日々思いついた「お話」を思いついたままに書く
或る時はファンタジー、或る時はSF、又或る時は探偵もの・・・などと色々なジャンルに挑戦して参りたいと思っています。中途参入者では御座いますが、どうか、末永くお付き合いくださいますように、隅から隅まで、ず、ず、ずぃ〜っと、御願い、奉りまする!
「……ジェシル、今の聞いたよな?」「ええ、聞いたわ……」ジャンセンはドア枠に駈け寄った。ジェシルも続く。二人でドア枠を見る。ジャンセンは拳を軽く握ると、ドアをノックするようにドア枠を叩いた。「う~ん……木製だったら、もっとこんこんと言った気持ちの良い音がするんだけどなぁ……」「そうね、中に何かがありそうな音だわ……」「そんな感じだね」ジャンセンは鞄に手を突っ込んだ。あちこちを探って、やっと目当てのものを見つけたようで、手の動きが止まる。鞄から手を引き抜いた。手にはカッターナイフがあった。「どうするの?」ジェシルの問いにジャンセンがにやりと笑む。「このカッターナイフで削ってみるのさ」ジャンセンは刃先をドア枠に押し当てた。「中に何かがあればすぐに分かるだろう?」「でも、これは歴史的には貴重な物なんじゃないの?...ジェシルと赤いゲート26
ジャンセンはドア枠をぽんぽんと軽く叩いた。そして、鞄から虫眼鏡を取り出すと、調べ始めた。「う~ん……これはアズマイック杉で出来ているようだなぁ……しかも一旦蒸し焼きにして固くして、それから防腐用に塗装したもののようだ……でも、ぼくの知っている中で、赤色ってのは無かったなぁ……大発見かも知れないぞぉ……」……何よ、一人でにやにやしちゃってさ!わたしの事を忘れているんだわ!ジャンって何かに夢中になるとこうだったわね!わたしを置き去りにしてさ!にやにやしながら独り言を言っているジャンセンを、座り込んだままで口を尖らせながら見ていたジェシルは、ジャンセンの鞄から発光粘土を取り出す際に床に撒き散らした金貨を一枚拾い上げ、ジャンセンの背中に投げつけた。金貨はジャンセンに当たり、床に落ちるとちゃりんと言う音を立てた。そ...ジェシルと赤いゲート25
「痛たたた……」そう言いながら立ち上がり、お尻を撫でさすっているのはジェシルだった。いきなり足下に開いた穴から落下した。日ごろ鍛えているジェシルは咄嗟に身構えて、お尻を打つぐらいで済んだのだ。ジェシルは顔を上げた。さっきまでいた地下二階に残してきた発光粘土の明かりがうっすらと射し込んでいる。……と言う事は、ここは地下三階で間違いはなさそうね。ジェシルはそう判断した。……それにしても乱暴な入口だわ!ご先祖って何を考えているのかしら!ジェシルは見えない先祖に向かって、べえと舌を出してみせた。「……そうねぇ、この高さなら、ジャンの肩か頭にでも乗って飛び上れば戻れそうだわ」落ちて来た穴を見上げ、ジェシルはつぶやく。「で、肝心のジャンはどこかしら?」ジェシルは地下二階から射す明かりを頼りに周囲を見回す。ジャンセンは...ジェシルと赤いゲート24
ジャンセンはジェシルの意地悪な言葉を聞いてはいなかった。じっと床から突き出た赤い石を見つめていた。そして、鞄から虫眼鏡を取り出すと、石のすぐ横で左膝を突き、石に顔をくっつけんばかりにからだをうんと丸めて虫眼鏡越しに観察し始めた。「……何、やってんの……?」ジェシルは不安そうな声を出す。「それも歴史的に価値があるってわけ?」「これが本当に押しボタンなのかどうかを調べているんだ」ジャンセンは観察を続けながら、背中越しに言う。「下手に押して、扉前のような穴がぱっくり開いたら、助からないからね」「ジャン、あなた、心配し過ぎだわ。罠なんかそんなに幾つも仕掛けないわよ」「そんな事、分からないじゃないか!」ジャンセンはジェシルに振り返る。子供の頃にムキになって言い返してきた時の顔だった。「落っこちたら、地下の深い所の水...ジェシルと赤いゲート23
ジェシルの言葉にジャンセンの顔が青褪めた。「おいおい、冗談が過ぎるよ……」「あら、そうかしら?」ジェシルは、ジャンセンの反応を楽しんでいるようだ。「じゃ、他にあるって事?燭台は無いわよ?だから、地下二階でおしまいか、あの落とし穴みたいなのか、のどちらかだわ」「どっちもイヤだなぁ……」「ここでぶつくさ言っていても始まらないわ。扉の前の穴を見に行きましょう」ジェシルは言うとすたすたと歩きはじめる。……見た目は慈愛に溢れた女神そのものなんだけどなぁ。でも、内心は意地悪の塊だよなぁ。ジャンセンはジェシルを見ながら心の中でつぶやく。ジェシルがジャンセンに振り返る。一瞬、心を読まれたかと思ったジャンセンだったが、にやにやしながら手招きするジェシルを見て意地悪の続きだと知った。ジャンセンは不満そうな表情でジェシルの後に...ジェシルと赤いゲート22
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