「蛸壺やはかなき夢を夏の月」この句は「笈の小文」からの選定で元禄元年に行った芭蕉の小紀行文には若さというか色気が感じられる。わび・さびに慣れた目にはこの句をはじめとする諸作が眩しく映る。とくに蛸壺の句が好きだ。現代の文芸作品と比べても優れている。芭蕉は若い時も老境になっても色あせない。才能が頭抜けている。6月18日、明け方になっても蒸し暑い。ぼくはこれから眠るから蛸と一緒に「はかなき夢」でも見よう。芭蕉の名句㊱『はかなき夢を夏の月』
斬新な切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設17年目に入りました。
自然と共生しながら、生きてきました。 ここでは4,000字(原稿用紙10枚)程度の短い作品を発表します。 <超短編シリーズ>として、発表中のものもありますが、むかし詩を書いていたこともあり、コトバに対する思い入れは人一倍つよいとおもいます。
(アサリの味噌汁)正孝は、滝口に連絡するつもりが、間違って艶子の電話番号を押していることに気づいた。どういうことだろうと、自分のとった行動を訝しむ。選りに選って、なぜ艶子の電話に?すでに、この世に存在しない女性の持ち物。警察に押収され、現在どこにあるかもわからないケータイが、意思を持ったかのように呼ぶのだろうか。正孝は、艶子が何かを訴えかけているような気がした。天高く澄み渡った空を、幽かな風が移動している。通じなくなった回線の代わりに、何かが空を駆けている。(艶子・・・・)熱い思いが胸元をよぎる。艶子を殺した犯人は、出雲の警察に身柄を移動されたという。山根刑事は、動かぬ証拠を固めて堂島を逮捕したのだろうが、被害者も犯人もいなくなった東京には空虚だけが残った。正孝は、呆然としたまま辺りの風景を見回す。薫風社...思い出の連載小説『折れたブレード』(14〉あと1回で最終
(そして神無月)堂島秀俊が殺人容疑で逮捕されたのは、朝の8時ごろ東京むさし野市の自宅マンションを出たところでだった。街路樹の葉が色づき始めた季節、きちんとスーツを着た三十代後半の男に、物陰から現れた私服刑事が3人擦り寄ったかと思うといきなり令状を示したのだ。自分の名前を呼ばれると、男は一瞬たじろぎ、「な、なんですか」と刑事の一人に声を荒らげて抵抗した。「福田艶子殺人容疑だ。詳しいことは所轄署で聞く。これから同行願いたい」未公開株をめぐる詐欺容疑での摘発には、堂島なりの対策を練っていた。福田艶子を利用したのは、ダイレクトに責任が及ばないようにするためである。しかし、殺人と聞いた途端に思考が停止し、頭の中が白んだように感じられた。そうした彼の表情を確認しながら、山根刑事が堂島の両手に手錠を掛けた。堂島は直ちに...思い出の連載小説『折れたブレード』(13)あと2回で最終
(企みの交差点)思い出したくもないことだが、福島第一原子力発電所の過酷事故は、何年たっても伊能正孝の心を打ち震わす。安全をうたいながらメルトダウンにまで至った責任は本来誰かが負うべきものだが、実際には想定を超える大地震と津波を理由に言い逃れを繰り返してきた。原発を推進した政党と監督官庁は、政権を奪還するや当該電力会社を矢面に立たせつつ、当面の補償や運営の国家的バックアップ体制をとって、主体を曖昧にした。気が付けば、国民は何一つ責任のない事故に対して、復興特別税のような心情的に支持せざるを得ない施策のもと、いつの間にか責任を負わされた。この裏には、長年培われてきた官僚機構の狡猾な仕組みがある。「失われた年金」と呼ばれた、年金積立金の消失事件の幕引きがいい例だ。積極的に悪用した人物は既にこの世になく、シロアリ...思い出の連載小説『折れたブレード』(12)あと3回で最終
(巨魁の影)ホテルでの目覚めは快適だった。病院や役所をめぐった柏崎での一日は、気疲れの連続であった。一夜過ぎて、その時の疲れはほぼ解消していた。さすがに金沢は癒しの街だった。それもそのはず、伊能正孝の投宿したホテルは、緑の多い金沢城に近い場所にあって、空気の匂いも聴こえてくる物音も違っていた。彼がこれから訪ねようとする村上紀久子の転居先は、金沢市主計町となっている。フロントで市内の観光地図をもらい、ついでにここへ行きたいのだがと指で示すと、「ああ、カズエマチですね」と予想外の読み方で町名が告げられた。「ええ、主計町って、どんな雰囲気の場所ですか」正孝は、鸚鵡返しに目的の町名を口にし、市内のことならなんでも知っていそうな四十代のフロント係に質問した。男はカウンターから乗り出すようにして、主計町の成り立ちを説...思い出の連載小説『折れたブレード』(11)
(善悪の彼岸)伊能正孝は柏崎市役所の市民課におもむき、村上紀久子の転居先を調べるべく住民票の交付を申請した。窓口職員は、申請者である正孝の住所を一瞥して、東京の法人が何かの調査のために来たのかと勘違いしたようだ。「お身内の方ではないですよね?」型どおりに質問しておいて、「・・・・弁護士さんか業者さんでしょうか」と質問を切り替えてきた。そうじゃないと答えると、「どんなことで必要なのでしょうか」と、意外そうな面持ちで追及した。「実は、村上紀久子さんのご主人の娘さんが亡くなられまして、そのことを入院中のお父様にお伝えしようと東京から来たんですよ」ところが、総合医療センターまで行ったところ、そのお父様まで亡くなったと言われ、途方に暮れているのだと訴えた。「唯一のお身内は村上紀久子さんしか居られないので、先ほど柳橋...思い出の連載小説『折れたブレード』(10)
(逃げ水)艶子と父親が並んで写っている写真を見た夜、正孝は三番町の事務所で仮眠をとり朝を迎えた。調査会社からもたらされた資料は、もう少し精査する必要があったが、正孝の関心はまだ見ぬ村上紀久子の存在に移っていた。艶子に送った彼女の礼状から、柏崎市にある老人福祉関係の病院に入っている父親を見舞ったことが判明した。松江で不祥事を起こした「おやじさま」が、妻と子供を残して失踪したのが約20年前、それ以来傍で支えてきたのが村上紀久子と思われた。安来節の師匠であった芸者が彼女で、無一文で放り出された「おやじさま」を長年支え続けたものと推定できる。(彼女に会ってみたい・・・・)艶子と父親の写真を撮ったと思われる人物と、直接言葉を交わしてみたい。撮影者の姿こそ見えないが、被写体に向ける親しみの感情が、波動となって伝わって...思い出の連載小説『折れたブレード』(9)
(発光する神経)正孝は、滝口から渡された写真の中に、艶子が見慣れない男と写っている一枚を発見した。男はかなり年老いた感じで、ベッドのクッションに寄りかかるように坐っていた。その横に立って微笑んでいるのが、艶子だった。春先なのか、萌黄色のセーターを着ている。ベッドの傍らには、タオルや下着を収納できる縦長のキャビネットが置かれている。天板の上には、水差しと湯呑、ティッシュボックスが並んでいる。採光の具合からも、その場所が病院の一室であることが覗える。病室。・・・・しかも老人とベッドの凹み具合に、長期に馴染んだ親しみのような関係性が感じられる。(見つけたんだな、父親を・・・・)正孝は、そう直感した。艶子が幼いうちに失踪した父親と、二十年近い空白を挟んで再会したのだ。事業で失敗し、その後も不始末を重ねた父親は、本...思い出の連載小説『折れたブレード』(8)
(欲と二人連れ)艶子の変死事件に関する新聞報道は、伊能正孝に大きな衝撃を与えた。松江に帰省中の出来事ということで、半分はプライベートな要因を想定していたが、その考えが楽観的すぎたことを思い知らされた。やはり、今回の事件は正孝の足元から起こっている。正孝の気づかないところで、何かが動いていたのだ。艶子の尋常でない死に直面して、正孝も初めてそのことを確信した。迂闊といえば言えた。急ぎ帰って、艶子の身辺を調べなければならない。事務所の艶子の事務机には、これといった手がかりは残されていなかった。だが、艶子が住居にしている九段下のマンションには、何かが残されているかもしれない。正孝としては、住居費を充分に賄える金額を住宅手当の形で支給していたが、賃貸マンションの借主はあくまでも艶子である。さすがに正孝名義にするよう...思い出の連載小説『折れたブレード』(7)
(ミクロの空気砲)その晩、伊能正孝は松江市内の温泉街に宿を取り、ホテルの一室でこんがらがっている現在の状況を分析した。まず明らかにしなければならないのは、艶子の死因である。弥山の山中で発見された艶子の遺体は、当初、服薬自殺と思われていたのだが、現場周辺の状況から警察も違和感を抱いたらしい。そして、自殺と事件の両面から捜査を進めた。司法解剖に回したのは、そのあたりの事情を反映してのことだろう。警察は、詳細な所見を発表していないが、遺体をすでに家族に返していることから、何かを突き止めた可能性がある。疲れきった表情の母親の様子から、よからぬ結果を告げられたのではないかとの疑いも頭を掠めた。翌日、正孝は出雲駅に近い所轄署をめざした。窓口カウンターで刑事課の山根に面会を求めると、いま会議中なので終わり次第伝えておく...思い出の連載小説『折れたブレード』(6)
(逆縁)正孝は、空港ターミナルのタクシー乗り場に向かい、さてどうしたものかと迷いを感じていた。艶子の実家をめざして来たものの、先に訪問の了解を得た方がいいか、近くまで行って様子を見た方がいいのか悩んでいたのだ。ショルダーバッグを肩にかけ、一方の手に観光地図を持ったまま歩いていると、待機するタクシーの扉がいきなり開いた。ハッとしたが、すでに運転手が身をよじって正孝の目を捉えていた。誘われるように後部座席に乗り込むと、中年の男が甲高い調子で「お客さん、どちらへ行きなさいますか」と声をかけてきた。「うーん、とりあえず一畑電車の最寄駅へ・・・・」体を押し込んだ拍子に、手にしていた地図が目に入ったのだった。「ばたでんですか。何駅へ着けましょうか」「そうか、畑電というのですか。ここから一番近い駅でいいんだが、運転手さ...思い出の連載小説『折れたブレード』(5)
(消えた風紋)市民会館で目にした江戸手妻師の印象は、翌日になっても正孝の脳裏から離れなかった。昨夜のネオザール社との電話では、堂島という男の風貌をしっかりと確認することはできなかったが、写真などでもう一度突き合わせる必要を感じていた。そのためには、パンフレットで目にした手妻師一門の弟子の舞台姿を探すことだ。調べてみると、艶子の母親が似ているといった公演時の男のプロフィールが見つかった。そこに載っていた画像を拡大して、顔まで鮮明な全身像を複写することができた。(よし、これではっきりする)謎の一つが解ければ、艶子の死に関わる闇に少しは光が射すはずだ。正孝は、再びネオザール社に電話を入れ、画像をメールに添付して送るから、堂島という人物に似ているかどうか確認してほしいと頼んだ。すると、それを見た担当者から、折り返...思い出の連載小説『折れたブレード』(4)
(風車の仕掛け)正孝は閉館間際の市民会館に駆けつけ、広報担当の職員に過去の公演について情報を求めた。「公演の全てですか」職員はシャツの袖をたくしあげて、困惑したように正孝を見た。「いや、何年か前に江戸手妻の出し物があったかどうか、それを知りたいのですが」「ああ、それなら覚えていますよ。配布したパンフレットがファイルされていると思いますが」そう言って、背後のロッカーから束ねたファイル帳を探し出してくれた。「これがそうです。・・・・ところで、この公演について何かお調べでも?」「いやいや、ある方から評判を聞き、わたしも一度観てみたいと思いましてね」正孝は如才なく答えながら、出雲で公演した男の舞台姿を確認した。「はあ、この方ですか。若いのになかなかの押し出しですね。・・・・うーん、これは格好いい」「そうでしょう。...思い出の連載小説『折れたブレード』(3)
(手妻師)翌朝、伊能正孝は、7時10分発のJAL便で、羽田から出雲縁結び空港へ向かった。約1時間30分のフライトで、宍道湖に突き出た滑走路に着陸すると、到着ロビーの端に空港派出所と表示された一角を見つけそこに立ち寄った。地元警察の管轄だろうから、ここで聞けばある程度の見当を付けられると思ったのだ。「出雲署に山根さんという方はおられますかな」「さあ、合併以来大所帯になりまして・・・・。本署に電話してみましょうか」「いや、それはご厄介でしょう。直接こちらから連絡してみますよ」「番号、わかっているのですか」「へえ」どことなく要領を得ない痩躯の老人を、係官が胡散臭げに見上げた。正孝は、たしかに自分でも怪しげだと思いながら、頭を下げてターミナルビルのエレベーターで三階に向かった。うまい具合に、簡単な食事が摂れそうな...思い出の連載小説『折れたブレード』(2)
(風神雷神)京都での自然エネルギー関連のシンポジウムを終え、伊能正孝は東京の事務所に戻っていた。彼の事務所は、千鳥が淵を臨む三番町のビルの二階にあった。近くにはエドモントホテルがあり、事務所では差し障りがある面会などの時、ホテルの一室を使うことが多かった。永田町の先生方は、概ね国会周辺に事務所を構えているので、交渉事が生じた場合ここからならスピーディーに移動できる。また、資源エネルギー庁をはじめとする役所にも、しばしば情報の確認に行く必要があった。その点、正孝の拠点とする場所は、中枢にある人びとと付かず離れずの関係を保つための程よい距離にあったのである。正孝は京都から帰ったあと、関わりを持つ大学や企業の研究施設に自ら電話して、わが国の再生可能エネルギーを取り巻く環境について情報交換したところだった。いずれ...思い出の連載小説『折れたたブレード』(1)
〇日大は相撲のあとは元検事(林真理子理事長は相撲部出身の元理事長の逮捕で後任に推されたが今度は澤田副学長にてこずっている)〇中国(習近平)はピンチ背(対米強硬姿勢)に腹(経済成長率鈍化)変えられず(両国の首脳会談浮上か)〇人質は利息取ったら放すもの(ハマスはイスラエル国籍以外の一部解放を示唆したが)〇記録的円安進みただ悲鳴(日銀は打つ手なし)〇それなのに株価は上がる摩訶不思議(外国人投資家の跳梁跋扈)川柳復活10『じじいの時事ばなし』
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「蛸壺やはかなき夢を夏の月」この句は「笈の小文」からの選定で元禄元年に行った芭蕉の小紀行文には若さというか色気が感じられる。わび・さびに慣れた目にはこの句をはじめとする諸作が眩しく映る。とくに蛸壺の句が好きだ。現代の文芸作品と比べても優れている。芭蕉は若い時も老境になっても色あせない。才能が頭抜けている。6月18日、明け方になっても蒸し暑い。ぼくはこれから眠るから蛸と一緒に「はかなき夢」でも見よう。芭蕉の名句㊱『はかなき夢を夏の月』
月の裏側はわからないことばかりだ何年か前に中国がロケットを着地させたらしいがその後の様子は皆目わからないもしかしたすでに基地を作っていて秘密の地下壕に宇宙飛行士が住んでいるかもしれない太陽風や隕石に耐えながら暗闇の生活に慣れる訓練も月は地球を回る公転と自転の関係で地球の人にいつも良い顔を見せている三日月から満月まで風流の極みを提供して月にはかつて水が存在したらしい井戸掘りしなくても光さえあればプラントの中で野菜を栽培することもできるなのになんで月の裏側にこだわるのか月面裏側の地下シェルターの奥深くに会議室を設け核戦争後の地球支配を協議するつもりか1959年に初めて月の裏側を見たルナ3号も地球は青かったのボストーク1号もソ連だった習近平さんウラジーミル・プーチンさん仲良くしましょポエム413『月の裏側では』
「野を横に馬牽きむけよほととぎす」この句は「おくの細道」に載っている。この句が読まれた場所は、宇都宮から日光街道と分岐する奥州街道の拓けた場所らしい。〈白河の関へ向かう直前の作〉野の端っこからホトトギスの鳴き声が聞こえてきたので、すかさず芭蕉が反応した即興の名句である。絶えず句作のことに留意している芭蕉ならではの馬子への命令「馬牽き向けよ」に切迫感を感じないだろうか。今この瞬間を逃したらホトトギスはどこかへ行ってしまう。忍者まがいの健脚で知られる芭蕉がたまには馬に乗ることもあったのかと思う一方、江戸時代初期には馬子という職業が定着してとも考えられる。もともと伊賀の武士出身の芭蕉に職業意識はあるまいが、とっさの言葉に馬子への優位が覗かれる。いろんな面白さを含んだ名句として取り上げた。芭蕉の名句㉟『野を横に馬牽きむけよ・・』
〇古・古・古米ニワトリ啄みコケッコー〈結構〉*立憲民主の原口さんが「くず米〈家畜用〉」と呼んだ備蓄米です。〇六方を踏んで「どうだ」と進次郎*JA・全中〈農協〉を相手に富樫〈総理・農水省〉承知の勧進帳俳句川柳21『コメ騒動余波』
〇「退院のとき禁酒を申し渡された肝臓病患者」とかけて「看護婦なんぞに命より大事なものがあるのがわかるめえ、と帰りしなに蕎麦屋で祝杯をあげるオッサン」とときますそのこころは「おれの辞書には婦も屋も酒もちゃんと載っている、サ別用語じゃありません」*謎かけ問答変則版新企画『ととのいました』34
〇「長嶋茂雄が死んだな」「89歳というのはミスターらしいですね」〇「どのテレビ局も特集を組んで悼んでいるな」「エピソード満載の人ですから材料に事欠きませんね」〇「ジャイアンツでの活躍と慌て者のイメージが目立つ人だった・・」「そのギャップが愛されましたね」〇「やっぱり白鵬が相撲界を去ったな」「ご隠居の言った通りでした」〇「辞めさせられた白鵬の反撃で相撲協会もおちおち眠れないか」「何を言われても沈黙を押し通すらしいですよ」紙上大喜利91『じじいの時事ばなし』
栃木県の白河の関は奥の細道の入り口とあって芭蕉は待ち構えていた門人たちの大歓迎を受けた。そのため、かなりの期間黒羽町に滞在したと記されている。ある解説によれば「白河の関は東北の玄関口とされ、芭蕉は古歌や故事を偲ぶのに夢中で句を詠む余裕がなかったとされています。一カ所一句の原則は後に紀行文「おくの細道」を編纂する際に確立したものである。立ち寄らなかった場所でも俳句を載せて紀行文の体裁を整えた。『田一枚植えて立ち去る柳かな」尊敬する西行の五百年祭を記念する「遊行柳」などには実際に足を延ばしたが、門人のいない場所では連歌や連句を巻くこともできず早々に通過したことは前にも記した。「俤(おもかげ)や姨ひとりなく月の友」数年前の中秋9月10日、千曲市八幡の長楽寺で、松尾芭蕉の没後を偲ぶ会が催された。この句は「亡き母の...芭蕉の名句㉞『姨ひとりなく月の友』
〇新国劇のヒーローは月形半平太「春雨じゃ濡れて行こう」〇深刻劇に登場は斎藤兵庫の輔「責められても蛙の面にしょんべん」〇魔手・訴え返しで職員を告発「立花孝志さんに立ち話以上の秘密を洩らした」時代変われば主役も変わる『月形半平太もどき』
お土産にもらった魚沼産こしひかりの塩にぎり舌が感じるほんのり甘いコメの味ふるさとの川に戻った鮭が嗅ぎ取る匂いのように新潟の味が鼻腔をくすぐるうまいうまいよう何も足さない何も引かない思わずコピーライターの顔が浮かぶほど完璧な商品魚沼産こしひかりの味は三日過ぎてもまだ舌に残っているポエム412『塩にぎり』
「夏の夜や崩て明し冷し物」物知り博士の解説によれば以下の通り。前月下旬から嵯峨落柿舎に滞在していた芭蕉は、膳所に戻った翌日、元禄七年六月十六日(1694年8月6日)曲翠亭にて夜遊の宴、支考らと五吟歌仙を巻きました。掲句はその発句です。脇は曲翠、露ははらりと蓮の縁先。「今宵は六月十六日のそらみずにかよひ、月は東方の乱山にかゝげて、衣装に湖水の秋をふくむ。されば今宵のあそび、はじめより尊卑の席をくばらねど、しばしば酌みてみ(乱)だらず。人そこそこに涼みふして、野を思ひ山をおもふ。(中略)しからば湖の水鳥の、やがてばらばらに立わかれて、いつか此あそびにおなじからむ。去年の今宵は夢のごとく、明年はいまだ来たらず。今宵の興宴何ぞあからさまならん。そぞろに酔てねぶ(眠)るものあらば罰盃の数に水をのませんと、たはぶれあ...芭蕉の名句㉝『崩て明し冷し物』
松島トモ子という元子役は長じてライオンにがぶりと噛みつかれて有名になった最近では芦田愛菜ちゃんや鈴木福くんが印象に残る活躍をした中でも忘れられないのはひとひとピッチャンひとピッチャン万屋金之助映画「子連れ狼」の子役だろうか「大五郎」は役の上とはいえ毎回幼くして命を狙われる劇画家・小島剛夕が作りだした独特の死生観を付与されたまさか大五郎が実人生で事件を起こすとは子役の時に与えられた死生観が実人生に影を落としたのか不思議な縁だが深淵を覗き込んだ気がする子役のたどる運命は難しい芦田愛菜ちゃんのように親のサポートがしっかりしていて才能をどう伸ばすか方針が決まっている親の役割は成人になるまで卒業できない鈴木福くんも大学生になってそろそろ卒業するころだろう有名大学で学んだ学業を生かして実りある社会人生活を送るのももう...ポエム411『子役』
〇「大相撲夏場所は大の里の優勝で終わったな」「惜しくも全勝はできませんでしたが圧倒的な強さでした」〇「翌日には理事全員一致で横綱審議委員会に諮問された」「初土俵以来13場所での横綱は異例の速さだそうですね」〇「しかし千秋楽で豊昇龍に突き落とされたのは不覚だった」「14日目から緊張してましたものね」〇「二所ノ関〈稀勢の里〉親方がコメントして「アドバイスはほとんどない。この負けを来場所以降の糧にしてほしい・・と手放しのほめようだった」「稀勢の里以来の日本人横綱というんですから因縁を感じますね」〇「優勝2回の師匠を早くも上回っているぞ」「ご隠居、朝青龍・白鵬・日馬富士などモンゴル勢全盛時代に2回優勝した稀勢の里は立派でした」紙上大喜利90『じじいの時事ばなし』
「曙はまだ紫にほととぎす」「曙」は言うまでもなく、清少納言の『枕草子』の「春は曙。やうやう白くなりゆく山ぎは少しあかりて、紫だちたる雲の、細くたなびきたる。‥を下敷きにしている。曙はまだむらさきにほとゝぎす(真蹟)(あけぼのはまだむらさきにほととぎす)元禄3年(1690)。芭蕉47歳。前書きに、「勢田に泊まりて、暁、石山寺に詣。・・とあるように、やはり芭蕉は近江にも縁が深い。前に「石山の石より白し秋の風」を取り上げた際にも触れたが、奥の細道以前の小紀行文にも優れた句が載せられている。あらためて伊賀時代からの学識の厚みに敬服する。47歳で病没する最晩年の句業「奥の細道」がいかに過酷な行脚だったか、胸が痛む。芭蕉の名句㉜『曙はまだ紫に・・』
〇コメがない張り紙貼って店閉じる〈大阪のコメ販売店〉〇江藤農相「コメ買ったことない」で辞任する〈正直な人だ〉〇次期農相進次郎さん就任で失言待ち?〈コメ見たことない・・とでも〉〇備蓄米政府と農協で高値維持〈古米を高く売りさばき新米を高値で買い付ける=政府もJAもホクホク〉〇5キロ袋を買えずに2キロ選ぶ人〈庶民の生活苦は深刻だ〉俳句川柳20『コメがない』
「語られぬ湯殿にぬらす袂かな」出羽三山の一つ湯殿山には、そこでの修行〈体験〉を他人に漏らしてはいけないという決まりがある。修験者にとっては掟と言ってもいい。芭蕉の句の「語られぬ」は「湯殿山のことは」の意味で「ぬらす袂かな」は修行の有難さに感激して涙で袂を濡らすほどだと詠んでいる。芭蕉が実際にどんな体験をしたのかは知る由もないが、ここで作った句は俳諧師松尾芭蕉の得意とする言葉遊びも若干顔を覗かせている。別の解説を見ると、湯殿山は女人禁制で「恋の山」という別名があるそうだ。また、湯殿山でのことは昔から「語るなかれ、聞くなかれ」とされており、この俳句が収められている「おくのほそ道」の文章の中にも、「惣而此山中、微細(総じてこの山の中の微細)、行者の法式として他言する事を禁ず。」という部分があるらしい芭蕉の名句㉛『湯殿にぬらす袂かな』
〇「五月場所も中日を過ぎて大の里が全勝で突っ走ってるな」「強いし安定してますね」〇「15日間白星を並べて横綱昇進に花を添えてほしいな」「白鵬みたいに何回でも全勝優勝できそうな逸材ですからね」〇「その白鵬に近々引退のうわさが流れているのを知っているか」「親方になって相撲解説などで活躍してましたが弟子の暴力事件を黙認していた責任を問われてミソを付けましたね」〇「弟子の伯桜鵬が必死に頑張っているみたいで痛々しい」「親がなくとも子は育つんじゃないですか」〇「青い目の力士が強くなって早晩上へあがってきそうだ」「琴欧州みたいな大関が誕生してほしいですね」紙上大喜利89『じじいの時事ばなし』
最近、佐藤浩市の顔を頻繁に見る「ファミリー・ヒストリー」にも登場したから何ごと?と思っていたら映画で吉永小百合の夫役を演じたのが話題になっているらしい父親の三国廉太郎も吉永小百合と共演しているから親子二代の縁とは珍しい父親は「釣りバカ日誌」のマドンナ吉永と佐藤浩市はエベレスト女性初登頂の田部井順子モデルの夫役佐藤浩市も渋い演技〈田部〉役で存在感を出しているが80歳の吉永小百合の妻役〈登山家〉にはビックリだ映画の完成報告会見だそうだから十何回忌の三国廉太郎も「てっぺんの向こうあなたがいる」を喜んでいるだろうポエム410『あの親子』
〇「大相撲五月場所も3日目が終わっておおむね期待通りの成績だな」「大の里の綱取りはほぼ固いんじゃないですか」〇「もう一人の横綱も負けて優勝が見えてきたな」「ご隠居、大の里はまだ横綱じゃないですからね」〇「おまえが固いというからついその気になった」「それにしても王鵬は絶好調ですね、豊昇龍を破って自分も大関を目指してますよ」〇「三役復帰した高安は負け先行だな」「先場所の優勝決定戦に負けてガックリしているんでしょうね」〇「尊富士は3連勝で力通りの相撲を取っている」「精悍で気持ちのいい力士ですよね」〇「心配なのは琴櫻だ、なにが原因なんだ」「先場所やっとカド番を脱したばかりなのにまたカド番もあり得ますね」紙上大喜利88『じじいの時事ばなし』
「象潟や雨に西施がねぶの花」象潟に義母の親せきがあるので結婚当初はよく遊びに行った。鳥海山もいいが、親せきが夏には海の家を経営していたので口に余るほどの岩ガキをごちそうになって思い出になっている。さて、この句は「奥の細道」の中でもよく知られた一句である。雨降る象潟で花びらを閉じた合歓の花を見かけたのだろう。「まるでまつ毛を閉じた西施の横顔を見るようだ。憂いに沈んだ表情が胸を打つ。・・」と漢籍にも強い芭蕉が思ったのかどうか。西施は歴史上中国の古代四大美女として楊貴妃らとともに登場した。生没年は不明だが、呉の時代に陰謀を託されて王に献上された美女の一人として古来から人気が高い。芭蕉の俳句も西施の印象を決定づけたのかもしれないが。参考=〈ウィキぺディアより〉本名は施夷光。中国では西子ともいう。紀元前5世紀、春秋...芭蕉の名句㉚『象潟や・・ねぶの花』
〇走るのも地獄降りても税地獄〈ゴールデン・ウィーク〉〇梅雨寒とともに自動車税期限〈6/2〉〇お土産ははしか?近場の渡航客〇トランプの関税破綻も友〈英国〉ありて〇寝ていても太刀筋きわめホームラン〈早くも11号〉俳句川柳23
ホタルブクロ画像は〈季節の花300より〉昼間白いホタルブクロの前でふたりの女の子がしゃべっていたねえクレハちゃんこのホタルブクロの中に妖精が隠れているのようそだメミルちゃん見たことあるの?クレハのことだましちゃいやだよ見たことはないけどきっと妖精がいる夜中にホタルブクロを見るとボウっと明るいんだって道草していた女の子二人はお布団の中でスヤスヤきっとたくさんの妖精がダンスをしている夢でも見ているんだろうなポエム383『ホタルブクロの秘密』
〇「芦田愛菜ちゃんはますます活躍してるな」「ご隠居、急にどうしたんですか。鈴木福君ともども成人になって知的なタレントになりましたよ」〇「いや、親がここまでよく育てたなと思ってさ」「そうですね、2人とも反抗期とかなかったんですかね。子育ての本でも出せば売れますね」〇「北朝鮮のゴミ風船は飛ばした50パーセントは韓国に届いているらしいぞ」「いやですね、イメージが・・飛ばす方の品格が問われますね」〇「日本も先の戦争末期には風船爆弾を飛ばしたけれど何個かアメリカ本土に届いただけだ」「太平洋を越えてよく届きましたよ。北朝鮮と韓国は隣同士の諍いで始末が悪いですね」〇「大谷翔平は背番号と同じ17号に到達したけど、ヤンキースのジャッジに大差をつけられたな」「相手投手の攻め方にも大差があるように見えますよ」〇「小池百合子さん...紙上大喜利60『じじいの時事ばなし』
駐車場の奥の崖下に黄色い百合が咲いていた梅雨入り前の真夏日の午後人間どもがあえぐ日盛りに黄色い百合はいとも涼しげに大きな花を咲かせていたなんだかノカンゾウに似ているがきみは野の百合だよね群れてないところが最高だ花言葉は「陽気」というんだってきみに出合ってよかったよ運勢がよくなる前兆だってさ駐車場の雑草の中で輝く黄色い百合これから仕事に出かけるけどよろしくなポエム382『黄色い百合』
茨城県に五浦海岸〈いづらかいがん〉という場所がある。岡倉天心のもとに集まった横山大観、下村観山、菱田春草らが日本画の美を極めようと切磋琢磨した北茨城市の景勝地である。海水浴場にもなる砂浜には海風にもめげず松が枝を伸ばし、岩場を望む六角堂にこもると打ち寄せる波の音が思索を深化させるようだ。天心は後に六角堂を日本美術院の本拠地にした。横山大観のいわゆる朦朧体などは五浦で生まれたものである。冬場はボストン美術館の中国・日本美術部長を務める天心は、夏場は五浦に戻って日本美術界の改革に注力した。もともと日本美術品の研究・収集に造詣の深かったフェノロサの通訳を務めていた天心は、自らも日本美術の研究にのめりこむ。弟子たちはみな家族とともに五浦で夏を過ごし、橋本雅邦ら若き天才画家たちが日夜日本画の可能性を追求した歴史的な...真夏の怪談その5『五浦海岸』
昨日のニュースで嘴太ガラスを肩に乗せて散歩する青年のインタビューに答える様子を放映していたとにかくカラスは頭がよくて可愛い同居していて新たな発見があり伴侶として申し分のない存在だという話変わって都内の繁華街からカラスが激減いま何が起こっているのかとミステリー仕立ての特集でもあった有力な答えは頑丈なゴミ箱の設置だカラスを兵糧攻めにする施策がやっと浸透してきたのだろうというその一方で鷹やハヤブサが増えているらしい都心の高層ビルは崖みたいなもので天敵を避けて営巣するには最適なんだとか新たな悩みに都知事候補はどう応えますか小池さんはまだ出馬表明せず蓮舫さんならビルに網かけろとでも・・ポエム381『カラスをペットにする男』
海野太吉は千葉県内をよくドライブした。勝浦や御宿が好きで、家族を乗せて行楽に引き回した。自宅が都内にあったので、あるとき茂原から四街道を経由して家に帰ることにした。自動車の道路ナビなどない時代に地図を頼りに近道を探して強行突破してきた。すると四街道に近づいたと思われる頃いきなり目の前に竹襖が現れた。「えーっ、なんじゃこれ?」家族も身を乗り出して怖がった。「おとうさん、引き返しましょう」「いや、竹藪が道までせり出しただけだ、道がないわけじゃない」農道なのか畑の中の私道なのかわからないがギリギリ通り抜けられそうだ。太吉は運転席のミラーを引っ込め、竹の幹にこすりそうになりながらなんとか通過した。「いやー、水木しげるの妖怪が出たかと思った・・」「お父さん無謀だから、いつもヒヤヒヤするわよ。いつか青梅の方でコンクリ...真夏の怪談その4『四街道の竹藪』
〇10代二人がバールを持って民家に押し入ったアーソレソレ主人殴って妻からカネ奪うソレカラドーシタあわてて逃げたが忽ち捕まった〇架空の投資で60億円集めたアーソレソレ社債を印刷くばってその場をごまかしたソレカラドーシタいくら稼ごうが悪銭身につかず〇詐欺をしようが強盗だろうがお札に色はないアーソレソレ金を使えばクラブは恵比須顔ソレカラドーシタ焼酎飲み飲みマルサ対策考えた当世あきれ節2
「羽衣の松」という小説を書いた仲間がいた。老境に入ってロマンスには無縁と感じ始めていた時、突然女性の方から思いを告げられたのだ。彼は驚き、うれしくも感じた。若い時は何度か恋愛をしたことがあったが、縁あって現在の女房と結婚し40年を共に過ごしてきた。それだけに同じ同人誌に所属する女性に誘われて食事をし、その後一夜を共にしたことはそれとなく記録しておきたかった。天女からふわりと羽衣をかけられたと表現したのは彼の心境そのものだ。富士山が世界遺産になったとき三保の松原もその一部に認定された。羽衣伝説は世界中に説話として存在し、日本では滋賀県や京都府の風土記に残されているのが最も古いのだが、富士山がよく見える場所として世界遺産に含まれたことから三保の松原が有名になった。本来、羽衣伝説とは関係のない話であるが、三保の...真夏の怪談その3『三保の松原浮気考』
〇八冠が叡王戦で踏みとどまる〇連敗のあと1勝返し2対2に〇挑戦者伊藤匠はAI通〇子供のころから聡太のライバル互角の才〇現棋界勝率1位の匠立つ〇21歳聡太・匠の若武者戦〇八冠は先に名人位防衛す〇藤井聡太に過密日程発汗やまず〇AIにもまれて予備軍虎視眈々〇もはや大人の出る幕なしか将棋界俳句川柳7『藤井聡太八冠』
〇牽制球が足に当たって痛い顔〇そんな翔平見たことなかった心配だ〇監督が復調予言ほっとした〇翔平が10試合ぶり14号〇トップまで2本差いずれ追いつくさ〇とはいうが守りの姿勢が垣間見え〇水原に受けた裏切りトラウマに〇新住居〈十数億円〉へ移って心機一転か〇ロバーツ〈監督〉のおねだり〈自動車〉変じてミニチュア・カー〇背番号〈17〉譲った選手と違うわい〈奥さんにポルシェ贈って話題に〉俳句川柳6『心配させんなよ』
現在はにかほ市になった秋田県の象潟町で重吉は炭焼きを生業にしている。東京の大学を卒業したあと実家の山を預けられ、楢や橡の木を切り倒しては木炭づくりを目指した。ところが重吉は炭窯に火を入れた後持ち込んだ哲学書を読みふけるものだから、火を止めるタイミングを失い出来上がった木炭はほとんど灰に近い状態になってしまった。「重吉さんなばダメなもんだ。炭つくってんだか灰つくってんだか売り物になるのは一本もなかった」口さがない住民が噂するうちはよかったが、そうち呆れて誰も近寄らなくなった、そうして一年が過ぎ炭の材料になる木を伐りに遠くまで足を運ばなくてはならなくなttころ、重吉さんの炭の品質がきゅうによくなった、聞きつけた住民が重吉さんから話を引き出したところでは本に夢中になっていても木の精が勝手に話しかけてくるのだとい...真夏の怪談その2『にかほ市の哲学者』
〇「どうだ、やっぱり大の里が優勝したろう?」「ご隠居の言う通りでしたね。しかし、中日のあと2敗したんでハラハラしましたよ」〇「負けを肥やしにしてどんどん強くなったよ」「最後の3日間は自信に満ちた顔をしてましたね」〇「大の里はあと何場所かで大関になる、横綱も遠くないだろう」「そう簡単にいきますかね、人生何が起こるかわかりませんよ」〇「大丈夫だ。オーラがある。謙虚さもある。相撲の型もある」「へえへえ、ご隠居を信じますよ」〇「ライバルの琴桜もうまく育ってほしいな、尊富士も復帰してくれば面白くなる」「平戸海や熱海富士も見どころありましたしね」紙上大喜利59『じじいの時事ばなし』
市ヶ谷駅は僕がよく利用した駅である。夏の深夜、大急ぎで改札口に降りていくと頭上から人のすすり泣く声が降ってきた。声の主はたぶん女性だろうと気になったが、こちらも電車に乗り遅れる心配があったので確かめることなくホームへ走った。何日か経って市ヶ谷駅のすすり泣きのことが週刊誌に載っているのを中吊り広告で知った。早速買って読んでみると、僕が体験したよりも大分前から噂になっていたらしい。誌面によると夫に捨てられた女性がJRの線路上で飛び込み自殺した事件があり、その時の状況がこだまのようによみがえって夜な夜な誰かしらの耳に届いていたらしい。よほど無念だったのか、聞いたのは男性ばかりで男への恨みも感じられる話だった。週刊誌の記事を読んで以来、僕は市ヶ谷での乗降を避けるようになった。総武線ではなく中央線の快速や準急電車を...真夏の怪談その1『市ヶ谷のすすり泣き』
天・点天を仰ぐ暑い直視できない点黒点子供の絵なら簡単ゴマのような黒点太陽フレアまでクレヨンカナダでオーロラ電離層パニック気象衛星多数墜落・点天天を仰ぐ熱い直視できない黒点気象も天文学も天に始まり点に終わる人生は天の思し召しポエム380『天』
〇社長が一瞬目をかけたアーソレソレ早くあと継がせろと焦る娘婿ソレカラドーシタ魂胆読まれると匿名人間を雇って深い闇深い闇〇政党交付金の使い道報告下限はいくらアーソレソレ与党の協議はいくらやっても折り合わずソレカラドーシタ自民は10万以下に切り下げず国民無視国民無視〇クマがやたと人を襲うアーソレソレ暖冬で冬眠短め腹が減ってたまらないソレカラドーシタ民家に侵入し貯蔵庫開けて好き放題好き放題当世あきれ節1
〇「おい、小相撲って知ってるか」「えッ?大相撲なら今やってますが」〇「横綱照ノ富士をはじめ大関貴景勝、霧島、関脇若隆景、朝乃山など注目力士がみんな休場で元気なのは小物ばかり」「それで小相撲ですか、ご隠居」〇「今場所の優勝は大の里で決まりだな」「またまた、気が早い。まだ8日目ですよ」〇「先場所だって尊富士か大の里のどっちかといったろう、今場所は大の里の番だ」「へえへえ、外しても知りませんよ」〇「大谷翔平が13号を打ってトップに並んだな」「打率もトップだし三冠王が狙えるんじゃないですか」〇「ロサンゼルス市が大谷翔平の日を制定したな」「5月はアメリカ政府がアジアやハワイ、太平洋の島々にルーツを持つアメリカ人の歴史・文化や功績をたたえる月間でそれにあやかったらしいですよ」紙上大喜利57『じじいの時事ばなし』
巣鴨プリズンが解体されたとき、ある独房の壁の中から奇妙な塊が転がり出てきた。公には報道されなかったが、それは高温の熱によって溶かされたコンクリートが、冷えて固まった状態に見えた。普通、ブルドーザーで破砕された壁は、捻じ曲がった鉄筋を除けば、セメントと砂、砂利による組成が一目瞭然だった。それに対し、発見された塊は内部でガラス質の粒子が滾り、流れ出たような形跡が見られた。飴を塗りつけたような表面には、わずかながら人をほっとさせる暖色系の彩りがあった。なぜ、コンクリートが溶けたのか。壁の一部だけが、どうして他と違う様相を見せるのか。独房に収監された囚人が、脱獄を図るために薬品で壁の腐食を狙ったと考える者もいた。壁の解体に携わった業者は、上司を通じて拘置所の責任者に報告した。あり得ないことだが、少しの疑いでもあれ...思い出の短編小説『壁の中』
『東海道中膝栗毛』〈とうかいどうちゅうひざくりげ〉で名の知られた十辺舎一九は1802年~1814年にかけて初刷りされた滑稽本である。「膝栗毛」とは、自分の膝を馬の代わりに使う徒歩旅行の意で人気作品となり刊行は『東海道中膝栗毛』と『続膝栗毛』あわせて20篇に及んだ。後世に読みつがれ、主人公の弥次郎兵衛と喜多八コンビのキャラは歌舞伎や映画等で現在でも活躍が続いている。文才とともに絵心のあった作者による挿絵が多く挿入され、江戸時代の東海道旅行の実状を記録する、貴重な資料でもある。版木による出版が何版にもおよび、今でいうベストセラー作家となった十辺舎一九は文筆業だけで生計を立てたわが国最初の人物ともいわれている。通称「弥次喜多道中記」のあらすじは、江戸の神田八丁堀の住人である栃面屋弥次郎兵衛と居候の喜多八が二人と...新作KAIDANその10『十辺舎一九』
那須野が原には「九尾の狐」が住んでいるといわれている。最近、那須野が原を舞台にいやな事件が勃発しているが、ご当地の九尾の狐がどう思っているか世間の口端も喧しい。「ぼくは九尾の狐はワルだから冷ややかな顔で見ていたんだと思う」「いや、わたしは九尾の狐は憤慨していると思います。もともと伝説では神獣といわれて王朝を支えてきたのだから今回の事件はイメージダウンになると怒っているはずです」「読み本屋、曲亭馬琴の受け売りだな?」「そういう貴方こそ玉藻前〈平安時代末期に登場する『玉藻草紙』で鳥羽上皇の姫に化けた狐〉にたぶらかされているんでしょう」「九尾の狐をワルだと言っているぼくが騙されるわけがないだろう、何を考えているんだ」「全身〈心〉全霊で化かすというから、あんたなんかイチコロよ」「ちょっと待った,お二人さん、九尾の...新作KAIDANその9『九尾の狐』
〇「大谷翔平が11号ホームランで両リーグトップに立ったな」「3連発の後このまま突る可能性がありますね」〇「護衛艦『いずも』をドローン撮影した奴はドロンしちゃったのか」「中国のSNSに投稿されたということですが誰かはわかりませんね」〇「政治資金規正法はどうなった?」「連座制は決まりみたいですが問題は使い道ですよね」〇「何に使ったか記録し党に報告する金額を10万にするか5万にするかで自民・公明の折り合いがつかないんだろ」「ザルの目を粗いままにしたい自民が引き延ばししているようですね」〇「宇野昌磨が今シーズン限りで引退するらしいぞ」「男子フィギアという激しいスポーツでよく頑張りましたよ」紙上大喜利57『じじいの時事ばなし』