最終話 永遠の野原(4)『抜いて放っておけば萎びて土に戻る草と違い、穂坂さんの入植以降野原に持ち込まれたものは、ずっと残るものばかりです。少量なら都度野原の外…
物書きブログです。エッセイ、詩、短歌、俳句、ショートショート、小説、ギャグ。渾然一体。(^m^)
ショートストーリーの『えとわ(絵と話)』を中心に、ノンジャンルでいろいろ書いています。中・短編小説も公開してありますので、ご一読いただければ幸いです。(^^)
とても美しい物があったとする。その物体が永劫に不変であれば、時代が変わっても美の評価はそれほど変わらないだろう。しかし全ての物体は経年変化する。アクシデント…
猛暑のせいで開花が少し遅れている感はありますが、秋の野花があちこちで咲き誇っています。 えらくちんけなアレチヌスビトハギだなあと思っていたんですが。違いまし…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)◇ ◇ ◇ もともと照り返しがきつい我が家の超高温ベランダですが、今年の夏は特段に過酷だったようで、比較的丈夫な木…
《ショートショート 1492》『一年の影』 大学教授という職は因果なものだ。現役の時には肩書きに黄門様の印籠並みの威力があるものの、退官して『元』が付くと屁の…
イベントに使う大量のどんぐりを確保する必要があるため、例年10月は猛烈に忙しくなるんですが、今年は昨年に引き続いての猛暑だったためか全体に生りが今いちで。必…
イベントに出かけたので臨時増刊。(^^)◇ ◇ ◇ 10月26、27日の両日、京都府立植物園できのこの展示会が行われていました。第31回と回を重ねていますか…
読書ノートの292回めは、西炯子(にし けいこ)さんの『波のむこうに』(2014年発表。コミックスは小学館文庫)です。 西さんは1986年にプロデビューした…
『営業時間終了間際に入店されるお客様へ、弊店より心よりお願い申し上げます。店員の過重労働をもたらしますので、どうか駆け込み入店はご遠慮くださいませ』「そんなこ…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)◇ ◇ ◇ この夏は空を見上げるのが辛かった。そこにあるのは慈悲を知らない太陽だけで、常に何もかもを焼き尽くそうと…
《ショートショート 1491》『湧出と噴出』 ぼこぼこと音をたてて湧き出る何か。湧くものが好ましくても好ましくなくても、湧き出てくる何かを押し留めることは難し…
残夏。夏がすっかり終わったわけではない。夏花は、まだあちこちに咲き残っている。それでも。夏の熱は褪せつつある。赤が薄くなっていく。(オジギソウ) オジギソウ…
読書ノートの291回めは、佐倉色(さくら しき)さんの『とある新人漫画家に、本当に起こったコワイ話』(2017年発表。飛鳥新社)です。電子本での読書。 佐倉…
未熟者という表現は、いいたとえとしては使われませんね。じゃあ未熟者だから悪いのかと言えば、それはどうかな、と。そうでしょう? 誰であっても、熟する前のステー…
第十話 帰還(5) ショックでしゃがみこんでしまった綾瀬さんを力任せに野原から引きずり出し、豊島さんが待っているところまで戻る。俺と綾瀬さんのやり取りを見てい…
第十話 帰還(4) これまでの豊島さんなら、付き合いが長い俺にすら身の上話なんか絶対にしなかっただろう。だが、孤独に耐える強靭な精神力があっても、一人で生きて…
第十話 帰還(3) 鬼のような形相を崩さないまま。それでも豊島さんはきっぱり言った。「あたしは運がよかったんだ」 そのあと豊島さんがだあっとまくしたてた一部始…
第十話 帰還(2) 家にいれば、どうしても身の回りのことをこなさなければならない。実際にするしないは別にして、家事山積の中にすっぽり嵌ってしまうとちっとも気が…
第十話 帰還(1) 「ふう……俺もトシだな」 少しずつ枯れ草の藁色が混じり始めた野原を見渡し、牧柵に両腕を預けて溜息をつく。 俺は鈍臭いから、同時並行で何かを…
すぺしゃりすと なんでもできるのが必ずしもいいわけではないのです。一芸に秀でるといわれるように、一つのことをとことん突き詰めるのもまた生き残る道なのですから。…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)◇ ◇ ◇ 生き物中心に写真を撮っていますのでどうしても判じ物は多くなりますが、珍しいものに遭遇する機会はそうそう…
《ショートショート 1490》『幻の色』 (カラー・ミー 5)「ぐええ、こんがり丸焼けだー」「むー、困ったあ。どうする? モル」「むうう」 イーゼル立ててキャ…
臭いものに蓋と言うが、ちゃちな蓋で隠せるような汚点や恥部なら最初から大したもんじゃない。蓋なんざしないで、ちゃんとどぶさらいした方がいい。 そもそも蓋っての…
読書ノートの290回め。近況と読書状況をちびっと。 長すぎた夏の酷暑がやっと治ったと思ったら、今度は怒涛の繁忙期がやってまいりました。(^^;; 今年はイベ…
昨年の猛暑少雨が今年も続くとは思いませんでした。予想外の事態に慌てたのは我々人間だけではなく、植物も同じなんですよね。 梅雨明け十日どころか二ヶ月以上まとも…
《ショートショート 1489》『影の色』 (カラー・ミー 4) 影に色なんざあるものかと、父は鼻で笑った。持論にとことんしがみつく人だとわかっていたから、私は…
言いたいことを言わないのと言えないのは違う。言わないのは我慢だが、言えないのは強制だ。我慢は強弱を自己調整できるが、強制される箝口(かんこう)にはひたすら忍…
読書ノートの289回めは、小野寺史宣さんの『今日も町の隅で』(2020年発表。文庫版は角川文庫)です。小野寺さんの近作ですね。電子本での読書。 小野寺さんに…
西風の精が群舞を踊る季節になりました。 外来植物でありながら、まるでずっと昔からそこにいたかのように秋雨に合わせて咲き出すゼフィランセス。夏の終わり、もしく…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)◇ ◇ ◇ 例年だともっと虫ネタが多くなるんですが、今夏が極端な高温少雨だったせいか虫の姿がさっぱり見られなくて……
《ショートショート 1488》『オレンジとピンク』 (カラー・ミー 3) 仕事帰りに立ち寄るショッピングセンターの入り口付近に、小さな花屋のブースがある。一坪…
「そろそろ長かった猛暑も一段落。日傘をしまう前に、ちゃんと広げて乾かしておかないとね」「……そうね」(オオシロカラカサタケ)「この傘には一つもいい思い出がない…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)◇ ◇ ◇ ようやく猛暑が一段落しましたが、七月、八月の暑い最中に撮った中・遠景の画像はもれなく白飛びしていました…
読書ノートの288回めは、瀬尾まいこさんの『優しい音楽』(2008年発表。文庫版は双葉文庫)です。瀬尾さんの作品としては比較的初期のものになりますね。 瀬尾…
出穂。出水ではなく、穂が出ること。 イネ科やカヤツリグサ科などの単子葉植物では、蕾が上がるというより穂が出るという表現の方がしっくりくる。 穂が出るのは好ま…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)「反魂の秘法が存在すると思うかい?」「思いません」「即答だな」「そんなものがあれば、現世が亡者だらけになります」「…
シーズン8 第十話 純白(2) 執務室に二人の執事、ソノーとペテルを呼び、対策を話し合うことにする。ドアを閉めて部屋を魔術で封鎖したのち、二人に筆記を禁じた。…
シーズン8 第十話 純白(1) そろそろスカラの修了が見え隠れしていたレクトはともかく、こちらに来てスカラに通い始めたばかりのクルムまでもが屋敷を出て鍛冶屋に…
美しい薔薇が春に咲いていれば春の歓びを堪能することができる逞しい薔薇が夏に咲いていれば夏の疲れを癒すことができる健気な薔薇が冬に咲いていれば冬の凍えを和らげる…
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最終話 永遠の野原(4)『抜いて放っておけば萎びて土に戻る草と違い、穂坂さんの入植以降野原に持ち込まれたものは、ずっと残るものばかりです。少量なら都度野原の外…
最終話 永遠の野原(3) ラインの方には短い案内だけを出しておく。短文の連打で膨大な情報量をさばくのは、少なくとも俺には無理だからな。『野原ラインのみなさま。…
最終話 永遠の野原(2)「佐々木さん、大変でしたね」「まいったよ。こう続けざまだとなあ」 お袋のあれやこれやで走り回っている間に四月も後半。どんな事情があって…
最終話 永遠の野原(1) お袋の葬儀と施設退所の手続きでばたついた三月下旬。俺たちは、寂しさや悲しさを年度末の慌ただしさで紛らせるようにして予定内外の変化をこ…
ものすごく不幸とか不運というわけじゃないんだが、こつこつ小出しで困ったことが積み重なり、気力ががっつり削がれる。『やなことジャブ』というやつは、本当にしんど…
うちでは、多肉系の面々を冬でも室内に入れず年中ベランダに出しっぱなしにしています。一年に何度かは気温が零下になることがあるので、寒さに弱いものは凍みてアウト…
いや、ふと思ったものですから。 その差はどこから来るのかなあと。 最後に咲き残ったビンカとバラ。どちらも冷気で傷んでぼろぼろです。二者の間で大きな違いはない…
久しぶりに、画像一枚のネタです。 次の画像、違和感を覚えませんか? 特に珍しい植物ではありません。 デンドロビウムですね。 でも。地植えはかわいそうでしょう…
花苗は時期はずれでない限りリーズナブルな価格で購入できますし、毎年新しい苗を使った方が早くきれいに仕上がります。多年草であっても、翌年使わずに新苗に入れ替え…
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ、だあ? ふざけんな! ぽいっと捨てられたら、自力で浮かぶしかないんだよ!」 漂流中、亀に間違えられてさ。 本物の亀に怒られたん…
『裏声(ファルセット)』る あらあ あれ あるあある あれ お あれ るうううあああこちこちとステンドグラスにぶつかって散り光る賛美歌マリアの足元に横たわる…
ぼくが 枯れ葉に似ているわけじゃない枯れ葉が ぼくに似ているわけでもないぼくのご飯が 枯れ葉ってことじゃないしぼくの子供が 枯れ葉を食べて育つわけでもないぼく…
自分が幸福か不幸かを考える時。 どうしても他人と比べたくなる。 よくわかってるよ。 そんなことをしてもナンセンスだってね。 幸福も不幸も相対値さ。 絶対基準…
色のない世界で、私だけが色を有している。私の鮮黄色は生命の象徴。闇を照らして素晴らしい印象を残すはずなのに。 なぜか世界から疎外され、不恰好にぎらついている…
斃れゆく古い者の合間から新たな者が立ち上がる(ナヨクサフジ)古い者は新たな者を羨まない(ヨモギ)新たな者は古い者を敬わない(ヤハズエンドウ)彼らはよく知ってい…
「鋸なのに、ちっとも切れないんだね」「逆だよ。切り取られたから鋸になったんだ」「切り取り線ばっかで、残る身がないじゃん」「てか、切り取れるもんなら切り取ってみ…
あしあととそくせき。漢字表記は同じ『足跡』。訓読みと音読みの違いだけだ。だが、意味は微妙に異なる。 あしあとは残るものだが、そくせきは残すものなのだ。 自ら…
《ショートショート 1510》『パッチワーク・シンドローム』 (ラフ・キャンバス 5)「こんなの、聞いてないよ。どうしよう……」 応接室に一人残ったわたしは、…
わたしたちはいつの間にか野から連れ出されたのだ(スイセン)並べられて花壇で微笑むようにと強いられたのだ(ヒメリュウキンカ)それはわたしたちの望みではないだから…
《ショートショート 1463》『結束と破砕』 (かうんたーぱーと 9)「チーフ。なんか……切ないですね」「まあな」 私とサブチーフの芹沢君は、スクラップヤード…
毎年毎年、破ってはいけない約束のように桜が咲き乱れます。今年は咲き出しが遅かったこともあって、ずいぶんと長く楽しませてもらいました。桜の季節は変わらずに来る…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)◇ ◇ ◇ 日脚が伸びて暖かくなってくると、ほにゃらあっという感じでお出ましになる方々がおられます。 みなさんよく…
読書ノートの264回めは、藤原伊織さんの『ダックスフントのワープ』(2000年発表。文庫版は文春文庫)です。 藤原さんについては、以前『テロリストのパラソル…
固く折り畳まれていた未来が(トチノキ)折り目に沿ってじわりと緩む(ムクロジ)明るい未来は保証されていない(ヤツデ)だが少なくとも今は明るいのだ(アジサイ)残っ…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)◇ ◇ ◇「ねえねえ、趣味と実益を兼ねたアルバイトってなんですか?」「筍掘りだ」「わ! そりゃあ、すげえ! 掘った…
第四話 春萌え(5)「豊島さん、ご主人の博打は結局当たったんですか?」 こういう聞き方もどうかと思ったんだが、突っ込まれっぱなしというのも癪に触るからな。だが…
第四話 春萌え(4) 俺に家内のことを聞いたくらいだから、おそらくカレシ関係の悩みなんだろうなと、大体のあたりはつく。だが、さすがにそっち方面は自分の分だけで…
第四話 春萌え(3) 変わらない野原はともかく、牧柵の外は大変だーとげっそりしながら一周して戻ったら。牟田さんが全く同じ姿勢で牧柵に寄りかかっていた。陽花と同…
第四話 春萌え(2)「いやあ、ひっさしぶりだなあ」 思わず口走る。子供らがまだ小さい頃は子供を連れて中を歩き回っていたが、それ以降は野原を訪れること自体数える…
第四話 春萌え(1)「参ったなあ……」 ぽよぽよと春萌えが始まった野原をぼんやり見渡しながら、細い溜息を春風に吹き流している。俺一人のはずの野原に予想外の先客…
太陽は増殖する(ノゲシ)薄暗いところでは華やかに燃え盛り(セイヨウタンポポ)明るいところでは炎熱をかじり取り(ノボロギク)火の粉を散らして次々に増え広がる(ヤ…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)◇ ◇ ◇「どうしても花を咲かせないとだめなのかな」「そんなことはないと思うけど。ただ、目立たないだけ」「目立ちた…
《ショートショート 1462》『手水鉢』 (かうんたーぱーと 8)「おむすびころりんなら可愛げがあるが、これはないな」「勘弁してほしいです」 スタッフ全員で、…
「なんか、客からクレームが来てるんだが」「クレームぅ?」「そう。看板に偽りありだとめちゃめちゃ怒ってる」「知ったことか。俺たちゃまともに商売してるぞ」「だよな…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)◇ ◇ ◇ 今年は桜の開花が遅かったので、画像が例年以上に溜まりました。お蔵入りさせてしまうのはもったいないので、…
読書ノートの263回めは、川上弘美さんの『蛇を踏む』(1996年発表。文庫版は文春文庫)です。電子本での読書。 川上さんの作品はこれまでも取り上げてきたので…
下を向いてぶつぶつ言うってのは。 アブナイ人か。ぼっちのコミュ障か。 いやそこまでは言わないにしても、あまり好印象にはなりません。 それが一人でなく大勢にな…
季節画像消化のための臨時増刊です。(^^)◇ ◇ ◇「民間でもロケットを飛ばす時代になったんだな」「目指せ、スペースXだ!」「いや、それはいいけど。なんかお…
《ショートショート 1461》『相棒』 (かうんたーぱーと 7)「合わない?」「合わない。徹底的に」「うーん、仕方ないな。代えるしかないか」「そうしてくれ」 …