思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(13)
ほどなくサンドイッチが運ばれてきた。野菜と生ハムを薄めのフランスパンに挟んだ、オリジナル商品だった。レタスもトマトも新鮮だったし、幾重にも巻いて花弁に見立てたハムは、塩と洋がらしと空気の弾力を味方にして、食べる者を幸せな気分にした。カップが大きめだったせいか、残りのコーヒーがオリジナルサンドの味を引き立てた。ミナコさんも、たっぷりの紅茶で軽食の仕上げが出来、満足の表情を浮かべた。ミナコさんが支払いを済ませるのを待って、おれはレジ係も兼ねる先刻のウェイトレスに声をかけた。「いま出て行った男の人、どこかで見たような気がするんだけど、たしか将棋関係のかたですよね」「ええ、飛田四段です。最近、テレビにも出演しましたから、そこで観られたのでは・・」ウェイトレスは、誇らしげに言った。「ああ、そうだったんだ。ところで、...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(13)
2023/07/31 00:06