〇補欠選挙自民全敗茂木とぼける〈長崎・島根・東京〉〇植田〈日銀総裁〉岸田〈総理大臣〉の泥田コンビに穂波ナシ〈理想とする経済成長は無理〉〇無理やりの指数かさ上げ国ガタピシ〈消費者物価指数の伸び続かずデフレ回帰〉〇5月から電気・ガス補助消え大幅値上げ〈おまけに暑い夏予報=気象庁〉〇解散の芽を摘み取られ打つ手なし〈内閣総辞職もの〉俳句川柳5『自民にお灸』
斬新な切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設17年目に入りました。
自然と共生しながら、生きてきました。 ここでは4,000字(原稿用紙10枚)程度の短い作品を発表します。 <超短編シリーズ>として、発表中のものもありますが、むかし詩を書いていたこともあり、コトバに対する思い入れは人一倍つよいとおもいます。
その夜、隣人は帰ってこなかった。何があったのだろうと考えて、おれの眠気も吹っ飛んでしまった。明け方になって、とろとろと眠ったようだったが、なんとも不快な気分で目覚まし時計に起こされた。梅割り焼酎のげっぷが突き上げてきた。二日酔いというほどではないが、胃の調子が悪いのは確かだ。湯で薄めた牛乳と共に、胃腸薬を飲んで家を出た。しばらく顔を合わせていなかった紺野が、新たな事務所開設の挨拶を兼ねて、昼前にやってきた。万世橋に格安の貸事務所を見つけたとのことで、紺野はご機嫌だった。もともとの神田一帯のお得意さんにも近いし、秋葉原の電機街から上野周辺までカバーできるということで、前途洋々の展望を語ってひとり悦にいっていた。おれは、内心そんなに旨くいくかよと、紺野の見通しの甘さをあざ笑っていた。いくら場所が好いといっても...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(40)
その日は、午後から大学に行くアルバイトの写植オペレーターと入れ替わりに、懸案の『こども相撲大会』用チラシ作成に取り掛かった。こどもの日の前日、五月四日の縁日を開催日としているから、それほど、のんびりとはしていられない。おれは、レイアウトを考え、写植を打ち、台紙を作り、その夜のうちに貼りこんだ。出来上がった版下を元に、校正用の清刷りを作り、翌日、巣鴨地蔵通り商店会会長宅を訪れた。前もって連絡をしておいたので、『こども相撲大会』の実行委員でもある若手の事務局員が同席して、その場で校正をしてくれた。たいした手直しをすることなく、責任校了にこぎつけた。おれの提案で近隣の小学校までチラシ配布の範囲を広げることになり、受注枚数が大幅に増えた。「うん、よかったね。企画段階からアドバイスできるようになれば、最高だよ」多々...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(39)
なにを言うのかと、不満もあらわに、立会いの係官を振り返った。「しゃべらなくても、会話をしているんです・・」きびしく思いを口にしながら、声を荒げなかったことで、なんとか治まりは付きそうだと直感した。年恰好をみても、看守と呼ばれる職業に就いて、かなりの経験を積んできたはずの男である。制帽の下の表情は判らなかったが、定位置で平然と立っている姿勢からは、おれの言葉に、ことさら反応した様子は見られなかった。むしろ、挑発するぐらいの気持ちで先制打を放ち、面会をコントロールしているのかもしれない。それが彼らの楽しみになっている可能性もあった。おかげで、金縛りがいっぺんに解けた。この場の状況に即して、急に頭が働き始めた。「すみません、もう少し時間をいただけませんか」おれは、言葉を選んで申し立てた。係官はあっさりと認めた。...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(38)
綾瀬駅で降りると、東京拘置所までの道順が矢印で示されていた。降りてみて、初めて、おれの乗ってきた電車が、地下鉄千代田線との共用車両であることを知った。このところ、国鉄と私鉄の相互乗り入れが進んでいて、利用者には便利になったわけだが、むかしの知識や経験にとらわれている者には、すんなりと理解しがたいところもあった。再編を進めて、効率化を図る。世の中、大胆に仕組みを変えて、より利潤を追求していく考え方が、広範に受け入れられつつあった。早い話が、これから向かう東京拘置所だって、巣鴨プリズンとも呼ばれた歴史ある拘置所が廃止されて、ほんの数年前に小菅の地に移転してきたものである。ちょっと油断をしていると、東京裁判の記憶とともに、古びた塀を回らした暗鬱な拘置所の存在そのものまで、忘れ去られそうな雰囲気であった。現に、旧...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(37)
おれは、机の上の原稿をじっと見つめた。紺野は、彼なりの感覚でチラシのレイアウトを考えたのだろうが、きのう暗室で乾燥させていた印画紙を思い出すかぎり、飾り文字の選び方、変形文字の組み合わせ方なども、いかにも平凡で面白みに欠けていた。見出し用の書体ひとつを取ってみても、もっと柔軟に考れば、子供たちの躍動する姿にぴったりのものが選び出せただろうにと、まだ目に残っている文字列の数々を検証していた。その印画紙は、いま、ここにはない。多々良の指示で、破棄されたのかもしれない。その上で、おれに新たな版下の作成をうながして、元原稿を置いて行ったに違いなかった。だが、一度汚された原稿は、すぐには立ち上がってこなかった。この紙片を初めて目にしたのであれば、うれしさもあって、紙の上の文字が、こども相撲のようにぐるぐると回りなが...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(36)
たたら出版で、写植を打ち、冊子の編集を手伝い、営業にも力を注ぎながら、おれはミナコさんとの面会のチャンスを探っていた。渦中の自動車内装会社の所在地から見当を付け、巣鴨署を尋ねると、管轄は大塚署だと教えられ、その足で護国寺に近い大塚警察の殺風景な窓口を訪れた。入口で、六尺棒を突いて来署者を威圧する武闘服姿の警官は、いずこにあっても似たような体型をしていた。いきなり暴漢に刺されても、肉の厚さで致命傷を免れるに違いないと思わせるような頑丈な体躯だ。刑事との攻防で、警察に対して過敏になっているおれは、肉体の強靭さまで加わった迫力に圧倒されて、つい尻込みをしそうになっていた。だが、おれ自身への疑惑は晴れたはずだと思いなおして、面を確かめる警備要員の鋭い視線に耐えた。この調子では、ちかごろ叫ばれるようになった<地域密...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(35)
数日後、おれのもとに二人の刑事が尋ねてきた。ミナコさんについての詳しい状況は教えずに、ミナコさんとおれの関係について、ひたすら聞き出そうとした。気に障るような質問も厭わず、ただただミナコさんの犯罪が、おれに起因しているのではないかという見込みで、動いているようにみえた。おそらく、刑事たちの頭の中には、昨年の秋ごろ世間を騒がせた『滋賀銀行女子行員9億円詐取事件』の概要があったのだろう。あのときは、途方もない金額のカネを貢がせた愛人の男まで逮捕しているから、初めからそうした図式で捜査を進めていたようだ。おれは、最近やっと作った郵便局の貯金通帳まで見せて、身の潔白を訴えた。刑事たちは、薄ら笑いを浮かべて「そんなカネの話を訊いているのではない」と、あからさまに首を振った。「それほど疑うのなら、家宅捜索でも何でもや...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(34)
アパートに帰り着くと、さすがに疲れを覚えた。病み上がりの身には、きょう一日の出来事はきつ過ぎた。ミナコさんの消息が、こんなかたちで明らかになろうとは、想像もしていなかった。心の隅に、安堵に似た気持ちが湧いていたが、大きな愕きに圧倒されて、思考の道筋を辿れないでいた。(ミナコさんは、いま、どこにいるのだろう?)新聞を確かめると、宮城県警によって身柄を拘束されたらしい。東京に居られず、ふるさとの山形にも帰れず、中途半端な仙台あたりで一ヶ月あまりを過ごしていたのだろう。自動車内装会社社長から逃げ、おれとの約束も寸前で回避し、ひとり不安に耐えていたことを想像すると、おれの胸も切なさに震えた。(会いに行きたい。・・すぐに、会いたい)だが、それが望み通りに叶う状況とは思えなかった。おれの身の回りの限られた世界から見る...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(33)
あの男は、素人ではあるまいと睨んだ。人のいいチンピラか、組に属さない日陰者だろうと結論付けた。上京したてのミナコさんが引っかかったインチキ芸能プロダクションの男よりは、ずっとマシなのではないか。彼の話が嘘でなければ、自分の腕が腫れ上がるほど仕事に打ち込む、見上げた根性の職業人なのである。それにしても、楽に見える商売ほど苦労は多いのだと悟らされた。おれは、マンダ書院で味わった半端者の悲哀を思い出し、現在の充実した毎日と比べて、どれほど心のゆとりに違いがあったかを反芻した。多々良に対する感謝の気持ちが、おれの中でますます膨らんだ。一方、ミナコさんへの心配は募るばかりだった。おれの思いあがった行為は許されないとしても、ひと言、詫びをいう機会を与えてもらうことは出来ないのだろうか。あまりにも唐突な別れの決断に、手...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(32)
翌朝、おれは、ふらつきながら家を出た。朦朧とした意識のなかで、たたら出版への執着がおれを衝き動かしていた。会社に着くと、社長の多々良に、たちまち最悪の体調を見抜かれた。誰が見ても憔悴した顔付きだったから、見抜かれたというより、気付いてもらうための出勤といってもよかった。「いやあ、これはひどい」多々良は、おれの額に手を当てて診断を下した。「・・すぐに、病院へ行ったほうがいい」おれは、社長が呼んだタクシーで、九段坂にある病院へ運ばれた。まだ壮年の多々良は、痩躯のわりには力があって、おれに肩を貸し、ときには抱えるようにして、救急受付の看護婦におれを引き渡した。マスク代わりに巻いていた襟巻きを外され、若い当直医によって診察を受けた。あと一時間もすれば、通常の診療時間帯に入る微妙さに、医師はちょっぴり浮かない表情を...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(31)
次の日も、その次の日も、連絡はとれなかった。おれは、焦燥の真っ只中に置かれていても、たたら出版への出勤を止めることはなかった。理由は判っていた。一字、一字、写植の文字を打ち込んでいる瞬間だけは、苦しさを忘れていることができたからだ。それでも、昼休みの休憩に入ると、おれは信号ひとつ分、九段下方向へ歩いて、雑貨屋の角にある電話ボックスまで、電話をかけに行った。何度ダイアルを回しても、受話器が取られることはなかった。昼だけではなく、夜も同じことをした。仕事が終わると、帰りがけに、あっちこっちで電話をかけた。飯田橋で電車に乗る前にかけ、新宿では乗り換えの合間に鉄道弘済会の売店に走って、電話機を確保した。そうしていないと、ミナコさんの存在が、おれの目の前から永久に消えてしまいそうな恐怖を覚えるのだ。呼び出し音が鳴っ...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(30)
翌週、おれは、たたら出版に出勤し、残業も含めてくたくたになるほど働いた。ミナコさんが会社を辞めることになれば、アパートの家賃をはじめ、ふたりが当面暮らしていくための生活費を確保しなければならない。中野のアパートは、狭いとはいえ二部屋あり、バストイレ付きの所帯用だから、おれの給料から捻出するにはなかなか大変な金額だった。自動車内装会社社長をあれだけ痛めつけたのだから、ミナコさんは当然辞めることになる。そうすれば、ミナコさんからの援助は、すぐにも途絶えてあたり前だった。その上、新婚まがいの生活をするのだから、おれの肩にかかる負担は想像を超えたものになりそうだった。(一生懸命働けば、何とかなるだろう)おれは、急に現実味を帯びてきた不安を吹き飛ばすように、首を振った。週末になって、おれは、ミナコさんが現れるのを、...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(29)
おれは、暴力で打ちのめされたものが、容易に立ち直れないことを知っていた。マインドコントロールなしには、ボクサーでさえ無理なはずだ。それが、恐怖というものだ。だが、万が一ということもある。おれは、奴の目を覗き込みながら、耳に息がかかるほど口を近付けて、コトバを押し込んだのだった。「おまえ、赤ちゃんプレーが好きらしいな」奴の耳元で囁いた駄目押しの効果を、推し量った。切り札が、完全におれの手に移っていることを、認識させたのだ。おれは、奴の喉仏に金属の冷たさを押し当て、胸元から体をずらした。右膝で最後まで押さえ込んでいた利き腕から、体を放した。先に立ち上がり、奴がサウスポーであったことを、無意識のうちに考慮していた自分に気付いた。この男は、いま、やむなく退場せざるを得なくなった事態を、まったく予測していなかったの...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(28)
一月末の引越しを念頭に、おれは段取りをつけることにした。「今度の休みの日に、荷物の下見に行ってもいいですか」「そうねえ・・」ミナコさんは、ためらいを見せた。「大きなものは、みな処分するつもりなんだけど」できるだけ、おれの手を煩わせたくないという気持ちは、わからないわけではなかった。「・・でも、引っ越しって、なかなか考えた通りに行かないものですよ。こっちも狭いところだから、何をどこへ置くか、多少の見積もりをしておかないと拙いでしょう」おれの押しに屈して、ミナコさんも同意した。当日、おれが白山上のマンションに着くと、すでにミナコさんは身の回りの衣類などを、堅牢なプラスチックの箱に収納しはじめていた。「忙しいのに、ごめんなさい」おれを迎えて、少し恥ずかしそうにした。太腿から足首にかけて漏斗状に細くなる黒のスキー...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(27)
イノウエの話を聞いているうちに、おれの中ではひとつの結論が出ていた。「こうなったら、別れるしかないな」何分かあとには、そう答える自分の姿が目に浮かんでいた。おそらく、イノウエも離婚を念頭に置きながら、おれに背中を押してもらいたくて、今日ここに来たのだろう。どのように取り繕ってみても、いったん目覚めさせてしまった怪獣は、もう押さえ込むことなど出来ないのだ。おれは、マンダ書院で一緒に働いていたころの佐鳥さんを思い出し、そういえば、本を抱えてマイクロバスから出て行く反り気味の後ろ姿が、妙に女らしさに欠けていたようだと、いまさらながら思い当たる気がする。新宿でのささやかな披露宴の席で、花嫁らしく振舞っていた佐鳥さんに普通以上の感銘を覚えたのも、訪問販売に向かう際の彼女の背中に、男だけが持つ悲哀のようなものを見てい...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(26)
本郷通りに出て、左に曲がったところに、フランス風田舎料理を食べさせる小さな店があった。ミナコさんはときどき訪れるらしく、濃いルージュをつけ、大胆なカーブの眉を描いた女主人が、満面の笑みを浮かべて迎えてくれた。「きょうのメインは、霧島産の雛鳥と西洋野菜の付け合せよ。スープはそら豆をうらごししたもの。シャンピニオンのクリーム煮もあるわよ」説明しながら、おれの方にもちらりと視線を流す。笑みを絶やさないから、なにやら勝手な想像をされているようで落ち着かなかった。最初、怒っているように見えたミナコさんも、前菜が終わり、メインディッシュにかかるころには、機嫌を直していた。「わたしねえ、いずれ、あのマンションを出るわ。でも、それまでは、目立たないで居たいの」確かに、ふたりの男が交互に出入りしていたら、周囲の噂にもなろう...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(25)
はっきりと了解を取ったわけではなかったが、おれは名画座を出た足で、白山上にあるミナコさんのマンションに向かった。水道橋まで一駅電車に乗り、そこから白山通りをたどる路線バスに乗り換えた。数年前までは、都電が走っていたころの名残で一部石畳の狭い道路が残っていたが、現在はほぼ拡幅工事も終えたようで、ある時期まで立ち退きを拒んでいた西片町境の中華飯店やビリヤード場も、いまは跡形もなく消えていた。白山二丁目を過ぎると、おれは、紺野から聞いたメメクラゲのオペレーターのことを思い出し、その男はどの辺りで仕事をしているのだろうかと、バスの窓から写植屋の看板を探した。もっとも、そんな思いつきに答えてくれるほど東京の街は狭くない。ただ、左側に見える街並みは、区画整理にもまったく関係しなかったのか、古い木造の家が軒を接して続い...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(24)
〇「そうそう神風は吹かなかったな」「そうですね、なでしこジャパンはスウェーデン戦でクロスバーに嫌われましたね」〇「大谷のホームランも40号でストップしちゃったし今週はツキがない」「さすがに疲れたんですね、痙攣というのが心配です」〇「台風だけは疲れ知らずだ。6号は沖縄を二度もいたぶるし、7号は本州直撃の構えだしな」「ご隠居、もう一人疲れ知らずの人がいますけど・・・・」紙上『大喜利』(31)
おれが木更津から戻った夜、ウイークデイにも係わらず、ミナコさんがやってきた。チャイムに応じて玄関のドアを開けると、そこに項垂れたミナコさんの姿があった。「どうしたの・・」トラブルがあったことは、現れ方で明らかだった。おれは、ずぶ濡れで転がり込んできた雷雨の時と同じように、腕を広げて受け止めようとしたが、ミナコさんは俯いたまま三和土に立っていた。「えっ、その顔どうしたのよ」おれは、初めて異変に気付いて、ミナコさんの顎を上に向けさせた。右目の下から頬骨にかけて、野球のボールでも当たったように、紅く腫れ上がっていた。「まさか、殴られたんじゃないでしょうね」おれの頭の中で、閃光が走った。「あの野郎、ミナコさんを殴ったんだね!」地方の大学で、サウスポーの投手として活躍したこともあるという証拠の写真を、社長室で見たこ...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(23)
秋の一日、おれは、木更津まで本の納品に行く多々良社長に同行して、ドライブをすることになった。写植の仕事は、紺野ともう一人のパートナーに任せ、軽自動車に自費出版の歌集五百冊を積み込んで、飯田橋を出発した。京葉道路から国道十六号に入り、海岸沿いの工場地帯を経て、袖ヶ浦を通過するころには、もう昼の十二時半を過ぎていた。「いやァ、渋滞ですっかり時間を食ってしまったね。ところで、きみ腹が減ったんじゃないか」「はい。でも、我慢できますよ」「いや、このままお客さんの家に行ったら、食事をする暇がなくなるよ。どこか、車を停められそうな店があったら、そこで食べていこう」おれは、まもなく藍染の暖簾を下げた蕎麦屋を見つけ、ここでいいかと多々良に了解を求めた。店の横に、ニ三台停められる駐車場があり、おれはそこに軽自動車を乗り入れた...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(22)
その夜のカミナリは、いったん去ったかに見えたが、夜半になって再び舞い戻ってきた。まれにみる規模の界雷であった。おれとミナコさんは、またも電燈を消して、夏掛け布団を頭からかぶった。そうやって二人で作った暗がりに潜んでいると、誕生の秘密に出会えるような不思議な感覚に包まれる。退行催眠とは、このようにして導かれるものかもしれないと、おれは思った。暗がりの質は違っても、被験者をその中に誘導し、見え隠れする記憶の断片を拾い集めながら、川を遡らせるのではないか。おれは、断続的に続くミナコさんの物語を聞きながら、いつしか、おれ自身の思い出を手繰りはじめていた。何度も繰り返した仕事探しの雑な記憶の先に、上京するおれを見送ってくれた叔父との別れが、ぼんやりと浮かんできた。叔父は、おれが電車に乗り込む寸前まで、胸に抱えた風呂...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(21)
別れるまでには、紆余曲折があっただろうと、おれはミナコさんを思いやった。婚姻届まで出した関係を解消するには、想像もつかないエネルギーが要ったに違いない。いきさつを聞こうとは、思わなかった。ミナコさんも、こまごまと話そうとはしなかった。ひとたび時間を遡りはじめれば、山形から希望に満ちて上京した少女が東京という罠にかかって苦しんだ日々を、すべて再現しなければならなくなる。「ひどい奴だ!絶対に許せない」おれは、義憤にかられて、うなり声をあげる。いま、目の前にその男がいたら、有無を言わさず殺してやりたいと思う。<ヒモ>と呼ばれる男たちの用意周到なたくらみを知って、同じワルでも最低の部類に属する悪党だと、歯軋りした。ミナコさんは、挫折はしたが自暴自棄にはならなかった。当時、結婚して横浜に住んでいた姉が、なにかと面倒...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(20)
暗い中でドアノブに手をかけながら、もう一方の手で室内灯のスイッチを探していた。「どなた?」「あけて・・」紛れもないミナコさんの声だった。玄関の、それほど高くもない天井の蛍光灯がパチパチと瞬いて点き、おれが押した鉄扉の隙間から、ミナコさんが転がりこんできた。「どうしたの、こんな日に・・」おれは、思わず手を差し伸べてミナコさんを抱きとめた。ポロシャツに短パン姿のおれの胸部に、ずぶぬれのブラウスが張り付いた。身構える間もなく押し付けられた湿り気と冷たさが、おれの意志を無視して、生理的な反応を見せた。「ううッ。・・可哀そう。一番ひどい降りに出くわしちゃって」おれは、一瞬見せてしまったためらいをかき消すように、あらためて強く抱きしめた。ミナコさんは、濡れていることなど眼中にないように、「来たわよ、わたし来たわよ」と...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(19)
家庭菜園というジャンルにかろうじて入るのは5~6月まで相手をしてくれたヒラサヤエンドウのみ。7月になると暑くて、ほとんど手入れをしない庭畑は青じそとオシロイバナに占領されている。そうした中、野生の勢いで毎年実りを与えてくれる茗荷の花芽が顔をのぞかせた。7月下旬~8月中旬の暑い盛りに密集した茗荷の葉茎の根元に這いつくばって収穫する。最初は十数本でやめたが次の日は30本以上、その次の日は20本ぐらい摘み取って一部はそうめんのツマ、その他は酢漬けにして保存している。密閉できる保存瓶に茗荷と梅干しと大葉を詰め込み、塩と酢を塩梅して寝かせ、適宜取り出しては副菜にしている。ささやかな暑気払いには欠かせない一品だ。茗荷の収穫
夕方五時から、新宿区役所通りに面したレストランの一室を借り切って、イノウエと佐鳥さんの結婚披露パーティーが催された。おれが会場となる部屋に入って、受付の女性に会費を払っていると、友人に囲まれて談笑していたイノウエがおれを見つけて近寄ってきた。「やあ、おめでとう」先手を打って、挨拶した。「いやあ、うれしいです。忙しいところを来て頂いて、ほんとに申し分けなかったです」イノウエは、ほんの少し大人になった表情を見せて、おれに謝った。礼を言うつもりが、詫びの言葉になるのがいかにもイノウエらしかった。佐鳥さんは同年配の女性たちと並んで、写真を撮られていた。すでに、おれに気付いていて、写真が終わると、髪に挿した大輪の花を揺らしてイノウエの傍にやってきた。「お久しぶりです」白いドレスが似合っている。マンダ書院にいたときに...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(18)
「ぼくは、何があっても別れないからね」おれは、呟くように言った。「わたしだって、あなただけなのよ」ミナコさんも、眩しそうにおれを見返した。「・・覚えているかしら、わたしの顔を、まじまじと見てくれた日のこと。あの時、営業のひとと話をしていても、ポーッとして何も覚えてないのよ。わたし、あんなふうに見つめられたの初めてだから、もう気が飛んでしまって」ミナコさんは、頬を上気させていた。おれは、たしかに魅入られたように立ち尽くしていたはずだ。そのときの情景を思い出し、闇を銜えていたミナコさんの唇が、いまも、そのまま、目の前にあるのを静かな喜びのなかで確認していた。「おんなって、他のものは一切目に入らない・・というほど、見つめられてみたいものなのね」ミナコさんは、自分に確かめるような口調で呟いた。「・・あなた、あの日...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(17)
東大安田講堂に立てこもった学生が排除されて以来、目標を見失った若者たちは、呆然とした思いで日を送っていたはずだ。放水という変幻自在の弾圧の前に、誇りをぐしゃぐしゃにされた学生たちは、拠って立つ抵抗原理まで濡れ鼠にされ、へたったダンボールとともに地に落とされた。銃で撃ちもせず、時計塔から飛び降りもさせなかった権力側の冷酷な計算が、いまになって明瞭に意識される。一方、社会の底辺で隠者のごとく生きてきたおれは、騒然とした時代の終焉を冷ややかに眺めていた。多少の無気力さは、むしろ歓迎するぐらいの気持ちで、その後の推移を見守っていた。写植機の操作にも慣れ、出版社や印刷会社のほか、商店や公共機関からの仕事をこなせるようになると、おれの意欲は高まり、世間の沈滞とは逆に元気を増していった。ゴシック体や太明朝体の見出しを作...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(16)
おれが、もっとましなアパートを借りたいと言うと、ミナコさんは一も二もなく賛成した。もちろん、すぐに住居を変えることなど出来るはずはなく、おれも真剣に働いて早くそれを実現したいとの願望を述べただけだった。ところが、ミナコさんは、来月にも引っ越しが出来るように、明日から部屋探しを始めようという。仕事の合間を縫って、おれを手助けしてくれるつもりらしい。自動車内装会社の経理責任者として、また、認めたくはないが、週の半ばに訪れる社長を待つものとして、時間の重なりをどう捌くつもりなのか。おれの願いが、期せずしてミナコさんの立場を狂わせ、事態をこじらせ始めたことに、まだ気が付いていなかった。「新しいアパートに移ってから、ゆっくりと仕事を探せばいいわ。お給料が入るまでは、わたしが立て替えておきます」それで好いかと、一応お...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(15)
沸騰した薬缶の湯も、部屋に持ち帰リ急須に注ぐころには、ちょうど緑茶に適した温度になっているはずだ。おれは日常の経験をもとに、間合いを計る要領でゆっくりと部屋に戻った。ミナコさんが後ろを振り返った。本箱に本を戻し、もう一度おれの手元に視線を向けた。「あらあら、わたしが淹れましょうか」「いえ、危ないからぼくがやります」薬缶を小机の上に置き、金属製のトレイに伏せてある急須と湯飲みを据え直す。いま洗ってきた客用の茶碗も共に並べて、準備完了となる。スーパーマーケットで買ってきた緑茶の袋から、直接茶葉を小出しする。薬缶からお湯を注ぎ、一呼吸置いて二つの湯飲み茶碗に注ぎ分ける。値の安い茎茶であっても、心をこめて淹れれば味も香りも引き出せると思った。「このお茶の飲みごろは、一瞬ですから」おれは、冗談を言いながら勧めた。「...思い出の連載小説『<おれ>という獣への鎮魂歌』(14)
「ブログリーダー」を活用して、正宗の妖刀さんをフォローしませんか?
〇補欠選挙自民全敗茂木とぼける〈長崎・島根・東京〉〇植田〈日銀総裁〉岸田〈総理大臣〉の泥田コンビに穂波ナシ〈理想とする経済成長は無理〉〇無理やりの指数かさ上げ国ガタピシ〈消費者物価指数の伸び続かずデフレ回帰〉〇5月から電気・ガス補助消え大幅値上げ〈おまけに暑い夏予報=気象庁〉〇解散の芽を摘み取られ打つ手なし〈内閣総辞職もの〉俳句川柳5『自民にお灸』
〇「おばあちゃんの飴玉」とかけて「後半に強いマラソンランナー」とときますそのこころは「どちらも老い〈追い〉あげます」〇「ゴールデンウィークの年金生活者」とかけて「立ちしょん」とときますそのこころは「チン上げがないので〈世間から〉漏れます」〇「もて男のデート」とかけて「無能な芸能マネージャー」とときますそのこころは「どちらもダブルブッキングの恐れ」があります〇「大谷7号」とかけて「アイスキャンデー」とときますそのこころは「夏場にかけて量産する」でしょう〇「山本由伸2勝」とかけて「ダルマさん」とときますそのこころは高速スプリットに「手も足も出ない」でしょう新企画『ととのいました』〈25〉
〇「最近、麻生元総理の動きが目立つな」「皇位継承会議の自民党側重鎮としても目立ちますね」〇「しかも訪米してトランプとヒソヒソ会談だ」「11月のアメリカ大統領選を睨んでの行動でしょう」〇「トランプが勝つと見込んだのか」「岸田総理がバイデン大統領とフィリピン含めての三者会談をやってますからバランスがとれてます」〇「どっちが勝っても米国とつながっていたいのか」「もしかしたら外務省の戦略かもしれませんね」〇「森元総理が安部派の政治資金問題でポシャッタから新フィクサーだな」「まともな政治ができるわけありませんね。紙上大喜利56『じじいの時事ばなし』
長いこと中断されていた川辺川ダム計画が動き出そうとしている。村の一部が水没するため住民が反対していたが、先ごろ貯水ダムとしての受け入れを半世紀ぶりに表明した。関係する五木村長や県・国が地域振興策の一環として合意したことがニュースで報じられたから、実現性はかなり高くなった。五木村といえばほとんどの人が「五木の子守歌」を思い出すのではないだろうか。物悲しい旋律と方言主体の歌詞が響きあって一種重苦しい日常を想起させる。子守歌の安らぎどころか鬼気迫る怖ささえ感じさせる。<おどまぼんぎりぼんぎり盆からさきゃおらんど盆が早よ来りゃはよ戻る<おどまうっ死んちゅうて誰が泣いて呉りょか裏の松山蝉が鳴く・・だが五木村の歴史をさかのぼるともう一つよく知られた民謡がある。それは「ひえつき節」である。歌詞を見てみると椎葉村の平家落...新作KAIDANその5『五木村の歴史ロマン』
島原の乱を起こした天草四郎は、幕府軍に取り囲まれて討ち取られえたといわれているが、一方で城の井戸を抜け穴に外部に逃げ延びたとする説が残っている。当時交流のあったインドネシアの日本人街にひそかに船で運ばれたという話は、まったく信ぴょう性がないわけではない。天草四郎時貞はそもそも誕生の時から数奇な運命を背負っていた。紅蓮の炎に包まれて海上に現れたと信じる者もいる。イエス様の生まれ変わりと信じる信奉者は天草四郎にすべての望みを託した。当時から過酷な年貢取り立てに不満を募らせていたキリシタンたちは一揆軍として立ちあがった。その先頭に立って戦ったのが天草四郎時貞であり島原の乱であった。幕府軍に取り囲まれ廃城に立てこもって戦ったが、天草四郎はうまうまと脱出したと信じられている。根拠として、天草四郎の首級が見つからなか...新作KAIDANその4『四郎の末裔』
岩手県のある地方で、学校帰りの小学生が男女合わせて6名ほどでかくれんぼをして遊んでいた。その日は昼過ぎから風が強くなり、先生が早く家に帰るようよう言い渡しておいたのに気象の変化が逆に生徒たちを興奮させてしまったようだジャンケンで鬼になった三郎くんは、ほかの5人から離れて近くの芦原の中に駆け込んだ。「もう、いいかい」「まあだだよ」「もう、いいかい?」「もういいよ」と、三郎くんの声が聞こえたとき、突然芦原の中でつむじ風が渦を巻いた。5人の小学生はその場でひっくり返り、つむじ風に巻きもまれずに済んだが、芦原の中にいたはずの三郎くんの姿はなかった。話を聞いた先生方がまず駆け付け、連絡を受けた父兄や駐在のおまわりさんが次々に集まった。つむじ風に吹き飛ばされたのならその辺に倒れているのではないかと手分けして探したがど...新作KAIDANその3『帰ってきた三郎くん』
修二さんは秋になると零余子〈むかご〉の収穫をしながら自然薯の蔓の位置に目印の竹竿を刺ししっかりと記憶しておく。晩秋から冬にかけて本命の自然薯を掘るために欠かせない作業である。修二さんの家の裏山は大昔、合戦に敗れた坂東武者が逃げ込んだ場所と言い伝えられていて、武具が持ち去られた後には亡骸が放置されていたとも言われている。時代を経て亡骸は海に近い湿地に集められ、その場所はしばらく白骨が砕けて夜目にも白く光って見えたという。修二さんはこれまでに草の下から何かが出てきたといったことがなかったもので、気にすることもなく自然薯掘りに熱中した。この日も印をつけておいた蔓を探し出し、長柄のスチール製自然薯掘り器で周囲を掘りはじめた。やがて蔓の先に細い自然薯が現れた。修二さんは鎌で穴の一方を切り崩し、自然薯の全容が見えるよ...新作KAIDANその2『自然薯の涙』
喜一さんはヘラブナ釣りの名人である。ふだんは僅かな田畑を耕して生計を立てているが、冬場は釣ったフナの甘露煮を作って貝の佃煮とともに引き売りしていた。喜一さんが活動する場所は茨城県の牛久沼、流れ込む大きな川がないことから湖ではなく沼と呼ばれている。フナは溜まり水のような環境のほうが生息しやすい。県外からもヘラブナ釣りに訪れる客がいるぐらい有名な場所であった。最近では釣った魚をリリースして帰るのがマナーになっているが、喜一さんが活動した昭和の中頃には捕った魚は当然食用にされていた。ついでながら入漁料などを払う習慣もなかった。制度はあったのかもしれないが地元の人間は払わなくてよかったのだろう。ともあれ喜一さんは週に何回かはヘラブナ釣りに出掛けた。午前中から夕方まで田舟を操ってヘラブナとの駆け引きを楽しんだ。春と...新作KAIDAN①『忘れ物』
〇「おい、シーチキンて海の鶏肉という意味にとれるがおかしくないか」「マグロなど魚肉のオイル漬けなのにね」〇「知ってるな、それなら海ブドウはどうだ」「プチプチした食感の海藻ですよね、グリーン・キャビアという別名でも呼ばれています」〇「知っているのか、じゃあ何食わぬ顔ってどんな顔だ」「来た来た、大谷翔平に寄り添ってたあの人のことでしょう?」〇「信頼するのもいい加減にしないとな」「その点ご隠居は心配いりませんね」〇「トンコロとかトンずらとか、豚を馬鹿にしてないか」「知りませんよ、それよりトン死〈頓死〉しないように気を付けてくださいね」紙上大喜利55『じじいの時事ばなし』
〇歯医者で治療が終わったのでカッターやドリルの音がすごくて道路工事みたいだったと言ったらフフフと笑った。〇大谷翔平の主張が捜査当局によって裏付けられたとか。〈水原一平氏が罪を認め起訴される見通し・よかったけど一抹の疑念〉〇二階さんの後釜候補は世耕さんの鞍替え出馬のうわさに戦々恐々らしい。〈血で血を洗う抗争とか〉〇岸田総理が国賓待遇で訪米だと。〈そりゃ大変だ。マイクロソフトなど巨大企業の日本招へいは実質占領だ〉〇自衛隊と米軍の連携強化もヤバいぞ。〈指揮系統を握られ先兵として出撃だ〉〇自民党のゴタゴタ騒ぎの隙にゴールド球をにぎられたか。〈国が敗れても権力維持にいそしむ人〉〇憲法審査会が開催されたらしい。〈誰の思惑か岸田総理のうちに改正=改悪?を目論む〉ありえへん話1『国破れて山河ナシ』
堤防沿いの桜並木が満開になったばかりの今日冷たい風雨にさらされたたくさんの花びらが散歩道を覆い水面に飛んだ花が川岸に吹き寄せられる花筏になって川岸にまつわりつく乗ってみたいなあ花筏幾重にも重なり分厚い布団のよう花筏の上で眠ったらいい夢見るだろうなポエム378『花筏』
先にポムに登場したアライグマの画像です。スマホの写真ではわかりづらいでしょうが、とりあえず見てください。捕まって観念したのかおとなしくしていました。そろそろ畑に出たくなってきました。時期遅れのフキノトウの画像を載せておきます。どうぶつ番外物語トピックス1『アライグマ』
〇「とうとう出たな」「大谷翔平のホームラン第1号ですね」〇「高めが打てたから今度は膝つきスウィングだな」「昨年の活躍を思い出しますね」〇「世耕さんにも処分が出たな」「離党勧告でしょう?自民党を追い出されたら困るでしょうね」〇「萩生田殿下と松野アルマジロは御咎めなしか」「組織がしっかりしているので切るに切れないんでしょう」〇「岸田総理も処分対象のはずだがほっかむりか」「職にとどまって改革するという決まり文句で逃げましたが国民は納得していませんよ」紙上大喜利54『じじいの時事ばなし』
仕掛けた罠にアライグマがかかった覗きに行くと織の奥で蹲っている夜行性だから昨夜のうちの出来事だろう観念したのか暴れることもないおいラスカルこっちを見ろよ案外可愛い顔をしているじゃないかお前がやった所業は人間の仕業なみだゴミを収納する戸棚の戸を引き開け袋を外へ出してひっかき食い破る最初は悪意のある人間がやったと疑った市役所の開庁を待って電話をした環境保全課に回されて10時には係が来た書類を何枚も書かされ張本人は業者の手にそうかお前は特定外来生物か在来種じゃないから立場悪いなハクビシンや台湾リスと同じ扱いだ確認書を渡されてお前とはバイバイだラスカルみたいな顔で訴えたってどうにもならんわしゃ知らんそれが法治国家の定めだ許せよ人間だって入管法で隔離されるんだ日本にやってきたのが運の尽きだ・・ポエム377『アライグマ御用!』
〇元気くん〈健大高崎のピッチャー〉が今朝丸〈報徳学園ピッチャー〉破って初優勝〇健大高崎ツワモノの名が並びおり〈石垣元気のほか佐藤龍月、箱山遥人など〉〇佐藤龍月上州気質の不敵な笑み〈決勝戦でリリーフに回った〉〇国定の忠治魂直球ズバ〈決め球で見逃し三振〉〇優勝校と準優勝校は紙一重〈報徳学園も強かった〉俳句川柳5『センバツ春は健大高崎』
母は鬼無里から逃げ帰るとき幾つか渡った川の土手で幽霊草を見た旦那様に離縁されたとも知らず盆休みを口実に生家へ戻された父には後添いがいて手紙を見ると烈火のごとく怒りだしたおまえ誰と乳繰り合ったんだ旦那には子種がないはずだと書いてある母は身ごもった腹を抱え善光寺裏の口入れ屋に泣きついた後継者を欲しがる銀座の国旗屋に雇われ僕が生まれて老夫婦に可愛がられた母さんその後どうしていますか養子になった僕と以後一切の縁を絶たれた母いつか探し出して銀座で余生を送ってもらいます満月に照らされて揺れていた幽霊草の話も恐ろしかった気持ちとともにもう一度僕に聞かせてください*幽霊草という学名はありませんポエム376『幽霊草』
〇報徳〈学園〉と大阪桐蔭死闘終わる〈4対1で報徳の勝ち〉〇報徳の今朝丸〈ピッチャー〉午後の試合も丸〈正確なコントロール〉〇トケマッチ時計〈ロレックス〉預かり溶けマッチ〈消えちまった代表らを国際手配〉〇東京はあと一輪で二日待ち〈標本木に4輪のままで開花宣言なし〉〇宝ジェンヌの後輩いじめで火傷する〈阪急宝塚側が被害者へのいじめ認め謝罪〉俳句川柳4『センバツ高校野球ほか』
リビングルームのsファーの陰から『獺祭』の2お22年物が出てきたすわッ、プレミアム価格はいくらぐらい?調べてみたら大したことはない我が家ののん兵衛がいつか飲もうと大事にしすぎて家族が偶然見つけてしまったようだ我が家に『獺祭」ねえ似合わない似合わないそう思いつつまんざらでもない気持ち日本酒は若いうちに消費するもの洋酒のように古さが価値を上げるものではないスコッチでいえばシーバースリーガル12年物これなら秘蔵の価値もあるともあれそうした趣向は我が家にはないお祝いの時に多少グレードの高いサジェをグラスに分けてまずk時パイ獺祭の発見などまれなハプニングなのだポエム375『獺祭』
〇「おい、尊富士が優勝したぞ」「新入幕力士が優勝するのは110年ぶりの快挙だそうですね」〇「前日の相撲で足を怪我してたのに気力で勝ち取った優勝だ」「見上げたものです、尊富士もご隠居も」〇「大の里も石川県を代表して健闘したな」「ご隠居が10日目に予想した尊富士と大の里の直接対決が事実上の優勝戦でした」〇「錦木も最後2連勝して3勝12敗だった」「そうそう錦木は足とか腰とかどこかケガしていませんか」〇「大関陣のもろさも目立ったな」「霧島が崩れて貴景勝もバタバタ琴ノ若も伸び悩み強さを見せたのは豊昇龍だけでした」紙上大喜利53『じじいの時事ばなし』
〇大谷の飛球ショックで塀越せず〈水原イッペイ違法賭博・解雇〉〇世耕さんついに証人喚問か〈政倫審では安部派5人衆は誰も責任をとらず〉〇尊富士上位者〈大の里・琴ノ若・若元春〉破って2差を維持〈きょう勝てば新入幕優勝〉〇ロレックス預かりトンズラあれッ?クス〈客の気持ち〉〇口封じ圧政強める習・プーチン〈権力維持のため悪法連発〉俳句川柳3『ショック』
〇「おい、大谷翔平が猛打賞&2盗塁、トラウトが2発も…“なおエ”だってよ」「ご隠居、これからは救援というのをよしましょう。休演にしちゃうんだから・・・・」〇「AI論議が盛んにおこなわれているが、この先どうなると思う?」「あっしにはわかりません。藤井聡太6冠を諮問会議に呼んだらどうでしょう」〇「フィリピンから強制送還された強盗指示の容疑者4人はどうなった?」「さあ、ルフィに聞かないと何もわかりません」紙上『大喜利』(20)
ミライへ育む予算ある広報に載っていた言葉だ子供たちの未来へ予算を増やしていくという意味だろうがミライへ育む予算・・・・といわれると自信無げに聞こえる目の前に組まれた予算ではなくこれから育む予算のようだ意気込みはいいが当てにできるのだろうか市の行政にまやかしはないだろうが岸田総理の「異次元の少子化対策」には期待より疑念ミライと片仮名で表記される違和感はキツネとタヌキの親分子分に見えるからここで本気にならないと子どもの数はどんどん減っていくミライがミイラにならないように総理も市長さんも頼みますよポエム353『未来という危うきもの』
〇「おい、屋根裏の散歩者が捕まったらしいな」「ご隠居、まさかの江戸川乱歩ですね。アパートの仕切り板を壊して隣の女子大生の部屋を盗撮してたんですから」〇「それだけじゃないだろ?」「知ってますけど、それ以上はネ」〇「ところで、月面着陸は失敗したようだな?」「惜しかったですね、寸前で燃料が切れたらしいですよ」〇「民間企業で初めての月面着陸は来年きっと成功するよ」「月周回軌道から着陸予定地点まで近づけたデータは貴重ですよね」紙上『大喜利』(19)
銀座にある東方画廊での従業員同士の会話。「ちょっとさん、さっき外国人のお客様が入ってきたんだけど、あなたが爆睡していたので帰っちゃいましたよ」「あら、やだ。起こしてくれればいいのに」「それがさ、ぼくが起こそうとしたら唇に指をあてて制止するんだ。寝かせておけと言われちゃどうしようもない」「へえ、いくつぐらいの人?」「40歳ちょっとぐらいかな。ブラビに似た人だった」「わオ、起こしてよ。ほんものだったらどうするのよ」「ぼくだって、蹴り飛ばしてやりたかったさ。客逃したかもしれないぜ」7月の昼下がりの事である。ちょっとさんと呼ばれた従業員は、何か用事を言いつけられると必ず「ちょっと待って」というのでつけられたあだ名である。画廊主の友人の娘で、最初はアルバイトで入ってきたのだが、ちょっとさんの知人がボチボチやって来て...新作短編小説『指』
おいしい味を消したくないからぼくはお茶を飲まない初めて就職した会社の社員食堂で同期入社のその男はそう言った意想外の独白を聞いて頭の中が混乱したえ?そんなこと考える人いるの?緑茶の旨味に慣れ親しんできた身にはとても耐えられない発言だったその人のせいとは言わないが入社して一か月で退職した紆余曲折のあった人生だが昨夜ふとあの時の感覚を思い出した半世紀ごしの感覚がまだ納得のいかないまま残っていた人間っておかしな生き物だねこんな些細なことを引きずってきてあと何年あるかわからない余生をかさぶたを抱えたまま生きるのだろうかポエム352『半世紀ごしの思い』
〇「大谷翔平の5号ホームランは幻に終わったな」「ヤンキースのジャッジがジャンプして捕ったんですよね」〇「それだけじゃないぞ、グラブで弾き落として素手でキャッチしたんだ」「一瞬落としたかと思ったのにしっかり掴んでましたね」〇「おまけにジャッジは6号ホームランだ、すごいね」「ご隠居、ジャッジにほれ込んでますね、だけど大谷は2本差ならまだいけますよ」紙上『大喜利』(18)
別部刑事は容疑者のアパートに踏み込んだ際、包囲網をすり抜けられるという失態を演じた当事者である。容疑者のヤマワキは同棲していた女性の首を絞めて殺し、深夜JRの線路に死体を横たえて轢死に見せかけた知能犯でもある。遺体の検証は困難を極めたが、司法解剖によって轢死する前に遺体の一部に皮下出血の痕跡があることがわかった。所轄署の刑事4名は逮捕状を取るなど準備を整えて翌々朝容疑者のアパートを急襲したのだが、すばしっこいヤマワキの動きに幻惑されて取り逃がしたのは前述したとおりである。すぐに非常線を張ったもののヤマワキは網にかからず、行方知らずの状態が幾日も続いた。警察への批判が相次ぎ、まもなく公開捜査に踏み切った。モンタージュ写真を載せたビラを大量に刷って主要駅やバスターミナルで配布する一方、テレビや新聞で公開手配し...新作短編小説『耳』
トケイソウ画像は(季節の花300)より時計草は大地の腕に巻いた腕時計めしべにはお洒落な長針と短針スイス製の奇抜な職人の最高傑作どうやって時間を見るの?現代人はいつも「時」に縛られているこれは時を忘れるために創った時計だ大地の腕に巻いた腕時計には聖なる愛の花言葉が送られた八月の太陽にも平然と咲く大地の花大地はなんて素敵な存在なんだこんな腕時計を贈られて時を忘れられたらあなたにも贈呈します、とスイスの奇抜な時計職人の元にはまだ9個の腕時計が残っていて遺言と共に保管されているそうだポエム351『時計草』
〇「腹立つなあ」「わかった、原辰徳監督にハラ立っているんでしょう」〇「あれだけの戦力を持っているのに中日にも負けて最下位だぞ」「どうしてクビにならないのか不思議ですね」〇「佐々木朗希は山本由伸に投げ勝ったな」「長いイニング163キロのストレートを投げさせて労基法違反じゃないですか」紙上『大喜利』(17)
菜の花畑(季節の花300)一面にひろがる菜の花畑きれいに咲いた菜の花を見ているうちにやがて実になって油を出すんだよなどこに油が潜んでいるのだろうと疑問を持ったそういえば胡麻でも大豆でもエゴマでも植物の種はみな油分を含んでいるんだ子孫のために必要な油なんだろうな将来子孫が生きるために歯車をまわすんだこうした植物の栄養をいただきながら人間はその生態を真似するだけ脂汗をかく油を搾られるすみません何一つ実態の伴わない空虚なことばプラファスナーでも飛行機でも先生は自然界人間は飛びぬけた真似し小僧のほっかむり発明だ特許だと我が物のように主張して自然界から搾取するだけまあいいさ花や実に畏敬を抱き称え続ける謙虚さがあるうちは菜の花の黄色は幸運のシンボル菜の花畑を眺めて今日も幸せポエム350『菜の花』
〇「おい、サクラも終わったな」「ご隠居、連日花見に行ってましたがどこが良かったですか」〇「どこの桜を見てもクラサを感じてな・・・・」「やだやだ、ご隠居もっと陽気にいきましょうよ」〇「千鳥ヶ淵を見てみろよ、戦没者を慰霊する場所だぞ」「そりゃそうですけど、楽しむだけのために植えたサクラの名所がたくさんありますよ」紙上『大喜利』(16)
シャガ画像は(ウィキペデイア)よりシャガの咲く季節になってこの花は幾多のイクサを鎮撫して長い歴史を見守ってきた花だと実感するなにかの縁でこの地に移り住んで山襞に群生するシャガを愛でてきたが天然の要塞を彩るにふさわしい慰撫の花だとも戦にスポットを当てれば歴史はイクサ少ない耕作地を耕して実りを得た人びとは歴史からは記録をたどれない山では狩猟海では魚や貝や海藻をもくもくと採る生活を営んできた関東武士が開府した六百年前の記憶の裏でなんと哀れなイクサ人よ墓もつくれずに野ざらしとなるしゃれこうべいつの世にも繰り返される闘争の成れの果て安らかに眠れ鎮撫の花シャガが休みなく咲く小止みなく降り雪ぐ梅雨前(さき)の雨ああ忍耐の花シャガに雨が降るポエム349『シャガに雨』
裏山に目を転じるとシャガの花がポツポツと咲き出した。これがあっという間に群生になるのだから、うかうかしていられない。追いかけるように山吹の花が光を集めている。山吹色には縁がないが、なんとなく安心な古風植物。ちなみに上記画像は2020年5月初めにアップしたものです。今年は20日ばかり早い感じです。(春・2)裏山にシャガの花
冬の間ごぶさたしていた庭畑は、ほぼ野生化していた。クワを入れていないので、去年の野草や花たちが好き放題に咲いている。スイセンは西洋スイセン、スズランスイセンが花を競っていたが、あまり注目されないうちに季節が過ぎた。ふと目の高さに新芽をつけたキウイの枝が・・・・。冬の間に追肥をあげなくちゃと思いつつ、何倍にも薄めた液体肥料で事を済ます横着者。それでも自然な落葉をたい肥にして新芽をつけてくれた。葉っぱの下にはもう花の蕾もビッシリと。これが実になるのだからけなげなもんだ。蔓は上へ下へと勢いのまま伸びるから、地面を這う枝は支柱を入れて持ち上げなければなるまい。いやでも元気を見せなければならない季節の到来だ。(春・1)キウイがくれる元気の素
撫子の花画像は(季節の花300)よりなでしこは撫子色に咲くむかしから変わらない優しい色しとやかで慎ましくお嫁さんに最も望まれた女性の象徴ひとの通る散歩道の傍らでくさに紛れてひっそりとうえを見る者には気づかれないしたを見る者には嬉しい足もとの花おもいでは数知れずいまさら披露するのは恥ずかしいあなたに学んだ生き方だからあなたにだけは耳打ちするねなでしこさん撫子さんまた会えるといいねさようならポエム348『撫子の歌』
〇大リーグ開幕大谷(翔平)零封も逆転負け〇いつか来た道天使はいるのかエンゼルス〇弱すぎるリリーフ陣に特大ため息〇9回まで投げなきゃ勝てない?嘆き節(大谷ファン)〇エンゼルスはジャパン(WBC)のストッパー誰か買え〇大谷の降板待ってひと仕事(相手チーム)〇吉田正尚(レッドソックス)マルチヒットで好調維持〇三振をしない男の異名も冴え(吉田正尚)〇ヌートバー(カージナルス)もヒットを打ってクールな顔(ペッパーミル卒業)〇千賀(メッツ)に期待ケガ完治して4番手先発?川柳復活5『大リーグ開幕』
東の空が明るみはじめると田舎の集落は賑やかになるコケコッコーウウウー雄鶏が首を伸ばして声を振り絞るオンドリャー早く鳴かんかいボスが若いオスをひと睨みするとどの家の鳥小屋からも騒がしい足踏みが始まり時告げ鳥の声で夜の幕を巻き揚げられるつられて若い女房たちが夜具を抜け出し竈に松葉を突っ込んでマッチで火をつける細く割った薪をくべ火吹き竹で風を送るいっせいに立ち昇る白い煙の揺らぎ何百年続いてきた万葉の風景めんどりは卵をポトンと生み落とし腹が減ったと地面をつつきまわるああ夢の中のことではなくそのままでいい目覚まし時計など必要ないよ時告げ鳥がいるじゃないか少々眠い目をこすりながら火加減を見るやがて重い蓋を突き上げる湯気の匂い米が飯になる甘いかおり腹がグーッと鳴りこちらも時を告げるああなんという健康な集落よ忙しい世の中...ポエム347『時告げ鳥』
〇「ロシアがベラルーシに戦術核を供与したな」「戦況が行き詰ると核をちらつかせる、プーチンの常套手段でしょ?」〇「心配しなくていいのか?」「ご隠居、ものごとはどこでどう変化するかわかりませんからね」〇「英国がウクライナに劣化ウラン弾を供与したのも問題だろ?」「ロシアに口実を与えましたからね。紙上『大喜利』(15)
絶望の海に青い月が昇る海霧が後退し混沌の海が明らかになる人間は何万年もかけて蠢いてきたが遂にまた絶望の海を目前にしているもっと賢く進化すると夢見て来たのに手にしたのは究極の鉄器だった火と石斧に歓喜の涙を浮かべ踊り狂った記憶はまだ能皮質にあるのに月は嵐の予感に震えている海霧は跡形もなく消え去ったというのにますます濃くなる原始の海波もなく絶望の気配だけが満ちている青い月よ三日月のまま照らす月よ人間はまた原始の海に舞い戻ってきたふたたび箱舟を造る気力などあるわけはなくただただ究極の鉄器の感触を撫でさする絶望の海に青い月が昇る何万年も蠢いてきた記憶も今夜雲散する希望の欠片が残るかどうかなどもはや意中にない月夜が青く広がるポエム346『絶望の海』
〇「WBCは世界一を勝ち取って国中大フィーバーだけど、その後いく日焼き直し画像を見させるんだ?」「そういうご隠居も朝から晩まで見ていたじゃないですか」〇「翠富士は連日がんばっているけど2連敗しちゃったな」「大相撲ですか、ドングリを並べたようなものですから誰が転がっても不思議はありませんよ」〇『この次はサッカーで盛り上がるか」「そうですね。ウルグァイ戦に三苫が先発するそうですし」紙上『大喜利』(14)