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  • 「妖かし」大活躍/新・陰陽師(歌舞伎座)

    〇歌舞伎座新開場十周年記念・鳳凰祭四月大歌舞伎:昼の部『新・陰陽師』(4月23日、11:00~)夢枕獏の小説『陰陽師滝夜叉姫』をもとに、市川猿之助が脚本・演出を手掛けた舞台。4月に入ってから、これは見たいなあと思ってチケットを探したら、意外なことにまだ日曜のチケットがあった。残っていたのは1等席だけだったので、けっこうな出費になったが、思い切って購入した。本作は、歌舞伎座の新開場杮葺落公演(2013年)から約10年ぶりの上演だが、初演とは全く趣きを変えた「古典歌舞伎仕立て」のスタイルだという。私は初演を見ていないので、比較はできないが、全体としては「古典歌舞伎」の雰囲気が濃いように思った(あまり見ていないけど)。発端「賀茂社鳥居前の場」は朱雀帝の御代。東国では不作が続き、苦しい生活を強いられている民人は、...「妖かし」大活躍/新・陰陽師(歌舞伎座)

  • 掛けものあれこれ/茶の湯の床飾り(出光美術館)

    〇出光美術館『茶の湯の床飾り:茶席をかざる書画』(2023年4月22日~5月28日)出光美術館は、この展覧会から事前予約が不要になった。やっぱり、好きな時間にふらりと入れるのはありがたい。今回は五島美術館とここをハシゴしたので、特にそう思った。本展は、茶の湯や煎茶においてどのような書画が掛物として茶席を飾ってきたかを、同館コレクションを中心に紐解く試みである。冒頭には、東山御物でもある牧谿の『平沙落雁図』。私のブログでは、2016年の「水墨の壮美」以来になる。何が描いてあるのか、ほとんど分からないような画面だが、目を凝らすと、無数の雁が列を連ねて飛ぶ様子や、それを見送る数羽の地上の雁たちが見えてくるのだ。牧谿はもう1点、黒い羽根がもこもこでふさふさの『叭々鳥図』も。その隣り、伝・夏珪筆『瀑布図』(南宋~元...掛けものあれこれ/茶の湯の床飾り(出光美術館)

  • 古典籍に注目/古今和歌集を愛でる(五島美術館)

    〇五島美術館館蔵・春の優品展『古今和歌集を愛でる』(2023年4月1日~5月7日)古今和歌集を書写した平安・鎌倉時代の古筆切を中心に、古今和歌集に関わる歌仙絵・古典籍・近代書など約50点を展観する。館蔵品展だからおなじみがほとんどだったが、名品は何度見てもよい。冒頭は歌仙絵で、ちょっとこわい顔の『猿丸太夫像』(業兼本、針のように細い筆跡も好き)、恰幅のよい紳士の『紀貫之像』(上畳本)、縹色(青)の袍に老懸という武官姿の『壬生忠岑像』など。白描の『時代不同歌合絵』は向かって左に細面の男性、右にやや下ぶくれの太りじしの男性を描く。歌合は、左・藤原兼輔、右・藤原俊忠が番っているが、伊勢・後京極良経の例を見たら、挿絵は左右が逆になるみたいだった。続いて古筆。高野切古今集の第一種、第二種を見ることができた。本展は、...古典籍に注目/古今和歌集を愛でる(五島美術館)

  • ペルシャ陶器と絵画の楽しみ/美しい人びと(松岡美術館)

    〇松岡美術館『美しい人びと松園からローランサンまで』『憧憬のペルシア』他(2023年2月21日〜6月4日)ふらっと寄っただけの展覧会だが、なかなかよかったので書いておく。展示室4の『憧憬のペルシア』では、ペルシア陶器56件を展示する。ペルシア陶器とは、イスラーム時代に中近東で作られた陶器をいう。中近東史に詳しくないので「イスラーム時代」を調べたら、Wipipediaには、イスラーム黄金時代=アッバース王朝(750-1258)のこと、という説明が載っていた。おお、まさに読み終わったばかりの東ユーラシアの唐(618-907)と重なる時代である。松岡美術館の初代館長・松岡清次郎は、1972年、初めて海外オークションに参加し、帰途に立ち寄ったテヘラン(イラン)で9世紀から13世紀のペルシア陶器をまとめて取得したと...ペルシャ陶器と絵画の楽しみ/美しい人びと(松岡美術館)

  • 「中国史」を超えて/唐:東ユーラシアの大帝国(森部豊)

    〇森部豊『唐:東ユーラシアの大帝国』(中公新書)中央公論新社2023.3めちゃめちゃ面白かった。何度も読んできた唐の歴史なのに、なぜ、こんなに新鮮で面白かったのか。従来の標準的な歴史は、後世の中国人が編集した典籍史料をもとに書かれてきた。しかし20世紀以降、敦煌やトルファンで見つかった同時代の文書史料、中国全土で見つかっている石刻資料(墓誌など)によって、唐の歴史像は大きくアップデートされているのだという。本書は、唐の歴史を「中国史」ではなく、東ユーラシアに展開した歴史としてとらえなおすことを目指す。このとき、重要な画期となるのが「安史の乱」である。安史の乱以前の唐の歴史は、「中国本土」(漢人の住む空間)の北部とモンゴリア、マンチュリア、そして東トルキスタンまでを舞台に展開する。安史の乱以後は、長江流域の...「中国史」を超えて/唐:東ユーラシアの大帝国(森部豊)

  • 螺鈿・漆絵・卵殻貼/美しき漆(日本民藝館)

    〇日本民藝館特別展『美しき漆日本と朝鮮の漆工芸』(2023年4月13日~6月18日)日本と朝鮮の漆工芸を展覧する特別展。玄関を入ると、大階段の踊り場の木工箪笥の上には大きな朱の盆が飾られていた。よく見ると太い縞が幾筋も彫り込まれていて『朱塗縞手大盆』という札が添えられていた。左右の壁には熨斗文の藍色の染布。なんていうんだっけ?としばらく考えて、ああ筒描だ、と思い出した。階段下の展示ケースは、左に朝鮮、右に日本の漆工の小物が並んでいた。とにかく2階の大展示室にまっすぐ向かう。大展示室は、いつもより少し暗めの印象だった。展示品の保存に配慮しているのかと思ったが、単に雨の日だったせいかもしれない。壁面ケースの右端に「畳具足」と注記のついた鎧があった。あとで調べたら、持ち運びがしやすいように畳める具足をいうのだそ...螺鈿・漆絵・卵殻貼/美しき漆(日本民藝館)

  • 中国陶磁多め/安宅コレクション名品選101(泉屋博古館東京)

    〇泉屋博古館東京特別展『大阪市立東洋陶磁美術館安宅コレクション名品選101』(2023年3月18日~5月21日)大阪市立東洋陶磁美術館(2022年2月~2024年春頃まで改修工事のため休館中)の中核を占める「安宅コレクション」から国宝2件、重文11件を含む珠玉の101件を紹介する特別展。東洋陶磁美術館には何度も行っているし、「安宅コレクション」展も何度も見ている(2007年の三井記念美術館とか、2012年のサントリー美術館とか)のだが、やっぱり見に行ってしまった。第1展示室「珠玉の名品」の冒頭には、単立ケースの『加彩婦女俑』(唐時代・8世紀)。目にした瞬間、あれ回っていない…と思ってしまった。東洋陶磁美術館では、ゆっくり自動回転する展示台に乗せられているのである。静止した状態をしっかり眺めたことが滅多にな...中国陶磁多め/安宅コレクション名品選101(泉屋博古館東京)

  • アイスショー"Stars on Ice 2023"横浜公演千秋楽

    〇SOI(スターズ・オン・アイス)JapanTour2023横浜公演(2023年4月9日13:00~、横浜アリーナ)久しぶりにフィギュア・スケートを生観戦してきた。昨年7月のTHEICE愛知公演以来である。11月に札幌のNHK杯を見に行くつもりでチケットを取り、宿とフライトも確保していたのだが、身内に不幸があって行かれなかった。まあそんなこともある。その後、プロに転向した羽生くんの怒涛のショーラッシュが続いたが、都合がつかなかったり、狙ったチケット抽選に落選したりしていた。そんな中で、なぜかこのショーは、発売開始からしばらく経ってもチケットが残っていて、楽に取れたのである。男子は、羽生結弦、宇野昌磨、三浦佳生、友野一希、ジェイソン・ブラウン、山本草太、イリア・マリニン、島田高志郎。女子は、坂本花織、宮原知...アイスショー"StarsonIce2023"横浜公演千秋楽

  • 鑑賞歴を振り返る/文楽・曽根崎心中

    〇国立文楽劇場令和5年4月文楽公演(2023年4月8日、18:30~)・第3部:近松門左衛門三〇〇回忌『曽根崎心中(そねざきしんじゅう)・生玉社前の段/天満屋の段/天神森の段』久しぶりに『曽根崎心中』が掛かると知って、大阪まで見に行ってしまった。いい機会なので、これまでの鑑賞記録をまとめてみようと思う。たぶん初見は1984年2月の公演(大学院生時代)。それから、このブログに記録を残している2012年の公演より前に、もう1~2回見ているのだが、3年に1回くらい国立劇場に掛かっているので、もはやよく分からない。・1984年:初代吉田玉男(お初)×吉田蓑助(徳兵衛)→絶命なし・1985~2012年:不明→絶命あり・2012年:吉田蓑助(お初)×桐竹勘十郎(徳兵衛)→絶命あり・2013年:『人間・人形映写展』吉田...鑑賞歴を振り返る/文楽・曽根崎心中

  • 2023年5月@大阪旅行:ラテンアメリカの民衆芸術(民博)ほか

    ■国立民族学博物館特別展『ラテンアメリカの民衆芸術』(2023年3月9日~5月30日)北はメキシコから南はアルゼンチンまで、ラテンアメリカと呼ばれる地域で、民衆がつくり出し、民衆に享受されている手工芸品、民衆芸術(スペイン語でArtePopular=アルテ・ポプラル)約400点を展示する。あふれる色と自由な造形。理性とは別のところに刺さる、魅力的な作品が並ぶ。本展のポスターに使われている、メキシコのオアハカ州の「ヤギのナワル」。山海経とかにいそうだし、諸星大二郎の作品に出てきそう。アステカの石像の複製(巨大!)。あえての側面から。これ、ふだんは常設展の中庭に置いてあるものらしい。カーニバルの扮装。中国の白無常・黒無常みたいだ。舌出してるし。ペルーの首長人形。あやしいけど美人。後半では、こうした民衆芸術が、...2023年5月@大阪旅行:ラテンアメリカの民衆芸術(民博)ほか

  • 渋谷で農家料理ディナー

    コロナ前はよく一緒に美味しいものを食べていた友人と、久しぶりに渋谷で会食。こだわり農家&酪農家のフードメニューを掲げる「八百屋カフェSHIBUYA」さん。友人がリストアップしたお店の候補の中から、私が適当に選んだのだが、びっくりするほど美味しかった。スープのあと、サラダ盛り合わせ、チーズグラタン、パスタ、デザート。ドリンクの飲み放題メニューも、自家製ジンジャーエールや夏みかんビール、シークワサーのカクテルなど、こだわりの品が揃っていた。大満足。またすぐ行きたいと思っている…何か機会はないかしら。渋谷で農家料理ディナー

  • 近代を映す鏡/重要文化財の秘密(東京国立近代美術館)

    〇東京国立近代美術館70周年記念展『重要文化財の秘密』(2023年3月17日~5月14日)明治以降の絵画・彫刻・工芸の重要文化財のみによる展覧会。今でこそ「傑作」と称される作品も、発表当初は、新しい表現を打ち立てたゆえに「問題作」と見做されたケースもある。うん、ここ重要。本展は「問題作」がどのような評価の変遷を経て重要文化財に指定されるに至ったのかという美術史の秘密に迫る企画である。この開催趣旨を短くまとめた「『問題作』が『傑作』になるまで」は、かなりいいコピーだと思う。展示件数は51件(展示替えあり)。図録冒頭に収録された「重要文化財の『指定』の『秘密』」によれば、明治以降の絵画・彫刻・工芸の重要文化財は68件あるらしい。そして本展の図録には、出品が叶わなかった17件の図版も掲載されている。会場の冒頭に...近代を映す鏡/重要文化財の秘密(東京国立近代美術館)

  • 「ふつう」以上の花鳥画/椿椿山展(板橋区立美術館)

    〇板橋区立美術館『椿椿山展:軽妙淡麗な色彩と筆あと』(2023年3月18日~4月16日)江戸時代後期を代表する文人画家の一人、椿椿山(つばきちんざん、1801-1854)の回顧展。あまり知られた名前ではないと思うが、私はとても好きな画家である。軽妙端麗は言い得て妙だが、そのほかにも平明、清新、優雅、繊細などの形容が似合う。「奇想」ではないけれど「ふつう」でもない、確かな個性を感じる画家である。たぶん泉屋博古館所蔵の『玉堂富貴』で名前を覚えたんじゃないかな、と思ったが、ブログで検索したら、2005年に板美の『関東南画大集合』で『花籠図』を見て、出会っていた(残念ながら本展には出陳されていないが、栃木県立美術館の所蔵らしい)。はじめの展示室は、椿山の本領ともいうべき花鳥画を特集。泉屋博古館の『玉堂富貴・遊蝶・...「ふつう」以上の花鳥画/椿椿山展(板橋区立美術館)

  • 雪舟も応挙も上様も/江戸絵画お絵かき教室(府中市美術館)

    〇府中市美術館企画展・春の江戸絵画まつり『江戸絵画お絵かき教室』(2023年3月11日~5月7日)今年もやってきた「春の江戸絵画まつり」。まだ入館時は検温実施、マスク着用者が大多数だが、突然の会期中断に怯えなくても済むようになった。少しずつ日常が戻って来た感じである。本展は「描く」という視点から江戸絵画を楽しむ試みだという。はじめに四大テーマ「動物」「人」「景色」「花」を描くことに挑戦。「動物」は「蘆雪の雀」と「応挙の子犬」を取り上げる。まあ応挙の子犬は、金子信久さんが大好きを公言されているので分かるのだが、蘆雪のスズメに注目していただけて、嬉しい!!私は蘆雪の描く鳥(雀、鶴など)の、ちょっと意地悪そうな人間くさい表情が、むかしから大好きなのである。このブログでは、2008年に京博で蘆雪の『百鳥図屏風』を...雪舟も応挙も上様も/江戸絵画お絵かき教室(府中市美術館)

  • 宇宙へ、そして地底へ/老神介護(劉慈欣)

    〇劉慈欣;大森望、古市雅子訳『老神介護』KADOKAWA2022.9『流浪地球』とセットで刊行された劉慈欣のSF短編集。1998年から2008年に発表された5編を収める。どれも読みごたえがあった。「老神介護」は、地球よりずっと古くから存在し、地球の生命世界を設計した「神文明」の人々(神々)が地球に現れ、老後を地球で過ごしたいと訴えたことから始まる。20億柱の神々は人類の家庭に割り当てられ、西岑村の秋生の家にも神がやってきた。しかし、もはや創造力も技術力も失い、ただの耄碌老人でしかない神々は、次第に人類に白眼視されるようになり、再び宇宙へ旅立っていく。去り際の神は静かに秋生に語る。神文明は多くの偉大な奇跡を生んだ。しかしどんな文明も必ず老いる。地球文明も同様だ。生まれた世界から動かずにいるのは死を選ぶのと同...宇宙へ、そして地底へ/老神介護(劉慈欣)

  • 2023門前仲町で花見呑み

    桜はほぼ満開になったが、天気のはっきりしない土曜日、門前仲町の居酒屋「まるお」で友人と会食した。大横川沿いの2階のお店なので、大きな窓から満開の桜を眺めることができる。たぶん1年間でこの週末だけの絶景だろう。お任せのコースは、お刺身・酢の物・カツなど、変化があってどれも美味しかった。同席のお客さんが、お酒のメニューに「見えざるピンクのユニコーン」という高級日本酒があるのを見つけて「これは激レアの逸品!」と嬉しそうに注文していたので、連れの友人が1杯注文してみた。私もひとくちお相伴させてもらったら、値段に恥じない、やわらかな味わいだった。秋田の新政酒造がつくっているお酒で「貴醸酒」というカテゴリーに属するそうだ。「見えざるピンクのユニコーン(InvisiblePinkUnicorn)」が有神論の風刺に由来す...2023門前仲町で花見呑み

  • 伝統と革新の富士山/富士と桜(山種美術館)

    〇山種美術館特別展・世界遺産登録10周年記念『富士と桜-北斎の富士から土牛の桜まで-』(2023年3月11日~5月14日)富士山の世界遺産登録10周年という記念の年に、富士と桜という、日本の美が凝縮された優品の数々を展示する。ポスターになっているのが、北斎『冨嶽三十六景・凱風快晴』と奥村土牛の『醍醐』だし、伝統的な日本の美意識にのっとった作品が主だろうと勝手に思い込んで見に行った。そうしたら、意外と「そうでない」作品にも出会って衝撃を受けてしまった。前半は「富士山を描く」セクション。寺崎広業、平福百穂、安田靫彦など、おなじみの画家の名前が並ぶが、作品は「10年ぶり」「16年ぶり」などの注記が付いたものが多かった。特に「10年ぶり」が多かったのは、2014年に特別展・富士山世界文化遺産登録記念『富士と桜と春...伝統と革新の富士山/富士と桜(山種美術館)

  • 黒社会の群像/中華ドラマ『狂飆』

    〇『狂飆(きょうひょう)』全39集(愛奇藝、留白影視、2023)中国南方の臨江省京海市(架空の都市)を舞台に、20年にわたる警察と「黒社会」集団の闘いを描いたドラマ。中国では今年の年頭から放映が始まり、大ブームを巻き起こした。「掃黒除悪」(黒社会の一掃)を掲げる中国共産党の「指導」が入ったドラマなのだが、確かに面白かった。物語の発端は2000年、旧暦の大晦日。旧廠街の市場で借店舗の位置をめぐって唐小龍、唐小虎兄弟と揉め事を起こした魚売りの高啓強は警察に逮捕される。高啓強を親代わりに育った弟の高啓強と妹の高啓蘭は、兄のために年越しの餃子を差し入れる。取り調べに当たっていた警官の安欣は、規則を曲げて、そっと高啓強に餃子を食べさせる。これが高啓強と安欣の最初の出会いだった。それから高啓強は、いつの間にか唐兄弟の...黒社会の群像/中華ドラマ『狂飆』

  • 北野天満宮の神人たち/日本中世の民衆世界(三枝暁子)

    〇三枝暁子『日本中世の民衆世界:西京神人の千年』(岩波新書)岩波書店2022.9本書は、西京神人(さいきょうじにん)と呼ばれる共同体を例に取り、中世民衆の姿を浮かび上がらせる。「西京」は、もと平安京の西側(右京)を指したが、10世紀に一条以北に北野天満宮が成立したことにより、11世紀には北野天満宮領域(右京一条・二条)が「西京」と意識されることになる。中世には「京都」の一部ではあるが、市街地の周縁部、すなわち「洛外」とみなされた。西京には様々な階層の人々が居住していたが、住人の多様性や流動性は市街地ほどではなく、基本的に北野天満宮に地子(地代)・年貢・公事(雑税)を納める人々だった。そして商工業者の中核となったのは麹業を営む西京神人たちだった。麹業は、酒造業とともに発達した。室町時代、権力者たちは酒宴を好...北野天満宮の神人たち/日本中世の民衆世界(三枝暁子)

  • 2023桜咲く

    窓の外の桜の木に白い花を見つけたのは3月17日(金)。今年は例年より少し早い。この日の夜はむかしの職場の同僚たちと呑み。3月18日(土)は冷たい雨であまり開花は進まなかった。この日も友人二人と近所で昼呑みを楽しんだ。3月19日(日)は、もはや四月のぽかぽか陽気。対岸の桜が一気に濃くなった。この日の午前中は、YouTubeライブで吉見俊哉先生の最終講義「東大紛争-1968-69」を聴講。別に東大関係者でなくてもこうした講義を聴講できるのは、いい時代になったものだ。午後は、トークイベント「いとうせいこう氏と語る長浜のホトケの魅力」を聴きに上野の東博へ出かけた。今日3月20日(月)はさらに気温が上昇。昼時に見に行ったら、水面に近い枝はもう八~九分咲き。朝から花見の遊覧船が、窓の下を行き交っている。2023桜咲く

  • 2023年3月関西旅行:近鉄「ならしかトレイン」

    先週、奈良から京都に移動する際、新大宮→大和西大寺の1区間だけ乗車した車両。外観もおしゃれなラッピングトレインだったが、乗ったら、さらにびっくり。全ての吊り革がシカ仕様。朝早めだったこともあり、私以外は沿線住民で乗り慣れているのか、騒いでいる乗客はいなかった。調べたら、2022年12月5日から運行されている「ならしかトレイン」だそうだ。また乗りたい。※鉄道ホビダス:何頭いるのよ!近鉄奈良線「ならしかトレイン」圧巻のビジュアル!(2022/12/3)2023年3月関西旅行:近鉄「ならしかトレイン」

  • 2023年3月関西旅行:甲斐荘楠音の全貌(京都近美)

    〇京都国立近代美術館開館60周年記念『甲斐荘楠音の全貌-絵画、演劇、映画を越境する個性』(2023年2月11日~4月9日)大正から昭和にかけて京都で活躍した日本画家、甲斐荘(または甲斐庄)楠音(かいのしょうただおと、1894-1978)を取り上げ、映画人・演劇人としての側面を含めた彼の全体像を紹介する。私がこの画家の存在を知ったのは、わずか5年前のことだ。2018年に千葉市美術館で『岡本神草の時代展』を見たついでにミュージアムショップで買った松嶋雅人さんの『あやしい美人画』(東京美術、2017)で、初めて甲斐庄楠音の名前を知り、その後、東近美『あやしい絵』や東京ステーションギャラリー『福富太郎の眼』展で作品に出会っている。私の最初の出会いは「あやしい」系だったが、楠音は、正調の美人画も描いている。本展には...2023年3月関西旅行:甲斐荘楠音の全貌(京都近美)

  • 2023年3月関西旅行:春日大社国宝殿、二月堂、奈良博

    ■春日大社国宝殿特別展・春日若宮式年造替奉祝『杉本博司-春日神霊の御生(みあれ)御蓋山そして江之浦』(2022年12月23日〜2023年3月13日)夕方4時近くに鉄奈良駅に到着し、急いで春日大社へ。杉本博司氏監修の本展を見たかったのである。1階のほぼ真っ暗な展示室には、春日大社の藤棚の写真を屏風にした作品や春日山風景の映像作品などが展示されていた。鼉太鼓の展示されたホールを通って2階へ(窓側にガラスの五輪塔が並んでいたことには、あとで気づいた)。2階左手の大展示室の須弥壇には、見覚えのある木造十一面観音立像。頭部に菩薩面ではなく、大きな黒い塊が点々と付いてるだけの十一面で、2022年に金沢文庫の『春日神霊の旅』で見たものだ。背後の彩色の剥げた鼉太鼓は、昭和50年代まで八百年にわたって使われてきたというから...2023年3月関西旅行:春日大社国宝殿、二月堂、奈良博

  • 2023年3月関西旅行:絵画で女子会!(逸翁)、大阪の日本画(中之島)他

    広島出張帰りの週末は、大阪→奈良→京都で遊んできた(もちろん自腹)。金曜の夜は大阪に泊まり、朝イチで池田の逸翁美術館に行って、開館を待った。■逸翁美術館『絵画で「女子会!」-描かれた女性たち-』(2023年1月21日~3月12日)伝説上の存在や歴史上の人物から、遊女や芸妓、町娘など、絵画や絵巻物を中心に描かれた女性たちの姿を楽しむ。少女歌劇団の創設者・小林一三のコレクションだけあって「さすがお目が高い」という印象だった。特に気に入ったのは池田輝方・蕉園の『鳥辺山図』双福。岡本綺堂の歌舞伎『鳥辺山心中』のあらすじを読みながら眺めると、いっそう興が深まる。山口素絢『酔美人図』は豪華な着物で酔い崩れる花魁二人。ご陽気そうでもあり、不幸せそうでもある。源琦『玄宗楊貴妃弄笛図』は、並んだ二人が一管の横笛を演奏する図...2023年3月関西旅行:絵画で女子会!(逸翁)、大阪の日本画(中之島)他

  • ファミリーヒストリーは語る/敗者としての東京(吉見俊哉)

    〇吉見俊哉『敗者としての東京:巨大都市の隠れた地層を読む』(筑摩選書)筑摩書房2023.2はじめに2020年春からのコロナ禍によって、都心の空室率の上昇、人口の転出増、商業地の地価下落など、1980年代以来、数十年間にわたって東京が歩んできた方向(=福祉国家から新自由主義=効率化のための一極集中)を反転させる可能性が垣間見えることが示される。本書は、これまで明らかに近代化の「勝者」として歩んできた東京を「敗者」の眼差しから捉えなおそうとする試みである。そのために本書は、遠景・中景・近景の三つの視点を用意する。「遠景」は地球史的な視座で、縄文時代の南関東の「多島海的風景」を想像するところから始まる。やがて朝鮮半島からの渡来人たちが東京湾岸から上陸し、土着の縄文人と遭遇してクレオール化する。古代から中世へ、東...ファミリーヒストリーは語る/敗者としての東京(吉見俊哉)

  • 2023年3月食べたもの@広島

    木金は広島へ1泊2日の出張。観光の余裕はなかったが、同行者のおかげで食事は充実していた。初日は広島駅構内のお好み焼き居酒屋「広島乃風」で夕飯。名前を聞いてもよく分からない、広島独特のメニューがたくさん。カキのバター焼きが美味しかった。これはチチヤスの乳酸菌飲料「チー坊」をつかったチー坊ハイボール。翌日の昼は、お好み焼・鉄板焼「いろどり」で昨晩に続いて広島焼を。ふらっと入った小さなお店だが美味しかった。店主のお兄さんは「今年2月にオープンしたお店なんですよ~」とおっしゃっていたが、長く続いていくといいな。機会があったらまた食べに来たい。2023年3月食べたもの@広島

  • 危機に立つ人類の選択/流浪地球(劉慈欣)

    〇劉慈欣;大森望、古市雅子訳『流浪地球』KADOKAWA2022.9『三体』で知られる劉慈欣のSF短編集。収録作品は2000年から2009年に発表されたものだという。正直に告白すると、私は今年の春節映画『流浪地球2』が好評というニュースを見て、そういえば2019年の映画『流浪地球』も見ていないなあ、と思い出し、まずは原作を読んでみるかと思って、本書を手に取った。そうしたら、標題作はすぐに終わってしまって肩透かしをくらった。「訳者あとがき」によれば、映画が原作を踏襲しているのは基本設定のみで、キャラクターもプロットも別物なのだという。しかし、本書を読み始めたことを後悔したかといえば、全くそんなことはない。どの作品も面白かった。奇想天外な設定を、いかにも事実(科学)らしく、緻密な描写を積み上げていく筆力に感服...危機に立つ人類の選択/流浪地球(劉慈欣)

  • 墓所も梅園もあり/本門寺の狩野派展(池上本門寺霊宝殿)

    〇池上本門寺霊宝殿『本門寺の狩野派展』(2023年2月19日~5月28日.前期:2月19日~4月16日)狩野派には、いろいろな展覧会の影響でじわじわ関心を持つようになった。狩野派の始祖・正信が日蓮宗の信者であったこと、江戸へ本拠を移した江戸狩野の人々が、日蓮上人の入滅の地である池上本門寺(大田区池上)を菩提寺としたことは、以前にも聞いた記憶がうっすらある。池上本門寺には一度も行ったことがなかったが、この展覧会のチラシを見て、行ってみようと思った。地下鉄の西馬込駅で下車して、おやこれは10月に太田区立郷土博物館の『勾玉展』を見るために下りた駅だと思い出した。ほとんど縁のなかった大田区へ半年に2回も足を踏み入れるのも不思議な縁である。途中の池上梅園(入園料100円)に寄り道して、裏参道から本門寺に入った。宝物...墓所も梅園もあり/本門寺の狩野派展(池上本門寺霊宝殿)

  • 2023木場の河津桜と日本橋のおかめ桜

    大横川沿いの河津桜が見頃だと聞いたので見に行ってきた。大横川は、我が家の前では東西に流れているが、木場公園の東側で南北に向きを変える。永代通りの沢海橋から北側を眺めると、ピンクの雲のような桜並木が両岸に続いていた。このあたりは川岸が私有地のため近づけないが、しばらく北上すると遊歩道に出る。河津桜(カワヅザクラ)は、桜としては濃いピンク色が特徴。細い雄しべがキラキラしてて、工芸品のような美しさである。桜並木には、ところどころ、薄いピンクの別品種も交じる。ネットの情報によれば、もともとは静岡県河津町を訪れ本場の河津桜に感激した区民が2000年に区に苗木を寄付したのが始まりで、その後も区が植樹を続け、現在の景観になったそうだ。木が若いせいか、樹高はあまり高くないが、みっしりと隙間なく花がついている。散歩の足を延...2023木場の河津桜と日本橋のおかめ桜

  • 虎図さまざま/京都画壇と江戸琳派(出光美術館)

    〇出光美術館『江戸絵画の華.第2部京都画壇と江戸琳派』(2023年2月21日~3月26日)エツコ&ジョー・プライス夫妻(プライス財団)から同館に寄贈された作品を公開する展覧会の第2部は、円山応挙など京都画壇と、酒井抱一ら江戸琳派の画家を中心に展示する。はじめに円山派の風景画。応挙の『懸崖飛泉図屏風』は4曲・6曲屏風の組合せ。人の姿のない清冽な自然を描く。源琦の『雪松図屏風』は、応挙の屏風(三井記念美術館所蔵)の写しなのか。画面の縦を少し広げているせいか、原本よりものびのびした印象がある。応挙の軸物『赤壁図』は、この直前に『木米』展を見たこともあって、船の中で煎茶を楽しんでいる様子が気になった。続くセクションは円山派の動物画を特集。本展のメインビジュアルにもなっている、応挙の『虎図』は意外なほど小さい画面。...虎図さまざま/京都画壇と江戸琳派(出光美術館)

  • 深川古石場で無声映画観賞会

    〇江東区古石場文化センター第775回無声映画観賞会「ふるさと深川で楽しむ小津安二郎の世界」(2023年2月26日)日曜の午後、近所の文化センターの催しで、弁士つきの無声映画というものを見てきた。上映作品は2本で、はじめの『子宝騒動』(昭和10/1935年)は喜劇というより、アメリカ風のスラップスティックコメディと呼んだほうがぴったりくる。貧乏子だくさんの福田さんは、産気づいた奥さんのために産婆さんを呼ぼうと奮闘する。無声映画だから可能なナンセンスギャグの連発は、現代の目にも新鮮で面白かった。監督は「喜劇の王様」と呼ばれた斎藤寅次郎だが、無声喜劇のほとんどが散逸しており、現存するのは本作を含む数作品だけだという。次の『出来ごころ』(昭和8/1933年)は小津安二郎監督。東京下町の日雇い労働者で男やもめの喜八...深川古石場で無声映画観賞会

  • 仏を思い、寺を思う/仏具の世界(根津美術館)

    〇根津美術館企画展『仏具の世界信仰と美のかたち』(2023年2月18日~3月31日)主に館蔵品から、さまざまな場面で用いられる仏具を紹介し、仏の教えと仏具の造形美の関わりを探る。地味な展覧会だが、私のような仏教美術好きには面白かった。はじめに目に留まったのは紺紙金字の『神護寺経(陰持入経)』。状態がよいのか照明のせいか、金字が濡れたように輝いていた。鳥羽天皇が発願し後白河天皇が寄進したという由来も(二人の関係を思うと)しみじみする。墨染めの細い竹ひごを錦布で縁取りした経秩は、何度か見たことがあると思うが、本品は秩の両端と紐の結び目に蝶型の金具が残っていて、90度の角度に羽を広げた姿は蝶というより蛾を思わせる。調べたら、白州正子はこれをブローチに仕立てて身に着けていたとのこと(旧白州邸・武相荘)。さすがだ。...仏を思い、寺を思う/仏具の世界(根津美術館)

  • 大明の普通の人々/中華ドラマ『顕微鏡下的大明之絲絹案』

    〇『顕微鏡下的大明之絲絹案』全14集(愛奇藝、2023年)明・万暦年間、江南地方の仁華県に住む豊宝玉とその友人・帥家黙は、賭場のトラブルから膨大な帳簿の整理を押し付けられる。帥家黙は「算呆子」(算術バカ)と呼ばれる青年で、帳簿の中にあった土地契約書を見て、仁華県の税制に疑問を抱く。仁華県、攬渓県ほか8つの県は金安府の下に置かれていた。調べてみると、なぜか仁華県は「人丁絲絹税」について他の7県分を負担しており、支出額は毎年三千五百三十両に上る。豊宝玉と帥家黙は、この誤りを正そうと仁華県の県庁に訴え出るが、当然、他の7県の関係者は反発する。当の仁華県の方知県(県知事)も金安府の黄知府(府知事)も敢えて混乱を望まず、訴えは却下されてしまう。豊宝玉と帥家黙の訴えに最も強く反発したのは攬渓県の毛知県で、手下の鹿飛龍...大明の普通の人々/中華ドラマ『顕微鏡下的大明之絲絹案』

  • 識字陶工と文人ネットワーク/木米(サントリー美術館)

    〇サントリー美術館没後190年『木米』(2023年2月8日~3月26日)江戸時代後期の京都を代表する陶工・画家・文人の青木木米(1767-1833)の名前は、いちおう知っていた。自分のブログを検索すると、2010年の出光美術館『茶Tea-喫茶のたのしみ-』展が初出で、その後も何度か出てくる。とは言え、あまり期待をせずに見に行ったら、意外とおもしろい展覧会だった。はじめにやきもの。木米は中国・日本・朝鮮の古陶に着想を得、それを自由にアレンジした作品を生み出した。景徳鎮の染付ふうだったり、素朴な高麗茶碗ふうだったり、華やかな京焼ふうだったり…。会場には、木米作品のほかに、その着想のもとになったかもしれない作品も参考に並んでいて面白かった。着想の源泉がよく分からない作品もあって、『色絵雲龍波濤文火入』は青銅器の...識字陶工と文人ネットワーク/木米(サントリー美術館)

  • 科学者と軍人/三体0:球状閃電(劉慈欣)

    〇劉慈欣;大森望、光吉さくら、ワン・チャイ訳『三体0(ゼロ):球状閃電』早川書房2022.12中国ドラマ『三体』の熱がなかなか冷めないので、昨年12月に刊行された『三体』シリーズの新刊を読んでしまった。原作は『三体』に先行する2004年の刊行。『三体』三部作の前日譚という触れ込みだが、全く別作品と思って読むほうがいいと思う。主人公のぼく=陳(チェン)は、14歳の誕生日の夜、壁を通り抜けて室内に入ってきた球状の雷が、一瞬にして両親を白い灰にしてしまうのを目撃する。両親の体は跡形も残らず、公けには失踪として処理された。陳は球電(balllightning)の謎を解くことを志して大学に進学する。大気電気学担当の張彬(ジャン・ビン)副教授は球電を研究テーマとすることに反対するが、陳は初志を貫く。のちに陳は、張彬が...科学者と軍人/三体0:球状閃電(劉慈欣)

  • 磁州窯の名品、刀剣もあり/中国の陶芸展(五島美術館)

    〇五島美術館館蔵『中国の陶芸展』(2023年2月18日~3月26日)漢時代から明・清時代にわたる館蔵の中国陶磁器コレクション約60点を展観。会場に入って、まず全体を眺め渡し、おなじみのあの作品やこの作品が出ていることを確認する。やっぱり最初に引き寄せられてしまったのは、磁州窯の『白釉黒花牡丹文梅瓶』。「白釉に黒花」というが、黒の面積が大きくて、どちらが地色かよく分からない。三角形に盛り上がった牡丹花は、あふれ出る生命力の象徴のようだ。単立ケースに展示されていたので、反対側にまわってみたら、同じようにゴージャスな牡丹花が下を向いていた。その手前、いちばん目立つ位置に展示されていたのは『青磁鳳凰耳瓶(砧青磁)』。記憶の中の青磁の名品『万聲』『千聲』などと比べると、ひとまわり大きい。この種の瓶の中で最も大きいの...磁州窯の名品、刀剣もあり/中国の陶芸展(五島美術館)

  • オールドファッションの魅力/映画・崖上のスパイ

    〇張藝謀(チャン・イーモウ)監督『崖上のスパイ』(新宿ピカデリー)1930年代、抗日戦争下の満州国。ソ連で特殊訓練を受けた共産党のスパイ4人組(男性2人:老張、楚良、女性2人:王郁、小蘭)がパラシュートで雪原に降り立つ。彼らの任務は、日本軍の極秘実験の詳細を知る人物・王子陽の国外脱出を助け、日本軍の非人道的な振舞いを世界に知らしめること。作戦名はロシア語で夜明けを意味する「ウートラ」。4人組は、男性1人、女性1人ずつの2組に分かれ、ハルピンを目指す。その頃、満州国特務科長の高彬は、すでに共産党の動向を察知し、共謀者の謝子栄の口を割らせて、4人組に関する情報を得ていた。高彬の部下の周乙、魯明は、共産党の同志を装って、楚良と王郁に近づき、彼らを監視下に置く。老張と小蘭はハルピン潜入に成功するが、老張は単独行動...オールドファッションの魅力/映画・崖上のスパイ

  • 門前仲町でごはん屋呑み

    いつもの呑み仲間の友人と二人で、あまり飲めない友人をご飯に誘うことになり、お店の選択に迷った末、羽釜ご飯と酒の店「ごはん屋おゝ貫」(大貫)にした。2020年12月にオープンした比較的新しいお店で、よく前を通るので、気になっていた。食事もお酒も期待以上だった!お酒は「利き酒し放題90分1,980円」をチョイス。全11種類を小ぶりのお猪口で楽しめる(全種類制覇はならず)。鯛茶漬け。ご飯は素木のおひつで提供される。余ったご飯はおにぎりにして持たせてくれた。季節の甘味も美味。一品料理やランチメニューもあるようなので、また来てみたい。門前仲町でごはん屋呑み

  • ショートステイ@金沢

    1泊2日の出張で金沢に行ってきた。観光の時間は全くなかったので、初日のランチに金沢駅で食べた「ゴーゴーカレー」のチキンカツカレーと、自分のお土産に買ってきた「ビーバー」(揚げあられ)の写真を上げておく。たぶん前回、金沢を訪れたのも仕事で、次は観光でのんびり来ようと思っているうちに30年経ってしまった。次こそ…縁があるといいなあ。駅前広場の大屋根に、市松模様ふうに雪が残っていて楽しかった。これは冬しか見ることのできない、心憎いデザイン。ショートステイ@金沢

  • 仏像と歴史資料ほか/令和5年新指定国宝・重要文化財(東京国立博物館)

    〇東京国立博物館・平成館・企画展示室特別企画『令和5年新指定国宝・重要文化財』(2023年1月31日~2月19日)新指定の展示は、なるべく見に行くようにしている。文化庁『新指定国宝・重要文化財展』のページに過去の記録がまとまっているが、コロナ前の平成31年度(2019)までは、ゴールデンウィーク前後の開催が定例だった。今回は久しぶりの再開である。展覧会のタイトルは「令和5年」だが、文化庁のサイトでは、展覧会年度が「令和4年度」になっている。令和4年度(2022)指定分なのかと思ったら、目録には「令和5年の指定予定品一覧です」と小さく注記されていた(ややこしい)。しかも、これまでの習慣で本館に行ったら何も案内がないので、慌ててスマホでチェックして、平成館1階で開催されていることを知った。会場の入口に立つと、...仏像と歴史資料ほか/令和5年新指定国宝・重要文化財(東京国立博物館)

  • 外交担当者と国内世論/近代日本外交史(佐々木雄一)

    〇佐々木雄一『近代日本外交史:幕末の開国から太平洋戦争まで』(中公新書)中央公論新社2022.10本書は、サブタイトルのとおり、幕末の開国から太平洋戦争まで(巻末の年表では、1792年の露・ラクスマン来航から1945年の終戦まで)の日本外交の軌跡を通観したものである。特別に新しい発見があるわけではないが、雑に「共通理解」となっていることが、丁寧に見直されていて、歴史の解像度が上がる。たとえば、幕末の日本は西洋諸国から「不平等条約」を押し付けられ、明治政府はその改正に苦心する。やがて東アジアの緊張が高まり、日清戦争が勃発する。日本はこの戦争に勝利するが、三国干渉によって遼東半島の領有の放棄を求められ、国際社会でものを言うのは力だと学んだ、というのは、よく語られるストーリーだ。本書は以下のように解説する。まず...外交担当者と国内世論/近代日本外交史(佐々木雄一)

  • 不良息子の破滅/文楽・女殺油地獄

    〇国立劇場令和5年2月公演(2023年2月11日、18:30~)・『女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)・徳庵堤の段/河内屋内の段/豊島屋油店の段』今月は「近松名作集」で『心中天網島』『国性爺合戦』『女殺油地獄』と好きな演目が揃ったが、迷った末に第3部にした。私はだいたい陰惨な演目が好きなのだが、特に『女殺』は大好物なのだ。調べてみたら、今回見るのが5回目で、主役の組合せが毎回違っているのも面白い。・1997年:初代吉田玉男(お吉)×吉田蓑助(与兵衛)・2009年:桐竹紋寿(お吉)×桐竹勘十郎(与兵衛)・2014年:吉田和生(お吉)×桐竹勘十郎(与兵衛)・2018年:吉田和生(お吉)×吉田玉男(与兵衛)・2023年:吉田一輔(お吉)×桐竹勘十郎(与兵衛)勘十郎さんの与兵衛を見るのは9年ぶり。前回、油店...不良息子の破滅/文楽・女殺油地獄

  • 中国SFの傑作映像化/中華ドラマ『三体』

    〇『三体』全30集(上海騰訊企鵝影視、中央電視台他、2023年)世界中で読まれている中国のSF小説、劉慈欣の『三体』(三部作の第1部)をドラマ化したもの。日本語訳は2019年に出版され、私もすぐに読んで堪能した。中国でこの作品が映像化されると聞いたときは、正直不安しかなかったが、いま全編を見終えて、少なくともこの第1部に関しては文句なしだと思っている。演員は実力派を揃えた最高の布陣だった。退役軍人で警官の史強を演じたのは于和偉。小説を読みながら、実写化するなら于和偉がいいなあと思っていたので、配役を聞いたときは飛び上がるほど嬉しかった。原作ではもう少しゴツい見た目に描かれているが、粗野で、人たらしで、頭の回転が速く、決断力と行動力に富む魅力が十二分に再現されている。ナノマテリアルの研究者で、三体人の標的と...中国SFの傑作映像化/中華ドラマ『三体』

  • 冷水寺の十一面観音坐像(東京長浜観音堂)を見る

    〇東京長浜観音堂『十一面観音坐像(脇仏)(長浜市高月町宇根・冷水寺蔵)』(2023年2月1日~2月28日)今年度最後のお出ましは、冷水寺の十一面観音菩薩坐像。ご本尊の脇に安置されており、もとは出開帳仏であったと伝わる。冷水寺は初めて聞く名前だが、調べたら、高月駅からそう遠くないのどかな緑地に、小さなお堂があるようだ。祀られているのは、黒い肌、赤い唇が印象的で、やや厳しめのお顔をした十一面観音坐像(江戸・元禄年間)。このご本尊は「鞘仏」で、その胎内には、天正11年(1583)の賤ヶ岳の戦いの際に焼損したと伝わる、ぼろぼろの旧本尊(平安時代)が収められていた。現在は、観音堂の横の「胎内仏資料館」という、小さな手作り資料館に安置されているそうだ。この脇仏も江戸時代の作ということだが、頬がふっくらしてよいお顔立ち...冷水寺の十一面観音坐像(東京長浜観音堂)を見る

  • 須賀川に愛された画家/亜欧堂田善(千葉市美術館)

    〇千葉市美術館企画展・没後200年『亜欧堂田善江戸の洋風画家・創造の軌跡』(2023年1月13日~2月26日)江戸時代後期に活躍した洋風画家、亜欧堂田善(あおうどうでんぜん)の大規模な回顧展。現在知られる銅版画約140点を網羅的に紹介するとともに、肉筆の洋風画の代表作、同時代絵師の作品、田善の参照した西洋版画や弟子の作品まで、約250点を一堂に集め、謎に包まれたその画業を改めて検証する。開催概要に「首都圏では実に17年ぶりの回顧展」とあるのは、2006年に府中市美術館で開催された『亜欧堂田善の時代』展を指すのだろう。2004年から書いているこのブログに亜欧堂田善の名前が登場するのもこの展覧会が最初で、その2か月前、東京の天理ギャラリーで見た『幕末明治の銅版画』でこのひとの名前を覚えたことを私は記録している...須賀川に愛された画家/亜欧堂田善(千葉市美術館)

  • 王朝から近代まで/隅田川の文学(久保田淳)

    〇久保田淳『隅田川の文学』(岩波新書)岩波書店1996.9「アンコール復刊」の帯をつけて書店に並んでいた1冊である。私はいま、縁あって隅田川の近くに住んでいるので題名に目が留まった。中を開けたら、近代俳句に始まり、芥川龍之介や川端康成に言及がある。著者名を確かめて、え?と驚いた。久保田淳先生といえば、中世和歌の大家という認識だったので。本書は、著者が1年間西ドイツに出て、日頃の研究テーマを離れてみた経験から生まれたことが「あとがきに代えて」に述べられている。はじめに登場するのは石田波郷(高校の国語の教科書で習った)で、東京大空襲から1年ほど後、江東区北砂町に移り住んだという。「百万の焼けて年逝く小名木川」などの句があることを初めて知った。神田生まれの水原秋櫻子(やっぱり教科書で習った)は「夕東風(ごち)や...王朝から近代まで/隅田川の文学(久保田淳)

  • 赤坂・塩野の椿餅

    このところ、ネットで椿餅の話題を見て、久しぶりに食べたくなった。椿餅は、椿の葉の間に道明寺粉の餅はさんだもの。椿の季節の1~2月に店頭に出る。基本的に関西(京都)の和菓子ではないかと思う。私は、高校の修学旅行で京都に行ったとき、友人から、八坂神社の南にあった甘栄堂の椿餅を教えてもらった。餡なしの道明寺餅だけをはさんだ椿餅で、白いのと、ニッキで味付けした茶色いのがあった。以来、京都に行くと、ときどき買っていたが、いつの間にか、お店がなくなってしまった。東京ではあまり見ない和菓子なので、その後は、なかなか食べる機会がない。自分のブログを検索したら、2013年に京都・城南宮の参道で椿餅に出会って買っているが、おしゃれすぎて、なんだか違うなあと思ったことを覚えている。最近、東京でも椿餅を買えるお店があるという情報...赤坂・塩野の椿餅

  • プライスさんに感謝/江戸絵画の華(出光美術館)

    〇出光美術館『江戸絵画の華.第1部若冲と江戸絵画』(2023年1月7日~2月12日)おー出光美術館、久しぶりに江戸絵画の展覧会だ、としか思っていなかったのだが、「展示概要」を読んで、びっくりした。アメリカの日本美術コレクター、エツコ&ジョー・プライス夫妻(プライス財団)によって蒐集された作品の一部が、2019年に同館のコレクションに加わったという。本展は、その新しい収蔵品約190件の中から、選びぬいた80数件を2期にわけて展示する。第1部、第1室は「生きものの楽園」と題した、楽しいセクション。明治の画家・中住道雲の『松竹梅群鳥図』は、いわゆる百鳥図で、目がぐるぐる回るような華やかさ。つがいの鳥とそうでない鳥(カラスとか)がいるのが面白かった。片山楊谷『鯉図』、岡本秋暉『孔雀図』など、存在感のある作品が並ぶ...プライスさんに感謝/江戸絵画の華(出光美術館)

  • 中国青銅器の不思議な世界/不変/普遍の造形(泉屋博古館東京)

    〇泉屋博古館東京リニューアルオープン記念展IV『不変/普遍の造形-住友コレクション中国青銅器名品選』(2023年1月14日~2月26日)リニューアルオープン展の掉尾を飾る本展では「住友コレクションの象徴」とも言うべき、中国青銅器の名品を一挙公開。中国青銅器の種類、文様、金文、そして鑑賞の歴史まで、丁寧な解説を付してその魅力を紹介する。私は、年に数回は京都の泉屋博古館を訪ねているのだが、常設の青銅器館はパスしてしまうことが多い。せっかく東京に来てくれたので、罪滅ぼしと思って見に行ったら、展示規模(参考資料含め100件弱)がちょうどいいのと、解説が初心者にも分かりやすくて楽しめた。ほぼ全て撮影可なのも嬉しかった。はじめに、器の命名ルールを解説。銘文によって殷周時代当時の人々の命名が判明する器(自名器)は、その...中国青銅器の不思議な世界/不変/普遍の造形(泉屋博古館東京)

  • 中世を感じる/法会への招待(金沢文庫)

    〇神奈川県立金沢文庫特別展『法会への招待-「称名寺聖教・金沢文庫文書」から読み解く中世寺院の法会-』(2022年12月2日~2023年1月29日)人と物が集まり、史料が生成する場としての法会という視点から、「称名寺聖教・金沢文庫文書」を読み解き、中世寺院法会の豊穣な世界を紹介する。文書中心の地味な展示だが、アーカイブズ好きには面白かった。第1章「年中行事と形式」では、年中行事として行われていた様々な法会(仏教の行事・集会)を見て行く。1月の修正会は、奈良時代に国分寺等で行われた吉祥悔過に起源を持つらしい。そういえば、奈良の薬師寺や法隆寺の修正会も本尊は吉祥天である。修正会は、称名寺や瀬戸神社でも行われていた記録がある。修二会は、称名寺で開催されたことを示す史料はないそうだが、京都の寺院での法会を様子を、ち...中世を感じる/法会への招待(金沢文庫)

  • 色とかたちの取合せ/柚木沙弥郎展(日本民藝館)

    〇日本民藝館特別展『生誕100年柚木沙弥郎展』(2023年1月13日~4月2日)柚木沙弥郎(ゆのきさみろう、1922-)氏は、柳宗悦の「民藝」と芹沢銈介のカレンダーとの出会いから染色の道に進んだとも言われており(柚木沙弥郎公式サイト)、日本民藝館とは関係が深い。2018年にも特別展『柚木沙弥郎の染色もようと色彩』が開催されており、友人から「ぜひ行くべき」という強いおすすめを貰った。しかし、このときは見逃してしまったので、今回は早めに決断して見に行った。館内に入ると、大階段を取りまく壁も左右の展示ケースも、柚木さんのカラフルな染色作品で埋まっていて、なんだか別世界に来たみたいだったが、まずは2階の大展示室へ急ぐ。ここも壁や展示ケースを表情豊かな型染めの布が彩る。おもしろかったのは、布の間に配置された、世界各...色とかたちの取合せ/柚木沙弥郎展(日本民藝館)

  • 中国土産のロバとウサギ

    昨年11月に母が亡くなったので、年末年始は弟と二人で遺品を整理していた。物持ちな人で、食器やお茶の道具など、趣味の品がたくさん残された。基本的にはどんどん捨ててしまうつもりだが、目について拾ってきたものいくつか。この布製のロバとウサギは、私が中国旅行のお土産に母に買ってきたものである。ウサギの腹には母が細いマジックで「平成10年9月敦煌」と書き留めていた。翌年の平成11年(1999)の干支が卯だったので、ウサギを買ってきたのだと思う。それから干支が二回りしてしまった。ロバは別の地方に行ったときに買ったと思うが、よく覚えていない。今後は私の身近に置いておく予定。中国土産のロバとウサギ

  • 共生の未来を描く/「移民国家」としての日本(宮島喬)

    〇宮島喬『「移民国家」としての日本:共生への展望』(岩波新書)岩波書店2022.11移民に関する本を読むのは、望月優大『ふたつの日本』(講談社現代新書、2019)以来だと思う。望月さんも本書の著者も、外国人労働者を「人」として受入れ、共生社会を目指そうという方向性は同じで、共感できるものだった。はじめに、コロナ禍を除く過去5年間(2014-2019年)の日本の新規外国人入国者数(観光などの短期滞在者を除く)は年平均で約43万人に上ることが示される。推計によれば、在留外国人は300万人を超えており、(1998年の資格要件緩和を受けて)「永住者」資格を持つ外国人も百数十万人に達している。ちなみに現在、一般永住者の数は特別永住者(在日コリアン)の倍以上になっているという。日本は、生産人口の減少に伴う労働力不足を...共生の未来を描く/「移民国家」としての日本(宮島喬)

  • 中国の地方公務員たち/中華ドラマ『県委大院』

    〇『県委大院』全24集(正午陽光、2022年)大好きな正午陽光の制作だが、今回はちょっと期待外れだった。ドラマは、2015年(中国では、十九大=中国共産党第十九次全国代表大会の前と表現する)から始まる。主人公の梅暁歌(胡歌)は光明県の県長に着任することになった。日本ふうに県長と書いてみたが、中国の地方行政のトップは、その行政単位に置かれた共産党組織のトップ(書記)であるらしい。劇中で主人公は「梅書記」と呼ばれている。一方、主人公の片腕をつとめる女性の副書記・艾鮮枝は艾県長と呼ばれていた(ややこしい)。光明県は、北岳省新州市の一部という設定なので、北岳恒山のある山西省をイメージしながら見ていた。県庁のある中心地はそこそこ都会だが、貧しい山間部や農村部も抱えている。隣りの九原県が積極的に投資家を呼び込み、成功...中国の地方公務員たち/中華ドラマ『県委大院』

  • 想像で楽しむ茶室/茶道具取合せ展(五島美術館)

    〇五島美術館『館蔵・茶道具取合せ展』(2022年12月10日~2023年2月12日)まだお正月ののんびりした気分で見に行ったコレクション展。懐石道具・炭道具のほか、小堀遠州を中心とした武将や大名ゆかりの茶道具の取合せを展観する。はじめに豊臣秀吉、千利休、小堀遠州らの仮名書きの消息をきれいに表装した軸がいくつも出ていた。禅僧の墨跡とも平安・鎌倉の古筆とも違って、格段に親しみやすい味わいがある。全く忘れていたのだが、同館は2014年の正月にも『茶道具取り合わせ展』を開催している。私は簡単なメモしか残していないが、「古備前の徳利に赤絵金襴手の盃と盃台、祥瑞(染付)の徳利に黄瀬戸の盃」などが出ていた様子。今回は、古赤絵徳利と黄瀬戸盃が私の好みだった。毎回、学芸員さんが楽しんで取り合せていらっしゃるのだろうな。色絵...想像で楽しむ茶室/茶道具取合せ展(五島美術館)

  • 華南というフロンティア/越境の中国史(菊池秀明)

    〇菊池秀明『越境の中国史:南からみた衝突と融合の三〇〇年』(講談社選書メチエ)講談社2022.12中国と呼ばれる地域は、とにかく広大で多様である。本書は、多くの日本人にとって、あまり馴染みのない地域「華南」(福建省、広東省とその周辺)の17~19世紀について叙述する。華南における中華世界の拡大と、その結果生まれたさまざまな衝突と融合の過程を読み解くことは、いま、中国周辺地域(香港、台湾、国内の少数民族および近隣諸国)が直面している問題を理解するのに役立つと著者が考えるためである。中国が多様な民族の衝突と融合によって形成されてきたことは、いろいろな文献を読んで徐々にイメージできるようになった。だが、古い時代については、いわゆる北方騎馬民族と漢民族との衝突・融合が主である。宋代以降、華北と江南がそれぞれ特色あ...華南というフロンティア/越境の中国史(菊池秀明)

  • 唐物多め/国宝雪松図と吉祥づくし(三井記念美術館)

    〇三井記念美術館『国宝雪松図と吉祥づくし』(2022年12月1日~1月28日)新春恒例、国宝『雪松図屏風』がメインだが、吉祥づくしには、意外と中国美術が多かった。「長寿」「富貴」などの吉祥主題を好む伝統と、日本において唐物が貴重な贅沢品であったことが影響しているのかもしれない。冒頭の工芸品には、堆朱や堆黒の香合、青磁瓶、白磁皿など。あと、これは絶対に唐物だろうと思うと、永楽保全らの「〇〇写し」だったりする。和ものの『牡丹蒔絵太鼓胴』は珍しかった。鼓胴は何度か見たことがあるが、太鼓胴(ケーキ型みたいな円筒)にも、こんなに装飾の美しいものがあるのだな。『玳玻天目(鸞天目)』(南宋時代)は、小ぶりで、逆三角形にキュッと締まった愛らしい茶碗。外側は黄茶に濃茶の網目を載せたような鼈甲文様。内側は同じ色調で、二羽の尾...唐物多め/国宝雪松図と吉祥づくし(三井記念美術館)

  • 新春は日本画で/日本の風景を描く(山種美術館)

    〇山種美術館特別展『日本の風景を描く-歌川広重から田渕俊夫まで-』(2022年12月10日~2023年2月26日)先月から始まっていた展覧会だが、なんとなく年初めに見たいと思ってお預けにしていた。そして計画どおり正月休みに見てきた。江戸時代から現代までの風景画の優品を紹介する特別展である。江戸時代の作品は、広重の『東海道五拾三次』『近江八景』の一部(展示替えあり)のほか、酒井抱一、池大雅、谷文晁などが出ている。椿椿山の『久能山真景図』は、遠くの山の嶺とか木立とか伝統的な山水画の様式と、それを裏切る部分(広すぎる登り坂とそれを進みゆく二人の人物)が同居しているところが、エモくて好き。椿山はむかしから私の推しなので、今春、板橋区立美術館で開催予定の『椿椿山展』をとても楽しみにしている。山種美術館といえば「日本...新春は日本画で/日本の風景を描く(山種美術館)

  • 静嘉堂@丸の内初訪問/初春を祝う(静嘉堂文庫美術館)

    〇静嘉堂文庫美術館静嘉堂創設130周年・新美術館開館記念展II『初春を祝う-七福うさぎがやってくる!』(2023年1月2日~2月4日)2021年6月に世田谷岡本の地を離れ、2022年10月から東京丸の内の明治生命館1階で展示活動を開始した静嘉堂文庫美術館。しかし開館記念展I『響きあう名宝』は、ちょうど公私に忙しくて見逃してしまったので、これが丸の内への初訪問になる。おしゃれなお姉さんのいるカウンターで、オンライン予約のチケットを確認してもらい、中に入る。ソファの置かれた四角い部屋(ホワイエ)には、有田焼の展示ケースが1つだけ置かれていたものの、ほかには展示品らしきものが見えないので、ちょっと戸惑った。フロアマップを見て、このホワイエを取り囲むように4つの展示室が設置されていることを把握する。今季のメインは...静嘉堂@丸の内初訪問/初春を祝う(静嘉堂文庫美術館)

  • 古代路、街道、高速道路/道路の日本史(武部健一)

    〇武部健一『道路の日本史:古代駅路から高速道路へ』(中公新書)中央公論新社2015.5少し古い本だが、たまたま目に留まって、読んでみたら面白かった。工学部出身で建設省・日本道路公団で高速道路の計画・建設に従事した著者が、古代から今日までの日本列島の道路の歴史を具体的に描き出したものである。はじめに世界の道路の歴史に少しだけ触れる。ほぼ2000年前、中心から樹状に伸びる道路交通網が、イタリア半島(ローマ帝国)と東アジア(秦帝国)で同時に出現した。東西の道路が、それぞれトンネル技術を伴っていたことも興味深い。ナポリ郊外にはポリシポ・トンネルがあり、中国は褒斜道(!)に石門というトンネルがつくられた。さて日本である。『魏志倭人伝』には魏使が見た日本(対馬)の「道路」についての感想が記されている。『日本書紀』応神...古代路、街道、高速道路/道路の日本史(武部健一)

  • 春秋戦国から漢まで/兵馬俑と古代中国(上野の森美術館)

    〇上野の森美術館日中国交正常化50周年記念『兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~』(2022年11月22日〜2月5日)秦・漢王朝の中心地域である関中の出土品を主として、日本初公開となる一級文物など約200点を展示する。概要の「1974年に秦の始皇帝陵の兵馬俑坑が発見されてから、間もなく半世紀」を読んで気づいたのだが、兵馬俑坑の発見は、日中国交正常化の1972年9月のあとだったんだなあ。その後、私は学生時代の中国旅行で実際に始皇帝陵も見に行ったし、兵馬俑関連の展示が日本であると、ほぼ欠かさず見に行っている。今回は、2015年の東博『始皇帝と大兵馬俑』以来の本格的な展示と言えるだろう。展示会場は2階から始まり、1階に続く。あとで出品リストを見て理解したのだが、2階が「第1章(春秋戦国)」と「第3章(漢)」で、1...春秋戦国から漢まで/兵馬俑と古代中国(上野の森美術館)

  • 今年はウサギ年/2023博物館に初もうで(東博)

    新春恒例、東京国立博物館に行ってきた。過去の記録を見たら、2021年は新型コロナ対応で予約入館のみ、2022年も予約入館が推奨されていたが、今年はようやくフラリと行っても入れるようになった。■本館11室特別企画『大安寺の仏像』(2023年1月2日~3月19日)昨年、奈良博の特別展『大安寺の全て』でも展示された木彫仏像群が東博に来ていてびっくり。しかも写真撮影可というサービスぶり。ただし大安寺が保有する奈良時代(8世紀)9躯のうち展示は7躯(四天王、楊柳観音、不空羂索観音、聖観音)で、馬頭観音と十一面観音はいらしていない。ほかに江戸時代の弘法大師坐像と、出土瓦などが展示されている。3月まで展示なので、ゆっくり拝見できそう。ずんぐりして、やや動きの硬い四天王に味がある。■本館13室(刀剣)(2022年10月2...今年はウサギ年/2023博物館に初もうで(東博)

  • 家族の秘密/中華ドラマ『回来的女児』

    〇『回来的女児』全12集(愛奇藝、2022年)年末に見たもの。愛奇藝「迷霧劇場」の新作である。このシリーズは、2020年の諸作品が名作すぎて、どうしても点が辛くなってしまうが、本作はまあまあ合格点だと思った。以下【ネタバレあり】であらすじを紹介する。舞台は、1997年、坂の多い田舎町である潭岭県(架空の町、広州に近いらしい)。李承天と廖穂芳の夫婦は、脳に障害のある息子・李文卓(20歳くらい)と暮らしていた。彼らには、もうひとり13年前に4歳で失踪したきりの李文文という娘がいた。ある日、夫婦のもとに李文文を名乗る少女が戻ってくる。彼女の正体は、孤児院を脱走してきた陳佑希。同じ孤児院で育った小秀が、李承天一家に文卓の保母兼家政婦として就職したが、少し前に姿を消してしまっていた。陳佑希は、親友の小秀の行方を探す...家族の秘密/中華ドラマ『回来的女児』

  • 2022年11-12月展覧会拾遺

    年明けは、昨年の棚卸しから。■府中市美術館『アーツ・アンド・クラフツとデザインウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで』(2022年9月23日~12月4日)19世紀後半、産業革命による工業化の波の中で、「すべての人の生活に美を」の理想を掲げたウィリアム・モリスと賛同者たちが生み出したテキスタイルや壁紙、家具等を展示。どのデザインも美しく魅力的だったが、日に日に貧しくなりゆく日本で見ると、まぶしすぎて少しつらかった。■戸栗美術館開館35周年記念特別展『古伊万里西方見聞録展』(2022年7月29日~11月6日)17世紀半ばから約1世紀の、輸出時代の古伊万里を展観。中国の輸出事業の縮小を背景に東南アジアへの輸出が始まり、次いでオランダを通じて西欧への輸出が本格化し、熱狂的な歓迎を受けるも、1684年以...2022年11-12月展覧会拾遺

  • 皇帝と「官場」の人々/中華ドラマ『天下長河』

    〇『天下長河』全40集(湖南衛視、芒果TV他、2022)配信開始前は全く注目していなかったが、本国でも日本の中国ドラマファンの間でも、やたら評価が高いので見てみたら、かなり私好みの作品だった。清・康熙帝時代の黄河治水を扱った作品である。康熙15年、長雨により黄河が氾濫し、多くの死者を出した。黄河の治水に腐心していた安徽巡撫の靳輔は責任を問われ、都に護送される。その途中、独創的な治水の方策を語る陳潢という青年に出会う。陳潢は、徐乾学、高士奇という兄貴分とともに科挙を受験するため、上京するところだった。三人のうち徐乾学だけが、探花(第三位)という好成績で科挙に合格するが、あとの二人は不合格。徐乾学と高士奇は、宮廷を二分する実力者、索額図と明珠にそれぞれ取り入ろうとする。学問だけの徐乾学よりも、万事如才のない高...皇帝と「官場」の人々/中華ドラマ『天下長河』

  • 屏風と歌仙絵を中心に/遊びの美(根津美術館)

    〇根津美術館企画展『遊びの美』(2022年12月17日~2023年2月5日)公家が和歌の上達につとめた歌合や家の芸にまで高めた蹴鞠、武家が武芸の鍛錬として位置づけた乗馬や弓矢など、文化としての遊びの諸相を、屏風を中心に、絵画や古筆も含めて紹介する。メインビジュアルは『桜下蹴鞠図屏風』で、私は2010年に同館の新創記念特別展第5部で見たことを記録している。今年の秋、神戸市博で開催された『よみがえる川崎美術館』にも出品されて、けっこう注目を集めていた(展示替えで参観はできず)。会場に入ると、すぐにこの屏風が目に入る。右隻には、4本の桜の木の下で蹴鞠に興じる8人の男性。2人ずつペアを組んでいるようだ。烏帽子を付けた正選手(?)が4人。そのパートナーは僧形が2人、小姓っぽい若者が2人。蹴鞠用の靴を履いていることが...屏風と歌仙絵を中心に/遊びの美(根津美術館)

  • 曹操注で読む/孫子(渡邉義浩)

    〇渡邉義浩『孫子-「兵法の真髄」を読む』(中公新書)中央公論新社2022.11.25中国古典が好きで10代の頃から読んできたが、『孫子』はきちんと読んだ記憶がない。どうせ軍事マニアが喜ぶようなことが書いてあるのだろう、と軽く見てきたためだ。はじめに『孫子』の成立事情に関する解説がある。そもそも孫子とは何者か。『史記』は、春秋時代の孫武(前6世紀頃)と戦国時代の孫臏(前4世紀頃)の二人の伝記を収めている。歴代の『孫子』研究では、現行の『孫子』は孫臏の著作とされてきたが、1972年「銀雀山漢簡」の発見と分析により、現行『孫子』の中核的な執筆者は孫武と考えられるようになった。孫武には黄老思想との共通性が見られる。孫武の次の時代に活躍した呉起の著作『呉子』は、儒家を根拠として軍事思想を展開した。さらに次の時代の孫...曹操注で読む/孫子(渡邉義浩)

  • 眼福の仏画/信仰の美(大倉集古館)

    〇大倉集古館企画展『大倉コレクション-信仰の美-』(2022年11月1日~2023年1月9日)大倉喜八郎が蒐集した仏教美術作品を中心に、信仰の歴史をたどり、そこに託された人々の祈りと美のかたちを紹介する。冒頭近くに出ていた『古経貼交屏風』は、むかしから私の好きな作品。小さいが印象的な肖像彫刻『法蓮上人坐像』(鎌倉~南北朝時代)も、どこかで見た記憶があった。おにぎり型の頭をした僧侶が、大きな目(玉眼)を開いて、やや上を見上げ、袖で覆った右腕を差し出している。法蓮は飛鳥~奈良時代の僧で、九州の英彦山や国東六郷満山で修行したと言われている。12年間岩窟に籠って修行したところ、倶利伽羅龍が現れて宝珠を吐き出したので、それを受け取った場面を表現している。そう聞くと、坐像が低い位置に置かれているので、倶利伽羅龍の気分...眼福の仏画/信仰の美(大倉集古館)

  • 『鎌倉殿の13人』大河ドラマ館とゆかりの地

    ■『鎌倉殿の13人』大河ドラマ館2022年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を楽しんで見た。前半の源平の戦いは、それほどハマらなかったが、後半、頼朝没後の御家人たちの権力闘争になってから、俄然、面白くなった。先週、最終回を視聴したので、大河ドラマ館を見てきた。ちなみに私が大河ドラマ館を訪ねるのは、2017年の大河ドラマ『おんな城主直虎』以来である。『おんな城主直虎』で遠州鉄道の気賀まで出かけたのに比べれば、今回は、鶴岡八幡宮境内の鎌倉文華館・鶴岡ミュージアム(以前の神奈川県立近代美術館鎌倉館)が会場なので、いつでも気楽に訪ねることができたのだが、最終回を見終えるまではガマンしていた。館内には、登場人物のひとりひとりを紹介する映像パネル、衣装、小道具、俳優さんのインタビュー動画など。伊豆の国市にセットを組んだと...『鎌倉殿の13人』大河ドラマ館とゆかりの地

  • 郷愁の江戸/闇と光(太田記念美術館)

    ■太田記念美術館『闇と光-清親・安治・柳村』(2022年11月1日~12月18日)小林清親(1847-1915)は、西洋からもたらされた油彩画や石版画、写真などの表現を取り込むことにより、これまでにない東京の風景を描いた。本展は、小林清親を中心に、これまで紹介されることの少なかった井上安治(1864-1889)や小倉柳村(生没年不明)の作品を加え、光と影を情感豊かに捉えた「光線画」約200点(前後期で全点展示替え)を展示する。最終日に行ったら、たくさんお客が入っていて驚いた。清親・安治・柳村なんて、全くメジャーじゃないと思っていたのに、みんなどこで情報を得て見に来たのだろう。私は、清親の名前も「光線画」という用語も、何度か聞いたことがあったが、あまり感心したことがなかった。この展覧会も、見逃してもいいくら...郷愁の江戸/闇と光(太田記念美術館)

  • 日常と非日常/鉄道と美術の150年

    〇東京ステーションギャラリー『鉄道と美術の150年』(2022年10月8日~2023年1月9日)2022年は日本の鉄道開業150周年に当たる。奇しくも「美術」という語が初めて登場したのも明治5年(1872)のことだった。本展は、鉄道と美術150年の様相を、鉄道史や美術史はもちろんのこと、政治、社会、戦争、風俗など、さまざまな視点から読み解き、両者の関係を明らかにする。いや、ひとくちに「さまざなま視点」というけれど、どうすれば、こんなに幅広く面白い作品を掘り出してくることができるのか。まずは鉄道の日本伝来から。安政元年(1854)の摺り物『亜墨利加蒸気車献上之品物』は、ペリー提督を介して幕府に贈られた蒸気機関車を描く。カマボコ形の客車の屋根に「遊山屋形船」と注釈がついているのが面白かった。それから、歌川芳虎...日常と非日常/鉄道と美術の150年

  • 世界のアイドル/中国パンダ外交史(家永真幸)

    〇家永真幸『中国パンダ外交史』(講談社選書メチエ)講談社2022.3中国四川省と、陝西省周辺の山岳地帯にしか生息していない稀少動物のパンダ。本書は、パンダが発見されて以来、長い時間をかけて中国が鍛えてきたパンダ外交の歴史をひもとく。パンダ発見の歴史は、知らないことばかりだった。1869年3月、フランスの宣教師で四川省に動物採集に訪れていたダヴィド神父は、穆坪鎮の地主から白と黒の毛皮を見せられ、謎の動物の存在を知る。その約10日後、ダヴィド神父は1体のパンダの死体を入手し、その毛皮と骨をフランスの国立自然史博物館に送った。動物学界は、この動物がレッサーパンダ(1820年代に発見)に近い種と判断し、大きい方のパンダ=ジャイアント・パンダという一般名が定着していく。ちなみに「パンダ」の語源はよく分からないそうだ...世界のアイドル/中国パンダ外交史(家永真幸)

  • 戦国大名たちの謀略ドラマ/文楽・本朝二十四孝

    〇国立劇場令和4年12月公演(2022年12月17日、17:00~)・『本朝二十四孝(ほんちょうにじゅうしこう)・二段目:信玄館の段/村上義清上使の段/勝頼切腹の段/信玄物語の段・四段目:景勝上使の段/鉄砲渡しの段/十種香の段/奥庭狐火の段/道三最期の段』面白かった!近松半二らの合作『本朝二十四孝』は何度も見ているので、どうしようかと思ったが、「十種香の段」と「奥庭狐火の段」以外はほとんど見たことがなかったので、こんな込み入った物語であることを初めて知った。記録を振り返ると、私は2020年に「景勝上使の段」と「鉄砲渡しの段」を見て、これらの伏線が最後にどう回収されるのか気になる、と書いているのだが、2年越しで、全く予想外の「回収」を知ることができた。二段目の冒頭、将軍「義晴」が暗殺されたという噂話が語られ...戦国大名たちの謀略ドラマ/文楽・本朝二十四孝

  • 笹塚でビャンビャン麺

    先週末、むかし住んでいた幡ヶ谷にクリスマスリースを買いに行ったついでに、笹塚でビャンビャン麺を食べた。ガード下の商店街「京王クラウン街」を幡ヶ谷方面に歩いていくと、どん詰まりにある「西安ビャンビャン麺」笹塚店である。初めてなので、まずは王道の油泼麺(ヨウポー麺)を頼んでみたが、美味しかった。これまで近所の「西安麺莊秦唐記」を贔屓にしてきたけど、ここのビャンビャン麺も十分美味しい。あとで店外のポスターを見たら、肉夹饃(ロージャーモー)もあるらしい。いいなあ、また食べに来たい。笹塚でビャンビャン麺

  • 2022年12月関西旅行:よみがえる川崎美術館(神戸市立博物館)

    〇神戸市立博物館開館40周年記念特別展『よみがえる川崎美術館-川崎正蔵が守り伝えた美への招待-』(2022年10月15日~12月4日)最終日に駆け込みで見てきた展覧会である。「川崎美術館」という名前は初耳だった。展示は、創設者の川崎正蔵とその美術コレクションの紹介から始まる。川崎正蔵(1837-1912)は薩摩国(鹿児島県)生まれの実業家で、川崎造船所(現・川崎重工業)や神戸新聞社などを創業した(そうか~川崎重工の川崎は地名だとずっと思っていた)。明治初年、西洋文化の流入と廃仏棄釈が進むなか、古美術品の海外流出を憂慮した川崎正蔵は、日本・東洋美術を彩る優品を幅広く収集し、そのコレクションを公開するため、明治23年(1890)神戸市布引の川崎邸(現在のJR新神戸駅周辺)に「川崎美術館」を開館した。日本初の私...2022年12月関西旅行:よみがえる川崎美術館(神戸市立博物館)

  • 2022年12月関西旅行:明清の美(大和文華館)

    〇大和文華館特別企画展『明清の美-15~20世紀中国の芸術-』(2022年11月18日~12月25日)忙しくてブログが書けていないが、12月第1週の週末の関西旅行の続きである。日曜は、奈良と神戸の展覧会をハシゴしてきた。本展は、主に15世紀~20世紀初頭における明清中国の多彩な美術を紹介する特別企画展である。大和文華館の明清絵画コレクションは大好きなので、どうしても見たかった。展示室に入ってすぐの単立の展示ケースには、まず丁敬筆『花鳥図冊』。あまり記憶にない作品だったが、綴じの左側に文、右側に画が記されている。画題は花でなく果物のようだった。隣りは査士標筆『山水図冊』(兵庫県立美術館)。左手に大河か湖、右手には高い山、橋の上に杖を携えた高士の姿が見える。広々した気持ちのよい風景である。さらに隣りは程邃筆『...2022年12月関西旅行:明清の美(大和文華館)

  • クリスマスリース2022とおまけ

    いろいろ忙しくて例年より遅れてしまったが、今年もいつもの花屋さんで手作りリースを買ってきた。むかし住んでいた幡ヶ谷にあるラベイユ四季というお店である。今年はスタンダードな緑の生リースにした。参考までに値段は税込み3300円。以前は同じ値段でひとまわり大きなサイズが買えたと思うのでだいぶ値上がりしている。でも職人仕事としては当然の値段だと納得している。ついでに笹塚~幡ヶ谷を少し歩いてきた。そこそこ賑わいはあるけど、新宿から至近と思えない、のんびりした雰囲気がある。また住んでみたい街のひとつである。クリスマスっぽいおまけ。先日、庭園美術館の『旅と想像/創造いつかあなたの旅になる』で撮影可だったティーセット。およそ100年前、朝香宮夫妻がヨーロッパから持ち帰ったもの。こんな食器でケーキと紅茶を楽しめたら素敵。※...クリスマスリース2022とおまけ

  • 2022年12月関西旅行:大原、洛中大通寺

    土曜日、京博のあとは、久しぶりに大原観光に出かけることにした。いったん京都駅に戻って地下鉄で国際会館駅に出て、大原行きのバスに乗る。10年ぶりくらいかなあとぼんやり考えていたが、あとでブログをチェックしたら、2013年の初夏以来だった。終点の大原バス停で下り、左(西)へ行くと寂光院、右(東)へ行くと三千院というのは記憶どおりである。まずは寂光院へ向かう。豊かな自然を背景に人家や農地が続く「山里」の風景。このところ、仕事がキツくて高ストレス状態だった精神が少しほどけていく感じだった。■寂光院私が到着したときは、正面の本堂の中は拝観客でいっぱいで、お寺の方が熱心に説明をしていた。説明が一段落し、人が減ってから上がらせてもらった。ご本尊は彩色が目に鮮やかな地蔵菩薩立像。そうだ、平成の火災のあとで復刻されたお地蔵...2022年12月関西旅行:大原、洛中大通寺

  • 2022年12月関西旅行:茶の湯(京都国立博物館)再訪

    〇京都国立博物館特別展『京(みやこ)に生きる文化茶の湯』(2022年10月8日~12月4日)金曜に名古屋へ日帰り出張の予定が入ったので、自費で足を伸ばして、週末、関西で遊んできた。目的の1つ目は『茶の湯』展を再訪すること。土曜の朝、開館10分前くらいに行ったら、70~80人は並んでいたと思う。建物に入り、混雑が嫌だったので、2階の「四頭茶礼」の展示室から見ていく。11月には京博の『白衣観音図』と大徳寺の『龍虎図』が掛けてあったところには、愛知・妙興寺の『観音・龍虎図』(室町時代)3幅。恰幅のよい男性的な観音様だった。次室は絵巻が中心。『不動利益縁起絵巻』はあまり見たことのない場面で、僧房の囲炉裏で湯を沸かし茶を入れているらしい。鬼神が浮遊しているのもおもしろい。「唐物賞玩」の展示室で、11月に『煙寺晩鐘図...2022年12月関西旅行:茶の湯(京都国立博物館)再訪

  • 家族のかたち/中華ドラマ『喬家的児女』

    〇『喬家的児女』全36集(東陽正午陽光、2021年)新作ドラマの見たいものが途切れたので、気になっていた1年前の話題作を見てみた。中国ドラマファンにはおなじみ、東陽正午陽光の制作で、さすが期待は裏切られなかった。始まりは1977年、南京市の陋巷に仲良く暮らす喬租望夫妻と長男・一成、次男・二強、長女・三麗、次女・四美の四人兄弟たち。ところが母親は五番目(三男)の七七を産んだ直後に亡くなってしまう。七七は叔母の家に引き取られ、自堕落で生活力のない父親に代わって、長男の一成が弟妹たちを守り育てる責任を一身に引き受けることになる。と言っても、貧乏生活の苦しさがあまり描かれないのは、中国社会がどんどん豊かになっていく時代を背景にしているせいかもしれない。ストーリーの中心となるのは、四人兄弟の愛情・家庭生活である。一...家族のかたち/中華ドラマ『喬家的児女』

  • 広がるイメージ/西行(五島美術館)

    〇五島美術館特別展『西行語り継がれる漂泊の歌詠み』(2022年10月22日~12月4日)本展は、世に数点しか伝わらない稀少な西行自筆の手紙をはじめ、西行をテーマとした古筆・絵画・書物・工芸の名品約100点を展観し、中世から近代に至るまで、西行が時を越えて人々の心に語りかけてきたものを探る。なお、かなり展示替えがあり、私が参観したのは会期の早い方だった。はじめに「西行とその時代」を語るさまざまな資料が出ていた。書写本の『平家物語延慶本』や『吾妻鏡』、平忠盛筆『紺紙金字阿弥陀経』など。その中に『平治物語絵巻断簡六波羅合戦絵巻』(大和文華館)があって、あっと思った。この夏、承天閣美術館で別の断簡を見て、すっかり慌ててしまった作品である。これは敗走する義朝主従を描いたものと言われるが、あまり大和文華館で見た記憶が...広がるイメージ/西行(五島美術館)

  • 鎌倉殿の浄土庭園/永福寺と鎌倉御家人(神奈川県立歴史博物館)

    〇神奈川県立歴史博物館特別展『源頼朝が愛した幻の大寺院永福寺と鎌倉御家人-荘厳される鎌倉幕府とそのひろがり-』(2022年10月15日~12月4日)鎌倉・二階堂の永福寺(ようふくじ)跡に初めて行ったのは、鎌倉在住の友人に誘われた歴史散歩だったように思う。その後、私は逗子に住んだ時期があって、ときどき近傍(2004年の記事)を歩いていた。最近では2017年に訪ねて、すっかり史跡公園として整備された様子を見てびっくりした。本展は、鎌倉幕府の成立とその展開に深く関わった永福寺に注目し、その全貌と軌跡を、文献資料・考古資料・美術資料などの多彩な歴史資料群から複合的かつ立体的に復原する。そろそろ会期末が近くなってきたので、慌てて見に行ったら、講堂で学芸員の渡邊浩貴さんによる展示解説があったので聞かせてもらった。永福...鎌倉殿の浄土庭園/永福寺と鎌倉御家人(神奈川県立歴史博物館)

  • 洞戸の地蔵菩薩立像(東京長浜観音堂)を見る

    〇東京長浜観音堂『地蔵菩薩立像(鞘仏/胎内仏)(長浜市高月町洞戸自治会蔵)』(2022年11月1日~11月30日)何も考えずに立ち寄ったので、ケースの中のお姿を見て、おや、今期は地蔵菩薩像だったか!と新鮮に感じた。この施設は、湖北の観音文化の発信を目的とし、「東京長浜観音堂」を名乗っているくらいなので、観音像のご開帳が圧倒的に多い。日本橋に移った2021年7月以降の公開は、これまですべて観音様だった。大きいほうの地蔵菩薩(鞘仏)は江戸時代の作。卵型の整った頭部。肩幅が広く肉厚で、黒光りする木肌と相まって、堂々とした威厳を感じる。背後にまわると背中が刳り貫かれ、蓋板が嵌められているのが、はっきり分かる。この中に収められている(いた?)のが、展示では隣に置かれている胎内仏の地蔵菩薩。室町時代の作。素朴な一木造...洞戸の地蔵菩薩立像(東京長浜観音堂)を見る

  • 「写生」へのこだわり/竹内栖鳳(山種美術館)

    〇山種美術館特別展・没後80年記念『竹内栖鳳』(2022年10月6日~12月4日)没後80年を記念し、山種美術館が10年ぶりに開催する竹内栖鳳(1864-1942)の特別展。探してみたら、2012年に『没後70年・竹内栖鳳-京都画壇の画家たち』という展覧会が開催されているが、私は見逃したようだ。しかし2013年の国立近代美術館『竹内栖鳳展近代日本画の巨人』は見ていて、この頃から、近代日本画に関心が深まってきた。栖鳳は鳥や虫、小動物を多数描いており、「動物を描けばその体臭までも表す」と言われた。その最高傑作『班猫』は会場の入口近くに飾られており、今回、撮影自由なのに驚いた(太っ腹!)。私はイヌ派だが、このネコの何気ないのに圧倒的な王者の気品には感じ入る。栖鳳がこの子を「徽宗皇帝の猫」と呼んでいるのも面白い。...「写生」へのこだわり/竹内栖鳳(山種美術館)

  • 絶え間ない交流/惹かれあう美と創造(出光美術館)

    〇出光美術館『惹かれあう美と創造-陶磁の東西交流』(2022年10月29日~12月18日)「展示概要」の文章がとてもよいので、その最後の部分をそのまま転記しておく――陶磁器は各時代で、互いの美しい装飾や技術に惹かれあって発展してきました。他の国や地域の陶磁器を受容したり、あるいはその魅力に惹かれ、それを模倣したり、また自分たちの美意識を反映させた新しい陶磁器をつくってきたのです。ときに戦争・紛争により断絶する交流の歴史ですが、文化の繋がりを可視化するやきものは、国や民族の境をこえて、わたしたちの想像をはるかに超える東西交流の物語を伝えてくれるのです。古今東西の交流を通して生み出された陶磁器の美の世界をお楽しみください。そうなのだ。私は、もともと絵画や彫刻に比べると、陶磁器への関心は薄かった。それが「東西交...絶え間ない交流/惹かれあう美と創造(出光美術館)

  • サッポロクラシックで晩酌

    多事多端の週末が終わって、夕食に晩酌。金土日と、2022フィギュアスケートNHK杯を3日間現地観戦するつもりで、チケットも札幌旅行のフライトもホテルも取っていたのだが、諸般の事情により断念したのである。今年もいろいろドラマがあったようで、見たかったなあ。2023年のNHK杯は大阪とのこと。行きたい!それから、2019年のNHK杯以来、ご無沙汰している札幌にもまた行きたい。と、来年の夢を思い描きながら、大好きなサッポロクラシックを味わう。サッポロクラシックで晩酌

  • 2022深川・富岡八幡宮の酉の市

    仕事終わりに買い物に出かけて、今日は二の酉だったと気づいたので、富岡八幡宮に寄ってみた。ここの酉の市は小規模で、参道の中ほどに4~5軒の熊手屋が身を寄せ合っているだけ。食べもの屋も、ベビーカステラの屋台が1軒出ていただけだった。照明も暗くて人も少ないのだが、それはそれで、なかなかエモい。江戸とは言わないけれど、明治の酉の市もこんなふうだったのかな、と想像する。ダボダボのズボンを穿いた鳶職ふうのお兄ちゃんが、大きな熊手をかついできて、新しいものに取り換えたりしている。「お手を拝借」の手締めも、途切れることなく続いていた。今年は三の酉まである年。火事に気を付けよう。2022深川・富岡八幡宮の酉の市

  • 引き裂かれる自己認識/アメリカとは何か(渡辺靖)

    〇渡辺靖『アメリカとは何か:自画像と世界観をめぐる相克』(岩波新書)岩波書店2022.8アメリカといえば、リベラルな民主党と保守的な共和党が交代を繰り返す二大政党制で、比較的分かりやすい政治形態だと思っていた。それが最近いろいろと混沌としてきたのを、あらためて整理し直すのに役立つ本だった。まず「リベラル」や「保守」の意味は国や地域によって異なる、という注釈に目を開かれる。米国の独立宣言や憲法の基本にあるのは近代啓蒙思想、すなわちヨーロッパ流の「自由主義」で、近代そのものに懐疑的なヨーロッパ流の「保守主義」は希薄である。また強大な中央集権体制を通して社会全体の組織化を目指すヨーロッパ流の「社会主義」も受け入れられていない。ヨーロッパ政治が、社会主義・自由主義・保守主義の三すくみ構造であるのに対して、米国には...引き裂かれる自己認識/アメリカとは何か(渡辺靖)

  • 迷妄を乗り越える/レイシズム(ベネディクト)

    〇ルース・ベネディクト;阿部大樹訳『レイシズム』(講談社学術文庫)講談社2020.4書店で平積みにされていたので、思わず手に取ってしまった。原著は1942年の出版で、日本語翻訳は何度か出ているが、本書は学術文庫のための新訳である。原題「RaceandRacism」に従い、第1部では人種(Race)について解説する。人種とは「遺伝する形質に基づく分類法の一種」である。この定義は明確だ。しかし、人はしばしば生物学的に遺伝するものと、社会的に学習されるものの区別を曖昧にする。たとえば「言語」は後天的な学習の結果である。「アーリア」は言語学上の概念で、遺伝的形質とは何の関係もないが、奇妙な誤用がはびこっている。学者たちは、皮膚の色、眼の色、鼻の形など、人種を決定的に分ける生物的な基準を打ち立てようと努力してきたが...迷妄を乗り越える/レイシズム(ベネディクト)

  • 2022年11月関西旅行:正倉院展(奈良国立博物館)

    〇奈良国立博物館『第74回正倉院展』(2022年10月29日~11月14日)今年も正倉院展に行ってきた。前夜は奈良公園内のホテルに泊まったので、ぶらぶら歩いて、開館1時間前の8:00頃に到着したら、先頭から3組目だった。今年も完全予約制なので、もちろんチケットは入手済である。でも早い順番で入れると、会場内を自由に動けて効率がよい。今年のポスターになっているのは『漆背金銀平脱八角鏡(しっぱいきんぎんへいだつのはっかくきょう)』、それに『銀壺』や香木『全浅香』が見どころのようだが、いずれも平成以降に展示されており、初見ではない。銀壺は2010年に東博の『東大寺大仏』で見た。遠目には黒っぽい鉄か銅の壺のようだが、よく見ると弓矢を持った騎馬人物が羊や鹿、イノシシなどを追う狩猟図が生き生きと線刻されている。人物が漢...2022年11月関西旅行:正倉院展(奈良国立博物館)

  • 木場でうどん屋呑み

    門前仲町の角打ち呑み屋で、ときどき一緒になるおじさんから、木場に日本酒の呑めるうどん屋があるという話を聞いたので、友人と行ってきた。「饂飩乃風楽翔(らくと)」というお店である。「ちょい飲みセット」の天ぷらともつ煮。どちらも注文を受けてから、その場で調理してくれるのでアツアツ、新鮮。お酒は、プレミア感のある銘柄3種の飲み比べセットのあと、長野の「彗(シャア)」と滋賀の「三連星」をグラスでいただく。最後は〆めのざるうどん。大満足~ごちそうさまでした!2021年8月オープンのお店とのこと。機会があったらランチにも来てみたい(最近忙しくて、在宅勤務でもゆっくりランチの時間が取れないのが悲しい)。木場でうどん屋呑み

  • 2022年11月関西旅行:茶の湯(京都国立博物館)

    〇京都国立博物館特別展『京(みやこ)に生きる文化茶の湯』(2022年10月8日~12月4日)各時代の名品を通して、京都を中心とした茶の湯文化を紹介する。展示替えを含め、出品点数は245件。質量ともにスゴい展覧会だと思うのに、いまいち盛り上がっていないのは、残念というべきか幸いというべきか。土曜の午後でも、それほど混雑していなかった。印象に残った作品を挙げていく。まず第1室(3階)の冒頭にあった清拙正澄墨蹟『秋来偈頌』(野村美術館)にほれぼれして、しばらく動けなくなってしまった。墨色の美しいこと。金と紫の格子文様の表具もセンスがよい。関西の美術館の所蔵品は、まだまだ知らないものが多いなあと思う。この部屋は、墨蹟のほか、茶釜・水指・茶入・茶碗・花瓶・棗など、茶の湯道具のいろいろ(名品ばかり!)がひととおり並ぶ...2022年11月関西旅行:茶の湯(京都国立博物館)

  • 2022年11月関西旅行:長等山前陵探し~義仲寺

    ■弘文天皇陵(長等山前陵)探し~新羅善神堂大津市歴史博物館の『大友皇子と壬申の乱』展を興味深く参観したが、結局、弘文天皇陵に決まった「亀丘」がどこにあるのか、よく分からなかった。会場の隅で、スマホで検索してみたら、博物館のすぐ近所であるらしい。地元の人には当たり前すぎて、掲示するまでもない情報なのだろうが、関東民の私は初めて知った。せっかくなので寄ってみようと思い、博物館を出て、Googleマップをたよりに御陵を目指したが、警察学校の敷地に突き当たってしまった。仕方ないので、京阪石山線に並行する県道に出て、市役所や消防署の前を過ぎ、ようやく「弘文天皇陵」の道案内を見つけて左折した。雑木林の中にあらわれた、ゆかしげな門と塀。これか!と思ったら違った。「三井寺(園城寺)新羅善神堂」の看板が立っていた。私は、新...2022年11月関西旅行:長等山前陵探し~義仲寺

  • 2022年11月関西旅行:大友皇子と壬申の乱(大津市歴博)

    〇大津市歴史博物館壬申の乱1350年記念企画展(第88回企画展)『大友皇子と壬申の乱』(2022年10月8日~11月23日)週末は1泊2日で関西旅行に行ってきた。このところ、公私ともに突発的なトラブルに見舞われ続けていて、旅行はあきらめようかと思ったが、いやいや、と思い直して出かけた、土曜の朝、京都に到着して、最初は大津の歴博に向かう。この時期、同館の企画展を参観するのは、秋旅行の定番コースなのだが、乗り換えの膳所駅がきれいになっていて驚いた(2017年6月オープンだからもう5年目だが)。壬申の乱は、天智天皇の後継を、天智の弟・大海人皇子(のちの天武天皇)と天智の息子・大友皇子が争った古代日本最大の内乱である。本年が、672年の壬申の乱から1350年という節目の年であることを記念し、関連地域の考古資料・歴...2022年11月関西旅行:大友皇子と壬申の乱(大津市歴博)

  • 家族、大切なもの/中華ドラマ『消失的孩子』

    〇『消失的孩子』全12集(愛奇藝、2022年)舞台は中国南方の都市(撮影地は寧波)の団地。サラリーマンの楊遠は、妻の陶芳と9歳になる息子の莫莫の三人暮らし。5階建ての住棟は、2戸が1つの共用階段を使う造りで、楊遠一家は402号室に住んでいた。冬至の朝、楊遠は息子を小学校に送るため、住棟の出口に車を寄せて莫莫を待っていた。ところが、いつまで待っても下りてこない。妻に電話をすると、もう部屋を出たという。4階の部屋を出て1階の出口へ至る階段室のどこかで、莫莫は姿を消してしまったのだ。捜査を担当することになったのは女性警官の張葉。幸せな家族と思われた楊遠一家だが、莫莫は多動症(ADHD)の診断を受けており、集中力がなく、成績が伸びないことを母親の陶芳は気に病んでいた。仕事に追われる陶芳は、家族で遊びに行きたいとい...家族、大切なもの/中華ドラマ『消失的孩子』

  • 味のある凸凹コンビ/中華ドラマ『唐朝詭事録』

    〇『唐朝詭事録』全36集(愛奇藝、2022年)全く注目していなかったドラマだが、本国でも日本のSNSでも評判がいいので見てみた。なるほど、なかなか面白かった。設定は唐の景雲年間(と第1話の字幕にある)、武則天の治世が終わり、中宗の復位を経て、同じく復位した睿宗の治世である。狄仁杰の弟子を以て任ずる文官の蘇無名(検死の知識もある)と、血気盛んな武官の盧凌風のコンビが、さまざまな怪事件に出会い、それを解決していく。4~5話で1つの事件が解決する方式で「長安紅茶」「甘棠駅怪談」「石橋図」「黄梅殺」「衆生堂」「鼍神」「人面花」「参天楼」の8つの事件が展開する。最初の「長安紅茶」は長安が舞台で、事件解決の結果、蘇無名は公主(モデルは太平公主)に称賛され、南州司馬に昇格して赴任することになる。一方、盧凌風は、行き過ぎ...味のある凸凹コンビ/中華ドラマ『唐朝詭事録』

  • 琳派いろいろ/神坂雪佳(パナソニック汐留美術館)

    〇パナソニック汐留美術館『つながる琳派スピリット神坂雪佳』(2022年10月29日~12月18日)2003年4月に開館した美術館だというが、初訪問である。過去の展覧会を見ると、西欧の近代絵画や工芸をテーマにしたものが多いので、なかなか食指が動かなかったようだ。今回は、明治から昭和にかけて活躍した図案家・画家の神坂雪佳(1866-1942)を取り上げ、さらに雪佳が手本とした、江戸期の琳派の作品も紹介する展覧会と聞いて見に行った。はじめは雪佳が手本にした、江戸期の琳派から。光悦、宗達、光琳、乾山らの作品が並ぶ。京都の細見美術館所蔵の作品が多いのを見て、この展覧会が、今年5月に細見美術館で見た琳派展22『つながる琳派スピリット神坂雪佳』の巡回展であることに気づいた。なんだ、そうだったのか。しかし宗達の『双犬図』...琳派いろいろ/神坂雪佳(パナソニック汐留美術館)

  • 『五馬図巻』完全公開/中国書画精華(東京国立博物館)

    〇東京国立博物館・東洋館8室日中国交正常化50周年・東京国立博物館150周年・特集『中国書画精華-宋代書画とその広がり-』(2022年9月21日~11月13日)『国宝展』で賑わう東博だが、私が待っていたのはこちら。毎秋恒例の中国書画の名品展である。開館150周年にあたる本年は、コレクションの白眉といえる宋代書画に注目。後期(10/18-)には『五馬図巻』(李公麟筆、北宋時代・11世紀)が登場した。2019年の特別展『顔真卿』に突如姿を現したあと、東博の所蔵に帰したが、しばらく公開の機会がなかったのは、修理に入っていたためだという。嬉しかったのは、修理で不要になった旧箱や旧包裂(つつみぎれ)なども一緒に展示されていたこと。この旧包裂は清朝宮廷製だという。『五馬図巻』は、宣統帝溥儀の教育係だった陳宝琛が持ち出...『五馬図巻』完全公開/中国書画精華(東京国立博物館)

  • はたらくふね(浚渫船)@江東区大横川

    我が家の窓の外を流れているのは大横川。先週末、ふと外を見たら、浚渫船が止まっていた。我が家の前を通り過ぎていくのは何度か見たことがあるが、止まった状態は初めて見た。そして火曜~水曜に、少し場所を移動して、我が家の前で川底の土砂を掬い取る作業をしている様子を見ることができた。札幌に暮らしていたとき、除雪車が珍しくて、作業の場に出会うたびに興奮していたことを思い出した。私たち人間の暮らしを守るため、働くくるまやふねは、いつもカッコいい。はたらくふね(浚渫船)@江東区大横川

  • 源氏物語絵巻もチェック/大蒔絵展(三井記念美術館)

    〇三井記念美術館特別展『大蒔絵展-漆と金の千年物語』(2022年10月1日~11月13日)この春、MOA美術館で開催された展覧会の共同開催展。このあと、2023年春の徳川美術館を加え、3会場で国宝25件、重要文化財51件を含む計188件を展示する企画である。三井記念美術館での展示件数は(蒔絵以外も含め)188件だが、けっこう展示替えがある。私は『源氏物語絵巻・宿木一』が見たかったので、最初の週に出かけた。東京にいると、徳川美術館所蔵の巻はなかなか見る機会がないのだ。引き違いの障子で隔てられた右側の部屋(朝餉間=あさがれいのま)で男性二人が碁盤を間に向き合っている。今上帝(朱雀帝の皇子)と薫である。右側の部屋には女官が二人、隣室の様子を気にしているようだ。実はこの画面、現存『源氏物語絵巻』で唯一内裏の建物内...源氏物語絵巻もチェック/大蒔絵展(三井記念美術館)

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