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お話 https://blog.goo.ne.jp/shin-nobukami

日々思いついた「お話」を思いついたままに書く

或る時はファンタジー、或る時はSF、又或る時は探偵もの・・・などと色々なジャンルに挑戦して参りたいと思っています。中途参入者では御座いますが、どうか、末永くお付き合いくださいますように、隅から隅まで、ず、ず、ずぃ〜っと、御願い、奉りまする!

伸神 紳
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2007/11/10

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  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 8

    百合恵は白のブラウスに黒のロングスカートと言う姿だった。さらっとした黒髪が肩で揺れる。「お運び、ありがとうございますぅぅぅ!」朱音としのぶは、百合恵の前に並んで立つと、そう言いながら上半身を直角に曲げる。百合恵は楽しそうに見ている。姫野先生は驚いている。松原先生は「まあまあ、落ち着いて」と言った表情で姫野先生を見て苦笑する。「姐さん……」アイは麗子の支えを解こうとする。「すみません、こんなみっともない姿をお見せしちゃって……」「良いのよ、アイちゃん」百合恵は笑む。「しっかりと愛しの麗子ちゃんに支えてもらいなさいな」「え?……あ、はい……」アイは答えながら頬を赤くする。「姐さん……」「あのう……百合恵さん……」さとみが言う。しかし、表情は暗い。「今日はまたどうして?」「何となく、今からさとみちゃんに会わなきゃ、っ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪8

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 7

    さとみは黙り込んでしまった。黒い影も、さとみの名を呼び、邪魔をするなと言っていた。それがそのまま、さゆりと言う強力な霊体に引き継がれているようだ。……ひょっとして、そのさゆりって言う霊体と闘うのかしら?さとみはイヤな顔をする。今までは困っている霊体を助ける事が目的だった。しかし、この度は違っている。明らかに対峙した関係だ。仲間もやられている。まさに闘いだ。でも、どうして?どうしてわたしが闘わなきゃいけないの?わたしは学校の心霊現象を解決しただけなのに。まさか、それが原因?でも、今までだってそんな事はあったけど、今回の様な面倒な事にはならなかった。「……会長……」さとみは、アイの声で我に返った。きょとんとした顔をアイに向ける。「何?」「すみませんでした……会長の代わりにあいつを何とかしてやりたかったんですが……」...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪7

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 6

    「アイ!しっかりして!」麗子は言うと強くアイの手を握る。さとみたちも麗子の背後からアイを覗き込む。アイは視点が定まっていないようで、うっすらと開いた目は虚ろだった。「アイ!ちょっとぉ!しっかりしなさいよう!」麗子は握っているアイの手を何度も揺する。アイはされるがままで反応が無い。「待ちなさい!」姫野先生が麗子の肩を押さえる。「そんなに振り回しちゃ、かえってどうにかなっちゃうわよ!」「あ……」姫野先生に言われ、麗子は我に返る。「麗子、落ち着いて」さとみは声を掛ける。「アイを心配しているのはみんなも同じだから……」「……うん……」麗子は言うと、さとみに振り返る。大粒の涙が頬を伝っている。「でも……」「でも、何?」さとみが訊く。「アイはやっと目を覚ました所なんだから、無茶させちゃダメよ」「麗子先輩は、特別に心配なんで...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪6

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 5

    昼休み、さとみは保健室にいた。さとみだけではない。朱音としのぶ、麗子、松原先生もいた。いつも昼休みに集まり合う『百合恵会』だったが、一番に来るアイが来ない。どうしたのかと皆で話している所に松原先生が来て、アイが保健室にいると知らされたのだ。一番に駈け出したのは麗子だった。保健室のベッドにはアイが寝かされていた。ベッド横の丸椅子には麗子が座り、目に涙を浮かべながら、アイの手をしっかりと握っていた。もう一つある丸椅子には、呆けた表情の友川信吾が座っていて、ぼうっと定まらない視線でアイを見ていた。「で、何があったんです?」松原先生が、保健室の姫野先生に訊く。大柄で恰幅の良い姫野先生は両手を白衣のポケットに突っこんだまま立っていた。「昼休みに屋上に上がった生徒が見つけたんですよ」パーマのきつい髪をごしゃごしゃと掻き回し...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪5

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 4

    「綾部……さとみ……」さゆりがつぶやく。「そうだ!」アイが答える。「それで、何の用なんだ?」「邪魔をするな……」さゆりはアイを睨みつける。可愛らしかった声は低くくぐもったそれに変わる。イヤな臭いが強くなってくる。「邪魔をするなぁぁぁ!」さゆりが一喝すると、さゆりの髪が逆立ち、目尻が吊り上った。アイに向かって強烈な風が吹き付けた。「……何だ、こりゃあ?」アイは戸惑い、信吾に振り返る。「おい、これはどうなってんだ!」「分かんねぇけど、ヤバいって!」信吾は叫ぶ。「とにかくよ、そこから逃げろ!」「逃がさん!」さゆりの低い声が響く。と、さゆりは両腕を高く差し上げた。それをアイに向かって勢い良く振り下ろす。「うわあっ!」アイが悲鳴を上げた。振り下ろされたさゆりの手から衝撃波が打たれた。それを胸元に受けたアイは吹き飛ばされ、...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪4

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 3

    アイは屋上を見回す。信吾が言っていたベンチがある。鳥の呑気なさえずりが聞こえる。それに混じって、車の音もする。暖かな日差しと風が吹いている。「なんでぇ、何にもねぇや……」アイはつぶやく。「でも、会長の名前を口にしたとあっちゃあ、見過ごせねぇ……」アイは先頃の校長室の出来事を思い出していた。目茶苦茶になった校長室を見るのは愉快だったが、後で聞いたさとみの話に、さすがのアイもぞっとした。話だと、強力な霊が目覚めたとか……百合恵もその話にうなずいていた。霊とかを信じ切れていないアイも、会長と特別顧問の話ならば、信じる事にした。そして、今、幽霊みたいなのがさとみの名を言ったと信吾から聞いた。これは調べなきゃならないな。アイは決心していた。背後で出入りの扉が軋む。アイが振り返ると、信吾が立っていた。「どうしたんだ、信吾?...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪3

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 2

    信吾は階段を駈け下りた。何だか「ヤバいもの」と接したと感じ、一刻も早くそこを離れたかったからだ。屋上からの階段を下り、最初の踊り場を回った所で、信吾は人とぶつかった。「うわあっ!」ぶつかった信吾は声を上げ、弾き飛ばされた勢いで階段に座り込んでしまった。「てめぇ……」相手が低い声で怒りを表わしている。相手は倒れなかったようだ。信吾は顔を上げた。「……アイじゃねぇか……」信吾はつぶやく。信吾がぶつかったのはアイだった。階段に座り込んでいる信吾を仁王立ちで睨み付けている。「おい、信吾!どう言うつもりだ!危ねぇじゃねぇか!」アイと信吾は顔見知りだった。二人は百合恵のレストランでアルバイトをしていた。アイはホールでの接客係で、信吾は厨房スタッフだった。学校と学年が一緒と言う事で、休憩時間に少し話をするようになっていた。ア...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪2

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第七章 屋上のさゆりの怪 1

    「あ~あ、やってらんねぇや……」三年生の友川信吾はつぶやく。今はまだ三時間目だが、信吾は、屋上に置かれた風雨にさらされて色あせたベンチに寝転がって、空を見ていた。高い空を、時たまかあかあと烏が、足の先から頭の先へと横切る。信吾は授業を抜け出していた。三時間目と四時間目が嫌いな授業だったからだ。進学だ就職だと動き始める頃合いが近付いてきているが、信吾はまだどうするのかを決めかねていた。と言うよりも、決める気にすらなっていなかった。「本当に、つまんねぇよなぁ……」不良っぽい口調でつぶやきはするものの、信吾は不良と言う訳でもない。じゃあ、まじめな生徒かと言われれば、それほどでもない。何となく今に至ると言った感じだった。何かやりたいと言うくすぶった思いはある。しかし、その「何か」は具体的ではない。くすぶっているからと言...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第七章屋上のさゆりの怪1

  • 冨美代とみつ

    ああ、素敵ですわぁ、みつ様……あなたが男子であったなら、どれほど嬉しい事でございましょうや。寸暇を惜しんでなさる剣の修行。……あ、今わたくしを熱い眼差しで見て下さった!ああ、頬が熱くなり、からだも芯から熱くなって行くのが分かりますわ……わたくしはみつ様に恋慕致しておりまする……そもそも恋慕とは異性に抱くものと心得てはおりますわ。なれど、みつ様の、凛々しいお姿、豪胆な振る舞い、真っ直ぐなご気性……どれを取りましても、日本男児そのもの。みつ様が女子である事を、わたくしはお恨み致します。いえ、女子としても、みつ様は大和撫子でございます。わたくしなど当然、足元にも及びますまい。ご器量の良さは、わたくしが会うた姫様方に比しても群を抜いておられますわ。それでも尚、みつ様が男子であったならと思うのでございます……嵩彦様と結婚...冨美代とみつ

  • 竜二と虎之助

    「ねえ、竜二ちゃん」「なんだよ、虎之助よう、改まってよう?」「竜二ちゃんって、子供の扱いが上手だったわよねぇ」「そうかぁ?ま、あの先生も一緒にあの世に逝ってくれてほっとしたよな」「わたしね、それを見ていて、決めた事があるのよ……」「決めた事……?」「ええ。わたしね、わたし……」「何だよ、勿体つけないで言えよ」「わたし、竜二ちゃんの子供を産みたいの」「はあああああ!?」「そんなに驚く事無いじゃないのよう!」「だってよう、いつも言っているけどよう、お前は、男なんだぜ?」「男だって産めるわ!」「そんな事絶対に有り得ねぇ!」「だってさ、冨美代さんだって霊体になって結婚したのよ?霊体になれば、出来ない事なんか無いわ!」「でもな、男は子供は産めねぇんだ。霊体になったからって出来ねぇ事もあるんだぜ!」「そう言うと思ったわ……...竜二と虎之助

  • 我慢の人

    我慢の人。こう言うとどんな人が思い浮かぶだろうか。艱難辛苦な人、臥薪嘗胆な人などだろうか。まあ、確かにそう言える。以前、電車に乗っていた時、時間帯もあったのだろうが、やや混雑していた。わたしは吊革につかまって、前の座席の中年の男性を見ていた。早く下りろと念を送っていたわけではなく、その男性の様子に興味を持ったからだ。いくら混んでいる電車とは言え、まだ汗ばむ季節ではない。それなのに、この男性、額に大粒の汗を浮かべているのだ。それだけでは無い、ぷるぷると小刻みに触るえている。ここでわたしは思った。我慢しているのだ、と。いったい何を?それは便だろう。小さい方なのか、大きい方なのかは分からないけれど、じっと我慢をしているのだ。次の駅で降りて、トイレに駆け込むのだろう。わたしはそう見ていた。無事に辿り着いてほしいと願って...我慢の人

  • うるさい人

    うるさい人がいる。わたしの言う「うるさい人」は、どこであっても喋り続ける人の事だ。公共の乗り物の中然り、喫茶店やレストランの中然り、公園のベンチでも然りだ。他愛もない事を延々と、しかも、比較的大きな声で喋り続ける。どうして周りに配慮できないのかと思ってしまう。まあ、そう言う人だからうるさくなれるのだろう。さらに気になるのは、うるさい人には必ず聞き役のような相手がセットになっている事だ。聞き役は言葉少なで、時にはうんうんと相槌を打つだけだったりする。うるさい人には肯定してくれる聞き役が必要なのだろう。逆に言えば、聞き役がいないとうるさく出来ないのだ。ある時、公園のベンチでくつろいでいると、良く見かける「うるさい人」が来て正面のベンチに座った。今日は一人だ。わたしは聞き役がいないから大人しいだろうと思い、目を閉じ、...うるさい人

  • 変わった人

    知り合いに一人や二人、「変わった人」がいるだろう。「変人」と言うのではなく、ちょっとした事が「変わっっている人」の事なのだが。わたしの知り合いの後田と言う男は、わたしからすれば「変わった人」なのだ。後田の名誉のために言っておくが、彼は、名の知られた会社に勤め、そこそこの役職に付き、良き夫で三人の子供の父親だ。誰もが彼を「立派な人」と言うだろう。わたしもそう言う。しかし、ある事だけが「変わっている人」なのだ。それ以外は文句のつけようがない。それとは、食事の仕方だ。後田は、汁物を一番最初に平らげる。それは和洋中、どれであっても同じだった。「他の食べ物と共になんて無理だ。汁とそれらが口の中で混ざるんだぞ?想像してみろよ。ぐちゃぐちゃのべちゃべちゃになった得体のしれないものが口の中で作られるんだぞ?それを飲み込むなんて...変わった人

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 34

    さとみは呆然としていた。重く陰湿で殺伐とした空気は消えた。今さらのように窓から射し込む陽光が温かい。しかし、さとみの心は暗く、凍りついていた。表情も固まったままだ。アイの手を掃い、さとみは立ち上がる。床に落ちていたみつの刀と冨美代の薙刀がすうっと消えた。さとみは百合恵を見る。百合恵はさとみの視線に気がついた。「さとみちゃん……」百合恵はつぶやく。さとみはぼろぼろと大粒の涙を流し、百合恵の胸に飛び込んだ。「わあああああああっっっ!」さとみは百合恵の胸で泣いた。百合恵はさとみを抱きしめる。「みんな、みんな居なくなっちゃったぁぁ!」さとみはわんわんと泣き続ける。「みんな、わたしのせいで!」「違うわよ、さとみちゃん!」百合恵はさとみの背を優しく撫で続ける。「みんな、さとみちゃんを信じていたからよ!だから、自分を責めちゃ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪34

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 33

    金色の光を噴き昇らせているさとみは、みつと冨美代の間をすり抜け、前に出た。いきなり前へ出てきたさとみに、みつと冨美代は驚いている。影から放たれた青白い光はさとみを直撃した。しかし、影の放つ光は霧散した。さとみは向きを変え、自分の生身に飛び込む。生身に戻ったさとみは片岡と共にじゅうたんの上へ転がった。飛んで来たキャビネットはそのまま壁に激突した。浮き上がっていた楯や額が操り糸が切れた様に、じゅうたんの上に散らばった。「会長!」アイの声がドアの外からする。ノブをがちゃがちゃと回している。「どうしたんです?今の音は何です?」「アイちゃん!やるわよ!」百合恵の声だ。「返事を待ってはいられないわ!」しばらくして、ドアに何かが当たる音が繰り返された。「……さとみさん」片岡は自分の上になっているさとみに言う。「何と危ない事を...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪33

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 32

    影の赤い縁取りが揺れる。次にどう出て来るのかと、みつと冨美代は険しい表情で身構える。さとみもじっと影を見つめる。豆蔵と虎之助が影によって消されてしまった。これ以上の犠牲は出したくはない。しかし、みつの冨美代も自分を賭してさとみを守ろうとしている。……おばあちゃん、みんなを守って!さとみは心からそう願う。「むっ!」声がした。片岡だった。楯や額だけではなく、それらを飾ってあった壁際にある重々しいキャビネットが不安定に揺れながらで浮き上がり始めていた。「片岡さん!」さとみは叫ぶ。「このままだと片岡さんが危ないです!逃げて下さい!」「そうは行きませんよ」片岡は相変わらず穏やかな笑みを浮かべ、霊体のさとみを見る。「わたしが逃げると、さとみさんの生身がどうなってしまうか」「その時はその時です!」さとみはきっぱりと言う。「今...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪32

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 31

    「来やすぜ……」闇の中で豆蔵の声がする。邪悪な気が部屋の中央に集まっている気配がする。さとみはそこをじっと見つめる。しばらくすると赤くて細い炎のような縁取りが宙に現われた。それは絶えずゆらゆらと揺れて、一つの形として定まらない。「影……」さとみはつぶやく。「ようやく姿を現わしたわね」「……綾部、……さとみ」影から低い押し殺した声が聞こえる。「邪魔を……邪魔をするな……」影が憎しみと呪詛に満ちた声で言う。「邪魔をするな……」「邪魔?」さとみが小馬鹿にしたように言う。「ふざけた事言わないで!あなたの方こそ、わたしたちの日常を邪魔しているのよ!」強い口調で言うさとみだったが、膝ががくがくと震え、鼓動が早い。影から発散する邪気はとにかく凄まじい。さとみは自分を奮い立たせるためにも、敢えて強い口調になっていた。「姿を現わ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪31

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 30

    「片岡さん!」さとみは叫び、目を閉じる。が、ぶつかったような音はしない。片岡の苦悶の声も聞こえない。さとみは片目を開けて様子を見る。片岡が伸ばして広げた右手の手前でトロフィーが止まったままで浮いている。片岡の並々ならぬ霊力がトロフィーの動きを封じたのだ。「片岡さん、凄い!」さとみは思わず声を上げる。片岡は微笑むと右手を下げる。それに合わせるようにトロフィーが床へと下がって行く。片岡が右手を軽く握ると、トロフィーはじゅうたんの上の転がった。「これで終わりではないでしょうからね。気を引き締めましょう」片岡は言うと、散らかっている楯や額を見る。「操る者がいるのは分かりますが、姿は感じられませんね」「そうなんですよね」さとみはうなずく。「だから、厄介で……」「お仲間の皆さんも苦慮なさるわけだ……」片岡は言うと豆蔵たちを...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪30

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 29

    「では、行きますか」片岡は言うとさとみを見る。「はい、頑張ります」さとみは右手を顔の近くで握って片岡を見る。「では、開けますよ……」坂本教頭は言うと喉をごくりと鳴らし、ドアを開ける。「これは……」開いたドアから室内を見た片岡は険しい表情になる。「これはかなり危険ですな……」「やっぱり、そうですか」さとみは片岡を見る。「わたしみたいなのが言うのも変ですけど、無理はしないでください」「ははは、さとみさんは優しいですね」片岡は優しく笑う。「大丈夫ですよ。わたしの事より、ご自身をしっかりと守りなさい」「でも……」「ここにいる者は、強力です。気を抜くような事があったら、やられますよ」片岡は真顔になる。「さあ、気を強く!」片岡が先になって校長室へと入って行った。さとみが後に続く。それに豆蔵たちが続く。さとみは振り返る。豆蔵...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪29

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 28

    「あっ、そうだ!」さとみは踵を返し、しのぶの所に向かう。「どうしたんですか、会長?」しのぶが怪訝な顔をする。「これから乗り込むってところじゃないですか!」「そうなんだけどね」さとみは真剣な面持ちで言う。「しのぶちゃんって、この手に知識って豊富じゃない?だから、何か良い手が無いかなぁって思って」「良い手、ですか?」「ほら、何かのお守りだとか、呪文だとか、手で印を組むとか……」「印は組むじゃなくて、結ぶです」しのぶは冷静に訂正する。「でも、どうしてそんな事を?」「だって、物を飛ばして来るから、危険じゃない?」「そうですねぇ……」しのぶは腕組みをして考え込む。「たしかに当たったら痛いですもんねぇ……」「じゃあ、わたしが一緒に行きます!」そう言って割り込んできたのはアイだ。「わたしが会長の楯になります!ですから、その間...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪28

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 27

    現われたのは、痩せた長身の老人だった。ぶかぶかの紺色のダブルのスーツを着込み、広い額に肩まで伸びた白髪、青白い細面に存在感を示す鷲鼻、鋭い眼光を少しでも弱めようと言うのか、青みがかった薄い色のサングラスをしている。そして、後ろには助手なのか、同じようなスーツを着た若い男性が付いている。「これは、これは、片岡先生ぃ!」谷山先生は片岡に小走りで駈け寄り、何度も頭を下げている。「急なお呼び出しにもかかわらず、良くいらして下さいましたわぁ!」「ああ、いえいえ……」片岡は笑顔で応える。太くて優しい声だ。「ちょうど時間もありましてな……」「……ふん!」アイは谷山先生の様子を見ながら小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。「何なんだよ、あの媚び媚びな態度はよう!あんな爺いによう!」「でもアイ先輩……」しのぶが「心霊モード」のままのきら...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪27

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 26

    百合恵は黒い革製のライダースーツを着込んでいた。アイと朱音としのぶは百合恵の傍まで駈けて行き、からだを直角に曲げて「おはようございますぅぅぅぅ!」と大きな声で挨拶をした。からだのラインがしっかりと出ていて、坂本教頭が呆けた顔で百合恵を見ている。それに気付いた谷山先生がずかずかと百合恵に近づいた。「ちょっと、何ですのぉ、あなたはぁ?ここは学校、神聖な場所ですのよぉ?そこに、そんな……」谷山先生はおぞましい物を見るように眉間に縦皺を作り、震える右手で百合恵の谷間の見える少し開いている胸元を指差す。「破廉恥な姿でぇ!学校には、年頃の男子生徒や男性教員もいるのですよぉ!」「うるせぇな……」アイが低く言って、谷山先生を睨む。「姐さんがどんな格好をしようと、関係ねぇじゃん」しかし、百合恵は壁を見つめている。さとみには見えて...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪26

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 25

    豆蔵は言うと、黙ってしまった。さとみも黙り込む。竜二はどうして良いのか分からず、さとみと豆蔵を交互に見ながら落ち着かない。「……とにかく、良からぬ事の前触れって事ね……」さとみがつぶやく。「イヤだなぁ……」「へい……」豆蔵も大きくうなずく。「あっしらには手を出せねぇのが、癪でやすよ……」「でも、何とかしなきゃ……」さとみは言うが、肩を落とす。「出来ないかも……」「おい、さとみちゃん」竜二が声をかけてきた。さとみはじろっと竜二を睨む。竜二は慣れているのか、平気な顔だ。「ほら、生身に話しかけられてるぜ」見ると、朱音としのぶがさとみの生身に話しかけていた。ぽうっとしたさとみを見て、しのぶが「心霊モード」全開の表情で、さとみの頬を右の人差し指で突ついている。「さあ、戻って下せぇ」豆蔵が言う。「あっしは、もう少し調べてみ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪25

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 24

    谷山先生は、生徒たちと松原先生を無視して、坂本教頭の前に立つ。「教頭先生ぃ!」きんきん声がさらに高くなる。「校長先生のお部屋の件は、もう解決したも同然ですわぁ!」「おお!」坂本教頭は満面に笑みを浮かべ、流れ落ちる額の汗を拭う。「で、どうやるのかね?」「実はぁ……」谷山先生は、薄い胸を張る。「わたくしの知り合いに霊媒師が居りますのぉ。先程、準備室へ戻る途中で思いついて電話してみましたのぉ……」「ほう、それで?」坂本教頭は関心を示す。松原先生はため息をつく。アイは「勿体つけてんじゃねぇや!」と毒づいている。しのぶと朱音は「心霊モード」の眼差しで谷山先生を見ている。特にしのぶは「霊媒師」の言葉に瞳をきらきらさせている。さとみは皆とは反対方向に顔を向けている。豆蔵と竜二が立っていたからだ。さとみは霊体を抜け出せる。「あ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪24

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 23

    皆で校長室を飛び出すと、坂本教頭は大慌てでドアを閉めた。不意に静かになった。「……これは、一体どう言う事だ……」坂本教頭は額の汗をぬぐいながらつぶやく。「ですから、これはポルターガイスト現象です!」しのぶが言う。さっき怖い目に遭ったと言うのに、もう立ち直っている。と言うより、「心霊モード」が抜けていないのだ。「わたしも初めて見たわ!」朱音も興奮し始め、「心霊モード」に入ったようだ。「わたしも近くで見ればよかった」「馬鹿野郎!」アイが二人を怒鳴る。「お前たち、そんな事を言っていると、会長に心配をおかけする事になるんだぞ!」アイに叱られて、朱音としのぶは我に返った。二人はさとみに向かい、上半身を直角に曲げて「すみませんでしたぁぁぁ!」と、頭を下げた。さとみは苦笑する。「さて……」松原先生はため息をつく。「どうしたも...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪23

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 22

    豆蔵から聞いて想像していたよりもひどかった。棚からは全ての物が落ちて床に散らばっていた。校長の机の上もぐちゃぐちゃになっている。壁はもとより、天井にまで物が激しくぶつかった跡が幾つもあった。窓ガラスの一部が割れている。ここから竜二が逃げ出したのだ。「わたしが校長先生から預かった鍵で入って見ると、この状況だったんだ……」坂本教頭はため息をつく。それで、谷山先生にも見てもらったんだが、救急車を呼んだ時には、きちんとしていたそうなんだ」「ボクがいた時もそうでしたよ」松原先生が言う。「どうして、こんなにごてごてに飾っているんだかって、思いましたけどね」「校長先生は、我が校の名誉を重んじておられるのだよ」坂本教頭は言いながらうなずく。「だから、どんな小さな楯だって飾っておくのだ」「単なる見栄っ張りじゃねぇの?」アイが小馬...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪22

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 21

    松原先生を先頭に校長室へと向かうと、坂本教頭と谷山先生とが、校長室前に居た。「やあ、来てくれたかね」坂本教頭は笑む。どう見ても作り笑いだ。その横で、谷山先生は不機嫌そうな顔をしている。「それで、何があったんですか?」しのぶがきらきらした瞳で坂本教頭に訊く。しのぶは「心霊モード」に入っているようだ。声が大きくなる。「校長室に、何か出たとか?」「えええっ!」朱音は声を上げると「心霊モード」になった。「そうなんですか?そこの所、詳しく!」「あなたたちぃ、静かになさいぃ!」谷山先生がしのぶと朱音を叱る。「……全く、今時の娘たちってのはぁ……」「でも、何かあったから呼んだんだろ?」アイが谷山先生の前に立ち、じろりと睨みつけて言う。「呼んどいて文句を言うってのは、どう言う事なんだよ?」「……わたくしが、呼んだんじゃないわよ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪21

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 20

    とりあえずは、様子を見ようと言う事で話が付いて、百合恵と豆蔵は帰って行った。一人になったさとみはベッドに入って、暗くした部屋の天井を見ながら、あれこれと考える。……どうしよう?影って強そうだものなぁ。霊体ならおばあちゃんも助けてくれるだろうけど、生身じゃなぁ……それに霊体で挑んでも、姿を見せずに物を投げつけて来るんじゃ、どうしようも出来ないしなぁ……だからって、生身で挑んだら、色々とぶつかって来て痛いだろうしなぁ……そんな中にはアイたちを連れては行けないよなぁ……会長のためなら、たとえ火の中水の中なんて言ってはくれているけどなぁ……しのぶちゃんなら、何か良い知恵が浮かぶかなぁ……あ~あ、「さざなみ」のメロンパンが食べたいなぁ……さとみはすうすうと寝息を立てた。翌日、登校すると、校門前に松原先生が立っていた。ちょ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪20

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 19

    豆蔵は後ろ姿のままでさとみに部屋に現われた。さとみが豆蔵に気がついて霊体を抜け出させて声をかけて来るまで、この姿勢を崩さない。若い娘の部屋に現われる際の豆蔵なりの掟だった。「あら、豆蔵じゃない?」聞き覚えのある声に、思わず、豆蔵は振り返った。百合恵が、さとみのベッドの上にさとみと並んで座っていた。「……姐さんじゃねぇですかい」豆蔵は驚きの声を上げる。「どうしてこちらへ?」「豆蔵たちが校長室へ潜り込むって言っていたから、何か報告しに来るんじゃないかって思ったのよ」「さいですかい。……でも、どうして姐さんが嬢様の所に?」「豆蔵の事だから、わたしが夜のお仕事をしている時間だからって、先ずはさとみちゃんに話に来ると思ったのよ。わたし、今日はお休みにして、豆蔵たちが来るのを待っていたのよ」「何とまあ、手回しの良い事で……...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪19

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 18

    虎の助と豆蔵の声で我に返った竜二は、ドア目がけて走った。だが、ドアを通り抜けられず、じゅうたんの上に転がってしまった。「竜二さん、何やってんだ!早く出て来なせぇ!」豆蔵が言う。竜二はのろのろと起き上り、ドアを見上げる。「豆蔵さん……出られないんだよう……」「何でやす?もっと大きな声で言ってくれねぇと聞こえねぇ!」「ドアを通り抜けられないんだよう!」泣き声交じりで竜二が叫ぶ。叫びながらドアを叩く。「な?ドアを叩くしかできないんだ。ドアから出られないんだよう!」「じゃあ、他の所から出てみなせえ!」「他って……?」「壁とか、窓とかあるじゃない!」虎之助が叫ぶ。「とにかく早く出ないと!」「……分かった、やってみるよ」竜二は壁に向かって立つ。手を伸ばす。しかし、手は壁を通り抜けない。窓へ向かう。窓ガラスに手の平を当てるが...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪18

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第六章 備品飛び交う校長室の怪 17

    竜二はドアに手を当て、ゆっくりと顔をドアに近づける。竜二の顔がドアを通り抜けた。竜二は校長室の中をきょろきょろと見回す。ひっそりとしていて、特に変わった様子は見られない。「……どこも変わっちゃいなさそうだぜ……」竜二は顔を戻し、後ろにいる皆に振り返って言う。「じゃあ、そう言う事で……」「竜二ちゃん……」ドアから離れようとする竜二の腕をつかんだ虎之助は、竜二の顔を見ながら頭を左右に振る。「な、何だよう……」竜二は怯えた声を出す。「離してくれよう……」「ダメよ」虎之助の手に力が加わる。「ちょっと覗いたくらいじゃ、何にも分からないわよ。ちゃんと中に入って、ちゃんと調べなきゃ」「でもよう……」「何?まさか、怖いの?」「いや、……そうなんだよう……」「大丈夫よ。豆ちゃんもいるし、おみっちゃん(みつはそう呼ばれてむっとする...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第六章備品飛び交う校長室の怪17

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