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中原中也インナープラネット http://chuya-ism.cocolog-nifty.com/

中原中也ファンのブログです。

およそ80年前の東京の街を孤独な魂は歩いた。その日の魂に見合う詩(うた)を探して…。その歌は2013年の今、数々の文庫として書店の棚にある。ポケットに歌を! さあ、中原中也の魂と会いに出かけよう!

チューヤ
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2009/05/04

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  • 中原中也・朝の詩の名作28/朝(雀の声が鳴きました)

    朝  雀の声が鳴きました雨のあがった朝でしたお葱(ねぎ)が欲しいと思いました ポンプの音がしていました頭はからっぽでありました何を悲しむのやら分りませんが、心が泣いておりました 遠い遠い物音を多分は汽車の汽笛(きてき)の音に頼みをかけるよな心持 心が泣いておりました...

  • 中原中也・朝の詩の名作27/夜明け

    夜明け  夜明けが来た。雀の声は生唾液(なまつばき)に似ていた。水仙(すいせん)は雨に濡(ぬ)れていようか? 水滴を付けて耀(かがや)いていようか?出て、それを見ようか? 人はまだ、誰も起きない。鶏(にわとり)が、遠くの方で鳴いている。――あれは悲しいので鳴くのだろうか?声を張上げ...

  • 中原中也・朝の詩の名作26/朝(雀が鳴いている)

    朝雀が鳴いている朝日が照っている私は椿(つばき)の葉を想う雀が鳴いている起きよというだがそんなに直(す)ぐは起きられようか私は潅木林(かんぼくばやし)の中を走り廻(まわ)る夢をみていたんだ恋人よ、親達に距(へだ)てられた私の恋人、君はどう思うか……僕は今でも君を懐しい、懐しいものに思う雀が...

  • 中原中也・朝の詩の名作25/朝

    朝 かがやかしい朝よ、紫の、物々の影よ、つめたい、朝の空気よ、灰色の、甍(いらか)よ、水色の、空よ、風よ!なにか思い出せない……大切な、こころのものよ、底の方でか、遥(はる)か上方でか、今も鳴る、失(な)くした笛よ、その笛、短くはなる、短く!風よ!水色の、空よ、灰色の、甍よ、つめたい、朝...

  • 中原中也・朝の詩の名作24/怠 惰

    怠 惰 夏の朝よ、蝉(せみ)よ、砂に照りつける陽よ……燃えている空よ!今日は誰も泳いでいない、赤痢患者でもあったんだろう?海は空しく光っている。――風よ……叔父さんは僕にいうのだ「早く持ったほうがいいぜ、独り者が碌(ろく)なことを考えはせぬ。」それどころか、……夏の朝よ、蝉よ、むこう...

  • 中原中也・朝の詩の名作23/(風が吹く、冷たい風は)

    (風が吹く、冷たい風は) ▲風が吹く、冷たい風は窓の硝子(ガラス)に蒸気を凍りつかせそれを透かせてぼんやりと遠くの山が見えまする汽車の朝僕の希望も悔恨ももう此処(ここ)までは従(つ)いて来ぬ僕は手ぶらで走りゆく胸平板(むねへいばん)のうれしさよ昨日は何をしたろうか日々何をしていた...

  • 中原中也・朝の詩の名作22/小 唄

    小 唄僕は知ってる煙(けむ)が立つ 三原山には煙が立つ行ってみたではないけれど 雪降り積った朝(あした)には寝床の中で呆然(ぼうぜん)と 煙草くゆらせ僕思う三原山には煙が立つ 三原山には煙が立つ (一九三三.二.一七)(「新編中原中也全集」第2巻・...

  • 中原中也・朝の詩の名作21/秋になる朝

    秋になる朝たったこの間まで、四時には明るくなったのが五時になってもまだ暗い、秋来る頃のあの頃のひきあけ方のかなしさよ。ほのしらむ、稲穂にとんぼとびかよい何事もなかったかのよう百姓は朝露に湿った草鞋(わらじ)踏みしめて。僕達はまだ睡(ねむ)い、睡気で頭がフラフラだ、それなのに涼風は、おまえの瞳をま...

  • 中原中也・朝の詩の名作20/幻 想

    幻 想1何時(いつ)かまた郵便屋は来るでしょう。街の蔭った、秋の日でしょう、あなたはその手紙を読むでしょう肩掛をかけて、読むでしょう窓の外を通る未亡人達は、あなたに不思議に見えるでしょう。その女達に比べれば、あなた自身はよっぽど幸福に思えるでしょう。そして喜んで、あなたはあなたの悩みを悩...

  • 中原中也・朝の詩の名作19/死別の翌日

    死別の翌日生きのこるものはずうずうしく、死にゆくものはその清純さを漂(ただよ)わせ物云いたげな瞳を床にさまよわすだけで、親を離れ、兄弟を離れ、最初から独りであったもののように死んでゆく。さて、今日は良いお天気です。街の片側は翳(かげ)り、片側は日射しをうけて、あったかいけざやかにもわびしい秋の午...

  • 中原中也・朝の詩の名作18/或る心の一季節――散文詩

    或る心の一季節 ――散文詩最早(もはや)、あらゆるものが目を覚ました、黎明(れいめい)は来た。私の心の中に住む幾多のフェアリー達は、朝露の傍(そば)では草の葉っぱのすがすがしい線を描いた。私は過去の夢を訝(いぶか)しげな眼で見返る………何故(ナニユエ)に夢であったかはまだ知らない。其処(そこ)に...

  • 中原中也・朝の詩の名作17/夏(僕は卓子の上に)

    夏(僕は卓子の上に)僕は卓子(テーブル)の上に、 ペンとインキと原稿紙のほかになんにも載せないで、 毎日々々、いつまでもジッとしていた。いや、そのほかにマッチと煙草と、 吸取紙くらいは載っかっていた。 いや、時とするとビールを持って来て、 飲んでいることもあった。戸外(そと)では蝉がミンミン鳴...

  • 中原中也・朝の詩の名作16/雨の朝

    雨の朝⦅麦湯(むぎゆ)は麦を、よく焦(こ)がした方がいいよ。⦆⦅毎日々々、よく降りますですねえ。⦆⦅インキはインキを、使ったらあと、栓(せん)をしとかなきゃいけない。⦆⦅ハイ、皆さん大きい声で、一々(いんいち)が一……⦆ 上草履(うわぞうり)は冷え、 バケツは雀...

  • 中原中也・朝の詩の名作15/かなしみ

    かなしみ白き敷布のかなしさよ夏の朝明け、なほ仄暗(ほのぐら)い一室に、時計の音〈おと〉のしじにする。 目覚めたは僕の心の悲しみか、世に慾呆(よくぼ)けといふけれど、夢もなく手仕事もなく、何事もなくたゞ沈湎(ちんめん)の一色に打続く僕の心は、悲しみ呆けといふべきもの。 人笑ひ、人は囁き、人色々に言ふ...

  • 中原中也・朝の詩の名作14/秋を呼ぶ雨

    秋を呼ぶ雨 1畳の上に、灰は撒(ま)き散らされてあったのです。僕はその中に、蹲(うずく)まったり、坐(すわ)ったり、寝ころんだりしていたのです。秋を告げる雨は、夜明け前に降り出して、窓が白む頃、鶏の声はそのどしゃぶりの中に起ったのです。僕は遠い海の上で、警笛(けいてき)を鳴らしている船を思...

  • 中原中也・朝の詩の名作13/閑 寂

    閑 寂なんにも訪(おとな)うことのない、私の心は閑寂(かんじゃく)だ。 それは日曜日の渡り廊下、 ――みんなは野原へ行っちゃった。板は冷たい光沢(つや)をもち、小鳥は庭に啼いている。 締めの足りない水道の、 蛇口の滴(しずく)は、つと光り!土は薔薇色(ばらいろ)、空には雲雀(ひばり...

  • 中原中也・朝の詩の名作13/閑 寂

    閑 寂なんにも訪(おとな)うことのない、私の心は閑寂(かんじゃく)だ。 それは日曜日の渡り廊下、 ――みんなは野原へ行っちゃった。板は冷たい光沢(つや)をもち、小鳥は庭に啼いている。 締めの足りない水道の、 蛇口の滴(しずく)は、つと光り!土は薔薇色(ばらいろ)、空には雲雀(ひばり...

  • 中原中也・朝の詩の名作12/冬の明け方

    冬の明け方残(のこ)んの雪が瓦(かわら)に少なく固く枯木の小枝が鹿のように睡(ねむ)い、冬の朝の六時私の頭も睡い。烏(からす)が啼(な)いて通る――庭の地面も鹿のように睡い。――林が逃げた農家が逃げた、空は悲しい衰弱。 私の心は悲しい……やがて薄日(うすび)が射し青空が開(あ)く。上の...

  • 中原中也・朝の詩の名作11/春

    春春は土と草とに新しい汗をかかせる。その汗を乾かそうと、雲雀(ひばり)は空に隲(あが)る。瓦屋根(かわらやね)今朝不平がない、長い校舎から合唱(がっしょう)は空にあがる。ああ、しずかだしずかだ。めぐり来た、これが今年の私の春だ。むかし私の胸摶(う)った希望は今日を、厳(いか)めしい紺青(こあお)...

  • 中原中也・朝の詩の名作10/青い瞳

    青い瞳 1 夏の朝 かなしい心に夜(よ)が明けた、 うれしい心に夜が明けた、いいや、これはどうしたというのだ? さてもかなしい夜の明けだ!青い瞳は動かなかった、 世界はまだみな眠っていた、そうして『その時』は過ぎつつあった、 ああ、遐(とお)い遐いい話。青い瞳は動かなかった、...

  • 中原中也・朝の詩の名作9/修羅街輓歌 関口隆克に

    修羅街輓歌 関口隆克に 序 歌忌(いま)わしい憶(おも)い出よ、去れ! そしてむかしの憐(あわれ)みの感情とゆたかな心よ、返って来い! 今日は日曜日 椽側(えんがわ)には陽が当る。 ――もういっぺん母親に連れられて 祭の日には風船玉が買ってもらいたい、 空は青く、す...

  • 中原中也・朝の詩の名作8/無 題

    無 題 Ⅰこい人よ、おまえがやさしくしてくれるのに、私は強情だ。ゆうべもおまえと別れてのち、酒をのみ、弱い人に毒づいた。今朝目が覚めて、おまえのやさしさを思い出しながら私は私のけがらわしさを歎(なげ)いている。そして正体もなく、今茲(ここ)に告白をする、恥もなく、品位もなく、かといって正直さ...

  • 中原中也・朝の詩の名作7/宿 酔

    宿 酔朝、鈍(にぶ)い日が照ってて 風がある。千の天使が バスケットボールする。私は目をつむる、 かなしい酔いだ。もう不用になったストーヴが 白っぽく銹(さ)びている。朝、鈍い日が照ってて 風がある。千の天使が バスケットボールする。(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かな...

  • 中原中也・朝の詩の名作7/宿 酔

    宿 酔朝、鈍(にぶ)い日が照ってて 風がある。千の天使が バスケットボールする。私は目をつむる、 かなしい酔いだ。もう不用になったストーヴが 白っぽく銹(さ)びている。朝、鈍い日が照ってて 風がある。千の天使が バスケットボールする。(「新編中原中也全集」第1巻・詩Ⅰより。新かな...

  • 中原中也・朝の詩の名作6/港市の秋

    港市の秋石崖(いしがけ)に、朝陽が射して秋空は美しいかぎり。むこうに見える港は、蝸牛(かたつむり)の角(つの)でもあるのか町では人々煙管(キセル)の掃除(そうじ)。甍(いらか)は伸びをし空は割れる。役人の休み日――どてら姿だ。『今度生(うま)れたら……』海員(かいいん)が唄(うた)う。『ぎーこ...

  • 中原中也・朝の詩の名作5/悲しき朝

    悲しき朝河瀬(かわせ)の音が山に来る、春の光は、石のようだ。筧(かけい)の水は、物語る白髪(しらが)の嫗(おうな)にさも肖(に)てる。雲母(うんも)の口して歌ったよ、背ろに倒れ、歌ったよ、心は涸(か)れて皺枯(しわが)れて、巌(いわお)の上の、綱渡り。知れざる炎、空にゆき!響(ひびき)の雨は...

  • 中原中也・朝の詩の名作4/帰 郷

    帰 郷柱も庭も乾いている今日は好(よ)い天気だ 椽(えん)の下では蜘蛛の巣が 心細そうに揺れている山では枯木も息を吐(つ)くああ今日は好い天気だ 路傍(みちばた)の草影が あどけない愁(かなし)みをするこれが私の故里(ふるさと)ださやかに風も吹いている 心置(こころおき)なく泣かれよ...

  • 中原中也・朝の詩の名作3/秋の一日

    秋の一日こんな朝、遅く目覚める人達は戸にあたる風と轍(わだち)との音によって、サイレンの棲む海に溺れる。 夏の夜の露店の会話と、建築家の良心はもうない。あらゆるものは古代歴史と花崗岩(かこうがん)のかなたの地平の目の色。今朝はすべてが領事館旗(りょうじかんき)のもとに従順で、私は錫(しゃく)と...

  • 中原中也・朝の詩の名作2/臨 終

    臨 終秋空は鈍色(にびいろ)にして黒馬(くろうま)の瞳のひかり 水涸(か)れて落つる百合花(ゆりばな) ああ こころうつろなるかな神もなくしるべもなくて窓近く婦(おみな)の逝(ゆ)きぬ 白き空盲(めし)いてありて 白き風冷たくありぬ窓際に髪を洗えばその腕の優しくありぬ 朝の日は澪(こ...

  • 中原中也・朝の詩の名作1/朝の歌

    朝の歌天井に 朱(あか)きいろいで戸の隙(すき)を 洩(も)れ入(い)る光、鄙(ひな)びたる 軍楽(ぐんがく)の憶(おも)い手にてなす なにごともなし。小鳥らの うたはきこえず空は今日 はなだ色らし、倦(う)んじてし 人のこころを諫(いさ)めする なにものもなし。樹脂の香(か)に 朝は悩ましう...

  • 中原中也・雨の詩の名作14/一夜分の歴史

    一夜分の歴史その夜は雨が、泣くように降っていました。瓦はバリバリ、煎餅かなんぞのように、割れ易いものの音を立てていました。梅の樹に溜った雨滴(しずく)は、風が襲(おそ)うと、他の樹々のよりも荒っぽい音で、庭土の上に落ちていました。コーヒーに少し砂糖を多い目に入れ、ゆっくりと掻き混ぜて、さてと私は飲...

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