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  • 栄泉堂のバター最中@宮城県銘菓

    仙台銘菓、小豆餡にバターを加えた最中といえば、メゾンシーラカンスの「シーラカンスモナカ」。1回だけ頑張って行列に並んで購入したことがあるが、なかなか2回目の機会がない。そう思っていたら、栄泉堂(伊具郡丸森町)の「バター最中」なら、茅場町にある宮城県のアンテナショップ「宮城ふるさとプラザ」に月曜、水曜、土曜の週3回入荷していることを、最近知った。栄泉堂は、メゾンシーラカンスのパティスリー、カズノリイケダさんの実家なのである。今日は散歩のついでに買ってきてみた。これは美味しい。シーラカンスモナカより塩味がひかえめ、という評判を聞いていたが、しばらく持ち歩いて、バターが溶けかかっていたせいか、しっかり塩味が感じられて、私の好みだった。リピート確定!栄泉堂のほかのお菓子も食べてみたいが、仙台から遠いんだなあ。栄泉堂のバター最中@宮城県銘菓

  • 2025年4-5月展覧会拾遺(2)

    ■山種美術館特別展『桜さくらSAKURA2025-美術館でお花見!-』(2025年3月8日~5月11日)毎年楽しんでいる「桜」展。今年は会期ギリギリの5月の連休中に訪ねた。冒頭には松岡映丘の『春光春衣』。川合玉堂、小野竹喬、山本丘人など、比較的写実的な春の風景画が続き、それから名所の桜や詩歌・物語の桜が登場する。今年も土牛の『醍醐』『吉野』を見ることができてうれしい。誰の作品の解説だったか、『枕草子』は「絵に描き劣りするもの」に「桜」を挙げていることが紹介されていた。ふうむ、分からないでもない。■太田記念美術館没後80年『小原古邨-鳥たちの楽園』(2025年4月3日~5月25日)鳥や花、獣たちを、江戸時代から受け継がれた伝統的な浮世絵版画の技法によって描いた小原古邨(1877-1945)は、明治末から昭和...2025年4-5月展覧会拾遺(2)

  • 2025年4-5月展覧会拾遺(1)

    ■東京藝術大学大学美術館相国寺承天閣美術館開館40周年記念『相国寺展-金閣・銀閣鳳凰がみつめた美の歴史』(2025年3月29日~5月25日)確か4月29日に訪問したのだが、めちゃくちゃ混んでいた。私は年に数回京都に行くと、ほぼ必ず承天閣美術館に寄っているので、旧知の作品が多かったのだが、ふつうの東京人には珍しいのかもしれない。鹿苑寺大書院の障壁画は『葡萄小禽図』『松鶴図』『双鶴図』9面が出ており、人の動線に従って大書院の全貌を見せる大画面の動画がとても興味深かった。若冲は『竹虎図』『厖児戯帚図』なども。応挙は『七難七福図巻』(そんなに酷くない場面)『大瀑布』など。伝・宗達『蔦の細道図屏風』は久しぶりに見た。あとは『永楽帝勅書』があったり、『異国通船朱印状』(西笑承兌筆)があったり、外交現場における相国寺僧...2025年4-5月展覧会拾遺(1)

  • 家族と幸せのかたち/中華ドラマ『小巷人家』

    〇『小巷人家』全40集(正午陽光、湖南衛視、2024年)新作ドラマをいくつか挫折した後、半年前の公開である本作を探し当てて完走した。やっぱり正午陽光作品の安定感は抜群である。舞台は蘇州、1970年代末。紡績工場の女工の黄玲は、成績優秀と認められて住宅を給付され、夫である高校教師の荘超英、幼い息子の図南、娘の篠婷とともに新居に引っ越す。新居と言っても、庭と台所は隣家と共有、トイレはさらに周辺の住民と共有する、伝統的な「小巷」の住まいである。隣家の住人となったのは、工場の同僚の宋莹。夫の林武峰は、この界隈にはめずらしい大卒で、圧縮機工場の技師をしていた。息子の棟哲は父親に似ず、勉強嫌いのやんちゃ坊主。この2つの家族を軸に、90年代末まで、20年間にわたる中国庶民の暮らしぶりを描いていく。80年代はじめ、庶民の...家族と幸せのかたち/中華ドラマ『小巷人家』

  • 大河ドラマともに楽しむ/蔦屋重三郎(東博)

    〇東京国立博物館特別展『蔦屋重三郎コンテンツビジネスの風雲児』(2025年4月22日~6月15日)2025年の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)との連携展。江戸時代の傑出した出版業者である蔦重こと蔦屋重三郎(1750-1797)の活動をつぶさにみつめながら、天明、寛政(1781-1801)期を中心に江戸の多彩な文化を紹介する。私はこの大河ドラマ連携展が好きで、ドラマ自体が気に入らないときでも、展覧会だけは見に行ってしまう。今年はドラマそのものが面白いので、展覧会もたっぷり楽しめた。会場へは、ドラマの撮影で使われた吉原の大門を潜って入る。すると(夜の吉原のように)薄暗い第1展示室の中央には、毎年、開花時期にあわせて人工的にしつらえられたという桜の植え込み。2024年の藝大『大吉原展』の会場の...大河ドラマともに楽しむ/蔦屋重三郎(東博)

  • 三屏風揃い踏み/国宝・燕子花図と藤花図、夏秋渓流図(根津美術館)

    〇根津美術館財団創立85周年記念特別展『国宝・燕子花図と藤花図、夏秋渓流図:光琳・応挙・其一をめぐる3章』(2025年4月12日~5月11日)毎年、この時期に公開される光琳の国宝『燕子花図屏風』に加えて、今年は応挙『藤花図屏風』、其一『夏秋渓流図屏風』が贅沢に揃い踏みなのは、タイトルに控えめに添えられた「財団創立85周年記念」の祝意も含んでいるのだろうか。見どころの3屏風だけでなく、取り合わせの作品も魅力的な内容だった。はじめに「藤花屏風の章」では、同時代の画家の作品と比較することで、応挙の「写生」の革新性を称揚する。しかし比較対象にされていた呉春の『南天双鳩図』も私は気に入った。南天の枝には白い花が咲いている。応挙の『藤花図屏風』は、細かく色を塗り重ねた藤の花房と、太い筆で一筆書きしたような枝の対比が見...三屏風揃い踏み/国宝・燕子花図と藤花図、夏秋渓流図(根津美術館)

  • 次代を育てる/国立大学教授のお仕事(木村幹)

    〇木村幹『国立大学教授のお仕事:とある部局長のホンネ』(ちくま新書)筑摩書房2025.4韓国政治を専門とする木村幹先生の著作は『韓国現代史』『全斗煥』など、何冊か読んでいるが、今度は「大学教授という仕事」について書いたというので、へえ~(物好きな)と驚きながら読んでみた。著者は、1993年に愛媛大学に助手として採用され、1994年に講師に昇任、1997年に神戸大学大学院国際協力研究科に助教授として赴任し、教授に昇任、2023年から研究科長をつとめている。本書は「国立大学教授のお仕事」と題してはいるが、著者の個人的な経験に基づくものであり、大学の規模や所在地域、研究分野や世代によって、その経験は、かなり違ったものになるだろう。そして、大学教授は互いの仕事について実はよく知らない、という著者の言葉にもうなずけ...次代を育てる/国立大学教授のお仕事(木村幹)

  • バチカンのミステリー/映画・教皇選挙

    〇エドワード・ベルガー監督『教皇選挙』(TOHOシネマズ日本橋)ゴールデンウィークなので、話題の映画を見てきた。非アジア系の映画を見るのはむちゃくちゃ久しぶりだったが、評判に違わず、面白かった。ある日、カトリック教会の最高指導者であるローマ教皇が心臓発作で急死してしまう。首席枢機卿のトマス・ローレンスは、悲嘆にくれる暇もなく、次の教皇を決める教皇選挙(コンクラーベ)を執行することになった。選挙の参加資格を持つ枢機卿たちが、世界中からバチカンに集結する。選挙の秘密を守るため、彼らは外界から完全に隔離される。そこに1名の名簿に記載のない枢機卿が現れる。アフガニスタン・カブール教区所属のベニテスはメキシコ出身、多くの紛争地域で活動してきた人物で、前教皇が密かに枢機卿に任命していた。ローレンスは任命状を確認し、ベ...バチカンのミステリー/映画・教皇選挙

  • 国境を超える銅銭/歴史のなかの貨幣(黒田明伸)

    〇黒田明伸『歴史のなかの貨幣:銅銭がつないだ東アジア』(岩波新書)岩波書店2025.3経済史というのは、私にはやや苦手な分野なのだが、現代人の常識をくつがえす話がたくさんあって、たいへん面白かった。人類の歴史を振り返ると、政府が通貨供給を独占するようになったのも、通貨がつねに額面通りに使われるようになったのも、つい最近の話なのである。7世紀に唐が発行した開元通宝は、その後の中華王朝の銅銭のモデルになった。しかし鋳造や輸送に費用がかかり、滞留(畜銭)を抑止できなかったため、供給不足を解消することができなかった。中国古代は酸化銅鉱石が用いられていたが、北宋時代の11世紀、硫化銅の精錬が可能になり、銅産が急増する。12世紀には再び銅産が減少し、南宋政府は紙幣の発行に頼ろうとした。次代の元も同様である。その結果、...国境を超える銅銭/歴史のなかの貨幣(黒田明伸)

  • 2025深川伊勢屋の柏餅

    今日は1日、コタツを仕舞って、冬物のカーテンや毛布の洗濯、部屋の掃除に明け暮れた。これは門前仲町の深川伊勢屋で買ってきた柏餅。こしあんとみそあん。餡も餅も、かなりボリュームがあるのだが、肉体労働の後だったので、一気に2つ食べてしまった。ちょうど今日、伊勢屋本店ビルが建て替えになるという情報をネットで見た。着工は今年12月、取り壊しは2026年2月からで、新ビル竣工は2029年予定とのこと。次の正月の伸し餅は伊勢屋さんで買えるだろうか?!そして、夏のお楽しみのかき氷、今年は味わって食べておかないと…。2025深川伊勢屋の柏餅

  • 2025年4月関西旅行:大和文華館、大阪市立美術館など

    ■大和文華館特別展・没後50年『矢代幸雄と大和文華館-芸術を愛する喜び-』(2025年4月12日~5月25日)観劇と展覧会めぐりを目的にした2泊3日の関西旅行。初日は同館を訪ねた。本展は、初代館長・矢代幸雄(1890-1975)の没後50年を記念し、矢代が蒐集した初期のコレクションと関連する諸作品を展示し、その足跡をたどる。冒頭には伝・趙令穣筆『秋塘図』(北宋時代)。やさしい雰囲気の小品で、モノクロだと思ったら、夕靄(?)にかすかな赤みが差している。隣りの『饕餮文方盉』は、どこかで見たことがあると思ったら、根津美術館の所蔵だった。『源氏物語浮舟帖』(鎌倉時代)は、三人の女性が描かれ、うち一人の前に硯が置かれている。硯の蓋に点々とにじむ水玉模様は、匂宮の文を見て落涙する浮舟を描いているのではないかという解説...2025年4月関西旅行:大和文華館、大阪市立美術館など

  • 超未来への祈り/超国宝(奈良国立博物館)

    〇奈良国立博物館開館130年記念特別展『超国宝-祈りのかがやき-』(2025年4月19日~6月15日)2泊3日の関西旅行で展覧会もいくつか回ってきたのだが、本展のクオリティと満足度はずば抜けていた。奈良国立博物館は明治28年(1895)4月29日に開館し、2025年に130周年を迎える。これを記念し、同館は「これまでで最大規模となる国宝展」を開催し、国宝約110件、重要文化財約20件を含む約140件の仏教・神道美術を展示する。「超国宝」というタイトルには、私たちの歴史・文化を代表する国民の宝という意味の「国宝」を超えて、先人たちから伝えられた祈りやこの国の文化を継承する人々の心もまた、かけがえのない宝であるという思いが込められているという。この説明には納得しつつも、今回「国宝」という名前をどこからか(上の...超未来への祈り/超国宝(奈良国立博物館)

  • 法螺侍と天上の神/祝祭大狂言会2025

    〇大阪フェスティバルホール祝祭大狂言会2025(4月26日、15:00~)野村万作、萬斎、裕基の三代が出演する異色の舞台「祝祭大狂言会」を見てきた。私の場合、亡き母が狂言好きだったので、小学校の高学年から高校生くらいまでは、母にもらったチケットで、よく狂言を見に行った。母(あるいは母の友人)が和泉流の後援会に入っていたらしく、水道橋の宝生能楽堂で行われる、和泉流の公演が多かった。その後、なんとなく狂言を見る習慣が途絶えて40年くらいになるのに、突然、この公演を見ようと思い立ったのは、3月に仙台で開催されたアイスショー「羽生結弦nottestellata2025」で羽生くんと野村萬斎さんの共演を目撃したためである。私は、萬斎さんの狂言の舞台をたぶん一度も見たことがなかったので(万作さんはある)、このまま人生...法螺侍と天上の神/祝祭大狂言会2025

  • すしやの段を初鑑賞/文楽・義経千本桜

    〇国立文楽劇場令和7年4月文楽公演第2部(2025年4月27日、15:00~)大型連休スタートの土日に有休を1日付け足して、関西方面で遊んできた。順不同になるが、まずは文楽公演から。今月は通し狂言『義経千本桜』が掛かっている。私は二段目「渡海屋・大物浦の段」と、四段目「道行初音旅」が大好きなので、どうしてもこの両者を選びがちで、実は文楽ファン歴40年になるのに三段目を見たことがなかった。一度は見ておくほうがいいかもしれない、と思って、いろいろ予定を調整して、今回は第2部を見ることにした。・第2部『義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)・椎の木の段/小金吾討死の段/すしやの段』第2部の主人公は、高野山に落ち延びた平維盛。その妻子である若葉の内侍と六代の君は、家臣の主馬小金吾だけを連れて、維盛を探す旅路を続けて...すしやの段を初鑑賞/文楽・義経千本桜

  • 2025連休始まる

    先週末から昨日まで、ずっと仕事に忙殺されていた。やれやれ。もう若くないので、こういう日々は卒業したいと、しみじみ思った。なんとかたどり着いた連休。今年は、ゴールデンウィークと呼ぶほど、うれしいカレンダーではないが、今日から2泊3日、関西方面で遊んでくる。これは、近所で見つけたモッコウバラ。2025連休始まる

  • ここにも松平定信/書物ハンターの冒険(慶應義塾ミュージアム・コモンズ)

    〇慶應義塾ミュージアム・コモンズセンチュリー赤尾コレクション×斯道文庫『書物ハンターの冒険:小松茂美旧蔵資料探査録I』(2025年3月17日~5月16日)年度末でもないのに、この週末は自宅で持ち帰り仕事に忙殺されていた。それでも土曜日は、この展覧会を見るためにちょっとだけ外出した。慶應義塾が運営するこのミュージアム、基本は週末休館で、土曜の特別開館が会期中に2回しかないのである。本展は、2021年に慶應義塾に寄贈されたセンチュリー赤尾コレクションの調査成果を初めて紹介するもの。同コレクションの中核を成すのは、古筆学者・小松茂美(1925-2010)の約15,000冊におよぶ旧蔵書である。小松は、1988年、旺文社の創業者・赤尾好夫のコレクションを保存・管理する財団法人センチュリー文化財団の理事に就任、19...ここにも松平定信/書物ハンターの冒険(慶應義塾ミュージアム・コモンズ)

  • 懐の深いコレクター/1975甦る新橋松岡美術館(松岡美術館)

    〇松岡美術館開館50周年記念『1975甦る新橋松岡美術館』(2025年2月25日〜2025年6月1日)1975年11月に新橋で開館した同館が、2025年に50周年をむかえることを記念し、3会期にわたり松岡コレクションを紹介する記念展の第一弾。1975年11月25日から1976年4月24日まで新橋で開催された「開館記念展」を再現する。同館が白金台に移転したのは2000年だそうで、私は現在の建物しか知らない。新橋の美術館は、創立者・松岡清次郎の持ちビルである松岡田村町ビル8階にあり、社員が輪番で宿直を命じられていたそうだ。そしてこのビルは今も現役で、入口に石像彫刻が飾られているみたいなので、今度訪ねてみよう。さて、1階の各展示室では、第1章「50年間いつも傍らに」を開催。1階は基本的に常設展示なので、素通りし...懐の深いコレクター/1975甦る新橋松岡美術館(松岡美術館)

  • 淡路町でカフェごはん

    仕事帰りに友人と、淡路町の「カフェ・カプチェットロッソ」で夕ごはん。特別なイベントではないけれど、いつもの日常より、ちょっと美味しいものを食べるお手軽コース。こういう夕ごはんもたまにはいいなと思った。20年以上使ってきたgooblogサービスの終了告知を受け取ったので、引っ越し先を検討中。ChatGPTの意見も参考に考えている。淡路町でカフェごはん

  • 歴聖大儒像もあり/ライトアップ木島櫻谷II(泉屋博古館東京)

    〇泉屋博古館企画展『ライトアップ木島櫻谷II-おうこくの線をさがしに・併設四季連作屏風』(2024年3月16日~5月12日)昨年に続き「四季連作屏風」を全点公開し、木島櫻谷の絵画表現の特質をライトアップする展覧会シリーズの第2弾。エントランスホールにも展示ケースを並べ、たくさんの写生帖を展示していた。開いたページには人物画が多く、少ない描線で簡潔に対象の特徴を捉えたものが多かった。「クロッキーふうの」という解説に私は妙ななつかしさを感じてしまった。通っていた小学校では、朝の自習時間の課題のひとつにクロッキーがあり、私はこれが好きだったので。描かれた人物は、いかにも身のまわりにいそうな幼児や農婦もあるけれど、狩衣や水干、本格的な鎧姿の写生もあって(眼鏡をかけた男性が兜をかぶった図も)「〇〇君仮装」などと注記...歴聖大儒像もあり/ライトアップ木島櫻谷II(泉屋博古館東京)

  • 桜も見頃/博物館でお花見を(東京国立博物館)他

    先週(4/5)お花見がてら、東京国立博物館を訪ねた。4月1日から、総合文化展(平常展)が「東博コレクション展」という名称に変わったそうだが、定着するかどうかは分からない。私は結局、どの美術館・博物館でも「常設展」を使ってしまう。本館11室(彫刻)が珍しく展示替えで閉室していた。■東京国立博物館・本館『博物館でお花見を』(2025年3月11日~4月6日)庭園公開と同時に、仁阿弥道八の『色絵桜樹図透鉢』など桜モチーフの作品を各所に展示。住吉具慶筆『観桜図屛風』(江戸時代・17世紀)は、狩衣姿の貴族の若者たちが桜の下に集っている場面で、のんびりした雰囲気が可愛かった。しかし『伊勢物語』の惟喬親王と在原業平の図という解説を読むと、急に哀愁を感じてしまう。■本館14室特集『キリシタン関係遺品の保存と研究』(2025...桜も見頃/博物館でお花見を(東京国立博物館)他

  • 闇夜かお洒落か中国趣味か/エド・イン・ブラック(板橋区立美術館)

    〇板橋区立美術館『エド・イン・ブラック:黒からみる江戸絵画』(2025年3月8日~4月13日)本展は、黒に焦点を当て、江戸絵画にみる黒の表現とともに、当時の文化や価値観なども紹介する。江戸時代の人々は「黒」に対して何を見出し、何を感じていたのか、様々なテーマから江戸絵画における「黒」を探究し、その魅力に迫る。江戸絵画展らしからぬ展覧会タイトルは、やっぱり「メン・イン・ブラック」のもじりですかね。はじめに、月や影、夜の暗闇などを描いた絵画を集める。これは「黒」の使い方としては、比較的分かりやすいものだ。大好きな蘆雪の「月」を描いた墨画が2件、『月夜山水図』(兵庫県立美術館)は、前景に黒々と浮かび上がる崖の上の松、そして大きな満月を背景に、中空にぼんやり松の木のシルエットが浮かんでいる。これは靄か霧に映る影な...闇夜かお洒落か中国趣味か/エド・イン・ブラック(板橋区立美術館)

  • 文人の洋風画/かっこいい油絵(府中市美術館)

    〇府中市美術館春の江戸絵画まつり『司馬江漢と亜欧堂田善:かっこいい油絵』(2025年3月15日~5月11日)会場入口のパネルの冒頭に「近年、江戸時代の絵画の人気が高いと言われますが、ただ一つ取り残された感があるのが『洋風画』かもしれません」とあって、えっそうなの?と驚き、苦笑してしまった。私は「洋風画」が大好物なのだが、そんなに異端だったのか。府中市美術館では、2001年に『司馬江漢の絵画西洋との接触、葛藤と確信』展、2006年に『亜欧堂田善の時代』展を開催したが、近年の「春の江戸絵画まつり」ほど多くのお客様で賑わうこともなかったという。2001年は私がこのブログを書き始める前で、司馬江漢展は見ていないかなあ。2006年の『亜欧堂田善の時代』は、私が「春の江戸絵画まつり」のリピーターになった最初のきっかけ...文人の洋風画/かっこいい油絵(府中市美術館)

  • 文書も彫刻も/至高の宝蔵(神奈川県立金沢文庫)

    〇神奈川県立金沢文庫開館95周年記念特別展『至高の宝蔵-称名寺の国宝開帳-』(2025年3月28日~5月18日)称名寺の宝蔵の品々を開帳する特別展。「開館95周年」と聞いて、改めて調べてみたら、昭和天皇の即位に伴う御大典記念事業の一環で建てられた、鉄筋コンクリート造の施設が竣工したのが昭和4年(1929)12月。そして、昭和5年(1930)8月、図書館令に基づく県立図書館として開館した。ここが起点の年なのだな。その後、図書館から博物館に変わったのは、昭和30年(1955)のことである。展示企画についても調べてみたら、90周年には『東アジア仏教への扉』、80周年には『運慶-中世密教と鎌倉幕府-』が開催されていた。なつかしい。入口を入ってすぐの展示ケースには、金沢文庫の創建と蔵書に縁の深い北条実時・顕時・金沢...文書も彫刻も/至高の宝蔵(神奈川県立金沢文庫)

  • 門前仲町で花見呑み

    4月第1週は寒の戻りで冷たい雨続き。昨日もはっきりしない空模様だったが、夕方から友人に門前仲町に来てもらい、大横川岸の桜並木を歩いて、夜桜見物のあと、居酒屋に入った。「日本酒と肴あらばしり」は、お酒も美味しいが、料理も美味しくて、のんべえにも食いしん坊にもおすすめのお店。お腹いっぱい食べたのに、まだ惹かれるメニューがいろいろあった。そして今日は職場の歓迎会で大宴会。明日は定期健診なのに、だいぶ体重が増えていそうである。門前仲町で花見呑み

  • 2025年3月展覧会拾遺

    ■荏原畠山美術館開館記念展II(破)『琳派から近代洋画へ-数寄者と芸術パトロン:即翁、酒井億尋』(2025年1月18日~3月16日)開館記念展の第二弾として琳派の歴史を彩る名品が勢ぞろいし、開館記念展Ⅰにつづき、即翁の甥で、荏原製作所社長を継いだ酒井億尋の近代洋画コレクションを紹介する。私は鈴木其一の『向日葵図』が久しぶりに見たかったので、後期を待って出かけた。向日葵は17世紀に日本にもたらされた植物で、絵画化された早い例には抱一の作品があるという。今、ヒマワリを絵に描くなら、花の中心部を茶色で塗ると思うのだが、其一の向日葵は花全体が黄色で、中央は少し緑がかっている。まっすぐな茎と合わせて、可憐で瑞々しい。抱一の『十二ヶ月花鳥図』も堪能した。茶器は光悦の赤楽茶碗『銘:雪峯』と『銘:李白』を見ることができた...2025年3月展覧会拾遺

  • 東京へようこそ/青池保子展(弥生美術館)

    〇弥生美術館漫画家生活60周年記念『青池保子展Contrail航跡のかがやき』(2025年2月1日~6月1日)1963年、15歳でデビューした青池保子(1948-)の漫画家生活60周年を記念する展覧会。緻密なカラー原画とモノクロ原稿、約300点(前後期の合計点数)を展示する。2023年の秋、神戸市立小磯記念美術館で参観した展覧会だが、東京で開催されるのが嬉しくて、また見てきた。私が少女マンガを熱心に読んでいたのは70年代から80年代前半で、青池先生の作品でいうと「イブの息子たち」「エロイカより愛をこめて」の時代。ただし私は集英社&白泉社びいきだったので、青池先生が執筆していた講談社・秋田書店の雑誌には縁がなかった。けれども、上述の2作品は、マンガ好きの友人の手から手へまわってきたように記憶している。あと「...東京へようこそ/青池保子展(弥生美術館)

  • おまけに蔦屋重三郎墓碑拓本/豊原国周(太田記念)+歌舞伎を描く(静嘉堂)

    ■太田記念美術館生誕190年記念『豊原国周』(2025年2月1日~3月26日)終わった展覧会だが書いておく。2025年が豊原国周(とよはらくにちか、1835-1900)の生誕190年となることを記念した回顧展。国周は幕末から明治にかけて役者絵の第一人者として君臨し、月岡芳年や小林清親らと並ぶ人気絵師として活躍した。芳年や清親に比べて紹介される機会の少なかった知られざる巨匠・国周の画業を約210点の作品で紹介する。正直、私は名前を聞いてもピンと来なかったが、作品を見ていくと、ああこの絵柄の人か、と分かるものも多かった。やっぱり魅力的なのは役者絵である。細い眉、切れ長の釣り目に小さすぎる瞳、高い鷲鼻、唇の薄いへの字口。こう並べると、国周以外の役者絵にもだいたい当てはまってしまうのだが、最も特徴的なのは極端な三...おまけに蔦屋重三郎墓碑拓本/豊原国周(太田記念)+歌舞伎を描く(静嘉堂)

  • 2025桜咲く

    昨日、3月26日(火)の朝、ようやく窓の外の桜の木に白い花が認識できるようになった。そして、昨日は1日初夏のように暖かかったので、今日27日(水)の桜はこんな感じ。窓の外の遊歩道は、大横川の護岸工事のため、昨年夏頃からずっと通行止めだったが、サクラの季節だけは通行止めが解除されたので、久しぶりに人の姿がある。今日は在宅勤務だったので、私も昼時に桜の下を歩いてきた。ひとつ残念なのは、遊歩道の入口(茶色いビルの前)にソメイヨシノとは別種の、緑の葉に白い花を咲かせる桜の樹があって、薄ピンクのソメイヨシノと競い合うような美しさが好きだったのだが、護岸工事が始まったと思ったら、いつの間にか跡形もなく撤去されてしまった。かなりの大木だったのに。もう戻ってはこないのだろうな。「年々歳々花相似たり」というけれど、今年の花...2025桜咲く

  • 権利と責任の主体/消費者と日本経済の歴史(満薗勇)

    〇満薗勇『消費者と日本経済の歴史:高度成長から社会運動、推し活ブームまで』(中公新書)中央公論新社2024.8本書は戦後日本の社会と経済の変化を消費者の姿から読み解いていく。「消費者」という言葉が学問の議論を超えて使われ始めるのは1920年代、さらに一般化するのは1960年代以降だという。1946年に創立された経済同友会は少壮の進歩的な経済人から成る団体で(占領政策で大企業経営者が追放された影響)、修正資本主義の構想を持ち、消費者に強い関心を寄せた。大塚萬丈は「そもそも社会構成員は一人残らず消費者である。従って社会における最も普遍的・包括的の利益は消費者の利益である」と述べ、資本家中心の資本主義と労働者中心の社会主義の双方を批判し、消費者の利益を実現する主体=専門経営者の正統性を主張した。この発想は生産向...権利と責任の主体/消費者と日本経済の歴史(満薗勇)

  • 2025桜を待つ

    今年の2月~3月は旅行と出張続きで、梅も桃も、おかめ桜も河津桜も見逃してしまった。そして、ソメイヨシノは例年より遅いような気がする。我が家の窓の下の大横川では、お江戸深川さくらまつりの遊覧船の運航が始まったが、まだ全く花は咲いていない。それでも昨日から少し暖かくなったので、清澄庭園を覗いてきた。ちょうど見頃だったのは、梅に似ているが、アンズの花とのこと。5~6月には実が成るらしいので、また見に行こう。早咲きの寒緋桜(カンヒザクラ)はもう散り始めだった。かなり気温が上がっていたので、大泉水を渡ってくる風が、笹や竹の葉をそよがせるのが気持ちよかった。我が家の前のソメイヨシノ、夕方に見たら、糠星のように小さな花が、わずかに1つ2つ開いていた。2025桜を待つ

  • 出会い、包み込まれるまで/アメリカ・イン・ジャパン(吉見俊哉)

    〇吉見俊哉『アメリカ・イン・ジャパン:ハーバード講義録』(岩波新書)岩波書店2025.1本書は、著者がハーバード大学の客員教授として2018年春学期に行った講義「日本の中のアメリカ」を活字化したものである。ちなみに2018年は最初のトランプ政権の2年目だった。全般的には、日本という小国が、海の向こうの大国に出会い、包み込まれてしまう歴史だが、そこに抗った人々の存在が印象的である。講義は、日本がアメリカに出会う「ぺリー来航」の前史から始まる。18世紀半ば、対仏戦争に勝利したアメリカでは「西漸運動」と呼ばれる西への不可逆的拡張が始まる。西谷修は「アメリカ」とは「ヨーロッパ国際秩序」の外部の「無主の地」にもたらされた、〈自由〉の制度空間の名前であると論じているという。そして大陸西岸に行き着いた西漸運動は、さらに...出会い、包み込まれるまで/アメリカ・イン・ジャパン(吉見俊哉)

  • 五大明王と襖絵の寺/大覚寺(東京国立博物館)

    〇東京国立博物館開創1150年記念特別展『旧嵯峨御所大覚寺-百花繚乱御所ゆかりの絵画-」(2025年1月21日~3月16日)平安時代初期、嵯峨天皇は嵯峨に離宮・嵯峨院を造営し、空海の勧めで持仏堂に五大明王像(現存せず)を安置した。貞観18年(876)、皇女・正子内親王の願いにより寺に改められ、開創されたのが大覚寺である。来たる2026年に開創1150年を迎えるのに先立ち、優れた寺宝の数々を一挙に紹介する。昨年3月の今頃、関西の桜を見に行ったついでに、久しぶりに大覚寺を訪ねてみたら、大変魅力的な仏像(平安時代の五大明王像)があったりして、この展覧会を楽しみにしていたのだが、結局、最終日の駆け込み鑑賞になってしまった。しかし、見逃さなくてよかった。展示室の冒頭には、嵯峨天皇像(江戸時代、画幅)と弘法大師像(鎌...五大明王と襖絵の寺/大覚寺(東京国立博物館)

  • 2025年3月関西:大阪市立美術館、大和文華館

    ■大阪市立美術館リニューアルオープン記念特別展『What’sNew!大阪市立美術館名品珍品大公開!!』(2025年3月1日~3月30日)2022年春の『華風到来』展から、2年半に及ぶ休館期間を経て、リニューアルオープンを記念する特別展。施設の印象は既に書いたので、本稿は展覧会そのものについて書く。会場は1階に2つ、2階に2つ。各会場がさらに複数の展示室の連なりになっており、考古から近代絵画まで、幅広い分野の作品約250件を一堂に展観する。ボリュームとクオリティは、国立博物館の常設展示並みかそれ以上だと思う。第1会場は近世の風俗画から。田万コレクションの『洛中洛外図屏風』(江戸時代17世紀)、こんなのも持っていたんだっけと驚く。そのほかにも『寛文美人図』『舞妓図』『扇屋軒先図屏風』など。江戸初期の風俗図が好...2025年3月関西:大阪市立美術館、大和文華館

  • 2025年3月大阪市立美術館リニューアル

    水曜の午後から金曜まで広島出張の仕事が入っていたので、私費で1泊付け足して、大阪と奈良でちょっとだけのんびりしてきた。大阪のお目当ては、大阪市立美術館のリニューアルオープン展。展示の参観レポートは別に書くとして、まずは施設情報から。外観は基本的に変わっていないが、大階段の横に新しい入口ができた。最近のリニューアルにはよくある改修スタイル。エスカレータで展示室階に行けるのは、足の弱い高齢者にはありがたいだろう。エントランスホールに入って天井を見上げると…何もない!「展示室1はこちらで~す」と案内をしていた女性に、思わず「シャンデリア、無くなっちゃったんですね!」と話しかけてしまった(※シャンデリア→これです)案内スタッフの方は、「そうなんですよ、でもこの白い天井が本来の色なんだそうです」と教えてくれた。『美...2025年3月大阪市立美術館リニューアル

  • アイスショー”notte stellata 2025”2日目リハ見学、千秋楽ライビュ

    〇羽生結弦nottestellata2025リハーサル見学(3月8日、14:10~);ライブビューイング(3月9日、16:00~、TOHOシネマズ日比谷)アイスショー”nottestellata2025"の話を続ける。2日目は、初体験の「リハーサル見学」に出かけ、早めのシャトルバスで会場に行って、物販や飲食ブースをまわって楽しんだ。予定どおり13:30開場で中に入ると、シェイリーン、理華ちゃん、知子ちゃんがリンク上にいた。そこでアナウンスがあって、見学時間は14:10から1時間くらいと聞いていたのだが、14:10~14:55ジェイソン、無良くん、刑事くん、15:10~16:00明子ちゃん、ハビ、羽生くんに変更になったと知る。予定より長く見学できるのは願ってもない幸せだった。無良くん、刑事くんが登場すると、...アイスショー”nottestellata2025”2日目リハ見学、千秋楽ライビュ

  • アイスショー”notte stellata 2025”初日公演

    〇羽生結弦nottestellata2025(2025年3月7日、16:00~)今年も羽生くんが座長をつとめるアイスショーnottestellataを見て来た。今年のスペシャルゲストは野村萬斎さんと聞いて、絶対チケットを取るぞと意気込んだのだが、結局、倍率の低い金曜しか取れなかった。しかしなんとか有休を活用して見に行くことができた。そして事前情報の少ない初日の特権で、衝撃に次ぐ衝撃を味わうことができた。出演スケーターは、ハビエル・フェルナンデス、ジェイソン・ブラウン、シェイリーン・ボーン・トゥロック、宮原知子、鈴木明子、田中刑事、無良崇人、本郷理華、フラフープのビオレッタ・アファナシバで、昨年と変わらず。座長の羽生くんにとって、最も信頼できる仲間たちなのだろう。ハビとジェイソン、それにフラフープのビオレッ...アイスショー”nottestellata2025”初日公演

  • 2025年3月仙台食べたもの

    去年に続いて今年も、アイスショー「羽生結弦nottestellata2025」を見て来た。野村萬斎×羽生結弦のコラボは、凄いことになるに違いないという期待があったけれど、初日、何も情報のない状態で見た公演は、期待を軽々と超えて、歴史的瞬間に立ち会ったとしか言いようのない衝撃だった。公演の中身について書く前に周辺情報から。金曜の初日は、晴れていたけれど、風が冷たくて、屋外で開演を待つのがつらかった。暖かいものが食べたくて選んだのは、阿部蒲鉾店のひょうたん揚げ。アメリカンドッグの中身がカマボコになった感じで、ケチャップをつけて食べる。しかし、のんびりしていると揚げたてもすぐに冷めてしまう寒さ。金曜は仙台に1泊。今日、土曜日はリハーサル見学のチケットが取れていたので再び利府へ。その前に、朝9時から開いているとい...2025年3月仙台食べたもの

  • 地域史の証言/慶珊寺と富岡八幡宮の名宝(金沢文庫)

    〇神奈川県立金沢文庫特別展『慶珊寺と富岡八幡宮の名宝-『大般若経』が語る中世東国史-』(2025年2月7日~3月23日)横浜市金沢区に位置する富岡八幡宮と、その別当寺であった慶珊寺(けいさんじ)に関する特別展。東京下町の住人としては、富岡八幡宮と聞けば深川の八幡様しか思い浮かばないので、横浜にも同じ名前の八幡宮があることを初めて知った。慶珊寺は真言宗御室派で、寛永元年(1624)に領主の豊島明重(としまあきしげ)が両親の菩提を弔うために建立した寺だという。本展の見どころのひとつは慶珊寺が所蔵する多数の仏像。十一面観音半跏像(鎌倉時代、院誉作)は、いわゆる遊戯坐の像容で、たっぷりと襞を寄せた衣の裾から曲げた右足の足先を見せる。右手は体の横の座面に突き、左手は膝の上に置く。大きな耳たぶと耳の穴が目立つ。優雅だ...地域史の証言/慶珊寺と富岡八幡宮の名宝(金沢文庫)

  • 樹木の精霊たち/魂を込めた円空仏(三井記念美術館)

    〇三井記念美術館特別展『魂を込めた円空仏-飛騨・千光寺を中心にして-』(2025年2月1日~3月30日)江戸時代前期に日本各地を修行し、木肌とノミ痕を活かした現代彫刻にも通ずる独特の神仏像を残した円空(1632-1695)は、晩年を飛騨で過ごし、千光寺をはじめ近隣地区で多くの像を制作した。飛騨の寺社から集まった、魂を込めた円空仏71件(100躯くらい?)を展示する。私は、円空にはそれほど熱い関心はないので、せっかく東京に来たのだから見ておくか、くらいの気持ちで見に行った。それが会場に一歩足を踏み入れて、見渡す限りの円空仏に囲まれると、やっぱり空気が違っていて、深い森の中に迷い込んだような、不思議な気持ちになる。冒頭の展示ケースには、小さな地蔵菩薩立像。おにぎりみたいは宝珠を胸の前に捧げ持つ。横から裏にまわ...樹木の精霊たち/魂を込めた円空仏(三井記念美術館)

  • 今年も陶芸と刀/中国の陶芸展(五島美術館)

    〇五島美術館館蔵『中国の陶芸展』(2025年2月22日~3月30日)漢時代から明・清時代にわたる館蔵の中国陶磁器コレクション約60点を展観する。同館は、この数年、春先は『中国の陶芸展』というスケジュールが定着しているようだ。私は昨年は見逃したが、一昨年は見ている。特に新しい作品は加わっていないが、名品が何度見ても新鮮なので問題ない。午前中で、まだお客が少なかったせいか、展示室が広々して気持ちよかった。展示ケースの床には黒いビロードのような布を敷き、白い四角形のベース上に展示品を置く。壁にはバナーや説明パネルの掲示が一切ない。展示室全体が黒と白のシンプルなしつらえなので、展示品の色がとても映える気がした。冒頭の『瓦胎黒漆量』(戦国時代)の艶やかな黒茶色もよいし、展示順としては最後にあたる『茶葉末瓶』(乾隆年...今年も陶芸と刀/中国の陶芸展(五島美術館)

  • 凶悪犯との長い戦い/中華ドラマ『漂白』

    〇『漂白』全14集(愛奇藝、2025年)かなりグロテスクで陰惨な犯罪事件を扱ったドラマなので、万人にお薦めはできないが、私はハマって見てしまった。2002年、雪城市(架空の市、北国っぽい)で猟奇的な殺人事件が発覚する。集合住宅の排水口から発見された人間の遺体の一部。駆けつけた警察官の彭兆林は、不審な男とすれ違うが見逃してしまう。その男、鄧立鋼こそ、バラバラ殺人事件の主犯格だった。鄧立鋼、石畢、吉大順、宋紅玉の4人組(男3人、女1人)は、ナイトクラブなどで働く若い女性に声をかけ、監禁して家族から身代金を毟り取った後、女性を殺害して行方をくらますことを繰り返していた。雪城での犠牲者は、それぞれ田舎から出稼ぎに来ていた劉欣源、黄鶯という2人の少女だった。同じ頃、雪城市に暮らす真面目な女子高校生の甄珍は、同級生か...凶悪犯との長い戦い/中華ドラマ『漂白』

  • 歴史画いろいろ/武士の姿・武士の魂(大倉集古館)

    〇大倉集古館企画展『武士の姿・武士の魂』(2025年1月28日~3月23日)本展第1章では江戸時代から昭和にかけて武士の姿を描いた作品と、霊威をもち武士の魂として大切にされてきた刀剣を展示、第2章では、武力や権力の象徴であり、威信財でもある鷹を描いた作品を取り上げ、鷹図が武士の表象としてどのように描かれ、荘厳され、利用されたかを探る。冒頭に佐藤正持(1809-1857)という画家の『本朝歴史絵』という画集から「宇治川合戦」の図が開いてきた。怪力無双の畠山重忠が、溺れかけた味方の武士を掴み上げ、対岸に投げ飛ばして救う場面。馬上の重忠が片手で高々と掲げた武士は、腹を下にエビ反った姿勢で投擲を持っている。重忠、カッコいい。佐藤正持は、日本神話や歴史上の出来事などを多く描き、市井で衆人に見せて日本精神の高揚を図っ...歴史画いろいろ/武士の姿・武士の魂(大倉集古館)

  • 東京長浜観音堂フィナーレイベント(東博)

    〇東京国立博物館・平成館大講堂東京長浜観音堂フィナーレイベント『びわ湖・長浜の観音文化~これからもまもりつづけるために~』(2025年2月22日、13:00~16:00)長浜市内の観音像の展示を行ってきた「東京長浜観音堂」の閉館(2024年12月1日)に伴うフィナーレイベントに行ってきた。収容人数約400名の大講堂はほぼ満員。大講堂専用トイレが長蛇の列になっていて、開会にちょっとだけ間に合わなかったが、開会挨拶をされていたのは「観音の里・祈りとくらしの文化伝承会議」の座長・大塚敬一郎氏(長浜商工会議所会頭)だと思われる。それから、長浜市学芸員の秀平文忠氏による「長浜の観音文化振興事業の10年」と題した報告があった。長浜市が独自に「観音文化」という用語の定義づけを行ったのは2011年であるとのこと。そして地...東京長浜観音堂フィナーレイベント(東博)

  • 2025年2月:大雪の金沢散歩

    2泊3日の金沢出張に行ってきた。去年の同じ時期は兼六園で梅が咲いていたと記憶しているのだが、今年は大雪。最終日の昨日の朝は、少し自由時間があったので、駅周辺を歩いてみたが、近江市場の入口もこんな感じ。ここは照円寺(金沢市笠市町)。府中市美術館の春の江戸絵画まつり2024『ほとけの国の美術』に出ていた地獄極楽図を所蔵するお寺である。地獄極楽絵図は春秋の特別公開期間でないと見られないことは分かっていたが、どんなお寺か興味があって来てみた。しかし門から先は、一面にふかふかの雪が積もっていて、ショートブーツでは足首まで埋もれそうだったので、敷地内に立ち入ることは断念した。お土産を買おうと金沢駅2階にあるスーパーを覗いたら、なぜか福井名物「えがわの水ようかん」があって即購入してしまった。関東の物産展では、ひとまわり...2025年2月:大雪の金沢散歩

  • 花木とともに/花器のある風景(泉屋博古館東京)

    〇泉屋博古館東京企画展『花器のある風景』(2025年1月25日~3月16日)住友コレクションから花器と、花器が描かれた絵画を紹介し、同時開催として、華道家・大郷理明氏より寄贈された花器コレクションも展示する。ちょっと珍しい視点の展覧会だけど、果たして楽しめるかな?と半信半疑で出かけた。第1展示室には、江戸~近代の花器が描かれた絵画を展示。村田香谷『花卉・文房花果図巻』には、中国の文人好みのさまざまなうつわ(磁器や古銅や竹籠、ガラスの器も)に彩り豊かな花と果物を自由に盛り付けた姿が続々と並び、豊かで満たされた気持ちになる。藪長水『玉堂富貴図』、原在中・在明『春花図』など、展示作品は中国趣味多めで、必然的に牡丹が多めなのは、大阪の大商人・住友コレクションの特色なのかな。たとえば江戸の庶民には、牡丹ってどのくら...花木とともに/花器のある風景(泉屋博古館東京)

  • 台湾旅行2025【3日日/最終日】保安宮、龍山寺、迪化街

    最終日2月10日は月曜日で、博物館や美術館などの公共施設はお休みが多いので、寺廟めぐりと街歩きに当てることにした。MRT圓山駅から歩いて台北孔子廟に向かうと、やがて「万仞宮牆」と呼ばれる赤くて高い壁が見えてくる。■台北孔子廟(台北市大同区大龍街)壁を回り込むと「黌門(こうもん)」という額を掲げた門を発見。ここが入口らしいのだが開いていない。まだ早いのかしら…と思ってきょろきょろしたら「週一休館(ClosedonMonday)」という掲示が出ていた。なんと!寺廟も休館するのか。■大龍峒保安宮(台北市大同区哈密街)隣りの保安宮に移動。ここは無事に入ることができた。保生大帝を主尊として主に道教の神々を祀る。門扉には門神画、壁には壁画、そして石刻、木彫、泥塑など、目のつく限り、装飾だらけで楽しい。大きな壁画には、...台湾旅行2025【3日日/最終日】保安宮、龍山寺、迪化街

  • 台湾旅行2025【2日日】中研院歴史文物陳列館、行天宮

    ■中央研究院歴史言語研究所歴史文物陳列館(台北市南港区中研路)故宮博物院からの移動は所要1時間くらいで、13:30には歴史文物陳列館に到着することができた。冷たい小雨がパラパラ降り始めていたので、急いで館内に駆け込む。エントランスに大勢の参観客が溜まっていたが、ここは無料と分かっていたので、脇をすり抜けて展示室へ。階段を上がって2階の展示室は、前回じっくり見ていたので、前回見残した1階(考古資料)の展示室に向かう。考古資料の冒頭にいたのは『大理石梟形立雕』。1930年代に殷墟西北岡王陵区で発掘されたものだ。中研院歴史言語研究所は、1928~37年に河南省安陽殷墟遺跡において全15回の発掘調査を実施しており、その貴重な成果が、ここで無料公開されているのである。この大理石のフクロウは、前回見た記憶がないな、と...台湾旅行2025【2日日】中研院歴史文物陳列館、行天宮

  • 台湾旅行2025【2日日】国立故宮博物院(続き)

    ■国立故宮博物院(台北市士林区至善路)【202,210,212室】「心を伝える書と絵-書画に見える人情味」(2025年1月10日~4月13日)品物や風景に託した思い、旅立ちや長寿の祝いなど、気持ちの伝達を中心に文字や絵画で心情を表現した書画作品を展示する。明・張宏の『石屑山図』。大幅なので写真は一部だけ。この人は、大和文華館所蔵の『越中真景図冊』で名前を覚えた画家で大好き。明・宣宗(宣徳帝)の『画寿星』。『明史』には宣徳帝が臣下に「寿星図」を賜った事が載るという。宣徳帝、絵画に堪能(しかもネコの絵多し)という逸話に加え、小説『両京十五日』ですっかり親近感を抱くようになった。この寿老人は、頭の長さが人間的。【208室】「国宝鑑賞」明・沈周(1427-1509)の『写生冊』を展示。花果や家禽、蝦蟹、猫、驢馬な...台湾旅行2025【2日日】国立故宮博物院(続き)

  • 台湾旅行2025【2日日】国立故宮博物院

    今回の台湾旅行では、行きたい博物館が3つ(国立歴史博物館、国立故宮博物院、中央研究院歴史文物陳列館)あって、当初は1日1ヶ所を予定していた。ところが出発直前になって、3日目の月曜日は全て休館であることを発見(故宮博物院は無休かと思っていた)。どこか1ヶ所あきらめようとも考えたが、結局、2日目の2月9日(土)は欲張って2ヶ所ハシゴする決意を固めた。■国立故宮博物院(台北市士林区至善路)まずは台湾に来たら外せない故宮博物院へ。MRT士林駅で下りると、以前はなかった故宮行きバス乗り場の案内板ができていた。この子は『翠玉白菜』をモデルにした小翡(シャオフェイ)ちゃんで、故宮の館内でもたくさん見かけた。故宮博物院に到着したのは8:30頃。外のベンチで待っていたら、9:00の開館の10分前くらいに中に入れてくれた。チ...台湾旅行2025【2日日】国立故宮博物院

  • 台湾旅行2025【初日】国立歴史博物館、台北植物園、中壢

    久しぶりに2泊3日の弾丸台湾旅行に行ってきた。年末年始にも検討していたのだが、安いツアーが見つからなくて断念。この時期、ようやく航空券とホテルで15万円を切る設定ができたので、決行することにした。2月8日(土)は早朝5時起き、羽田発7:55の中華航空便で台北松山空港へ向かった。羽田のチェックインカウンターのお姉さんに「中華空港は入国カードが全てオンライン化されましたので」と言われて、ORコードを印刷した紙切れを貰ったのだが、まだ頭が働かないまま、飛行機に搭乗してしまった。しかし機内ではネットが使えない、松山空港で入国ゲートの前でスマホを取り出してみると、空港wifiに接続できたので、なんとか入力。入力画面を見せてゲートを通過した(ゲート前で紙の入国カードも入手できる)。MRTに乗る前に悠遊カードの残高を確...台湾旅行2025【初日】国立歴史博物館、台北植物園、中壢

  • 台湾旅行2025【食べたもの】

    2月8日から10日まで2泊3日の台湾旅行に行ってきた。私の最後の海外旅行は、コロナ禍直前の2020年正月の台湾旅行だったので、それから5年ぶりである。見てきたもののレポートはこれからゆっくり書くとして、まずは食べたもの。今回、基本的には一人旅を計画したのだが、むかし仕事でお世話になった方が台湾にいることが分かっていたので、連絡を取ってみたら食事をご一緒してくれることになり、初日の夜は台北からMRTで1時間ちょっと(台鉄の特急だと40分位)の桃園市中壢区まで遠征した。連れて行ってもらったのは「禅園」という客家料理のレストラン。小人数向きに区切られた空間、アジアというより地中海ふうのインテリア、若いお姉さんの接客も行き届いていて気持ちよかった。料理はどれも美味!初めて食べて感動的に美味しかったのは、豆腐の蟹み...台湾旅行2025【食べたもの】

  • 珠玉のコレクション再び/少女たち(三鷹市美術ギャラリー)

    〇三鷹市美術ギャラリー『発掘された珠玉の名品少女たち-夢と希望・そのはざまで-星野画廊コレクションより』(2024年12月14日~2025年3月2日)京都・岡崎の神宮道の「星野画廊」は、画家の名前にとらわれず、埋もれていた優品を数多く発掘してきた老舗画廊。本展は、そのコレクションから、さまざまな年代や境遇の女性を描いた作品を紹介する。2023年夏に京都文化博物館で見た展覧会と同じタイトルを冠しているが、規模はややコンパクトで、完全な巡回展というわけではないらしい。京都文化博物館の展覧会は、正直、人も多く出展数も多くて疲れてしまった記憶があり、今回のほうが気持ちよく参観することができた。私が好きなのは笠木治郎吉の作品。『下校の子供たち』は、歴博の企画展示『学びの歴史像』で出会ったことが忘れられない。2019...珠玉のコレクション再び/少女たち(三鷹市美術ギャラリー)

  • 悪の帝国像を忘れて/帝国で読み解く近現代史(岡本隆司、君塚直隆)

    〇岡本隆司、君塚直隆『帝国で読み解く近現代史』(中公新書ラクレ)中央公論新社2014.12「帝国」をキーワードに近現代史(18世紀~現代)を捉え直してみようという対談。ヨーロッパ国際政治史の君塚先生も中国史の岡本先生も大好きなので、わくわくしながら読んだ。はじめに岡本先生が言う、『スター・ウォーズ』シリーズの最初に制作されたエピソード4に描かれた帝国は、まさに多くの人々が抱いている「帝国や皇帝は悪である」というイメージをトレースしたものであると。うん、分かりやすい。しかし「帝国=悪」というイメージは本当に正しいだろうか。スティーヴン・ハウは帝国を「広大で、複合的で、複数のエスニック集団、もしくは複数の民族を内包する政治単位(後略)」と定義しているが、帝国の実態はもっと多義的であると、両氏は考えている。本題...悪の帝国像を忘れて/帝国で読み解く近現代史(岡本隆司、君塚直隆)

  • 2025年1月展覧会拾遺

    ■台東区立書道博物館東京国立博物館・台東区立書道博物館連携企画『拓本のたのしみ-王羲之と欧陽詢-』(2025年1月4日~3月16日)この年末年始は、三井記念美術館の『唐(から)ごのみ』展で弾みがついて、東博→書道博物館と拓本を眺めてまわった。本展は、石碑が亡失した天下の孤本、王羲之や唐の四大家ら歴代名筆の拓本、そして拓本に魅せらせた明清文人の高雅な世界など、拓本の持つ魅力とたのしみ方をさまざまな視点から紹介する。王羲之については、京博の上野本『十七帖』や五島美術館(宇野雪村コレクション)の『宣和内府旧蔵蘭亭序』も来ていて眼福だった。展示解説の端々に、歴史上の有名な書家をマンガふうに表現したキャラクターが使われていて、かわいい。アクスタにしてくれないかなあ…。■日本民藝館特別展『仏教美学柳宗悦が見届けたもの...2025年1月展覧会拾遺

  • 北宋ミステリー画巻/中華ドラマ『清明上河図密碼』

    〇『清明上河図密碼』全26集(中央電視台、優酷、2024年)北宋の都・開封の賑わいを描いた画巻『清明上河図』をモチーフにしたミステリー時代劇。画巻の作者として知られる張択端も劇中に登場する。主人公は大理寺の下級官吏の趙不尤。父親の趙離、弟の墨児、妹の弁児、そして妻の温悦と仲良く暮らしていた。趙不尤が温悦と出会ったのは15年前、都に帰還した官吏・李言の船が何者かに襲われ、李言と全ての船員が殺害された事件のあった晩だった。群衆に押されて河に落ち、着替えを求めて店に立ち寄った趙不尤は、同じく着替えを必要としていた温悦に出会う。温悦は李言の船を襲った水賊のひとりではないかという疑いを、趙不尤は微かに持っていた。いろいろ新たな事件があって、徐々に温悦の前身が明かされていく。温悦は船大工の娘だったが、幼い頃、両親を殺...北宋ミステリー画巻/中華ドラマ『清明上河図密碼』

  • 道教の神様たち/博物館に初もうで+常設展(東京国立博物館)

    〇東京国立博物館特集『博物館に初もうで-ヘビ~なパワ~を巳(み)たいの蛇(じゃ)!-』(2025年1月2日~1月26日)1月も最終日となってしまったが、新年の東博初参観の記事をまだ書いていなかったので書いておく。今年は京博の『巳づくし』展が先になって、そのあと、東博を見に行った。干支の特集展示は、ナーガ上のブッダ坐像(タイ)とかパイワン族の祖霊像(台湾)とか、日本以外の造形が目についた。つまみが蛇になっている『金印漢委奴国王』も出ていて、ホンモノ?!と思ったら、さすがに模造だった。「ヘビは中国の後漢から見た南方の異民族を示しました」という解説には納得。関東では弁財天といえば江ノ島だが、北条時政が子孫繁栄を願って江ノ島の岩屋に参籠すると、弁財天が現れ、時政の願いを叶えることを約束して、大蛇となって海に消えた...道教の神様たち/博物館に初もうで+常設展(東京国立博物館)

  • あれもこれも盛りだくさん/HAPPYな日本美術(山種美術館)

    〇山種美術館特別展『HAPPYな日本美術-伊藤若冲から横山大観、川端龍子へ-』(2024年12月14日~2025年2月24日)山種美術館の新春企画は、いつもお正月らしい華やかな気分を味わうことができるので、毎年、楽しみにしている。今年は、長寿や子宝、富や繁栄など、人々の願いが込められた美術に焦点をあて、現代の私たちにとってもラッキーモティーフといえる作品を紹介する。冒頭は横山大観の『天長地久』(だったかな)。斜面に点々を連なる松林。大観の松はすぐに分かる。三人の画家が松竹梅を競作したセットが2件出ていたが、どちらも大観は松を描いていた。私は竹内栖鳳の「梅」の春の大地が、茶色から若草色に変わりゆくところが、和菓子の色合いのようで美しかった。干支の巳を描いた小品もいくつかあったが、奥村土牛が描くとヘビもりりし...あれもこれも盛りだくさん/HAPPYな日本美術(山種美術館)

  • 公設浴場の普及/風呂と愛国(川端美季)

    〇川端美季『風呂と愛国:「清潔な国民」はいかに生まれたか』(NHK出版新書)NHK出版2024.10「まえがき」に言う。現代に暮らす日本人の多くは、毎日風呂に入るのが当たり前だと思っている。しかしいつから私たちは毎日風呂に入るのが「当たり前」だと思うようになったのだろうか――。同じような問いかけは、何度かSNSで見たことがあって、昭和の生活を知る世代から、むかしは毎日は風呂に入らなかった、という体験報告が語られたりした。私は1960年代、東京生まれで、家に風呂はあったが、毎日は入らなかった気がする。いつの頃からか、我が家は毎日風呂を沸かすようになったが、必ず毎日入っていたのは、入浴好きの父親だけだったように思う。いまの私は、毎朝シャワーは浴びるが、めったに湯船には浸からないので、「日本人」のイメージからず...公設浴場の普及/風呂と愛国(川端美季)

  • 下り坂の先に/東京裏返し 都心・再開発編(吉見俊哉)

    〇吉見俊哉『東京裏返し都心・再開発編』(集英社新書)集英社2024.122020年刊行の『東京裏返し』では、都心北部を歩いて歴史の古層を探索し、「東京についてのあまりにも自明化されたリアリティ」を「裏返し」していく実践を示した著者が、本作では都心南部(南西部)をフィールドとする。もとは雑誌「すばる」2023年11月号~2024年5月号に掲載した内容に加筆修正したもので、集英社新書編集部の担当者、カメラマン、ライターと著者の四人で朝早くから歩き回った旨が「あとがき」に記されている。著者は街歩きの鉄則として「狭く、曲がった、下り坂」の愉しみを挙げる。上り坂は坂の頂上に意識が向かうが、下り坂では、細かい路地や長屋風の集落など、変化に富んだ風景に出会うことができる。こうした下り坂を探すのに重要なのが川筋だ。東京は...下り坂の先に/東京裏返し都心・再開発編(吉見俊哉)

  • 水道橋でいつものイタリアン

    久しぶりにむかしの職場仲間と新年会の相談がまとまり、いつもの水道橋駅前の「ワイン処Oasi(オアジ)」で食事をしてきた。前回と同じ、飲み放題つきのイタリアンのコース。色とりどりの野菜がたっぷり盛られた前菜が嬉しくて、思わず「最近、野菜が高くてねえ」という愚痴がこぼれてしまう。グラタン→ピザ2種→パスタ→肉料理と続いたのだが、美味しいので、写真を撮り忘れて、そさくさと食べてしまった。3時間飲み放題は、スパークリングワイン→サングリア2種→ワイン→カクテル…とゆっくり楽しめてお得。最後はコ-ヒ-とデザート。かつての同僚の近況情報を交換する中に、お亡くなりになった先輩の話も聞いた。まあ誰もがいつかは行く道なので、元気なうちに人生を楽しんでおこうと思う。水道橋でいつものイタリアン

  • 2025年1月関西旅行:中国陶磁・至宝の競艶(大阪市立東洋陶磁美術館)

    〇大阪市立東洋陶磁美術館大阪市・上海市友好都市提携50周年記念特別展『中国陶磁・至宝の競艶-上海博物館×大阪市立東洋陶磁美術館』(2024年10月19日~2025年3月30日)2024年が大阪市と上海市の友好都市提携50周年にあたることを記念する特別展。同館のホームぺージには「本展の主な見どころ」3点が掲載されている。第一に、出品作品50件のうち、海外初公開作品19件を含む日本初公開作品22件が含まれており、さらに最高級ランクの「国家一級文物」10件が含まれていること。展示構成としては、第1室「至宝精華」に上海博物館所蔵の12件が展示されており、このうち一級文物が6件だった。元時代の『青花牡丹唐草文梅瓶』とか、展覧会のメインビジュアルにもなっている『緑地粉彩八吉祥文瓶』(清時代・乾隆)とか、黒の濃淡のみで...2025年1月関西旅行:中国陶磁・至宝の競艶(大阪市立東洋陶磁美術館)

  • 2025年1月関西旅行:大シルクロード展(京都文化博物館)

    〇京都文化博物館特別展・日中平和友好条約45周年記念『世界遺産大シルクロード展』(2024年11月23日〜2025年2月2日)一年ほど前、東京富士美術館でやっているなあと思ったが、我が家から八王子は遠くて行き逃してしまった。そうしたら、ちょうど京都に巡回しているというので見て来た。洛陽、西安、蘭州、敦煌、新疆地域などで発見されたシルクロードの遺宝約200点が来日しており、「世界遺産認定後、中国国外で初めて行われる大規模展覧会」という触れ込みである。世界遺産登録っていつ?と思って調べたら、2014年に「シルクロード:長安-天山回廊の交易路網」の名称で登録されていた。私は1980年代のシルクロードブームを記憶しているけれど、当時はあまり関心がなかった。90年代には、年1回の中国ツア-旅行を繰り返して、新疆地域...2025年1月関西旅行:大シルクロード展(京都文化博物館)

  • 2025年1月関西旅行:抱一に捧ぐ(細見美術館)他+後日談

    ■細見美術館琳派展24『抱一に捧ぐ-花ひらく〈雨華庵(うげあん)〉の絵師たち-』(2024年12月7日~2025年2月2日)1泊2日の新春関西旅行、日本美術関係の見たものをまとめておく。2日目は大阪で少し遊んだあと、京都で細見美術館に寄った。江戸琳派を確立した酒井抱一(1761-1828)は、文化6年(1809)、身請けした吉原の遊女とともに下谷根岸の百姓家に移り住む。同所はのちに「雨華庵」と呼ばれ、晩年の作画の場、弟子たちを指導する画塾となり、抱一没後は門下の絵師たちに継承された。本展は「雨華庵」ゆかりの絵師たちを多角的に蒐集した「うげやんコレクション」の協力を得て、江戸琳派の作品を展覧する。酒井抱一、作品はよく知っているけれど、閲歴にはあまり興味がなかったので、姫路藩主の孫として生まれ、37歳で出家、...2025年1月関西旅行:抱一に捧ぐ(細見美術館)他+後日談

  • 2025年1月関西旅行:巳づくしなど(京都国立博物館)

    ■京都国立博物館名品ギャラリー(1階)先週末に書いていた名品ギャラリー(3~2階)レポートの続きである。・『京都の仏像・神像』(2025年1月2日~3月23日)1階の大展示室(彫刻)、階段下には愛宕念仏寺の金剛力士立像がお出まし。中央の展示台には安祥寺の五智如来坐像が戻った。展示ケースに唐風装束の凛とした小さな女神様がいらっしゃると思ったら、高山寺の善妙神立像だった。同じく高山寺の白光神立像も白一色のお姿に赤い唇が印象的な美貌。また、膝の上に横たわる幼児(童神)を抱いた女神坐像は市比賣神社のもので、2階の特集『日本の女性画家』とあわせて、女性的なものへの注目を感じた。・新春特集展示『巳づくし-干支を愛でる-』(2025年1月2日~2月2日)新春恒例の干支特集。縄文時代の土器、根付、鱗文の能装束、十二神将の...2025年1月関西旅行:巳づくしなど(京都国立博物館)

  • 日本近代文学館のカフェ

    今日は駒場の日本近代文学館で『三島由紀夫生誕100年祭』を見てきた。展示の話は別稿とするが、館内施設の「Bundanカフェ」(週末はいつも混んでいる)に、初めて入ることができた。「シェイクスピアのスコーン」は付け合わせを選べるので、マーマーレードとサワークリームを選択。スコーンはアツアツで、予想の倍くらいの大きさだったので、食べ応えがあった。「本日、セットになるコ-ヒ-は芥川だけです」と言われたのでそれに従う。実はほかに寺山、鴎外、敦というブランドもあるので、次の機会に試してみたい。「寺田寅彦の牛乳コ-ヒ-」もかなり魅力的。今週後半は軽井沢出張に出かけていた。今日はのんびりして体力回復につとめたので、あらためて中断中の関西旅行の記事を書き続けたい。日本近代文学館のカフェ

  • 2025年1月関西旅行:名品ギャラリー3~2階(京都国立博物館)

    〇京都国立博物館名品ギャラリー(3~2階)初春三連休の関西旅行はまず京博から。私は常設展モードの京博が大好きなので、今月は各室をじっくり紹介する。・『京焼における仁清-御室仁清窯跡出土陶片の胎土分析からみる製陶技術-』(2025年1月2日~3月16日)凝ったかたち、華やかな色彩のやきものが並ぶ、お正月らしい展示室。蓮の花に蓮の葉を被せたような『色絵蓮華香炉』は、「蓮の寺」法金剛院の所蔵だと知って納得してしまった。仁清といえば色絵だと思っていたが、実はシンプルな轆轤成形の美しさも見どころ。また、仁清窯址からは、さまざまな「写し」のた陶片が出土している。ホンモノの志野と仁清の志野写し、ホンモノの信楽と仁清の信楽写しを見比べて、その技術の確かさに感銘を受けた。・『日本の須恵器と韓国の陶質土器』(2025年1月2...2025年1月関西旅行:名品ギャラリー3~2階(京都国立博物館)

  • 初春は不思議のキツネ/文楽・本朝二十四孝

    〇国立文楽劇場令和7年初春文楽公演第3部(2025年1月11日、17:30~)今年も大阪の国立文楽劇場で初春文楽公演を見て来た。恒例のお供えとにらみ鯛、と思ったら、「黒門市場様からのにらみ鯛の贈呈は、5年ぶり」と書いてあった。2020(令和2)年以来ということか。この年の正月明けから新型コロナが猛威を振るったのである。コロナ禍の間も、初春文楽公演にはにらみ鯛が飾られていたようだが、黒門市場のサイトによれば、2021年のにらみ鯛は2020年末に奉納したものだったり、2022年は奉納がなかったり(劇場は別ルートで入手?)したらしい。「大凧」に干支の「巳」文字を揮毫したのは、赤穂大石神社の飯尾義明宮司。国立文楽劇場は、開場40周年を記念して、昨年11月の公演とこの初春公演第2部で、大作『仮名手本忠臣蔵』の大序か...初春は不思議のキツネ/文楽・本朝二十四孝

  • 2025大阪初春散歩

    初春三連休、1泊2日だけ関西で遊んできた。文楽初春公演を見るのが主な目的で、ついでに京都と大阪で、気になっていた展覧会をいくつか見てきた。今朝は朝イチで東洋陶磁美術館を見に行ったら、ずっと工事続きで落ち着かなかった中之島一帯が、だいぶ落ち着いた雰囲気になっていた。久しぶりに中之島図書館の正面に立ってみたが、日曜祭日は休館のため、中には入れなかった。周囲をぐるっと回ってみたら、何やら新しい建物が連結されているのを発見。あとで図書館のホームページをみたら、別館(新書庫棟)らしい。工期は2025年1月まで(予定)というからまもなく完成だろう。へええ、よかったね!東洋陶磁美術館も、改修増築と聞いたときは、どうなるかとハラハラしたが、従来の建物を生かして開放的なエントランスを付け加えた、品のいいリニューアルだった。...2025大阪初春散歩

  • 実朝との縁/運慶 女人の作善と鎌倉幕府(神奈川県立金沢文庫)

    〇神奈川県立金沢文庫特別展『運慶-女人の作善と鎌倉幕府-』(2024年11月29日~2025年2月2日)年末に行った横須賀美術館、鎌倉国宝館との3館連携展示。本展は、サブタイトルのとおり、運慶と女性の関係にあらためて焦点を当てて紹介し、運慶の造仏、それに伴う造寺や仏事などと、女性たちの信仰の関係の一端を明らかにする。1階の展示室に入ってすぐのケースに出ていたのは光触寺の『頬焼阿弥陀縁起絵巻』の模本(原本は2階展示室に展示)。鎌倉時代の女性の信仰、作善を語る上で欠かせない資料である。仏師・雲慶(運慶)も登場するし。奥の吹抜展示室は、称名寺所蔵の伝・運慶仏の特集展示になっていた。地蔵菩薩坐像、それに聖徳太子立像(二歳像)もあるのだな。2階へ。年末に「ニコニコ美術館」を視聴したので、展示室の様子は把握していたの...実朝との縁/運慶女人の作善と鎌倉幕府(神奈川県立金沢文庫)

  • 2025初詣・亀戸七福神巡り

    〇亀戸駅~寿老人(常光寺)~弁財天(東覚寺)~恵比寿神・大黒天(香取神社)~毘沙門天(普門院)~福禄寿(天祖神社)~布袋尊(龍眼寺)~亀戸天満宮松の内も今日で終わりだが、今年のお正月は、亀戸七福神を巡ってきた。七福神の寺社の門前には、紫に白抜きの「亀戸七福神」の旗が立っていたが、深川七福神のようにコースの道端にずらりと旗が並ぶ雰囲気はなかった。寿老人の常光寺。本尊は阿弥陀如来で「江戸六阿弥陀詣」の6番目の霊場でもある。弁財天の東覚寺。本尊は大日如来と阿弥陀如来だが、不動尊が有名らしい。亀戸七福神は、どれも大きなお寺や神社の一画に、添え物的な祀られ方をしていた。恵比寿神・大黒天の香取神社。かなり大きな神社で、スポーツ振興や勝負事の神様として人気を集めている。毘沙門天の普門院。伸び放題の草木、積もった落ち葉の...2025初詣・亀戸七福神巡り

  • 憧れの拓本と中国絵画/唐ごのみ(三井記念美術館)

    〇三井記念美術館『唐(から)ごのみ:国宝雪松図と中国の書画』(2024年11月23日〜2025年1月19日)年末恒例の円山応挙筆『雪松図屏風』公開に加え、三井家歴代にわたり珍重された中国の書画および、それらに倣って日本で描かれた作品を紹介する。という展覧会の趣旨を、だいたい理解して行ったつもりだったが、冒頭が顔真卿筆『多宝塔碑』の拓本で、おお?となってしまった。そのあとも、王羲之や褚遂良の書跡の拓本が続く。新町三井家9代当主の三井高堅(みついたかかた、1867-1945)は中国の古拓本のコレクターで、その収蔵品は、聴氷閣本(ていひょうかくぼん)と呼ばれて世界的に名高い。ネット情報によれば、戦前の旧三井文庫で保管したもののうち大半はカリフォルニア大学バークレー校図書館に「聴氷閣文庫」として収蔵されているが、...憧れの拓本と中国絵画/唐ごのみ(三井記念美術館)

  • 古籍、絵画、現代工芸/平安文学、いとをかし(静嘉堂文庫美術館)

    〇静嘉堂文庫美術館『平安文学、いとをかし-国宝「源氏物語関屋澪標図屏風」と王朝美のあゆみ』(2024年11月16日~2025年1月13日)新年の展覧会参観は本展から。平安文学を題材とした絵画や書の名品と、静嘉堂文庫が所蔵する古典籍から「いとをかし」な平安文学の魅力を紹介する。と言っても最初の展示室に並んでいた古典籍は、作品時代は平安文学でも、江戸時代の版本や南北朝・室町時代の写本が中心だったので、まあそうだよね~というゆるい気持ちで眺めた。その中で『平中物語(平仲物語)』は静嘉堂文庫本(鎌倉時代写)が現存唯一の伝本だという。『今昔物語集』は享保の版本が出ていて、室町時代には南都周辺で読まれていたらしいと解説にあった。『うつほ物語』『栄花物語』『大鏡』なども版本があって、江戸の出版文化すごいな、と思った。鎌...古籍、絵画、現代工芸/平安文学、いとをかし(静嘉堂文庫美術館)

  • 2025新年風景と深川江戸資料館

    今年の年末年始のカレンダーは9連休で、さらに私は年休を加えて10連休にした。遠くに出かける予定は入れなかったので、せいぜい近所をぶらぶらして、のんびり過ごしている。今日は、正月特別開館の深川江戸資料館で獅子舞が見られるというので行ってきた。江戸の街並みを復元した常設展示室が会場。時間になると、砂村囃子睦会の獅子舞の一行が現れて、一軒一軒、年賀の詞を添えて訪ね歩く。お囃子に乗って、獅子が首を振ったり背を伸ばしたりの演技を見せたあと、パパパン、パパパン、パパパン、パンの一本絞めで締める。顔役のおじさんが「この家はハワイに行ってて留守だったな」「ここは喪中だ」など小芝居を入れてくるのが楽しい。獅子は、家々だけでなく、井戸や厠や船着き場でも舞う。江戸の獅子舞は一人で演じる「一人立ち」の獅子である。それから火の見櫓...2025新年風景と深川江戸資料館

  • 七人の大統領で知る/韓国現代史(木村幹)

    〇木村幹『韓国現代史:大統領たちの栄光と蹉跌』(中公新書)中央公論新社2008.8戦後、日本の植民地支配からの解放と米国の占領を経て、1948年に大韓民国が建国される。以後、60年間(本書の刊行まで)の韓国現代史を、個性豊かな大統領たちの姿を通じて描く。はじめに終戦の8月15日をどう迎えたかを、金大中、金泳三、尹譜善、李承晩、朴正熙の5人について検証し、以後も「政治的な節目」ごとに、4~5人(大統領就任前だったり、引退後だったり)の動向について語っていく。このほか、70年代以降に登場する李明博、廬武鉉を加え、最終的には7人が本書に取り上げられている。李承晩(1875-1965)は名前しか知らなかったので、1948年の大統領就任時にすでに73歳だったことに単純に驚いた。朝鮮王朝時代に開化派のホープとして期待...七人の大統領で知る/韓国現代史(木村幹)

  • あきらめない刑事たち/中華ドラマ『我是刑警』

    〇『我是刑警』全38集(愛奇藝、中央電視台、2024年)大晦日に見終わったドラマ。おもしろかった~。ドラマは1990年代から始まる。平凡な若手警官だった秦川(于和偉)は、刑事捜査の資質を認められ、大学で法律を学び、職務に復帰したばかり。1995年1月、西山鉱山の事務所が強盗に襲われ、保安員ら十数名が殺害される事件が起きる。中昌省河昌市の警察隊は、1991年に彼らの同僚が殺害され、銃を奪われた事件との関連を疑う。まだ科学的な捜査設備の整わない中、過去の事件記録の読み直しと論理的な推論で徐々に犯人をあぶり出し、逮捕に至る。大きな功績を上げた秦川は、上司と衝突して、西山分局の預審科長(予審=被告事件を公判に付すべきか否かを決定すること?)で冷や飯を食うことになるが、この間にも大規模な食糧盗賊団を摘発するなど成果...あきらめない刑事たち/中華ドラマ『我是刑警』

  • ICE STORY 3rd “Echoes of Life” TOURディレイビューイング

    〇「YuzuruHanyuICESTORY3rd“EchoesofLife”TOUR」埼玉公演ディレイビューイング(2024年12月14日13:00~、TOHOシネマズ日比谷)遅くなったけど書いておく。羽生結弦くんの単独公演「EchoesofLife」は、いま埼玉→広島→千葉を巡回中だが、埼玉公演の初日をディレイビューイングで見てきた。単独公演シリーズを見ることはちょっと躊躇があったのだが、今年4月にやはりディレイビューイングで見た「RE_PRAY」が文句なく素晴らしかったので、また見に行ってしまった。ストーリーの概要は、どこかで誰かが詳しく書いてると思うが、「人間」と「作られしもの」の戦争によって、生命体が死に絶えた世界。人間なのか非人間なのかよく分からない「NOVA(VGH-257)」という個体が目を...ICESTORY3rd“EchoesofLife”TOURディレイビューイング

  • 門前仲町でイタリアン&甘味

    年末の休日、友人に我が家の近所まで来てもらって、門前仲町で美味しいものを食べたり、ぶらぶら散歩したりした。ランチに選んだのは、PIZZERIAONDA(ピッツェリアオンダ)。「真のナポリピッツァ協会」の公認店であることを看板にしており、評判は聞いていたけど、期待以上だった。生ハムのサラダもイタリアンオムレツも美味しかったし、窯出しの焼き立てピザは最高。また誰かを誘って食べに来たいな~。それから、初詣の準備に余念がない深川不動堂や富岡八幡宮に参拝。不動堂の2階や4階に上がってみたのは初めて。4階の内仏殿には中島千波(1945-)の巨大な天井画『大日如来蓮池図』が飾られていた。どういうご縁なのか分からないが、中島千波画伯は、深川不動堂の信徒総代でいらっしゃるらしい。少しお腹がこなれたところで「いり江」でひと休...門前仲町でイタリアン&甘味

  • 2024年12月展覧会拾遺の拾遺

    ■サントリー美術館『儒教のかたちこころの鑑-日本美術に見る儒教』(2024年11月27日~2025年1月26日)理想の君主像を表し為政者の空間を飾った豪華な障壁画から、庶民が手にした浮世絵まで、儒教のメッセージを宿した日本美術の名品を紹介する。英一蝶など、主に江戸の絵師が描いた孔子像がいくつか出ていたが、帝王の衣裳をまとった袞冕像など、いずれも華やかで、コスプレ孔子様だな、と苦笑してしまった。足利学校の聖廟に祀られているという彫刻の孔子像は、ちょっと人麻呂像に似ていなくもない。かつて名古屋城の二之丸庭園内の聖廟に祀られていた聖像セットは、祠堂のかたちの厨子の中に、周公旦、孔子、堯、舜、禹の5像を納める。15センチくらいの小像だが、堯は純金、他は青銅に鍍金したものだという。キラキラして美しかった(現在は徳川...2024年12月展覧会拾遺の拾遺

  • 2024歳末風景

    この季節、一般家庭と思われるのに、恐ろしくクリスマスのイルミネーションに力を入れていいる住宅を発見することがある。むかし、通勤先だった武蔵嵐山にもあった。今の住まいの近くにも、住宅街の細い路地を入ったところに、毎晩キラキラ電飾を光らせているお宅がある。その一角に用事がなければ通らないような道なので、見る人が少なくて勿体ないが、そんなことは関係ないのだろうか。毎年、このお宅は、律義に12月25日が過ぎるとイルミネーションを消してしまうのである。今日も覗いたら暗い夜道に戻っていた。さて本格的に年末である。明日は年休を取ったので、今日で仕事納め。今年もよく働きました。2024歳末風景

  • 2024年11-12月展覧会拾遺

    そろそろ年末の棚卸し。■半蔵門ミュージアム特別展『小川晴暘と飛鳥園100年の旅】(2024年9月11日〜11月24日)今年の春、奈良県立美術館で開催されているのを見逃してしまったなあと思っていたら、東京に巡回してきてくれたので見に行った。飛鳥園の創業者で仏像写真の第一人者・小川晴暘(1894-1960)とその息子光三(1923-2016)の作品、さらに光三に師事し、現在飛鳥園に所属して撮影を続ける若松保広(1956-)の作品を紹介する。彼らの仏像写真が素晴らしいのはもちろんだが、創業当時の飛鳥園の店先など、歴史を伝える記録写真も面白かった。■神奈川県立歴史博物館特別展『仮面絢爛-中世音楽と芸能があらわす世界-』(2024年10月26日~12月8日)神奈川と深く関わる仮面や、中世の武士たちが親しんだ仮面の数...2024年11-12月展覧会拾遺

  • しばらくお別れ/トプカプ宮殿博物館・出光美術館所蔵 名宝の競演(出光美術館)

    〇出光美術館日本・トルコ外交関係樹立100周年記念『トプカプ宮殿博物館・出光美術館所蔵名宝の競演』(2024年11月2日~12月25日)休館前の最後の展覧会は、日本とトルコ共和国が外交関係を樹立して100周年を迎えた本年にあたり、両国の友好を記念する特別展。冒頭にはトルコのトプカプ宮殿を彩った工芸品、金銀や宝石をふんだんに使った香炉や水指し、コーヒーカップなどが並ぶ。華麗で愛らしくて、高級チョコレートのパッケージを思わせるものが多かった。驚いたのは水晶製の水指しおよび蓋付きカップ。完全に透き通っているので、どう見てもガラスだろうと思ったら、一塊の水晶を加工したものだという。また乳白色の玉から、複雑な浮彫り・透かし彫りのある鉢や皿を彫り出したものもあって、これは産地が中国になっていた。実はトプカプ宮殿には、...しばらくお別れ/トプカプ宮殿博物館・出光美術館所蔵名宝の競演(出光美術館)

  • 色とかたちの新鮮さ/中国陶磁展(松岡美術館)

    〇松岡美術館『中国陶磁展うわぐすりの1500年』『伝統芸能の世界-能楽・歌舞伎・文楽-』(2024年10月29日〜2025年2月9日)この数年、同館には足繫く通っている。特に中国美術関係の展覧会はおもしろいものが多い。本展は、後漢から明までのおよそ1500年間における陶磁器を、うわぐすり、つまり釉薬に着目して展観する。はじめに「低火度釉」と「高火度釉」という分類を紹介し、低火度釉から見ていく。後漢時代の緑釉の壺と酒尊が出ていたが、どちらもあまり緑が鮮明でない。と思ったら、緑釉には、一定の条件の土中で長い年月をかけて風化すると「銀化」という現象が起こるそうで、これが緑釉陶器の見どころの1つなのだという。北斉(6世紀)後期から白釉陶器が登場する。『三彩蓮弁八耳壺』は、背の高い宇宙船みたいなかたちで、白地に茶色...色とかたちの新鮮さ/中国陶磁展(松岡美術館)

  • 秋葉原で雲南料理2024

    中国&中華料理好きの友人と「過橋米線秋葉原店」で食事をしてきた。今年2月にも、同じ友人と同じ店に行っているのだが、寒い日が続くので、雲南伝統の「気鍋鶏」で暖まりたかったのである。メニューでは「スズキの雲南風付け」になっているのだが、いわゆる清蒸かな。大きなスズキを二人で食べて、もうお腹いっぱい。ほかにも素朴で美味しい料理が次々にテーブルに並んだ。仕上げの過橋米線。お店はサラリーマンふうのグループで満員だった。次回はコースでなくて一品も試してみたい。秋葉原で雲南料理2024

  • 浄楽寺の運慶仏出開帳/運慶展(横須賀美術館)

    〇横須賀美術館企画展『運慶展運慶と三浦一族の信仰』(2024年10月26日〜12月22日)2022年に特別展『運慶鎌倉幕府と三浦一族』を開催した横須賀美術館で、また運慶展が開催されていると聞いたときは、ちょっと戸惑った。しかしまあ。運慶と言われれば、行かないわけにはいかないので、出かけてきた。その前に、12月1日(日)に「ニコニコ美術館」でこの展覧会が取り上げられた。朝8時から横須賀美術館の『運慶展』の紹介があり、夜19時から金沢文庫の『運慶-女人の作善と鎌倉幕府-』(2024年11月29日~2025年2月2日)の紹介があったので、どちらも視聴した。なお今回の運慶展は、鎌倉国宝館の特別展『鎌倉旧国宝展-これまでの国宝、これからの国宝-』に付随する特集展示『鎌倉の伝運慶仏-教恩寺阿弥陀如来及び両脇侍立像修理...浄楽寺の運慶仏出開帳/運慶展(横須賀美術館)

  • 193年代の金融抗争/中華ドラマ『追風者』

    〇『追風者』全38集(愛奇藝、2024年)1930年代の中国、国民党と共産党の抗争を背景に、金融業界に進んだ青年の奮闘と成長を描く。日本でも人気の王一博の主演ドラマなので、すでに日本でも配信・放映されているらしい。会計学校を卒業した苦学生の魏若来(王一博)は、上海で中央銀行への就職を目指していた。試験の成績は抜群だったが、共産党の革命拠点のある江西省出身であることが難点となった。しかし中央銀行の高級顧問である沈図南(王陽)は、若来の才能を惜しみ、私人助理(私設秘書)として身近に置き、金融業を学ばせる。若来もよく期待に応え、二人は師弟の交わりを結ぶ。あるとき、若来の兄・若川が上海に現れるが、彼は共産党の地下党員となっていた。そして共産党員の摘発を任務とする偵緝隊(警察隊)に見つかり、命を落とす。若来は兄がや...193年代の金融抗争/中華ドラマ『追風者』

  • モンゴルの英雄物語/元朝秘史(白石典之)

    〇白石典之『元朝秘史:チンギス・カンの一級資料』(中公新書)中央公論新社2024.5『元朝秘史』という書物の存在は知っていたが、具体的な内容は知らなかった。なので「はじめに」と序章の紹介を読みながら、へえ!へえ!と唸ってしまった。この書のおおまかな骨子ができたのは13世紀中頃の可能性が高く、『元朝秘史』は14世紀末の漢訳本に用いられた題名である。本文は漢字音写されたモンゴル語(万葉仮名を思わせる)で、傍らに漢訳が付いている(序章の冒頭に原文の紹介ある)。この「漢字音写モンゴル語」は、モンゴル語独特の発音を表現するため、様々な工夫をしており、言語学的にも興味深い。また、失われた『元朝秘史』のモンゴル語原本が、ウイグル式モンゴル文字とパスパ文字のどちらで書かれていたかには議論があるという。『元朝秘史』の記述は...モンゴルの英雄物語/元朝秘史(白石典之)

  • 2024年12月:奈良出張

    3泊4日の奈良出張から帰宅。連日、新大宮駅最寄りの奈良コンベンションセンターに詰めていたので、ほとんど観光はできなかった。この施設は2020年4月開業。エントランスホールで入待ち構えているのは、彩色の巨大な多聞天像。2016年から冬季の観光振興のため、毎年1月、平城宮跡で開催されてきた「奈良大立山まつり」で使用されてきたもので、籔内佐斗司氏のデザインによる。四天王像は、コンベンションセンターのほか、なら歴史芸術文化村(天理市)、道の駅大和路へぐりくまがしステーション(平群町)、橿原文化会館(橿原市)に展示されているという。「奈良大立山まつり」は廃止が決定したというが、この四天王はちゃんと保存されますように。※奈良新聞デジタル:奈良県が「大立山」4基の活用検討へ奈良ちとせ祝ぐ寿ぐ(ほぐほぐ)まつり廃止で(2...2024年12月:奈良出張

  • クリスマスリース2024とペンコロ東京2024

    土曜日、今年も幡ヶ谷のラベイユ四季という花屋さんで、手作りのクリスマスリースを買ってきた。事前に最近の購入履歴を見て、今年はナチュラルな緑のリースがいいなと思っていたので、これにしたが、かなり小ぶりなタイプで税込み3,080円だった。地味なので、リボンは自分で飾ってみた。この日は吉祥寺に出て、キチジョウジギャラリーで開催中の「さっぽろペンギンコロニーin東京2024」も覗いてきた。主に札幌で活動中のクラフト作家によるペンギンクラフトマーケットである。私は、2018年の東京、2019年の札幌を訪ねてお買いものをしている。2020年の東京は、コロナ禍で途中中止になって、私は行けなかったのだ。あれから4年。小さなギャラリーに入ると、かわいい子たちがわちゃわちゃと目に入るのだが…。結局、最初に目についたこの子をお...クリスマスリース2024とペンコロ東京2024

  • 昭和の新作を楽しむ/文楽・瓜子姫とあまんじゃく、金壺親父恋達引など

    〇江東区文化センタ-令和6年12月文楽公演第1部(2024年12月8日、11:00~)国立劇場が休館になって以来、さまざまな劇場を代替に継続している東京の文楽公演。今季は、地元の江東区文化センタ-で開催されるというので、喜んで見て来た。私の江東区民歴はもうすぐ8年になるが、江東区役所の裏にある文化センタ-には初訪問である。・『日高川入相花王(ひだかがわいりあいざくら)・渡し場の段』いわゆる道成寺もの。船頭から安珍の不実を聞かされた清姫は、怒りのあまり、蛇身となって川を泳ぎ渡る。人形ならではの大胆な変身ぶりが見もの。舞踊『京鹿子娘道成寺』の衣裳は赤い着物に黒い帯だが、本作の清姫は黒い着物(下に緋色の襦袢?)に赤い帯。蛇身のときは白一色で長い尾のような布を後ろに翻す。これ、筋書によると、山伏・安珍の正体は桜木...昭和の新作を楽しむ/文楽・瓜子姫とあまんじゃく、金壺親父恋達引など

  • 苗字はなかった/女の氏名誕生(尾脇秀和)

    〇尾脇秀和『女の氏名誕生:人名へのこだわりはいかにして生まれたか』(ちくま新書)筑摩書房新社2024.9同じ著者の『氏名の誕生』がとても面白くて、知らなかったこと、あるいはぼんやり気になっていたことを気持ちよく理解できたので、姉妹編の本書も必ず読もうと思っていた。そして読んだらやっぱり面白かった。本書の分析の中心となるのは江戸時代の女性名だが、「女性名の変遷」を古代から外観した箇所もある(p154)。8世紀の戸籍に見える女性名は1~4音節に接尾語「売(め)」が付くのが標準形で、氏姓は父系血統を表示した。9世紀初頭、嵯峨天皇が娘に与えた漢字1字+「子」という女性名(ただし内親王は〇子、臣籍降下させた娘は〇姫)が、9世紀中には定型化し、11世紀までに何子一色になった。貴族女性は裳着(成人)や女官として出仕する...苗字はなかった/女の氏名誕生(尾脇秀和)

  • 東京長浜観音堂(閉館)に感謝!

    〇東京長浜観音堂『十一面観音立像(長浜市高月町渡岸寺向源寺(渡岸寺観音堂))』(2024年11月1日~12月1日)日本橋の東京長浜観音堂がついに閉館することになった。最後の展示は、国宝十一面観音で有名な渡岸寺(向源寺)から、像高39センチの、檀像ふうの小さな十一面観音がおいでになった。やや横に広いお顔立ち、肉付きのよい肩幅だが、背後にまわると、腰高でほっそりした印象に変わる。襟を広げたうなじが美しい。左の脇腹に引き付けるように水瓶を持ち、右手(くっきりした掌の皺)は下に垂らす。着衣のあちこちには華麗な截金が残る。現地でお会いした記憶がないのは、収蔵庫でなく、本堂に安置されている(本堂はあまり熱心に参拝していない)ためか。もとは国宝十一面観音のお前立ちだったそうである。撮影禁止のため、施設に貼ってあったチラ...東京長浜観音堂(閉館)に感謝!

  • ふくやま美術館、広島県立歴博→六波羅蜜寺ご開帳

    ■ふくやま美術館特別展『ふくやまの仏さま-国宝明王院本堂本尊33年ぶり特別公開記念』(2024年10月12日~12月15日)金曜は広島で仕事があり、西条に泊まった。土曜の朝、西条酒蔵通りに心惹かれながら、かねての予定どおり、朝イチで福山へ移動し、駅前の美術館を訪ねた。同館は、福山市、府中市、神石高原町の3市町による広域圏の美術館だという。本展は、明王院(福山市草戸町)本堂本尊「十一面観音立像」が33年に1度の御開帳を迎えることを記念し、福山市内の約20ヶ寺に安置されている貴重な仏像、仏画など40件余りを展示するもの。仏像では1件だけ、鞆町・安国寺の阿弥陀如来及び両脇侍立像(鎌倉時代)が撮影可だった(顔出しパネルにもなっていた)。いわゆる善光寺式阿弥陀三尊像だが、ほぼ等身大という異例のサイズ感。また鞆町・地...ふくやま美術館、広島県立歴博→六波羅蜜寺ご開帳

  • 2024札幌大通り・ミュンヘンクリスマス市

    水曜から札幌1泊→広島2泊という、無茶な出張に行ってきた。5年ぶりの札幌、ほとんど自由時間はなかったけれど、大通り公園のミュンヘンクリスマス市だけは覗いてきた。札幌在住だった2013年と2014年、それから2019年に来ているので、見慣れた商品を扱うお店を見つけるとなつかしい。店番の人は変わっているんじゃないかと思うけれど。ロシアのマトリョーシカを扱うお店が出ていたのは、感慨深かった。ロシアは、良くも悪くも北海道にはとても近い国なのだ。早く平和と友好が戻ってほしい。食べもの屋さんは、以前より増えたような気がした。私は大好きなローストアーモンドを見逃すことができず、カカオ味とシナモン味のSサイズを購入。出張中のホテルで夜食に半分くらい食べてしまった。華やかなイルミネーションも堪能。12月の札幌なのに雪が全く...2024札幌大通り・ミュンヘンクリスマス市

  • 王の墓の守護者/はにわ(東京国立博物館)

    〇東京国立博物館挂甲の武人国宝指定50周年記念・特別展『はにわ』(2024年10月16日~12月8日)埴輪(はにわ)の最高傑作とも言える『挂甲の武人』が国宝に指定されてから50周年を迎えることを記念し、東北から九州まで、全国約50箇所の所蔵・保管先から約120件の至宝が集結する特別展。なかなかの人気で、連休に出かけたら、入館まで小1時間待たされてしまった。私はあまり埴輪に興味を持っていないので、会場内の混雑ぶりに、見に来たことを後悔しかけたが、ゆるい気持ちで見ていくと、いろいろ発見があって面白かった。冒頭には2体並んだ『埴輪踊る人々』。東博の公式キャラクター「トーハクくん」のモデルにもなった有名作品である。意外と小さい。出土地が埼玉県熊谷市であることは初めて認識した。私の場合、埴輪と聞くと、この「踊る人々...王の墓の守護者/はにわ(東京国立博物館)

  • 増築リニューアルオープン/與衆愛玩(荏原畠山美術館)

    〇荏原畠山美術館開館記念展I『與衆愛玩-共に楽しむ-』(2024年10月5日~12月8日)荏原製作所の創業者・畠山一清(即翁、1881-1971)のコレクションを所蔵する「畠山記念館」は、2019年3月から施設工事のため休館していたが、このたび「荏原畠山美術館」(半角空けが正しいらしい)に名称を変更し、リニューアルオープンした。ウェブサイトのURLも変わったようだ。好きな美術館の1つではあったけれど、あまり熱心には通えていなかった。最後に訪問したのは2016年のようだ(つくばに住んでいた頃だ)。休館中に京博で開催された特別展『畠山記念館の名品』は見ていて、コレクションの質と量に驚いた記憶がある。これまでは高輪台駅を使うことが多かったのだが、今回は白金台駅から歩いた。高級住宅街の代名詞みたいな町だが、狭い道...増築リニューアルオープン/與衆愛玩(荏原畠山美術館)

  • 昭和天皇の肉声/象徴天皇の実像(原武史)

    〇原武史『象徴天皇の実像:「昭和天皇拝謁記」を読む』(岩波新書)岩波書店2024.10『昭和天皇拝謁記』は、戦後、宮内府長官および宮内庁長官を務めた田島道治(1885-1968)の日記・書簡等の記録をまとめたもので、2021年から23年にかけて岩波書店から刊行された。この中には「まるでテープレコーダーに録音していたのではないかと思われるほど詳細に」田島と天皇のやりとりが記録されているという。貴人に仕える者としての、記録への執念というか責任感が生んだものかと思う。本書は、近代の天皇制について多くの論考のある者が、この『拝謁記』から読み取った昭和天皇の人間像を「天皇観」「政治・軍事観」「戦前・戦中観」「国土観」「外国観」「人物観(皇太后節子、他の皇族や天皇、政治家・学者など)」「神道・宗教観」「空間認識」のテ...昭和天皇の肉声/象徴天皇の実像(原武史)

  • 美味しそうな色とかたち/福田平八郎×琳派(山種美術館)

    〇山種美術館特別展・没後50年記念『福田平八郎×琳派』(2024年9月29日~12月8日)斬新な色と形を追求した日本画家・福田平八郎(1892-1974)の没後50年を記念し、同館では12年ぶりに、平八郎の画業をたどる特別展を開催する。併せて、平八郎が敬愛した、琳派の祖・俵屋宗達の作品など、意匠性と装飾性にあふれる琳派の世界を紹介する。自分のブログを検索したら、初めてこの人の名前が出てくるのは、2010年の『江戸絵画への視線』展。2012年の『福田平八郎と日本画モダン』も見ている。特に誰かに習ったわけではなくて、主に山種美術館で作品に出会って、徐々に好きになった日本画家だと思う。会場の入口に掛けてあったのは『筍』。黒いまっすぐな筍が二本生えており、背景の白い地面には、一面に散り敷いた竹の葉がパターンだけで...美味しそうな色とかたち/福田平八郎×琳派(山種美術館)

  • 表具に仕覆に舞楽衣装/古裂賞玩(五島美術館)

    〇五島美術館特別展『古裂賞玩-舶来染織がつむぐ物語』(2024年10月22日~12月1日)古裂愛玩といえば、まず思い浮かぶのは茶道具を包む「仕覆」だが、私はあまり関心がないので、今回の展覧会は行かなくてもいいかな、くらいに思っていた。それが、行ってみたら、展示室の壁にさまざまな墨蹟や唐絵の軸が掛けてある。え?どういうこと?と思ったら、これら書画の名品の表具に着目し、よく似た名物裂を収めた裂帖や裂手鑑が下に置いてあった。これは嬉しい。私は表具を見るのが大好きなのだ。展覧会の図録に表具の写真が載らないのを、いつも残念に思っている。墨蹟の表具は全体に控えめだけど、一部にキラリと華やかな布を使っていたりする。織物に型紙を当てて糊を引き、金箔・金粉を置いたものは印金というのだな。紺など地色が暗いほうが金色の模様が際...表具に仕覆に舞楽衣装/古裂賞玩(五島美術館)

  • 明るい独裁者/全斗煥(木村幹)

    〇木村幹『全斗煥:数字はラッキーセブンだ』(ミネルヴァ日本評伝選)ミネルヴァ書房2024.9「あとがき」によれば、著者は2011年から5年間「全斗煥政権期のオーラルヒストリー調査」という研究プロジェクトに関わったが、2010年代後半には、まだ多くの政権関係者が生存しており、その証言や回想が揺らいでいた。しかし2021年秋に盧泰愚と全斗煥が相次いで病死したことで、著者は本書の執筆を思い立ったという。盧泰愚と全斗煥が2021年に病死したというのは、全く自分の記憶になくて、少し驚いた。両人とももっと古い時代の政治家だと思っていたので。全斗煥(1931-2021)は慶尚南道の貧しい農村に生まれ、陸軍士官学校に進む。学業は芳しくなかったが、スポーツを通じて同輩の人望を得、高級将校の人脈を掴み、アメリカにも留学。19...明るい独裁者/全斗煥(木村幹)

  • 2024深川・富岡八幡宮の酉の市

    今日は二の酉。「酉の市」という年中行事は、知識としては知っていたけれど、長年、身近にはなかった。それが門前仲町で暮らすようになって、富岡八幡宮に酉の市が立つことを知ってから、すっかり生活カレンダーに組み込まれたイベントになっている。暗くなり始めた頃に行ってみたが、ちょうど日曜に当たったこともあって、私の知っている去年や一昨年より人の姿が多かった。大型の熊手がどんどん売れて、手締めが繰り返されていた。寿家、菱沼など、熊手商のテントは例年どおり。参道の入口にベビーカステラの屋台が出ていたのも同じ。境内社の大鳥神社にもお参りしてきた。夏祭や正月と違って、人も少なく、うらぶれた雰囲気が、冬を迎えるこの季節に合っていて、私は好きだ。今年は三の酉まである年。俗諺だけど、火事に気を付けよう。2024深川・富岡八幡宮の酉の市

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