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お話 https://blog.goo.ne.jp/shin-nobukami

日々思いついた「お話」を思いついたままに書く

或る時はファンタジー、或る時はSF、又或る時は探偵もの・・・などと色々なジャンルに挑戦して参りたいと思っています。中途参入者では御座いますが、どうか、末永くお付き合いくださいますように、隅から隅まで、ず、ず、ずぃ〜っと、御願い、奉りまする!

伸神 紳
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2007/11/10

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  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 15

    「こ、これくしおん……?」みつは首を傾げる。「ふふふ、丁髷(ちょんまげ)時代の女子では分からないか」ミツルは笑う。「コレクション。君に分かるように言うと、物などを集める事だよ」「ふざけた事を申すな!」みつが刀を構え直す。「わたしたちは物ではないぞ!」「ああ、分かっているよ。君たちは物ではない」ミツルはうなずく。「ふふふ、でも、どこにも行けない、籠の鳥と同じなのさ」「何と言う卑劣な!」冨美代が怒りに肩を震わせる。「わたくしと嵩彦様は時代に囚われていました。それを脱け出したと言うのに、今度はあなたの詰まらぬ卑劣な個人の思いに囚われてしまった。女性が女性を好きになるなど、それこそが倒錯でしょう!」「それそれ!」ミツルは手を叩いて笑う。「明治の淑女の怒りに震える表情は、わたしの胸をぞくぞくさせる……とっても良い……」「...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪15

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 14

    「とにかく、この事をお伝えしなきゃならねぇ」豆蔵は窓ガラスを叩く。みつが寄ってくる。「どうしたのです、豆蔵さん?」みつが怪訝な顔をする。「何か分かりましたか?」「みつ様……驚かねぇで聞いておくんなさい」豆蔵は言うと、一呼吸置く。「あっしらも中へ入ぇれなくなりやした」「え?まさか……」みつは言うと、自らを外に出そうと窓に向かう。しかし、窓に遮られて出られない。壁も同様だった。「じゃあ、わたしがやってみるわ」そう言って虎之助も試してみるが、同じだった。「豆蔵さん!わたしたちも出られません!」みつは言う。「どうしたものでしょう……」「嵩彦さんの話じゃ、黒尽くめの男の格好をした女がいるんだそうですぜ」「男の格好をした女……?」みつは自分の格好を見る。「わたしのような……?」「いえ、洋装だそうで……」「冨美代さん」みつは...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪14

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 13

    「それじゃ、嵩彦さんからもお話を聞かせて頂きやしょうか」悲しそうな表情の嵩彦に豆蔵が言う。「なあ、豆蔵さん、いきなり聞くなんて気の毒じゃないか?」竜二が言う。「好きな相手に手が届かないって、悲しい状況なんだぜ」「そうは言いやすがね、悲しい悲しいって聞かされても、何の足しにも無りゃしやせん」豆蔵は言うと嵩彦を見る。「だったら、どんな状況だったかを聞いた方が良い」「そうかもしれないけどなぁ……」「いえ、それで良いのです」嵩彦が弱々しい声で言う。二人が嵩彦を見ると、無理に作ったような弱々しい笑顔を見せた。「確かに、悲しんでばかりでは、何も解決いたしますまい」「それが良うござんすよ」豆蔵は言って大きくうなずく。「さあ、話して下せぇ。力になりやすよ」「では……」嵩彦もうなずく。豆蔵の言葉に力を得たようだ。「僕と冨美代さん...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪13

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 12

    「嵩彦様とわたくしは結婚の誓いを致しました。それからの日々も楽しゅうございました……」冨美代が目を閉じて、懐かしむような表情で語り出す。「ふと、嵩彦様が、今時の学校を見てみようとおっしゃったのです。それはとても楽しそうに思えましたので、わたくしも同意致しました。それからは昼夜を問わずに見て回っておりました。元気にはしゃぎまわる幼稚園の子供たち、学年が進むにつれて大人びて行く小学生、心の成長とからだの成長との差に悩む中学生、大人予備軍の高校生、本当に難しい学問に取り組む大学生(もちろん名ばかりの大学もございましたが)、にぎやかな昼間と、しんとした夜の校舎の対比も面白うございました。嵩彦様は学問熱心でございましたので、大学に大変興味をお持ちで、学生に混じって講義を聞いていらっしゃいました。わたくしは子供たちの教育に...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪12

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 11

    「みつさん、あれは……?」虎之助がみつを見る。みつはじっと窓辺の娘を見つめている。「あの娘が内側の手形の主でしょうね」みつが言う。「と言う事は、そろそろ窓の外側に……」皆はしばらく窓を見つめていた。すると、からんころんと下駄の音が聞こえてきた。そして、窓の外側に学生帽を被った色白で優男の若者の顔が覗いた。彼が嵩彦なのだろう。娘と同じように思いつめた表情だ。黒の学生服に黒のマントを羽織っている。明治時代の学生と言った様子だ。この若者もみつたちが目に入っていないようだ。若者は娘が窓に当てた手に重ねるように外側から手を当てる。「冨美代さん……」冨美代と呼ばれた娘は何度もうなずく。「嵩彦様……」冨美代の頬を涙が伝う。「冷たい硝子窓では、嵩彦様の温もりが感じられません……」「僕も同じです。薄い硝子なのに、僕と冨美代さんの...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪11

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 10

    豆蔵とみつが三階に行くと、虎之助と竜二が廊下をうろうろしていた。「お二人さん、何をやっているんで?」豆蔵が怪訝そうな顔で尋ねる。「勢いで三階に来たんだけど、言っていた用具室がどこだか分からなくってさ」竜二がぽりぽりと頭を掻く。「向こう端からひと部屋ずつ見て回っていたところだったんだ」竜二は廊下の東端を指差す。まだ三部屋しか見終わっていないようだ。「で、まだ見つかっていねぇって事で?」「そうなのよ」虎之助が言う。「まだ半分も終わっていないわ」「じゃあ、お二人で手分けすりゃあよかったじゃねぇですか」豆蔵は呆れたように言う。「竜二さんはあっちから、虎之助さんはこっちから、とか」「イヤよ!」虎之助がきっぱりと言う。「好き同士が離れるなんて出来ない相談よ!それに、万が一、窓の手形の恋人同士みたいに離れ離れになったら、だれ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪10

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 9

    「……ってなわけです」豆蔵がさとみから聞いた経緯を話し終えた。ここは深夜の公園だ。ここからさとみの家が見える。さとみの部屋はすでに灯りが消えている。豆蔵の周りには、みつと竜二と虎之助がいる。「……それって、明らかに愛し合う男女だわ」虎之助が言って、竜二の腕を強く握る。「ね?竜二ちゃんもそう思うでしょ?まるで、わたしと竜二ちゃんみたいだって、そう思うでしょ?」「なあ、虎之助。そんなに強く腕を握られたら、痛いじゃないかよう!」竜二は返事をせずに文句を言う。「それに、お前はどう見えようが、男なんだぜ?」「でもね、心は乙女よ。そこいらの娘には負けないんだから」虎之助は言うと、ちらとみつを見る。みつは視線を感じたが、敢えて無視した。「で、豆蔵さん、どうしようと言うんですか?」みつが言う。「話では、さとみ殿たちが明朝確認を...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪9

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 8

    心霊サークル「百合恵会」の方針が決まった。明日の朝、早い時間に学校に来て用務員の高島さんを待つ。松原先生の話だと、用務員の人たちは七時には来るそうだ。だから、それよりも前に学校に来なければならない。そこで、時間は六時半に校門前に集合となった。「ええええっ!」不満の声を上げたのは麗子だった。「その時間だと、わたし四時起きしなきゃならないわよう!」「どうして?」さとみが不思議そうな顔をする。「起きて着替えて前の日に作ったおにぎり食べながら出てくれば良いだけでしょ?」「さとみ、あなたと一緒にしないでよね」麗子がむっとする。「起きて軽く美容体操してそれからシャワーを浴びてバランスの取れた朝食をしっかりと食べて着替えて乱れが無いかを確かめてそれから登校しなきゃならないのよ」「……麗子、毎朝そんな事してるの?」さとみが呆れ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪8

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 7

    午後の授業中、麗子は帰る言い訳を考え続けていたが、結局見つけられなかった。「さあ、行くわよ」さとみはにやにやしながら麗子を見る。「ほらほら、みんなを待たせちゃいけないわ」「うるさいわね、分かったわよ!」麗子はさとみに連れられて北側校舎へと向かう。「……ねぇ、ここって使われていないんじゃなかったっけ?」「そうよ」さとみは平然とした顔で言う。「ここの階段で、ちょっとあったけど、もう解決したわ。今ではな~んにも出ないから。安心して」麗子はイヤな顔をする。反対に、さとみはにやにやしている。「……あなた、性格悪くなったんじゃない?」麗子がむっとした顔で言う。「ちょっと会長になったからって偉くなったとでも思ってんの?」さとみはそれに答えず、にやにやしながら階段を上がる。三階のサークルで使っている空き教室に着いた。すでに、朱...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪7

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 第三章 窓の手形の怪 6

    用務員室を出て教室に戻る。「麗子。あそこまで言うんだから、やっぱり明日一緒に行こうよ」途中でさとみは麗子に言う。しかし、麗子は知らん顔をしている。「麗子ったらぁ!」「イヤよ!」麗子は立ち止まり、少し上半身を折り曲げて、さとみの顔を正面から見つめる。「そんな事、出来るわけないじゃない!」「でもさ、愛し合う二人の悲しみを救うんでしょ?それを言い出したのは麗子だよ」「わたしは言うだけよ」麗子は言うと、すっとからだを伸ばす。「たしかに悲しい話だと思うわ。でもね、わたしは、怖いのよ。こ、わ、い、の!」「な~に、開き直っているのよう!」さとみはぷっと頬を膨らませる。「せっかくの『弱虫麗子』返上のチャンスじゃないのよう!」「わたしね、さとみが思っている以上に、その手の話はダメなの!」「だから、そんな事で開き直らないでよう!」...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪第三章窓の手形の怪6

  • お知らせ

    わたくしのお話、いつもお読みいただき感謝しております。さて、最近ですが、わたくしのお話、「コーイチ物語3」とか「ジェシル、ボディガードになる」とか長くなる傾向があります。始まりの方を読み返したいけれど、追いかけるのが大変だと言われたことがありました。そこで、先ず現在掲載中の「霊感少女さとみ2」を章分けしました。読み易くなると良いかなと思ったからです。これが良いようでしたら、他のものにもやってみようと思います。いついつまでにと言うのはお約束できませんが、進めて行きたいと思っています。これからもよろしくお願い致しまする~。お知らせ

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 57

    「この学校の各階に、僕達用務員が使う道具をしまってある小さな部屋があるんだけどね。そうだなぁ、教室の広さの五分の一くらいの細長い部屋なんだけど……」高島の話によると、三階の用具置き場の部屋の窓に手形が付いていたのだそうだ。窓は横開きのサッシ窓で二面付いている。「どんな手形なんですか?」さとみが訊く。「大きくって人の物とは思えない、とか……」言いながらさとみはちらちらと麗子を見る。麗子は無表情だったが、内心は逃げ出したいと思っているはずだと、さとみは思っている。それが楽しくて仕方がない。本当に今日は「いじわる少女さとみ」だった。「確かに、手の平から指までしっかりとハンコの様に跡が残ってはいたんだが、そんな変なものでは無く、普通の人のサイズだね。僕はその手形に自分の手を重ねてみたから」「え~っ……」麗子は絞り出すよ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪57

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 56

    昼休み、弁当箱を入れた巾着袋を持ってさとみは席を立った。「何、さとみ?」麗子が声をかける。「どこかへ行くの?」「うん、ちょっとね。話を聞きたい人がいて……」「お弁当持って?」「うん、話を聞きながら食べようかなって思っているのよ」「ふ~ん」麗子は開いたばかりの弁当箱に蓋をした。「わたしも行くわ」「え?」「どうせ、あれでしょ?」麗子は何気ない風を装って言う。しかし、声が若干震えている。「霊がどうしたこうしたって話でしょ?」「ええ、まあ、そうだけど……」さとみは戸惑う。「どうしたの?熱でもあるの?あの『弱虫麗子』が?」「うるさいわねぇ」麗子がむっとする。「わたしだって心霊サークルのメンバーよ」「今、心霊サークルって言った?」さとみは目を丸くして麗子を見つめる。「え?あの麗子が?あの弱虫麗子が?心霊?」「やかましいわ!...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪56

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 55

    翌朝、さとみは鼻歌を歌いながらご機嫌で登校していた。昨夜はみんな(とは言え霊体だが)が集まってくれて、久々に楽しい時を過ごすことが出来たからだ。疲れもすっかりどこかへ行ってしまった。綺麗に晴れた空を仰ぎながら、さとみの鼻歌が益々冴えてくる。途中の四つ角を曲がった所で、麗子とアイに会った。「あら、さとみ!」「会長!」二人は驚いたような、それと同時に何となく気まずそうな表情をした。二人は組んでいた腕を慌てて解いていた。「あら、お二人さん、おはよう」さとみは機嫌良く挨拶をする。「昨日はパフェを食べたのかしら?」「……さとみ」麗子がじっとさとみの顔を見る。「どうしたの?何か良い事でもあったの?」「たしかに、会長、今日は晴れやかなお顔です」アイも言う。「何があったのか聞いても良いですか?」「ふふん!」さとみは楽しそうに鼻...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪55

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 54

    夜になった。学校を出て、しのぶと別れて家に帰って来て、制服のままベッドに寝転がると、そのまま寝入ってしまった。井村先生が白衣の生地のドレスを着て、下顎をかたかた鳴らし楽しそうな骸骨と、優雅に社交ダンスを踊っているという夢を見ていた。その気持ち悪さにさとみは飛び起きた。息が上がっていて、イヤな汗が全身を伝っていた。「うへぇ……」さとみはつぶやく。目覚まし時計はまだ八時だ。シャワーを浴びようと立ち上がると、ぐううううっとお腹が鳴った。そう言えば、晩ごはんを食べていない。母親はさとみを放っておいているようだ。「全くぅ!いつもは『片付かないからさっさと食べちゃって』とか言うくせにぃ!」ぶつくさと文句を言いながら制服を脱いでいつものピンク色のスエットの上下に着替える。部屋を出ようとすると、壁の所にみつが現われた。正座をし...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪54

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 53

    「先生、それって、どう言う?」しのぶがずいっと前に出る。「そこの所、詳しく!」……うわっ、しのぶちゃんの心霊モード!さとみはうんざりする。昨夜の疲れが一気に出始めたさとみは、早く帰ってベッドに転がりたかった。しかし、しのぶはきらきらした瞳を井村先生に向け、帰ろうとしない。「詳しくって言われても、わたしも今日聞いたのよ」井村先生が言う。「用務員の高島さんがね、話してくれたのよ。骸骨がグラウンドで壊されていたじゃない?わたしは生物の担当だからって事で、後片付けをするように教頭から言われたわけ。その時に高島さんが手伝ってくれたのよ」「先生、ちょっと待ってください!」さとみが割り込む。「警察とか来ないんですか?これだけの事件なのに?」「学校ってね、面倒を避けたいものなのよ」井村先生はため息をつく。「一通り点検し回って、...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪53

  • 霊感少女 さとみちゃん 2

    竜二と虎之助「さあ、竜二ちゃん!お料理を作ってみたわ。食べてみて!」」「おい、虎之助、お前は霊体だぜ?料理なんか作れるわけないだろう?」「ひどいわぁ!知り合った料理人の霊体に、霊体でも作れる料理を教わったのよ!」「泣くなよう……分かった、食べるからよう……」「……どう?」「うん、美味い!」「嘘よ!霊体は味なんか分からないのよ!ひどいわぁ!」「おい、泣くなって……どうしたら良いってんだよう!」(作者註:竜二さん、先に声をかけたんだから、自分で責任を取りましょう)のぶとかね「ねえ、のぶ。最近何かない?」「何かって?」「わたしたち、心霊サークル『百合恵会』のメンバーじゃない?だったら、何かって言ったら分かるでしょ?」「ああ、怖い事ね。ちゃんと言えば良いじゃない、かねっていっつも中途半端だから、分からないわ」「のぶが、...霊感少女さとみちゃん2

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 52

    「……それじゃあ、行きましょう」しのぶが言う。「井村先生には放課後すぐに行くって言ってあるんです。せっかちな先生でもあるんで、遅れると中止になっちゃうかもしれません」「うわぁ!じゃあ、急ぎましょう!」ぽっちゃりめのしのぶと、とことこ走りのさとみは、全力で急いで(これは本人たちの意識の問題だ。傍で見ているとちょっとだけ急ぎ足に見えるだけだった)理科の準備室へと言った。息を切らしながら、しのぶはドアのノックし「失礼……しますぅ……」と息も絶え絶えに言ってドアを開けた。井村先生はいなかった。「……井村先生はどちらに?」「第一理科室に行くって言って出て行った」年配の物理担当の男の先生が言った。「待っていた生徒が来ないから、用事を済ませて来るって言ってね」「第一理科室、ですか」しのぶはつぶやく。「もう少し、待っていてくれ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪52

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 51

    放課後になった。既に朱音としのぶ、それにアイがさとみの教室の外で待っていた。「さあ、麗子、行くわよ」さとみはにやにやしながら麗子に言う。「今日で『弱虫麗子』が返上できると良いわね」「ふん!わたしは弱虫なんかじゃないわよ!」「はいはい」さとみは麗子の背中を押しながら教室を出る。アイたちが一斉にさとみに向かって頭を下げる。通りかかる生徒たちが怪訝な顔をしながら通り過ぎて行く。「さとみ会長、話はつけておきました」しのぶが言う。「ですけど……」「どうしたの?」「井村先生って、人見知りだって話したじゃないですか。だから、わたしと会長だけなら良いって言うんです……」「何だよ、折角来たって言うのによう!」アイがぶんむくれる。「そんなヤツが先生なんかやるなってんだ!」「わたしも、そう思いました」朱音がうなずく。「でも、相手が先...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪51

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 50

    「会長!」そう言って一番にさとみに前に立ったのはアイだった。さとみを見ながら目に涙を浮かべる。「会長……昨日はすみませんでしたぁ!」アイは言うと上体を九十度に折り曲げてさとみに深々と頭を下げた。「結局は、会長や姐さんに助けてもらっちゃって……」「そんな……」さとみは戸惑う。アイの瞳から落ちる涙が屋上のコンクリート床に二つの染みを作る。「でもね、アイのおかげで難を逃れることが出来たのよ」「……え?」アイが顔を上げる。溢れた涙が頬を伝う。「でも、会長、わたしは何もしていません。むしろ、最初にぶっ飛ばされて気を失っていました……」「いいえ、十分な助けになったのよ」「……そう、なんですか……」アイは怪訝な顔をしている。「……まったく覚えていないんですけど……」「アイ先輩、凄いじゃないですかあ!」しのぶがアイの左腕にしが...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪50

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 49

    翌日、昼休みに朱音としのぶがさとみの教室に来た。教室の前の通路にアイと麗子がいた。「アイ先輩!麗子先輩!」朱音が元気よく声を掛ける。アイと麗子が振り返ると、朱音は手を振り、しのぶはぺこりとお辞儀をした。そのまま二人はアイたちの傍に行った。「さとみ会長は?」しのぶが言いながら教室を覗く。さとみに席は空いていた。「おトイレですか?」「さとみは今日はお休みよ」麗子が言う。「色々あって疲れたんだって」「色々……ですか?」しのぶが不満そうに言う。「せっかく、面白い話を持って来たのに……」「なあに、面白い話って?」「あれだろう?」アイがつまらなさそうに言う。「グラウンドにぶっ壊れた骸骨標本が転がっていたってヤツだろう?」「なあんだ、もう知っていたんですか……」しのぶはアイ以上につまらなさそうに言う。それから、ふと気がついた...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪49

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 48

    百合恵は影を見上げた。その表情はいつもの百合恵ではなかった。殺気立っていて、凶悪なものだった。「……お前……許さないぞ……」影は相変わらず揺れていた。百合恵の全身から青白い靄のようなものがうっすらと湧き上がる。百合恵は影を睨みつけたまま立ち上がる。「お前……さとみちゃんを……」百合恵が一歩前に出た。「あのう……」不意に百合恵の背後から声がした。百合恵が振り返ると、アイが立っていた。百合恵の表情が元に戻る。靄がすっと消えた。「アイちゃん……」百合恵は驚く。それから安堵の笑みを浮かべた。「良かったわ。無事だったのね……」「いえ、あの」アイは困惑の表情で答える「あの、さとみです……」よく聞くと、アイから発せられる声はさとみだった。「さとみちゃんなの?」百合恵はしげしげと見る。「本当に?」「……はい。自分のからだがダメ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪48

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 47

    黒い影は何事もないかのように、こちらには全く関心が無いかのように、ゆらゆらとしている。「みんな、この場から逃げて!」百合恵の声がした。さとみが見ると、骸骨の足の縛めが無くなって、やっと起き上がった百合恵がグラウンドに座り込んでいた。「見たでしょ!そいつは霊体を消し去ることが出来るのよ!だから、早く!さとみちゃんはからだに戻って!」「ですが、百合恵殿……」みつは切っ先を影に向けたままで言う。「このまま逃げるなど……権左の仇も討たねば!」そこへ豆蔵が現われた。辛そうな顔をしている。「みつ様!百合恵さんの言う通りに致しやしょう!あいつにはあっしらの武器は効かねぇ!」「くっ……」みつは、豆蔵の礫が通り抜けてしまった事、また、自分の刀が影に奪い取られた事を思い出した。刀を鞘に納める。「承知!」みつは悔しそうに影を睨みつけ...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪47

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 46

    「オレは権左と言ってな……」男は、権左は話し始めた。「悪の限りを尽くしていたがとっ捕まって、ここで処刑された。オレはまだまだやり残した悪事がある。そう思いながら磔台の上で槍で突かれた。からだから解き放たれたオレは、悪霊となって物に憑く事が出来た」「物だと?」「そうだ。子供の好きそうな人形に憑いて子供を唆し、一家皆殺しをさせたり、骨董品に憑いて、高い銭を払って買い取った野郎の時には、その夜の内に憑いた骨董品をずたずたにして無駄金にして自害させたり……まあ、他にも色々とな。生きていた時よりも散々楽しい思いを続けていた」「屑外道めが!」みつが吐き捨て、腕組みを解くと素早く刀を抜いた。切っ先が権左を捕らえる。「権左!覚悟しろ!」「だから、待てと言っているだろう!」権左は両手を前にしてみつを制する。「散々に悪事を続けてき...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪46

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 45

    「さとみ殿!お気を確かに!」みつの声が聞こえたと同時に、骸骨は吹き飛んだ。みつが駈け寄って、骸骨に体当たりを食らわせたのだ。「……みつさん……」ぽうっとしていたさとみが我に返った。「あっ、みつさん!気を失っていたんじゃなかったの?」「ははは」みつは笑う。「あれしきの事でどうにかなるような、ヤワな修行はしていませんよ。ただ、あれ以上首を絞められるとアイ殿のからだが危なかったのです」「それで、やられた振りをしたのね」「そう言う事です」みつは言うと、再び形を成して行く骸骨を見る。「この者の動きは見切っています。次は負けません。それよりも……」みつは顔を上げ、漂う黒い影を見る。「あれが親玉のようですね……」みつは憎々しげに言う。「この前の時は、わたしの刀を取られてしまいました……」北階段でみつがこの影に斬りつけた時、刀...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪45

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 44

    「ふざけた事をぬかすな!」しゃれこうべの下顎が激しく鳴る。「どう見てもお前はあの時の小娘だ!」「あのさあ……」さとみはうんざりした顔をする。「あなた、封じられて長い年月が経ったって言っていたじゃない?霊は齢を取らないだろうけど、生身って齢を取るものよ。長い年月が経ったんなら、小娘でいられるわけないじゃない?」「あの時、オレは小娘と思い油断した……まさか封じられるとは思わなかった……」「……ダメだわ、全く話を聞いていない……」さとみは困惑する。しゃれこうべの鬼火の瞳が揺れる。「簡単に殺せるだろうと思っていた。だが、封されてしまった。小娘のくせに強力だった……恨んだ。呪った……」「自分が悪いとは思わないの?」「ふざけやがって。何も見えず聞こえず、暗い中にずっと居た。憎しみだけがオレの支えだった……」「やっぱり、話を...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪44

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 43

    みつの蹴りが骸骨の骨盤を撃つ。骨盤が飛ばされ、骸骨は崩れ落ちる。みつはグラウンドに転がったしゃれこうべを骨盤とは反対側に蹴り飛ばした。残りの部分も四方へ蹴散らした。「さあ、さとみ殿!逃げて下さい!」みつがさとみに向かって叫ぶ。「これだけ散り散りになれば、元に戻るにも時が掛かりましょう!」「でも、みんなを置いて行けないわ!」「何を言っているんです!こやつの狙いはさとみ殿ですぞ!」さとみを見ている豆蔵がうなずく。生意気に竜二までもがうなずいている。「そうよ、さとみちゃん」百合恵が言う。「こいつを動かしている邪悪霊は強力よ。躊躇っていたらやられちゃうわ!」「でも、どこまでも追いかけて来るかも……」「まだ学校の外には出られないと思うわ。いわゆる結界になっているはずよ」百合恵がにやりと笑む。「さあ、早く!言う事聞かないと...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪43

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 42

    「おい、百合恵姐さんに何をふざけた事をしてやがるんだ!この着ぐるみ野郎!」そう怒鳴りながら走って来たのはアイだった。アイには、骸骨の着ぐるみを着た変な野郎が、百合恵に襲い掛かろうとしているように見えたのだ。「くたばれ!」アイは声を荒げると、右脚で骸骨の左側頭部を蹴りつけた。硬いブーツで蹴られ、鈍い音がして骸骨はグラウンドを転がった。その際に骸骨は虎之助の手首を放した。骸骨は動かなくなった。豆蔵はアイのスカートの中が覗ける位置にいたので、顔を赤くしている。みつは立ち上がり刀を鞘に納めた。竜二は恐る恐る顔を上げ周囲を見回す。虎之助は竜二の下でまだ気を失っている。竜二は慌てて虎之助から離れた。「百合恵姐さん!大丈夫ですか?」アイが百合恵の前に膝を突く。「立てますか?」「ありがとうね、アイちゃん。……ちょっと左の足首を...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪42

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 41

    「で、百合恵姐さん、どちらへ行かれるんで?」アイが運転している百合恵に話しかける。「わたしは、出入りとしか聞いていないんですけど」「出入りぃ?」さとみが驚いた顔で百合恵を見る。「百合恵さん、アイにどんな事を言ったんですか?」「ふふふ……」百合恵は楽しそうだ。「大した違いはないんじゃない?さとみちゃんが呼び出しを受けたんだから」「えっ!何ですか、そりゃあ!」アイが笑い出した。「会長を呼び出すなんて、身の程知らずも良い所ですね。わたしがギッタンギッタンにグッチャングッチャンにしてやりますよ」「ははは……」さとみは笑ってごまかすしかなかった。車は学校の近くに止まった。皆が車を降りる。グラウンドが見えている。「ほう……学校の近くじゃないですか」アイがにやりと笑う。「と言う事は、他所の学校のヤツらって事ですか?ははは、返...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪41

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 40

    さとみは着替えるとリビングに降りてきた。両親はソファに並んで座ってゲームをしていた。「……どうしたの、さとみ?」母親がさとみの格好を見て驚く。「もう寝るんじゃなかったの?」「それじゃまるで、お出かけじゃないか」父親も驚く。「しかも……無二屋のポコちゃんじゃないかあ!」父親は言うと笑い出した。「お父さん!それを言っちゃダメですよ!……でも、本当、ポコちゃんだわあ!」母親も抑え切れずに笑い出した。「何よう!二人して!この前とは違う格好じゃないのよう!」さとみはぷっと頬を膨らませる。普通のジーンズにピンク色のTシャツだ。前回、散々笑われたので、さとみなりに違う格好をしてみたのだ。イチゴのアップリケを縫いつけたポシェットを肩からたすき掛けしている。「……いや、なんて言うか、存在そのものが、ポコちゃんだよなあ」父親の笑い...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪40

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 39

    「何よ、何よ、何よ!」さとみは竜二の真似をして言い返す。「突然湧いて出て、人の名前を連呼しないでよ!」「それどころじゃないよう!」竜二はさとみの嫌味を取り合わない。さとみはぷっと頬を膨らませる。「……まあまあ、嬢様……」豆蔵が中に入る。「……で、竜二さん、どうしなすった?嬢様の話だと、骸骨の見張りだったそうだが?」「そうなんだよ、豆蔵さん!」竜二は言うと豆蔵にうなずいて見せる。「それがさ、大変な事になっちまったんだよ……」「大変な事……?」さとみがむっとした顔のままで言う。「まさか、寝ちゃったんじゃないわよね?そして、その間に骸骨が居なくなっちゃったとか……」「馬鹿言うなよう!オレは寝ちゃあいないよう!」竜二は口を尖らせる。「ただ……」「ただ、何よ?」「骸骨が動いたのは本当なんだ……」「そうなの!」さとみは驚く...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪39

  • 霊感少女 さとみ 2 学校七不思議の怪 38

    夕食も終わり、お風呂も終わった。部屋の目覚まし時計も、そろそろ寝る時間を示している。さとみは大きなあくびを一つする。そして、パジャマに着替えようと、Tシャツを脱ごうとした矢先、みつが姿を現わした。さとみに向かって頭を下げ、挨拶をする。さとみは霊体を抜け出させた。「みつさん、いらっしゃい」さとみは言う。「何かあったの?」「この前のお礼を改めて、と思いまして……」みつは床に正座をし、頭を深々と下げた。「わたしの至らなさから、さとみ殿を窮地に陥らせてしまった事、誠に面目ない事でした。どうか、お許しください」「やめてやめてやめて!」さとみは慌ててみつの前に座り、肩に手を掛けて起き上がらせようとする。しかし、さとみの力ではみつはびくともしない。「わたしたち、友達だし仲間だし。気にする事は無いわよう!」「ですが、一歩間違え...霊感少女さとみ2学校七不思議の怪38

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