〇補欠選挙自民全敗茂木とぼける〈長崎・島根・東京〉〇植田〈日銀総裁〉岸田〈総理大臣〉の泥田コンビに穂波ナシ〈理想とする経済成長は無理〉〇無理やりの指数かさ上げ国ガタピシ〈消費者物価指数の伸び続かずデフレ回帰〉〇5月から電気・ガス補助消え大幅値上げ〈おまけに暑い夏予報=気象庁〉〇解散の芽を摘み取られ打つ手なし〈内閣総辞職もの〉俳句川柳5『自民にお灸』
斬新な切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設17年目に入りました。
自然と共生しながら、生きてきました。 ここでは4,000字(原稿用紙10枚)程度の短い作品を発表します。 <超短編シリーズ>として、発表中のものもありますが、むかし詩を書いていたこともあり、コトバに対する思い入れは人一倍つよいとおもいます。
ほどなくサンドイッチが運ばれてきた。野菜と生ハムを薄めのフランスパンに挟んだ、オリジナル商品だった。レタスもトマトも新鮮だったし、幾重にも巻いて花弁に見立てたハムは、塩と洋がらしと空気の弾力を味方にして、食べる者を幸せな気分にした。カップが大きめだったせいか、残りのコーヒーがオリジナルサンドの味を引き立てた。ミナコさんも、たっぷりの紅茶で軽食の仕上げが出来、満足の表情を浮かべた。ミナコさんが支払いを済ませるのを待って、おれはレジ係も兼ねる先刻のウェイトレスに声をかけた。「いま出て行った男の人、どこかで見たような気がするんだけど、たしか将棋関係のかたですよね」「ええ、飛田四段です。最近、テレビにも出演しましたから、そこで観られたのでは・・」ウェイトレスは、誇らしげに言った。「ああ、そうだったんだ。ところで、...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(13)
思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(11は省略)(12)
ミナコさんとの逢瀬は、週に一回のペースで実現した。日曜日に、ミナコさんの好きな盛り場で、人混みに紛れて待ち合わせることが多かった。梅の季節になって、湯島天神、六義園などの近場だけでなく、おれの希望で百草園まで足を伸ばしたりした。おれは、口にこそ出さなかったが、ミナコさんの住むマンションに近付けないことにストレスを感じていた。自分自身の心理的な抑制がそうさせるのだが、それが苛立ちとなっておれを苦しめた。同じように、週の半ばを避け続けるミナコさんの日程も、その理由が分かっているだけに余計に腹立たしく感じられた。おれが挑もうとしているものが、あの自動車内装会社の社長であることは、とうに分かっていたことだ。ただ、意地でも聞けないことがある。おれの知らないところで何が行われているのか。おれの眼裏には、薄ら笑いを浮か...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(11は省略)(12)
おれたちは靖国通りから逸れて、坂の道を新宿御苑方向へ登っていった。途中大きな交差点を渡り、人気の少ない裏通りに足を踏み入れていた。中層のビルや医院、住宅、学校などが混在する街は、二つの大通りに挟まれてひっそりと静まっていた。街灯はあっても、建物に遮られて随所に影が生まれている。不穏な気配さえ感じられなくはない。おれの腕にかかる重さが増していた。坂を登って来て、ミナコさんも疲れたのだろう。おれは、それを気遣ってミナコさんの顔を覗きこんだ。ミナコさんも何か答えようとして、おれを見たようだ。わずかに後ろへ反った角度が、おれにそう思わせた。重心が揺れていた。おれは腕をほどいて、ミナコさんの背中に手を回した。ウールのコート越しに、意外と厚みのある肉の感触が伝わってきた。おれは、もう一度確かめるように真近の顔を見た。...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(10)
駅の改札口から、会社帰りの男女がひっきりなしに吐き出されてくる。この界隈から帰っていく人びともいるわけだが、おれの目はこの駅に降り立つ者だけに向いている。女性の姿に意識が向かうのも、同じ理由だ。ミナコさんの面影に似た横顔を見つけてハッとし、いや、そんなに早く来られるはずがないと、はやる気持ちをたしなめる。その間にも人の流れはやまず、おれの注意力はつかの間散漫になる。ただぼんやりと駅頭の風景を眺めているのと、大差なかったに違いない。どれほど経ったときだろう、おれはコートに突っ込んだ左腕に何かが絡み付くのを感じた。肘よりやや上のあたり、腕と同時に脇腹をこすって差し込まれた柔らかい感触に、えもいわれぬ懐かしさを覚えて首を回した。「お待ちどうさま。寒かったでしょう?」ミナコさんが微笑んでいた。おれは、背後からの奇...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(9)
無断欠勤をニ週間続けたころ、自動車内装会社から解雇通知と給料が送られてきた。わずかだが、社内規程による一時金が付加されていた。現金書留の封筒の中に、ミナコさんからのメッセージが忍び込ませてあった。<落ち着いたら、顔をみせてね。電話してからよ>おれが逃げ帰ったあと、どんな顛末になったのか。少なくとも、おれが訪問したことだけはミナコさんに伝わっているようだった。社長の追及に、ミナコさんはどう答えたのだろう。急には状況が飲み込めず、混乱したのではないか。それなのに、怒りもせずに気配りをしてくれる。一方おれときたら、ミナコさんのやさしさに応えることもできず、ただひとり蹲っているだけだった。ミナコさんに顔向けできない状況は、あの日以来凍結されたままだった。おれは、机の引き出しを開けて、封筒を取り出してみた。<落ち着...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(8)
昼休みの早指し将棋に、おれの出番が多くなった。ゴトウさんが、おれのことを実力以上に吹聴するものだから、社員はおろか社長まで様子を見に来るようになった。何日か前のこと、横に立った長身の男の圧迫感に耐えられず、おれは身じろぎしながら振り仰いだ。その瞬間、薄ら笑いを浮かべた社長の視線が、おれからゆっくりと放れていった。理由は分からないが、おれは嫌われているなと直感した。おれの何かが癇に障ったのだろう、少なくとも好かれていないことは確かだと思った。おれは、将棋に熱中できなくなった。この日ありもしない用事をこしらえて、対戦を休んだのはそのせいだ。事情を心得た助っ人が、ゴトウさんの相手を務めることになった。「じゃあ、一丁揉んでもらいますか」気を利かすタイプの古参社員がいるのだった。やれやれと安堵の思いに浸りながら、昼...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(7)
〇「ご隠居、大谷翔平が36号を打ったらしいですよ」「昨日は三振食らってベンチでヘルメットを叩きつけていたというので心配してたんだ」〇「ネビン監督が心配いらないと言っていましたがその通りだったですね」「バカ言うんじゃないよ、あの弾丸ライナーは怒りの一発だ」〇「え?何に怒っているんですか」「拝金主義のオーナーが自分をもっと高く売ろうとしてトレードを辞めたらしいからだ」〇「ところでご隠居、錦木は優勝どころか終盤4連敗で終えましたね」「トホホ、連敗を怖れているという本人の言葉が現実になったのかいな。神様が聞いていたらしい」〇「ご隠居のいう相撲の理想形はどうなったんですかね」「もろ差しを狙う取り口が研究されて脇を固められ、強引に巻き替えようとして墓穴を掘ったな」〇「メンタルに問題があるんじゃないですか。来場所三役に...紙上『大喜利』(30)
ヨシモトは、まだインドにいるのだろうか。地球が回る音を聴くことはできたのだろうか。彼が去って、もう五年は経ったはずだ。その間、おれは転職を繰り返し、そのたびに薄汚れていったような気がする。ヨシモトが身近にいれば、おれの生き方も少しは変わっていたかもしれない。大学の道場の片隅で、彼とともに瞑想し、「あ、うん」の呼吸で宇宙と一体になることができたのだから。「あ、え、い、お、う~」心と身体を一つにして声を発し、吐き切って空になった受容体に、宇宙からのエネルギーを引き入れる。反らした上体を戻しながら、広げた両手を閉じて天を押し上げる。その所作の後、「う~ん」と身を屈めつつ祈りのポーズをとって、一つのサイクルが完了するのだ。一連の型が、空手や柔術とは異なった発想から編み出されたものであることを、おれは繰り返す動きの...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(6)
この密かな儀式のような瞬間を、もうどれほど繰り返してきたことだろう。食欲と性欲が渾然となって意識される、至福の一刻を。おれは、おれだけに与えられた豊饒の感覚を崇めて、大それた発見でもしたかのように陶酔していた。白菜がみせる裸身の美しさに、たったひとり美を見出すことのできる自分の感性に、自負を抱いていたということだ。しかし、いつまでも悦びに浸ってはいられなかった。空腹にせかされ、アルミ鍋と食材を抱えて共同炊事場に急いだ。炊事場には誰もいなかった。三つあるガス台は、どれも長年使い込んだ色と形状をしていた。ときどき家主夫人がやってきて、噴きこぼしや錆を拭き取っていくのだが、黒くこびりついた炭化物の層は、厚くなることはあっても、鉄の地肌が見えるまで掻き落とすことなどできるはずはなかった。朝のうちに誰かが使ったのだ...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(5)
夜中に、一度目が覚めた。おれは押入れを出て、廊下の突き当たりにある共同トイレに向かった。トイレと背中合わせに設置された炊事場も、明かりを落として静まり返っている。こうして水場を一箇所にまとめた作りは、住人の感情さえ斟酌しなければ合理的なのかもしれなかった。ともあれ、おれが通ってきた廊下を挟んで左右に五部屋ずつ並んだ三畳間は、どの部屋も電気が消えていた。最近引っ越していった一部屋を除いて、すべて入居者がいるはずなのに、眠りの底で死にかけているのか、呼吸の気配さえ伝わってこなかった。おれは、小用便器に勢いよく放尿した。体を保温していた小水が失われたことで、急に寒さを覚えた。ぶるっと身震いしながら、便器の上部にある金属のボタンを押した。水が薄い膜となって、湾曲した陶器の肌を流れ落ちた。レンコンの断面のようなろ過...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(4)
その夜、おれは大塚駅南口のジンギスカン料理店で、ビール一本と慣れない日本酒を飲んだ。お銚子にして二本の二級酒は、あまりうまいとは思えなかった。それでも、目の前で湯気まじりの煙を上げはじめた羊肉をほおばりながら、久しぶりの脂の味を酒で流し込んだ。どんな境遇に置かれても、その場その時の悦びはあるものだ。おれは、まだ熱をもったまま食道を下り、胃のなかに落ちていく咀嚼物を、おれの細胞が先を争って迎え入れるのを感じていた。皿いっぱいに盛られたキャベツの甘さが、マトンの味をいっそう引き立てた。燗酒、肉、キャベツ、大盛り飯、それに特製のタレがからんで、つかの間の宴を堪能させてくれた。ビールと酒が、これまでに無い酔いをもたらした。おれの足運びが怪しくなっているのを、自分でも確かめることができた。飲食店街が途切れ、西巣鴨方...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(3)
喫茶店での会話は、戦勝祝いのように沸騰した。おれは、いきり立つ若者たちの言葉を、ボックス席の底で他人ごとのように聞き流していた。おれの頭の中に、労働基準監督署の存在が浮かんだ。どれほどの力を与えてくれるものか見当もつかなかったが、諦めの思いの中で微かに点滅しはじめた希望のようなものを、若者たちに示した。反応は、予想を超えた。おれは、おれを称える若者たちの言葉に心をくすぐられたが、一方で醒めた思いが胸の中の火を覆うのにも気が付いていた。それまでの経験から、社会というものが一筋縄ではいかないことを実感していたからだろう。安易に期待を抱くことの怖さを反芻していた。「まやかしの社名を騙った社員募集です」「おれたちは被害をうけました」と、口々に申し立てたところで、どれほどの罪を問えるものか。翌日、おれたちは出社して...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(2)
夏草の生い茂ったなだらかな丘のふもとに、いつの時代のものか、発かれた石棺が陽に曝されているのを見たことがある。型枠のように草根を支えた石室の奥に、濃い暗闇が潜んでいた。伊豆の下田から石廊崎に向かうバスの中であった。丘は一筋に延びる舗装道路を境にして、二つの盛り上がる量感となり、前部の座席にいたおれを呼び寄せるように輝いていた。変わりやすいこのあたりの天候が、一刻の驟雨の後にもたらした雨上がりの風景である。おれは急速に近付く歓喜にも似た興奮の中で、ゆるやかに落ち込む二つの曲線が、極まった感情で語り合いぶつかり合う濃密な一線上を通過した。飛鳥の野で、いくらかの入場料を払って石舞台を見たのは、いつのことだったか。ほかにも天皇の御陵に近い畑中で、評判の高い貴族の石棺を見たが、それらはあまりにもあからさま過ぎて、お...思い出の連載小説『<オレ>という獣への鎮魂湖』(1)
昭和という時代を懐かしむつもりは無い。ただ、昭和を生きてきて、その影響を受けたことは事実である。わたしは、齢をかさねるごとに、自分が通り抜けてきた時代を振り返ってみる。青春時代、壮年時代、どの一日を切り取ってみても、いま老年期を生きる自分とどこかでつながっている。その意味で、自分という存在は、時代の鏡である。だが、時代は自分だけの鏡では無い。<おれ>という主人公を鏡にして、昭和を通り過ぎた多くの市井の人びとをも描きたい。そこに<時代>さえあれば、虚実織り交ぜた人間模様が主人公の周りで動き出すはずだ。懐かしむだけの時代は、古くなるが、そこに生きる人びとのいる時代は、いつまでも新しい。そのことを信じて、この物語を始めたい。(続く)(2006/02/08より再掲)思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(はじめに)
〇「おい、おい、錦木が初日から6連勝でただ一人勝ちっぱなしだぞ」「大関昇進候補の豊将龍、大栄将、若元春らの関脇陣は3人とも平幕の錦木に敗れて足踏みしていますね」〇「NHKも先場所から15連勝とか言い出して、やっと錦木にスポットライトが当たったな」「ご隠居の言う通り腰の構えがいいですね、相手はじたばたして腰が浮き投げられたり押し出されたり・・・・」〇「解説陣はもっと評価すべきだろ、あれこそ相撲の理想形だと。今の関脇は皆なまくらだから錦木に追い越されるぞ」「ご隠居すごい鼻息ですね、錦木が大関になったら脱帽しますよ紙上『大喜利』〈29〉
家の近くの樹の枝にとまってこっちの動向を窺う見張りガラス家庭ゴミの出し方に抜かりがあると仲間を呼んでたちまちワルサをする一番の狙いめはプラスチックゴミの日だマヨネーズのチューブが入っていないか袋をつつく食べ残しのポテトが入ったプラ容器も大歓迎不発の日が多くても成功体験が優先する見張りガラスは勤勉だ朝から晩まで頭上でカアー月~金までゴミの種類に関係なく見おろして抜かりがないか注意を怠らないいやいや土日でも休みなし庭畑に食べ物が捨ててないか睨みを利かすおまえら休日出勤が当たり前なのかまるで昭和のサラリーマンみたいだなあの人たちのおかげで日本は敗戦から立ち直ったみんな正社員になって会社一筋の生活だったそうか見張りガラスは縄張りを死守しているのか仲間の中でも頭抜けた存在だもんな時には食べ物を掃き清める人間にブラフ...ポエム368『見張りガラス』
〇「おい、錦木が横綱照ノ富士を投げ飛ばして2連章だぞ」」「ご隠居、先場所から11連勝ですね、大器晩成を絵に描いたような力士ですよ」〇「けれん味のない四つ相撲だけど相手は下から押し上げられるから腰が浮いちゃうんだ」「この調子だと大関・横綱まで望めるんじゃないですか」〇「藤井藤井聡太7冠王がいよいよ8冠王になるぞ」「ご隠居は早くも発汗王ですからね」紙上『大喜利』(28)
もしかしたら、ラカンは自分の存在を掴みあぐねているのだろうか。幼い時の記憶をたぐり寄せ、己が人間なのか、犬なのか、それとも風のように転げまわり、吹き荒ぶものなのか、見極めきれずに呆然と日を送っているのかもしれない。そんなことを考え始めると、桂木だって、自分がどんな存在なのか、不安になる。両親はすでになく、兄弟もいないし、妻との間に子供を授からなかったし、その妻とも離婚している。ある時期、天蓋孤独に憧れ、それを望んだことが、現在の身の上を引き寄せたのかもしれない。夢の中で、絶顛にさらされ、上空を舞う禿鷹に怯えて呻いたのは、独りよがりな生き方に対する罰だったのだと、承知している。「ご主人、ラカンの散歩を、わたしに任せてくれませんか」突然の決意が、桂木の口を衝いて出た。呆れたように彼を見つめる主人の頬に、緊張が...思い出の短編小説『ヘラ鮒釣具店の犬』(10)最終回
<二間半、二尺仕舞い、九本継ぎ>の名品は、下手な洋画などより気品があって、桂木の書斎の壁によく似合った。友人を呼ぶでもなく、家族が来るでもない桂木一人だけの城は、几帳面な性格そのままに整理が行き届いていて、実に居心地がよかった。そろそろ初夏の気配が色濃くなっている。風に運ばれてくる緑の匂いに、植物の旺盛な営みが感じられる。あまりにもあからさまな生命の活動を、桂木は好んでいなかったが、散歩をするようになってから徐々に馴染んできた。釣り竿を求めてから、十日ほどが過ぎている。その間、桂木は『ヘラ鮒釣具』の店に通じる散歩道をそれとなく避けていたのだが、この日、久しぶりに通ってみた。意外なことに、ラカンはいなかった。たまたま運動のために引き出されているのか、それならラカンのために好ましいと思った。このあたり、犬の散...思い出の短編小説『ヘラ鮒釣具店の犬』(9)全10回
翌日、桂木は郵便局で貯金を下ろして『ヘラ鮒釣具』の店を訪れた。買取りを約束した以上、一日でも引き延ばすのが嫌なのだ。桂木は、そうした性格にしばしば苦しめられてきたのだが、何歳になっても直るものではなかった。己に厳しい分、他人に対しても容赦はしない。カルチャースクールの生徒が遅刻して入ってくると、急に場面設定して、遅刻したサラリーマンと上司の役で演技をさせる。シナリオの勉強に来ているのだから、アドリブで生きた会話をしなさいと理屈は通っているのだが、教室の中に、少しずつ苛めの気分が伝播するのは否めなかった。「ご主人、桂木ですが」用意してきた名刺を差し出した。「おや、ずいぶん早い時間に・・」「約束ですから、釣り竿を頂きに参りました」「いやあ、そんなに急がなくても、竿は取っておきますのに」主人は驚いた顔をした。そ...思い出の短編小説『ヘラ鮒釣具店の犬』(8)全10回
この家の主人が、また笑った。「こいつはね、子犬のときはタケチヨと呼ばれていたんですよ。ところが三歳のころ、散歩中急に道路に飛び出して、リードを握っていたわたしの友人を引きずったものだから、運悪くトラックに接触して死んでしまったんです。はずみというのは恐ろしいですな。犬の方はこの通り無傷で、神妙な顔で家に戻ってきたんですが、奥さんが許しませんわな」しばらくの間、ヒトゴロシと罵って虐待したという。「すごい話ですね」「どちらも憐れでしょう」「それで、ご主人が引き取ったんですか」奥さんは、本当はタケチヨをかわいがっていたのだが、主人を殺す結果となった行為を許すわけにいかず、板ばさみの苦しみからノイローゼに陥った。「成犬になってから飼い主が変わるのって、大変なことなんでしょう」主人は深くうなずいた。「犬にもストレス...思い出の短編小説『ヘラ鮒釣具店の犬』(7)全10回
桂木は、父親の転勤で三度転校している。東北を振り出しに、関東、中部と移り住み、東京の大学に合格して初めて親元を離れた。その間、少年期を過ごし、最も心を許せる友人ができたのは、仙台の頃だった。ずっと官舎暮らしで、父親の姿を見るのは朝だけというような生活だったから、友達と共有する時間が宝物のような価値を持っていた。アベちゃん、タカオ、モトムラ、ヨシキくん、次々と眼裏に浮かぶ同級生の顔が、みな彼に微笑みかけてきた。(そういえば、親父と釣りに行ったことがあった)と、桂木は思った。正確には、父親と、父親の部下と三人で、澄川というところへイワナを釣りに行ったのだ。長い時間、記憶の底に沈んでいた情景が、鮮やかに甦ってくる。稀な出来事だったから、余計に印象深く心に刻まれていたのだろう。その日、小学生だった桂木は朝早く起こ...思い出の短編小説『ヘラ鮒釣具店の犬』(6)全10回
「どんなご用ですか」男がめんどうくさそうに言った。「・・実はヘラ鮒釣具という看板が掛かっていたものですから、どんなものをお作りになっているのかと、ちょっと興味を持ちまして」犬と主人の双方に気を取られながら、桂木は答えた。落ち着いた振りをしても、あわてた名残が声に残っていて、桂木を見る男の口辺に微かな笑みが広がった。「やたら興味を持たれても、どうしたらいいかわかりませんな。お客さんなら、竿が欲しいとか、浮子が欲しいとか、目的のものがあるでしょう。それなら応対のしようもありますが、単に興味を持ったと言われても、おいそれとはお答えしかねますな」桂木は、何年かぶりに赤面した。己のうろたえぶりが、信じられないほどだった。彼自身が他人に対して高飛車な態度に出ることはあっても、逆の立場に置かれたことなどなかったからだ。...思い出の短編小説『ヘラ鮒釣具店の犬』(5)全10回
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〇補欠選挙自民全敗茂木とぼける〈長崎・島根・東京〉〇植田〈日銀総裁〉岸田〈総理大臣〉の泥田コンビに穂波ナシ〈理想とする経済成長は無理〉〇無理やりの指数かさ上げ国ガタピシ〈消費者物価指数の伸び続かずデフレ回帰〉〇5月から電気・ガス補助消え大幅値上げ〈おまけに暑い夏予報=気象庁〉〇解散の芽を摘み取られ打つ手なし〈内閣総辞職もの〉俳句川柳5『自民にお灸』
〇「おばあちゃんの飴玉」とかけて「後半に強いマラソンランナー」とときますそのこころは「どちらも老い〈追い〉あげます」〇「ゴールデンウィークの年金生活者」とかけて「立ちしょん」とときますそのこころは「チン上げがないので〈世間から〉漏れます」〇「もて男のデート」とかけて「無能な芸能マネージャー」とときますそのこころは「どちらもダブルブッキングの恐れ」があります〇「大谷7号」とかけて「アイスキャンデー」とときますそのこころは「夏場にかけて量産する」でしょう〇「山本由伸2勝」とかけて「ダルマさん」とときますそのこころは高速スプリットに「手も足も出ない」でしょう新企画『ととのいました』〈25〉
〇「最近、麻生元総理の動きが目立つな」「皇位継承会議の自民党側重鎮としても目立ちますね」〇「しかも訪米してトランプとヒソヒソ会談だ」「11月のアメリカ大統領選を睨んでの行動でしょう」〇「トランプが勝つと見込んだのか」「岸田総理がバイデン大統領とフィリピン含めての三者会談をやってますからバランスがとれてます」〇「どっちが勝っても米国とつながっていたいのか」「もしかしたら外務省の戦略かもしれませんね」〇「森元総理が安部派の政治資金問題でポシャッタから新フィクサーだな」「まともな政治ができるわけありませんね。紙上大喜利56『じじいの時事ばなし』
長いこと中断されていた川辺川ダム計画が動き出そうとしている。村の一部が水没するため住民が反対していたが、先ごろ貯水ダムとしての受け入れを半世紀ぶりに表明した。関係する五木村長や県・国が地域振興策の一環として合意したことがニュースで報じられたから、実現性はかなり高くなった。五木村といえばほとんどの人が「五木の子守歌」を思い出すのではないだろうか。物悲しい旋律と方言主体の歌詞が響きあって一種重苦しい日常を想起させる。子守歌の安らぎどころか鬼気迫る怖ささえ感じさせる。<おどまぼんぎりぼんぎり盆からさきゃおらんど盆が早よ来りゃはよ戻る<おどまうっ死んちゅうて誰が泣いて呉りょか裏の松山蝉が鳴く・・だが五木村の歴史をさかのぼるともう一つよく知られた民謡がある。それは「ひえつき節」である。歌詞を見てみると椎葉村の平家落...新作KAIDANその5『五木村の歴史ロマン』
島原の乱を起こした天草四郎は、幕府軍に取り囲まれて討ち取られえたといわれているが、一方で城の井戸を抜け穴に外部に逃げ延びたとする説が残っている。当時交流のあったインドネシアの日本人街にひそかに船で運ばれたという話は、まったく信ぴょう性がないわけではない。天草四郎時貞はそもそも誕生の時から数奇な運命を背負っていた。紅蓮の炎に包まれて海上に現れたと信じる者もいる。イエス様の生まれ変わりと信じる信奉者は天草四郎にすべての望みを託した。当時から過酷な年貢取り立てに不満を募らせていたキリシタンたちは一揆軍として立ちあがった。その先頭に立って戦ったのが天草四郎時貞であり島原の乱であった。幕府軍に取り囲まれ廃城に立てこもって戦ったが、天草四郎はうまうまと脱出したと信じられている。根拠として、天草四郎の首級が見つからなか...新作KAIDANその4『四郎の末裔』
岩手県のある地方で、学校帰りの小学生が男女合わせて6名ほどでかくれんぼをして遊んでいた。その日は昼過ぎから風が強くなり、先生が早く家に帰るようよう言い渡しておいたのに気象の変化が逆に生徒たちを興奮させてしまったようだジャンケンで鬼になった三郎くんは、ほかの5人から離れて近くの芦原の中に駆け込んだ。「もう、いいかい」「まあだだよ」「もう、いいかい?」「もういいよ」と、三郎くんの声が聞こえたとき、突然芦原の中でつむじ風が渦を巻いた。5人の小学生はその場でひっくり返り、つむじ風に巻きもまれずに済んだが、芦原の中にいたはずの三郎くんの姿はなかった。話を聞いた先生方がまず駆け付け、連絡を受けた父兄や駐在のおまわりさんが次々に集まった。つむじ風に吹き飛ばされたのならその辺に倒れているのではないかと手分けして探したがど...新作KAIDANその3『帰ってきた三郎くん』
修二さんは秋になると零余子〈むかご〉の収穫をしながら自然薯の蔓の位置に目印の竹竿を刺ししっかりと記憶しておく。晩秋から冬にかけて本命の自然薯を掘るために欠かせない作業である。修二さんの家の裏山は大昔、合戦に敗れた坂東武者が逃げ込んだ場所と言い伝えられていて、武具が持ち去られた後には亡骸が放置されていたとも言われている。時代を経て亡骸は海に近い湿地に集められ、その場所はしばらく白骨が砕けて夜目にも白く光って見えたという。修二さんはこれまでに草の下から何かが出てきたといったことがなかったもので、気にすることもなく自然薯掘りに熱中した。この日も印をつけておいた蔓を探し出し、長柄のスチール製自然薯掘り器で周囲を掘りはじめた。やがて蔓の先に細い自然薯が現れた。修二さんは鎌で穴の一方を切り崩し、自然薯の全容が見えるよ...新作KAIDANその2『自然薯の涙』
喜一さんはヘラブナ釣りの名人である。ふだんは僅かな田畑を耕して生計を立てているが、冬場は釣ったフナの甘露煮を作って貝の佃煮とともに引き売りしていた。喜一さんが活動する場所は茨城県の牛久沼、流れ込む大きな川がないことから湖ではなく沼と呼ばれている。フナは溜まり水のような環境のほうが生息しやすい。県外からもヘラブナ釣りに訪れる客がいるぐらい有名な場所であった。最近では釣った魚をリリースして帰るのがマナーになっているが、喜一さんが活動した昭和の中頃には捕った魚は当然食用にされていた。ついでながら入漁料などを払う習慣もなかった。制度はあったのかもしれないが地元の人間は払わなくてよかったのだろう。ともあれ喜一さんは週に何回かはヘラブナ釣りに出掛けた。午前中から夕方まで田舟を操ってヘラブナとの駆け引きを楽しんだ。春と...新作KAIDAN①『忘れ物』
〇「おい、シーチキンて海の鶏肉という意味にとれるがおかしくないか」「マグロなど魚肉のオイル漬けなのにね」〇「知ってるな、それなら海ブドウはどうだ」「プチプチした食感の海藻ですよね、グリーン・キャビアという別名でも呼ばれています」〇「知っているのか、じゃあ何食わぬ顔ってどんな顔だ」「来た来た、大谷翔平に寄り添ってたあの人のことでしょう?」〇「信頼するのもいい加減にしないとな」「その点ご隠居は心配いりませんね」〇「トンコロとかトンずらとか、豚を馬鹿にしてないか」「知りませんよ、それよりトン死〈頓死〉しないように気を付けてくださいね」紙上大喜利55『じじいの時事ばなし』
〇歯医者で治療が終わったのでカッターやドリルの音がすごくて道路工事みたいだったと言ったらフフフと笑った。〇大谷翔平の主張が捜査当局によって裏付けられたとか。〈水原一平氏が罪を認め起訴される見通し・よかったけど一抹の疑念〉〇二階さんの後釜候補は世耕さんの鞍替え出馬のうわさに戦々恐々らしい。〈血で血を洗う抗争とか〉〇岸田総理が国賓待遇で訪米だと。〈そりゃ大変だ。マイクロソフトなど巨大企業の日本招へいは実質占領だ〉〇自衛隊と米軍の連携強化もヤバいぞ。〈指揮系統を握られ先兵として出撃だ〉〇自民党のゴタゴタ騒ぎの隙にゴールド球をにぎられたか。〈国が敗れても権力維持にいそしむ人〉〇憲法審査会が開催されたらしい。〈誰の思惑か岸田総理のうちに改正=改悪?を目論む〉ありえへん話1『国破れて山河ナシ』
堤防沿いの桜並木が満開になったばかりの今日冷たい風雨にさらされたたくさんの花びらが散歩道を覆い水面に飛んだ花が川岸に吹き寄せられる花筏になって川岸にまつわりつく乗ってみたいなあ花筏幾重にも重なり分厚い布団のよう花筏の上で眠ったらいい夢見るだろうなポエム378『花筏』
先にポムに登場したアライグマの画像です。スマホの写真ではわかりづらいでしょうが、とりあえず見てください。捕まって観念したのかおとなしくしていました。そろそろ畑に出たくなってきました。時期遅れのフキノトウの画像を載せておきます。どうぶつ番外物語トピックス1『アライグマ』
〇「とうとう出たな」「大谷翔平のホームラン第1号ですね」〇「高めが打てたから今度は膝つきスウィングだな」「昨年の活躍を思い出しますね」〇「世耕さんにも処分が出たな」「離党勧告でしょう?自民党を追い出されたら困るでしょうね」〇「萩生田殿下と松野アルマジロは御咎めなしか」「組織がしっかりしているので切るに切れないんでしょう」〇「岸田総理も処分対象のはずだがほっかむりか」「職にとどまって改革するという決まり文句で逃げましたが国民は納得していませんよ」紙上大喜利54『じじいの時事ばなし』
仕掛けた罠にアライグマがかかった覗きに行くと織の奥で蹲っている夜行性だから昨夜のうちの出来事だろう観念したのか暴れることもないおいラスカルこっちを見ろよ案外可愛い顔をしているじゃないかお前がやった所業は人間の仕業なみだゴミを収納する戸棚の戸を引き開け袋を外へ出してひっかき食い破る最初は悪意のある人間がやったと疑った市役所の開庁を待って電話をした環境保全課に回されて10時には係が来た書類を何枚も書かされ張本人は業者の手にそうかお前は特定外来生物か在来種じゃないから立場悪いなハクビシンや台湾リスと同じ扱いだ確認書を渡されてお前とはバイバイだラスカルみたいな顔で訴えたってどうにもならんわしゃ知らんそれが法治国家の定めだ許せよ人間だって入管法で隔離されるんだ日本にやってきたのが運の尽きだ・・ポエム377『アライグマ御用!』
〇元気くん〈健大高崎のピッチャー〉が今朝丸〈報徳学園ピッチャー〉破って初優勝〇健大高崎ツワモノの名が並びおり〈石垣元気のほか佐藤龍月、箱山遥人など〉〇佐藤龍月上州気質の不敵な笑み〈決勝戦でリリーフに回った〉〇国定の忠治魂直球ズバ〈決め球で見逃し三振〉〇優勝校と準優勝校は紙一重〈報徳学園も強かった〉俳句川柳5『センバツ春は健大高崎』
母は鬼無里から逃げ帰るとき幾つか渡った川の土手で幽霊草を見た旦那様に離縁されたとも知らず盆休みを口実に生家へ戻された父には後添いがいて手紙を見ると烈火のごとく怒りだしたおまえ誰と乳繰り合ったんだ旦那には子種がないはずだと書いてある母は身ごもった腹を抱え善光寺裏の口入れ屋に泣きついた後継者を欲しがる銀座の国旗屋に雇われ僕が生まれて老夫婦に可愛がられた母さんその後どうしていますか養子になった僕と以後一切の縁を絶たれた母いつか探し出して銀座で余生を送ってもらいます満月に照らされて揺れていた幽霊草の話も恐ろしかった気持ちとともにもう一度僕に聞かせてください*幽霊草という学名はありませんポエム376『幽霊草』
〇報徳〈学園〉と大阪桐蔭死闘終わる〈4対1で報徳の勝ち〉〇報徳の今朝丸〈ピッチャー〉午後の試合も丸〈正確なコントロール〉〇トケマッチ時計〈ロレックス〉預かり溶けマッチ〈消えちまった代表らを国際手配〉〇東京はあと一輪で二日待ち〈標本木に4輪のままで開花宣言なし〉〇宝ジェンヌの後輩いじめで火傷する〈阪急宝塚側が被害者へのいじめ認め謝罪〉俳句川柳4『センバツ高校野球ほか』
リビングルームのsファーの陰から『獺祭』の2お22年物が出てきたすわッ、プレミアム価格はいくらぐらい?調べてみたら大したことはない我が家ののん兵衛がいつか飲もうと大事にしすぎて家族が偶然見つけてしまったようだ我が家に『獺祭」ねえ似合わない似合わないそう思いつつまんざらでもない気持ち日本酒は若いうちに消費するもの洋酒のように古さが価値を上げるものではないスコッチでいえばシーバースリーガル12年物これなら秘蔵の価値もあるともあれそうした趣向は我が家にはないお祝いの時に多少グレードの高いサジェをグラスに分けてまずk時パイ獺祭の発見などまれなハプニングなのだポエム375『獺祭』
〇「おい、尊富士が優勝したぞ」「新入幕力士が優勝するのは110年ぶりの快挙だそうですね」〇「前日の相撲で足を怪我してたのに気力で勝ち取った優勝だ」「見上げたものです、尊富士もご隠居も」〇「大の里も石川県を代表して健闘したな」「ご隠居が10日目に予想した尊富士と大の里の直接対決が事実上の優勝戦でした」〇「錦木も最後2連勝して3勝12敗だった」「そうそう錦木は足とか腰とかどこかケガしていませんか」〇「大関陣のもろさも目立ったな」「霧島が崩れて貴景勝もバタバタ琴ノ若も伸び悩み強さを見せたのは豊昇龍だけでした」紙上大喜利53『じじいの時事ばなし』
〇大谷の飛球ショックで塀越せず〈水原イッペイ違法賭博・解雇〉〇世耕さんついに証人喚問か〈政倫審では安部派5人衆は誰も責任をとらず〉〇尊富士上位者〈大の里・琴ノ若・若元春〉破って2差を維持〈きょう勝てば新入幕優勝〉〇ロレックス預かりトンズラあれッ?クス〈客の気持ち〉〇口封じ圧政強める習・プーチン〈権力維持のため悪法連発〉俳句川柳3『ショック』
〇「おい、大谷翔平が猛打賞&2盗塁、トラウトが2発も…“なおエ”だってよ」「ご隠居、これからは救援というのをよしましょう。休演にしちゃうんだから・・・・」〇「AI論議が盛んにおこなわれているが、この先どうなると思う?」「あっしにはわかりません。藤井聡太6冠を諮問会議に呼んだらどうでしょう」〇「フィリピンから強制送還された強盗指示の容疑者4人はどうなった?」「さあ、ルフィに聞かないと何もわかりません」紙上『大喜利』(20)
ミライへ育む予算ある広報に載っていた言葉だ子供たちの未来へ予算を増やしていくという意味だろうがミライへ育む予算・・・・といわれると自信無げに聞こえる目の前に組まれた予算ではなくこれから育む予算のようだ意気込みはいいが当てにできるのだろうか市の行政にまやかしはないだろうが岸田総理の「異次元の少子化対策」には期待より疑念ミライと片仮名で表記される違和感はキツネとタヌキの親分子分に見えるからここで本気にならないと子どもの数はどんどん減っていくミライがミイラにならないように総理も市長さんも頼みますよポエム353『未来という危うきもの』
〇「おい、屋根裏の散歩者が捕まったらしいな」「ご隠居、まさかの江戸川乱歩ですね。アパートの仕切り板を壊して隣の女子大生の部屋を盗撮してたんですから」〇「それだけじゃないだろ?」「知ってますけど、それ以上はネ」〇「ところで、月面着陸は失敗したようだな?」「惜しかったですね、寸前で燃料が切れたらしいですよ」〇「民間企業で初めての月面着陸は来年きっと成功するよ」「月周回軌道から着陸予定地点まで近づけたデータは貴重ですよね」紙上『大喜利』(19)
銀座にある東方画廊での従業員同士の会話。「ちょっとさん、さっき外国人のお客様が入ってきたんだけど、あなたが爆睡していたので帰っちゃいましたよ」「あら、やだ。起こしてくれればいいのに」「それがさ、ぼくが起こそうとしたら唇に指をあてて制止するんだ。寝かせておけと言われちゃどうしようもない」「へえ、いくつぐらいの人?」「40歳ちょっとぐらいかな。ブラビに似た人だった」「わオ、起こしてよ。ほんものだったらどうするのよ」「ぼくだって、蹴り飛ばしてやりたかったさ。客逃したかもしれないぜ」7月の昼下がりの事である。ちょっとさんと呼ばれた従業員は、何か用事を言いつけられると必ず「ちょっと待って」というのでつけられたあだ名である。画廊主の友人の娘で、最初はアルバイトで入ってきたのだが、ちょっとさんの知人がボチボチやって来て...新作短編小説『指』
おいしい味を消したくないからぼくはお茶を飲まない初めて就職した会社の社員食堂で同期入社のその男はそう言った意想外の独白を聞いて頭の中が混乱したえ?そんなこと考える人いるの?緑茶の旨味に慣れ親しんできた身にはとても耐えられない発言だったその人のせいとは言わないが入社して一か月で退職した紆余曲折のあった人生だが昨夜ふとあの時の感覚を思い出した半世紀ごしの感覚がまだ納得のいかないまま残っていた人間っておかしな生き物だねこんな些細なことを引きずってきてあと何年あるかわからない余生をかさぶたを抱えたまま生きるのだろうかポエム352『半世紀ごしの思い』
〇「大谷翔平の5号ホームランは幻に終わったな」「ヤンキースのジャッジがジャンプして捕ったんですよね」〇「それだけじゃないぞ、グラブで弾き落として素手でキャッチしたんだ」「一瞬落としたかと思ったのにしっかり掴んでましたね」〇「おまけにジャッジは6号ホームランだ、すごいね」「ご隠居、ジャッジにほれ込んでますね、だけど大谷は2本差ならまだいけますよ」紙上『大喜利』(18)
別部刑事は容疑者のアパートに踏み込んだ際、包囲網をすり抜けられるという失態を演じた当事者である。容疑者のヤマワキは同棲していた女性の首を絞めて殺し、深夜JRの線路に死体を横たえて轢死に見せかけた知能犯でもある。遺体の検証は困難を極めたが、司法解剖によって轢死する前に遺体の一部に皮下出血の痕跡があることがわかった。所轄署の刑事4名は逮捕状を取るなど準備を整えて翌々朝容疑者のアパートを急襲したのだが、すばしっこいヤマワキの動きに幻惑されて取り逃がしたのは前述したとおりである。すぐに非常線を張ったもののヤマワキは網にかからず、行方知らずの状態が幾日も続いた。警察への批判が相次ぎ、まもなく公開捜査に踏み切った。モンタージュ写真を載せたビラを大量に刷って主要駅やバスターミナルで配布する一方、テレビや新聞で公開手配し...新作短編小説『耳』
トケイソウ画像は(季節の花300)より時計草は大地の腕に巻いた腕時計めしべにはお洒落な長針と短針スイス製の奇抜な職人の最高傑作どうやって時間を見るの?現代人はいつも「時」に縛られているこれは時を忘れるために創った時計だ大地の腕に巻いた腕時計には聖なる愛の花言葉が送られた八月の太陽にも平然と咲く大地の花大地はなんて素敵な存在なんだこんな腕時計を贈られて時を忘れられたらあなたにも贈呈します、とスイスの奇抜な時計職人の元にはまだ9個の腕時計が残っていて遺言と共に保管されているそうだポエム351『時計草』
〇「腹立つなあ」「わかった、原辰徳監督にハラ立っているんでしょう」〇「あれだけの戦力を持っているのに中日にも負けて最下位だぞ」「どうしてクビにならないのか不思議ですね」〇「佐々木朗希は山本由伸に投げ勝ったな」「長いイニング163キロのストレートを投げさせて労基法違反じゃないですか」紙上『大喜利』(17)
菜の花畑(季節の花300)一面にひろがる菜の花畑きれいに咲いた菜の花を見ているうちにやがて実になって油を出すんだよなどこに油が潜んでいるのだろうと疑問を持ったそういえば胡麻でも大豆でもエゴマでも植物の種はみな油分を含んでいるんだ子孫のために必要な油なんだろうな将来子孫が生きるために歯車をまわすんだこうした植物の栄養をいただきながら人間はその生態を真似するだけ脂汗をかく油を搾られるすみません何一つ実態の伴わない空虚なことばプラファスナーでも飛行機でも先生は自然界人間は飛びぬけた真似し小僧のほっかむり発明だ特許だと我が物のように主張して自然界から搾取するだけまあいいさ花や実に畏敬を抱き称え続ける謙虚さがあるうちは菜の花の黄色は幸運のシンボル菜の花畑を眺めて今日も幸せポエム350『菜の花』
〇「おい、サクラも終わったな」「ご隠居、連日花見に行ってましたがどこが良かったですか」〇「どこの桜を見てもクラサを感じてな・・・・」「やだやだ、ご隠居もっと陽気にいきましょうよ」〇「千鳥ヶ淵を見てみろよ、戦没者を慰霊する場所だぞ」「そりゃそうですけど、楽しむだけのために植えたサクラの名所がたくさんありますよ」紙上『大喜利』(16)
シャガ画像は(ウィキペデイア)よりシャガの咲く季節になってこの花は幾多のイクサを鎮撫して長い歴史を見守ってきた花だと実感するなにかの縁でこの地に移り住んで山襞に群生するシャガを愛でてきたが天然の要塞を彩るにふさわしい慰撫の花だとも戦にスポットを当てれば歴史はイクサ少ない耕作地を耕して実りを得た人びとは歴史からは記録をたどれない山では狩猟海では魚や貝や海藻をもくもくと採る生活を営んできた関東武士が開府した六百年前の記憶の裏でなんと哀れなイクサ人よ墓もつくれずに野ざらしとなるしゃれこうべいつの世にも繰り返される闘争の成れの果て安らかに眠れ鎮撫の花シャガが休みなく咲く小止みなく降り雪ぐ梅雨前(さき)の雨ああ忍耐の花シャガに雨が降るポエム349『シャガに雨』
裏山に目を転じるとシャガの花がポツポツと咲き出した。これがあっという間に群生になるのだから、うかうかしていられない。追いかけるように山吹の花が光を集めている。山吹色には縁がないが、なんとなく安心な古風植物。ちなみに上記画像は2020年5月初めにアップしたものです。今年は20日ばかり早い感じです。(春・2)裏山にシャガの花
冬の間ごぶさたしていた庭畑は、ほぼ野生化していた。クワを入れていないので、去年の野草や花たちが好き放題に咲いている。スイセンは西洋スイセン、スズランスイセンが花を競っていたが、あまり注目されないうちに季節が過ぎた。ふと目の高さに新芽をつけたキウイの枝が・・・・。冬の間に追肥をあげなくちゃと思いつつ、何倍にも薄めた液体肥料で事を済ます横着者。それでも自然な落葉をたい肥にして新芽をつけてくれた。葉っぱの下にはもう花の蕾もビッシリと。これが実になるのだからけなげなもんだ。蔓は上へ下へと勢いのまま伸びるから、地面を這う枝は支柱を入れて持ち上げなければなるまい。いやでも元気を見せなければならない季節の到来だ。(春・1)キウイがくれる元気の素
撫子の花画像は(季節の花300)よりなでしこは撫子色に咲くむかしから変わらない優しい色しとやかで慎ましくお嫁さんに最も望まれた女性の象徴ひとの通る散歩道の傍らでくさに紛れてひっそりとうえを見る者には気づかれないしたを見る者には嬉しい足もとの花おもいでは数知れずいまさら披露するのは恥ずかしいあなたに学んだ生き方だからあなたにだけは耳打ちするねなでしこさん撫子さんまた会えるといいねさようならポエム348『撫子の歌』
〇大リーグ開幕大谷(翔平)零封も逆転負け〇いつか来た道天使はいるのかエンゼルス〇弱すぎるリリーフ陣に特大ため息〇9回まで投げなきゃ勝てない?嘆き節(大谷ファン)〇エンゼルスはジャパン(WBC)のストッパー誰か買え〇大谷の降板待ってひと仕事(相手チーム)〇吉田正尚(レッドソックス)マルチヒットで好調維持〇三振をしない男の異名も冴え(吉田正尚)〇ヌートバー(カージナルス)もヒットを打ってクールな顔(ペッパーミル卒業)〇千賀(メッツ)に期待ケガ完治して4番手先発?川柳復活5『大リーグ開幕』
東の空が明るみはじめると田舎の集落は賑やかになるコケコッコーウウウー雄鶏が首を伸ばして声を振り絞るオンドリャー早く鳴かんかいボスが若いオスをひと睨みするとどの家の鳥小屋からも騒がしい足踏みが始まり時告げ鳥の声で夜の幕を巻き揚げられるつられて若い女房たちが夜具を抜け出し竈に松葉を突っ込んでマッチで火をつける細く割った薪をくべ火吹き竹で風を送るいっせいに立ち昇る白い煙の揺らぎ何百年続いてきた万葉の風景めんどりは卵をポトンと生み落とし腹が減ったと地面をつつきまわるああ夢の中のことではなくそのままでいい目覚まし時計など必要ないよ時告げ鳥がいるじゃないか少々眠い目をこすりながら火加減を見るやがて重い蓋を突き上げる湯気の匂い米が飯になる甘いかおり腹がグーッと鳴りこちらも時を告げるああなんという健康な集落よ忙しい世の中...ポエム347『時告げ鳥』
〇「ロシアがベラルーシに戦術核を供与したな」「戦況が行き詰ると核をちらつかせる、プーチンの常套手段でしょ?」〇「心配しなくていいのか?」「ご隠居、ものごとはどこでどう変化するかわかりませんからね」〇「英国がウクライナに劣化ウラン弾を供与したのも問題だろ?」「ロシアに口実を与えましたからね。紙上『大喜利』(15)
絶望の海に青い月が昇る海霧が後退し混沌の海が明らかになる人間は何万年もかけて蠢いてきたが遂にまた絶望の海を目前にしているもっと賢く進化すると夢見て来たのに手にしたのは究極の鉄器だった火と石斧に歓喜の涙を浮かべ踊り狂った記憶はまだ能皮質にあるのに月は嵐の予感に震えている海霧は跡形もなく消え去ったというのにますます濃くなる原始の海波もなく絶望の気配だけが満ちている青い月よ三日月のまま照らす月よ人間はまた原始の海に舞い戻ってきたふたたび箱舟を造る気力などあるわけはなくただただ究極の鉄器の感触を撫でさする絶望の海に青い月が昇る何万年も蠢いてきた記憶も今夜雲散する希望の欠片が残るかどうかなどもはや意中にない月夜が青く広がるポエム346『絶望の海』
〇「WBCは世界一を勝ち取って国中大フィーバーだけど、その後いく日焼き直し画像を見させるんだ?」「そういうご隠居も朝から晩まで見ていたじゃないですか」〇「翠富士は連日がんばっているけど2連敗しちゃったな」「大相撲ですか、ドングリを並べたようなものですから誰が転がっても不思議はありませんよ」〇『この次はサッカーで盛り上がるか」「そうですね。ウルグァイ戦に三苫が先発するそうですし」紙上『大喜利』(14)