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2009/12/01

  • 中国山地幻視行~高岳・沢に転落の一件

    中国山地幻視行~高岳・沢に転落の一件 空は晴れていた。ルンルン気分で杉林を行った。…目の前の光景が、どこか違っていた。 橋がない。いや、橋はあった。真ん中がぽきりと折れ、渡れる状態ではなかった。落ち込んだ中央部に松の倒木があり、これが腐りかけた橋を破壊したに違いなかった。 4月17日、広島・島根県境の高岳(1054㍍)に向かう。 沢沿いをさかのぼり、渡渉地点を探す。かつては橋がなく、こうして渡っていた。最近は石垣などで整備が進み、その分渡るのは困難になった。 それらしい場所を探し、じゃぶじゃぶと渡った。対岸の崖は思ったより軟らかく、登るのに手間取った。 尾根伝いに快適な山道が続く。早春の木々はモノクロのたたずまいだったが、ところどころ淡いピンクの塊が宙に浮いていた。近づいて見ると、アカヤシオのようだった。やがて上りが増え始めると、右手に聖湖面が光って見えた。 山頂は、きれいに刈り込まれ..

  • 中国山地幻視行~恐羅漢山・物語のこちら側

    中国山地幻視行~恐羅漢山・物語のこちら側 中国自動車道の戸河内ICを降りてしばらく、満開の桜の花吹雪をくぐった。しかし、恐羅漢山の駐車場から眺めた景色は冬の色をしていた。荒い息を吐きたどり着いたゲレンデ上部には汚れた雪の塊があった。季節の流れにあらがっているようだった。 標高1346㍍の山頂は冬枯れていた。木々は孤独なたたずまいで春を待っていた。登ってくる人もいない岩陰で昼食をとった。吹き来る風と光だけが次の季節の色をしていた。(4月3日)  スキー場の残雪が、最近までの喧騒を物語る ゲレンデ上部に行くと結構な量 山頂に立つ古木 空は青い 山頂から。正面に臥龍山 冬枯れた林の向こうに島根を望む ゲレンデ上部の風景 正面の林あたりが山頂

  • パッと咲いた今年の桜~四季・彩時記

    パッと咲いた今年の桜~四季・彩時記 今年の桜はじわじわっとでなくパッと咲いた。ある人の弁である。春の来るのが早かったこともあり、唐突感があった。そんなわけで3月28日、慌ただしく広島近郊の中国山地を見て回った。タイミングはぴたり、空は快晴だった。  広島市佐伯区湯来町・湯の山温泉のしだれ桜(通称・竹下桜) 広島県安芸太田町のJR可部線安野駅跡(通称・花の駅公園) ここまで花の駅公園 佐伯区石内の神原しだれ桜

  • 中国山地幻視行~深入山・冬と春の間

    中国山地幻視行~深入山・冬と春の間 3月20日、久しぶりに島根県境近くの深入山(1153㍍)へ向かった。雪も解けているころ、と期待してのことだった。 南登山口の駐車場に車を置いた。案内所はべニア板で冬囲いしたままだった。山は冬枯れの木々が立ち尽くし、草原は勢いを失っていた。手元の気温計を見ると20度は優に越していたが、北から冷たい風が吹き付け、体感温度は低かった。冬ではないが春でもなかった。翌21日は春分の日。 枯れた草原へ足を踏み出した。少し経てば、あたりは新緑でおおわれることだろう。振り向けば、広島県内最高峰・恐羅漢山が雪を頂いて立っていた。半月後あたりに登ってみよう。そのころ、雪は消えているだろうか。 山頂に着くと、しばらくしていくつかのグループが登ってきた。相変わらず北風が冷たかったが、にわかに付近は賑やかになった。一人が小さなドローンを持ってきていた。山頂広場は、飛ばすにはち..

  • 中国山地幻視行~窓が山・虫のごとく斜面を這う

    中国山地幻視行~窓が山・虫のごとく斜面を這う 啓蟄の3月6日、土中から這い出た虫のごとく、急斜面に取り付いた。 窓が山。中央に大きなキレットがあり、ピークを二つ持つ。登頂の楽しみが二度味わえるという良さも持つが、屏風のようにそそり立つ山容。標高は700㍍ほどにすぎないが、魚切からの急登はなかなか手ごわい。そのうえ、最近は奥畑からの中央登山道が人気があるらしく(ピークまで30分ほどで着いてしまう)、1時間半はかかる魚切コースは敬遠されがちのようで、道も荒れている。 登山口を過ぎると、山道はイノシシが掘り返した跡が続く。倒木が行く手をふさぐ。辛抱して登ると、頂上に近くなるほど傾斜が急になる。最後は岩登りである。視界はない。 西峰のピークで一瞬の眺望を楽しんだ後、キレットの底へ向かう。途中、終戦前年のゼロ戦衝突事故の犠牲者を祭る小さな祠の案内板。通るたび、粛然とした思いになる。 鎖場があり、..

  • 中国山地幻視行~三倉岳・冷たい風の向こうに

    中国山地幻視行~三倉岳・冷たい風の向こうに 駐車場で8度だった気温は14度まで上がっていた。空は晴れている。絶好の登山日和と思われた。 2月20日、三倉岳。標高が上がるにつれ、風が強まった。標高といっても、たかだか702㍍の山である。しかし、北からの風は思いのほか冷たい。峠のような9合目まで着くと、尾根渡りの風は頂点に達した。夕陽岳の岩場へ、自然と足が速まった。 風が冷たく強い分、遥かな山なみがくっきりと見えた。山口方面の羅漢山や県北の雪をかぶった峰々が、吹き来る風の向こうに立ち上がっていた。 下り、久々に5合目の大岩に登った。峰の上は見事な青空だった。大岩の下で風の音を聞いた。冷たさは消え、葉の擦れる音が遠い海の波のように聞こえた。 9合目の丁字路。正面からの北風が強まった 夕陽岳の岩場 広島湾方面を望む 右手の山が山口の羅漢山 県北の山は雪をかぶっている(コンデジ、200..

  • 中国山地幻視行~大峰山・雪山再訪

    中国山地幻視行~大峰山・雪山再訪 目の前に現れたのは、12月19日とあまり変わらない光景だった。雪に覆われた階段状の急登。雪の汚れ具合が、降雪以来の日数を物語っていた。あの日、苦汁をなめたのはアイゼンの故障のせいだった。安くもない6本刃は新調した。平地ではこれほどの雪は想定しづらかったが、それでも、と思いザックに忍ばせてきた。 2月4日。気温はまだ氷点下であろう。それを物語るように、雪の切れはしからのしたたりは凍り付いていた。アイゼンを履く。ざくざくと、気持ちよく雪面に刺さる。 山頂の大岩から見上げる空は快晴だった。 下降に移ると、八畳岩の雪上にイノシシらしき足跡を見つけた。断崖の上部から遠くを眺めていたように思えた。足跡を追って広島湾を眺めたが、イノシシらしきものの気持ちはわからなかった。 半分ほど登ると、雪が現れた 凍り付いている 山頂から山口方面を望む 山頂から広島方面を..

  • すべての山から生還した男~山の映画館

    すべての山から生還した男~山の映画館 「人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版」 世界的なクライマーといっていい山野井泰史を、エヴェレスト登頂経験を持つテレビ・ジャーナリスト武石浩明がドキュメンタリーに仕上げた。タイトル「人生クライマー」から、作品は二通りの見方が想定される。一つは、物心ついたころからクライミングのことしか考えてこなかった、そして今生きている、と語るその生きざまを見る。二つ目は、ずばり、世界的なクライマーのメンタル、技術の水準を見る。二つを同時に見ることは可能だが、おそらく(私も含めてだが)、視線の軸足は前者にあると思われる。 簡単に言えばクライマー山野井の足跡を追っているのだが、あるのは栄光と成功ばかりではない。 始まりはマカルー西壁(8463㍍)。ポーランドのヴォイテク・クルティカらが1981年、当時世界最強と言われた3人パーティーを組んで挑んだが7800..

  • 中国山地幻視行~年の初めの厳島

    中国山地幻視行~年の初めの厳島 謹賀新年 昨年末は雪山に敗退したが、気を取り直して厳島へ。いつのころからか、年の初めは厳島と決めている。しかし、もう1月も9日だ。年の初め、などと威張って言うこともないか。 船を降りて向かったのが大鳥居。約70年ぶりの改装を終えたばかりで、巨大な額の金文字も柱の朱色も鮮やかさを増したように見える(実際、そうなのだろう)。神社裏手から大聖院へ回り、石段に取り付く。鐘がゴーンとなった。いつものことだが、展望台までの急登がきつい。ここを過ぎれば傾斜はやや緩やかになる。しばらく我慢すると仁王門にたどり着く。 弥山の山頂直下には大聖院の霊火堂があり、空海ゆかり「消えずの火」がありがたく置かれている。1200年間消えたことがないそうだが、実はこの堂、10数年前に全焼、再建された。その時も火は消えなかったのだろうか。なんとなくもやもやとしている。誰が言い出したか、..

  • 中国山地幻視行~大峰山・ああ、経年劣化

    中国山地幻視行~大峰山・ああ、経年劣化 乗り入れた駐車場はまっさらな雪に覆われていた。轍の跡などなかった。「よしよし」と心の中でつぶやいた。止めた車のタイヤを見ると、3分の1ほど埋まっていた。 西日本を含む列島を強力寒波が襲った12月19日。防寒を周到に整え、歩き出した。別荘地の中を行く。足首まで雪に埋まった。杉林に入った。さらに急登になる。アイゼンを履き、再び歩き出した。違和感。なんと、アイゼンを固定するゴムバンドが両脚とも切れていた。バックル式で締める6本爪を常用しているが、考えてみれば相当期間使っている。経年劣化だろう。しかし、代わりがない。かんじきは車の中だ。この山は頂上に近くなるにつれ傾斜が増し、おまけに階段が多い。かんじきで苦労した記憶があり、アイゼンが最上と判断したのだ。それがこんな壊れ方をするとは…。 仕方なく、滑り止めなしで上がる。雪はどんどん深くなる。スリップによる..

  • 中国山地幻視行~窓ヶ山・青い空と光る海

    中国山地幻視行~窓ヶ山・青い空と光る海 快晴の一日。こんな日を小春日和というのだろう。近くの山から広島湾を眺めたくなり、窓ヶ山(711㍍)に向かった。 11月25日、魚切の登山口。ここには毎年今頃、皇帝ダリアが咲く。作業場らしき建物の敷地内、見上げるような位置に薄紫の花。原産は中米当たりのはずで、もちろん自生ではないだろう。横目に眺めてコンクリートの舗装道を登り、鬱蒼とした林に入った。 この山は、最初は緩くだんだんと急登になる。山頂に近くなると、ほとんど岩場になる。そこまで行くと、なぜこの山にしたのかといつも後悔する。そんな気持ちを押し殺し、あえぎながら山頂につくと、広島湾の展望が眼下に広がる。青い空、光る海。先ほどの後悔はどこかに吹き飛んでいる。現金なものである。 皇帝ダリアが咲いていた 窓ヶ西峰の山頂から。中央右の大きな島が厳島 薄く刷毛で描いたよ..

  • 厳島の紅葉、今がピーク~四季・彩時記

    厳島の紅葉、今がピーク~四季・彩時記 快晴の11月18日、ピークを迎えた厳島の紅葉を楽しみました。約70年ぶりとなる2019年以来の改修工事をほぼ終えた大鳥居も、洋上の足場を除いて囲いが取り払われ、姿を見せていました。足場は27日まで見学用に使われるそうです。   満潮時でもそばに近づけるよう、足場だけ残っています 2020年1月に撮影

  • さすらう冒険行の始まり~山の図書館

    さすらう冒険行の始まり~山の図書館 「裸の大地 第一部 狩りと漂泊」(角幡唯介著) 冒険とは何か。角幡はいつも、こう問いかける。高い山に登ることが冒険なのか。未踏の地に踏みこむことが冒険なのか。確かにこれらは必要な条件かもしれないが十分な条件ではない。例えば角幡は対談・エッセイ集「旅人の表現術」で、こんなことを述べている。 偉大な先達・本多勝一の定義を下敷きにしつつ「冒険とは体制(システム)としての常識や支配的な枠組を外側から揺さぶる行為でなければならない。(略)反逆的な方法で新しい世界に飛び出して可能性の扉を開き、時代の体制(システム)をぶち壊さなくてはならないのだ」―。 その前段として、エベレスト登山が多くの人の目に冒険とは映らなくなった理由を挙げている。「登山の戦略が完全にマニュアル化し、そのマニュアル通りに事を進めることが登頂につながる最大の近道になってしまったのだ」 私..

  • 中国山地幻視行~高岳・黄金の緞帳

    中国山地幻視行~高岳・黄金の緞帳 聖湖畔の道を行く。小さな橋の真ん中あたりに車が止まっていた。頭の中を「?」が駆け巡った。事故だろうか…。近づくと、事情が呑み込めた。入り江に朝日が当たり、湖面に映る紅葉が「絵」を構成していた。さすがに橋の中央で見とれるには気が引け、たもとに車を置き、引き返してシャッターを押した。 11月7日、目当ての山の登山口付近に車を置くと後続車の女性が声をかけてきた。「すごい天気ですね」。「紅葉もちょうど頃合いのようですね」と返した。 広葉樹の中を緩く登る登山道は、陽を浴びて黄金の緞帳のようだった。ついついカメラを向けるのに忙しく、「歩き」がおろそかになった。しかし、1時間もあれば頂につく山である。ほどなく360度展望の広場に出た。 登山口の女性は直後に来た車に同乗、引き返していった。聖山からここ高岳まで縦走をかけたらしい。そのための分散駐車のようだった。若い..

  • 中国山地幻視行~牛曳から毛無へ・紅葉には少し早かった

    中国山地幻視行~牛曳から毛無へ・紅葉には少し早かった そろそろ紅葉の季節、というわけで10月26日、広島県北・比婆連山へ車を飛ばした。ここ数日、天候ははっきりしなかったが、この先3日間は気象庁の保証付きだった。例年なら見ごろのはずだが、山仲間から「今年は紅葉が遅い」の声。若干の危惧を抱きながらの山行だった。 昨年はパスした牛曳山の登山口。この地では珍しい白樺林と紅葉のコラボが楽しめる。足を運ぶと、既に男性が2人、シャッターを切っていた。カメラを構えると、背後を二人連れが登って行った。まずまずの人出だが、紅葉見物にはやはりタイミングが早すぎたか。ところどころ緑が目立ち、紅葉だけをフレームに収めるには工夫がいった。 ひとしきり写真を撮り、頂上(1144㍍)を目指した。目指す地点は展望なく、三差路のような山道に古びた標識が立つだけだ。呼吸を整え、伊良谷山(1149㍍)を目指した。ピークから大..

  • 中国山地幻視行~三倉岳・田は黄色く色づいて

    中国山地幻視行~三倉岳・田は黄色く色づいて 林間を走っていると、フロントガラスにぽつりと雨。予想外の事態に慌てた。予報では、曇りのち晴れだった。駐車場でザックの底を探る。幸い、雨具は持ってきた。 10月11日、三倉岳。階段状の急登の頭上で声がする。それも日本語ではない。おそらく米国人二人。体がごつい。壁に取り付き、楽しんでいるようだ。岩国基地からではないか。ここから山口県境までわずかだ。ようやく9合目までたどりつき、一休みしていると先ほどの二人が追い付いてきた。「モウイイヨ」と笑っている。石段を堪能したようだ。 10分ほどで夕陽岳(西峰)の山頂。足元に広がる栗谷の集落では、田の稲穂が黄色く揺れ、収穫間近を告げていた。いつ来てもここからの眺めは素晴らしい。やがて二人連れも来て、風景を楽しんだのち「ウツクシイネ」と一言、下山していった。心配した雨に降られることはなかった。 夕陽岳の山..

  • 中国山地幻視行~再び台風一過の・大峰山

    中国山地幻視行~再び台風一過の・大峰山 再び台風一過を狙った。ただ、前回とは少し様子が違っていた。気温が急降下していた。おまけに、風速数㍍はあろうかという風が冷たかった。最初の休憩地のベンチで気温計を見ると、17度だった。風を考えると、体感は10度と少しあたりと思われた。汗が冷たく、ウインドブレーカーを着込んだ。 9月21日、大峰山。頂上の大岩には先客がいた。途中の山道には台風の名残か、折れた枝や木の葉が散乱していたが、大岩から見上げた空は見事な秋の空だった。四方の山々や広島湾もきれいに見渡せた。ちなみに、眼下の厳島まで約20㌔、江田島まで約30㌔の位置関係である。 午後の下山時、やっと風がやんだ。路傍を彩る彼岸花は、多くがすでに盛りを過ぎていた。 大峰山頂から西方面を望む。空には秋の雲広島方面を望む。右手に広島湾が広がる 芸北方面を望む。左手とがっ..

  • 中国山地幻視行~道後山・台風一過の縦走路

    中国山地幻視行~道後山・台風一過の縦走路 台風11号は北の海へ抜けた。秋晴れを期待して9月7日、広島県北へと車を走らせた。目当ては岩樋山・道後山縦走である。1271㍍から1268㍍のピークへ、花々が咲くプロムナードである。 午前10時、月見ヶ丘の駐車場に乗り入れる。先行車が1台。思ったより少ない。 1時間かけて岩樋山の頂へ。手前の道でフウロが迎えてくれた。広場に飛び出すと、鮮やかな紫が目に飛び込んだ。トリカブト。猛毒で知られる。足元にリンドウ。標識の周りにはマツムシソウ。夏から秋へ、季節の移り変わりを告げている。 北東を望む。大山がどっしりと座っているはずだ。しかし、厚い雲に覆われ確認できなかった。見上げた空は青く抜けていたが、日本海方面は秋晴れとはいかなかった。 気を取り直して道後山に向かう。道の両側にフウロとマツムシソウが咲き誇る。時折、白い花。ヤマハハコグサである。山頂につく..

  • 中国山地幻視行~深入山・夏の花を見に行く

    中国山地幻視行~深入山・夏の花を見に行く 8月23日、深入山に向かった。夏の花に出会うためである。このところ天候は不順で、この日も曇り予想だったが雨が降らないだけまし、ということで車を走らせた。 現地着午前9時半。曇り、気温32度。風はなく蒸し暑い。先が思いやられた。 キキョウは今が季節だった。山道の両側に、案内人のように並んで咲いていた。時折、ナデシコ。ツリガネニンジンやワレモコウも地味にたたずんでいた。それにしても暑い。 山頂までたどり着き、昼食の時間にしていると、男性が登ってきた。言葉を交わすうち、山頂のすぐ下にあるオレンジの花は何でしょう? と聞く。花のある場所へ行ってみた。鮮やかなオレンジ色の平べったい花弁。吉和冠で見た花だった。その時は名前を調べたが、とっさには思い出せなかった。そのように伝えた。 山頂から南側に回り込む。東屋へ向かう道だ。このあ..

  • 壮大な物語、重量感は今一つ~映画「神々の山嶺」

    壮大な物語、重量感は今一つ~映画「神々の山嶺」 夢枕獏の壮大な冒険小説を、仏映画界が谷口ジローの画で映像化した。阿部寛、岡田准一で2016年に実写映画化された時もそうだったが、今回もどこか緊迫感に欠ける。原作の行間ににじむ冒険行のひりひりした感じがない。今回の仏作品は、特にその感が強い。 ストーリーの骨格はあまりにも有名で、今更紹介することもないが、少しだけ触れる。 主人公は孤高のクライマー羽生丈二。おそらく、谷川岳・一ノ倉沢「三スラの神話」で世に出た森田勝が原作者の頭にあったであろう。もちろん、そのままなぞってはいない。夢枕獏の造形力が存分に発揮されている。羽生の横を通り過ぎたもう一人の登山家がいた。長谷常雄。これはどう見ても、長谷川恒男であろう。美しいクライミングで知られ、商業主義ともよく付き合った。森田とは真反対の人格である。 しかし、夢枕の原作では、長谷は全くのわき役である。羽..

  • 中国山地幻視行~恐羅漢山・深い緑と夏空と

    中国山地幻視行~恐羅漢山・深い緑と夏空と 7月になって1回も山に行っていないことに気が付いた。もう月も終わりだ。計画してこなかったわけではないが、天候不順で流れたのが数回。今夏、酷暑と思えば雨が数日続いた。そんなわけで(どんなわけ?)、大急ぎで山行計画を組んだ。 谷筋は避けた。理由は前回書いた。開放的な尾根筋で風の通りがよいこと。しかし、中国山地にそんな好条件の山がそうそうあるわけではない。熟慮の末(どこかで聞いたフレーズ、自民党議員のよく使うやつ?)、恐羅漢山(1346㍍)に決めた。 7月29日朝、当地は午前中晴れ、午後下り坂で夕刻から雨と予報。まあいいか、と車を走らせた。牛小屋高原の駐車場に車を置く。思ったより風は涼しい。気温計は25度あたり。標高は900㍍を超していた。山頂まで高度差400㍍余。 スキー場のゲレンデ横を直登する。首筋を焼く日差しはさすがにきつい。しかし、木陰に入る..

  • 中国山地幻視行~深入山・夏色

    中国山地幻視行~深入山・夏色の 梅雨が明けた。夏本番である。さて、どこに登るか。歳と共に発想は一元化し、この時期の定番の「あの山」に決まった。 沢や谷伝いの山道か、それとも開放的な尾根筋か。谷沿いだと木々が日差しを遮ってくれる。渓流があれば、多少とも涼しい。難点は風がないこと。湿度も高い。下手をすると角幡唯介の「空白の五マイル」の世界になる。そんなわけで、開けた尾根筋を選んだ。 7月1日、深入山南登山口の駐車場へ車を入れた。誰もいない。予報は猛暑を告げていたし、実際に麓に近い安芸太田町加計では(翌日の新聞が伝えたところでは)最高気温37.4度を記録していた。こんな日に熱中症のリスクをおかす酔狂もいないということだろう。 山道では、ウツボグサが出迎えてくれた。地味なたたずまいだが、今の季節、路傍を彩るのはこの花ぐらいだ。 じりじりと首筋を焼く日差し。なかなか過酷だ。夏草茂る尾根を渡る..

  • 中国山地幻視行~大峰山・梅雨の合間に

    中国山地幻視行~大峰山・梅雨の合間に 大峰山に6月16日、登った。2日前に当地方の梅雨入り宣言が出て直後の晴れ間を狙った。しかし、予報に反して朝から厚い雲が垂れ込めた。 麓の広場に車を入れる。先行車はなかった。気温は20度あたり、湿気がまとわりつく。登山口あたりに白い花。シャクナゲのようだ。自然に生えたものか園芸用か。このあたり別荘地である。判別はつかなかった。 登り始めて気づいた。ときおり弱い日差しがのぞくものの、風がやけに冷たい。その割に高湿のため、汗が噴き出る。メッシュのベストに半袖シャツで家を出たが、途中でもう一枚重ね着する羽目に。 山頂の岩峰に男性2人。周囲を見渡すが曇り空の下、もやって見通しはきかない。湿気のせいか、それとも梅雨期に山に登る酔狂のせいか。心を残して下山にかかると、途端に木漏れ日が山道で揺れた。皮肉なものだ。 登山口付近のシャクナゲ 杉林を抜ける風が冷たい..

  • 中国山地幻視行~三倉岳・すっかり夏山

    中国山地幻視行~三倉岳・すっかり夏山 影が濃くなった。緑は光を反射し、風は熱を帯びている。手元の温度計では、既に27度を超している。すっかり夏の山だ。 6月2日、三倉岳。ひたすら石段登りの山だ。トレーニング目的で何度も登っているので特別な感動はないが、それにしても暑い。少し登っただけで、シャツは既に汗にまみれている。 こうして訪れた岩峰からの眺めは、靄で霞んでいた。風があるのが、わずかな救いだった。 石段に続く石段… 7合目。路肩が崩れ要注意 9合目の稜線に出ると、風が心地よかった 数年前の豪雨禍で、縦走路は通行止め 夕日岳の岩稜から。もやって視界は悪かった 眼下はこんな景色 山口方面を望む。正面は羅漢山 小さな花。シモツケソウに見えるが、自信はない 5合目の大岩。下山途中に登る 辛うじて山頂付近が見えた 登山口から、三倉岳の全容。左から夕日岳、中岳、朝日岳の..

  • 中国山地幻視行~道後山・満開のイワカガミ

     中国山地幻視行~道後山・満開のイワカガミ   鳥取県境に近い道後山(1269㍍)を5月21日、訪れた。イワカガミの可憐な花を見るためだった。 予報では曇りのち晴れだったが、夕方まで空が晴れることはなかった。予想外だったのは冷たい強風が吹き付けることだった。シャツを一枚重ね着して出発した。 岩樋山(1271㍍)の山頂付近、イワカガミは無数といっていいほど咲いていた。しかし小さな、地味な花である。目を凝らさなければ見過ごしてしまいそうだった。それは、道後山の頂までの縦走路で続いていた。 風は相変わらず強かった。昼食は風裏を求めて山頂下に退避するほどだった。いつも北東方向に見える大山は低い雲に隠れていた。 右下眼下に出発点の月見が丘駐車場。正面左は猫山岩樋山山頂。右は道後山への縦走路の中間点となるピーク道後山への最後の登り道後山の頂。大山は見えなかった縦走路は快適な笹原が広がる<咲..

  • 中国山地幻視行~船通山・冷雨にたたられ

    中国山地幻視行~船通山・冷雨にたたられ 広島から北東へ直線距離で100㌔余り、島根・鳥取県境にある船通山(1143㍍)に向かった。5月2日。目当ては山頂に咲くカタクリの花である。5年ぶりのことである。 登山口に車を置くと張り紙が目に入った。「山崩れ危険」とある。不吉な予感。登り始めてすぐ大きな倒木が道をふさいでいた。それほど古くはないようだ。慎重にのっこす。「危険」を予測させるものはこれだけだった。道は二股に分かれ、健脚(直登)コースと一般コースを示す標識。トシを考え、迷わず「一般」へ。 このコースは、整備は行き届いているが、その分階段が多い。歩幅が制限されるのが嫌で、端っこの斜面を歩くが、それもままならないことが多い。 …などと不満を漏らしていると、ぽつりと雨。おいおい、と少し慌てる。自宅を出る前に入念に天気予報は確認した。島根、鳥取、広島の予報を突き合わせ、すべて晴れマークだったの..

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