服部が身体を起こす時、傷に痛みが走った。素早く、熊が身を寄せ、肩を貸して服部を立ち上がらせた。 「外に駕篭を用意しておりますので、まずはそちらまで」 熊に身体を支えられながら、服部は戒光寺を後にした。毛内達に心配を掛けることが気に病まれる。しかし、自分の怪我の手当てを含めて世話を掛けるより、寧ろ姿を消してしまう方が憂いは少なかった。 服部が連れて行かれたのは、伏見に近い廃寺だった。廃寺とはい…
はっきりとは分からなかったが、10人近い者達がいた筈だ。今の自分では、まともに対応することは難しかっただろう。しかし、服部は動じなかった。その場の者達には殺気がない。つまり、自分を殺すことが目的ではないということだ。そもそも殺すことが目的なら、服部が目を覚ます前にことが終わっている筈だった。 「突然の訪問を御許しください」 言ったのは、後に猿と名乗る男だ。 「我々の願いを聞いて頂きたく、御同行を願…
「何を考えておいでですか?」 戒光寺を離れてから身を寄せている廃寺の庭先で、服部は1人立ち尽くしていた。大きくはない寺の庭にある庭木や草花を、見るともなく見詰めていた。 声は背後の本堂から掛けられた。初めて会った日に、蜂と名乗った女性だ。勿論、本名ではない。 これまでに服部が会ったのは、他に2名の男のみ。それぞれ、猿と熊と名乗っている。 猿は小柄で痩せている。身軽で俊敏な動きを得意とする。熊は、そ…
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