鬼の章(54)
服部が身体を起こす時、傷に痛みが走った。素早く、熊が身を寄せ、肩を貸して服部を立ち上がらせた。 「外に駕篭を用意しておりますので、まずはそちらまで」 熊に身体を支えられながら、服部は戒光寺を後にした。毛内達に心配を掛けることが気に病まれる。しかし、自分の怪我の手当てを含めて世話を掛けるより、寧ろ姿を消してしまう方が憂いは少なかった。 服部が連れて行かれたのは、伏見に近い廃寺だった。廃寺とはい…
2021/01/24 01:31
2021年1月 (1件〜100件)
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