思い出の連載小説『折れたブレード』(14〉 あと1回で最終
(アサリの味噌汁)正孝は、滝口に連絡するつもりが、間違って艶子の電話番号を押していることに気づいた。どういうことだろうと、自分のとった行動を訝しむ。選りに選って、なぜ艶子の電話に?すでに、この世に存在しない女性の持ち物。警察に押収され、現在どこにあるかもわからないケータイが、意思を持ったかのように呼ぶのだろうか。正孝は、艶子が何かを訴えかけているような気がした。天高く澄み渡った空を、幽かな風が移動している。通じなくなった回線の代わりに、何かが空を駆けている。(艶子・・・・)熱い思いが胸元をよぎる。艶子を殺した犯人は、出雲の警察に身柄を移動されたという。山根刑事は、動かぬ証拠を固めて堂島を逮捕したのだろうが、被害者も犯人もいなくなった東京には空虚だけが残った。正孝は、呆然としたまま辺りの風景を見回す。薫風社...思い出の連載小説『折れたブレード』(14〉あと1回で最終
2023/11/29 00:01