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コトバの試し斬り=(どうぶつ番外物語) https://blog.goo.ne.jp/s1504

斬新な切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設17年目に入りました。

自然と共生しながら、生きてきました。 ここでは4,000字(原稿用紙10枚)程度の短い作品を発表します。 <超短編シリーズ>として、発表中のものもありますが、むかし詩を書いていたこともあり、コトバに対する思い入れは人一倍つよいとおもいます。

正宗の妖刀
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2010/09/26

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  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(21) 最終回

    それぞれの退場休暇が終われば出勤してくる人間に、課長はなぜ電話をかけてきたのだろう。吉村は、熊本から帰ってきたばかりの疲れた頭で考えていた。(契約のことで、また不備でも探し出したのか)それとも、辞めさせることができなかったので他局へ放り出す算段でもしているのか。蒲団にくるまっても真意が分からないために苛立ちを感じていた。となりの部屋では、久美と乳児が休んでいる。何時間置きかに授乳させる久美とは、寝床を別にすることで互いの睡眠を確保する方法をとった。眠れないまま転々としていると、苛立ちの原因がもう一つあることに気付いた。どんな用件があったにせよ、家庭にまで電話をしてきたことへの不満だった。久美から報告を受けたとき、ほんとうは家の中まで押し入られたような嫌悪を覚えたことを、いまになってはっきりと思い出していた...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(21)最終回

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(20) 次が最終回

    密息その日仕事から戻ると、課長から局長室へ出頭するよう申し渡された。「すぐにですか」と問い返すと、事務処理を済ませてからでいいと歯切れの悪い言葉が付け加えられた。何事だろう。頭が高速回転をしている。集金カードの集計が覚束なくなるほど気になった。(こんなときこそ密息だ・・・・)いつか雑誌で読んだ気功の記事が頭に浮かんだ。もともとは高僧が修行のなかで会得した呼吸法らしいのだが、武術や芸術の世界でも、奥義を極めたような人はこの息遣いの秘密に気付いていたようなのだ。吉村などにできるワザではないが、たまたま試みた手かざしで熱とも圧力とも解らない<気>を掌が感知したことがあるので、密息なるものも習得できそうな気持ちになっていたのだった。金銭授受が終了すると、待ち構えていたように課長が近付いてきた。「あとは、後でいい」...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(20)次が最終回

  • 川柳復活12 『じじいの時事ばなし』

    〇世耕さんそれはセコイよしっぽ切り(会計責任者に罪を押し付けて恥じない人=橋下徹が怒っていました)〇平然と萩生田もシラなすりつけ(安倍派幹部はドイツもバウムクーヘン=生地のグルグル巻き}〇翔平は犬(デコピン)まで稼ぐポチ見習え(広告業界あたふた)〇ウクライナ主役奪われ資金切れ(ハマス・イスラエル紛争の勘にアメリカの支援細る)〇伊藤美誠代表漏れかつるべ落とし(パリ五輪卓球女子シングルス代表枠2名に入れず)川柳復活12『じじいの時事ばなし』

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(19〉

    流砂のごとく急いで事務室に戻ると、内務の総務主任が慌てたように立ち上がった。返還しておいた集金カードをめぐって何かの動きがあったらしい。「吉村さん、遅いですよ」「おお、こっちだって気になってるさ。だけど課長が放してくれないんで仕方がないんスよ」言いながら壁の掛時計に目をやると、二時五十五分を指していた。吉村は思わずヒェ―ッと奇声を上げた。いままさに客の要請してきたタイムリミットを目前にしているではないか。「少し前にポケベルで代理を呼んで持っていってもらいましたけど、すごい剣幕で怒ってましたよ」「えっ、どっちが?」「外務代理ですよ」「へえ、仕事だからね・・・・」契約募集の途中で急遽呼び戻された課長代理の仏頂面が目に浮かんだ。いくら文句をいっても、緊急事態が起これば遊軍としてなんでも処理しなければならないのが...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(19〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(18〉

    視線のゆくえ夏の日差しが顕著となった休みの一日、吉村は久美と連れ立って近くの水天宮にお参りにいった。ふたりの住むマンションからはゆっくり歩いても二十分ほどの距離だから、その程度の運動はむしろ久美にとって望ましいものだった。梅雨明け宣言のあと、ぐずついた天候が戻ってきて気象庁が慌てる一幕もあったが、この日は朝から夏到来に太鼓判を押してもいい気温の上昇が見られて、部屋の中にはいられない気分になっていたのだ。「暑いけど大丈夫かな」「わたしのこと?」「そうだよ」「日傘を差しているんだし、むしろ気持ちがいいわよ。ねえ・・・・」そろそろ目立つようになった腹部に手を置いて、育ち始めた命に語りかけるような仕種をした。水天宮はいかにも都会の神社というたたずまいで、コンクリートで固めた竜宮城のようにせり上がった場所にある。目...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(18〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(17〉

    新世界より腰を痛めて集配課から貯金課に移った間宮が、久しぶりに演奏会のチケットを送ってきた。今回のプログラムには、ドボルザークの『新世界より』が入っていた。他の楽曲も含めて三つのパートで構成されていた。アマチュア・バイオリニストの彼は、休日や勤務終了後の時間を使って練習に励んでいるらしく、郵便局の同僚とはあまり交流する時間がないようであった。酒は嫌いではないので、仕事帰りに気の合った仲間と居酒屋に寄ったりすることもあるらしいが、趣味の違いが大きすぎてとことん付き合うところまではいかないようであった。むかし一緒に草津へ旅行したときは、年上の八田とウマの合うところを見せていたが、今はどうしているのだろう。同じ局舎の中とはいえ間宮が貯金課へ転属してしまってからは、以前のような付き合いはできないだろうとおもった。...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(17〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(16)

    天草薫風吉村と久美の新家庭がスタートして半年、こんどは八代の兄が嫁取りを考え出したとの連絡が母からの手紙に記されていた。相手は地元のスナックで働く二十八歳の女性とのことだった。兄が米屋の会合の流れで立ち寄った際、カウンターの奥でママを手伝う控え目な女の様子に心を引かれたらしい。「本人がいうには天草生まれの家庭的なオナゴで、浮いた話など何もないんじゃと。ばってん、よかオナゴがこれまで嫁の話がなかちゅうんはどうしたわけじゃろと、かえって身分ば心配しとんのよ」その相談のためによこした手紙のようであった。しかし吉村にも相手のことはわからないし、かといって母の危惧も理解できないではなかったので、ありきたりのことを書き送るしかなかった。兄は、弟の洋三が完全に実家を離れ東京に所帯を持ったことで、長年わだかまっていた心が...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(16)

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(15)

    カウベルの響く町唐崎の後について会社訪問を繰り返す中で、中堅の旅行代理店との商談が有望になりつつあった。そうした進行の途中、経理畑の役員との懇談の際、近ごろの若者の旅行事情が話題になったことがあった。「まあ、短期のレジャーではハワイ、グアム、韓国、台湾といった近場が主流ですが、このごろは新婚旅行も含めてタヒチ、モルディブ、バリ島あたりが人気になってますねえ」「いやいや、豪勢ですなあ」唐崎がうなずいてみせた。「・・・・それじゃあ、御社はますます儲かる一方ですな。うらやましい限りですわ」「まあ、しかし経費のほうもかさみますから・・・・」会社契約の有利さに興味を示しながらも、あと一歩の踏み出しができないでいた。そんな役員に、何か決断させる決め手はないかと策を練る唐崎の表情を見ながら、吉村は自分の新婚旅行のことを...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(15)

  • 紙上『大喜利』(44)

    〇「おい、近ごろ空耳を聞くことが多くなってな」「ご隠居、空耳って空が何か言うんですか」〇「ゴリアルタイケンとかいうんだが何のことかわかるか」「わかりませんよ、ひょっとしてラーメンでも食べたくなったんですか」〇「能登はいらんかね・・はどうだ?」「それは多分、坂本冬美の『能登はいらかいね』の覚え違いじゃないですか」〇「気になってしょうがないんだが意味わかるか」「さあ、あとで歌詞を調べてみますよ」〇「このままじゃ夜も眠れない、早く調べて教えてくれ」「ハイ、ハイ、のと、のと、のと・・」紙上『大喜利』(44)

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(14)

    かわたれどき十二月半ばに転勤の辞令が出た。翌日から皇居をはさんで反対側の郵便局へ出勤することになった。通勤時間は以前より短くなった。職種が変わった際の規定に従い、二週間ほど局内での職場研修が行なわれることになった。課長が講師になって、保険業務の基礎的な知識を教えられた。その間に、送別会と歓迎会が相次いで催された。片や居酒屋チェーン店、他方も寿司屋の二階と似たり寄ったりの会場だったが、拍手で迎えられた保険課の二次会で、初めてクラブというものに付き合わされた。その日がちょうどクリスマスイブに当たっていたからだろうか、店内は混みあっていた。吉村は経験したことのない嬌声を聞いて、落ち着かない表情であたりを見回した。職場環境が変わったことを、実感した瞬間だった。そうした喧騒のなか奥まったテーブル席の一郭で、保険課の...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(14)

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(13)

    瓢箪から駒秋の将棋大会で保険課の蜂谷を破ったことが、吉村の予想もしない評判を呼んでいた。同じ屋根の下に居ながら、自分の所属する課以外の職員に妙な対抗意識を持っている者が少なくないことを、つくづく感じさせられる顛末でもあった。「あいつ今年も優勝できると思ってそっくり返っていたけど、おまえに負けてへこんでたぞ」吉村を讃えるというより、蜂谷をくさすことに熱中しているのだ。蜂谷が背を反らすのは、単なる癖かもしれないし、もしかしたら腰が悪いための姿勢ではないかと考えられる。どちらにしても人を見下すような仕種には見えないと、吉村は仲間の言に戸惑いを覚えていた。そして、一部の人間とはいえ集配課に漂う卑屈な空気を、あらためて思い知らされるのだった。「将棋が強いからって威張る人は、あんまり居ないっスよ。大体勝負なんて、どっ...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(13)

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(12)

    指運郵便局の公社化を睨んで、集配課への締め付けも更に厳しくなってきていた。民間企業を見学した足での業務研修や、デパート地下売り場での体験実習など、組織の活性化とサービス向上を念頭においてのスケジュールが頻繁に組まれるようになってきた。流行の自己啓発セミナーにも中堅の職員を参加させ、さらには郵政局のホールに講師を招いて主任クラスの意識改革を図ったりした。局内では班の編成を再構築する試みも勧められていた。人員削減が現実のものとなって、班員一人ひとりの受け持つ作業量を増やすことで定数減に対応する方針が示された。吉村はいままでの伸びやかな環境が、しだいに失われていく状況を肌で感じ取っていた。九州の地から東京へ、下へも置かぬ扱いで迎えられた日のことが懐かしく思い出される。わずか十年で、磐石に見えた組織がほころび始め...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(12)

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(11〉

    不知火の町一度はお母さまに会っておきたいという久美の希望で、五月の連休を利用して八代に帰郷することになった。東京駅を朝の九時前に出て、八代に着いたのは午後五時近かった。新幹線と特急で熊本へ。在来線に乗り換えて八代まで、ほぼ八時間をかけての長旅は、慣れているはずの吉村の方が音を上げそうになった。「久美さん、疲れなかった?」「岡山から先は来たことがないから、楽しかったわよ」新大阪を出てから買った車内販売の弁当を、二人であれこれ批評しながら食べたのも楽しかったと吉村を見上げた。この日の久美は、萌黄色のワンピースに白いリングのベルトでアクセントをつけていた。オレンジ系のニットのボレロが若々しい印象を与えている。この日のために新調した気配が、足先まで漲っていた。「おふくろは迎えに来たいと言ったんだけど、到着時刻がは...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(11〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(10)

    年賀状狂想曲富士山に初冠雪があったとのニュースが、朝のテレビ画面に流れていた。平年より一週間ほど早かったとのことで、吉村の住む高円寺のアパートでも、明け方の寒さは冬近しを思わせるものだった。一昨年までなら、ウールのシャツ一枚でせんべい布団に横たわり、冬山に備える訓練を課していた時期だが、去年は久美の祖母の他界、自分のバイク事故と続き、今年は早川の滑落死が追い討ちをかけるなど、身辺に暗雲が漂った感じであまり前向きの気持ちになれないでいた。振り返れば、早川が笑顔を残して逝ってから四ヶ月が経つ。岳沢へ下る途中で見た焼岳が、なぜか早川の笑顔と重なって想い出されるのだった。遭難現場から戻ったあと、結局早川の遺体を確認することなく東京に戻った。あのとき松本から松代病院に向かうには、時間も気力も残っていなかった。奥穂高...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(10)

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(9)

    滑落七月の第二月曜日、早川が無断欠勤したというので、集配課はみな大慌てしていた。班長は欠員となった配達区の穴埋めに、自ら郵便物の区分を始めていた。その間、課長は早川の自宅に電話を入れて状況把握に努めていた。しばらく呼び出し音が続いた後、やっと電話口に出たのは早川の母親らしかった。それは課長席から聞こえてくる会話のやり取りから推察できた。「えっ、息子さん家に居ないんですか」課長の不満そうな声があたりに響く。「・・・・ええ、金曜日の夜に自宅を出て行ったきり、まだ帰っていないんですか」今度は不安げなトーンに変わっていた。一体どう解釈したらいいのか、課長が思いあぐねて助けを求めるように周囲の者を見回した。「はい、はい、愛用のオートバイで出かけたのですか。お母さんにも行き先を言ってなかったんですね。・・・・そうです...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(9)

  • 紙上『大喜利』(12〉

    (ウェブ提供画像)より〇「おい、今年は甲辰(キノエタツ)だそうだが東京地検特捜部のように見えてこないか」「ご隠居、たしかに雲中に炎を吐く勢いはいかにも今年もやるぞと宣言してるみたいですね〇「むかしリクルート事件というのがあって自民党の派閥領袖クラスが軒並み摘発されたんだがその中に安倍慎太郎の名前も登場しているんだ」「へえ、そのころからですか」〇「江副浩正という人物からリクルートの未公開株が渡されていたんだがこの時の大騒動で政治家は襟を正したはずなんだが・・」「今度はパーテイ券売り上げのキックバックですか」〇「あの時は野党や有力省庁のトップまで摘発されたから政治とカネの問題は繰り返して起こっている」「ご隠居、リクルート事件は1998年のできごとですね、干支で言えばほぼ二巡りですね」〇「安倍派6人衆をはじめ全...紙上『大喜利』(12〉

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