池上俊一『パスタでたどるイタリア史』(岩波ジュニア新書)岩波書店2011.11今季の朝ドラ『ちむどんどん』を、私はけっこう楽しんで見ている。ただし以下はドラマの感想ではない。沖縄から上京した主人公がイタリア料理店で修業する展開に関連して、SNSで、本書のおすすめを見かけたので読んでみた。初めて知ることばかりで面白かった。まず、パスタの主原料である小麦はメソポタミアで栽培されるようになり、地中海沿岸の諸文明に広まった。ローマにパンの作り方を伝えたのはギリシャ人だという(ポンペイ展で見た「炭化したパン」を思い出す)。古代ローマでは、小麦粉の練り粉を焼いたり揚げたりする、パスタの原型も作られていた。4~6世紀にゲルマン民族が侵入し、支配階級(貴族)になると、彼らは狩猟と大量の肉食を好み、肉を食べないのは脆弱、...国民食の誕生/パスタでたどるイタリア史(池上俊一)

  • 祈りに応える仏さま/阿弥陀如来(根津美術館)

    〇根津美術館企画展『阿弥陀如来浄土への憧れ』(2022年5月28日~7月3日)館蔵の仏画を中心として、日本における阿弥陀信仰の歴史とその広がりを概観するとともに、高麗における作例もあわせて紹介する。今年は、なぜか春から仏画の展覧会が続いていて嬉しい。特に中之島香雪美術館で見た『来迎』展のことは、何度も思い出しながら本展を鑑賞した。冒頭には鎌倉時代の典型的な『阿弥陀三尊来迎図』。全身金色の立像形式の三尊が雲に乗って左から右方向に向かってくる。『金剛界八十一尊曼荼羅』は何度も見ている華やかな曼荼羅図だが、中央の大日如来の上方にいるのが阿弥陀如来だとは思っていなかった。絵画と同じ展示室に仏像が混じっているのは本展の特色(同館ではあまりない)。かなり大きな阿弥陀如来立像(鎌倉時代)は修理を終えて初公開だという。と...祈りに応える仏さま/阿弥陀如来(根津美術館)

  • 沖縄を知る/うちなーゆ ゆがわりや(国学院大学博物館)

    〇国学院大学博物館企画展『沖縄復帰50年うちなーぬゆがわりや:琉球・沖縄学と國學院』(2022年5月19日~7月23日)1972年5月15日、米国の統治下にあった沖縄県が日本に返還されてから50年、さらに、1872年に日本の明治政府によって琉球国の外交権が剥奪され、琉球藩が設けられてから150年に当たることを機会として、沖縄の歴史や文化について振り返り、国学院大学と「沖縄学」研究との関わりについて再確認する企画展。そうなのか。今年が沖縄の「本土復帰50周年」であることはぼちぼち聞くが、「沖縄処分開始150周年」であることは、全く意識していなかった。はじめに、そもそもの南西諸島(沖縄を含む)の地理的環境と歴史が示される。「時代対照表」のパネルには、八重山・宮古、沖縄、日本、北海道、そして比較対象として中国の...沖縄を知る/うちなーゆゆがわりや(国学院大学博物館)

  • 新しい画家を覚える/奥田元宋と日展の巨匠(山種美術館)

    〇山種美術館特別展『生誕110周年奥田元宋と日展の巨匠-福田平八郎から東山魁夷へ-』(2022年4月23日~7月3日)奥田元宋(1912-2003)の生誕110周年を記念し、元宋の活躍の舞台となった日展(日本美術展覧会)の画家たちを紹介する展覧会。奥田元宋は、大作『奥入瀬(春)(秋)』を含め、8件が出陳されている。元宋らしい赤を基調とした『奥入瀬(秋)』は山種の所蔵品だが、新緑の『奥入瀬(春)』は個人蔵で寄託品なのだな。元宋が師事した児玉希望(1898-1971)という画家の名前は、初めて意識した。墨画『漁村』は、地形の不思議なかたちが雪村を思わせる。『鯛』は、青い背景、黄色い皿にのった赤い鯛を描く。泥臭いけれど気になる。日展は、明治40(1907)に始まる文部省美術展覧会(文展)にルーツを持つ。大正8年...新しい画家を覚える/奥田元宋と日展の巨匠(山種美術館)

  • アイスショー"Fantasy on Ice 2022"ライブビューイング

    〇FantasyonIce2022ライブビューイング(幕張:2022年5月28日、名古屋:2022年6月5日13:00~)私の一番好きなアイスショーFaOI(ファンタジー・オン・アイス)が3年ぶりに開催されることになった。今年は、幕張、名古屋、神戸、静岡の4会場で3公演ずつ。しかしチケットが全く取れない。私が初めてFaOIを見に行ったのは2010年の新潟公演で、当時は開催直前でもチケットが買えたのだ。ところが、2014~15年くらいからか、「羽生結弦のアイスショー」的な位置づけが定着してからは、チケット争奪戦が激化し、正直、この数年はチケット売買サイトで、定価の2~3倍で購入するのもやむなし、という感じだった。しかし、あまりにもひどい転売の横行に規制がかかり、今年のチケットは全て抽選販売、入場時には本人確...アイスショー"FantasyonIce2022"ライブビューイング

  • 2022年4-5月@東京:展覧会拾遺

    レポートを書けていない展覧会が増えてきたので、まとめて。■三井記念美術館リニューアルオープンI『絵のある陶磁器:仁清・乾山・永楽と東洋陶磁』(2022年4月29日~6月26日)昨年8月末からリニューアル工事のため休館していた同館が再開館した。最初の展覧会のテーマが「陶磁器」なのは、同館のコレクションの強みをよく表している。100件を超す展示品(絵画や屏風を含む)のリストには、全て「北三井家」「室町三井家」などの旧蔵者が付記されていた。同館には何度も来ているが、今回、意外と初めて見るものが多かったように思う。気に入ったもののひとつは『絵高麗茶碗』。「絵高麗」と言いつつ、実は磁州窯(明代)で、素朴なウサギの絵は、オオカミみたいなシルエットだった。永楽和全の『乾山写色絵草花文小皿』12口セットや、永楽保全の『安...2022年4-5月@東京:展覧会拾遺

  • 基層社会の成り立ち/中国共産党 世界最強の組織(西村晋)

    〇西村晋『中国共産党世界最強の組織:1億党員の入党・教育から活動まで』(星海社親書)星海社2022.4販売戦略として、かなり煽り気味のタイトルとオビが付いているが、内容は堅実である。日本のニュースや評論で中国共産党が話題になるときは、「党中央」と呼ばれる頂点の部分だけが意識されている。共産党の最上層部は、総書記+政治局常務委員(7人)+政治局委員(25人)+中央委員(約200人)。しかし、その背景には、2021年時点で9500万人以上の党員が存在する。党中央は、どうやって彼らの意見やアイディアを汲み上げ、党のビジョンや決定事項を共有し、政策を実行させているのか。本書は、日本の中国理解のエアポケットである「中国共産党の基層組織」について説明したものである。まず、基層党組織の原型である農村から見ていこう。中国の農村...基層社会の成り立ち/中国共産党世界最強の組織(西村晋)

  • 相撲生人形をついに見る/リアル(写実)のゆくえ(平塚市美術館)

    〇平塚市美術館市制90周年記念『リアル(写実)のゆくえ:現代の作家たち生きること、写すこと』(2022年4月9日~6月5日)平塚市美術館には初訪問。というか、東京生まれで神奈川県民だったこともある私だが、平塚駅で下りたのは初めてだと思う。繁華な駅前から15分ほど歩いて、美術館に到着した。本展は、松本喜三郎らの生人形、高橋由一の油彩画を導入部として、現代の絵画と彫刻における写実表現を検証し、西洋の文脈のみではとらえきれない日本の「写実」が如何なるものなのか、またどのように生まれたのかを探る展覧会である。生人形(いきにんぎょう)というものの存在を知ったのは、たぶん2000年前後、木下直之先生の本ではないかと思う。ブログ内で検索したら、2006年に東博で、二代・三代安本亀八が作った「明治時代少女」「徳川時代大名隠居」...相撲生人形をついに見る/リアル(写実)のゆくえ(平塚市美術館)

  • 多文化共生の一進一退/団地と移民(安田浩一)

    〇安田浩一『団地と移民:課題最先端「空間」の闘い』(角川新書)角川書店2022.4.10戦後、住宅不足の解消と住宅環境の改善を目指して、1955年に日本住宅公団が設立され、翌年、第1号の公団団地が誕生した(堺市・金岡団地)。それから半世紀、本書は「老い」の境地に入った団地の歴史と現在をレポートする。2019年3月刊行の同名の単行本を加筆修正したものである。1960年に入居を開始した常盤平団地(千葉県松戸市)。農民たちの激しい反対運動もあったものの、入居倍率は20倍を超え、団地は「豊かさ」「明るい未来」の象徴となった。しかし今では住民の半数以上が65歳以上の高齢者となった。団地の自治会長は「孤独死ゼロ」を掲げて奮闘しており、国内外から常盤平の取組みを学びに訪れる人が後を絶たないという。1965年に入居を開始した神...多文化共生の一進一退/団地と移民(安田浩一)

  • 常楽寺の聖観音立像(東京長浜観音堂)を見る

    〇東京長浜観音堂『聖観音立像(長浜市湖北町山本・常楽寺蔵)』(2022年5月12日~2022年6月12日)昨年度末、いったん閉館した東京長浜観音堂が、うれしいことに同じ場所で再オープンした。今年度は、1か月間ずつ4躯の仏さまにお出ましいただくとのこと。7月から2か月間ずつ4件の展示だった昨年度に比べると、やや規模縮小だが、それでも事業を継続してくれるのはありがたい。今年度初のお出ましは、常楽寺の聖観音立像。平安時代後期(12世紀)の作。簡素だが優美で、力みはないのに力強い。一見、ストンとまっすぐ立っているようだが、かすかに腰をひねっている。茎の長い金色の蓮華は、後補と思われるが、よく合っている。とても好きなタイプの観音さま。常楽寺は、長浜市湖北町山本の山本山(やまもとやま)の中腹にあり、地元では山寺(やまでら)...常楽寺の聖観音立像(東京長浜観音堂)を見る

  • 残念もあり/アール・デコの貴重書(庭園美術館)

    〇東京都庭園美術館建物公開2022『アール・デコの貴重書』(2022年4月23日~6月12日)展覧会に惹かれたので、久しぶりに庭園美術館を訪ねた。前回訪問が2011年なので、なんと11年ぶりである。1933年竣工の旧・朝香宮邸(現・東京都庭園美術館本館)は、アール・デコ様式の名建築として知られている。そうした背景から、同館ではフランスの装飾美術に関する書籍や雑誌、1925年のアール・デコ博覧会に関連した文献資料等を所蔵しているという。本展では、同館の所蔵品を中心に1920-30年代の貴重書、絵葉書等を展示する。展示会場は本館と新館で、本館では、アール・デコ様式の建物の各室をめぐりながら、展示ケースに入った貴重書を眺める。新館(2013年竣工、初めて来た)のギャラリーでは、まとめて多くの資料を見ることができた。1...残念もあり/アール・デコの貴重書(庭園美術館)

  • 茶会の再現/燕子花図屏風の茶会(根津美術館)

    〇根津美術館特別展『燕子花図屏風の茶会昭和12年の取り合わせ』(2022年4月16日~5月15日)根津美術館、5月の恒例といえば『燕子花図屏風』の公開である。毎年見ているので、今年はいいかなあと思いつつ、やっぱり見ておくか、と思って、日時指定入館券を購入しようとした。そうしたら、連休中はあっという間に売り切れてしまった。連休明けの10日から15日まで、延長開館(夜7時まで)を実施してくれたおかげで、なんとか見に行くことができた。本展は、昭和12年(1937)5月5日を初日とし、77歳を目前にした根津嘉一郎が、青山の自邸で開催した茶会の取り合わせを再現し、『燕子花図屏風』を楽しむ趣向である。展示室に入ると、茶事の流れに従って、待合席→本席(懐石→炭手前→中立→濃茶)→薄茶席→浅酌席→番茶席のセクションが立てられ、...茶会の再現/燕子花図屏風の茶会(根津美術館)

  • 丸の内でランチとお茶

    連休明けの週末、友人を東京駅の近くでランチに誘った。炭焼・寿し処「くし路」KITTE丸の内店の華かご御膳。「くし路」は、札幌に住んでいた頃、駅前のお店に何度か連れていってもらったことがある、なつかしいお店。KITTE丸の内の6階には、屋上庭園があって、東京駅を見下ろせることを初めて知った。これは地方や海外から東京観光に来た人には、絶対おすすめのビューポイント。2-3階の「インターメディアテク」は、東京大学の学術資源や学術成果を発信する博物館施設。特別公開『音のかたち-東京大学蓄音機コレクション』(2022年4月16日~)が始まっており、米国、英国、日本等で生産された各種蓄音機が並んでいた。怪物みたいに巨大なラッパ(ホーン)に目を見張る。ラッパは木製と金属製があるのだな。好きな人にはたまらないだろうなあ。有楽町方...丸の内でランチとお茶

  • 李(すもも)が倒れるとき/中華ドラマ『風起隴西』

    〇『風起隴西』全24集(新麗伝媒、愛奇藝等)三国時代の諜報戦を描くドラマ。間違いなく後世に残る傑作だと思うのだが、登場人物の正邪が二転三転するスリルが醍醐味なので、ネタバレ抜きに紹介するのがとても難しい。物語の主たる舞台は蜀の国で、西暦228年の街亭の戦いに始まり、231年、李厳の失脚までを描く。隴西(甘粛省東南部)は、魏と蜀の勢力圏がぶつかる最前線だった。蜀の丞相・諸葛孔明を補佐する楊儀は、「司聞曹」という諜報機関を創設し、統括人に馮膺をあてた。司聞曹には、司聞司(敵国での諜報活動)・軍謀司(情報分析)・靖安司(国内の治安維持)の三部門が置かれており、主人公の陳恭は司聞司に属していた。街亭の戦いで蜀軍は魏軍に大敗を喫し、第一次北伐は失敗に終わった。孔明は責任を取って降格を願い出、蜀の宮廷では、孔明のライバルで...李(すもも)が倒れるとき/中華ドラマ『風起隴西』

  • 鎌倉歴史文化交流館+鎌倉国宝館+義時法華堂

    今年の連休は、久しぶりに鎌倉も歩きに行った。残念ながら、流鏑馬など鎌倉まつりの主要行事は再開されなかったが、すっかり人出が戻って、どこも大賑わいだった。■鎌倉歴史文化交流館企画展『北条氏展vol.2鎌倉武士の時代-幕府草創を支えた宿老たち』(2022年4月9日~6月12日)今年は大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にちなみ、年間を通じて北条氏に焦点をあてるようだ。第1弾『北条氏展vol.1伊豆から鎌倉へ-北条氏の軌跡をたどる-』(2022年1月4日~3月26日)は見逃してしまったが、第2弾から見に来ることができた。今季は、鎌倉殿・源頼朝を支えた人々を取り上げ、鎌倉幕府の成立に彼らがいかに寄与したのかを紹介するとともに、武士が持つ和歌や信仰などの「文」の側面にも注目する。「文」の側面だが、頼朝は勅撰集に10首入集しており...鎌倉歴史文化交流館+鎌倉国宝館+義時法華堂

  • 羽生結弦展2022(東京)+MUSE ON ICE(京都)

    連休中に見に行った展覧会のレポートが、まだ書き切れていない。まず、東京と京都で見たフィギュアスケート関連の展覧会から。■日本橋高島屋S.C.『羽生結弦展2022』(2022年4月20日~5月9日)読売新聞の報道写真を中心に、スポーツフォトグラファーの田中宣明さん、写真家の能登直さんの作品を加えた写真パネル約100点、さらに羽生選手の衣装や用具、メダルなどを展示し、最新シーズンまでの歩みを振り返る。2018年の『応援ありがとうございます!羽生結弦展』(4月~高島屋日本橋店ほか巡回)も見に行きたかったのだが、長蛇の列ができる大盛況と聞いてあきらめた記憶がある。今回は、事前予約制(入場無料)だったので、幸い、参観することができた。シニアに上がったばかりの頃の初々しい写真(ロミジュリの衣装!)に始まり、さまざまなプログ...羽生結弦展2022(東京)+MUSEONICE(京都)

  • 絵巻・古筆もあわせて/大蒔絵展(MOA美術館)

    〇MOA美術館『大蒔絵展漆と金の千年物語』(2022年4月1日~5月8日)MOA美術館で始まった『大蒔絵展』がすごい、という噂を聞いたので、必ず行こうと思っていた。会期末の週末に東京から出かけることを予定していたが、思い立って、関西旅行の帰りに途中で寄ってしまうことにした。私がMOA美術館を最後に訪ねたのは2014年で、2017年にリニューアルオープンした後も全く来ていなかったので、熱海駅に下りて、駅ビルがおしゃれになり、駅前のバス乗り場が整備されていることに驚いた。会場に来て初めて知ったのだが、本展は、MOA美術館、三井記念美術館、徳川美術館の3館が共同で開催するものだという。本展を皮切りに、2022年秋には三井記念美術館、2023年春には徳川美術館での開催が予定されており、3会場あわせて70点以上の名品を通...絵巻・古筆もあわせて/大蒔絵展(MOA美術館)

  • 2022年5月関西旅行:東寺、六孫王神社

    関西旅行3日目。行きたかったところは2日目までに全て行けたのと、期待していた神護寺の宝物虫払いが今年も中止だったので、最終日をどう過ごすか考えた結果、予定より早めに京都を離れることにした。あさイチで東寺へ。すでに食堂の納経所に長い列ができていてびっくりした。久しぶりに見る光景だが、案内の方が、手際よく列を捌いていた。ご朱印をいただいたあとは、夜叉神堂にお参りするのが私の定番コース。すると、どちらのお堂も本物の夜叉神立像ではなく、等身大の写真パネルが飾られていた。おや?昨年7月には雄夜叉神だけが「御遷座」だったのに。「雄夜叉神立像は、修理を終えて宝物館に御遷座しています」の貼り紙。そして現在は、雌夜叉神が修理に入っているらしかった。■東寺宝物館2022年春期特別展『東寺と後七日御修法-江戸時代の再興と二間観音-』...2022年5月関西旅行:東寺、六孫王神社

  • 2022年5月関西旅行:細見美術館、龍谷ミュージアムほか

    ■浄土宗総本山知恩院(京都市東山区)「春の京都非公開文化財特別公開」の企画で、通常非公開の大方丈・小方丈が公開されているというので来てみた。狩野尚信、信政らによる襖絵が見どころ。特に大方丈・鶴の間の襖絵は、2005年から建物の修理工事の関係で佛教大学宗教文化ミュージアムに預けられていたが、本年2月に知恩院に戻ってきたもので、16年ぶりの公開となる。金地の背景に、黒と灰色の羽根をまとった鶴たち(マナヅルか?)が力強く描かれていて、華やかというより、厳粛な雰囲気だった。尚信って、江戸狩野の人だと思っていたが、京都や大阪での制作にもかかわっているのだな。■細見美術館琳派展22『つながる琳派スピリット神坂雪佳』(2022年4月23日~6月19日)近代京都において図案家・画家として活躍した神坂雪佳(1866-1942)の...2022年5月関西旅行:細見美術館、龍谷ミュージアムほか

  • 2022年5月関西旅行:最澄と天台宗のすべて(京都国立博物館)

    〇京都国立博物館伝教大師1200年大遠忌記念・特別展『最澄と天台宗のすべて』(2022年4月12日~5月22日)関西旅行2日目は京博からスタート。開館20分前くらいに行ってみたところ、まだ列はできておらず、10~15人くらいがパラパラと門前に立っていた。しばらくすると中の人が出てきて「博物館のフェンスに沿ってお並びください」とアナウンスする。結局、開門前には50人前後が並んだと思うが、いつもの特別展に比べると、少ないほうだと思う。ほぼ先頭で入館できたので、巡路どおり第1室から見ることにした。冒頭には兵庫・一乗寺の『聖徳太子及び天台高僧像』から「龍樹」と「善無畏」。善無畏像はいちばん好きなので、得をした気分。龍樹像も赤やピンクが基調で、華やかで美しい。東京では見られなかった兵庫・福祥寺の『天台四祖像』(南北朝時代...2022年5月関西旅行:最澄と天台宗のすべて(京都国立博物館)

  • 三省堂、神保町本店ビル建て替え

    三省堂書店の神保町本店が、施設の老朽化に伴い建て替えられることになり、現在の建物で営業を5月8日で終了することになった。連休の谷間の5月6日(金)、仕事は休みを取ったので、久しぶりに神保町に行って、別れを惜しんできた。ちょうど買いたい新刊書があったのだが、仮店舗への引っ越し準備が始まっているのか、全体に品薄で、私の探している本もなかった。仕方ないので、2階の「UCCカフェコンフォート」で、クラシックなプリンアラモードを食べてきた。近年、書籍の発行点数は減少気味で、私自身、リアルな書店に滞在して、ゆっくり棚を探索する機会は減ってしまった。だいたいネット等で目星をつけたものを、サッと買って帰ってしまう。なので、建て替え後の店舗が拡張される可能性は低いと思っているが、せめて今くらいの棚数が残ることを祈っている。三省堂、神保町本店ビル建て替え

  • 2022年5月関西旅行:大和文華館、大安寺のすべて(奈良博)

    ■大和文華館特別企画展『泰西王侯騎馬図屏風と松浦屏風-越境する美術-』(2022年4月8日~5月15日)関西旅行、まだ初日のレポートである。大阪で中之島香雪美術館と大阪市立美術館を見たあと、奈良の大和文華館へ向かった。本展は、東西の文明圏の境界を越えて行き来し、それぞれの地に根付いた美術工芸の諸相を眺める特別企画展。冒頭には「越境」が生み出した3つのうつわが並ぶ。ひとつはドイツのマイセン窯でつくられた柿右衛門写し。もうひとつはオランダ製の逆三角形のワイングラスで、東インド会社(VOC)の旗を掲げた帆船と農夫を表わす。口縁に「祖国に繁栄を」の文字あり。最後は大越国(ベトナム)の銘を持つ山水人物文の茶碗で、日本から注文を受けて焼かれたものだという。どれも興味深い。本展にはサントリー美術館所蔵の『泰西王侯騎馬図屏風』...2022年5月関西旅行:大和文華館、大安寺のすべて(奈良博)

  • 2022年5月関西旅行:華風到来(大阪市立美術館)

    〇大阪市立美術館特別展『華風到来チャイニーズアートセレクション』(2022年4月16日~6月5日)同館は本年秋から約3年間の大規模改修工事に入ることになっている。本展は、長期休館の前に館蔵品によって行う特別展で、中国美術とその影響を受けた「華風=中国風」の日本美術を選りすぐり、中国文化の魅力と広がりを紹介する。はじめに阿部コレクションを中心とする中国明清の書画。堆朱盆や豆彩・青花の磁器など工芸品も取り合わせる。明・沈周の『菊花文禽図』(だったかな?)。明・呉歴『江南春色図』(だったと思う)。安野光雅さんの『旅の絵本』みたいに、高い視線から眺めた、やわらかい色彩のひろびろとした風景が続く。時折、そこに暮らす人々の姿が小さく見える。とても愛おしく感じた作品。次に「古いもの」の括りで、師古斎コレクションの拓本と銅鏡、...2022年5月関西旅行:華風到来(大阪市立美術館)

  • 2022年5月関西旅行:来迎(中之島香雪美術館)

    〇中之島香雪美術館企画展『来迎たいせつな人との別れのために』(2022年4月9日~5月22日)今年のゴールデンウィークは、1日休めば7連休、2日休めば10連休のカレンダー、しかしまだ海外渡航はできないので、関西2泊3日にとどめておいた。初日、久しぶりに満席に近い新幹線で大阪へ。阿弥陀如来が聖衆を率いてお迎えに来る「来迎図」、死後に向かう極楽のありさまを描く「浄土図」など、浄土信仰の美術を紹介する。これまで何度も見てきた来迎図だが、「平安時代までは阿弥陀如来は必ず座っている(他の菩薩は立ったり座ったり)」「鎌倉以降は立像形式が増加」「立像の阿弥陀如来の周囲を諸菩薩が囲む形式を『円陣来迎図』という」等の整理が腑に落ちて、とても面白かった。阿弥陀如来の脇侍である観音・勢至は『白宝口抄』という書物では「二十五菩薩」の中...2022年5月関西旅行:来迎(中之島香雪美術館)

  • 初夏のモッコウバラ

    今年のゴールデンウィークは、久しぶりに観光地に人出が戻っているようだが、東京は冷たい雨の日が多い。仕舞ったはずのセーターやフリースを引っ張り出して、家の中で震えている。それでも今日(5/3)から2泊3日で関西方面へ。晴れるといいな。4月末に、上野毛の五島美術館に出かけたときに見たモッコウバラ(木香薔薇)の写真を挙げておく。初夏のモッコウバラ

  • 遊ぶ、装う人々/人のすがた、人の思い(大倉集古館)

    〇大倉集古館企画展『人のすがた、人の思い』(2022年4月5日~5月29日)各種収蔵品を通して、人々がどのようなすがたや形、そして動きをしているか、どのような思いが表現されているかを探る。新型コロナによる行動制限が続く現在、あらためて人と人の交流の大切さを見直してみたいという思いが込められているという。最初のテーマ「女性の姿」では『狂言面乙』に惹かれた。おかめ、おたふくとも呼ばれる、あまり美しくない女性の面であるが、ネットで検索すると、実に様々な種類があることが分かる。展示品(江戸時代・17世紀)は、目鼻口が顔の中央に集まった、極端な下膨れで、ちょっと怖い。醜女をあらわす面だが、仏像の役に用いることもあるそうだ。『鳥毛立女図』(大正時代)は正倉院宝物の模造品だが、どういう事情でこれが制作され、同館に入ったのか、...遊ぶ、装う人々/人のすがた、人の思い(大倉集古館)

  • あふれる物語/鏑木清方展(国立近代美術館)

    〇国立近代美術館企画展『没後50年鏑木清方展』(2022年3月18日~5月8日)日本画家・鏑木清方(1878-1972)の大規模な回顧展。見どころのひとつは、2018年に同館が収蔵した美人画の名作『築地明石町』『新富町』『浜町河岸』三部作の公開である。事前にチェックしたら三作品は通期展示だったので、すっかり安心して、見に行くのが会期ぎりぎりになってしまった。冒頭は「生活をえがく」をテーマに、市井の風俗、風景などを描いた作品を集める。『雛市』や『鰯』のような明治の風俗から、近世初期の遊楽図を思わせる『若き人々』、浮世絵ふうの『墨田河舟遊』なども。『讃春』は昭和の大礼を記念し、三井財閥の岩崎家から皇室に献上された作品で、左隻は隅田川に浮かぶ船と水上生活者の母子、右隻は宮城を背景にセーラー服姿の女学生を描く。おもしろ...あふれる物語/鏑木清方展(国立近代美術館)

  • 食料自給と商品経済/飢えと食の日本史(菊池勇夫)

    〇菊池勇夫『飢えと食の日本史』(読みなおす日本史)吉川弘文館2019.4全編読み終わってから、『飢饉:飢えと食の日本史』(集英社、2000年)の復刊であるという注記に気づいた。原本は20年以上前の著作だが、初めて得る知識も多く、おもしろかった。本書は、現代の食料問題を念頭に置きつつ、かつて日本人が体験した飢饉現象の記録の読み直しを意図したものである。はじめに古代から近代までの日本列島の飢饉史を概観する。記録以前の採集狩猟時代(縄文時代)には、そもそも再生可能人口数が食料資源量に制約を受けており、人が餓死するような飢饉状態はなかったのではないかと推測する。弥生時代、稲作農耕が始まると、多くの人口を養うことが可能になるが、その分、自然災害による危険度が高くなるのだ。江戸時代には多くの飢饉記録が書かれた。古来、飢饉に...食料自給と商品経済/飢えと食の日本史(菊池勇夫)

  • 『鎌倉殿』の時代/名品撰品(神奈川県立金沢文庫)

    〇神奈川県立金沢文庫特別展『名品撰品-称名寺・金沢文庫の名宝への学芸員のまなざし-』(2020年3月26日~5月22日)称名寺から寄託を受けた文化財を中心に、県立金沢文庫が所蔵・保管する文化財を交えて、それぞれの学芸員がテーマを決めて選んだ名品を展示する。同館の展示は何度も見ているので、絵画の『十二神将像』、彫刻の釈迦如来立像と十大弟子立像、工芸の青磁壺や青磁香炉(どちらも元時代)が出ていたのは予想どおり。声明や韻律・音楽関係の文書が多いことも、以前から紹介されていたので納得できた。本展の見どころは、今年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を意識した(?)文書がいくつか展示されていることだろう。『ゑんさい願文』は、金沢文庫の創設者である北条実時(1224-1276)の妻・尼ゑんさいが、亡夫・実時とともに源義経(115...『鎌倉殿』の時代/名品撰品(神奈川県立金沢文庫)

  • 祝!再開/国宝手鑑「見努世友」と古筆の美(出光美術館)

    〇出光美術館『国宝手鑑「見努世友」と古筆の美』(2022年4月23日~6月5日)新型コロナの影響で、ずっと閉まっていた出光美術館がついに再開した。いやー長かった。私が最後に参観したのは、2020年2月の『狩野派:画壇を制した眼と手』(会期短縮で終了)である。その後、2020年度に計画されていた展覧会は全て中止。2021年4月には『松平不昧生誕270年茶の湯の美』が完全予約制でスタートしたが、急激な感染拡大のため、2週間弱で閉幕してしまった。今度は悔しい思いをしないように、再開初日に予約を入れた。予約可能な時間帯が11時からだったので、10時の枠は満員なのかと思ったら、そうではなく、開館時間が「午前11時~午後4時」になっていた。当日、行ってみると、チケット売り場の前に、検温、QRコードの確認コーナーができていて...祝!再開/国宝手鑑「見努世友」と古筆の美(出光美術館)

  • 生存者の長い戦後/東京大空襲の戦後史(栗原俊雄)

    〇栗原俊雄『東京大空襲の戦後史』(岩波新書)岩波書店2022.2「東京大空襲」と呼ばれるのは、1945年3月10日未明に東京東部の住宅街に対して行われた無差別爆撃である。死者は10万人に及び、100万人以上が罹災したといわれている。早乙女勝元氏が被災者の証言を集めて執筆した『東京大空襲』(岩波新書、1971年)が有名だが、本書は早乙女氏の著書と違って「空襲当日/直後」の記録ではなく、生き残った被災者たちが、その後の長い人生をどのように苦しみながら生きたか、なぜそこに公的な救済が行われなかったのか、が主題となっている。第二次世界大戦末期には、米軍による無差別爆撃が日本全国で繰り返され、多数の民間人の命を奪っただけでなく、生き残った者にも甚大な被害を与えた。たとえば、戦災孤児については、全国で少なくとも12万人とい...生存者の長い戦後/東京大空襲の戦後史(栗原俊雄)

  • 支配への挑戦/女教師たちの世界一周(堀内真由美)

    〇堀内真由美『女教師たちの世界一周:小公女セーラからブラック・フェミニズムまで』(筑摩選書)筑摩書房2022.2大変おもしろく刺激的な1冊だった。本書は、19世紀半ばから現代まで、およそ150年にわたるイギリス女教師の歴史を論じている。19世紀半ば、イギリスでは新しい富裕層=ミドルクラスが誕生していた。しかし、不動産所有を基盤とするアッパークラスに比べると、彼らは景気変動の影響を受けやすく、万一、家族が苦境に陥った場合、ミドルクラス女子が選択できる職業は、女教師あるいはガヴァネス(家庭教師)だけだった。具体例となるのは、小説『ジェイン・エア』と『小公女』である。『小公女』に登場するミンチン女学院は、家庭婦人を育成するための保守的な女学校だったようだ。イギリスでは、18世紀末にメアリ・ウルストンクラフトが、男性と...支配への挑戦/女教師たちの世界一周(堀内真由美)

  • 古筆そのほか/吉祥の美(五島美術館)

    〇五島美術館館蔵・春の優品展『吉祥の美』(2022年4月2日~5月8日)五島美術館の創立者・五島慶太(1882-1959)の生誕140年を祝い、慶太翁蒐集の古筆・歌仙絵を中心に「吉祥」にかかわる優品を選び、約50点を紹介する(展示替え有)。同館の古筆・歌仙絵は何度も見ているけれど、心が洗われるようで、やっぱりよかった。冒頭には『高野切古今和歌集』の第一種と第二種が並んでいて、おお贅沢!と感激。第一種は、行間が広くおおらかで、墨の濃淡のリズムが美しい。五島美術館が持っているのは巻一春上の冒頭(年のうちに春は来にけり)で、歌の素朴な詠みぶりとよく合っているように思う。第一種の筆者は、ほかに巻九羇旅、巻二十大歌所歌を担当。巻二十は完本で伝わっていると読んですごい!と思ったら、2017年に京博の『国宝』展で見ていた(所...古筆そのほか/吉祥の美(五島美術館)

  • 奈良博から来ました/SHIBUYAで仏教美術(松濤美術館)

    〇渋谷区立松濤美術館『SHIBUYAで仏教美術-奈良国立博物館コレクションより』(2022年4月9日~5月29日)奈良国立博物館の数多くある所蔵品の中から、主として仏教に関する美術工芸品83件(展示替あり)を展示する。同館が仏教美術の名品を多数収蔵すること、プレスリリースに言うように、多くの展覧会に所蔵品を貸与し、我が国の文化を紹介する活動に寄与してきたことは、もちろん承知している。しかし「意外にもその所蔵品を名品展として東京で公開したことはありませんでした」とあるけれど、国立博物館が他の場所で名品展を行うこと自体が、あまりないのではないかと思う。奈良博が2005年に神奈川県立金沢文庫で開催した名品展『祈りの美-奈良国立博物館の名宝-』は非常に珍しかったので、今でも記憶に残っている。本展は、地下1階と2階の会場...奈良博から来ました/SHIBUYAで仏教美術(松濤美術館)

  • 阿弥陀の浄土/仏教絵画(日本民藝館)

    〇日本民藝館特別展『仏教絵画:浄土信仰の絵画と柳宗悦』(2022年3月31日~6月12日)玄関を入ると、2階正面の壁には、涼しげな水色地に蓮池文を染め抜いた幕。左右に「南無阿弥陀仏」「阿弥陀法界」の墨拓の軸。すでに阿弥陀の浄土に迎え入れられた雰囲気である。大階段の踊り場には、何か細長いものが立っていると思ったら『笈』だった。黒漆塗の表面に金工の仏や羅漢の姿を貼り付けている。大展示室は、右手の展示ケースの中にさまざまな仏画が並んでいた。本展が「これまでまとめて紹介されることがなかった、柳(宗悦)が蒐集した中世の仏教絵画をご覧いただく、貴重な機会」であることは、ホームページにも掲載されている。南北朝~室町時代のものが多いが、赤い衣(金彩の円文あり)を着て正面を向いた『阿弥陀如来像』は、中国・南宋~元時代(13世紀、...阿弥陀の浄土/仏教絵画(日本民藝館)

  • アイスショー"Stars on Ice 2022"東京公演千秋楽

    〇SOI(スターズ・オン・アイス)JapanTour2022東京公演(2022年4月10日13:00~、代々木第一体育館)フィギュアスケートの観戦記事は、昨年のNHK杯以来であるが、その後の全日本選手権、北京五輪、世界選手権は、もちろんテレビやネットで観戦していた。この間の出来事について言いたいことはいろいろあるが、全て胸の奥に封じて、久しぶりのアイスショーを楽しんできたことを報告する。出演者は、宇野昌磨、鍵山優真、友野一希、島田高志郎、田中刑事、ネイサン・チェン、ヴィンセント・ジョウ、チャ・ジュンファン、樋口新葉、河辺愛菜、三原舞依、宮原知子、紀平梨花、アリサ・リウ、ペアのクニエリム/フレイジャー、アイスダンスのチョック/ベイツ、ホワイエク/ベイカー、小松原美里/小松原尊、村元哉中/髙橋大輔(かなだい)。東京...アイスショー"StarsonIce2022"東京公演千秋楽

  • 浄瑠璃寺の吉祥天に遇う/天平の誘惑(芸大美術館)

    〇東京藝術大学大学美術館『藝大コレクション展2022春の名品探訪天平の誘惑』(2022年4月2日~5月8日)同館の所蔵品約3万件の中から選りすぐった名品を展示するコレクション展。今回は、天平の美術に思いを馳せた特集展示が見どころ。ということなのだが、具体的にどんな作品が出ているのか、特にチェックせずに行ったら、いきなり浄瑠璃寺の吉祥天立像と向き合うことになってびっくりした。つい数日前、浄瑠璃寺の本堂で、狭い厨子の中に収まった吉祥天を、目を凝らして見てきたばかりだったので。もちろんこちらは模刻(昭和6/1931年、関野聖雲作)だが、落ち着いた色合いで古仏の雰囲気がある。現地では見ることのできない後ろ姿。たっぷりした裾の広がり方と先端の丸まり方がかわいい。横顔も美麗。吉祥天立像、唐美人を思わせる容貌と装束のせいで、...浄瑠璃寺の吉祥天に遇う/天平の誘惑(芸大美術館)

  • ローマ帝国の贅沢と日常/ポンペイ(東京国立博物館)

    〇東京国立博物館特別展『ポンペイ』(2022年1月14日~4月3日)東京では終わってしまった展覧会だが、これから京都展・九州展もあるので、記録を書いておくのも無駄ではないかもしれない。紀元後79年、ヴェスヴィオ山の噴火により、火山噴出物に埋没したローマ帝国の都市ポンペイ。本展は、ナポリ国立考古学博物館の全面的協力のもと、壁画、彫像、工芸品の傑作から食器、調理具まで150件余りを展示し、2000年前の都市社会と豊かな市民生活をよみがえらせる。ポンペイ滅亡の物語は子供の頃から知っていた。少年マンガ誌や学習雑誌の読みもの記事で得た知識ではないかと思う。曖昧な記憶だが、1960~70年代のマンガやアニメには、ポンペイの運命を換骨奪胎したストーリーが描かれることもあったように思う。大人になってからは、澁澤龍彦がプリニウス...ローマ帝国の贅沢と日常/ポンペイ(東京国立博物館)

  • 文化工作の実態/大東亜共栄圏のクールジャパン(大塚英志)

    〇大塚英志『大東亜共栄圏のクールジャパン:「協働」する文化工作』(集英社新書)集英社2022.3.22戦時下、いわゆる大東亜共栄圏に向けてなされた宣伝工作である「文化工作」の具体的な姿を追う。短い序章では、戦時下の「文化工作」の特徴として(1)多メディア展開(2)内地向けと外地向けの差、および地域ごとのローカライズ(3)官民の垣根を越えた共同作業、特にアマチュアの能動的参加、の3点を示す。最後の点に関連して、文化を含む翼賛体制構築のための実践の基本原理が「協働」である、と指摘されている。余談だが、私は長年、文教関係の公的セクターで仕事をしており、いまもこの言葉はよく使われており、4月に入職した職場の一室に「協働スペース」の看板が掲げられているのを見つけて、苦笑している。本書が扱う分野(メディア)には、まんが、映...文化工作の実態/大東亜共栄圏のクールジャパン(大塚英志)

  • 2022年3月関西旅行:泉屋博古館、琵琶湖疎水船ほか

    2泊3日関西旅行最終日。前日は五条川端のホテルに泊まったので、朝は川端通りの桜並木を四条方面へ歩く。祇園白川筋の桜はほぼ満開。結婚式の前撮り写真を撮りにきているカップルとカメラマンが何組もいた。あれは中華圏の習慣だと思っていたが、日本でもこんなに広まっているのか。四条河原町からバスで泉屋博古館へ。今日はいくつか展覧会を見ていく予定なのだ。■泉屋博古館『旅スル絵画-住友コレクションの文人画』(2022年3月26日~5月15日)「旅」をキーワードに江戸時代の京・大坂を中心とする文人画を紹介し、あわせて東アジアを舞台にした書画による文人画家の交流にも注目する。冒頭には、三浦梧門筆『山水図』16面が展示されていた。やや茶ばんだ四角い画面に墨書や淡彩でさまざまな風景を描く。住友林業からの寄贈。この三浦梧門、日根対山など、...2022年3月関西旅行:泉屋博古館、琵琶湖疎水船ほか

  • 2022年3月関西旅行:浄瑠璃寺、西大寺、薬師寺花会式

    ■小田原山浄瑠璃寺(京都府木津川市)関西旅行2日目。浄瑠璃寺は、行政区分では京都府に属するが、観光エリア的には奈良のお寺である。事前に調べたら、奈良市内から直通のバスは、観光シーズンの土日しか運行されていなかったので、JR奈良線で加茂駅に出て、加茂駅から小型のコミュニティバスに乗った。ハイキングらしい女性客が2人、岩船寺で下りたあと、浄瑠璃寺前で下りたのは私1人だった。まだ10時になったばかりで、土産物屋も開いておらず、人影のない参道に、人懐っこそうな犬が2匹、うろうろしていた。コブシや馬酔木など、花木に埋もれた参道の先には黄色い漆喰塀と小さな門。これぞ大和路、という風情である。開いたばかりの受付で拝観をお願いしたあと、本堂(阿弥陀堂)の濡れ縁に上がり、ぐるりと裏をまわって、受付とは反対側の入口から中に入る。す...2022年3月関西旅行:浄瑠璃寺、西大寺、薬師寺花会式

  • 2022年3月関西旅行:長谷寺、大神神社

    ■長谷寺(奈良県桜井市)室生寺、大野寺を後にして長谷寺へ。仁王門前で拝観受付をして、長い登廊(のぼりろう)を上がって本堂を目指す。今回の関西旅行、長谷寺を訪ねようと決めたのには理由があった。私の実家の宗旨は真言宗豊山派なのである。総本山の長谷寺で、最近、四十九日を済ませたばかりの父の回向(廻向)をお願いしたいと思ったのだ。しかし全国のお寺を趣味で訪ね歩いているものの、回向のお願いは初めてなので、けっこう緊張しながら本堂の窓口に申し出た。渡された用紙に戒名など必要事項を記載すると、チェックをして受領してくれた。普通の回向(月牌回向)5,000円と特別な回向(日牌回向)10,000円のどちらにしますか?と聞かれたので、普通の回向でお願いした。あとでお札(契証)を郵送してくれるらしい。豊山香というお線香もいただいた。...2022年3月関西旅行:長谷寺、大神神社

  • 2022年3月関西旅行:室生寺、大野寺

    昨年4月に入職した仕事(パートタイム)を3月末で辞めることにした。4月1日から新しい仕事(フルタイム)に就くことになる。この機会に、初めての年度末「有休消化」をやってみることにして、2泊3日の関西旅行に行ってきた。■室生寺(奈良県宇陀市)28日(月)は朝6時台の新幹線で東京を出発。名古屋で近鉄に乗り換え、室生口大野からバスに乗り、室生寺に到着。20年ぶりくらいの参拝だと思う。赤い太鼓橋を渡って、右手の受付に向かう参道には微かな記憶があったが、いきなり立派な「宝物殿」の入口が目に飛び込んできて、びっくりした。階段を上がると、手前と奥に展示室が2室。手前のほうがやや広く、ガラスを隔てて、左(入口)側から地蔵菩薩立像、十一面観音立像、釈迦如来坐像がおいでになる。それぞれの左右には十二神将像が計6躯、波夷羅(辰神)、珊...2022年3月関西旅行:室生寺、大野寺

  • 2022年1-3月@東京:展覧会拾遺

    3月が終わるので一区切り。ここに書き残していない展覧会は、別途記事にするつもり。■江戸東京博物館企画展『徳川一門-将軍家をささえたひとびと-』(2022年1月2日~3月6日)※3月31日まで会期延長御三家・御三卿など、外から将軍家を支えた人々の活躍を、徳川宗家に伝来するゆかりの品々を通して紹介。徳川一門の人々が描いた絵画が何件か出ており、徳川光友(尾張藩2代藩主)の『千代能図』が可愛かった。なお、同館は大規模改修に伴い、4月から2025年度いっぱいまで長期休館に入る。建築の外観が特徴的なので、バブル期の箱モノの象徴みたいに言われることもあるが、常設展エリアの展示は、内容が濃くて好きだった。さらにパワーアップした再開を期待したい。■国学院大学博物館特別展『都の神やしろとまつり-世界遺産賀茂別雷神社の至宝ー』(20...2022年1-3月@東京:展覧会拾遺

  • お花見クルーズとプチ贅沢呑み

    有休消化の関西旅行から帰宅したところだが、26日(土)のあれこれから書いておく。この日、午前中は法事で実家のお墓のあるお寺に行ってきた。はっきりしないお天気で、ちょうど墓参のときに雨に降られた。午後は友人と大横川の「さくら回廊お花見クルーズ」に参加。黒船橋の船着場で乗船し、越中島橋をくぐって隅田川へ。隅田川の中ほどで折り返して、巴橋をくぐって、前川製作所本社ビルのあたりで折り返し、黒船橋に戻ってくるコースである。寒の戻りで開花が足踏み状態だったのでやきもきしたが、まあまあ花見を楽しめた。下船直前に降り始めた小雨の中、予約していた近所の居酒屋「まるお」へ。ほぼ1年ぶりである。お酒は、特に「呉春」が美味しかったので記念に写真を残しておく。肴はおつまみ八品のコースを注文。どれも美味しいし、自分で選ぶより変化があって楽...お花見クルーズとプチ贅沢呑み

  • 歴史総合を学ぶ/ものがたり戦後史

    〇富田武『ものがたり戦後史:「歴史総合」入門講義』(ちくま新書)筑摩書房2022.22022年4月から高校社会歴史科目が改編され、1年次の必修科目として「歴史総合」が始まるという。身近に中高生がいないので、全く知らなかった。従来の日本史、世界史を総合し、近代の始まりを「大航海時代」と見て、それ以降を扱うのだそうだ。文科省の国語教育や英語教育の施策にはあまり賛成できなかったが、これは期待していいのではないか。本書は「歴史総合」を担当する教員、あるいは授業を受ける高校一年生の参考書として執筆したものだという。ただしカバーする範囲は第二次大戦終結から今日までで、1講20ページくらいの全15講から成る。地図や図表(実質GDP増減率推移、政党系統図など)が豊富で、史料の全文または抜粋(日本語)が掲載されているのもありがた...歴史総合を学ぶ/ものがたり戦後史

  • 家族の50年史/中華ドラマ『人世間』

    〇『人世間』全58集(中国中央電視台他、2022年)中国東北地方の江遼省吉春市(モデルは吉林省長春市か)の陋巷「光字片」に暮らす周家の家族を通して、中国の現代史(1960年代~2000年代)を描いたドラマである。物語の始まりは1969年の春節。三人の子女の父親である周志鋼は「大三線」と呼ばれる大規模開発工事に従事するため、中国内陸の西南地区(重慶など)に旅立っていった。定年まで三年に一度の帰省しか許されない仕事である。老大(長男)の周秉義も江遼省建設兵団に入隊し、同省の山間部に赴く。老二(長女)の周蓉は文学好きの感受性豊かな少女で、尊敬する詩人の馮化成を追って貴州の山奥に出奔する。残された老三(次男)の周秉昆は、はじめ製材工場、のちに醤油工場で働き、母親と二人で暮らしていく。主人公はこの周秉昆(1952年生まれ...家族の50年史/中華ドラマ『人世間』

  • 門前仲町グルメ散歩:お店の入れ替わり

    門前仲町に住んで丸5年になるが、2年に及ぶコロナ禍もあって、お店の入れ替わりが目立つ。ひいきにしていた餃子レストランの「安々」がお店を閉めたのはもう2年前。跡地には新しいビルが建って、洋風のお店が入った模様。もう1軒、テイクアウトで時々利用していた「餃子酒場チャオチャオ」もなくなってしまった。そこにできたのが「雲林坊(ユンリンボウ)」という担々麺のお店。麻(痺れ)と辣(辛さ)を自分で選べる。こんな本格的な担々麺を近所で食べられるのはありがたいが、少し本格的すぎるかな…美味しいんだけど。ふだんのランチに食べるには、もうちょっと日本化した担々麺のほうが好き。門前仲町グルメ散歩:お店の入れ替わり

  • 戦闘集団から領主へ/中世武士団(国立歴史民俗博物館)

    〇国立歴史民俗博物館企画展示『中世武士団-地域に生きた武家の領主-』(2022年3月15日~5月8日)本展は、中世武士団を戦闘集団ではなく「領主組織」という観点から捉え、13世紀~15世紀を中心に、地域支配の実態と展開を明らかにする、とウェブサイトの企画趣旨にちゃんと書かれていたのに、私はこれを読まずに、武士団=戦闘集団という先入観で見に行ったので、会場でけっこう戸惑ってしまった。冒頭には、当然、戦う武士団の姿が提示される。荒涼とした合戦風景を描く歴博本『前九年合戦絵詞』を久しぶりに見た。東博でも時々見るが、東博本と歴博本はともに祖本からの派生本(模写本)なのだな。本品は13世紀後半の成立だが、源平合戦(12世紀末)の戦闘の資料と考えられており、描かれた武士は、静止した馬上から前方の敵を射ている。「合わせ弓」の...戦闘集団から領主へ/中世武士団(国立歴史民俗博物館)

  • 2022桜咲く

    昨日から、窓の外の桜がちらほら咲き始めた。これは今朝のベランダからの眺め。今日は三連休の最終日で、天気予報で雪になるかもと言われていたが、それほど寒くはならず、日中はまずまずの陽気だった。外に出てみると、枝によっては、かなり花が開いている。昨年、少し剪定をしたようで、そのせいか、今年は枝が密で蕾も多い気がする。花盛りが楽しみ。昨年もやはり春分の日前後の開花だった。昨年は、長く縁のあった職場を卒業することが決まっていて、感慨深い春だったが、1年経って、また4月から職場を変わることになった。いまの住まいに近い職場なので、たぶん来年も同じ桜を見ているだろうと思う。2022桜咲く

  • 秩序原理の模索/国際秩序(細谷雄一)

    〇細谷雄一『国際秩序:18世紀ヨーロッパから21世紀アジアへ』(中公新書)中央公論新社2012.112月24日にロシアによるウクライナ侵攻が始まって3週間になるが、事態は膠着の様相を見せている。ネットには、さまざまな情報、意見、憶測などが洪水のように流れており、国際政治に疎い私は、ただ茫然としていた。何か手がかりになる本を探しに行って本書を見つけた。2012年刊行の本書が、2022年の国際政治を考える上でどれだけ役に立つか、正直不安もあったが、だいぶ頭がクリアになった。本書は、18世紀のヨーロッパを起点として、今日(オバマ大統領の登場と太平洋の世紀の始まり)までの国際秩序の歴史を展望したものである。はじめに3つの秩序原理が示される。思想的な誕生順に「均衡(バランス)」「協調(コンサート)」「共同体(コミュニティ...秩序原理の模索/国際秩序(細谷雄一)

  • 板橋区立美術館の隣りでランチ

    板橋区立美術館の『建部凌岱展』に行こうと決めて、ハタと思い出したことがある。昨年、館蔵品展『はじめまして、かけじくです』に行ったとき、赤塚溜池公園の前に「いちカフェ」というお店を見つけたのである(2020年10月オープン)。次に板美に行くときは、ここでランチを食べようと決めて、1年経ってしまった。調べたら、幸い、まだ営業している様子だったので、行ってみた。注文の品が出てくるまで少し時間がかかったが、メニューは豊富、味よしコスパよしで満足。周辺に食事のできるところが何もなかったので、ほんとにありがたい。末永く営業を続けてほしい。赤塚溜池公園の梅林も見ごろだった。板橋区立美術館の隣りでランチ

  • 文芸と絵画のマルチタレント/建部凌岱展(板橋区立美術館)

    〇板橋区立美術館『建部凌岱展その生涯、酔たるか醒たるか』(2022年3月12日~4月17日)江戸中期に活躍した建部凌岱(たけべりょうたい、1719-1774)の初めての本格的な展覧会。凌岱は、弘前藩の家老喜多村家の次男として江戸で生まれ、弘前で文武両道の教育を受け、のち各地を遊歴。歌人、随筆家、読本作家、国学者としても知られている。凌岱の絵は、江戸絵画の展覧会で何度か見たことがあるが、国文科出身の私にとっては、建部綾足の名前のほうが懐かしい。本展には関連資料を含め約70件が出品されているが、その多くが個人蔵と、故郷の弘前市立博物館や青森県立図書館の所蔵だった。冒頭には、軽妙洒脱な雰囲気の墨画や墨画淡彩。子供のいたずら描きみたいな『野僧焚火』がかわいいし『能因法師』もいい。アシガモ、カラス、ホトトギスなど鳥の絵が...文芸と絵画のマルチタレント/建部凌岱展(板橋区立美術館)

  • 美術史のメインストリーム/ふつうの系譜2022(府中市美術館)

    〇府中市美術館企画展・春の江戸絵画まつり『ふつうの系譜「奇想」があるなら「ふつう」もあります-京の絵画と敦賀コレクション』(2022年3月12日~5月8日)2年前、突然のコロナ禍で会期51日のうち21日で途中閉幕となった展覧会が戻って来た。2020年の出品リスト(ネット上に残っている)を確認したが、本当に「そっくりそのまま」の再開催である。うれしい!スタッフブログ『「ふつう展」日記』によれば、この異例の対応が可能になったのは、敦賀市立博物館の全面的な協力によるそうだ。一方で、昨年、同様に途中閉幕になった『与謝蕪村』展の場合は、相手方が30箇所近くあるので再開催は無理、という説明もよく分かった。私は、2年前は前期だけ見ているのだが、特に復習せずに今回の会場に入った。すると冒頭には、どーんと大きな金屏風に黒々した牛...美術史のメインストリーム/ふつうの系譜2022(府中市美術館)

  • 東大寺修二会を懐かしむ

    今日は3月13日。東大寺修二会は明日が満行である。今夜も二月堂では、練行衆による法会が深夜まで営まれているのだろう。修二会の聴聞には何度も行っているが、今のところ2019年が最後になっている。2020年、2021年はコロナ禍、2021年はNHKBSプレミアムでリモート聴聞させていただいたけれど、やっぱり二月堂の局で知らない人と肩を寄せ合いながら、じっと堂内の気配に耳を澄ますのが好き。先月、東博に前田青邨の画巻『お水取』(東京・平木浮世絵財団蔵、1959年)が出ていたので、好きな場面の写真を撮ってきた。内陣を隠していた戸張が巻き上げられると、いよいよクライマックスという感じになる。そして韃靼(だったん)!法螺貝と鈴が刻むリズムが頭によみがえる。松脂の燃える甘い匂いも。あ~、また現地で聴聞できる日が戻ってきますよう...東大寺修二会を懐かしむ

  • 平安と鎌倉の仏像/空也上人と六波羅蜜寺(東京国立博物館)

    〇東京国立博物館特別展『空也上人と六波羅蜜寺』(2022年3月1日~5月8日)2022年が空也上人(903頃-972)の没後1050年に当たることを記念し、上人が創建した六波羅蜜寺に伝わる現存最古の空也上人像など、平安から鎌倉時代の彫刻の名品を公開する。六波羅蜜寺は大好きなお寺で、年1回くらいは立ち寄っているので、新味はないだろうと思いながら、せっかくの東京ご開帳(半世紀ぶり)なので見てきた。会場は1階大階段裏の特別5室である。中に入ると、最初に迎えてくれるのは地蔵菩薩立像(平安時代)。左手に長い毛髪の束を携えており、鬘掛地蔵(かずらかけじぞう)と呼ばれるもので、私の大好きな仏像のひとつである。横から見ると、体部は薄く、頭部は絶壁気味、整った鼻筋、うつむく眼差し。額が広いため、やや幼い印象を受ける。繊細優美で、...平安と鎌倉の仏像/空也上人と六波羅蜜寺(東京国立博物館)

  • 動員・監視・デジタル/中国「コロナ封じ」の虚実(高口康太)

    〇高口康太『中国「コロナ封じ」の虚実:デジタル監視は14億人を統制できるのか』(中公新書ラクレ)中央公論新社2021.122020年に始まったコロナ禍は、地球規模のパンデミックとなったため、各国の保険医療や政治体制の違い、さらには文化の違いについて、いろいろ考える機会になった。本書は、中国がいかにしてコロナを封じ込めたか、その手法、体制について検討したものである。中国の「コロナ封じ込め」に疑いを持つ人もいるが、著者は中国の「成功」を是認する立場である。ただし「上に政策あらば下に対策あり」の中国で、人々に外出自粛やロックダウンを守らせるのは容易なことではない。中国人のしたたかさを知るがゆえに、この成功には、驚きが大きいという。日本ではその答えを、デジタル技術を駆使した監視社会に求める人も多い。しかし、実際にはドロ...動員・監視・デジタル/中国「コロナ封じ」の虚実(高口康太)

  • 色彩の科学と美学/赤-色が語る浮世絵の歴史(太田記念美術館)

    〇太田記念美術館『赤-色が語る浮世絵の歴史』(2022年3月4日~3月27日)「悪」「恋」「信心」など、さまざまな切り口で浮世絵の見方を教えてくれる同館の展覧会。今回は色彩の「赤」に注目し、鮮やかな赤色が印象的な浮世絵約60点を展示する。浮世絵の進化過程は、2015年の同館の展覧会、錦絵誕生250年記念『線と色の超絶技巧』展で学んだのだが、あらためてまとめておこう。古い浮世絵は黒一色の「墨摺絵」だったが、まもなくこれに数色の手彩色を加えたものが現れた。鉱物質の顔料である丹色(オレンジ系)を主としたものを「丹絵(たんえ)」という。享保年間に入ると、丹に代わり、植物質の顔料である紅(ピンク系)を用いた「紅絵(べにえ)」が登場し、寛保年間には、墨摺絵に紅や緑などの色版を摺り重ねた「紅摺絵」が生まれる。石川豊信の『二代...色彩の科学と美学/赤-色が語る浮世絵の歴史(太田記念美術館)

  • 早春の奈良を思う/かたちのチカラ(根津美術館)

    〇根津美術館企画展『かたちのチカラ素材で魅せる』(2022年2月26日~3月31日)素材を生かしたミニマルな造形の美しさに着目する展覧会。先日の『文様のちから』が力の入った好企画だったので、今回も面白いに違いないと期待しつつ、何が出ているのかはあまり気にせず、見に行った。冒頭には、本展の対象となるジャンル、漆工・陶磁・金工がひとつずつ。漆案(うるしあん)は、中国後漢時代(西暦102年)の文机で、何度か見たことがある。天板に大きな亀裂が走っているが何とか机のかたちを保っている。天板の表面は褪せた朱色、裏面は、つるつる光って黒っぽく見えた。土中にあっても朽ち果てずに伝来したのは、強靭な漆膜あってのことだという。隣には、白磁浄瓶(唐時代)と響銅浄瓶(高麗時代)。よく似たかたちと大きさだが、白磁浄瓶が円満でやわらかな卵...早春の奈良を思う/かたちのチカラ(根津美術館)

  • 違いと共通点/誤解しないための日韓関係講義(木村幹)

    〇木村幹『誤解しないための日韓関係講義』(PHP新書)PHP研究所2022.3木村幹先生の本『韓国愛憎』が分かりやすくて面白かったので、もう1冊。こちらは学生さんの「オンライン研究室訪問」のかたちをとって、日韓関係と韓国の政治・経済・社会事情について、多くの日本人が感じている疑問に丁寧に答えたものである。はじめに、韓国の政治経済の危機を煽り続ける日本メディアの認識を否定し、各種統計から、リアルな韓国の姿を確認する。日本国内における韓国経済「危機」説は、1990年代のアジア通貨危機の状況を念頭に置いている。しかし韓国経済は、すでに20年以上、一貫して経常収支黒字の状態にある。日本社会があまりにも変わらないので、他国の状況を同じように考えてしまいがちという指摘に苦笑した。政治面では、退任後の大統領が次々逮捕されるな...違いと共通点/誤解しないための日韓関係講義(木村幹)

  • 美と信仰の贅沢/春日神霊の旅(金沢文庫)

    〇神奈川県立金沢文庫特別展『春日神霊の旅-杉本博司常陸から大和へ』(2022年1月29日~3月21日)金沢文庫が、現代美術作家・杉本博司氏の文化活動を広く紹介する小田原文化財団と共催し、春日信仰を紹介する展覧会。春日大社やゆかりの社寺の宝物に加え、称名寺・金沢文庫に伝わる、春日大社・興福寺に関する仏教書・文書、杉本氏によって収集された春日信仰を中心とする神道美術作品等を展示する。なるべく事前情報は遮断して見に行ったのだが、だいたい予想どおりで、期待どおりの質の高さを楽しめた。展示室の入口には、丸に三角文を描いた白い幕。小田原文化財団のホームページを見ると、同財団の門幕と同じものだ(北条氏の一つ鱗文がモチーフかな)。「暗いのでご注意ください」の札が出ており、なるほど、展示室内はいつもより暗い。入ってすぐの展示ケー...美と信仰の贅沢/春日神霊の旅(金沢文庫)

  • 美を身近に/季節をめぐり、自然と遊ぶ(大倉集古館)

    〇大倉集古館企画展『季節をめぐり、自然と遊ぶ~花鳥・山水の世界~』(2022年1月18日~3月27日)花鳥や山水など自然の姿を写した和漢の絵画・書跡・工芸品を取り上げる展覧会。そう聞いても、具体的にどんな作品が出ているのかイメージが湧かなくて、あまり期待せずに見に行った。そうしたら、意外と面白かった。はじめに日本の絵画・工芸を、春と秋に分けて紹介する。春の部に出ていた『桜に杉図屏風』(桃山時代・16世紀)と、秋の部に出ていた『網代に葡萄図屏風』(江戸時代・17世紀)が、とても個性的で目を惹いた。どちらも六曲一双。前者は、金地にモコモコと黒っぽい杉と白い桜を描く。樹高を屏風の縦の長さに揃え、桜の樹形が杉とそっくりの円錐形なのは、繰り返しのデザイン的効果をねらった構図である。桜と葉桜、金の霞や土堤が、適度な変化を添...美を身近に/季節をめぐり、自然と遊ぶ(大倉集古館)

  • 門前仲町グルメ散歩:2022チョコパフェ

    2月最後の週末、すっかり春のような陽気になったので、冷たいものが食べたくなって、深川伊勢屋の喫茶室へ。久しぶりのチョコレートパフェ。いまどきのおしゃれパフェではなく、昭和の記憶に忠実な味と盛り付けが好き。ただねえ、去年の夏の店内改装とメニュー見直しから、少し盛り付けが変わって、生のフルーツでなくバナナチップが乗るようになってしまったのが残念。営業時間も短くなってしまったし。コロナ禍でお店も大変なのだろうと思う。引き続き、ひいきにします。門前仲町グルメ散歩:2022チョコパフェ

  • 家族・学校・地域/日本人のしつけは衰退したか(広田照幸)

    〇広田照幸『日本人のしつけは衰退したか:「教育する家族」のゆくえ』(講談社現代新書)講談社1999.4少し古い本だが、SNSで「これは名著」というお薦めを見たので読んでみた。刊行は1999年。1997年の酒鬼薔薇事件など青少年による凶悪事件が相次ぎ、「家庭の教育力が低下している」という見方が常識となっていた時期だ。しかしこのイメージは本当に正しいのか?本書は、戦前から今日までの、学校、家族、地域の役割の変容とともに、検証していく。明治~昭和初年の農漁村や庶民の家庭では、家業=生産に直結した「労働のしつけ」は厳しかったが、「基本的生活習慣」や「行儀作法」は厳しくしつけられていなかった。学校教育と「村のしつけ」は全く別物で、両者はさまざまな軋轢を生んだ。ともかく子供が学校へ通う慣行が定着すると、親たちは子供を学校に...家族・学校・地域/日本人のしつけは衰退したか(広田照幸)

  • 手芸の楽しみ/ニッポン国おかんアート村(渋谷公園通りギャラリー)

    〇東京都渋谷公園通りギャラリー『MuseumofMom'sArtニッポン国おかんアート村』(2022年1月22日~4月10日)展覧会概要によれば、作家・編集者・写真家である都築響一ほかのゲストキュレーターにより、2000年代初頭から「おかんアート」と呼ばれて密かに注目されてきた、「母」たちのつくる手芸作品の数々、1,000点以上を紹介する展覧会だという。私は、都築響一さんのお名前も、「おかんアート」という言葉も初耳だった。「おかんアート」という名称に、ジェンダーの視点から批判(というほどではないが不満やざわつき)が表明されていることは知った上で見に行ったが、民族学や歴史民俗学の展示(それも現代・近過去の)が大好きな人間としては、とても楽しませてもらった。会場内のパネルに、おかんアートと民芸を比較して、民芸は風土...手芸の楽しみ/ニッポン国おかんアート村(渋谷公園通りギャラリー)

  • 美人さん勢ぞろい/上村松園・松篁(山種美術館)

    〇山種美術館開館55周年記念特別展『上村松園・松篁-美人画と花鳥画の世界-』(2022年2月5日~4月17日)美人画の名手として知られる女性画家・上村松園(1875-1949)と、その長男で花鳥画を得意とした上村松篁(1902-2001)に焦点を当てた特別展。さらに松篁の長男である上村淳之の作品、同時代の画家による美人画と花鳥画など、63件が展示されている。私は、ふつうの美人画はあまり好みでないので、名手といわれる上村松園にも関心がなかったが、よい機会なので見てきた。松園の美人画は18件。大正時代の『蛍』から最晩年の『杜鵑を聴く』まで、全て日本髪に着物姿の女性を描いたものだが、よく見ると、年齢や装いは多様である。あだな女盛りだったり、初々しい少女だったり。色っぽさでは、団扇を口元に当て、蚊帳の間から半身を覗かせ...美人さん勢ぞろい/上村松園・松篁(山種美術館)

  • パネルで楽しむ/湖北・長浜に息づく観音文化(浅草文化観光センター)

    〇浅草文化観光センター第3回【パネル展・講演会】『湖北・長浜に息づく観音文化~ホトケと祈りの姿~』(2022年2月15日~3月6日)東京長浜観音堂に千手千足観音立像を見に行ったら、いま浅草でパネル展示もやっています、と聞いたので、さっそく見てきた。湖北・長浜の観音像17件がパネルで紹介されていた。必ず正面全身の白黒写真なのが、展覧会の図録っぽい。様式、伝来、見どころなど丁寧な解説が加えられている。また保有施設(お寺、公民館など)の小さな写真パネルと、管理状況(〇〇町内会で管理など)、年中行事、ご開帳日なども添えられていた。せっかくなので(チラシにも掲載されているが)17件の観音像を転記しておこう。・向源寺(渡岸寺観音堂)十一面観音立像・医王寺十一面観音立像・鶏足寺十一面観音立像・石道寺十一面観音立像・来現寺聖観...パネルで楽しむ/湖北・長浜に息づく観音文化(浅草文化観光センター)

  • 千手千足観音立像(東京長浜観音堂)を見る

    〇東京長浜観音堂『千手千足観音立像(長浜市高月町西野・正妙寺蔵)』(2022年1月12日~2022年2月27日)日本橋の長浜観音堂に4回目の訪問。現在の展示は、正妙寺の千手千足観音である。私がこの像を初めて見たのは、2010年に高月・観音の里ふるさとまつりを訪ねたとき。想像もしなかった異形に衝撃を受けた。東京では、2016年、芸大美術館の『観音の里の祈りとくらし展II』で紹介され、2019年、びわ湖長浜KANNONHOUSEでも展示されている。その結果、ぜひまた見たいというファンの声に応えて、今回の再登場となったことが、パネルに説明されていた。「こういうの…他にあるんですか?」と学芸員の方にお尋ねしてみたら、「いや、ないです」とのこと。ただし鎌倉時代の天台系の儀軌(図像集)『阿沙縛抄』『白宝抄』には「千足観音」...千手千足観音立像(東京長浜観音堂)を見る

  • 差別に抗した人々/全国水平社1922-1942(朝治武)

    〇朝治武『全国水平社1922-1942:差別と解放の苦悩』(ちくま新書)筑摩書房新社2022.2全国水平社は、部落差別からの解放を求めて部落民自らが結成した社会運動団体で、創立は1922年、今からちょうど100年前にあたる。本書は、大阪人権歴史資料館の学芸員・館長であった著者が、長年の研究を踏まえ、全国水平社の結成から消滅、そして戦後の部落解放運動への継承までを記述したものである。1871(明治4)年の「解放令」によって、建前上、近世的な差別的身分は廃止されたが、その後も部落民衆に対する差別はなくならず、1900年前後には、近代化に対応できない「劣位」な人々に対して「特殊(特種)部落」という新たな差別的呼称が生まれる。同時期に、各地で自主的な部落改善運動が始まるとともに、多様な主体による融和運動(差別をなくす運...差別に抗した人々/全国水平社1922-1942(朝治武)

  • 戦前から戦後まで/民藝の100年(東京国立近代美術館)

    〇東京国立近代美術館柳宗悦没後60年記念展『民藝の100年』(2021年10月26日~2022年2月13日)先々週見てきたのだが、これは思いのほか難しい展覧会だぞと思って、感想が書けずにいた。「民藝」はおよそ100年前、柳宗悦、濱田庄司、河井寬次郎らが作り出した新しい美の概念である。本展は、出版物、写真、映像などの関連資料を加えると、総点数450点を超える大規模な展覧会だが、その6割以上(工芸品に限ればもっと)は、柳宗悦が設立した日本民藝館の所蔵品だ。本展は、おおむね蒐集年代別に構成されており、1910-1920年代初頭/1910年代後半-1920年代に蒐集された朝鮮陶磁、日本蒐集紀行のこぎん(刺し子)や木喰仏、西洋蒐集紀行のスリップウェアやウィンザーチェアは、どれも民藝館でおなじみの品だった。1920-193...戦前から戦後まで/民藝の100年(東京国立近代美術館)

  • 祝リニューアル/松岡コレクションの真髄(松岡美術館)

    〇松岡美術館再開記念展『松岡コレクションの真髄』(2022年1月26日~4月17日)同館は、貿易・不動産業などで知られる実業家の松岡清次郎(1894-1989)が、長年にわたって蒐集した美術品を展示するため、1975年に設立した美術館である。2020年に港区白金台(松岡の私邸跡地)に移転し、公開を続けていたが、2019年6月から、館蔵品の修復調査と諸設備改修工事のため休館していた。ちょうどコロナ禍と重なるかたちになったが、このたび、無事にリニューアルオープンした。私のブログの記録では、2004~05年に陶磁器コレクションを目当てに何度か訪ねているのだが、その後は、気になりながら、ご無沙汰していた。久しぶりの訪問なので、建物の外観には全く記憶がない。中に入ると、右手に巨大な松岡清次郎氏の半身像(作者は伊東傀)があ...祝リニューアル/松岡コレクションの真髄(松岡美術館)

  • 変わりゆく隣国/韓国愛憎(木村幹)

    〇木村幹『韓国愛憎:激変する隣国と私の30年』(中公新書)中央公論新社2022.1木村幹先生は韓国現代政治の研究者だが、ツイッターでは、韓国情報に加えて、院生指導の苦労とか趣味の輪行の様子とか、いろいろつぶやいてくださるのが楽しいので、私は長年フォローしている。しかし著書を読むのは、ご本人が「自叙伝もどき」とおっしゃる本書が初めてである。本書は、1966年、在日コリアンの暮らす街である大阪府河内市(現・東大阪市)で著者が生まれたところから始まる。やがて京大法学部に進んだ著者は、大学教員を目指すことに決め、特に思い入れもなく、消去法的に韓国を研究対象に選ぶ。韓国留学、米国留学、愛媛大学等を経て神戸大学に着任。政治学の新しい研究スタイル「政治科学」との葛藤に悩んだりする。2002年から日韓歴史共同研究に参加。これは...変わりゆく隣国/韓国愛憎(木村幹)

  • 東西の古代/古代中国・オリエントの美術 リターンズ(永青文庫)

    〇永青文庫冬季展『古代中国・オリエントの美術リターンズ-国宝“細川ミラー“期間限定公開-』(2021年12月18日~2022年2月13日)2020年の早春展で、新型コロナの影響で途中終了となった『古代中国・オリエントの美術』展の再開催だという。2020年の展覧会は、2か月の会期が半月短縮されてしまったが、まあまあ開催期間を保てたし、絶対行くつもりでチェックしていた展覧会ではなかったので、私の「行かれなかった展覧会」には記録していなかった。公式ホームページに残っている出品リストを見ると、主要な展示品は今回とほぼ同じ。ただし2020年には、今回出品されてない支那趣味の絵画や高麗茶碗が出ていたようである。私は、2020年の展覧会は見逃したが、永青文庫には何度も来ているので、4階展示室の中国関係は見覚えのあるものが多か...東西の古代/古代中国・オリエントの美術リターンズ(永青文庫)

  • 女文字による動員/「暮し」のファシズム(大塚英志)

    〇大塚英志『「暮し」のファシズム:戦争は「新しい生活様式」の顔をしてやってきた』(筑摩選書)筑摩書房2021.3コロナ禍の中で広まった「新しい生活様式」という語の響きに、著者は不快な既視感があったという。日々の暮らしのあり方について為政者が「新しさ」を求め、社会全体がそれに積極的に従う様が、かつての戦時下、より具体的には、1940(昭和15)年、第二次近衛内閣が提唱した「新体制」の一部、「新生活体制」を想起させるというのだ。「新体制」とは、全面戦争に対応し得る国家体制構築のため、政治、経済、教育、文化など「国民生活」の全面的な更新を目論むものだった。国民の「内面」の動員が意図されていたと言ってもよい。そこで用いられたのは、勇ましい「男文字」のプロパガンダばかりではない。本書は、我々の「日常」や「生活」が「女文字...女文字による動員/「暮し」のファシズム(大塚英志)

  • 紅梅白梅2022

    いい天気。永青文庫に行く途中、神田川沿いの江戸川公園で見た梅。満開のようだけれど、まだまだ蕾がたくさんある。いま住んでいる近所は、桜は豊富だが、見応えのある梅は少ない。やっぱり梅は、山の手のものかもしれない、紅梅白梅2022

  • 少女たちの時間/中華ドラマ『八角亭謎霧』

    〇『八角亭謎霧』全12集(愛奇藝、2021)2020年に『隠秘的角落』『沈黙的真相』などで話題をさらった「愛奇藝・迷霧劇場」シリーズの新作であるが、残念ながら、出来はいまひとつだった。舞台は江南地方の小鎮・紹武(ロケ地は紹興)。女子高生の玄念玫は、チンピラの朱勝輝につきまとわれていた。あるとき、朱勝輝の遺体が運河で発見される。玄念玫は祖母と両親の四人暮らし。父親の玄梁には3人の妹がいた。すぐ下の妹・玄敏は、玄梁とも親しい刑事の袁飛と結婚している。その下の双子の姉妹のうち、妹の玄珍は、18歳のとき何者かに殺害され、公園にある八角亭近くの水辺で遺体が見つかった。19年経っても犯人は不明のままである。事件後、姉の玄珠は家を出て、遠くの都会で暮らしていた。玄梁は、妹を守れなかった自責の念に苛まれ、次第に玄珍そっくりに育...少女たちの時間/中華ドラマ『八角亭謎霧』

  • 中世社会の原風景/荘園(伊藤俊一)

    〇伊藤俊一『荘園:墾田永年私財法から応仁の乱まで』(中公新書)中央公論新社2021.9質量ともに読み応えのある1冊だった。中心テーマは中世の荘園だが、記述はその前史である律令国家から始まり、荘園の誕生、成長、変容、終焉まで750年余りの歴史を追っていく。試しに自分の理解をまとめてみる。古代日本の律令制は公地公民を原則としたが、人々が新たに農地を開発するインセンティブに欠けたため、743年に墾田私財永年法が制定され、各地に初期荘園が生まれた。9世紀後半、摂関期の朝廷は国司に権限を委譲し、国司(受領)は国内の耕地を名(みょう)に分けて有力農民の田堵(たと)に経営と納税を請け負わせた。さらに耕地の開発を奨励するため、税の減免を認めた免田を許可した結果、免田型荘園が生まれた。ここまでが中世荘園制の前史にあたる。10世紀...中世社会の原風景/荘園(伊藤俊一)

  • 「文学」の新しい視点/明治文学の彩り(日本近代文学館)

    〇日本近代文学館冬季企画展『明治文学の彩り-口絵・挿絵の世界』(2022年1月8日~2月26日)展示されているのは、明治期に刊行された書籍や冊子の口絵・挿絵である。画家の名前を挙げれば、鏑木清方、水野年方、渡辺省亭、鰭崎英朋など。この数年、再評価の機運が高まっている画家たちだ。しかし問題は、なぜ「近代文学館」がこのような展覧会を企画したかである。開催趣旨によれば、江戸の戯作者たちは、文章よりも先に口絵・挿絵の下絵を描き、それを見ながら文案を練るのが普通だった。そうした制作慣習は維新後も廃れず、明治の近代作家たちの多くも、実は口絵・挿絵に指示を出し続けていたという。つまり、我々が明治の「文学者」として認識している、坪内逍遙や尾崎紅葉、幸田露伴、樋口一葉、島崎藤村、泉鏡花、おそらくは田山花袋や夏目漱石にとっても「作...「文学」の新しい視点/明治文学の彩り(日本近代文学館)

  • 時代や産地を超えるもの/美の標準(日本民藝館)

    〇日本民藝館特別展『美の標準-柳宗悦の眼による創作』(2022年1月10日~3月20日)いま東京国立近代美術館では『民藝の100年』展が開催されている(まだ見に行けていない)。ということは、同館の名品は近美に出払っているはずだから、こっちはどうなんだろう?と思ったが、そんな心配は全く無用だった。本展は、柳宗悦が「美の標準」として蒐集した、多種多様な品々を展観する。という企画趣旨を事前に読んでもよく分からなかったが、展示を見た上で読み直すと、「時代や産地、用途などが異なりながら同一の美しさで通底」とか「同じ美の源泉から多種多様な姿で顕れた」という表現が、まさに!と実感できる。今回は、玄関を入ってすぐのしつらえがとても気に入ったので、大階段まわりから見ていくことにした。向かって左の展示ケースには拓本、印章、色紙和讃...時代や産地を超えるもの/美の標準(日本民藝館)

  • 染織コレクションを見る/文様のちから(根津美術館)

    〇根津美術館企画展『文様のちから技法に託す』(2022年1月8日~2月13日)工芸品の文様表現と技法に着目する展覧会。陶磁器・漆器・金工など、多様な工芸品が取り上げられているが、展示室1は着物と裂を中心に扱う。同館が染織品を主要なテーマとした展覧会を開催するのは2010年以来のことだという。いま調べたら、新創記念特別展・第6部『能面の心・装束の華物語をうつす姿』のことかな?私は染織品にあまり興味がないので、新創記念特別展・第1~8部のうち、この第6部だけ見ていない(笑)。なので、同館の染織品コレクションを見るのは初めてで、とても面白かった。主に江戸時代・18~19世紀の着物(小袖・法被・直垂など)が20件近く展示されていた。「繰り返し」は文様の基本だが、複雑で重厚感のある「唐織」が可能になったのは、16世紀に西...染織コレクションを見る/文様のちから(根津美術館)

  • 五月のタイムループ/中華ドラマ『開端』

    〇『開端(RESET)』全15集(東陽正午陽光影視有限公司、2022)1月11日に配信が始まり、いま大反響を呼んでいるドラマ。いやあ面白かった!若者好みのSFと見せかけて、ヒューマンドラマであり、犯罪推理劇でもある。しかし【ネタバレ】厳禁ドラマなので、未視聴の方は以下を読まないでほしい。2019年5月のある日、中国南方の嘉林市の女子大生である李詩情(趙今麦)は、いつもの路線バスで、うとうと居眠りをしてしまった。誰かの携帯電話の着信音(パッヘルベルのカノン)を聞いて目が覚めたと思った瞬間、乗っていたバスが引火爆発する。不思議なことに、李詩情は再び同じバスの同じ席で目を覚ました。続いてまた同じ着信音が聞こえ、バスが爆発する。三回目、目覚めた李詩情は走行中のバスから下りようとするが成功しない。四回目、五回目も失敗した...五月のタイムループ/中華ドラマ『開端』

  • 父と息子の絆/中華ドラマ『雪中悍刀行』

    〇『雪中悍刀行』全38集(新麗伝媒、企鵝影視、2021)架空の王朝・離陽王朝を舞台とする古装ファンタジー。かつて鉄騎軍団を率いて諸国を平定し、いまは上柱国の地位を得た北椋王・徐驍(胡軍)には二人の娘と二人の息子がいた。徐驍は長男の徐鳳年(張若昀)を後継ぎに考えていたが、当の徐鳳年は諸国遊歴から成人式のために戻ったところで、父の後を継ぐ気は全くない。武芸を学ぶことさえ断固拒否している。一方、次男の徐龍象(荣梓杉)は天性、優れた内力を備えており、家臣の中には、徐龍象こそ後継ぎにふさわしいと考える者もいた。徐驍は徐龍象を武当山へ遠ざけるが、徐鳳年は父の仕打ちに怒って、弟を迎えに武当山へ向かう。徐鳳年の遊歴中、苦楽を共にした馬夫の老黄は、実は剣九黄と呼ばれる剣客だった。老黄は、東海の武帝城に住む王仙芝に敗れて以来、武芸...父と息子の絆/中華ドラマ『雪中悍刀行』

  • 伝法灌頂の実態/密教相承(神奈川県立金沢文庫)

    〇神奈川県立金沢文庫特別展『密教相承-称名寺長老の法脈-』(2021年12月3日~2022年1月23日)称名寺の僧侶達が伝授した密教典籍をもとに、称名寺が執行してきた密教修法の様子を仏像、仏画、仏具を交えて再現し、密教寺院・称名寺の中世の姿を紹介する。と聞いても、展示のイメージがつかめなくて、迷っていたら最終日になってしまった。難しかったが、中世の寺院の運営実態について、いろいろ新しい知識も得た。称名寺の開基は、北条氏の一族である金沢(かねさわ)北条氏の祖、北条実時(義時の孫)である。今年は大河ドラマで北条氏が脚光を浴びているので、金沢文庫も集客の好機かもしれない。下野薬師寺の僧だった審海を招いて真言律宗の寺となり、二世長老・釼阿、三世長老・湛睿に受け継がれた。展示には、『両界種子曼荼羅』(鎌倉時代)や『弘法大...伝法灌頂の実態/密教相承(神奈川県立金沢文庫)

  • 歴史の否定は犯罪か/歴史修正主義(武井彩佳)

    〇武井彩佳『歴史修正主義:ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで』(中公新書)中央公論新社2021.10近年、日本の歴史(特に近現代史)をめぐって、特定の主張が歴史修正主義であるとかないとかの議論を聞くようになった。本書は欧米社会の歴史修正主義を分析したものだが、日本の事例を考える参考になるかもしれないと思って読んでみた。はじめに前提として、歴史学の観点から歴史とはどのように記述されるのかを確認する。歴史は選択された事実の解釈であり、歴史を「修正」することは学術的な行為である。しかし、歴史の政治利用と結びついた歴史修正主義は批判の対象とされてきた。ヨーロッパでは、19世紀末~20世紀前半、フランスにおけるドレフェス事件や、ドイツにおける第一次世界大戦の戦争責任論などを通じて、この問題が意識されるようにな...歴史の否定は犯罪か/歴史修正主義(武井彩佳)

  • 関西のしめ飾り

    新春関西旅行の写真から。奈良・東大寺三月堂(法華堂)のしめ飾り。縄の上に串柿が載っている。京都・四条通りの鍵善良房のしめ飾り。「蘇民将来子孫家門」と書いた木札を飾る。これは伊勢発祥のスタイルらしいが、むしろ八坂神社との関係かもしれない。私は東京育ちなので、正月のしめ飾りといえば、全体に縦長で、紅白の紙垂(しで)や金銀の水引、つくりものの海老・扇・橙などを賑やかに盛ったものだと思ってきた。関西風の、水平の太い縄が主役のしめ飾りは、いまだに珍しい。なお、大阪文化圏は縄の右端が太いが、伊勢は逆で、左側が太いのだそうだ(※三重県総合博物館)。関西のしめ飾り

  • 武則天のユートピア/檻獄都市(大室幹雄)

    〇大室幹雄『檻獄都市:中世中国の世界芝居と革命』三省堂1994.7年末に中国ドラマ『風起洛陽』を見ていたら、むかし、則天武后のイメージについて、大きな影響を受けた大室幹雄の本を読み返したくなった。大室幹雄さん、Wikipediaでは「歴史人類学者」と紹介されている。1981年の『劇場都市』に始まり、漢~唐末を扱った中国古代都市文明論シリーズを計7冊出しており、私は90年代に耽読した。さて武則天が登場するのはどの1冊だったか、思い出せず、公共図書館をハシゴして確認し、ようやく本書を見つけ出した。本書前半の主人公は、唐太宗・李世民。「最初は鷹、つぎは杜鵑(ホトトギス)、第三は鸚鵡、そして終わりは阿呆鳥」として描かれる。唐を建国した父の李淵(唐高祖)に従う、颯爽たる青年将校としての「鷹」の時代。兄の皇太子・李健成と弟...武則天のユートピア/檻獄都市(大室幹雄)

  • 2022年1月関西旅行:東大寺、四天王寺、萬福寺など

    ■華厳宗大本山東大寺(奈良市雑司町):二月堂~三月堂~大仏殿~戒壇院千手堂~東大寺ミュージアム新春旅行で訪ねたお寺などを書いておく。初日は奈良博のあと、久しぶりに東大寺の諸堂を巡った。コロナ対策の換気のため窓や扉を開放しているお堂が多く、三月堂も大仏殿も、外光がよく入って、以前と違った雰囲気に感じられた。大仏殿の入口に「戒壇院千手堂特別公開」の案内札が出ていた。戒壇堂が保存修理と耐震化工事のため、2020年7月1日から約3年間、拝観を中止しているのに代えて、同年7月4日から千手堂を特別公開中だという。全然気づいていなかった。簡素なお堂の須弥壇には大きな厨子が据えられ、中に金色に輝く千手観音菩薩立像と、小さめの四天王立像が収められている。厨子は三方の扉が開け放たれており、正面の両扉には、風神雷神と二十八部衆が描か...2022年1月関西旅行:東大寺、四天王寺、萬福寺など

  • 2022年1月関西旅行:寅づくし(京都国立博物館)ほか

    〇京都国立博物館新春特集展示『寅づくし-干支を愛でる-』(2022年1月2日~2月13日);特集展示『新収品展』(2022年1月2日~22月6日);特集展示『後期古墳の実像-播磨の首長墓・西宮山古墳-』(2022年1月2日~2月13日)特集展示を冠していたのは、2階の『寅づくし』と1階の『新収品展』『後期古墳の実像』だけだが、その他の展示室も、それぞれユニークなテーマ設定で面白かった。京博の平常展を見たのは久しぶりである。いろいろ制約はあるのだろうが、特別展ばかりやっていないで、もう少し平常展に力を入れてほしい。2階『寅づくし』の冒頭には、おめでたい赤色を背景に、京博の公式キャラ・トラりんのモデル、光琳の『竹虎図』が掛っていた。京博が干支にちなんだ新春特集陳列を始めたのは、2015年の『さるづくし』からなので、...2022年1月関西旅行:寅づくし(京都国立博物館)ほか

  • 2022年1月関西旅行:中国の漆器(中之島香雪美術館)

    〇中之島香雪美術館企画展『中国の漆器』(2021年12月11日~2022年2月23日)中国漆器の多彩な魅力を紹介する企画展。「これまであまり紹介されてこなかった香雪美術館の所蔵品を中心に」というが、68件のうち23件は個人蔵の表記がついていた。展示は技法別に「彫漆(堆朱・堆黒)」「螺鈿」「無文漆器」「存星」「箔絵・嵌骨(がんこつ)」「蒟醬(きんま)・天川(あまかわ)・独楽」で構成されている。明代の作品が中心だが、元代や南宋に遡るものもある。明の永楽年間には、官営工場で製作された漆器に皇帝款年製銘が刻まれるようになった。ところが『牡丹文堆朱香合』(個人蔵)には「大明宣徳年製」の沈金銘の下に「大明永楽年製」の針刻銘が確認されている。より新しい年代に見せるってどういうこと?と戸惑ったが、宣徳年間には工人の腕が落ちて、...2022年1月関西旅行:中国の漆器(中之島香雪美術館)

  • 2022年1月関西旅行:名画の殿堂 藤田美術館展(奈良博)

    ■奈良国立博物館特別展『名画の殿堂藤田美術館展-傳三郎のまなざし-』(2021年12月10日~2022年1月23日)この展覧会の情報を得て、慌てて奈良行きの計画を立てた。奈良博が年末年始に特別展を開催するのは異例である。奈良博ホームページの「過去の展覧会情報」を10年くらい遡ってみたが、だいたい年末年始は、春日若宮のおん祭特集か新たに修理された文化財の特集陳列なのだ。本展は、2019年春に開催された特別展『国宝の殿堂藤田美術館展』の続編として、藤田美術館所蔵の絵画を中心に構成したもの。会場で「初公開」の多さにびっくりした(展示74件中23件!)が、藤田美術館と奈良博の共同調査によって、隠れた名品群が確認されたのだという。すでに評価の確立している名品絵画も、もちろん出ている(この展覧会、会期中の展示替えがほぼない...2022年1月関西旅行:名画の殿堂藤田美術館展(奈良博)

  • 若者は恋路を急ぐ/文楽・染模様妹背門松

    〇国立文楽劇場令和4年初春文楽公演(2022年1月8日、17:30~)年の初めは大阪の文楽公演から。そう決めたのはいつだったか、ブログ内で調べたら、2013年が最初のようだ。2020年は三が日を台北で過ごしたあと、2週目の三連休を使って見に行った。新型コロナが騒がれ出す直前だった。しかし2021年は、さすがに東京に引き籠らざるを得なかった。そして今年、1年お休みしただけなのだが、懐かしくて感無量だった。1階ロビーのお供え(鏡餅)。橙の下の串柿は、大阪では定番だそうだが、東京では見たことがない。にらみ鯛。舞台の飾りつけ。揮毫は住吉大社の髙井道弘宮司による。金色の霞たなびく大凧で、いつもにも増してめでたい。・第3部『染模様妹背門松(そめもよういもせのかどまつ)・生玉の段/質店の段/蔵前の段』今年の初春公演、私は、お...若者は恋路を急ぐ/文楽・染模様妹背門松

  • 奈良の地酒と京都の甘味

    三連休は、かねての予定どおり奈良・大阪・京都で遊んできた。なるべく人混みは避けつつの一人旅。今回は日程に余裕があったので、めずらしく、呑み・食べも楽しんできた。初日の奈良。東向商店街に、奈良の地酒が飲める居酒屋があると聞いたので、探して行ってみたのが「奈良の酒蔵全部呑みうまっしゅ」。私の好きな春鹿も百楽門もある。これは行きつけにして、いつか全種類制覇したい!酒粕クリームチーズも美味しかった(クラッカーは4枚乗せ。すでに1枚食べたあと)最終日(今日)の京都。せっかく冬の京都に来たので、粟ぜんざいを食べていくことにした。私は鍵善良房の「きび餅ぜんざい」が好きなのだが、月ヶ瀬にも粟ぜんざいがあるという。鍵善はつぶあんだが、月ヶ瀬はこしあん。そして、鍵善は、粟でなく黍(きび)餅を名乗っているが、月ヶ瀬は粟餅。今回は、は...奈良の地酒と京都の甘味

  • 2022東京の雪

    昨日は、東京23区に4年ぶりの大雪警報が出た。4年ぶり?ということは、ここ門前仲町で暮らし始めてからも一度あるはずだが、よく覚えていない。昨日は、東京西部に出勤だったので、帰宅許可が出たのを幸い、早めに帰ってきた。都心のほうが、かえって雪が積もっていたように思う。雪景色は、北海道を思い出すので嬉しいが、寒いのは苦手なので、まっすぐ帰宅して、一歩も家を出なかった。今朝の窓の外はこんな感じ。年末に防寒ショートブーツを買っておいてよかった。裏起毛のタイツと手袋、それに、むかし内モンゴルで買ったウールのマフラーを久しぶりに着用した。2022東京の雪

  • 権威に背を向けて/商業美術家の逆襲(山下裕二)

    〇山下裕二『商業美術家の逆襲:もうひとつの日本美術史』(NHK出版新書)NHK出版2021.12店頭でパラパラ中をめくってみたら、近年、気になった展覧会の画家・作品が多数取り上げられているので買ってしまった。渡辺省亭、小村雪岱、歌川国芳、河鍋暁斎、鰭崎英明、川瀬巴水、吉田博、橋口五葉、杉浦非水など。彼らをつなぐ接点は「商業美術」である。かつて2000年に京都国立博物館で開催された伊藤若冲展以降、江戸絵画の人気は飛躍的に高まった。2000年が「江戸時代絵画の再評価元年」だとすれば、2021年は「商業美術再評価元年」ではないかと著者はいう。いわゆる「ファイン・アート」に比べて、商業美術を下に見る色眼鏡のルーツは、中国・明代の董其昌が展開した「尚南貶北論」にあるという。教養ある高位高官が余技として描く文人画(南宗)こ...権威に背を向けて/商業美術家の逆襲(山下裕二)

  • 今年はトラ年/2022博物館に初もうで(東博)+寛永寺

    今年も新年から東博に行ってきた。東博は現在も事前予約を推奨しているが、予約なしに行っても、ちょっと並べば当日の日時指定券を貰える(入館は年間パス)ので、だいぶ入りやすくなった。■東洋館10室(朝鮮時代の美術)(2022年1月2日~4月10日)「朝鮮時代の美術」のコーナーだが、いま高麗仏画が3件出ている(~1月30日)。東博所蔵の『阿弥陀三尊図軸』は、赤地に白か金の円文(唐草円文?)の衣をまとった阿弥陀如来が、左右に観音・勢至を従えて左前方へ歩み出ようとしている。右手は前に差し伸べ、左手はよく見えないが胸の前でやはり与願印をとるか(?)。右袖と足元には、褪色が惜しまれるものの、内衣の緑色が見えている。赤と緑のコントラストは、高麗仏画の定番。『水月観音図軸』(個人蔵)は、赤い裙を穿き、ほぼ裸の上半身に透明のヴェール...今年はトラ年/2022博物館に初もうで(東博)+寛永寺

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