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お話 https://blog.goo.ne.jp/shin-nobukami

日々思いついた「お話」を思いついたままに書く

或る時はファンタジー、或る時はSF、又或る時は探偵もの・・・などと色々なジャンルに挑戦して参りたいと思っています。中途参入者では御座いますが、どうか、末永くお付き合いくださいますように、隅から隅まで、ず、ず、ずぃ〜っと、御願い、奉りまする!

伸神 紳
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2007/11/10

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  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 38

    「兄貴、なめられてるぜ!」一郎の後ろにいる中の一人が言う。「ここは一つ、やっちまわねぇと……」「まあ、待て、二郎」一郎がたしなめる。「オレたちの役目はここを守る事だ。ぶちのめすことじゃねぇ」「でもよう、二郎兄貴の言う事も分かるぜぇ」別の一人が言う。「守るって事はよう、ぶちのめすってのと同じじゃねぇかよう」……うわあ、竜二みたいな話方だわ。さとみはげんなりとする。普段は竜二を思い出しもしないのに、こんなイヤな切っ掛けで思い出してしまう自分に腹を立てるさとみだった。「まあまあ、三郎よ、落ち着きな」一郎は言うと、さとみと三人の祖母たちを見る。「向こうは、ちんちくりんの娘っ子とよぼよぼの婆あだ。慌てるこたぁねぇよ」「一郎兄貴、油断は禁物だぜ」最後の一人が言う。三人と比べると、ややまともそうだ。「ここを守るようにっ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪38

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 37

    踊り場から四階へと階段を上がる。一歩一歩が重たい。三人とも表情が険しくなって行く。「なんだか、イヤな感じですね……」さとみがつぶやく。「前に来た時と全然違っています……」「そうね」百合恵もうなずく。「何だか、救いようがないって感じだわ」「それは厳しいですねぇ……」片岡が言う。決して冗談で言ってるのではない事は、その表情から分かる。「……心して行きましょう」四階に着いた。不思議と霊体が見えない。「どこかに隠れているのかしら?」さとみは階段から左右に伸びている廊下をきょろきょろと見回す。「気配もないわねぇ……」百合恵も言いながら見回す。「いいえ、良くご覧なさい」片岡は言うと、陽の当たっていない廊下の奥を指差した。やや薄暗いそこに、青白い光の点が見えた。点は次第に大きくなって行き、炎のようにゆらゆらと揺れ始めた...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪37

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 36

    校長室を出ると、廊下に末松校長と坂本教頭とが立っていた。教頭が慌てて寄ってくる。「これはこれは、皆さんお揃いでどちらへ?」教頭は精いっぱいの愛想笑いで訊く。揉み手をせんばかりの雰囲気だ。「何でしたら、わたしが先導いたしますが?」「いえ、大丈夫ですわ」百合恵が答える。百合恵も負け無いほどの愛想笑いを浮かべている。「現役のさとみちゃんがいますから、ご心配ご無用です」「はあ、そうですか……」教頭は残念そうだ。名誉挽回の機会だからだ。「せめて、どちらへいらっしゃるかだけでも……」「ええ、そうですわね……校内を少し……」「教頭先生!」校長が割って入る。「君は百合恵さんが迷惑しているのが分からんのかね?我が校の優秀な生徒がついていると、ありがたいお言葉を頂いているじゃないか(「え?そんな事言いました?」と言った顔でさ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪36

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 35

    「やれやれ……」百合恵は閉まったドアを見てため息をつく。「……まあ、校長先生って言うのも、大変な仕事なのねぇ……」「ははは」片岡は笑う。「あの方、校長先生には、全く悪気はないようですね」「でも、教頭先生がかわいそうです……」さとみは言う。「ずっと怒られていました……」「ほほほ、さとみちゃんは優しいのねぇ」百合恵は笑う。「気にする事無いわ。今頃、校長先生は教頭先生に謝っているはずよ。そして、教頭先生も理解しているわ」「そうなんですか?」さとみは小首を傾げる。「わたしなら、あんなに言われたら、泣いちゃいます」「そこが、大人の世界なのよ」百合恵は言うと、意味有り気に微笑む。「まあ、今のさとみちゃんには関係ない事だわ。それよりも……」百合恵は片岡に顔を向ける。片岡は真顔になってうなずく。「わたしからの話は二点あり...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪35

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 34

    さとみは校長室の前に立つ。悪い事をしたわけではないが、校長室の前に立つのは良い気持ちはしなかった。深呼吸をしてドアをノックする。しばらくして、ドアが開けられた。それも、申し訳程度の幅だった。そこから顔を覗かせたのは、坂本教頭だった。「綾部君……」坂本教頭はさとみの後ろを覗き見てから、じろりとさとみを見る。「君一人かね?」「はい……」さとみは答える。「あのう……『百合恵会』のメンバーを集めた方が良いんですか?」「いやいや!」坂本教頭は首を左右に振る。「もし、一緒だったら戻ってもらうつもりだったのだよ」「そうだったんですか」さとみはうなずく。やっぱり考える事は同じなんだわ。「危険ですからね」「え?」坂本教頭はきょとんとした顔をする。「いや、それもそうだがね、何せ、ほら、学校の良からぬ出来事だからね。あまり関係...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪34

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 33

    昼休みになった。午前の授業中は、目を開けたまま眠ると言う特技を充分に発揮し、さとみはすっかり回復していた。「綾部さぁん!」お弁当を頬張っているさとみにきいきい声が掛けられた。教室の出入り口に谷山先生が立っていた。「すぐに校長室に来なさぁい。お客様ですぅ!」言うだけ言うと、谷山先生は戻って行った。「はあい!」さとみは居なくなった谷山先生に返事をすると、大慌てでお弁当の残りを頬張った。「さとみ、お客って……?」麗子が訊く。「百合恵さん?」「百合恵さんも居るけど、片岡さんって人ね」「片岡さん……?」「あ、麗子は会っていなかったわね」さとみはにやりと笑う。「……まだ『弱虫麗子』だったから」「ふん!」麗子は鼻を鳴らす。「じゃあ、わたしも行って、その片岡さんって人に会うわ!」「会長!」アイが言いながら教室に入って来た...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪33

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 32

    翌朝、さとみは通学路をてこてこと歩いている。「さとみぃ!」背後からの呼びかけにさとみが振り返ると、麗子が立っていた。麗子は、心霊話のあった夜は、自分の部屋で壁に背をぴったりつけて、やや大きめの音で好きなアイドルの曲を流して、一睡もしないと言うのが、お決まりだった。なので、そう言う話のあった翌朝は目の下に隈を作り、虚ろな眼差しをしているのが常だった。しかし、今朝は、妙にすっきりとした表情だった。「麗子……」さとみが驚いている。「どうしたの?昨日の今日だって言うのに……」昨日、学校の怪現象のヒントとなる封印の話を麗子に訊いたさとみだった。麗子はイヤな顔をし青褪めた顔もしていた。当然、徹夜したと思ったのに……「わたしね、もう怖がるのをやめたのよ」麗子が胸を張る。「もうね、開き直る事にしたの。だって、居るものは居...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪32

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 31

    「さとみちゃん!」呼びかけに、さとみの目が開いた。「……あ」さとみは幾度か目を瞬かせた。「……百合恵さん……」「良かったわぁ……」百合恵はほっと息をつく。「心配したのよ……」「ここは……?」さとみはきょろきょろとする。車の助手席に座っていた。隣の運転席の百合恵が優しく微笑んでいた。「おばあ様方もおっしゃっていたし、わたし自身も予感がしてたんで、さとみちゃんのお宅へ伺ったの。そうしたら、霊体の抜け出たさとみちゃんが座っていてね。きっと楓に連れ出されて、学校に向かったに違いないって事になって、おばあ様方は後を追ったの。わたしは、とにかくさとみちゃんの生身を学校近くまで連れて行かなきゃって思って、お父様に協力してもらって車に座らせて、ここまで来たってわけよ」百合恵は一気にしゃべった。うっすらと涙を浮かべている。...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪31

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 30

    「辰!お嬢ちゃんを拾って、さゆりの所に持って行くんだ!」楓が辰に向かって言う。辰はむっとした顔を楓に向ける。「おい、楓!お前が頭なのか?」辰は明らかに不機嫌な顔をしている。「力じゃオレ様の方が上だぜ」「わたしの方がさゆりのそばに居るのが長いんだよ。当然、わたしが上だろうよ!」楓も不機嫌な顔を隠さない。「お前はわたしを姐さんって呼ばなきゃいけないんだよ!」「オレ様だってな、泣く子も黙る『閻魔の辰』って呼ばれてたんだぜ!」辰は言うと薄ら笑いを浮かべる。「お前なんざ、生きている間はせいぜい場末の女郎風情だろうがよう!」「ははは、そんな粋なもんじゃなかったよ!」静が笑う。楓はイヤな顔をする。「楓はね、騙した男に刺し殺されたんだよ。涙と鼻水とで顔をぐしゃぐしゃにして、命乞いをしてさあ!」「何だってぇ?」辰が呆れた顔...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪30

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 29

    「お待ち!」楓と繁蔵は背後から声をかけられた。二人は動きを止める。聞き覚えのある声に、楓は舌打ちをしながら振り返る。静を先頭に珠子と富がいた。皆、険しい表情をしている。「くそう!思ったより早く来やがったな!」楓は繁蔵の肩でぐったりと動かないさとみを睨みつける。「お嬢ちゃんの帰りが遅かったのがいけないんだよ!」「そうじゃないよ」静が小馬鹿にしたように言う。「お前さんのやりそうなことは見当がついているのさ。きっと、さとみを口八丁手八丁で騙すに違いないってね!」「そう言う事」珠子が前に出て静と並ぶ。「さあ、さとみちゃんを返しなさい。そうすれば、見逃してあげても良いわよ」「ふん!」楓は鼻を鳴らす。「そうは行かないんだよ!このお嬢ちゃんはね、さゆりの敵なんだ。返せるわけないじゃないか!」「と言う事は、お前はさゆりに...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪29

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 28

    「ねぇ、どうしても行かなくちゃいけないの……?」さとみが先を行く楓に訊く。二人は宙に浮いている。「な~にを今さら言ってんだい」楓は振り返る。「もうすぐ学校じゃないか。引き返すよりも行っちまった方が近いだろう?」「そうだけど……」さとみは躊躇っている。「楓は霊体だから良いけど、わたしは生身を持っているのよ?あんまり離れてはいられないわ」「そんな事は分かっているさ」楓がうなずく。「だからさ、さゆりをちらっと見るだけだよ。見たらすぐに戻りゃいいのさ」「でも……」「さゆりを見ておけばさ、弱点が分かりやすいだろう?」「言ってくれるだけで分かるんだけど……」「だから何度も言ってんだろ?わたしは、学ってのが無いからさ。上手く言えないんだよ」楓は開き直ったように言う。「さゆりの姿を見ておいてくれればけば、あそこが弱点とか...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪28

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 27

    「失礼します!」百合恵は強い口調で言うと、靴を脱ぎ、廊下を駈け、リビングにある階段を駈け上がった。さとみの部屋のドアは開いていた。明かりも点いていた。ポコちゃんの姿のままのさとみが床の絨毯に正座していた。目は開いているが虚ろだった。「さとみちゃん!」百合恵が呼びかけるが、さとみは反応しない。「……さとみちゃん……」「きっと、いつものあれですわ」付いて来ていた母親がのんびりした口調で言う。「この子、目を開けたまま寝るのが特技ですから」「……そうでしょうか?」百合恵は不安そうだ。「正座したままで……?」「え?寝ているのかい?」母親の後に付いて来た父親が言う。「返事が無いからさ、電気をつけたら、さとみが正座していてさ、しかもぽうっとしているだろう?もう、驚いちゃったよ。でも、そうか、寝ているのか……」「いえ、寝...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪27

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 26

    ドアチャイムが鳴った。さとみの母親が怪訝そうな顔をして、壁掛け時計を見る。十時を回っていた。「誰でしょうね、こんな時間に?」「誰でも良いよ。きっと何かの勧誘さ。放っておきな。……さあ、それよりも続きだ」対戦ゲームで負け続けているさとみの父親は、今度こそはと言う意気込みで、ゲームのコントローラーを握る。「でも、勧誘なんか、こんな時間に来たことなんかないですよ?」不安そうな表情の母親を見て、父親はコントローラーをテーブルにそっと置く。「じゃあ、誰だろうねぇ?」モニター画面が壊れてしまっているため、相手の姿が確認できない。更に、音声も聞こえなくなっていた。ただのドアチャイムになっていた。「だから、壊れた時に取り換えればよかったんですよ」「そうは言うけどさ、チャイムだけ鳴れば問題ないって言っていたじゃないか」「そ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪26

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 25

    「それで?」さとみが楓を促す。「色々と聞かせてよ」「何が聞きたいね?」楓が逆に訊く。「それを言ってくれなくちゃ、話し様がないってもんさ」「生い立ちは聞いたからなぁ……」さとみは腕組みをして考え込む。その間、楓はつまらなさそうな顔で部屋の中を見回している。「あっ、そうだ!」「何か思いついたかい、お嬢ちゃん?」楓がさとみを見る。「何でもお聞きな」「じゃあ、ずばり聞くけど……」さとみはにやりと笑む。楓もつられる。「さゆりの弱点を教えて!」「弱点、かい……」楓は戸惑っている。「弱点ねぇ……」「……まさか、弱点が無い、とか?」「いや、そんな事はないけどさ……」「じゃあ、教えてよ」「でもさ、ばれたら、絶対わたしが言ったってなるに決まっている」楓はイヤな顔をする。「そうなったら、わたしは消されちゃうよ」「それは、お気の...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪25

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 24

    楓が消えた後、さとみは百合恵に付き添われて家に帰った。百合恵は片岡に連絡して、今後の対応を話し合うと言っていた。「さとみちゃんは、絶対一人で行動しない事よ」百合恵に念を押された。三人の祖母たちもうなずく。「今までの相手とは段違いに強くて凶悪よ。だから何の準備も無しに屋上へ行っちゃダメ。片岡さんやおばあちゃんたちと最善策を立てるから、辛抱するのよ。良いわね?分かったわね?絶対よ!」幾度も念を押された。百合恵や祖母たちの真剣な表情に、さとみは何度もうなずいて見せた。百合恵が帰り、祖母たちも姿を消した。さとみは部屋に戻る(その前に、晩ご飯はしっかりとお替りまでして食べた)。ベッドに寝転がって、天井を見る。部屋の電気は点けていない。カーテンもしていない。捕らわれているみんなの顔が浮かぶ。一刻も早く助け出したい。そ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪24

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 23

    不意に百合恵が垣外の灯りの届かない闇に振り返った。「百合恵さん……?」「しっ!」百合恵は自分の唇に右に人差し指を当てて声を出さないようにと指示した。「……よりによって、こんな時に……」百合恵は闇を見つめながら険しい表情になった。さとみもつられてそちらを見る。闇の中を動くものがあった。「……楓……」さとみは驚いた顔でつぶやく。楓は袖手のまま、にやにやと小馬鹿にした笑みを浮かべ、街灯の灯りの下に進んで来た。さとみは霊体を抜け出させ、百合恵の横に並んだ。「おやおやおやおや」楓はからかうような口調で言う。「何だい、お嬢ちゃん?お出迎えでもしてくれるのかい?」「そんなわけないじゃない!」さとみはぷっと頬を膨らませる。「話は聞いたわ!あなた、さゆりの腰巾着になったみたいじゃない!」「腰巾着、ねぇ……」楓は口に手をやっ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪23

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 22

    さとみは家に帰ると、「ご飯いらない」と言って、二階の自室へと向かった。「さとみ!」母親が驚いて、大きな声を出した。「何があっても晩ご飯を食べるあなたが、どうしちゃったの?病気?いえ、病気でもぱくぱく食べていたわよね?麗子ちゃんと食べちゃったの?いえ、そうだったとしても、用意した晩ご飯は、必ずぺろりと平らげていたわよねぇ……」心配しているのか小馬鹿にしているのか分からない母親の言葉に、頬をぷっと膨らませて、さとみは階段をどかどかと音を立てながら上った。部屋に入り、ベッドの寝転がる。「……封印、戻せそうにないなぁ……」さとみは天井を見上げながらつぶやく。「どうしたら良いのかなぁ……」頼りになる豆蔵たちも今はいない。「あの楓もさゆりに付いちゃっているしなぁ……」百合恵の話だと改心したはずだったが、さゆりの出現で...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪22

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 21

    「さとみさあ、隣のクラスの伊藤亜紀って娘、知ってる?」麗子がさとみに訊く。周りの事に疎いさとみは当然知らない。首を横に振る。「え?知らないの?亜紀って他の学校の男子からも人気なのよ?知らないのぉぉ?」麗子は完全に馬鹿にしている。「疎いにも程があるわよ」「そんな事言われたって、知らないものは知らないもん!」さとみはぷっと頬を膨らませ、ジュースをすする。「……で、その亜紀さんがどうしたって言うのよ?」「何を開き直っているのよ?本当、さとみって、うんと小さい時からそうよねぇ。自分の関心の無い事は、目の前にあっても見えていないもんねぇ……」「でもさ、関心のある事にはのめり込めるよ」さとみは自慢げに言う。「わたしって、広く浅くが出来ない女なの」「女って……」麗子はぷっと吹き出す。「どう見たって、ポコちゃんじゃないの...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪21

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 20

    さとみの前にはぶすっとした顔の麗子がいた。麗子は青のワンピースで大人びた印象だったが、さとみは相変わらずポコちゃんスタイルだった。ここは駅前にあるファミリーレストランだ。夕食時で、客でいっぱいだった。家族連れが多く、小さい子供たちの大きな声が響いている。店内には子供向けの音楽が流れていた。とても賑やかだった。さとみと麗子は向かい合って座る二人掛け用のテーブルに着いていた。「何よう、そんなぶすっとしちゃってさあ」さとみが麗子に文句を言う。「今日はわたしの奢りなんだから、もう少し嬉しそうにしてよね」「ふん!」麗子は鼻を鳴らし、オレンジジュースのグラスからストローで一口すする。「今日は大変だったんだからね」「だから、ごめんって言ったじゃない」さとみは言うと、ストロベリージュースのグラスからストローで一口すする。...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪20

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 19

    「刑場を廃するならば、静さんのおっしゃったように、鎮護の礼はしたでしょう……」片岡が言う。静は、また「静さん」と呼ばれて嬉しそうにしている。……わたしには、このおばあちゃんの血も流れているのねぇ。さとみは呆れた顔でため息をつく。「いわば、封印をしたわけです。しかし、それが破られたようですね……」「そうか……」さとみはつぶやく。「呼ばれたとか、目を覚まされたとか言ってったって……」さとみは静を見る。静はうなずく。「じゃあ、あの黒い影が、その封印を破ったと……?」百合恵が訊く。「そんなに強い力を持っていたのかしら……?」「でも、そんなに強いんだったら、校長室でやられたりしませんよ」さとみが言う。「逆にわたしたちがやられていたと思います」「そうですね」片岡もうなずく。「あの影も、封印が破られた事で集まって来た邪...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪19

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 18

    さとみはあるテレビ番組を思い出していた。家が一軒だけぽつんと建っていて、そこに住んでいる人を訪ねて行くと言った内容のものだった。二階建てで、普通の家だ。それほど大きくも広くもない。家の前には車が止められる敷地があった。「……あそこの片岡さんが住んでいるんですか?」「そうよ……」百合恵が笑む。「もっとすごい、屋敷みたいなところに住んでいると思った?」「そうじゃないですけど」さとみは慌てて頭を左右に振る。「もっと、霊気の漂う雰囲気かと思って……」「ほほほ……」百合恵が笑う。「さとみちゃんのお家だって、霊気漂ってはいないでしょ?」「そうですけど……」「いざって時に力を発揮するのよ、片岡さんもね」百合恵は車を敷地に停めた。家の中から片岡が出てきた。薄青のシャツに紺のスラックス姿だった。百合恵とさとみは車から降りた...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪18

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 17

    今、さとみは百合恵の車に乗っている。広い道路を走っている。今日の車は軽自動車と言う種類だそうだ。さとみは車に疎く、単純に「いつも乗せてもらっている車とは違うんですね」と言っただけだったのだが、百合恵は「見た目はそうだけどね、この車って……」と、熱いうんちくを語り出した。さとみは「はあ、そうなんですか」とか「へぇ、凄いですねぇ」とか棒読みの合いの手を入れたが、何が何やらだった。百合恵が車好きと言うのも、この時初めて知ったのだった。「……前の車、遅いわねぇ」百合恵は文句を言う。「ちんたら走るんなら、自転車にして欲しいわね。ねぇ、さとみちゃん?」「ははは……」さとみは乾いた笑いしか出なかった。前の遅い車をかなりのスピードで追い越し、そのまま走る続ける。以前に乗せてもらったスポーツカーでも感じていたが、百合恵はス...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪17

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 16

    静がさとみと百合恵の所に戻って来た。静の打ちひしがれた様子から、おおよその事が察せられた。さとみと百合恵は顔を見合わせる。それから、さとみは霊体を抜け出させた。「あのう……静おばあちゃん……」さとみがおずおずと声をかける。「何があったの……?」静は答えない。百合恵も困惑の表情だ。「……それで、あの、竜二は……?」静は顔を上げ、さとみを見る。さとみには、元々がお年寄りの静だったが、さらに年を取ったように見えた。勝ち気さも無くなっている。「ねぇ、何があったのよう……」「……さとみ」静が言う。声は嗄れていて弱々しい。「あんたは、屋上へ行っちゃダメだ……」「どう言う事?」さとみは訊く。「それで、竜二は?」「竜二かい……」静は下を向いた。「さゆりってのに捕まっちまったよ……」「え?」さとみは驚いて、目を丸くする。「...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪16

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 15

    雲は竜二に当たった。「これ!何をやっとる!」静が、竜二を叱る。「さっさとどかんかい!」しかし、雲は竜二を包み込み始めた。竜二はもがいて逃げようとするが、出来ない。「ははは!蜘蛛の巣にかかった虫けらみたいだねぇ!」竜二のもがくさまを見て、楓が笑う。「後先考えずに、馬鹿な事をするからさ!」「竜二!」静は竜二に駈け寄る。竜二を雲から引っ張り出そうと手を伸ばす。「ダメだよ、ばあちゃん!」竜二は叫ぶ。「手を出したら、ばあちゃんまで捕まっちまうぜ!」「でもよう!」「良いから、ばあちゃんはあいつらに気をつけるんだ!」竜二に言われ、静はさゆりたちを見る。楓はすでに姿を消していた。「何て狡い女なんだい!」静は舌打ちをする。「今度見つけたら、ただじゃおかないよ」「綾部さとみはどこだえ……?」さゆりが静に訊く。その声は、何事も...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪15

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 14

    「なんだい、ばあさん?」楓は相手が年寄りなので、静の突然の登場にも驚かない。むしろ、小馬鹿にした態度だ。「……ああ、そうか、このチンピラちゃんの身内かい?」楓は竜二をあごで示す。「だったら、さっさと連れて行っておくれな。毒がうつっちまうよ」「ほう……」静はつぶやき、じっと楓を見つめる。「……毒は、お前の方じゃないか」「なんだってぇ?」楓の眉間に縦皺が寄る。「おい、ばあさん、言って良い事と悪い事があるんだよ」「ばあさん呼ばわりすんじゃないよ」静が鼻で笑う。「わたしゃ、これでも文明開化から後の生まれさ。お前はちょんまげ最盛期の頃の生まれじゃないか。どっちが婆あだってんだい?」「な……」楓は二の句が継げない。代わりに怒りでからだを震わせる。「たしかにね、生まれはそうかも知れないけどさ、わたしは若いままで死んじま...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪14

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 13

    竜二はまだ出入りの扉の前の踊り場に立っていた。屋上には踏み出していない。威勢の良い事を言って来てはみたものの、やはり、楓に会う(この場合は「遭う」が正しいか)のは怖い。いや、姿を見かけるだけでも怖い。まして、さゆりと言う楓以上のヤツがいると百合恵が言っていた。「おや、どうしたんだい、竜二?」竜二は背後からする声に振り返る。静がいた。「わたしゃ、もう楓ってのと、もう話を付けたのかと思ってたんだけどねぇ……」静はじろじろと竜二を見る。「……その様子じゃ、まだのよう、いや、まだまだまだまだのようだねぇ」あからさまの嫌味を言われたが、竜二は言い返さない。それどころか、神妙な面持ちになっていた。「……何だい?怖いのかい?」竜二のあまりにも深刻な表情に、静は訊く。「しっかりおしよ、男だろうが!」「そう言ったってよう…...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪13

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 12

    「さとみちゃん、これは早急に手を打たないといけないわねぇ……」百合恵が言う。「楓のヤツ、結構良い性格になったと思ったんだけどなぁ……」「そうですね」さとみはため息をつく。「楓が昔の楓に戻っちゃったんだとしたら、厄介です……」「竜二」百合恵が竜二を見る。竜二は叱られた子供のようにびくんとする。「楓がいたって事は、さゆりってのもいたんじゃない?」「……いや、オレ、楓しか見ていない……」「ふ~ん……」さとみが冷たい眼差しを竜二に向ける。「竜二の事だから、楓を見て、びっくりして、そのまま逃げちゃったんでしょ?」「うわあ、さとみちゃんって、超能力の持ち主なのかい?」竜二は驚いている。「実は、そうなんだ。よく分かるねぇ」「誰だって分かるわよう!」さとみは言うとぷっと頬を膨らませた。「全く、肝心な時に使えないんだからぁ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪12

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 11

    おでこをぺちぺちしているさとみを百合恵は笑顔で見ている。さとみの手が止まった。おでこから手を下ろす。おでこは赤くなっていた。「百合恵さん」さとみは真顔だ。しかし、おでこが赤い。百合恵は笑いを堪えている。「片岡さんに相談してみます」「そうね、それが良いわね」百合恵はうなずく。「どうかしら?今から相談に行く?」「え?でも授業中ですよ……」さとみは驚く。「それに、カバンだって教室にあるし……」「それは麗子ちゃんに頼めばいいわ」「でも、学校、携帯電話禁止です……」「そう……今時固いわねぇ……」百合恵は腕組みをする。「……じゃあ、松原先生に連絡して、松原先生から麗子ちゃんに話してもらうわ。でも、面倒ねぇ……携帯くらいいいじゃないのよねぇ?校長先生に話してみようかしら」「ははは……」さとみは、また百合恵に圧倒された。...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪11

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 10

    さとみは百合恵と共に保健室に戻って来た。「おや、ちょっとは元気になったようね」保健室の姫野先生が笑む。「あ、みんなはそれぞれの教室に戻ったわ。一人を除いてね」姫野先生は言うと、ベッドを指差した。アイが寝ていた。すうすうと穏やかな寝息だ。「あの娘、あなたを待つって言って教室に戻ろうとしなかったのよねぇ。でも、なかなか戻ってこなかったから、力尽きて寝ちゃったみたい」「それもあるでしょうけど……」百合恵が寝ているアイを見て、姫野先生に言う。「屋上での攻撃が結構きつかったんじゃないでしょうか?」「目立った外傷は無かったんですけどねぇ……」姫野先生は百合恵に言う。「それじゃあ、精神的に深手を負ったんでしょうかねぇ……」「そうかも知れませんわ……」それは違うだろうと、さとみは思った。霊体が攻撃をしたのだから、アイのからだよ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪10

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 9

    「さとみちゃん、大丈夫?いつもならちゃんと息が出来るのに……」百合恵が心配そうに、座り込んださとみを見る。さとみは座り込んで下を向いている。「さとみちゃん……?」さとみはゆっくりと顔を上げた。溢れ出た涙でぐしゃやぐしゃな顔になっている。声を出すまいと唇を皺が出来るくらい強く閉じている。「……ゆ、り、えさん……」さとみは抑えた声で言う。百合恵はさとみの前にしゃがみ、優しく微笑む。「良いのよ。泣いて、良いのよ……いや、今は泣きなさい。泣いてすっきりしちゃいなさい」百合恵の言葉にさとみは泣き出した。「みんな、みんな、わたしのせいで!わたし、何にも出来なくって!わたしが調子に乗ってしまったから、だから、みんなを巻き込んじゃって!アイまで怪我させちゃって!わたしは何にもしない方が良いんです!わたしなんか、わたしなんかぁぁ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪9

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