最終話 永遠の野原(4)『抜いて放っておけば萎びて土に戻る草と違い、穂坂さんの入植以降野原に持ち込まれたものは、ずっと残るものばかりです。少量なら都度野原の外…
物書きブログです。エッセイ、詩、短歌、俳句、ショートショート、小説、ギャグ。渾然一体。(^m^)
ショートストーリーの『えとわ(絵と話)』を中心に、ノンジャンルでいろいろ書いています。中・短編小説も公開してありますので、ご一読いただければ幸いです。(^^)
最終話 永遠の野原(4)『抜いて放っておけば萎びて土に戻る草と違い、穂坂さんの入植以降野原に持ち込まれたものは、ずっと残るものばかりです。少量なら都度野原の外…
最終話 永遠の野原(3) ラインの方には短い案内だけを出しておく。短文の連打で膨大な情報量をさばくのは、少なくとも俺には無理だからな。『野原ラインのみなさま。…
最終話 永遠の野原(2)「佐々木さん、大変でしたね」「まいったよ。こう続けざまだとなあ」 お袋のあれやこれやで走り回っている間に四月も後半。どんな事情があって…
最終話 永遠の野原(1) お袋の葬儀と施設退所の手続きでばたついた三月下旬。俺たちは、寂しさや悲しさを年度末の慌ただしさで紛らせるようにして予定内外の変化をこ…
ものすごく不幸とか不運というわけじゃないんだが、こつこつ小出しで困ったことが積み重なり、気力ががっつり削がれる。『やなことジャブ』というやつは、本当にしんど…
うちでは、多肉系の面々を冬でも室内に入れず年中ベランダに出しっぱなしにしています。一年に何度かは気温が零下になることがあるので、寒さに弱いものは凍みてアウト…
いや、ふと思ったものですから。 その差はどこから来るのかなあと。 最後に咲き残ったビンカとバラ。どちらも冷気で傷んでぼろぼろです。二者の間で大きな違いはない…
久しぶりに、画像一枚のネタです。 次の画像、違和感を覚えませんか? 特に珍しい植物ではありません。 デンドロビウムですね。 でも。地植えはかわいそうでしょう…
花苗は時期はずれでない限りリーズナブルな価格で購入できますし、毎年新しい苗を使った方が早くきれいに仕上がります。多年草であっても、翌年使わずに新苗に入れ替え…
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、だあ? ふざけんな! ぽいっと捨てられたら、自力で浮かぶしかないんだよ!」 漂流中、亀に間違えられてさ。 本物の亀に怒られたん…
『裏声(ファルセット)』る あらあ あれ あるあある あれ お あれ るうううあああこちこちとステンドグラスにぶつかって散り光る賛美歌マリアの足元に横たわる…
ぼくが 枯れ葉に似ているわけじゃない枯れ葉が ぼくに似ているわけでもないぼくのご飯が 枯れ葉ってことじゃないしぼくの子供が 枯れ葉を食べて育つわけでもないぼく…
自分が幸福か不幸かを考える時。 どうしても他人と比べたくなる。 よくわかってるよ。 そんなことをしてもナンセンスだってね。 幸福も不幸も相対値さ。 絶対基準…
色のない世界で、私だけが色を有している。私の鮮黄色は生命の象徴。闇を照らして素晴らしい印象を残すはずなのに。 なぜか世界から疎外され、不恰好にぎらついている…
斃れゆく古い者の合間から新たな者が立ち上がる(ナヨクサフジ)古い者は新たな者を羨まない(ヨモギ)新たな者は古い者を敬わない(ヤハズエンドウ)彼らはよく知ってい…
「鋸なのに、ちっとも切れないんだね」「逆だよ。切り取られたから鋸になったんだ」「切り取り線ばっかで、残る身がないじゃん」「てか、切り取れるもんなら切り取ってみ…
あしあととそくせき。漢字表記は同じ『足跡』。訓読みと音読みの違いだけだ。だが、意味は微妙に異なる。 あしあとは残るものだが、そくせきは残すものなのだ。 自ら…
《ショートショート 1510》『パッチワーク・シンドローム』 (ラフ・キャンバス 5)「こんなの、聞いてないよ。どうしよう……」 応接室に一人残ったわたしは、…
わたしたちはいつの間にか野から連れ出されたのだ(スイセン)並べられて花壇で微笑むようにと強いられたのだ(ヒメリュウキンカ)それはわたしたちの望みではないだから…
これでおわりではない(オオオナモミ)これからはじまるのだ(ホシアサガオ?)みずからおわらせることなどできないはじめなければすぐおわりになってしまうのだから(セ…
世界が白と黒に塗り分けられようとしているだが私はそのどちらにも与したくない(ロウバイ)だから赤を残すほんのわずかでもいい赤を残す(ウメ)塗り分けに抗う意思の熱…
シーズン9 第四話 黄金(2) テオはオルムと同じ、北国ガレリアの出自じゃ。ガレリアは王制国家だが、継代の仕組みが他国と異なっており、国を代表する五つの名家が…
シーズン9 第四話 黄金(1) 寒が緩み、雪が完全に退いて、野山が徐々に薄緑の芽吹きで覆われるようになってきた。待ち望んだ春の到来を受けて、畑を耕す農夫たちの…
(ホトケノザ)Across The Sky by Pat MethenyAcross The Sky大空を大胆に横切り 春の予感が現実に変わるPass Tim…
やっぱり 忙しさには勝てなかったよ(ヒメリュウキンカ) ようやく一息ついた時には 三月が尽きていた(サイネリア) いまを無理に削ってまで 為すべきこと…
第十五話 終の旅(8) 俺の軽と施設の福祉車両二台。総勢十名近い大所帯で野原に向かったが。到着時、野原のアプローチ下にある駐車スペースはすでに芋洗い状態だった…
第十五話 終の旅(7) 急に決まった話だ。日常のスケジュール優先になるから子供らには声をかけないつもりだったが、豊島さんにたしなめられた。「あんたねえ。早苗さ…
第十五話 終の旅(6) 考え事をしていた時間は思ったよりも長かったようだ。とっくに中天を越した太陽は、すでに反対側にぐらりと傾き始めていた。飲まず食わずでずっ…
第十五話 終の旅(5) 野原の主はこれまで誰にも認知されていない。綾瀬さんの前に現れても、存在を認めてもらえないだろう。出て行ってくれという懇願や恫喝を直接行…
第十五話 終の旅(4)「隠す……か。どこに?」 ここで、初めてどこに隠したかという話になるが。その前に、野原の主が何をどこまで動かせるかを考えてみよう。改めて…
第十四話 終の旅(3)「苦労して作土を持ち込んだことで、草木が生えやすくなってしまったんだろうな」 死んだ男が生前掲げていた最終目標は、尾根を畑にすること。だ…
第十五話 終の旅(2) 野原の主が農夫だとして、彼がどのような立場だったのかを考えてみよう。 まず年齢。若いはずだ。痩せこけた疎林を開拓するには一にも二にも体…
第十五話 終の旅(1) 冬と春の間で振り子が揺れ続けているものの、三月初旬になればだいぶ春めいてくる。年度末ゆえ業務多忙だが土日も出てこいというほどではないの…
「寒波も一段落で、これから春の陽気らしいが」「体はあったまるかもしれないが、懐が寒いよ。なにせ、野菜も果物もばか高くてな」「野菜のくせに、お高く止まりやがって…
おかしいなあ。 どあほのわたしは、風邪なんか絶対に引かないはずなんですが。 花粉症による鼻炎が例年以上にひどいなあとびーびー鼻をかみまくっているうちに、喉が…
「枯れると味が出るっていうから、枯れてみたんだけど」「どうだった?」「ただ枯れただけで 味にはならなかったわ」「ま、そんなものかも」(カニクサ)「枯れるのが嫌…
読書ノートの302回めは、梨木香歩さんの『りかさん』(1999年発表。文庫版は新潮文庫)です。 梨木さんは児童文学分野の作家さんですね。これまで著作をいくつ…
幸福の形を描き出そうとしない方がいい筆を重ねれば重ねるほど輪郭が不鮮明になってどんどん嘘くさくなる幸福はもとよりぼんやりしたものだそれなのに形を定めようとする…
《ショートショート 1509》『影を均す』 (ラフ・キャンバス 4)「オトコはね、少し影があるくらいがいいのよ」 お姉ちゃんは普段からよく言う。だから、わたし…
「男ってのはな、引き際が肝心なんだよ!」「ええー?」「おめえは往生際が悪すぎる! いつまで過去の栄光にしがみついてんだ!」「そんなこと言ったって」(カシワ)(…
「どうも好不調の波が激しいんだよなあ」「おまえの気分はともかく、仕事の質は不調のベタ凪だ。少しは社会の荒波に揉まれろ!」(ヒメシロアミタケ?)「大波小波を乗り…
「ああ。角度の問題じゃない。角度が問題なんだよ」 三角形の内角の和は180度になるが、三角関係の和解は180度回転して修羅場になることが多い。 ……かあ。 平…
「危険物が目前にある場合と、安全柵の向こうに危険物がある場合と、どっちがましなんだろ」「どっちもどっちだな」「目前に危険物があるなら、近づかず、十分に用心し、…
読書ノートの301回めは、加納朋子さんの『二百十番館にようこそ』(2020年発表。文庫版は文春文庫)です。 加納さんについてはこれまでもたくさん著書を取り上…
花粉症で絶不調のため、今日は短いです。(T^T)◇ ◇ ◇ トキワマンサク。花には白と赤があるんですが。 冬に葉が変色する際、色がそれぞれ違うんですね。 白…
「どれくらい頭上が開けていれば、見通しが明るいと感じられるんだろう」 業績が芳しくない小さな会社を苦労して切り盛りしている佐藤が、居酒屋で付き合いの長い広瀬と…
まったくもって勝手なものだ。呆れてしまう。咲き始めの秋は「もうそんな季節か」と言われ咲き進んだ冬は「けなげだなあ」と言われ咲き残りの早春は「まだがんばるのか…
《ショートショート 1508》『ひび割れ』 (ラフ・キャンバス 3) 跋扈する魔物ですら退屈すぎて近寄らない片田舎のさらに片隅で、エスタスという老人が一人工房…
なし終えたから軽くなった解き放ったから軽くなった(ススキ)振り切ったから軽くなった(アキノエノコログサ)かたちがあるとこれ以上軽くはなれないんだだからゆっくり…
男の子も女の子も。 一人の時と大勢いる時とでは、言動も行動も変化しますよね。見栄だったり、同調圧だったり、気後れだったり。本心以外にいろいろ作用しますので。…
なんだ知らなかったのか、とか必ず知らせてね、とか知る権利があるぞ、とか君が知らなくてもいいことだ、とか(フヨウカタバミ)ここにいても何も知ることはできない、と…
ふとしたはずみで水の扉が開くことがある扉の向こうに特別変わったものがあるわけじゃないそれは現実の写しに過ぎないんだけど写しを目にして初めて気づく現実もあるのさ…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)◇ ◇ ◇「どうしよう。すっかり出遅れちゃった。今から赤くなってももう間に合わないよね」「どうだろ。残り物に福ってい…
シーズン9 第三話 調和(2) ペテルの案を容れ、マルタを蜘蛛に戻した。脚を全て失い、小さな球体になってしまった蜘蛛を羅紗を敷いた水晶の容器に納め、テオに世話…
シーズン9 第三話 調和(1)それは。私にとって敗北にも等しい撤退であった。だが私怨、私憤に駆られている間はあの化け物竜を制することができぬ。この屈辱は必ずや…
暖める必要はなく自ずと暖まるようになる(ラムズイヤー)凍えて赤くなるのではなく自ずと赤熱するようになる(シャリンバイ)あえて花を模らなくても自ずと花に見えるよ…
ばたばた走り回っている間に、いつの間にか二月が尻尾だけになってしまいました。 過ぎてしまった日々をそのまま忘れてしまうのもなんなので、少しだけ記録を残してお…
同じベゴニアなんだぜ?(センパーベゴ)俺はこれでもかと寒ざらしなのに(キダチベゴニア)向こうは空調完備でぬくぬくかよ!不公平だ! そう言われましてもねえ……。…
第十四話 外に鬼はいない(10) 豊島さんの長考は、他のメンバーにも沈黙を強いた。沈黙を破ったのは、豊島さんがノートの脇に置いていた携帯だった。 ぴぴぴ、ぴぴ…
第十四話 外に鬼はいない(9)「アクシデント……か。夫婦のどちらかが病気で倒れた、とかか?」 牟田さんの推測はあっさり否定された。「いいや、人の生き死にに直結…
第十四話 外に鬼はいない(6)「話がとっちらかっちゃったから、整理するね」 豊島さんが老眼鏡を外して目頭を揉んだ。「まず、現時点で明らかになっている野原の前史…
第十四話 外に鬼はいない(7)「じゃ、じゃあ。あの野原も農地だったことがあったんですか?」「それはわからない。ただ、はるか昔から野原だったというわけではないよ…
第十四話 外に鬼はいない(6)「豊島さん。確認させてください」「なんだい。信ちゃん」「あの野原の縁起には二つの要素が絡んでる。一つは自然条件。そっちは事実とし…
第十四話 外に鬼はいない(5)意見交換と言っても、野原に関する情報提供をお願いしたのは豊島さんではなく俺だ。俺が集めてまとめた概略の情報を最初に提供しておこう…
第十四話 外に鬼はいない(4) 施設に到着してすぐお袋の様子を見に行った。職員さんの話だと、体調に大きな変化はないけれどうつらうつらしている時間が徐々に長くな…
第十四話 外に鬼はいない(3) メールの返信後、間髪入れずに豊島さんから直電が来た。「ああ、信ちゃんかい。夜分済まないね」「いえ、仕事が終わればあとはのんべん…
第十四話 外に鬼はいない(2) あれこれ考え込んでいるうちに予想外に時間が経っていたらしい。ドアがばたんと開く音で我に返った時にはすでに日没近かった。リビング…
第十四話 外に鬼はいない(1) 敬士さんは由仁が転勤の話を受け入れて一緒に行くことを聞き、本当にほっとしたようだ。公務員と言っても上級職ではないから、日本全国…
たった十分で世界ががらりと変わるそれまで世界は青で支配されていた赤などどこにもなかっただが砂時計の砂粒が一つ落ちるごと世界が置き換わっていく青から赤へと置き…
《ショートショート 1507》『皮』 (ラフ・キャンバス 2)「化けの皮を剥がすって言うけど、皮を剥がされたらたらたまったもんじゃないわ。三味線に張られる猫の…
まだ葉が青々していた頃からぼくはそこにいたよ葉が真っ赤に色づいていた頃にもぼくはそこにいたよ葉がどんどん落ちている間もぼくはそこにいたよ葉が全部なくなってしま…
読書ノートもとうとう300回の大台に乗りましたが、ここのところ読書ペースががったり落ちているので更新はゆっくりになると思います。積読の標高だけがんがん上がっ…
枯れてやっと歌えるようになったんだ緑なす頃はしなやかであれ風は受け流せと言われ続けたでも風に靡(なび)いている間はどうしても上手に歌えなかった今こうして枯れて…
《ショートショート 1506》『深掘り』 (ラフ・キャンバス 1) 深掘りする。 明らかになったとされる事実や現象をそのまま受け止めるのではなく、その奥に何か…
整形されていない木材の破断面をネタ元にして『背景』というサブテーマでショートストーリーをお送りしてまいりました。 まだ樹木ネタを引っ張るのかよと言われそうで…
読書ノートの299回めは、小澤征良さんの『蒼いみち』(2006年発表。文庫版は講談社文庫)です。わたしは単行本で読みました。小澤さんの著作は初読です。 小澤…
そんなの、聞いてないよ! 南国のビーチでグラビア撮影だっていうから、気合い入れて臨んだのに。(ハイビスカス) 南国なのに気温マイナス? 日焼けじゃなくて低温焼…
《ショートショート 1505》『山並みを臨む』 (背景 20) 私は根っからの都会っ子だった。海山川の豊かな自然とは縁遠く、遠足や家族旅行で郊外に出かける時く…
僕はいつでも光り輝いていたから、誰かの中に埋没してしまうなんて想像すらしなかったんだ。 僕は今も変わらず、ずっと光り輝いているよ。 それなのに、僕は埋没して…
緑なす草原がたった一日で徹底的に破壊されることがある。草木は表土と共に剥ぎ取られ、ロードローラーでかちかちに押し固められた建設予定地は、誰が見ても不毛な砂漠…
落ちることには何のこだわりも怨嗟もないよ。 雨だって日光だって天から落ちる。 俺も重力に身を任せるだけさ。含むところは何もない。 ただ。 どこに落ちるか、落…
シーズン9 第二話 朱雀(2)「トラルタ・エル・ガタレイア!」 ガタレの竜の印に紐付けし、トラルタを詠唱する。行った先でどのような状況が待ち受けているのかは、…
シーズン9 第二話 朱雀(1) 三つの警告のうち、二つは確かな現実となった。現実となったがゆえに、残る一つの警告が重苦しくのしかかった。乏しい南方の情報をかき…
二月は少しだけ短いそして短いがゆえに損なことだけではなく短いからこそ得をすることもある親父は福豆をこれでもかとぶつけられるので 損親父になると福豆をいっぱい食…
つい先日あけおめことよろーと言っていたはずなのに、もう最初の月が終わってしまいますね。 個人的にもどたばたしっぱなしの一月で、腰を据えて創作に取り組む時間が…
色を失った木々の魂が荒々しい骨となって夕暮れを断ち切る足元に忍び寄る闇より早く葉群が黒雲となって斑らに夜を創る木々は逆らわない時々の光をとつ纏い、とつ脱ぎ去っ…
孤立。衆人から距離を取られ、独りになってしまう。 孤独。大勢の理解者に囲まれていても、独りを感じる。 孤立した者が孤独だとは限らず、孤独な者が孤立していると…
《ショートショート 1504》『刷毛跡』 (背景 19)「まいったなあ……」「ああ」 俺と岡持(おかじ)は、作業卓の上に置かれた一枚の板っきれを見下ろしながら…
人生を川の流れにたとえる奴がいる。それはおかしい。川は時の象徴だ。我々は時の水面に浮いて、流れに翻弄されているに過ぎない。 春。 川面に散った桜の花びらは花…
季節画像消化のための臨時増刊です。 きのこものは結局使いきれなかったなあ。(^^;;◇ ◇ ◇ 群衆。群集う者たち。 彼らが統率されていれば気味が悪いし、統…
読書ノートの298回めは、太田紫織さんの『銀河の森、オーロラの合唱』(2019年発表。文庫版は文春文庫)です。単行本の発刊はなく、文庫用に書き下ろされたオリ…
三人寄れば文殊の知恵と言うが、可否は寄り合う三人の資質に依存する。 阿呆を三人集めたところで知恵どころか屁も出ないだろう。下手の考え休むに似たりということわ…
《ショートショート 1503》『赤い泥の夢』 (背景 18) 最近、寝起きがどうもすっきりしない。睡眠時間はしっかり取れているから寝不足ってわけじゃない。変な…
世の中に、変なものなんか一つもないよ。 存在する必然性があるから、そこにあり、その姿形なんだ。 ちっとも変なんかじゃないさ。 変だと思ってしまう我々の感覚が…
どの色がいいのって聞かれたんだ。 迷っちゃうよね。(メタセコイア) 春の若草色は瑞々しくて気持ちいいし。(メタセコイア) 秋の黄金色も華やかで素晴らしいし。…
第十三話 始動(5) 今は真冬。午後二時を過ぎると太陽が己を支えきれずに垂れ始め、日差しに寒さの棘が混じり始める。今日は吹き下ろしの風が強いから身体の熱が奪わ…
第十三話 始動(4) 野原に関して言っておかなければならないことは全て伝えた。それを受けて由仁がどう判断しても、俺はその判断を尊重する。うちの財産として維持す…
第十三話 始動(3) 優も由仁もあの野原が変化しない奇妙な野原だということを知っているが、知っているのは変化しないという点だけだ。変化しないことによる弊害を何…
第十三話 始動(2) 敬士さんは諾否の決断をこれ以上引き延ばせないだろう。公務員は民間会社より人事の柔軟性が高いと聞くが、それだって程度問題だ。前々からの打診…
「ブログリーダー」を活用して、水円 岳さんをフォローしませんか?
最終話 永遠の野原(4)『抜いて放っておけば萎びて土に戻る草と違い、穂坂さんの入植以降野原に持ち込まれたものは、ずっと残るものばかりです。少量なら都度野原の外…
最終話 永遠の野原(3) ラインの方には短い案内だけを出しておく。短文の連打で膨大な情報量をさばくのは、少なくとも俺には無理だからな。『野原ラインのみなさま。…
最終話 永遠の野原(2)「佐々木さん、大変でしたね」「まいったよ。こう続けざまだとなあ」 お袋のあれやこれやで走り回っている間に四月も後半。どんな事情があって…
最終話 永遠の野原(1) お袋の葬儀と施設退所の手続きでばたついた三月下旬。俺たちは、寂しさや悲しさを年度末の慌ただしさで紛らせるようにして予定内外の変化をこ…
ものすごく不幸とか不運というわけじゃないんだが、こつこつ小出しで困ったことが積み重なり、気力ががっつり削がれる。『やなことジャブ』というやつは、本当にしんど…
うちでは、多肉系の面々を冬でも室内に入れず年中ベランダに出しっぱなしにしています。一年に何度かは気温が零下になることがあるので、寒さに弱いものは凍みてアウト…
いや、ふと思ったものですから。 その差はどこから来るのかなあと。 最後に咲き残ったビンカとバラ。どちらも冷気で傷んでぼろぼろです。二者の間で大きな違いはない…
久しぶりに、画像一枚のネタです。 次の画像、違和感を覚えませんか? 特に珍しい植物ではありません。 デンドロビウムですね。 でも。地植えはかわいそうでしょう…
花苗は時期はずれでない限りリーズナブルな価格で購入できますし、毎年新しい苗を使った方が早くきれいに仕上がります。多年草であっても、翌年使わずに新苗に入れ替え…
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、だあ? ふざけんな! ぽいっと捨てられたら、自力で浮かぶしかないんだよ!」 漂流中、亀に間違えられてさ。 本物の亀に怒られたん…
『裏声(ファルセット)』る あらあ あれ あるあある あれ お あれ るうううあああこちこちとステンドグラスにぶつかって散り光る賛美歌マリアの足元に横たわる…
ぼくが 枯れ葉に似ているわけじゃない枯れ葉が ぼくに似ているわけでもないぼくのご飯が 枯れ葉ってことじゃないしぼくの子供が 枯れ葉を食べて育つわけでもないぼく…
自分が幸福か不幸かを考える時。 どうしても他人と比べたくなる。 よくわかってるよ。 そんなことをしてもナンセンスだってね。 幸福も不幸も相対値さ。 絶対基準…
色のない世界で、私だけが色を有している。私の鮮黄色は生命の象徴。闇を照らして素晴らしい印象を残すはずなのに。 なぜか世界から疎外され、不恰好にぎらついている…
斃れゆく古い者の合間から新たな者が立ち上がる(ナヨクサフジ)古い者は新たな者を羨まない(ヨモギ)新たな者は古い者を敬わない(ヤハズエンドウ)彼らはよく知ってい…
「鋸なのに、ちっとも切れないんだね」「逆だよ。切り取られたから鋸になったんだ」「切り取り線ばっかで、残る身がないじゃん」「てか、切り取れるもんなら切り取ってみ…
あしあととそくせき。漢字表記は同じ『足跡』。訓読みと音読みの違いだけだ。だが、意味は微妙に異なる。 あしあとは残るものだが、そくせきは残すものなのだ。 自ら…
《ショートショート 1510》『パッチワーク・シンドローム』 (ラフ・キャンバス 5)「こんなの、聞いてないよ。どうしよう……」 応接室に一人残ったわたしは、…
わたしたちはいつの間にか野から連れ出されたのだ(スイセン)並べられて花壇で微笑むようにと強いられたのだ(ヒメリュウキンカ)それはわたしたちの望みではないだから…
《ショートショート 1463》『結束と破砕』 (かうんたーぱーと 9)「チーフ。なんか……切ないですね」「まあな」 私とサブチーフの芹沢君は、スクラップヤード…
毎年毎年、破ってはいけない約束のように桜が咲き乱れます。今年は咲き出しが遅かったこともあって、ずいぶんと長く楽しませてもらいました。桜の季節は変わらずに来る…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)◇ ◇ ◇ 日脚が伸びて暖かくなってくると、ほにゃらあっという感じでお出ましになる方々がおられます。 みなさんよく…
読書ノートの264回めは、藤原伊織さんの『ダックスフントのワープ』(2000年発表。文庫版は文春文庫)です。 藤原さんについては、以前『テロリストのパラソル…
固く折り畳まれていた未来が(トチノキ)折り目に沿ってじわりと緩む(ムクロジ)明るい未来は保証されていない(ヤツデ)だが少なくとも今は明るいのだ(アジサイ)残っ…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)◇ ◇ ◇「ねえねえ、趣味と実益を兼ねたアルバイトってなんですか?」「筍掘りだ」「わ! そりゃあ、すげえ! 掘った…
第四話 春萌え(5)「豊島さん、ご主人の博打は結局当たったんですか?」 こういう聞き方もどうかと思ったんだが、突っ込まれっぱなしというのも癪に触るからな。だが…
第四話 春萌え(4) 俺に家内のことを聞いたくらいだから、おそらくカレシ関係の悩みなんだろうなと、大体のあたりはつく。だが、さすがにそっち方面は自分の分だけで…
第四話 春萌え(3) 変わらない野原はともかく、牧柵の外は大変だーとげっそりしながら一周して戻ったら。牟田さんが全く同じ姿勢で牧柵に寄りかかっていた。陽花と同…
第四話 春萌え(2)「いやあ、ひっさしぶりだなあ」 思わず口走る。子供らがまだ小さい頃は子供を連れて中を歩き回っていたが、それ以降は野原を訪れること自体数える…
第四話 春萌え(1)「参ったなあ……」 ぽよぽよと春萌えが始まった野原をぼんやり見渡しながら、細い溜息を春風に吹き流している。俺一人のはずの野原に予想外の先客…
太陽は増殖する(ノゲシ)薄暗いところでは華やかに燃え盛り(セイヨウタンポポ)明るいところでは炎熱をかじり取り(ノボロギク)火の粉を散らして次々に増え広がる(ヤ…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)◇ ◇ ◇「どうしても花を咲かせないとだめなのかな」「そんなことはないと思うけど。ただ、目立たないだけ」「目立ちた…
《ショートショート 1462》『手水鉢』 (かうんたーぱーと 8)「おむすびころりんなら可愛げがあるが、これはないな」「勘弁してほしいです」 スタッフ全員で、…
「なんか、客からクレームが来てるんだが」「クレームぅ?」「そう。看板に偽りありだとめちゃめちゃ怒ってる」「知ったことか。俺たちゃまともに商売してるぞ」「だよな…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)◇ ◇ ◇ 今年は桜の開花が遅かったので、画像が例年以上に溜まりました。お蔵入りさせてしまうのはもったいないので、…
読書ノートの263回めは、川上弘美さんの『蛇を踏む』(1996年発表。文庫版は文春文庫)です。電子本での読書。 川上さんの作品はこれまでも取り上げてきたので…
下を向いてぶつぶつ言うってのは。 アブナイ人か。ぼっちのコミュ障か。 いやそこまでは言わないにしても、あまり好印象にはなりません。 それが一人でなく大勢にな…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)◇ ◇ ◇「民間でもロケットを飛ばす時代になったんだな」「目指せ、スペースXだ!」「いや、それはいいけど。なんかお…
《ショートショート 1461》『相棒』 (かうんたーぱーと 7)「合わない?」「合わない。徹底的に」「うーん、仕方ないな。代えるしかないか」「そうしてくれ」 …