ローマの詩
遠い記憶の海に僕の知らない過去がある。 明け透けな真赤なカーテ…
四月の花弁は夜空を舞い 冷たく光る月に触れながら 我を忘れ 一瞬の刹那に美を求め 旅人は、また旅を続け 商人の居ない街を目指し 彷徨い続ける。 僕の放蕩はやがて終焉を迎え 自らの弔いに花を添え 時は過ぎて行く
走り出す回廊に 諸行無常の鐘が鳴り響く頃僕の哀しみは頂点に達し 凡ゆる地上の苦しみを飲み込む或る者は暗い森の中から 震える身を人目に晒し 太陽の光に赦しを乞い、また或る者は 高い時計台の窓から その身を投げ捨て 永久の苦しみに別…
灰色の雑踏に、 冷たい微笑をうかべ 背後を振り向く婦人は 何処か悲しげで 悩ましく散りゆく花に 無言の別れを告げる少女の様に 紅い血潮に追いすがり 他人の影を踏んでは後退り、 人の温もりをも拒絶する。僕はそんな婦人が、 何だか憐憫で、 あぁ できる事なら捧げたい! 僕の片目…
琥珀色した半透明の悲しみが、深紅の海に溶け合い 無言の帰路に着く頃、新たな悲しみが丘の上に駆け上がり 遠き空に澄み渡る。 …
琥珀色した半透明の悲しみが 深紅の海に溶け合い、
夏の日差しが通り過ぎ、 鼓動は激しさを失い 若い男女は意…
八月の熱い砂は冷たく僕の魂を焦がし 貧困の片隅で頭をもたげる 異端の祈りの様に 忍耐の刹那と哀願の憐れみに 真理を垣間見る 忘却の果てに彷徨う哀れな魂は 夕暮れ時の不毛な地の上を舞い 人間…
気怠い昼下がり 街を行き交う群像に 銀色の髪を曝し、贖罪を乞う老婆に 僕の孤独は癒される。 其れはまるで、鏤刻の日々を 懐かしむ同志の様な惨めさで残酷な残像だけが、 脳裏に浮かんでは消えてゆく。 銀色の髪は、まるでひとかけらの純情を惜しむ、若い男女の様に無言を貫き<…
嘆きの壁の向こうに彼の苦悩を見た。 彼の周りには聖なる殉教者としての 噂が 絶えないが、彼の苦悩の本質は 其処にある。 彼は常に白い影に怯え 弱者の道徳の壁をすり抜けた。 手のひらにさえ、余る程の手グセの 悪さを彼は愛さずにいられなかった。 上品な詩人や哲学者には、自然の巧妙な罠の前で、己の無知を露呈した。 自然の恩恵…
不健康な生活者の頭上に 不健康な夏の太陽が容赦無く降り注ぎ 慈愛に満ちた光が僕の背中に 欺瞞と矛盾に満ちた陰影を宿す頃 現実の壁は一瞬で消え去り 感覚は退屈な日常を拒絶し、 遠い彼岸へと誘った。 其処は、何処か懐かしい様な 暖かな光に包まれた牧歌的な世界 地上の陰影も届かな…
冬の夕暮れ時 薄暗い闇が窓を射す 僕は余りの寒さから 白い蝋燭に火を灯す 蝋燭の灯りは 薄暗い部屋を 仄かに照らし出し 懐か…
不条理に凍りつく 傀儡の涙が 蒼き血潮に変わる時 哀しみの戸張は 幕を降ろし 地上は大いなる歓喜に 包まれ 太陽は追憶の彼方へ 消え失せ 黒い雨が 優しく大地を潤し 墓穴は掘られる 年老いた者も 若き者も 死は、皮肉にも平等に受け入れる
花は静かに散った 冷たい冬の夜 花は静かに散った 走り書きの言葉を 残して 青い月の光に 見守られ 花は静かに散った 花の言葉は虚しく 遠き夜空に浮かんで 消えた 行き過ぎる群像に 無言を貫いて 花は静かに散った 群像の甲高い 笑い声だけが …
「ブログリーダー」を活用して、斉藤勝也さんをフォローしませんか?