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お話 https://blog.goo.ne.jp/shin-nobukami

日々思いついた「お話」を思いついたままに書く

或る時はファンタジー、或る時はSF、又或る時は探偵もの・・・などと色々なジャンルに挑戦して参りたいと思っています。中途参入者では御座いますが、どうか、末永くお付き合いくださいますように、隅から隅まで、ず、ず、ずぃ〜っと、御願い、奉りまする!

伸神 紳
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2007/11/10

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  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 37

    さとみが霊体を戻すと、目の前に朱音の顔があった。「うわっ!」さとみは驚いて後ろの仰け反る。危うく倒れそうになったのをしのぶが両腕をつかんで支えた。「会長、理科室の椅子は背凭れが無いんですから、気を付けてください」しのぶがさとみの後ろから言う。「わたしが居なかったら、大怪我するところでしたよ」「……ああ、ありがとうね」「で?」朱音は瞳をきらきらさせて、さとみを見る。「また霊とお話したんですね?」「え?そうなんですか!」しのぶが言う。「何をお話ししたんですか?」前と後ろからの圧にさとみは困惑する。「……わたしたちは帰っちゃうから、後を任せたのよ」「どう言う事ですか?」朱音がぐいっと詰め寄って来る。「そこの所、詳しく!」「そうです!」しのぶがさとみをつかむ手に力が入った。「そこの所、詳しく!」「わたしの役に立ちたいっ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪37

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 36

    「だから、何で付いて来るのよう!」さとみは竜二に言う。「見てみなさいよ!みんなでわたしを見ているじゃない!」さとみは生身の自分を指差す。相変わらず、松原先生はさとみの顔の前で手を振っているし、朱音としのぶは「会長!会長!」とコールしながら、さとみの周りを回っている。「だからさ、みんなの役に立ちたいんだよ!」竜二は答える。「何でも言ってくれよ。オレ、やり遂げて見せるぜ!」「まあ!なんて男らしい竜二ちゃん!」虎之助が感激して涙を流す。「好きよ、大好きよ!竜二ちゃんとわたしとは、生まれる前から結ばれていたんだわ!」「あのさあ、二人が結ばれているのは分かったから、どっか別のところで感激してくれないかしら?」「そんな冷たい事を言うなよ、さとみちゃん」竜二は半泣き顔だ。さとみはうんざりする。「そうよ、竜二ちゃんがやる気にな...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪36

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 35

    「お待たせしましたぁ……」やや太めのしのぶのおでこに汗が浮かび、息が切れている。しのぶなりに大急ぎだったのだろう。「井村先生……今、ちょっと、手が、放せないって……鍵を、借りて、来ましたぁ……」「そうか」松原先生は、なぜかほっとしたように息をつく。「じゃあ、開けて入ってみよう」さとみは慌てて霊体をからだに戻した。油切れのロボットのようにのろのろと動く。「会長……」声にさとみが振り返ると、朱音がにやにやしている。「会長、今、霊と話をしていたんでしょ?」「え?……まあ、そう言ったところ、かな」「わたし、会長が霊と話をする時って分かるんです。こんな感じでぽうっとなってますから」朱音は霊体の抜け出したさとみの真似をして、口と目が半開きで、両腕をだらりと下げた格好をする。「そんなにひどくないわよう!」さとみは言うと、ぷっ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪35

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 34

    松原先生としのぶが並び、その後を朱音とさとみが続く。皆で井村先生の所へ向かうのだ。一階の廊下はあらかたの生徒たちが帰ったため、思いの外しんとしている。とは言え、グラウンドや体育館から運動部の練習中の掛け声や、どこで鳴っているのか軽音楽部のぴーひゃらどんどんが聞こえている。とりあえず第一理科室に着いた。しかし、井村先生は居らず、鍵がかかっていた。出入りの引き戸にはめ込まれた窓ガラスから室内を見るが、ちょうど骸骨標本が見えなかった。「仕方がない、生物準備室へ行ってみよう」松原先生が言う。「あ、わたしが行ってきます」しのぶが手を上げた。「井村先生って、人見知りだから、こんなに大勢で行ったら嫌がると思うんです」「人見知りって……」松原先生が呆れる。「教師だよ?生徒たちの前で授業をやる立場だよ?それが人見知りって……」「...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪34

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 33

    井村先生は、生物担当の痩せていてひょろっと背の高い中年の女教師だ。幸か不幸か、さとみはまだ当たった事は無い。ただ、噂は良く耳にした。いつも白衣をぴしっと着込み、そのくせ、髪の毛の手入れは疎かで、毎日髪型が変わっている(一部では寝癖のままと言われている)。さらに、教科書以外の分厚い事典を数冊右腕に抱え、いわゆる瓶底眼鏡を掛けていて、それが重いからか鼻が低めだからなのか、良くずり落ちてくるため、絶えず左手人差し指で直している。授業は一方的にしゃべり続けるだけだ。生徒たちが他の事をしていようと、騒いでいようと、注意はしない。テストもクラスと名前がちゃんと書けていれば赤点にはしない。井村先生は分かる生徒だけ分かれば良いと言う態度だった。その分かる生徒がしのぶだった。なので、しのぶは井村先生のお気に入りだった。「ある日、...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪33

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 32

    「と言う訳でですね……」しのぶが言う。さとみ、アイ、朱音、そして松原先生が椅子に座っている。ここは、放課後の北側校舎の三階の空き教室だ。松原先生が早速動いてくれて、この教室を「百合恵会(同好会からサークルに格上げされたので名前を変更したのだ)」の部室にしてもらったのだ。北階段の一件を解決したご褒美と松原先生は言っていた。本当のところは、単に空いている場所が無かっただけの事だ。しのぶは、やっと骸骨標本の話が出来るので、うきうきしている。朱音と松原先生は興味津々な表情だ。アイは興味無さそうで、ただここに居ると言うだけだ。さとみは一刻も早く解放されたがっている。「……あの、さとみ会長?聞いてますか?」しのぶの言葉に、さとみは振り向く。無理矢理な笑みを浮かべる。「ええ、もちろん、聞いているわよ。骸骨標本でしょ?第一理科...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪32

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 31

    さとみは重い足取りで登校している。いつの間にか心霊研究サークル「百合恵会」の会長になってしまったからだ。昨日、朱音としのぶはきゃあきゃあはしゃいでいたし、アイも「会長、会長」と楽しそうに言い続けるし、麗子は蒼い顔をしながらも退くに退けなくなっていたし、もう、どうしようもなかった。でも、本当はイヤだった。隅っこでちんまりしているのがさとみの理想だ。学校に近づくと、校門の前に松原先生が立っているのが見えた。さとみは物凄くイヤな顔をした。そのまま回れ右をして家に帰ろうかと思った。しかし、間に合わなかった。「おおい、綾部!」松原先生の弾んだ声と駈けてくる足音が聞こえる。「どこへ行くんだ?学校はこっちだぞ?」「え?あ、はい……」さとみは松原先生に背を向けたまま答える。「知っています……」「まあ、おとといの夜は大変だったな...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪31

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 30

    「のぶ、いきなり、そんな話を始めなくてもいいんじゃない?」朱音が言う。「今日は、先輩の様子を伺いに来ただけだし……」「でも、先輩は元気そうじゃない?」しのぶは朱音に言う。「それに、松原先生が……」「松原先生が、どうしたの?」さとみが割って入る。「何かあったみたいね?」「ええ、実は」朱音がにやにやしながら言う。「松原先生、昨日の事で、俄然張り切っちゃって」「張り切る……?」「そうなんです!」しのぶがテーブルをばんと叩く。「松原先生、同好会を立ち上げちゃったんです!」「先生が?生徒じゃなくて?」「一応、発起人はわたしと朱音なんですけどね」「何だか、面倒な話っぽいけど……」「面倒なんかじゃありません!」しのぶがまたテーブルを叩く。「むしろ、大歓迎です!」「何?どう言う事?」さとみは朱音を見て言う。「松原先生、心霊研究...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪30

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 29

    「先輩!まだその格好をしているんですかぁ!」玄関の外で朱音は言うと、その場で地団太を踏み始めた。「わああっ!やっぱり部屋に飾っておきたいぃぃ!」「おい、何言ってんだ、お前は?」アイが朱音を睨みつける。「姐さんにふざけた事言ってんじゃねぇぞ!」「まあまあ、アイ」麗子がアイの肩を軽く叩く。「あなただって、さとみを飾っておきたいって思わなかった?」「おい、馬鹿な事を言うなよ……」アイは赤い顔をして麗子を見る。「そんなこと思うわけ無いだろう!」「ねぇ、さとみ……」麗子は言いながらくすっと笑う。「アイってこう見えてね、人形集めが趣味なのよね。ポコちゃんもお気に入りなのよ」「うるせぇなぁ!」アイが麗子につかみかかろうとする。麗子はきゃあきゃあ言いながら笑っている。そんな二人を押し退けるようにしてしのぶが前に出てきた。アイも...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪29

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 28

    「さとみ、お客さんよ!」部屋のドアをがんがん叩きながら、母親が言う。まだまだ寝足りないのに、無理やり起こされたさとみは機嫌が悪い。むすっとした顔のまま頭を巡らし、机の上の目覚まし時計を見る。「……四時半……」さとみはつぶやく。「え?四時半……?」さとみはがばりと起き上る。勢いで掛けていた毛布が床に舞い落ちた。どたどたと部屋を歩き、ドアを開ける。母親がフライパンを持って立っていた。「何でフライパンなんか持っているのよう!」さとみは文句を言う。寝起きが悪くて機嫌の悪いさとみだった。「それに、今何時だと思ってんのよう!」「今?」母親はさとみの机の上の時計を見る。「四時半よ」「そうじゃなくって、どうして朝起こしてくれなかったのよう!これじゃ、学校をさぼったことになっちゃうじゃないのよう!」「お父さんが、寝かせておけって...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪28

  • ヒーロー「スペシャルマン」・16

    オレは「スペシャルマン」と呼ばれる正義のヒーローだ。常人の及ばない様々な特殊能力を秘めている。この力で悪を倒し続けているのだ。さて、ヒーローの条件の一つとして認識されているものに、仲間への揺るぎ無い信頼と絆と言うのがある。ヒーローも一匹狼を気取れる時代ではないのだ。様々な状況が多岐化する中で、たった一人でそれらに対応する事は現実的ではない(本音では、オレ一人ですべてを対応したいのだが)。特に最近では、敵である「ブラックシャドウ」は、オレが闘っていると、全く別の場所にも一団が出現すると言う、同時多発的な攻撃を仕掛けてくるようになった。攻撃方法を熟慮した結果なのだろう。敵ながらその向上心は褒めてやろう。どうだ、敵にも惜しみない賞賛をするオレって、公平だろう?とは言え、現実問題として、別の場所に敵が現れたらオレは対処...ヒーロー「スペシャルマン」・16

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 27

    動きを止めた影から突き出ている切っ先は、さとみに向いている。さとみは覚悟を決めたのか、目を閉じた。……「霊感少女さとみ」が「生ける屍少女さとみ」になっちゃうかも知れないわ。さとみは思った。不意に金属が硬いものにぶつかる音がした。さとみは目を開ける。目の前の踊り場に刀が転がっていた。さとみは顔を上げた。影は消えていた。「え?なんで?どうして?」さとみはきょろきょろする。豆蔵が現われた。「嬢様、あの野郎、消えちまいやしたよ」「消えた……?」「へい。嬢様が目を閉じなすって、しばらくしたら、すうっと消えちまいやした」「どうしてだろう?」「さあ……ひょっとして、嬢様の度胸に畏れ入ったんじゃねぇでしょうかね?」「度胸……」ふと背後から肩を掴まれた。さとみはびくんとなる。「……さとみ殿」みつだった。笑みを浮かべているが、まだ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪27

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 26

    「あれは、しのぶちゃんだわ」さとみが言う。「職員室に居てって言ったのに……」「心配になって来ちゃったのよ」百合恵が階段の方を見ながら、意味深な笑みを浮かべる。「単なるオカルト娘ってだけじゃなさそうよね」「でも、先輩の言いつけを守れないなんて」さとみはぷっと頬を膨らませる。「何かあったらどうするつもりなんだろう」「まあ、結果的には危険も去ったし、良いんじゃない?」百合恵は笑む。「さあ、からだに戻らなきゃ」「そうですね……」さとみが動こうとした時だ。「きゃあぁぁぁ!」しのぶの悲鳴が響いた。百合恵が走り、さとみとみつと豆蔵が飛ぶ。百合恵が三階の階段口に立って見下ろし、懐中電灯で灯すと、しのぶが踊り場に座り込んでいるのが見えた。その横にはぽうっとした表情で立っているさとみがの生身がある。そのさとみの顔の前に黒い影が炎の...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪26

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 25

    「ふん!そんな見せかけの炎なんか、ちっとも怖くないわ!」さとみは言うと胸を張って見せた。「ははは、そんなぺったんこな胸を張っても、偉そうには見えんぞ」「何て事を言うのよう!」さとみはぷっと頬を膨らませる。「そっちこそ、へんてこな炎の真似をしてんじゃないのよう!」「オレはへんてこではないと言っているだろうがぁ!」炎は怒鳴った。怒りに合わせるかのように炎が勢い良く立ち上った。「じゃあ、姿を見せなさいよ!」「ああ、見せてやろうじゃないか!見たらあまりの恐ろしさに霊体が吹き飛ぶぞぉ!」さとみは身構えた。炎はゆっくりと形を変え始めた。大柄な人の形になりつつあった。「泣く子も黙る、三途の川の渡し人、大入道の長吉たぁ、オレの事でぇ!」炎は、薄汚れてぼろぼろになった着物を着た、さとみの倍以上の身の丈と階段通路を塞ぐほどの横幅を...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪25

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 24

    霊体になったさとみは、百合恵に大きくうなずいてみせた。「さとみちゃん!今すぐ、からだに戻りなさい!」百合恵が言う。「何かあってからじゃ、遅いのよ!」「大丈夫です。霊体を抜け出させた感じは、いつもと変わりません」さとみは答える。「これから、みつさんに話しかけてみますね」さとみは階段に座り込んでいるみつの傍へと近づいた。「……みつさん……」さとみは心配そうな表情でみつを見る。さとみの呼びかけに、みつは反応しない。相変わらずうつむいたままだ。「ねえ、みつさん……」さとみは階段を上りながら、みつに声をかける。「どうしたの?大丈夫?」「さとみちゃん」百合恵が声をかける。さとみは百合恵に顔を向ける。「いつものみつさんじゃないわ。戻っていらっしゃい!」「……でも……」さとみはみつと百合恵を交互に見る。「……さとみ殿……」うつ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪24

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 23

    懐中電灯に照らされる階段は陰鬱な陰影を作り、何とも言われない不気味さを醸しだしている。知らずにさとみの喉が鳴る。「さとみちゃん、大丈夫?」百合恵が心配そうな表情でさとみを見る。「大丈夫です!」さとみは強い口調で答えた。自分自身を鼓舞するつもりもあったようだ。「それよりも、みつさんが心配です」「そうね……」二人は二階に着いた。ここから途中の折り返しになる踊り場までの階段が一段増えて十三段になるのだ。「どうする?数えてみる?」百合恵が言う。「まあ、増えていたからって、どうだって言うわけじゃないけどね」「そうですね。……でも、増えるって言う事は、ここからがさらに危険って事ですよね……」「そうね。特に霊体には厳しいかもしれないわね」そう言うと、百合恵は踊り場までの階段に足をかけた。と、はっとした表情で顔を上げ、踊り場の...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪23

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 22

    さとみと百合恵は豆蔵の先導で歩く。暗闇でも霊体は見えるから、実質的に懐中電灯はいらない。ただ、周囲の状況が分からないので、百合恵は懐中電灯で周囲を照らしていた。「今のところは、豆蔵だけしか見えませんね……」さとみが言う。「……でも、何となく、イヤ~な感じはします……」「そうね」百合恵は周囲を見回す。「小者の霊も寄り付かないなんて、よっぽど強い霊がいるようね……」「……着きやしたぜ……」豆蔵が言って振り返る。百合恵が正面を照らす。掃除があまり為されていない、薄汚れたコンクリート製の階段が見えた。「う~ん、いかにもって感じの階段ねぇ……」百合恵が苦笑する。「誰も掃除をしないのかしら?」「少なくとも、わたしは入学してから、ここの掃除に参加した事はありません」さとみが答える。「さっきも言いましたけど、こんな階段があるの...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪22

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 21

    しのぶが松原先生の腕をつかんで先を歩いている。「のぶったら、先輩が好きだったんじゃないのかしら?」朱音がつぶやく。「まったく、気が多いんだから……」「何の話?」さとみが不思議そうな顔を朱音に向ける。「え?」朱音がはっとする。「いえ、別に、大した事じゃありません……」「ふふふ……」百合恵が笑いながら、朱音の肩を抱く。「朱音ちゃんは、お友だちを心配しているのよ。優しい娘ねぇ……」「いえ、あの、その……」朱音がぽうっとした顔で百合恵を見る。百合恵の笑みを見て、慌てて顔を下げる。「そんな事、無いです……」「ふふふ、朱音ちゃんて可愛いわね。今度、二人だけで会おうか?どう?」「そ、それは、嬉しいです、けど……」朱音はか細い声でやっと答えると、耳の先まで真っ赤になった。百合恵に肩を抱かれ、半分引きずられるように歩いている。そ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪21

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 20

    「ところで、綾部……」松原先生が来客用のスリッパを人数分並べながら言う。並べ終わると、外でかたまっている女性群に振り返り、さとみを見る。「栗田から聞いたんだけど……お前って、霊と話が出来るんだってなぁ?」「え?」さとみは横に立っているしのぶを見る。しのぶは大きくうなずいている。「ええ、まあ、ちょっと……」さとみは曖昧に答える。「そんな大袈裟なものじゃなくって……」「何を言っているんですか、先輩!」しのぶがさとみの前に回り込む。「かねから聞いたんですよ!かね、実際に話をしているところを見たって言ってました!……ねぇ?かね、言ったよねぇ?」「ええ」朱音はにこにこしている。「凄かったわよ。ずっと話をしていたみたいで。きっと、迷っていた霊を鎮めて冥界に送ったのよ」「そりゃあ、凄いなぁ……」松原先生が感心したようにつぶや...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪20

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 19

    「二人とも来てくれたんだ……」さとみは、豆蔵とみつが示す険しい表情に、思わずごくりと喉を鳴らした。「へい……」豆蔵が答える。「百合恵姐さんに来るようにって言われやしてね。まあ、用心棒代わりと思って来たみたんでやすがね……」「何やら、只ならぬものを感じます……」みつが周囲を見回し、腰の刀の柄に手を掛ける。「以前より、時々感じていた妖かしの雰囲気が、今夜は強いですね……」「……と言う事は、わたしたちが来るってことが分かっているからとか……?」「そうかも知れやせんね……」「前に探索した時に、誰かが居たようだって話だったわ」「じゃあ、今夜も誰かが居やがるかも知れやせん」「さとみ殿には悪いが、凶悪なヤツであれば……」みつは鯉口を切った。「斬ります」「そんな危険な感じなの……?」二人は無言でうなずいた。「……百合恵さんも知...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪19

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 18

    朱音はスマホの時計を見た。それを横から覗きこんだしのぶは溜め息をついた。もうすぐ真夜中。学校の正門前だ。すぐそばの電信柱のうっすらとした街灯の灯りが、妙に淋しさを増す。朱音もしのぶもTシャツにジーンズ姿だ。「さとみ先輩、来ないわね……」しのぶがつぶやく。「約束したのに」「先輩は約束はしていないわよ」朱音が言い返す。「先輩のご両親が許してくれなかったのよ」「でも、百合恵さんとか言う大人の人に頼んでみるって言っていたわ」「その百合恵さんは忙しい人だとも言っていたじゃない。さとみ先輩の都合がつかなかったからって、文句を言うのは鈴違いだわ」「それを言うなら、筋違いよ」「そんな細かい事はどうでも良いじゃない!」「……おいおい、大きな声を出すんじゃない」割って入ったのは松原先生だ。ポロシャツにスラックスだったが、女生徒にき...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪18

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 17

    何処かで虫が鳴いてはいるものの、まだ夜は寒くはなかった。さとみと百合恵は並んで歩いている。「百合恵さん……」さとみは立ち止まり、横の百合恵を見上げる。「うちの親をどうやって説得したんですか?」「あら、気になる?」百合恵はさとみに笑顔を向ける。「さとみちゃん、ご両親の趣味って知っているかしら?」「え?趣味?」さとみはおでこをぴしゃぴしゃと叩き始めた。「う~ん、趣味かぁ……お母さんは海外ドラマにはまっているし、お父さんはラノベにはまっているし……」「ふふふ……さとみちゃんって、ご両親の事、よく見ているのねぇ」百合恵は言うと、さとみを抱きしめた。「偉いわね。……でも、違うわ。お二人には共通の趣味があるのよ」「……それは知りません……」百合恵の着ているジャンプスーツの前ファスナーが少し開いていて、そこから豊かな胸が見え...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪17

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 16

    夜、さとみは自分の部屋で机の上の目ざまし時計を見ながらため息をついていた。さっきから何度も見直しているが、やっと六時半を回った所だった。……時間って、気にしないとあっと言う間なのに、こうやって待っているとちっとも進まないわね。さとみは相対性理論を組み立てたアインシュタイン博士の様な事を思う。夕食もそこそこに、ピンクののTシャツにオーバーオールに着替えていた。自分なりに動きやすい服装を選んだのだ。椅子に座って時計を見ながら、祖母が縫い付けてくれたイチゴのアップリケのあるポシェットの肩紐を弄んでいた。このアップリケは、さとみと同じように霊と話が出来た祖母が守護となって共に居てくれる証しだった。さとみは待っている間に、うとうとしてしまった。部屋のドアがノックされたのと、おでこを机にぶつけたのが一緒だった。「何?今の音...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪16

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 15

    さとみは、学校を出て、とことこと繁華街の方へと歩いた。以前は色々と悪い噂のあった所だったが、繁華街の主の様な地縛霊をさとみが鎮めてからは、すっかり様子が変わり、穏やかなものになっていた。実はさとみが大活躍をしたのだが、さとみ自身はそんな自覚が無かった。怨みを膨らませ周囲に性悪な霊を従えた主だった地縛霊が、優しく穏やかな霊になったのを素直に喜んでいた。……久し振りだわぁ……さとみは思う。行き交う霊たちも、皆穏やかで平和そうだった。さとみに手を振る霊もいる。さとみも振り返す。何も知らない人がさとみを見ると、何もない所に手を振ってにこにこしている、あんまり関わりになりたくない少女だと思うだろう。しばらく繁華街を歩いていると、通りの角から、裾が足首まである赤いチャイナドレスを着たスタイルの良い美人が、ふらりと現れた。「...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪15

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 14

    「話は分かったけど、それとわたしと、どう関係するの?」さとみはしのぶを見て言う。「先輩、今日の夜、空いていますか?」「は?」突然のしのぶの言葉に戸惑うさとみだった。そして、通訳を求めるように朱音を見た。「……どう言う事?」「今夜、再び北階段に行くって言う事だと思います……」「そうです。母は今夜が夜勤で、父はまだ赴任先から戻って来ていないんです」「でもさ、松原先生は?」「松原先生の企画です。どうしても見失ったものを確認したいのだとか……」「で、それとわたしと……」「先輩って、霊が見えたり話したり出来るんでしょ?」しのぶがずいっと顔をさとみに寄せる。さとみは思わずからだを引いた。「だったら、その正体も分かるんじゃないかなって思って」「そうかも知れないけど……」さとみは豆蔵の話を思い出す。「……危険な霊とかだったら、...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪14

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 13

    学校に忍び込んだ……と言うのは大袈裟だが、松原先生は職員用の出入り口の鍵を持っていて、それで入ることが出来た。「どうして、先生がそんな鍵を持っているの?」さとみが訊く。「当直か何かだったのかしら?」「ははは、先輩って面白いですね」しのぶが笑う。「今時、当直なんて無いですよ。警備会社が巡回しているんだそうです」「そう……」さとみは憮然とする。なんだか一人世間知らずで馬鹿を見た感じだ。「それで、松原先生がどうして鍵を持っていたのよ?」「先輩、そう、ムキにならないで下さいよ」しのぶは笑いを堪えている。「わたしは、どうして鍵を持っているのかなんて訊きませんでしたから、分かりません。でも、先生は結構手慣れた感じでセキュリティを解除して鍵を開けていました。場慣れしてそうでしたね」「そうなんだ……」……学校に入った松原先生の...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪13

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 12

    「……あの、話が長くなるんですけど……」しのぶが言う。さとみは自分の席に座りなし、二人には隣の席を薦めた。しのぶは、さとみの前の席の椅子を、さとみの方に向け直して机越しに向かい合うように座り、朱音は通路を挟んださとみの隣の席に横向きに座り、組んだ脚を通路でぶらんぶらんとさせている。「……真夜中になると、校舎の一番北の階段が、一段増えるんです」しのぶは前置きも無く話し始める。話しながら、じっとさとみを見つめている。「知ってました?」「いえ、知らないわ……」さとみはしのぶの深刻な話し方に押されたが、すぐに反論する。「……でも、それって、数え間違いとかじゃないの?それに、真夜中じゃ、誰も数えになんて行けないじゃない?単なる、学校の都市伝説版なんじゃない?」「先輩……」しのぶはため息をつく。「本気でそんな事を言っている...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪12

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 11

    「こら!のぶったら!何て声出してんよう!」朱音がしのぶを叱る。さとみも、はてなマークを頭上に浮かべまくった様な顔でしのぶを見ている。「……先輩……」しのぶはふらりとさとみの方へ一歩近寄る。顔色が悪くなっている。「何にも見えないって、本当ですか……?」「……ええ、本当よ……」さとみは恐る恐る答える。霊は怖くはないが、こう言う得体の知れない人間は怖いさとみだった。「何も憑いていないわ……」「あの……見間違えとか……」「のぶ!さとみ先輩に失礼でしょ!それに、先輩はちゃんと霊が見えるんだって話をしたじゃない!」「だって……」「……あのさぁ」少し落ち着きを取り戻したさとみがしのぶに向かって言う。「どうして、見間違えだって思うの?」「だって、わたしには大守護神ヌトが守ってくれているんです」しのぶはきっぱりと言う。「それが見...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪11

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 10

    放課後が来た。さとみは開きっ放しの教室のドアをちらちらと見ている。「姐さん、気になりますか?」教室にいるアイが言う。「本当にイヤなら、わたしが始末しますけど……」「いや、大丈夫よ。一年生の娘、わたしと話がしたいだけだから」「でも、ちょっと生意気そうな感じでしたね」アイは朱音を思い出し、むっとした顔をする。「やっぱり、立場ってものをしっかりと教え込まないと」「あんな感じだけど、意外としっかりとしていたわよ」「そうですか?姐さんがそう言うんなら……」アイは答えるが納得はしていないようだ。「舎弟は姐さんの御意向に口を挿むのじゃありませんからね」アイは自分に言い聞かせるように言う。隣に立つ麗子はそっとアイと腕を組んだ。「アイ、帰りましょ?今日のさとみは後輩ちゃんの事が気になっているみたいだから」「でも……」アイはさとみ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪10

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 9

    「姐さん、今日はあの一年生、来ませんね」翌日の昼休み、麗子と並んでさとみに机の前に立っているアイが廊下を見ながら言った。仲直りが充分に出来たようで、アイと麗子はべったりとくっついている。「そうね、昼休みは来ないって言っていたから……」さとみも気になって廊下を見る。「でもね、放課後に来るって言っていたわ。お友だちを連れて……」「姐さん」アイが残忍そうな笑みを浮かべる。「そいつらが邪魔だって言うんなら、二度と来られないようにしてやりますよ……」「あら、アイ、何をどうするつもりなの?」麗子が興味津々な顔でアイに訊く。「前に話していた、特殊なお友だちの手を借りて、埋めるか沈めるか売り飛ばすかするって言うの?」「お、おい!麗子!」アイが慌てる。「余計な事を言って、姐さんを驚かせるなよ!」「だって、アイったら、自慢げに言っ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪9

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