「清河に斬られた傷は、もう良いのかね」 「幸い、既に癒えております」 服部は、右手を左肩から胸の辺りにあてた。ちょうど、清河に斬られた傷をなぞった形だ。 「それで、今宵はどんな用事かな。こんな夜更けに、男2人で密会でもあるまい」 多分に挑発を含んだ言葉だったが、服部は答えなかった。その代わり、服部の右手が下がっていく。まだ刀は抜いていない。一見すると無造作医に立ち尽くしているだけにも見える。しか…
何より、自身の剣術に絶対的な自信もある。芹沢には遅れをとるが、その他の者に劣るとは思っていない。相手が清河であろうと、芹沢達が高く評価している御陵衛士の服部であろうとも。 清河に遅れをとった服部を、芹沢があそこまで買う理由が分からなかった。何だったら、自分が服部を斬ってやろうか。ここ数日、そんなことまで考えていた。 気付くと、前方に立ち尽くす影があった。体格が良く、腰に刀を帯びているのが見える。…
内海の独り言のような言葉に、毛内が答える。それは、その場の誰もが同様に考えたことだった。 服部は滅多に感情を露にすることはない。 剣を手にすれば、新撰組でも最強と吟われる沖田総司や永倉新八などとも互角以上に戦える筈だ。しかし、服部自身は、それをひけらかすことを良しとしない。 そんな服部が怒りのままに剣を振り上げたなら、一体どれ程の血が流れるだろうか。 だが、同時に不安もあった。その服部を斬った、…
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