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コトバの試し斬り=(どうぶつ番外物語) https://blog.goo.ne.jp/s1504

斬新な切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設17年目に入りました。

自然と共生しながら、生きてきました。 ここでは4,000字(原稿用紙10枚)程度の短い作品を発表します。 <超短編シリーズ>として、発表中のものもありますが、むかし詩を書いていたこともあり、コトバに対する思い入れは人一倍つよいとおもいます。

正宗の妖刀
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2010/09/26

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  • ポエム369 『真綿色のシクラメン』

    繭玉(画像はウィキペディア)より真綿って見たことありますか真綿色したシクラメンほどいとしいものはない、と小椋佳が詞にしたあの真綿です真綿は蚕が作る繭玉のうち生糸にできない品質のものを苛性ソーダなどで処理し水洗いの後繭の繊維を伸ばして重ねたものです色はやや黄色みが乗った白とでも言いましょうか真珠の色に近いかもしれません綿花の白と違って動物性の共通性があるようですむかし近所のおばあさんが縁側の廊下に座って繭から糸を紡いでいましたあれは輸出されていた生糸です絹布に織られて貴婦人のドレスなどになりました真綿は布団の四隅などで木綿の移動防止に張られました家族の防寒着である綿入れなどにも真綿のチャンチャンコは温かいです脱いでおくと猫に占領されます真綿色のシクラメンは素朴で愛しさを感じます小椋佳の詞は古風ですなぜか真綿...ポエム369『真綿色のシクラメン』

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(8)

    キリキリシャン今年こそ結婚をと誓いあった矢先に、久美の祖母が亡くなった。何年かぶりの寒波に見舞われた二月半ば、一週間ほど臥せったあと入院して三日目に還らぬ人となった。最期は呼吸困難に陥り、正視できなかったと久美が涙ぐんだ。医師が示す肺のレントゲン写真は、壊死した細胞の墓場と化していた。酸素吸入でも軽減できない肺炎の苦しみが、久美の話から想像できた。「ごめんなさい、つい取り乱してしまって」久美が腫れた瞼を上げた。「・・・・おばあちゃまから、見苦しい様子をお見せしないようにと、きつく言われていたのに」睫毛の先で水滴が光った。光の源は霊安室の蛍光灯である。八畳ほどの畳敷きの部屋に、膝元を温める電気ストーブが置かれ、細長い組み立て式の机をはさんで久美と対している。赤く熱したニクロム線の周囲にだけ、温度を上げた空気...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(8)

  • ポエム368 『トマートー』

    我が家の隣人の外国人が何を思ったか9月頃トマトの種を播いた市場ではそろそろ品薄になる時期で露地栽培のトマトは撤収の最中だろうちょっと外人さん今ごろ種からというのは遅過ぎませんか言葉が出てこないので胸の内だけの思いであるところが何週間か過ぎるとトマトの種がビッシリと芽吹く早く間引いてあげないと苗が息できないよやきもきして見ていると競うように成長する強い苗木はどんどん伸びる弱いやつは地に這いつくばってそれでも生きるまさかと思ううちに花が咲き10月には実がなったさすがに赤くはならないがかなり大粒だ11月に入ると青い実がカラスの標的になった大きい実から咥えて近くの路上はトマトの残骸だらけう~ん、トマートーは逞しい南米の荒れ地で鍛えられてきたルーツに思いをはせる2023年もいろいろのことがあったがトマートーのように...ポエム368『トマートー』

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(7)

    草津にてなぜ、そんな気になったのだろう。湯もみを見ようなどという気に・・・・。湯畑をひとめぐりしたとき、右手の古びた小屋から入場開始を告げるアナウンスがあり、鼻にかかった案内嬢の呼び込みに好奇心をくすぐられたという面はたしかにあった。吉村は、祭りや見世物に人一倍の興味を持っていた。ただ、人ごみの隙間に仄見える影のようなものを意識する癖があって、子供のころから手放しで騒ぐといったことができない性質であった。このときも、チケット売り場を前に気持ちを決めかねていたのだが、「せっかく来たのだから・・・・」と仲間の佐々木に勧められて、やっとその気になったのだった。「行こうよ」「そうだね、入ってみようか」佐々木のことばを引き取って、吉村は横の二人に声をかけた。だが、八田も間宮も気乗り薄で、何でそんなものを観る気になっ...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(7)

  • 紙上『大喜利』(42〉

    〇「とうとう東京地検の強制捜査が入ったな」「久しぶりに特捜が本気を出しましたよ」〇「安倍派だけかと思ったら二階派もやられたぞ」「アベの陰に隠れてうまくやっていたのにね」〇「屋上屋を重ねるというのはこのことだな」「土台がしっかりしてないのに無理に建て増ししたからですか」〇「ついこの前までは最大派閥でキングメーカーだったから倍安心(安倍〉して乗っかっていたんだろう」「どうもそのようで」〇「どっちにしろ国民不在で政界地図は殺伐つとしているな」「窮地にあった総理の岸田派が清潔そうに見えますものね」〇「おい、山本由伸のドジャース入団が決まったらしいぞ」「クリスマスと正月がいっぺんに来たような話ですね」〇「日本製鉄のUSスチール買収はどうなるんだ」「バイデン大統領がどう判断するかですね」〇「いくら同盟国でもエンパイア...紙上『大喜利』(42〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(6〉

    飛ぶ四月二十日の逓信記念日に永年勤続を表彰された課長代理が、問われるまま苦労話を披露した。報告がてら職場巡りをしている最中だった。「勤続四十年とは驚きました。いろんなことがあったんでしょうね」水を向けられると、もう止まらない様子だった。「当時はね、臨時補充員という身分で入って、一年間じっくりと勤務態度を見られたもんだ。まあ見習い期間だから、必死に働いたなあ。・・・・きみらのように採用されてすぐ公務員になれるわけじゃない。郵政事務官なんて、わしらから見れば夢みたいな話なんだよ」「そうですか。・・・・いまは誰でも事務官ですから、ありがたみは薄いですがね」「給料だって、半月ごとの支払いさね。一遍に渡すと毎月晦日に足りなくなるから、やり繰りし易いようにという親心だったんだろうけど」「へえ、堪らないスね。初めて聞き...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(6〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(5〉

    日々是好日マリオン・クロックの前は、人ごみでごった返していた。有楽町駅から流れてくるJR利用客と、真近の地下鉄銀座駅から湧き出てくる乗客が一緒になって広場にあふれていた。久美はこの場所なら待ち合わせに最適と考えたのだろうが、吉村は人出の多さに不安を感じていた。待ち合わせ時刻の十一時までに、久美の姿を見つけることができるだろうか。吉村は車道と歩道を隔てる金属フェンスに寄りかかって、伸び上がるように久美を捜した。折りしもビルの壁面に設置された大時計がせり上がり、小人の音楽隊がキラキラとメロディーを奏でながら正時を告げはじめた。西欧仕込みのカラクリが、この時刻を待って集まってきた人びとの期待に応えて、ひとしきり夢の世界を紡ぎだしてみせた。これまでに幾度も装いを変えた広場は、人と人との出会いをたくさん見てきた。名...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(5〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(4〕

    逃げる朝から霙もようの天候になっていた。ここ数年暖冬が続いていて今年も例外ではなかったが、ときおり寒い日がやってきて人々をあわてさせた。吉村は朝一番の速達を配達し終えて、次の便に備えていた。濡れた合羽は腰高の丸椅子にかけてある。室内の暖房によって少しずつ乾きはじめていたが、床に滴った雫がその染みを拡げていた。窓外に目を転じると、近くを通る首都高速道路の入口がスキーのジャンプ台のようにスロープを描いていた。今でこそ慣れてしまったが、大きな窓ガラスに切り取られた都会の風景は、当初吉村に戸惑いと苛立ちをもたらした。八代の海と田園が奏でる柔らかな音色に育てられてきた男にとって、無機質の展示物は夾雑物以外のなにものでもなかった。コトッと音がして、ビル街を担当する佐藤が席を立っていった。隣接する郵便課での速達便の区分...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(4〕

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(3〉

    舟艇暮色十月のある一日、吉村は休みをどのように過ごそうかと迷ったあげく、スポーツ新聞に載っていたレース・ガイドに誘われて多摩川競艇に出かけることにした。山男の彼とギャンブルの間に、親和するものがあるようには思えなかった。しかし相性はともかく、彼自身は遥か以前から賭け事に惹かれる自分の性質に気付いていた。「おれだって、破れたり崩れたりすることはあるよ・・・・」金銭だけの賭博ではなく、人生の要所要所で出合う岐路を前に、運命を賭けてみたい衝動に駆られることがある。吉村はかねがね、ギャンブルが形を変えた祈りのようなものだと信じているところがあった。祖母の手で育てられてきた環境が、いままでは彼に堅実な生き方を選ばせてきた。誠実で礼儀正しい人間性に、嘘偽りがあるわけでもない。しかし、平穏な日常に仕掛けられた危険な罠の...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(3〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(2〉

    紫陽花郵便配達中の職員が犬に咬まれたというので、集配課は大騒ぎになっていた。広いフロアの窓に面した課長席を取り巻いて、三人の男たちが声高に話し合っている。真ん中で受話器に向かって頭を下げているのは、定年間近の課長である。断片的に聴こえるやり取りから察すると、総務課長の指示を仰いでいるらしかった。吉村はその日二度目の速達を配達して、ちょうど戻ったところだった。次の便まで若干の手空き時間があり、待機しながら深田久弥の『日本百名山』を読みつごうと心積もりしていた。速達を扱う部屋は書留郵便物も授受することから、一般の集配室とは区切られている。吉村は騒動のゆくえを横目に窺いながら、離れた通路を大股に通り過ぎようとした。「吉村くん、ちょっと」課長席のあたりから春風のような声が流れてきた。あらためて見直すと、ズボンの上...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(2〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(1)

    黄金の紐「郵便屋さん、そりゃないよ」遠くから凛とした声がひびいた。春とはいっても、まだ寒気が緩むまえの朝十時である。その滞った空気を貫いて、容赦をしない女の声がぴしりと飛んできた。吉村はおもわず歩みを止めて、からだを固くした。二十センチほどの細い銀線が背後で煌き、彼の後頭部を光のように射貫いていったのを、はっきりと意識した。(なるほど、神様の目は誤魔化せないな)それが女の声だとわかっていても、あまりにも間がいいものだから、日常を超えたところの存在に想いが行ったのだ。すべて見通されてしまった仕方なさが、逆に落ち着きをもたらした。『天網恢恢疎にして漏らさず』・・・・心のうちで呟きながら、ゆっくりと後ろを振り向いた。かなり遠くからの声と思っていたのに、足早に近付く女はもう吉村から数歩のところに来ていた。女は小豆...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(1)

  • 詩情『大喜利』(41)

    〇「国民をなめ切ってるな」「ご隠居、ご立腹ですね、もしかして政治資金のことですか」」〇「ノルマ以上にパー券売った分はポッポに入れてもいいことにしたんだと」「もともと緩い政治資金規正法が独り歩きを始めたみたいですね」〇「暗部派の幹部3人はそれぞれ1年で1000万円のキックバックを受けていたらしいな」「通算1億円以上ですからね、甘い汁とはこのことでしょうか」〇「有意見者はどう反応するんだ」「有権者のことですね、さすがに呆れたとは思うんですが特捜部が立件しなけりゃ少し票を減らす程度でしょう」〇「ウィンターミーティングが終わったら即大谷の移籍先が発表されると思ったがまだ待たせるようだな」「昨日はドジャースに決まったと発表されませんでした?」〇「メディアもスクープ合戦だな、見込みでぶち上げるんだろう」「ご隠居も、け...詩情『大喜利』(41)

  • ポエム367 『地球は借り物』

    いつも拝見するブログの記事の中に地球は子孫からの借り物です・・という石碑の写真が掲載されていたふと思い出したが誰の言葉かわからない地球を汚さずに子孫に渡すようにという願いだが大型台風や洪水・山火事など地球を汚した罰をすでに受けている気候変動と化石燃料に関係性はない御用学者の説を持ち出したトランプをグレタさんが睨みつけたわれらは過ぎ去った寸劇を思い出すが飛行機にも乗るし化石燃料の恩恵にもあずかる昔の耐乏生活には戻れないだろう過剰な生産とコマーシャルと消費のサイクル資本主義が作り出した悪しき生活習慣だが誰もそれらを手放そうとはしない地球の肺といわれる熱帯雨林は一年で日本のひとつの県ほどの面積が焼失する肺が少しずつ壊れていくのだそうだ火星に移住した一部の人間が変わり果てた地球を眺めながらかつて地球は青かった・・...ポエム367『地球は借り物』

  • 川柳復活12 『じじいの時事ばなし』

    〇さあCOP28(首脳級閣僚会議〉メンツそろって成果出た?(化石燃料使用削減については具体策決まらず〉〇COP28再生可能エネルギー発電量3倍に(2030年までに110か国誓約〉〇温室効果ガス排出売り買いしても効果なし(その場しのぎの削減〉〇まだ間に合う悲痛な叫びも馬耳東言(グレタさんの声も届かなかった〉〇愚低レス(グテーレス国連事務総長)と侮る世界の地球レス(結局人類は焦熱地獄に苦しむ〉川柳復活12『じじいの時事ばなし』

  • 川柳復活11 『じじいの時事ばなし』

    〇つつがなく過ぎし日ガザは筒だらけ(日本は平和なの?)〇逃げ惑うドッジボールの敵味方(ハマスはイスラエルの攻撃で一方的に逃げ惑うのか)〇阪神はアレ?で頂点(日本シリーズ)大賞(流行語)も〇岡田(監督)さん掛布・バースをしのぐ締め(大ホームラン)〇大相撲弱い大関の生き残り(大関・霧島が面目保つ)〇熱海富士あたふた突っかけ自滅する(対霧島の事実上の優勝戦で)〇錦木は負け越し(7勝8敗)構えはいいけれど(役力士への再浮上に期待)〇いよいよだ大谷翔平残留か(エンゼルスは居心地いいんだろうな)〇ヌートバー見ない日はなしCM王(野球もガンバレ〉〇由伸(山本〉は絶対エースと期待され(大リーグも研究してくるぞ)川柳復活11『じじいの時事ばなし』

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(15) 最終回

    (双頭の蛇)師走も押し詰まった頃、調査を依頼しておいた滝口から耳寄りな報告があった。<年明けに、村上紀久子と電力界の黒幕が金沢の主計町で会う>という情報だった。経済団体の賀詞交歓会は、例年通り13日頃に行われるらしいが、老人が大手町へ行くことはなく、もっぱら裏街道が似合っていると承知している。陽のあたる場所より、芸者の寮を改装した村上紀久子の住まいに客人を呼んだほうがよほど実質的だ。そのために、前以て資金を渡し隠れ家を買わせておいたのだ。この女、老人が原子力ムラで力を蓄えていった時代に、山陰のある温泉旅館に呼んだ田舎芸者に過ぎなかったが、巧まずに人の心に入り込む才に恵まれていた。たぶらかすとか、くすぐるとかいう類のわざとらしい技ではない。むしろ他人に尽くすひたむきさのような心に、相手は知らず知らず引き込ま...思い出の連載小説『折れたブレード』(15)最終回

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