中国山地幻視行~厳島・12月の紅葉 10月になっても酷暑が続いた今年の秋。紅葉の時期を見極めるのは難しかった。どこも1週間から10日遅れという情報を、メディアは流していた。名所の一つ、厳島は例年なら11月中旬以降。待ちに待って、今年は12月2日に訪れた。やや終わりに近かったが、ほぼベストシーズン。それにしても、外国人の多いこと。 千畳閣の大イチョウ 瀬戸内の小島 広島の市街地を望む フェリーの発着場。山頂(撮影地点)との標高差530㍍ 黄色の線(ロープウェイ)の上の線を登り、その上の線を下った
中国山地幻視行~三倉岳・やっぱり秋だ 久しぶりに三倉岳に登った。調べたら2月以来。8か月ぶりである。全コース、石段登り。しんどいことこの上ない。この日もあえぎあえぎ、山頂を目指した。 9合目を越えたあたりから様子が変わった。崩れたままだった急斜面が整備してある。旧来の朝日岳~中岳~夕陽岳のコースは封鎖され(それでも通る人は通っていたが)、夕陽岳往復を余儀なくされていたが、なんと通行止めのロープが外してある。看板を読むと、自己責任でコースを選びなさいということのようだ。 夕陽岳の南側にある大岩に陣取り、下界を眺めた。いつもながら、ここからの眺望は最高だ。稲穂は黄色く色づき、刈り取りを待つばかり。上空に広がる空は高い。 次回は、中岳からの縦走コースをとることにしよう。 縦走路のロープが外されている これまでは、こんな感じ(2021年7月撮影) ここからの眺望は最高だ 稲穂は黄色く色..
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中国山地幻視行~厳島・12月の紅葉 10月になっても酷暑が続いた今年の秋。紅葉の時期を見極めるのは難しかった。どこも1週間から10日遅れという情報を、メディアは流していた。名所の一つ、厳島は例年なら11月中旬以降。待ちに待って、今年は12月2日に訪れた。やや終わりに近かったが、ほぼベストシーズン。それにしても、外国人の多いこと。 千畳閣の大イチョウ 瀬戸内の小島 広島の市街地を望む フェリーの発着場。山頂(撮影地点)との標高差530㍍ 黄色の線(ロープウェイ)の上の線を登り、その上の線を下った
中国山地幻視行~午後の日を浴びて 10月中旬、ある山に登った。気温は25度を超し、暑さで撤退した。それからわずか1か月。広島県北には積雪があったという。 11月20日、大峰山。北から吹く風は冷たかった。中腹まで行くと、ようやく紅葉が頭上を彩った。広島市近郊にも、ようやく秋が訪れたようだ。山頂。巨岩の上から見る空は青く晴れ渡っていた。空気が澄み切っているのか、四方の山々も鮮明に目に飛び込んでくる。落ち葉を踏み、下山路を行く。午後の日差しが不意に紅葉を照らした。鮮やかさを増して、葉が揺れた。陽の名残のショーを見た。 朝の陽ざしに、紅葉が輝く 広島県北の山並み。左端に吉和冠の特徴的な山容が見える 端正な三角錐は、山口県の莇ヶ岳 山頂には大看板がある 西大峰越しに山口方面を望む 広島湾は霞んでいた 広島市街地を望む。空は青い 下山路、紅葉が輝いた ..
中国山地幻視行~立烏帽子山・無情の天気 11月4日、立烏帽子山(1299㍍) 目を疑った。普段はガラガラなのだが、ほぼいっぱいなのだ。こんな光景は、この駐車場では初めて見た。直前に地元紙がこの山の紅葉を小さくだが報じたこと、3連休の最終日であることが影響したのか。山を見上げるとガスが流れていた。風も肌寒い。予報は快晴マークだったが、外れた。でも、山ではよくあること。 車を置き、登り始めた。といっても既に標高1180㍍。山頂まであと標高差120㍍だ。頂は登山路のそばの標識で判別できる程度。見晴らしもよくない。そのまますぎると、紅葉したホツツジが路傍で待ち受ける。立烏帽子から鞍部をへて池の段(1280㍍)へ登り返す。ここはホツツジの名所なのだ。駐車場を埋めた車も、それが目当てである。 残念なことに、ガスがひっきりなしに流れる。ホツツジは今が紅葉の盛りだが、天候が今一つでは映えない。それでも..
中国山地幻視行~恐羅漢山・夏と秋の間 9月30日・恐羅漢山 9月も今日で終わりという日、広島県内の最高峰に登った。秋の風を期待してのことだったが、注ぐ陽光は夏そのものだった。スキー場の急こう配を行く。目をやるとススキの白い穂が揺れている。雪のないゲレンデを斜めに白く縁取っている。 森に入る。とたんに風が涼しい。坂も緩くなった。しばらく辛抱すると「恐羅漢山」の大きな標識。山頂の広場だ。周囲の木々は青々として、紅葉の気配はない。終わらぬ夏と見えぬ秋のはざま、妙な季節感だ。遠くの山々は白くかすんでいる。これも秋の風景とは違う。 下りは夏焼のキビレを回った。キビレとはこの地方の言葉で峠、鞍部(コル)のことらしい。くびれがなまったものか、勝手に想像する。 この山に来るといつも思うが、花というものをあまり見かけない。この季節、足元にあるのはアキチョウジ(秋丁子)ぐらい。園芸栽培でもみか..
中国山地幻視行~深入山・秋よ早く来い 9月14日、深入山 さすが3連休の初日である。駐車場はかなりの車で埋まっていた。隣のグラウンドはカラフルなテントがいくつか。子供たちの姿が見える。なにかのイベントのようだ。予報では今日も30度を超えるらしい。 登山道に入るとキキョウが2、3輪。例年より少ないようだ。高気温が影響しているのか。急登にかかる。熱風が吹き付ける。汗が止まらない。道が緩くなったころ、ナデシコの花。これも数は少ない。おそらく終わりかけだろう。ススキをバックにオミナエシやフジバカマ。これで秋の七草のうち五つが顔をそろえた。気温は真夏だが、花だけは律儀に秋を装っている。 この山の山頂は、日影がない。照り付ける陽光がたまらず、直下のあずまやで昼食とした。26度。風が涼しい。 サギソウはもう終わっていた。もともと8月の花、仕方ないか。それにしても秋よ、早く来てくれ。..
中国山地幻視行~道後山・朝は快適だったが 9月5日、道後山 中国自動車道を1時間走り、山間を抜けた。登山口に近い駐車場に車を置くと、外気温23度。狙い通りである。 9月に入ったとはいえ、猛暑日が続く。今年は特別異常だ。そんなわけで、ここ2か月山から遠ざかっていた。山へ行くにも、この暑さでは…。 そこで目を付けたのが岩樋山(1271㍍)―道後山(1267㍍)縦走コース。外気温の低さの理由は、約1000㍍という駐車場の標高にある。これに朝夕の冷え込みが輪をかけた。さすがに夏も終わりに向かっている。 いきなり樹林帯に入る。朝日が差し込み、いい感じだ。1時間ほどで岩樋山の山頂(なにせ、標高差200㍍余りだ)。フウロやマツムシソウが出迎えてくれる。気温が上がり始めたが、北から吹く風が涼しい。何枚か写真を撮ると、道後山への雲上プロムナードを行く。ここからがいけなかった。 正午近くになると涼風は消..
登山者の心理、精緻に描く~山の図書館 「バリ山行」(松永K三蔵著) 「バリ」はバリエーションルートのこと。我々がこの言葉をよく目にするのはヒマラヤ、日本アルプスなど高山に挑むクライマーが、自らの足跡を残すために選択する場合だ。未登頂の山が減るにつれ、人は新たなバリエーションルートを目指す。しかし、この小説の舞台は六甲山である。低山バリの世界が広がる。 「山を楽しむ」普通の人は、踏み固められた山道を伝って山頂に向かう。線と線をつないで、計画を完遂させる。それとは全く違ったかたちが、この小説にはある。地図の等高線から地形を頭に描き、尾根を上り、谷を下る姿を想像する。次の休日、それを実行する。 建物の外装修繕を専門にする会社に転職して2年、波多は人間関係がやや苦手で、10年ほど勤めた前の会社ではリストラにあった。そんな職場で登山計画が持ち上がった。以前の轍を踏むまいと、波..
中国山地幻視行~大峰山・酔狂がひとり 7月8日、大峰山。 スーパーで昼食を仕入れ、車に乗りかけると話しかけられた。今から登りに行くん? 口調は穏やかだが面白がっているようだ。この暑いのに…? 答えようがないので「そうです」。 予報では平地はどこも35度を超えるらしい。真夏日というやつ。駐車場には「クマ、サル、イノシシ、ヘビが出没」と注意書き。ますます暑苦しくなる。 この日の山は頂上で標高1000㍍ちょっと。単純計算で平地より6度低い。そのことを希望として、登ることにしよう。 登山口付近のアジサイを楽しみ、杉林に入ると日陰が増え、しのぎやすくなった。林間を風が吹き抜ける。歩けそうだ。しかし、頑張らないでおこう。休みたくなったら休む。熱中症が怖い。幸い緑が濃く、山頂まで日陰が続いた。だれにも出会わなかった。こんな日に登る酔狂はいないらしい。 山頂、暑さで靄っているかと..
中国山地幻視行~深入山・風雲急 6月17日、深入山。 中国自動車道の戸河内ICを降りて深入山へ向かった。梅雨入り前の一仕事である。午後には雨模様と予報が出ていた。その前に下山したい。南登山口から急登にかかる。北からの風が思いのほか強い。雲の流れも早く感じる。風雲急とはこのこと。暑さを予想して、ベストの下は薄いシャツ一枚だ。寒ければレインウエアを着こむか。 山頂。幸い、防寒着は不要だった。周囲の山はかすんでいた。東山魁夷の朦朧体を見るようだ。風は相変わらず強く、後から登ってきたグループは早々に下りた。 この山は、広島県では花の名山である。しかし、端境期にあるらしく目立ったものはなかった。ウツボカズラがわが世の春を謳歌していたが、地味な花である。ササユリは当たり年らしく、林間の下山路を飾っていた。山頂のすぐ下あたり、ウツギ(ヒメウツギ?)が一株だけ咲いていた。ヒメウツギなら平..
中国山地幻視行~烏帽子山・花くたしの雨は近い 6月1日、烏帽子山(比婆連山) 予報は快晴のはずだったが、周囲の山の中腹は白いガスが流れている。案の定、出雲峠を回って烏帽子山(1225㍍)に着くころ、眺望は望めなかった。それよりも予想外だったのは、小さな羽虫の襲来である。目、鼻、口、耳とあらゆる「穴」から入り込もうとする。息を止めて立ち止まる。酸素欠乏になりそうだ。例年、この事態に備えて蚊取り線香と虫よけスプレーを欠かさないが、まだ6月も始まったばかりと油断した。 烏帽子山から比婆山、池の段と縦走をかける心づもりだったが、天候がいまいちなのと羽虫の襲来で戦意喪失。昼食を食って先をどうするか考えることにした。しかし人間のサガで、腹いっぱいになれば登りをあくせく行こう、などとは思わなくなる。 比婆山中腹のブナ林をトラバース、新緑を楽しんだ後、六ノ原の駐車場へと戻った。烏帽子山の..
バラの薫りが~四季・彩時記 広島市植物公園は、広島湾の厳島を望む高台にある。快晴の5月29日、訪れた。ちょうどバラが見ごろであった。 ここまで、バラの競演 カルミア オルレア アリウム(ギガンチウム) シモツケソウ
中国山地幻視行~道後山・イワカガミを見に 5月14日、道後山。 イワカガミが見ごろ、と思い広島県北に向かった。ところが、目当ての花はぽつりぽつりとしか咲いていなかった。タイミングが早すぎたか、遅すぎたのか。見るとピンクの花弁はくたびれていた。時期を過ぎたのか。だとすれば、これも春先の異常な暖かさのせいか。 この日、列島は高気圧に覆われた。岩樋山(1271㍍)から道後山(1269㍍)へ縦走したが、全行程雲一つない青空が広がった。北東、直線距離で約45㌔に位置する大山も、これまでになくくっきりと見えた。下山路、木漏れ日が揺れて新緑がきれいだった。 岩樋山の山頂手前から、駐車場を望む 岩樋山から、大山を望む 猫山もくっきり 道後山の手前から、大山をアップ 道後山の頂まで、雲上の散歩道 道後山の山頂。雲一つない青空 新緑が輝く イワカガミⅠ イワカガミⅡ ..
中国山地幻視行~船通山・とっくに春は過ぎて 5月2日、船通山(鳥取・島根県境)。 久しぶりに船通山のカタクリの花を見たくて、中国自動車道を走った。もう少し早くとも思ったが、渋滞を避けるため連休の谷間で、なお天候の良い日を狙ったらこの日になった。月が替わった昨日は、4月の平均気温が史上最も高かったとメディアが伝えていた。心が焦った。 登山路は暑かった。汗みずくで山頂。気温計は30度近くを指していた。目当てのカタクリは…無残だった。日当たりの良すぎる山頂広場で、例年ならGWの頃まで清楚なたたずまいをみせる花弁はすっかり「日焼け」し、たくましくさえ見えた。花弁を落とし実を付けたのもある。風はすっかり夏だった。それでも名残を追って、カメラに収めた。 この山からは、大山がよく見える。しかしこの日は靄がかかり、姿を確認できなかった。 これも地球温暖化のせいなのか。困ったものだ。..
中国山地幻視行~吉和冠・黄砂のベール 4月18日、吉和冠 山頂で遅めの昼食をとっていると女性の二人組が登ってきた。随分元気そうで、そのあたりを歩き回り、記念写真を撮るとさっさと下りて行った。 以前登ったのは2021年12月半ば。2年と4か月ぶりの山になる。随分きつく感じた。かつては雪山に挑戦したこともあるが、若い女性の二人と比べるまでもなく、老いを実感せざるを得なかった。 この山に登るたび思うのは「ハナのなさ」である。「ハナ」は植物の「花」より「華」が近い。途中で展望はなく、変わった地形にも出会わない。それでも登ってきたのは、森の深さと巨木のたたずまいにひかれてであった。 この日は朝から「黄砂、黄砂」とテレビの予報が叫んでいた。悪い予感がしたが、山頂近く見晴らしのきく崖上に立つと、いやというほど実感させられた。いつも見える十方山、恐羅漢山は黄砂のベールの向こう。その..
中国山地幻視行~恐羅漢山・冬と春の間 4月1日、恐羅漢山。 駐車場に車を止めると、冷たい風が吹き降りてきた。スキー場のゲレンデ上部に目をやると予想外の残雪。しかし、もう4月。予報は快晴。カンジキは持たず、斜面を登り始めた。 ゲレンデ横の急登も所々で雪に阻まれ、時間を要した。林間を抜け、山頂直下の緩い斜面に入ると、残雪は一面を覆っていた。春の腐った雪。油断すると空洞を踏み抜き、膝上まで埋まる。慎重に足を運んだ。 広島・島根県境、標高1346㍍の山頂は日当たりがよく雪はなかった。大きな岩の上から四方を見渡すと、白くかすんでいる。もやっているのか、それとも黄砂か。木々は新緑には早く、枯れ枝が冬の荒涼を漂わせていた。 昼飯をすますと、下山路の思案。いつもなら夏焼峠を回って帰るが、この日は登りで意外に時間を要した。峠回りも、雪があるのかないのか判断がつきかねた。そんなわけで、登った道を下った。人..
中国山地幻視行~深入山・春ですよ 3月18日、深入山。 予報は晴れだったが、北風が強い。気温15度、体感はそれよりかなり低い。タカをくくってごつい防寒着は自宅に置いてきた。登りにとりついたころ、後悔したが遅かった。 息を切らして登るうち、汗ばんできた。止まると汗が冷えるのでそのまま歩くしかなかった。そんなことで、ほぼノンストップで頂上に着いた。具合のいいことに風がやんだ。青い空が高かった。 圧雪のためなぎ倒された草原が再び頭をもたげ、山肌は遠目に猫の丸い背中のように見えた。春近しの光景だ。それにしても、いい天気だ。こんな日に、登山者が誰もいないとはなんという不思議。そういえば、登山口の休憩所も出入り口にベニヤが打ち付けられ、冬の装いのままだった。みなさぁん春ですよ、と叫びたい気分だった。 登山口から見た深入山の全容。ただし、山頂は見えない ひと登りして振り返ると..
中国山地幻視行~大峰山・春まだ浅き 2月27日、大峰山。 登山口に車を止め、杉林を抜けて最初の休憩地に着いた。ちらほらと舞う雪を受けて、二つのベンチは長方形に白くかたどられていた。座ってしまうのも惜しく、写真を撮ってザックを置いた。男性が一人おりてきた。「山頂は雪ですか」と声をかけた。「雪です」「でも、午後には解けるかも」とのこと。 座っていると北からの風が、氷の中を抜けてきたかのように冷たい。まだ日差しはなく、見上げた空はどんよりとしていた。たまらず歩き始めた。中間点あたりで、待望の日差しがさし始めた。薄雪をかぶった杉林に陽が当たり、絵画のように美しかった。 山頂から北を眺める。吉和冠は雪をかぶっているようだ。西へ目を転じる。山口県内に端正な三角形の山。莇が岳(1004㍍)であろう。この大峰山が1050㍍だから、ほぼ同じ標高の頂を持つ。南にのうが高原。山頂付近に..
中国山地幻視行~三倉岳・様変わりしていた 三倉岳に登った。いつものAではなくBコースを選択した。青空が広がった2月12日。前回10月の登山で、縦走路のロープが外されていたからである。危険個所として認識されていたのは、中岳から夕陽岳に至るキレットと頂上手前の壁。歩いてみて分かったが、そこが大幅に補修してあった。事故の確率は減ったと思われる半面、フィールドアスレチックの趣となり、山に登る醍醐味は少なくなったともいえる。 しかし、これだけの補修には相当の努力が必要で、かかわった人々の事故を防ぐ・安全第一の気持ちも、当然理解できる。悪態よりまずは感謝をすべきだろう。 ふもとの駐車場に車を置き、A、Bコースの分岐点へ。細かい注意書きが目に付く。体力に応じて引き返すなどしてくださいとある。ここでBコースを選択。あとは急な石段登りが続く。いつもなら、ところどころの壁でクライミングに興じる姿が見られる..
中国山地幻視行~窓が山・いつもと違う道 頂上までもうすぐだ。そう思い登山路をたどった。頭上から声がする。だれか降りてくるらしい。つづら折りの道に立っていたのは、かつて職場で一緒だったUさんだった。 窓が山は、いつもなら広島市佐伯区五日市の魚切(南側)から登るが、この日に限って安佐南区沼田の憩いの森(北側)を出発点とした。かつての山仲間が通い、登山道を整備してきたと聞いたからだった。確かに、丸太が整然と埋め込まれた道は階段状になり、歩きやすかった。倒木も見当たらない。活動の成果が出ていた。 実は、この情報を寄せてくれたのがUさんだった。この日は活動を共にするもう一人の男性と一緒だった。10分ほども立ち話をしただろうか。二人は下山、私は頂上を目指した。 窓が山の東峰。誰もいなかった。遥かに広島湾。前日より急激に上がった気温のためか、靄がかかっていた。広場には、ほうきの掃き目が清々しかった。..
中国山地幻視行~厳島・恐る恐る石段を上る 昨年暮れ以来、腰痛に悩まされ「風と歩く」も1か月余りブランクが生じた。近くの外科クリニックに通いなんとか好転したので、果たして山登りは可能か、と1月9日厳島の弥山(535㍍)にトライした。 なんだ、500㍍の山か、と馬鹿にしてはいけない。連絡船を降りて海抜ゼロ㍍から。山頂の標高は正味、足で稼がなければならない。いくつかのコース(主要には三つ、ほかにもあるらしい)があるが、私が常用するのは大聖院横から石段を上る登山路。この日、船を降りるといくつかのグループが手ぐすねを引いていたが、大聖院コースを選んだ人はいなかった。そんなわけで前にも後ろにも人のいない山道を悠々と歩いた。 山頂、さすがに人が多かった。特に目についたのは外国人。最近、よく言われる観光ニッポンへのインバウンドであろうか。日本人より多いのでは、と思われた。予報では晴れだったが薄曇り、気..
中国山地幻視行~大峰山・小春日和 11月20日、廿日市市と湯来町の境にある大峰山(1050㍍)に登った。我が家から1時間足らず。広島市内から最も近い1000㍍峰だ。朝から快晴、小春日和というやつである。気がかりは2日前に襲来した寒波。東日本だけでなく広島県北にも季節外れの雪をもたらした。大峰山は単独峰で、島根県側からの風を遮るものがない。これまでも予想外の雪に悩まされてきた。 麓から見上げると、山頂付近に雪はなさそうだ。車に積んだアイゼン、カンジキともこの日は用なし。終わりかけの黄葉を横目に、のんびりと(といえば聞こえはいいが、年とともにテンポは落ちるばかり)歩いた。 頭上に青空が広がる山頂から、カスミがかかり展望はきかなかった。気温上昇が影響しているようだ。気温計では12度だが、その割に北から吹く風が冷たい。フリースを一枚着込んだ。 駐車場に帰ると、タンポポが咲いているのに気付いた。..
中国山地幻視行~比婆山群・紅葉の牛曳と毛無 秋口に夏日が続いたため、今年の紅葉のピークは予想がつかなかった。比婆山群に狙いを定め現地にも問い合わせたが、要領を得なかった。最近の天候不安(不順?)は罪深い。考えた末に4,5日遅らせ10月31日、現地に向かった。 時季はどんぴしゃりだった。ただ、寄る年波には勝てず、いつもの牛曳-毛無山縦走はやめ、牛曳は途中まで、毛無は山頂までの紅葉を楽しむことにした。縦走だと時間がかかりすぎるためだ。 牛曳の山すそは、当地では珍しい白樺林があり、紅葉と見事なコラボを見せる。これを楽しんだ後、毛無のゆったりとした登山路を山頂(1144㍍)まで歩いた。コース短縮が功を奏し(?)、山名の通り草原が広がる山頂にはまだ誰もいなかった。ススキが逆光に映えて美しく揺れていた。 帰途は出雲峠を回ったが、道は荒れていた。 秋が燃えるⅠ 秋が燃えるⅡ 秋が燃えるⅢ 秋..
中国山地幻視行~三倉岳・やっぱり秋だ 久しぶりに三倉岳に登った。調べたら2月以来。8か月ぶりである。全コース、石段登り。しんどいことこの上ない。この日もあえぎあえぎ、山頂を目指した。 9合目を越えたあたりから様子が変わった。崩れたままだった急斜面が整備してある。旧来の朝日岳~中岳~夕陽岳のコースは封鎖され(それでも通る人は通っていたが)、夕陽岳往復を余儀なくされていたが、なんと通行止めのロープが外してある。看板を読むと、自己責任でコースを選びなさいということのようだ。 夕陽岳の南側にある大岩に陣取り、下界を眺めた。いつもながら、ここからの眺望は最高だ。稲穂は黄色く色づき、刈り取りを待つばかり。上空に広がる空は高い。 次回は、中岳からの縦走コースをとることにしよう。 縦走路のロープが外されている これまでは、こんな感じ(2021年7月撮影) ここからの眺望は最高だ 稲穂は黄色く色..
中国山地幻視行~恐羅漢山・一瞬の秋を満喫 中国大陸から高気圧が張り出した9月24日、広島県の最高峰、恐羅漢山(1346㍍)へ車を走らせた。島根県境に近いスキー場の駐車場に乗り入れると、既に10数台の車。近年にない光景だ。手元の気温計を見ると22度。強めの風が吹く。秋を実感した。 ゲレンデ横の細い道を登る。見上げるとススキの穂が揺れていた。その上に高く青い空。風は冷たいが陽光は夏を思わせる。ストーブとクーラーを同時につけた部屋にいるようだ。だがそれも、日差しを遮る林間に入ると、秋一色になった。 山頂は人であふれていた。岩の上から遠方を望む。気温が下がり風もあるので、遠くまで見える。東方、やや北寄りに高い山。大山だろうか(帰宅後に地図で調べたが、確実なことは分からなかった)。島根県側には発電用の風車の列。 下りは夏焼のキビレを経由。キビレは峠のこと。「くびれ」から来たと思われるが由来は知ら..
「冒険」の意味を問う旅 「裸の大地 第二部 犬橇事始」(角幡唯介著) 古い話になるが、本多勝一著「カナダ・エスキモー」を読んでいて、エスキモー犬に「ヒューマニズム」や愛情は禁物だ、犬橇をひく犬は愛玩対象ではなく労働犬だからだ、というくだりに軽いカルチャーショックを覚えたことがある。半端な愛情をかければ、犬たちは確実にその人間に従わなくなるという。「犬になめられた」状態になるのである。氷点下30度の氷原で犬と生死を共にするための思想が、底流にある。 同じことを一冊の本で全面展開したのが、角幡の「犬橇事始」である。 「冒険とは何か」。これが角幡の永遠のテーマであるようだ。例えば、登山。8000㍍峰全14座登頂を達成したラインホルト・メスナーは「ヒマラヤより高い山に登ることは不可能だし単独行より少人数の遠征などありはしない」と山を断念した。点から点へ、どれだけ早く、どんな方法で..
中国山地幻視行~秋を探しに この暑さ、なんとかならないものか。ブログも1か月休んでしまった。暑さで山に登る気がしないためだ。しかし、そろそろ更新しないと世間から忘れられそうだ。考えた挙句、1か月前の山を再登場させることにした。深入山の開放的な尾根筋、風が吹けばなんとかなる。しかし、無風・カンカン照りというリスクもある。そろそろ8月も終わり、前者の可能性に賭けた。 結論を言うと、前者に近い天候だった。「近い」とは…。さわやかな風が吹き抜ける程度なら心地よかったのだが、天気予報は外れ横殴りの強風に見舞われた。しかも雨交じり。広島県の最高峰、恐羅漢山を見やると、分厚い雲が不気味に山頂付近を覆っていた。あの雲がこちらへ来れば…。天気予報を信じ切っていたので、レインウエアは車の中。後悔先に立たず。ザックに付けた気温計は25度を上回ることはなかった。皮肉を込めて言えば、秋を探しに登った..
中国山地幻視行~大峰山・やっぱり夏は暑い 列島を熱中症警戒アラームが駆け巡った7月24日、広島県廿日市・湯来町の境にある大峰山(1050㍍)に登った。暑い盛りに何を考えて、と言われそうだが、昔はよくこの季節に登った。北アルプスなどへ遠征を控えて体調を確認するためだった。 この日、駐車場で気温計を見ると30度。予想より低かったが、別荘地の舗装道では照り返しが厳しい。杉林に入るとほっとした。樹間を抜ける風が心地いい。だが、それもつかの間。昔のようにはいかない。木漏れ日が熱風を運んでくる。汗が滴る。しかし、ここで辛抱すると熱中症が怖い。休憩を取り、水分を補給する。おそらく、いつもの倍ぐらいの時間がかかった。 山頂は岩と濃い緑と夏の雲の競演。いいなあ、山は。でもやっぱり夏は暑い。今度は涼しいときに来よう。 樹間を抜ける風。杉林に入るとホッとする 一部崩落のため回り道。通って..
中国山地幻視行~深入山・久しぶりの晴天 梅雨が明けきらない中、奇跡的に晴天が広がった。7月6日、芸北の深入山(1153㍍)へ。6月ついに山行ゼロ。ここを逃しては長期離脱になるとの思いからだった。 南登山口の駐車場に車を置き、斜面に取り付いた。新緑が目に染みる。気温30度。風があり、暑さは気にならなかった。ツアー客10人ほどが先行していた。 この山は8月になると百花繚乱になる。今は端境期。山道の両側にウツボグサが盛期だが、地味な花である。ササユリは終わりに近かった。風雨にさらされ、花弁は傷ついていた。その中から比較的整ったものをカメラに収めた。風に揺れるギボウシの隣に見かけない花?(写真参照)。登山口の案内所でも聞いたが名前は不明だった。 山頂で周囲の山々を眺めていると「あれは聖湖?」と聞く年配女性。「そう、左が聖山。右が高岳」と説明した。すると「もうすぐ常念へ行くんですよ」と楽しそ..
山岳美と厚みのある人生ドラマ~山の映画館 「帰れない山」 北イタリアのモンテ・ローザ周辺を背景に、出会った二人の少年の友情、父との確執、生き方の模索が描かれる。「国際的ベストセラー小説」とのことだが、原作は未読。稜線の風景は美しく、かといって背景は美しいがドラマは貧弱…といった、ありがちな山岳映画ではない。一方で、長尺の割にところどころ説明不足の感があるのは、作り手が原作に頼りすぎたせいか。読んでいれば補完され、面白さは倍増したかも。 イタリア・トリノに育ったピエトロ(ルーボ・パルビエロ)は両親とともにモンテ・ローザ山麓グラーノ村で夏を過ごした。そこで牛飼いをしている同い年の少年(12歳?)ブルーノ(クリスティアーノ・サッセッラ)と仲良くなる。ある年、山好きの父ジョヴァンニ(フィリッポ・ティーニ)は二人を連れ、氷河に向かった。途中で村人に「子供連れは危険だよ」と忠告を受けながら…。大きな..