『かわいそうだね?』綿矢りさ(文芸春秋) まず、タイトルの意味がなんとも分かりません。 というか、もちろん書かれていることは分かるのですが(それは分からないはずはないやろ)、「かわいそうだね」に
「純文学」読み始めはや数十年。病膏肓に入る状態。でも、「純文学」以外が嫌いなわけではないんですがね。
補助テキストは高校の日本文学史教科書です。ブック○フで105円で買いました。 明治以降の小説作品を、ランダムに、かつブルドーザー的に読むというのが、コンセプトです。 ただし条件。 1・コンセプトはあくまでコンセプトである。 2・所詮シロートですけん、許してつかーさい。 以上
『かわいそうだね?』綿矢りさ(文芸春秋) まず、タイトルの意味がなんとも分かりません。 というか、もちろん書かれていることは分かるのですが(それは分からないはずはないやろ)、「かわいそうだね」に
『少将滋幹の母』谷崎潤一郎(新潮文庫) 以前から本ブログで何度か同じことを書いたように思いますが、こうして一応日本近代文学限定の読書報告をしていて、好きな作家が3人いますと言い続けています。 今
『水車小屋のネネ』津村記久子(毎日新聞出版) さて、前回の続きです。 前回は、ここで突然本小説のテーマ、と書いたところで終わりました。 では、以下に続けたいと思います。 と、ここで突然、私が考
『水車小屋のネネ』津村記久子(毎日新聞出版) 長編小説であります。 私が読んだ新刊書では482頁もありました。 本作は毎日新聞連載で、2021年7月1日から2022年7月8日までとなっていて、ほ
『蛇にピアス』金原ひとみ(集英社文庫) 先日、住んでいる地域の公民館のようなところで映画会をしていたので見てきました。 上映していたのは、『狂った果実』という日本映画で1956年の作品です。 石
『沖で待つ』絲山秋子(文春文庫) わたくし、このお話は二度目の読書なんですね。 前回読んだ時の読書報告もありまして、ちょっと読み直してみると、基本的にはこの度の私の感想と同じようなことを書いてい
『共に明るい』井戸川射子(講談社) 前回の続きです。 前回で私は、本短編集は、いかにも芥川賞受賞後第一作に相応しい、新しい作家の文体上の実験がたくさんなされていると書き、そのうちの「外堀」の実験
『共に明るい』井戸川射子(講談社) 本書は短編集で、5つのお話が収録されています。 筆者は、2022年に芥川賞を受賞されており、それを挟んで、21年発表の作品が1つ、23年発表の作品が4つとなっ
『海峡の光』辻仁成(新潮文庫) 私はこの文庫本を、古本屋さんで見つけました。筆者については少しは知っていたのですが、裏表紙の文章に、芥川賞受賞作と書いてあって、私は芥川賞受賞作にも少々興味があっ
『さようなら、ギャングたち』高橋源一郎(講談社文芸文庫) 筆者高橋源一郎氏については、私は拙ブログで再三とっても好きな作家と述べています。本書も、単行本が出版されてほぼ直後に買いました。裏表紙に
『しょっぱいドライブ』大道珠貴(文春文庫) 実は我が家の本棚の隅っこに隠れていた(隠れていたってことは、ないでしょうが)文庫本でありました。 手に取ってホコリを拭いて見てみますと、薄っぺらいし、
『間違いだらけの文章教室』高橋源一郎(朝日文庫) さて、高橋源一郎氏であります。 現役の文学者の中で、私がとっても信頼している方のひとりであります。 そんな作家の文章教室を読むのですが、タイトル
『苦役列車』西村賢太(新潮文庫) えー、困った事やねー、と思いながら書き始めました。 それは、まー、何についても同じでしょうが、小説についても(作家についても、と言ってもいいかもしれません)、や
『日の砦』黒井千次(講談社文庫) まず、タイトルが、純文学っぽいではありませんか。 『日の砦』ですよ。何の意味なんでしょうね。雰囲気はいかにもありますが、具体的には何を表しているのかよくわかりま
『ワーカーズ・ダイジェスト』津村記久子(集英社文庫) 「ワーカーズ・ダイジェスト」って、どんな意味なんでしょう? そう思って、少しネットで調べると「ワーカーズ」はともかく、「ダイジェスト」について、
『琉球処分・上下』大城立裕(講談社文庫) タイトルに「琉球処分」とありますが、この語は本小説独自のものではなく、歴史用語であるようです。例えばネットの本屋さんで検索しますと、この単語をタイトルに
『雪の練習生』多和田葉子(新潮文庫) 多和田葉子といえば今は飛ぶ鳥を落とす勢い、というのは、わたくし、自分で書いておきながら何を書いているのかよくわかりません―。どうもごめんなさい。 ガセネタ
『箱男』安部公房(新潮社) 安部公房『箱男』、多分4回目の挑戦読書であります。 4回以上読んだ小説も他にないわけではありませんが、でもわたくしとしては、やはり例外的であるのは間違いないと思います。
『草すべり』南木佳士(文春文庫) 少し前にこの本の筆者の『阿弥陀堂だより』という長編小説を読みました。(本ブログでも報告しています。) 割と面白かったので、古本屋で本書を見つけた時に、ほぼ迷わず
『晩鐘・上下』佐藤愛子(文春文庫) 実は本書を読んだきっかけは極めて単純な話であります。 筆者の書いたエッセイを原作とした映画を先日見たからですね。 基本的にエンタメの映画ですから、むずかしいこ
『子規、最後の八年』関川夏央(講談社) ちょっと前に、地域の図書館の中を例によってぶらぶらしていた時に、全集の置いてある棚で集英社版の『漱石文学全集』全11巻というのを見つけました。 漱石の全集
『注文の多い料理店』宮沢賢治(角川文庫) 宮沢賢治がすごい、というのは、本当にもういーーっぱいの方が述べています。 すでに賢治は文学の領域を飛び越えて、ひとつの産業、登録商標、エンタメ業界、(「金の
『ハンチバック』市川沙央(文芸春秋社) 本作は2023年後期の芥川賞受賞作ですね。 受賞が決まったとき、大きな話題になりましたね。なぜ大きな話題になったかといいますと、筆者がかなり重度の身体障碍を持
『カンガルー・ノート』安部公房(新潮文庫) 本文庫の解説をドナルド・キーンが書いていて、おおよそ褒めてありますが、解説文のおしまいあたりにこう書かれています。 『カンガルー・ノート』は文字通り
『土に贖う』河崎秋子(集英社) 友人からの薦めのような形で、本書を読んでみました。 人から薦められるとか読書会の課題図書だとかがないと、なかなか新しい作家の本に手が伸びないのは、なんとなくいかんなあ
『ここはとても速い川』井戸川射子(講談社) 私は本ブログに、去年の2月に本書の読書報告をアップしています。この度また読んだのは、私が参加している読書会の課題図書になったからです。 以前読んだとき
『女のいない男たち』村上春樹(文芸春秋) 何と言いますか、とても便利な世の中になってきまして……と、いきなり何のことだとお思いになられた貴兄、まー、いつものことながら、どうもごめんなさい。 何の
『御社のチャラ男』絲山秋子(講談社) 本書を読み始めて4章めくらいまで行った時、ふとこんなことを思いました。 ……で、チャラ男は、誰なんだろう? そして続けて私が思いついたことは、実に陳腐なが
『橋ものがたり』藤沢周平(新潮文庫) かつてたまーにしか「時代小説」を読んでいなかった時は、わたくしもの知らずだったせいで(もちろん今でも十分もの知らずですが)、時代小説と歴史小説の違いがわかり
『ある男』平野啓一郎(文春文庫) 実は本作を読んだきっかけは、近所の文化ホールの様なところで本作を原作とする映画を上映していて、それを見たからなんですね。 最近私はけっこうたくさん映画を見ていて
『阿弥陀堂だより』南木佳士(文春文庫) 本文庫の解説文を書いているのが、小泉尭史という映画監督の方で、わたくし寡聞にして存じ上げなかったのですが、本書を原作とした映画を撮った監督であります。 映
『「私」をつくる』安藤宏(岩波新書) もう10年以上前になりますか、いろんな本をやたらに乱読していた(それもカルめの本を)のを反省し、心機一転、今後は近現代日本文学を中心に読書しようと、今となっ
『墨東綺譚』永井荷風(新潮文庫) この作品は2度目の読書報告をするのですが、前回同様、最初に一言申し添えます。 「墨」の字が、違うんですね。 本書の最後に「作後贅言」と銘打った筆者のあとがきのよ
『出世と恋愛』斎藤美奈子(講談社新書) 筆者は、筆者紹介によると文芸評論家となっています。 まー、そうでしょうねー。私としても、デビュー作の『妊娠小説』を面白く読んで以来、なかなかフェイヴァレットな
『百年泥』石井遊佳(新潮文庫) 近代日本文学に哄笑できる作品は少ない、というのは、別にわたくしのオリジナルな発言ではありません。多くの方がお考えのことにわたくしも賛同しただけのことであります。 こ
『海』小川洋子(新潮文庫) 知人に薦められて本書をネット経由で手に入れました。私は、同筆者の本は今までに何冊か読んでいます。 それはそんなにたくさんとは言わないまでも、短編集なら、芥川賞受賞作の
『名もなき「声」の物語』高橋源一郎(NHK出版) 本書の奥付の前のページにこう書かれています。 本書は、「NHK100分de名著」において、二〇一五年九月に放送された「太宰治『斜陽』」のテキ
『日本映画史110年』四方田犬彦(集英社新書) わたくしのもうひとつの拙ブログにも同様のことを書いたのですが、10カ月ほど前から、いろんな映画を見るようにしました。 60本くらい見たのですが、も
『おいしいごはんが食べられますように』高瀬隼子(講談社) 2022年の夏の芥川賞受賞作です。 女性作家です。 令和元年上半期から同5年上半期までの芥川賞受賞作家をちょっと調べてみたら、全部で12
『俺の自叙伝』大泉黒石(岩波文庫) さて、大泉黒石であります。 って、果たしてどれほどの方がこの名前をご存じでいらっしゃったでしょう。 自慢ではありませんが、もちろんわたくしも全く存じ上げません
『二百十日・野分』夏目漱石(岩波文庫) この文庫の解説の冒頭に、これらの作品がいつ書かれたかが述べられてあります。解説を書いているのは、小宮豊隆です。 それによりますと、明治39年の9月に4日間
『芽むしり仔撃ち』大江健三郎(新潮文庫) 実に、約半世紀ぶりの再読であります。 半世紀も前に読んだ本なんて、何も覚えていなくたってそれは私の記憶力に問題があるとは思いませんが、この度は、なんとな
『街とその不確かな壁』村上春樹(新潮社) さて、村上春樹の不思議な新作長編であります。 不思議なというのは、作品一部(本作品の第一部のところですね)が2回目の書き直し発表、つまり最初の作品から合
『晩年様式集』大江健三郎(講談社) 本書は奥付によると2013年10月に第一刷が発行されています。 一方初出は「群像」誌で、2012年1月号から2013年8月号までの連載です。つまり、2011・
『田紳有楽』藤枝静男(講談社) 少し前、たまに足を向ける神戸の街で、たまたま古本屋があったもので(神戸の街も結構古本屋さんのたくさんある街です)、ぶらりと入ろうとしたら、入口の横、道に面して設置
『いずれ我が身も』色川武大(中公文庫) ひさしぶりにこの筆者のエッセイを読み直しました。 以前は、丸谷才一なんかと並んで、私はかなり熱心にこの作家のエッセイを読んでいたように思いますが、丸谷氏も
『森』野上弥生子(新潮文庫) さて、『森』であります。 そのご高名は以前よりつくづくと伺っておりました。 何のご高名かとは、申すまでもないのかも知れませんが、筆者野上氏の、99才の作であること。数日
『鴎外随筆集』森鴎外(岩波文庫) 久しぶりに古本屋さんを覗いたら本書が目に入りまして、思わず、あれっ? 鴎外って随筆書いてるんや、という、まー、その後すぐ自分でも愚かしい思い違いと分かるような感
『渦――妹背山婦女庭訓 魂結び』大島真寿美(文春文庫) 確か数年前に、この筆者がヴィヴァルディについて書いていた小説を読みました。詳しい内容は忘れてしまったのですが、きちーんとしっかり描いていたような
『あひる』今村夏子(角川文庫) わたくし、本書を古本屋さんで見つけました。 文庫本に帯がついていまして、そこに、「芥川賞候補作&河合隼雄物語賞」とありました。 芥川賞はともかく、河合隼雄さんって
『静かな生活』大江健三郎(講談社文芸文庫) 本書は、わたくし再読であります。 読書報告も2回目(以前に一度、本書の読書報告をしたという事)、であります。 さっきパラパラと自分が書いた昔の報告を
『銀河鉄道の父』門井慶喜(講談社) 宮沢賢治が主人公、いえ本当は賢治のお父さんが主人公です。 でも、賢治がいなければ成立しません。賢治が現在超有名人だからこそ、こんな風に小説になるんですね。
『雁』森鴎外(新潮文庫) 本小説は、わたくし多分4回目の読書ではないかと思います。 以前拙ブログにも一回取り上げています。その時私は、なぜ鴎外はこんな小説を書いたのかというテーマを持って、まー、一応
『冥途・旅順入城式』内田百閒(岩波文庫) この文庫本には、標題のとおり『冥途』と『旅順入城式』という2冊の短編集が一冊にまとめて収録されています。 ほとんどが数ページくらいのきわめて短い短編小説
『河馬に噛まれる』大江健三郎(文春文庫) 作品を読みながらこう考えた。(すみません。『草枕』のしょうもないマネですー。) 近代日本文学における「私小説」が、偏っていびつになった原因は田山花袋の
『模範卿』リービ英雄(集英社文庫) なかなかの問題作と、わたくし、思いました。 あれこれ考えたのですが、(まー、下手の考えではありますがー)本書に私がなじめないポイントをざっくり言うと以下のよう
『英子の森』松田青子(河出文庫) この作者は、わたくし、初めて読んだ作家ではありません。少し前に『スタッキング可能』という本を読みました。(これは個人的な私の問題なのかも知れませんが、若い作家の
『猫の客』平出隆(河出文庫) えー、本読みの先輩に薦められた本です。初めて読む作家です。詩人でもある作家だそうです。なるほど、研ぎ澄まされたような文章力が、あちこちの描写から感じられそうでありま
『ここはとても速い川』井戸川射子(講談社文庫) この筆者も、令和以降のバリバリの新人で、新しい人の作品を読もうとする時は、少しドキドキしますね。 それはもちろん新しい世界や物事を教えてもらえるわ
『わたしがいなかった街で』柴崎友香(新潮文庫) この作家も、わたくし初めて読むのですが、新潮文庫の裏表紙にある「宣伝文」の最後に、「生の確かさと不思議さを描き、世界の希望に到達する傑作」とあって
『中国行きのスロウ・ボート』村上春樹(中央公論社) 前回の続きです。 前回私は本短編集の一編「中国行きの…」を特に興味深く読んで、5つの疑問点に気がついたと書きました。(すみませんが、詳しくは前
『中国行きのスロウ・ボート』村上春樹(中央公論社) いつだったか、作家の小川洋子さんが、本書をかなり絶賛していた文章を読んだ記憶があります。本書の初版は1983年で(文庫本ではありません)、帯に
『私の文学史』町田康(NHK出版新書) 本書は、少し変わったところから出ている新書であることからもわかるように、NHK文化センターで十二回行われた連続講座の講義を編集したものであります。 サブタ
『人間晩年図巻2008-11年』関川夏央(岩波書店) 珍しく日本古典文学の話から始まります。 といっても、本当は羊頭狗肉で、古典文学の事なんて私は何も知ってはいません。ただ、近現代文学を読んでいるとど
『死者の奢り・飼育』大江健三郎(新潮文庫) 多分高校三年生くらいの時に私は一度本書を読みました。 あの頃、大江健三郎というのは、多分文壇の「アイドル」みたいな存在じゃなかったかと思うのですが、さ
『美しい星』三島由紀夫(新潮文庫) 先日、アマゾンプライムで『シン・ウルトラマン』を見ていたら、宇宙人同士が居酒屋で酒を飲みながら今後地球人をどのようにするかと話し合っている場面がありました。
『「一九〇五年」の彼ら』関川夏央(NHK出版新書) アマゾンあたりでこの筆者の作品をなんとなく探していると、この筆者にはけっこうたくさんファンがいることに気がつきます。 いろんなことに疎い私は、な
『末裔』絲山秋子(新潮文庫) 確かかなり昔に、私はこの作家の本を一冊だけ読みました。 と、思って探っていると、なんだ、我が拙ブログにも報告があるではありませんか。 実はその時の読後感をほぼ覚えて
『彼岸過迄』夏目漱石(岩波書店) わたくし、本小説を2017年発行の新しい岩波の漱石全集で読みました。第七巻一冊がまるまる本小説であります。図書館で借りました。 以前、同漱石全集で『三四郎』を
『ミチクサ先生・上下』伊集院静(講談社) 図書館で借りたのですが、図書館ではずいぶんの数の予約が入っていました。かなり待ちました。 そのとき知ったのですが、予約の数なんですが、えらいもので、上巻
『台風の眼』日野啓三(新潮文庫) ある時期、ちょっとまとめてクラシック音楽の評論というかエッセイというか、そんな本を続けて読みました。で、気づいたことがあったんですね。 そんな話をかつて私は別の
『砂のように眠る』関川夏央(新潮文庫) この文庫本は、かなり昔から私の本立ての中にあったのですが、この度ふらっと手に取ってふらっと読み始めて、今まで本書を最後まで読み切っていなかったことに気がつ
『俳句と人間』長谷川櫂(岩波新書) 本書の中に、東京電力福島原発事故についての短歌と俳句があります。一つずつ引用してみます。 人々の嘆きみちみつるみちのくを心してゆけ桜前線 何もかも奪はれてゐ
『スクラップ・アンド・ビルド』羽田圭介(文春文庫) 時代的なものもあるからかなと思いますが、なんだか最近の芥川賞系の作品って非正規雇用の若者の話か、介護か認知症がらみの老人の話か、そのどちらかの
『通天閣』西加奈子(ちくま文庫) 初めて読む作家です。 直木賞の受賞作家で、それなりの売れっ子作家の方じゃないかなというくらいの先入観を持っていました。 でも、本ブログからおわかりのように、わた
『マスク』菊池寛(文春文庫) 本書は、サブタイトルに「スペイン風邪をめぐる小説集」とあります。 スペイン風邪というのは、かつて私も知らなかったのですが、このコロナ禍でいろんなところで何度か聞いた
『蓼喰う虫』谷崎潤一郎(新潮文庫) 例えばこんな萩原朔太郎の詩。 蛙の死 蛙が殺された、 子供がまるくなつて手をあげた、 みんないつしよに、 かわゆらしい、 血だらけの手をあげた、 月が
『龍の棲む家』玄侑宗久(文春文庫) この筆者の小説も初めて読みました。 ちょっと今回のテーマと関係ないことを考えるのですが、新聞の広告スペースに「今月の○○文庫新刊」みたいなのが載っているときがあり
『あの子の考えることは変』本谷有希子(講談社) 養老孟司のベストセラー『バカの壁』に、「バカの壁」とは何かの説明として、東大医学部の学生に授業をしていたら、もっとわかりやすく説明しろと何度となく言わ
『この道』古井由吉(講談社) この連作短編は、2017年から翌年にかけて「群像」に隔月連載されていたものです。その時の筆者の年齢が80歳から81歳、そしてその翌年2月に筆者は亡くなります。 と
『爪と目』藤野可織(新潮文庫) 2013年の芥川賞受賞作です。 ……ふむ。 ……あ、……えー。 ……えー、まー、困っとるわけですね。 何に困っているのかというと、まー、この作品のどこがよくて芥川賞なの
『君は永遠にそいつらより若い』津村記久子(ちくま文庫) 2005年に太宰治賞を受賞した筆者のデビュー作だそうです。 ただ、その時のタイトルは『マンイーター』というそうで、ちょっと大概な感じのタイ
『殿さまの日』星新一(新潮文庫) 星新一と言えば、やはりわたくしも中学生の頃ですか、何冊か読みました。読みましたが、これも多くの読書少年が多分そうであったように、その後読まなくなってしまうんです
『大阪的』津村記久子・江弘毅(ミシマ社) なんかパンフレットみたいな本です。薄い。95ページです。私は上記に「ミシマ社」と書きましたが、最初は出版元がわからなかったりしました。 そんな本をな
『送り火』高橋弘希(文春文庫) しかし、なんとも後味の悪い小説を読んでしまったことであります。 以前にも拙ブログで紹介したように思いますが、三島由紀夫が『小説とは何か』という(タイトルの通り小
『神戸・続神戸』西東三鬼(新潮文庫) 例によって古本屋さんで見つけた文庫本であります。 「『おすすめ文庫王国2020』年間最優秀文庫編集者賞受賞」と、本の帯にあります。 何が何だかよくわからない
『方丈記私記』堀田善衛(新潮文庫) わたくし本書は二度目の読書です。一度目に読んだのは、大学の一年生の時でした。 なぜそんなことを覚えているかというと、私の入った大学の文学部一年生で、そんな授業
『猛スピードで母は』長嶋有(文春文庫) この文庫は160ページの本文でちょうど真ん中で切れる、つまりきれいに80ページずつの小説が二つ収録されています。 なるほどこのくらいの長さが、「芥川賞ねら
『言文一致体の誕生……失われた近代を求めて1』橋本治(朝日新聞出版) 例によって図書館で見つけた本ですが。 いえ、図書館にこの本があることは、実はずっと前から知っていたのですが、ちょっとパラパラ読
『爆心』青来有一(文春文庫) この筆者については、わたくしかなり前に一つだけ短編小説を読んだことがありました。 その時の漠然とした印象が、この文庫本を見つけた時にふっと思い出されまして、実は一瞬
『白土三平論』四方田犬彦(作品社) 実はわたくし、新書版の全21冊の第一部『カムイ伝』を多分持っています。 多分というのは、現物を長く見ていないからで、多分押し入れの奥にあるだろうと思っているか
『九年前の祈り』小野正嗣(講談社文庫) この筆者は、NHKを見ていると時々お顔を拝見する方ですね。 そんな番組内での発言を聞いていると、頭のよさそうな方だなーと感じますし、今回読んだ講談社文庫の
『地球星人』村田沙耶香(新潮文庫) さて「まくら」は、日本文壇の半期に一度のお祭り、芥川賞の事であります。 いえ、私は新聞やテレビのニュースなんかの報道では適当に興味を持ちつつも、受賞作について
『懐中時計』小沼丹(講談社文芸文庫) 講談社文芸文庫には、なかなかなんと言いますか興味深いというかビミョウというか、そんな感じのする小説作品がいっぱいありますね。 そもそも純文学系の文庫と言え
『村上春樹はノーベル賞をとれるのか?』川村湊(光文社新書) 以前、よく似た感じのタイトルの本を読みました。あの時の本は、芥川賞だったと思います。(芥川賞の時は、なぜ取れなかったか、という本だった
『沙羅乙女』獅子文六(ちくま文庫) 獅子文六作品の読書報告は3作目であります。 まず『てんやわんや』を読んで、何だかもうひとつ面白くなかったような報告をしました。でも、あまり記憶に残っていません
『村上春樹の世界』加藤典洋(講談社文芸文庫) 『村上春樹は、むずかしい』加藤典洋(岩波新書) この度上記の2冊を立て続けに読みまして、取りあえず筆者が村上春樹の作品をどのように理解していったか
『子猫が読む乱暴者日記』中原昌也(河出書房新社) いえ、この本も図書館でふっと見つけたのですがね。 いえ、この本というのは、冒頭の今回報告する本ではありません。この本です。 『知識ゼロからの
『街と村・生物祭・イカルス失墜』伊藤整(講談社文芸文庫) さて、伊藤整であります。 「さて」っちゅうのは何のための書き出しの言葉かというと、……えー、なんでしょうねぇ。 ……やはり、ビビっている、ん
『峠・上下』司馬遼太郎(新潮文庫) 「司馬先生」の作品であります。 「先生」とつい書いてしまいましたのは、多くの司馬ファンが言うように、司馬作品中のとっても面白い「余談」のおかげであります。 特
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『かわいそうだね?』綿矢りさ(文芸春秋) まず、タイトルの意味がなんとも分かりません。 というか、もちろん書かれていることは分かるのですが(それは分からないはずはないやろ)、「かわいそうだね」に
『少将滋幹の母』谷崎潤一郎(新潮文庫) 以前から本ブログで何度か同じことを書いたように思いますが、こうして一応日本近代文学限定の読書報告をしていて、好きな作家が3人いますと言い続けています。 今
『水車小屋のネネ』津村記久子(毎日新聞出版) さて、前回の続きです。 前回は、ここで突然本小説のテーマ、と書いたところで終わりました。 では、以下に続けたいと思います。 と、ここで突然、私が考
『水車小屋のネネ』津村記久子(毎日新聞出版) 長編小説であります。 私が読んだ新刊書では482頁もありました。 本作は毎日新聞連載で、2021年7月1日から2022年7月8日までとなっていて、ほ
『蛇にピアス』金原ひとみ(集英社文庫) 先日、住んでいる地域の公民館のようなところで映画会をしていたので見てきました。 上映していたのは、『狂った果実』という日本映画で1956年の作品です。 石
『沖で待つ』絲山秋子(文春文庫) わたくし、このお話は二度目の読書なんですね。 前回読んだ時の読書報告もありまして、ちょっと読み直してみると、基本的にはこの度の私の感想と同じようなことを書いてい
『共に明るい』井戸川射子(講談社) 前回の続きです。 前回で私は、本短編集は、いかにも芥川賞受賞後第一作に相応しい、新しい作家の文体上の実験がたくさんなされていると書き、そのうちの「外堀」の実験
『共に明るい』井戸川射子(講談社) 本書は短編集で、5つのお話が収録されています。 筆者は、2022年に芥川賞を受賞されており、それを挟んで、21年発表の作品が1つ、23年発表の作品が4つとなっ
『海峡の光』辻仁成(新潮文庫) 私はこの文庫本を、古本屋さんで見つけました。筆者については少しは知っていたのですが、裏表紙の文章に、芥川賞受賞作と書いてあって、私は芥川賞受賞作にも少々興味があっ
『さようなら、ギャングたち』高橋源一郎(講談社文芸文庫) 筆者高橋源一郎氏については、私は拙ブログで再三とっても好きな作家と述べています。本書も、単行本が出版されてほぼ直後に買いました。裏表紙に
『しょっぱいドライブ』大道珠貴(文春文庫) 実は我が家の本棚の隅っこに隠れていた(隠れていたってことは、ないでしょうが)文庫本でありました。 手に取ってホコリを拭いて見てみますと、薄っぺらいし、
『間違いだらけの文章教室』高橋源一郎(朝日文庫) さて、高橋源一郎氏であります。 現役の文学者の中で、私がとっても信頼している方のひとりであります。 そんな作家の文章教室を読むのですが、タイトル
『苦役列車』西村賢太(新潮文庫) えー、困った事やねー、と思いながら書き始めました。 それは、まー、何についても同じでしょうが、小説についても(作家についても、と言ってもいいかもしれません)、や
『日の砦』黒井千次(講談社文庫) まず、タイトルが、純文学っぽいではありませんか。 『日の砦』ですよ。何の意味なんでしょうね。雰囲気はいかにもありますが、具体的には何を表しているのかよくわかりま
『ワーカーズ・ダイジェスト』津村記久子(集英社文庫) 「ワーカーズ・ダイジェスト」って、どんな意味なんでしょう? そう思って、少しネットで調べると「ワーカーズ」はともかく、「ダイジェスト」について、
『琉球処分・上下』大城立裕(講談社文庫) タイトルに「琉球処分」とありますが、この語は本小説独自のものではなく、歴史用語であるようです。例えばネットの本屋さんで検索しますと、この単語をタイトルに
『雪の練習生』多和田葉子(新潮文庫) 多和田葉子といえば今は飛ぶ鳥を落とす勢い、というのは、わたくし、自分で書いておきながら何を書いているのかよくわかりません―。どうもごめんなさい。 ガセネタ
『箱男』安部公房(新潮社) 安部公房『箱男』、多分4回目の挑戦読書であります。 4回以上読んだ小説も他にないわけではありませんが、でもわたくしとしては、やはり例外的であるのは間違いないと思います。
『草すべり』南木佳士(文春文庫) 少し前にこの本の筆者の『阿弥陀堂だより』という長編小説を読みました。(本ブログでも報告しています。) 割と面白かったので、古本屋で本書を見つけた時に、ほぼ迷わず
『晩鐘・上下』佐藤愛子(文春文庫) 実は本書を読んだきっかけは極めて単純な話であります。 筆者の書いたエッセイを原作とした映画を先日見たからですね。 基本的にエンタメの映画ですから、むずかしいこ
『女のいない男たち』村上春樹(文芸春秋) 何と言いますか、とても便利な世の中になってきまして……と、いきなり何のことだとお思いになられた貴兄、まー、いつものことながら、どうもごめんなさい。 何の
『御社のチャラ男』絲山秋子(講談社) 本書を読み始めて4章めくらいまで行った時、ふとこんなことを思いました。 ……で、チャラ男は、誰なんだろう? そして続けて私が思いついたことは、実に陳腐なが
『橋ものがたり』藤沢周平(新潮文庫) かつてたまーにしか「時代小説」を読んでいなかった時は、わたくしもの知らずだったせいで(もちろん今でも十分もの知らずですが)、時代小説と歴史小説の違いがわかり
『ある男』平野啓一郎(文春文庫) 実は本作を読んだきっかけは、近所の文化ホールの様なところで本作を原作とする映画を上映していて、それを見たからなんですね。 最近私はけっこうたくさん映画を見ていて
『阿弥陀堂だより』南木佳士(文春文庫) 本文庫の解説文を書いているのが、小泉尭史という映画監督の方で、わたくし寡聞にして存じ上げなかったのですが、本書を原作とした映画を撮った監督であります。 映
『「私」をつくる』安藤宏(岩波新書) もう10年以上前になりますか、いろんな本をやたらに乱読していた(それもカルめの本を)のを反省し、心機一転、今後は近現代日本文学を中心に読書しようと、今となっ
『墨東綺譚』永井荷風(新潮文庫) この作品は2度目の読書報告をするのですが、前回同様、最初に一言申し添えます。 「墨」の字が、違うんですね。 本書の最後に「作後贅言」と銘打った筆者のあとがきのよ
『出世と恋愛』斎藤美奈子(講談社新書) 筆者は、筆者紹介によると文芸評論家となっています。 まー、そうでしょうねー。私としても、デビュー作の『妊娠小説』を面白く読んで以来、なかなかフェイヴァレットな
『百年泥』石井遊佳(新潮文庫) 近代日本文学に哄笑できる作品は少ない、というのは、別にわたくしのオリジナルな発言ではありません。多くの方がお考えのことにわたくしも賛同しただけのことであります。 こ
『海』小川洋子(新潮文庫) 知人に薦められて本書をネット経由で手に入れました。私は、同筆者の本は今までに何冊か読んでいます。 それはそんなにたくさんとは言わないまでも、短編集なら、芥川賞受賞作の
『名もなき「声」の物語』高橋源一郎(NHK出版) 本書の奥付の前のページにこう書かれています。 本書は、「NHK100分de名著」において、二〇一五年九月に放送された「太宰治『斜陽』」のテキ
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