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コトバの試し斬り=(どうぶつ番外物語) https://blog.goo.ne.jp/s1504

斬新な切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設17年目に入りました。

自然と共生しながら、生きてきました。 ここでは4,000字(原稿用紙10枚)程度の短い作品を発表します。 <超短編シリーズ>として、発表中のものもありますが、むかし詩を書いていたこともあり、コトバに対する思い入れは人一倍つよいとおもいます。

正宗の妖刀
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2010/09/26

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  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(14〉 あと1回で最終

    (アサリの味噌汁)正孝は、滝口に連絡するつもりが、間違って艶子の電話番号を押していることに気づいた。どういうことだろうと、自分のとった行動を訝しむ。選りに選って、なぜ艶子の電話に?すでに、この世に存在しない女性の持ち物。警察に押収され、現在どこにあるかもわからないケータイが、意思を持ったかのように呼ぶのだろうか。正孝は、艶子が何かを訴えかけているような気がした。天高く澄み渡った空を、幽かな風が移動している。通じなくなった回線の代わりに、何かが空を駆けている。(艶子・・・・)熱い思いが胸元をよぎる。艶子を殺した犯人は、出雲の警察に身柄を移動されたという。山根刑事は、動かぬ証拠を固めて堂島を逮捕したのだろうが、被害者も犯人もいなくなった東京には空虚だけが残った。正孝は、呆然としたまま辺りの風景を見回す。薫風社...思い出の連載小説『折れたブレード』(14〉あと1回で最終

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(13) あと2回で最終

    (そして神無月)堂島秀俊が殺人容疑で逮捕されたのは、朝の8時ごろ東京むさし野市の自宅マンションを出たところでだった。街路樹の葉が色づき始めた季節、きちんとスーツを着た三十代後半の男に、物陰から現れた私服刑事が3人擦り寄ったかと思うといきなり令状を示したのだ。自分の名前を呼ばれると、男は一瞬たじろぎ、「な、なんですか」と刑事の一人に声を荒らげて抵抗した。「福田艶子殺人容疑だ。詳しいことは所轄署で聞く。これから同行願いたい」未公開株をめぐる詐欺容疑での摘発には、堂島なりの対策を練っていた。福田艶子を利用したのは、ダイレクトに責任が及ばないようにするためである。しかし、殺人と聞いた途端に思考が停止し、頭の中が白んだように感じられた。そうした彼の表情を確認しながら、山根刑事が堂島の両手に手錠を掛けた。堂島は直ちに...思い出の連載小説『折れたブレード』(13)あと2回で最終

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(12) あと3回で最終

    (企みの交差点)思い出したくもないことだが、福島第一原子力発電所の過酷事故は、何年たっても伊能正孝の心を打ち震わす。安全をうたいながらメルトダウンにまで至った責任は本来誰かが負うべきものだが、実際には想定を超える大地震と津波を理由に言い逃れを繰り返してきた。原発を推進した政党と監督官庁は、政権を奪還するや当該電力会社を矢面に立たせつつ、当面の補償や運営の国家的バックアップ体制をとって、主体を曖昧にした。気が付けば、国民は何一つ責任のない事故に対して、復興特別税のような心情的に支持せざるを得ない施策のもと、いつの間にか責任を負わされた。この裏には、長年培われてきた官僚機構の狡猾な仕組みがある。「失われた年金」と呼ばれた、年金積立金の消失事件の幕引きがいい例だ。積極的に悪用した人物は既にこの世になく、シロアリ...思い出の連載小説『折れたブレード』(12)あと3回で最終

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(11)

    (巨魁の影)ホテルでの目覚めは快適だった。病院や役所をめぐった柏崎での一日は、気疲れの連続であった。一夜過ぎて、その時の疲れはほぼ解消していた。さすがに金沢は癒しの街だった。それもそのはず、伊能正孝の投宿したホテルは、緑の多い金沢城に近い場所にあって、空気の匂いも聴こえてくる物音も違っていた。彼がこれから訪ねようとする村上紀久子の転居先は、金沢市主計町となっている。フロントで市内の観光地図をもらい、ついでにここへ行きたいのだがと指で示すと、「ああ、カズエマチですね」と予想外の読み方で町名が告げられた。「ええ、主計町って、どんな雰囲気の場所ですか」正孝は、鸚鵡返しに目的の町名を口にし、市内のことならなんでも知っていそうな四十代のフロント係に質問した。男はカウンターから乗り出すようにして、主計町の成り立ちを説...思い出の連載小説『折れたブレード』(11)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(10)

    (善悪の彼岸)伊能正孝は柏崎市役所の市民課におもむき、村上紀久子の転居先を調べるべく住民票の交付を申請した。窓口職員は、申請者である正孝の住所を一瞥して、東京の法人が何かの調査のために来たのかと勘違いしたようだ。「お身内の方ではないですよね?」型どおりに質問しておいて、「・・・・弁護士さんか業者さんでしょうか」と質問を切り替えてきた。そうじゃないと答えると、「どんなことで必要なのでしょうか」と、意外そうな面持ちで追及した。「実は、村上紀久子さんのご主人の娘さんが亡くなられまして、そのことを入院中のお父様にお伝えしようと東京から来たんですよ」ところが、総合医療センターまで行ったところ、そのお父様まで亡くなったと言われ、途方に暮れているのだと訴えた。「唯一のお身内は村上紀久子さんしか居られないので、先ほど柳橋...思い出の連載小説『折れたブレード』(10)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(9)

    (逃げ水)艶子と父親が並んで写っている写真を見た夜、正孝は三番町の事務所で仮眠をとり朝を迎えた。調査会社からもたらされた資料は、もう少し精査する必要があったが、正孝の関心はまだ見ぬ村上紀久子の存在に移っていた。艶子に送った彼女の礼状から、柏崎市にある老人福祉関係の病院に入っている父親を見舞ったことが判明した。松江で不祥事を起こした「おやじさま」が、妻と子供を残して失踪したのが約20年前、それ以来傍で支えてきたのが村上紀久子と思われた。安来節の師匠であった芸者が彼女で、無一文で放り出された「おやじさま」を長年支え続けたものと推定できる。(彼女に会ってみたい・・・・)艶子と父親の写真を撮ったと思われる人物と、直接言葉を交わしてみたい。撮影者の姿こそ見えないが、被写体に向ける親しみの感情が、波動となって伝わって...思い出の連載小説『折れたブレード』(9)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(8)

    (発光する神経)正孝は、滝口から渡された写真の中に、艶子が見慣れない男と写っている一枚を発見した。男はかなり年老いた感じで、ベッドのクッションに寄りかかるように坐っていた。その横に立って微笑んでいるのが、艶子だった。春先なのか、萌黄色のセーターを着ている。ベッドの傍らには、タオルや下着を収納できる縦長のキャビネットが置かれている。天板の上には、水差しと湯呑、ティッシュボックスが並んでいる。採光の具合からも、その場所が病院の一室であることが覗える。病室。・・・・しかも老人とベッドの凹み具合に、長期に馴染んだ親しみのような関係性が感じられる。(見つけたんだな、父親を・・・・)正孝は、そう直感した。艶子が幼いうちに失踪した父親と、二十年近い空白を挟んで再会したのだ。事業で失敗し、その後も不始末を重ねた父親は、本...思い出の連載小説『折れたブレード』(8)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(7)

    (欲と二人連れ)艶子の変死事件に関する新聞報道は、伊能正孝に大きな衝撃を与えた。松江に帰省中の出来事ということで、半分はプライベートな要因を想定していたが、その考えが楽観的すぎたことを思い知らされた。やはり、今回の事件は正孝の足元から起こっている。正孝の気づかないところで、何かが動いていたのだ。艶子の尋常でない死に直面して、正孝も初めてそのことを確信した。迂闊といえば言えた。急ぎ帰って、艶子の身辺を調べなければならない。事務所の艶子の事務机には、これといった手がかりは残されていなかった。だが、艶子が住居にしている九段下のマンションには、何かが残されているかもしれない。正孝としては、住居費を充分に賄える金額を住宅手当の形で支給していたが、賃貸マンションの借主はあくまでも艶子である。さすがに正孝名義にするよう...思い出の連載小説『折れたブレード』(7)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(6)

    (ミクロの空気砲)その晩、伊能正孝は松江市内の温泉街に宿を取り、ホテルの一室でこんがらがっている現在の状況を分析した。まず明らかにしなければならないのは、艶子の死因である。弥山の山中で発見された艶子の遺体は、当初、服薬自殺と思われていたのだが、現場周辺の状況から警察も違和感を抱いたらしい。そして、自殺と事件の両面から捜査を進めた。司法解剖に回したのは、そのあたりの事情を反映してのことだろう。警察は、詳細な所見を発表していないが、遺体をすでに家族に返していることから、何かを突き止めた可能性がある。疲れきった表情の母親の様子から、よからぬ結果を告げられたのではないかとの疑いも頭を掠めた。翌日、正孝は出雲駅に近い所轄署をめざした。窓口カウンターで刑事課の山根に面会を求めると、いま会議中なので終わり次第伝えておく...思い出の連載小説『折れたブレード』(6)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(5)

    (逆縁)正孝は、空港ターミナルのタクシー乗り場に向かい、さてどうしたものかと迷いを感じていた。艶子の実家をめざして来たものの、先に訪問の了解を得た方がいいか、近くまで行って様子を見た方がいいのか悩んでいたのだ。ショルダーバッグを肩にかけ、一方の手に観光地図を持ったまま歩いていると、待機するタクシーの扉がいきなり開いた。ハッとしたが、すでに運転手が身をよじって正孝の目を捉えていた。誘われるように後部座席に乗り込むと、中年の男が甲高い調子で「お客さん、どちらへ行きなさいますか」と声をかけてきた。「うーん、とりあえず一畑電車の最寄駅へ・・・・」体を押し込んだ拍子に、手にしていた地図が目に入ったのだった。「ばたでんですか。何駅へ着けましょうか」「そうか、畑電というのですか。ここから一番近い駅でいいんだが、運転手さ...思い出の連載小説『折れたブレード』(5)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(4)

    (消えた風紋)市民会館で目にした江戸手妻師の印象は、翌日になっても正孝の脳裏から離れなかった。昨夜のネオザール社との電話では、堂島という男の風貌をしっかりと確認することはできなかったが、写真などでもう一度突き合わせる必要を感じていた。そのためには、パンフレットで目にした手妻師一門の弟子の舞台姿を探すことだ。調べてみると、艶子の母親が似ているといった公演時の男のプロフィールが見つかった。そこに載っていた画像を拡大して、顔まで鮮明な全身像を複写することができた。(よし、これではっきりする)謎の一つが解ければ、艶子の死に関わる闇に少しは光が射すはずだ。正孝は、再びネオザール社に電話を入れ、画像をメールに添付して送るから、堂島という人物に似ているかどうか確認してほしいと頼んだ。すると、それを見た担当者から、折り返...思い出の連載小説『折れたブレード』(4)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(3)

    (風車の仕掛け)正孝は閉館間際の市民会館に駆けつけ、広報担当の職員に過去の公演について情報を求めた。「公演の全てですか」職員はシャツの袖をたくしあげて、困惑したように正孝を見た。「いや、何年か前に江戸手妻の出し物があったかどうか、それを知りたいのですが」「ああ、それなら覚えていますよ。配布したパンフレットがファイルされていると思いますが」そう言って、背後のロッカーから束ねたファイル帳を探し出してくれた。「これがそうです。・・・・ところで、この公演について何かお調べでも?」「いやいや、ある方から評判を聞き、わたしも一度観てみたいと思いましてね」正孝は如才なく答えながら、出雲で公演した男の舞台姿を確認した。「はあ、この方ですか。若いのになかなかの押し出しですね。・・・・うーん、これは格好いい」「そうでしょう。...思い出の連載小説『折れたブレード』(3)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(2)

    (手妻師)翌朝、伊能正孝は、7時10分発のJAL便で、羽田から出雲縁結び空港へ向かった。約1時間30分のフライトで、宍道湖に突き出た滑走路に着陸すると、到着ロビーの端に空港派出所と表示された一角を見つけそこに立ち寄った。地元警察の管轄だろうから、ここで聞けばある程度の見当を付けられると思ったのだ。「出雲署に山根さんという方はおられますかな」「さあ、合併以来大所帯になりまして・・・・。本署に電話してみましょうか」「いや、それはご厄介でしょう。直接こちらから連絡してみますよ」「番号、わかっているのですか」「へえ」どことなく要領を得ない痩躯の老人を、係官が胡散臭げに見上げた。正孝は、たしかに自分でも怪しげだと思いながら、頭を下げてターミナルビルのエレベーターで三階に向かった。うまい具合に、簡単な食事が摂れそうな...思い出の連載小説『折れたブレード』(2)

  • 思い出の連載小説『折れたたブレード』(1)

    (風神雷神)京都での自然エネルギー関連のシンポジウムを終え、伊能正孝は東京の事務所に戻っていた。彼の事務所は、千鳥が淵を臨む三番町のビルの二階にあった。近くにはエドモントホテルがあり、事務所では差し障りがある面会などの時、ホテルの一室を使うことが多かった。永田町の先生方は、概ね国会周辺に事務所を構えているので、交渉事が生じた場合ここからならスピーディーに移動できる。また、資源エネルギー庁をはじめとする役所にも、しばしば情報の確認に行く必要があった。その点、正孝の拠点とする場所は、中枢にある人びとと付かず離れずの関係を保つための程よい距離にあったのである。正孝は京都から帰ったあと、関わりを持つ大学や企業の研究施設に自ら電話して、わが国の再生可能エネルギーを取り巻く環境について情報交換したところだった。いずれ...思い出の連載小説『折れたたブレード』(1)

  • 川柳復活10 『じじいの時事ばなし』

    〇日大は相撲のあとは元検事(林真理子理事長は相撲部出身の元理事長の逮捕で後任に推されたが今度は澤田副学長にてこずっている)〇中国(習近平)はピンチ背(対米強硬姿勢)に腹(経済成長率鈍化)変えられず(両国の首脳会談浮上か)〇人質は利息取ったら放すもの(ハマスはイスラエル国籍以外の一部解放を示唆したが)〇記録的円安進みただ悲鳴(日銀は打つ手なし)〇それなのに株価は上がる摩訶不思議(外国人投資家の跳梁跋扈)川柳復活10『じじいの時事ばなし』

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