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コトバの試し斬り=(どうぶつ番外物語) https://blog.goo.ne.jp/s1504

斬新な切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設17年目に入りました。

自然と共生しながら、生きてきました。 ここでは4,000字(原稿用紙10枚)程度の短い作品を発表します。 <超短編シリーズ>として、発表中のものもありますが、むかし詩を書いていたこともあり、コトバに対する思い入れは人一倍つよいとおもいます。

正宗の妖刀
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2010/09/26

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  • 思い出の短編小説『ヘラ鮒釣具店の犬』(4)全10回

    先週の興奮は、体の隅々に痕跡を残していた。四日ぶりに散歩に出ようとして、内耳のあたりでカサカサと音を立てるものがある。風を受けて左右に揺れる笹の葉が、花大根の風景に重なって視えた。それは、現実感に乏しい、もどかしいような眺めであった。同じように、あのとき暗い家の奥から桂木を見ていた黒い犬の記憶も、なぜか希薄になっていた。ただ、それぞれの気配だけは残っている。紫の花と笹の葉ずれの音は同調していて、背後の貧相な家の軋みと犬の放心を誘って、ひと時の白日夢のようだ。混在する意識の中で、唯一焦点の合った場所があり、そこで黒犬の目が点ったのかもしれなかった。人生のある瞬間、思いがけない形で日常が立ち上がるといった経験を、多くの人びとが味わっているはずだ。長年気付かなかった事柄が、突然変異のように意味を持つことがある。...思い出の短編小説『ヘラ鮒釣具店の犬』(4)全10回

  • 紙上『大喜利』(27)

    〇「ご隠居、あれほどワグネルやプリゴジンのことを話題にしてきたのに、どうして沈黙していたんですか」「おっと、逆に質問してきたな。それはな、ワグネルもブリゴジンももうすぐ消滅するからだ」〇「プーチンはやっぱり策士ですね」「プリゴジンの責任を不問にすると言って兵を引き揚げさせたのに、その日のうちに掌返して反逆罪で捜査継続だからな」〇「ベラルーシのルカシェンコ大統領との約束が命綱ですか」「親友だからと言って当てになるもんか、いずれベラルーシから出国させて後はロシアの秘密警察が処分するんだろ?」〇「プリゴジンもプーチンの料理人のうちはよかったが、調子に乗り過ぎたようですね」「プーチンの怖さを読み違えたから料理されることになったんだな」〇「プーチン体制にガタが来た以上、少しでも反対の気配を見せた人びとは粛清されるん...紙上『大喜利』(27)

  • 思い出の短編小説『ヘラ鮒蔓具店の犬』(3)全10回

    風の通っていった道は、クルマがやっと一台通り抜けられるほどの小道だ。公園側の木々が差し延べる影が、道はおろか向かいのトタン屋根の家まで被さっている。目が慣れると、薄暗い土間が奥の框に達していて、その手前のやや傾いたパイプ椅子の横に、首だけもたげた中型犬が、身じろぎもせずに桂木の方を見ていた。視られていたという思いが、桂木を動揺させた。たかが犬じゃないかと思い直したが、相手が誰かはたいした問題ではなかった。要するに自分の目であり、大げさに言うなら天なるものの目なのである。となれば、自分の行為が<花盗人>程度のものなのか、もっと罪深いものなのか、誰かに確かめたいと弱気な思いも湧いてくる。彼自身は、より強固な弁明を得ようと、脳をフル回転させている。・・・繁殖力に富んだこの花大根は、翌年にはもっと広範囲のテリトリ...思い出の短編小説『ヘラ鮒蔓具店の犬』(3)全10回

  • 思い出の短編小説『ヘラ鮒釣具店の犬』(2)全10回

    毎週水曜日の午後三時からと定まっているシナリオ講座を除いて、他の時間は基本的に自由であった。朝、ゆっくりと起きて、ホットミルクとトーストの朝食を摂る。副菜は、ボイルドエッグにロースハム、トマトにレタスといったサラダになることが多かった。妻がマンションを出て行ってそのままの独身生活だから、食事のメニューは単調になりがちだ。ミルク紅茶やスクランブルエッグ、ツナやグレープフルーツに変わるぐらいで、パン食主体の食事スタイルはずっと一貫している。その分、昼と夜は行きあたりばったりで、生徒と一緒に駅ビルのレストランで和風ハンバーグを注文したり、日本そば屋で天ざるを取ったりさまざまだった。その日、桂木は依頼された原稿を正午過ぎに書き上げ、郵便局に立ち寄って速達で差し出した。そのまま散歩に出るつもりで家を出たから、コット...思い出の短編小説『ヘラ鮒釣具店の犬』(2)全10回

  • 思い出の短編小説『ヘラ鮒釣具店の犬』(1)全10回

    『ヘラ鮒釣具』と書かれた木製の看板と、暗い土間の奥に坐っていた黒い犬のことを、桂木はときどき思い出す。その仕事場とおぼしき空間を持つ貧相な家は、東京の区部に隣接する市政地域の公園近くにあって、一年前に都心のマンションから引っ越してきた桂木が、好んで通う散歩道に面していた。週一回、数駅離れた駅ビル内のカルチャーセンターで開く<シナリオ講座>の講師として、二十数名の受講生を指導することが、目下のところ桂木の定職になっていた。あとは雑誌や新聞の依頼で、たまに人を食ったような話を書くとか、映画会社が募集するシナリオの下読みや新作落語の審査をするなど、イレギュラーな仕事で食いつないでいた。講師として採用されるについては、多少の実績が求められることになる。桂木の場合、昭和五十年代の映画全盛の時期にかなり話題となったシ...思い出の短編小説『ヘラ鮒釣具店の犬』(1)全10回

  • 紙上『大喜利』(26)

    〇「おい、タイタニックを見に行った潜水艇が遭難したらしいな」「ハイご隠居、大パニック(タイタニック)だったでしょうね」〇「大谷がファン投票ダントツ一位でオールスター出場が決まったぞ」「もちろん二刀流でね、投げる方は先発ですか救援(球宴)ですか」〇「男子バレーボールがブラジルに勝って大騒ぎしてるな」「そうですね。次の対戦がアルゼンチンらしいのでサッカーと勘違いしましたよ」紙上『大喜利』(26)

  • ポエム367『白いタチアオイ』

    道端の白いタチアオイが花開き下から順に花開きすでに八個も花開き残る蕾がもうすぐ自分の番かと待っている咲き終えた白いタチアオイの花はしだいに茶色く萎れていき下から順に萎れていき咲き残ったツボミは誇らしげに輝いているハクモクレンほど短命ではないが白い花はいずれ哀れな姿になる運命なのかいやいやそんなことはない二か月近く咲き続け白を全うしたのだからごくろうさん梅雨アオイ梅雨の間鬱陶しい気分を明るくしてくれた白いタチアオイの蕾がてっぺんまで咲き終える頃梅雨が明けて空から太陽が照り付けるごくろうさん梅雨アオイその日が君の役目を終える日だ子どもたちが待っている夏休みが待っているポエム367『白いタチアオイ』

  • 思い出の短編小説『すきま風』

    周平が商店街の歩道を歩いていると、車道を挟んだ向かい側のパチンコ店の前から軽快なテンポの音楽が流れてきた。(おっ、チンドン屋だ)思わず足を止めた。物珍しさというより、懐かしさが鼻の奥を刺激した。ここ数年、チンドンが練り歩く姿を見かけることがなかった。全国のチンドンマンが富山市に集まってコンテストをやったというニュースを、テレビの画面で見たのは五年も前のことだ。それ以降、チンドン屋の存在は周平の中でほとんど消えかけていた。下町の商店街でなら見られるかもしれないが、郊外のアパートに張りついて生きている周平には無縁のものだった。チンドンは、彼の意識の中ではほとんど絶滅危惧種に近い。だから、現実に営業しているチンドンマンを見てすっかり嬉しくなってしまったのだ。周平は、思いついて胸のポケットから携帯電話を取り出した...思い出の短編小説『すきま風』

  • 新企画『ととのいました』(21)

    〇「ホームラン数トップに立った大谷翔平のファン」とかけて「ネズミ捕りの警察官」とときますそのこころは「まだ加速するの?、ジャッジ(計測)できないほど飛ばさないでよ」と嬉しい悲鳴をあげるでしょう。〇「生成AIへの危惧」とかけて「原子爆弾を完成させたオッペンハイマー博士の後悔」とときますそのこころは「歯止めの効かない知識欲(禁断の木の実〉はやがて人類を滅ぼす」でしょう〇「キーウへの集中ミサイル攻撃」とかけて「ずばり、アフリカ諸国首脳とウクライナの接近阻止」とときますそのこころは「NOTOに入るかもしれないウクライナとアフリカの関係は喜望峰まわりの遠い国」にしておきたいからでしょう新企画『ととのいました』(21)

  • 思い出の短編小説『よたれそつね』

    三が日が明けた仕事始めの日、出勤しようとしていた雅夫は賃貸マンションを経営する大家と珍しく顔を合わせた。「おはようございます」背後から声をかけられて振り向くと、膝上まである防寒コートを羽織り、そのくせ帽子もかぶらずにニコニコと立っていた。一度か二度すれ違ったことがあるが、その時は目を合わせることもなく、雅夫は内心愛想のないオヤジだなとこちらも無視する気持ちになっていた。だが、年が変わって心境が変化したように挨拶されてみると、もともと悪意を持っていた訳ではないから悪い気はしなかった。「おや、おでかけですか?」「うーん、・・・・二、三日留守にしますんでよろしく」返事とは裏腹に、どこか遠くを視るような目付きでぼそりと答えた。ふだん入居者のことなど無関心かと思っていたのに、どうした風の吹き回しか。家の中で雑煮など...思い出の短編小説『よたれそつね』

  • 紙上『大喜利』(25)

    〇「台風は通り過ぎたけど、別の風が吹き始めたな」「解散風でしょう?内閣信任案が出たら刀を抜くらしいですよ」〇「立憲民主は不信任案を出す勇気があるかな?」「さあ、どうでしょう。今選挙をしたら遺骨も拾えないと言われていますが」〇「総理の息子が官邸でヘマをやっても秘書官を辞めさせただけで大丈夫か」「株も上がってるし、防衛予算は先送りして、選挙に勝ったら信任受けたと大手を振って増税するつもりですよ」紙上『大喜利』(25)

  • ポエム366 『ガリラヤ湖から』

    ガリラヤ湖はヨルダンの大地溝帯の端にある死海につぎ2番目に標高の低い湖だ魚がよく獲れるので30隻もの舟が操業していたというイエスはこの湖を見おろす丘の上に立って布教した漁師ペテロはそれを聞いてイエスの一番弟子になったたちまちガリラヤ湖周辺の人びとはイエスに帰依したガリラヤ湖西岸とイスラエルを結ぶ街道を通ってキリスト教は世界に広まっていったそれにしてもイエス・キリストの生涯は烈しすぎる現代に続く宗教戦争の原点はそこにある一神教ではないが他の神を従属させようとするゼウスを頂きながら宗派の違いをも受け入れない日本人はいいな自然崇拝が身に沁みているから森の木や川の水それに岩石にまで神が宿る八百万の神が身近にいる幸せよ古代からの太陽信仰が生きているんだろうなポエム366『ガリラヤ湖から』

  • 新企画『ととのいました』(20)

    〇「高齢者の自動車事故」とかけて「完全試合を達成した時の佐々木朗希」とときますそのこころは「全力でアクセルを踏み続けた」結果でしょう〇「梅雨前線」とかけて「能無し大臣の国会答弁」とときますそのころろは「どちらも湿舌(失舌)を伴なう」でしょう〇「立憲民主党」とかけて「弱虫の番犬」とときますそのこころは「吠えるだけで他に何もできない」でしょう新企画『ととのいました』(20)

  • 思い出の短編小説『さくら貝の歌-異聞』

    <さくら貝の歌>美わしきさくら貝一つ去りゆけるきみに捧げんこの貝は去年の浜辺にわれ一人ひろいし貝よその子の名は、キララといった。入学式の日に、小学四年生として編入してきた。担任の先生は、キララが福島からの転入者であることを告げた。この町へ避難してきたのは、キララとお祖母ちゃんの二人だけだった。福島で海産物店をやっていた両親が津波に攫われ、行き場をなくして能登半島の親戚を頼ってきたのだ。親戚といっても、キララのお母さんの妹の嫁ぎ先だから受け入れの余裕がなかった。それで、町の施設がキララとお祖母ちゃんを受け入れたのだった。地域の人々は、キララたちをこぞって歓迎した。昔から日本海の漁業で生きてきた町に、真反対の太平洋岸から二人がやってきたことで注目を集めたのだ。先生は、震災の後始末が付くまで二人は志賀町に滞在す...思い出の短編小説『さくら貝の歌-異聞』

  • ポエム355『新緑の風』

    六合村の応徳温泉に行きたいな2年ほどご無沙汰だけど変わりないかな伝統的建造物群保存地区の清潔さも保っているかなおいしい蕎麦屋さんもまだやっているかなもう何十年も前に一年間湯治して糖尿病で瘦せ衰えた体を治してもらったぬるめだけど内臓の芯まで温めてくれる効能あらたかなあの温泉だ村の入り口に咲いていた黄花コスモスよいつもぼくを快く迎えてくれたね今はどんな花を咲かせているのかな村の中の道はどこも花に満ちていたな野草の宝庫で知られた野反湖への中継点登山やハイキングのグループがよく利用してたなみんな温泉から出た後ゴロンと横になって仮眠した食べ物の持ち込みも自由だったから人気があった六合村よ応徳温泉よもうすぐ行くからね黄花コスモスの時期には少し早いが新緑が滴るような木々の彼方から温泉を覗きに来る風と再会できるかもしれな...ポエム355『新緑の風』

  • 紙上『大喜利』(24)

    〇「線状降水帯の被害は想像以上だったな」「ご隠居、特に愛知と静岡・埼玉がひどかったですね」〇「ところで戦場降参隊のほうはどうなっているんだ」「キウイも被害を受けましたけどロシアの領内まで反撃されてますからね、勝敗はまだ分かりません」〇「NHKはタレント総取りだな、タモリ・鶴瓶はもうなくてはならない存在だし」「ほんと、民放全盛時代には反NHK的スタンスをとるタレントも居ましたがね」紙上『大喜利』(24)

  • 思い出の短編小説『人生とんぼ玉』

    大蔵さと子が工房を辞めたのは、秋が本格化した九月下旬のことだった。ヨシキにとっては、先輩でもあり憧れの女性でもあった。ガラスの扱い方を丁寧に教えてくれただけでなく、仕事を超えて近しい存在になっていた。ヨシキが所属する工房では、主にアクセサリーに関する素材や技法を研究している。顧客のニーズを掘り起こして、さまざまな装飾品にトライする試作室みたいなものだった。経営者である寺田瑛彦は、奇抜なデザインと新旧の素材を融合したユニークな作品を発表して急速に頭角を現してきた装飾デザイナーだった。輝石をポイントにしたバッグやハイヒールなどを、一点物として女優やモデルに提供していた。さと子はもともとネイルサロンで働いていたのだが、客との会話の中で寺田瑛彦の存在を知り、創造的な仕事がしたいからと弟子になった。「給料なんて出な...思い出の短編小説『人生とんぼ玉』

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