はてなブログへのお引越しをしてきました。よろしくお願いします。気が付いたら、gooで、18年もブログを書いていたとは...良く続いたものです。誰かに読んで欲しくて書いていたわけでもないような。自分の記録を残しておくのに便利なツールだったというだけかも知れません。自分でホームページを作ってた時期もありましたが、ブログは、楽ちんだったということです。移行して、これから、更に続けられるのか、発展していくのか謎です。ブログのお引越し
はてなブログへのお引越しをしてきました。よろしくお願いします。気が付いたら、gooで、18年もブログを書いていたとは...良く続いたものです。誰かに読んで欲しくて書いていたわけでもないような。自分の記録を残しておくのに便利なツールだったというだけかも知れません。自分でホームページを作ってた時期もありましたが、ブログは、楽ちんだったということです。移行して、これから、更に続けられるのか、発展していくのか謎です。ブログのお引越し
2021年、第十一回アガサクリステイー賞を受賞し、いまだに本屋にも並んでいる本書を読んでみた。ロシアの女性狙撃手の話ということで、その主人公の意外性には、だれでも、少しは、興味を持つ作品だ。今の、ロシアのウクライナ侵略にも関係するのかしらと思う方もいるかも知れないが、それはない。第二次世界大戦でのナチスドイツとロシアの戦いの中での話だ。4年間の戦いで、ドイツ7百万人、ロシア2000万人の戦死者が出たという。読んでみて、非常に面白く読めたし、銃撃戦の場面の表現には、脱帽するばかりだった。最後にロシア文学者から、感動の書とのコメントがあった。数多くの資料が参考文献として一覧になっており、また、時代背景も監修もされており、しっかりした作品になっている。しかし、どうも、自分には、しっくりこない部分があった。感動も...同志少女よ敵を撃て(逢坂冬馬)
本当に久しぶりに横溝正史の作品を読んだ。これも、新聞のおすすめか何かを見て、選んだものだ。表題の『死仮面』のほか、もうひとつ、逝去直前の作品という『上海氏の蒐集品』という小作品も入っていた。どちらも、そこそこ、面白かった。死仮面のほうは、金田一耕助が登場する。あまり、ストーリーについては、述べるのは、やめにしておこう。死仮面(横溝正史)
『マタギに学ぶ登山技術』という本を流し読みしてみた。マタギには、興味があり、以前、『黄色い牙』という小説を読んだことがある。興味の一つは、どうやって、登山道でもない山を縦横無尽に歩けるのだろうか?熊や他の動物を、どうやって狩猟できるのか?などなどである。本書は、そういった疑問に答えてくれ、かつ、面白い話を聞くことができた。マタギは、無雪期は、猟をしないと聞いて、驚いたが、山菜採りなどには、、山に頻繁に入るらしい。例えば、熊に、銃を持ってなかったとき、突然、出くわしたときである。帽子でも、ザックでも、身の回りのものを放り投げると最初に投げられたものに噛みつく習性があるので、その間に逃げるというのだ。また、熊は、下りに弱いので、下に駆け降りると良いという。マタギに学ぶ登山技術
町田そのこのデビュー作である『カメルーンの青い魚』を含む5編の連作短編集を読んだ。「女による女のためのR-18文学賞」という聞きなれない賞の大賞受賞作なのだが、その選考委員から絶賛されたのがうなづける。素晴らしい才能に満ちあふれた作品群だった。ひさしぶりに文句なしの素晴らしい短編集に出会えた満足感に浸っている。個々にどうこういう必要はないだろう。5編が、どう連作になっているかも面白いし、どんでん返しのような意外性がある作品もあるし、遠藤周作の『私の愛した..』を思い起こす人間愛を感じる作品もある。あえて一つを選ぶとすると『波間に浮かぶイエロー』のどんでん返しと、奇妙な関係が不思議に気に入った。間違いなく別の作品も読んでみたい作家である。夜空に泳ぐチョコレートグラミー(町田そのこ)
やっと、『黒部の山賊』を読むことができた。多分、何かの書評で、この書を知ったのだろうが、表紙のイラストと題名から、興味を持っていた。終戦直後、登山中の学生が、復員兵に撲殺され食料を奪われる事件があった。そんなこともあって、黒部周辺を根城にする山賊がいるという噂が流れた。著者は、山小屋経営に乗り出そうとしていたが、ちょうど、購入した山小屋に、その山賊たちが住んでいたのだ。その山賊たちと、山小屋を再建して奇妙な生活をするようになるのだ。何とも、実話とは、思えないような不思議な話なのだ。いろいろ、面白い話が混ざっており楽しく読めた。定本黒部の山賊(伊藤正一)
オール読物新人賞を受賞して初めての単行本で、書評の評判も良かったので読んでみた。5話も短編集なのだが、どれも、良質の作品に仕上がっている。特に気に入ったのは、幼馴染で、恋人でもある『登』が、活躍する第二話版木どろぼうと第5話火付けだ。母には、捨てられ、父は自殺して、天涯孤独となった主人公のおせんが、周りの人に助けられながら、かつ、気丈な強さを発揮して自活していく姿が描かれる。ちょっと、謎解きのような部分もある。江戸の生活をよく描けている。おせんと登の、淡泊ともいえる男女関係も面白い。最後の『火付け』の終わり方も希望に満ちていてすがすがしい。貸本屋おせん(高瀬乃一)
『このミステリーがすごい!』の文庫グランプリを受賞した本作品を読んでみた。父親が通り魔に殺され、母も失踪。妹も遺体で発見されたうえに、保険金詐欺の疑いもかけられるというどうしようもない状況で、何とか、妹の潔白を信じて、行動する主人公の物語だ。最後の解説の表題で、『二転三転四転五転の力業で読者をねじ伏せてくる』とあるのだが、なるほどとは思うが、ここまで、ひっくり返されるのも、あまり良い気持ちではないなと思った。正直言って、後半は、もう少し、面白い展開を期待したのだが、単に、読者の裏を行くだけをねらった作品になってしまったような気がする。あまり、自分の好みではない。レモンと殺人鬼(くわがきあゆ)
7編からなる短編集『海』を読んでみた。そのうちの2編は、2~3ページと、こんな短い作品読んだことないというものだった。最後の解説で、『スケッチ』という言い方をしていた。それにしても、作品の短さに比べて、最後の解説が、長く感じた。最後には、インタビューも載っていたが、これは、、小川洋子の作品への気持ちが伝わっていた。さて、個々に書き始めると長くなるので、全般を通していえることは、発想や設定が、独創的であることだろう。。また、どんでん返し的な転換も巧みである。でも、最も特筆すべきは、その表現の仕方かもしれない。何とも言えない魅力があるのだ。それほど、ウエットではない、ユーモアもあるのだが、それほど、笑わせたがっているわけでもない。その魅力は、中々、表現が難しいが、はまってしまいそうである。さて、この短編集の中...海(小川洋子)
THE SCARECROW(MICHAEL CONNELLY)
MICHAELCONNELLYの『THESCARECROW』を読み終えた。ハリーボッシュシリーズに出てくるFBI女性捜査官、レイチェルと新聞記者を首になりそうな元カレの主人公の物語だ。主人公は、ある女性から電話があり、自分の息子は、えん罪を着せられようとしていると訴えてきた。調べているうちに、過去、同じようにビニール袋をかぶせて窒息させられ、車のトランクに遺棄された事件があったことに気が付く。引継ぎのための2週間の期間に、最後のニュースの執筆をすべく、主人公は、過去の事件の犯人の収監される刑務所に飛ぶ。2週間と時間が限られていて、スピーディーな展開であったり、ボッシュとうまくいってないレイチェルとの関係修復など、ハリーボッシュものと、ちょっと違うのだが、結構、面白かった。THESCARECROW(MICHAELCONNELLY)
海外ミステリー(洋書)で読んだものを作家別にご紹介します。追加:THESCARECROW(MICHAELCONNELLY)①PRESTON&L.CHILDTHUNDERHEADCABINETOFCURIOCITYBRIMSTONERIPTIDEDANCEOFDEATHTHEBOOKOFTHEDEADTHEWHEELOFDARKNESSCEMETERYDANCEFEVERDREAMCOLDVENGEANCETWOGRAVESBLUELABYRINTH②DANBROWNDIGITALFORETRESSANGELS&DEMONSDECEPTIONPOINTTHEDAVINCICODETHELOSTSYMBOL③DAVIDBALDACCITHEWINNER④DENNISLEHANEMYSTICRIVER⑤HARL...海外ミステリー(洋書)読書記録2025年3月2日
ジェイムズ・リー・バークのMWA長編賞を受賞した本作品を翻訳で読んだ。正直言って、これを原書で読んだら、かなり、理解に苦しんだであろうと思った。翻訳版で読んでも結構、苦労したのだから。最後の解説で、ジェイムズ・リー・バークは、もともとは、純文畑に身を投じていたとのことだ。それで謎が解けた。何とも、その表現は、複雑で、拡張高く、情景描写が多く、ただのハードボイルド作品、ただのミステリー作品ではないのだ。ストーリーとしては、元警察警部補の主人公が、面倒にまきこまれて、ぶちのめした二人組の一人を殺した罪に問われる。実際に殺した片割れが証人になっており、覆すのが、絶望的な状況なのだ。保釈期間中に、何等かの手を打たねば、有罪になり、刑務所送りになってしまう。限られた時間なのだが、なかなか、スピーディーには、話が運ば...ブラック・チェリー・ブルース(ジェイムズ・リー・バーク)
藤沢周平の本著を読んでみた。最近、NHKの大河ドラマで、『べらぼう』を見始めた。大河ドラマを見るなんて、本当に久しぶりだ。そして、見続けている。理由は、時代劇であること。ストーリーも中々、面白いからだろう。本屋にも、蔦屋の特集本が出回っている。そんな中で、読んでみたくなったのだが、読み終えて驚いた。10年前に読んでいたことがわかったのだ。その時の感想が下記の通りだ。”歌麿の生活を想像して、見事に再現した作品。写楽の謎にも迫る部分があり、浮世絵小説として、興味があった。時代小説として、山本周五郎と比較されるが、山本の天才に比べ、地味であり、題材の妙で読ませる感じがした。その蛋白な雰囲気は、歌麿の生活そのものに現れている気がした。”何とも、10年前と今では、ちょっと、異なる感性になっているのかもしれない。歌麿...喜多川歌麿絵草紙(藤沢周平)
WHITE DOVES AT MORNING(JAMES LEE BURKE)
今年初めての洋書として、JAMESLEEBURKEの洋書を読了した。JAMELEEBURKEは、日本では、あまり知られてないかも知れないが、エドガー賞に3度も輝いた、米国のミステリー作家だ。今回の洋書は、図書館にあったのだが、ミステリーとは、ちょっと、異なる南北戦争の中で、南部に住む人間の人間劇を描いた重厚な作品となっている。英語は、情景描写も多く、南北戦争の時代背景などを知らないと、ちょっと、読みにくい感じがした。あたかも、歴史小説?ノンフィクション?とも思えるような登場人物のその後の結末を簡単に書き記すような終わり方をする。エドガー賞受賞作は、翻訳したものしか図書館にはないようなので、今度は、それを読んでみようと思う。WHITEDOVESATMORNING(JAMESLEEBURKE)
宮部みゆきの「孤宿の人」を読了した。裏表紙に著者の時代小説最高峰、感涙の傑作。と書いてあった。なるほどと思わせる作品だ。正直言って、今まで読んだどの作品とも異なる不思議な作品でもあった。不幸な少女、「ほう」が、やさしい人たちに出合いながら生きてゆく姿が描かれる。一方、幕府から押し付けられ幽閉された者を悪霊と領民たちは恐れおののく。その通り、次々に恐ろしい事件が発生する。この二つが、柱になるのだが、いったい、どうなるのか、謎に包まれた話の展開になるのだ。「ほう」という珍しい名前が、感涙につながるから不思議だ。孤宿の人上下(宮部みゆき)
読売新聞の書評で知った本書を読んでみた。玉岡かおるの書は、2度目だが、どちらも設定、発想がユニークだ。本書も、壇之浦で、草薙の剣が、海中に消えたとされるが、その真相を知るため旅に出る若武者の話だ。正直言って、長かったし、少々、緩慢に感じた。冒険旅行記であれば、それなりに、わくわく、どきどきするようなスピーディーな展開が欲しかった。その時代背景の雰囲気を盛り込もうとしたためだろうか?やや、冗長に感じてしまった。魅力のある登場人物と発想であるだけに惜しかった。さまよえる神剣(玉岡かおる)
先日、市川雷蔵の古い映画を3週連続でBSテレビ放映していた。その中で、「剣鬼」というのがあり、思わず見てしまった。少々、荒唐無稽なところがある作品だった。何しろ、犬の子と言われて育ち、馬鹿にされぬように、一芸に秀でろと養父に遺言される。すると、花を育てる特殊な能力を発揮する。更に、馬に負けずに走れる能力もあることに気が付く。更に、居合を練習する武士を見て、居合を習得するのだ。誰の作品かと思えば、柴田錬三郎だったので、その作品が載っている短編集を借りてきたのだ。それは、「人斬り班平」という題になっていた。映画のストーリーと若干、変わっていたが、上記の一芸は、変わらない。上記のほかにも5編の短編があるが、どれも、中々、面白く読めた。剣鬼(柴田錬三郎)
大名倒産(上下)を読み終えた。正直言って、上下巻は、長かった。今まで読んだ、浅田次郎の作品とは、ちょっと、違う世界だった。いわゆる、ドタバタコメディー的とでも言うのか。経営破綻しかけてる小藩で、長男が亡くなったので、突然、4男の主人公がお殿様になって、立て直しをはかる。一方、引退した元藩主は、ある計画を画策していた。一見、普通の時代劇っぽいが、ハチャメチャになってくるのだ。それは、貧乏神やら、七福神が出てくるからだ。これを、カットすれば、随分、すっきりした作品になったと思える。だが、あればこそ、このとてつもない物語が成立するのかも知れない。大名倒産上下(浅田次郎)
SKIPPING CHRISTMAS(JOHN GRISHAM)
JOHNGRISHAMの”SKIPPINGCHRISTMAS"を読んだ。丁度、年末のクリスマスに近くなってきたこと。また、分厚い洋書に疲れたあとで、ちょっと、軽めの本(177ページ)を選びたかったことが主な理由だ。予定通り、年内に読み終えることができた。娘が海外派遣隊に参加で、おそらく、1年くらいは、帰って来ないだろうと考えて、今年は、クリスマスをスキップしてクルーズ旅行に出ようとした夫婦の物語だ。JOHNGRISHAMの本は、随分、読んでいるが、とても、JOHNGRISHAMの本とは思えない物語だった。何しろ、ちょっと、ホームアローンが浮かぶようなコメディータッチなのだから。単語も、裁判関係の単語が出てくるわけではなかった。FROSTYが、雪だるまのような有名なキャラクターで、屋根に着ける飾りにもなって...SKIPPINGCHRISTMAS(JOHNGRISHAM)
笹本稜平の最後の作品とも言える「山狩」を読んだ。笹本稜平と言えば、警察小説や山岳小説が有名だが、両方を併合したような作品だ。舞台は、千葉県の伊予が岳で、登ったこともあり、親しみがあった。しかし、その伊予が岳で、山狩りがなされようとは、.......。さて、伊予が岳で、女性の遺体が発見される。事故として処理されそうになるが、実は、ストーカーされていたことがわかり、事件の可能性も検討される。女性の祖父は、元警察副所長であり、殺人の可能性を示唆する。ストーカーした男の親は、地元の権力者であり、警察のみならず、暴力団ともつながりがあった。ストーカー担当の生活安全課が、警察本部の中で、孤立しながら、警察の良心として、最後まであきらめず、戦う姿には、感動を覚える。少々、長くて、絶望的な状況が続くが、最後は、霧が晴れる...山狩(笹本稜平)
「いのちなりけり」「花や散るらん」「影ぞ恋しき」の雨宮蔵人三部作を読み終えた。最後の「影ぞ恋しき」は、葉室麟にとっても、66年の生涯の最後の作品とのことだ。葉室麟にとっても、この主人公、雨宮蔵人の武士道への強い思い入れがあったと思われる。確かに、自分のことは、顧みず、他人のために命を捨てても守ろうとする姿には、心を打たれる。敵であるものたちでさえ、その姿に、心に躊躇が生じるほどだ。さて、ストーリーは、置いといて、この作品の魅力は、剣士としての対決にあると思う。上巻の最後の、茶室での決闘は、素晴らしいの一言だ。また、下巻の度重なる、宿敵、越智右近との水辺での決闘も、見ごたえがある。葉室麟は、歌にも、才能、知識があったようで、この三部作には、ちりばめられているのだが、残念ながら、自分には、感受する能力がないの...影ぞ恋しき(葉室麟)上下
だんだん、長い作品は、避けるようになってきた。年齢のせいか。本作は、670ページである。ダン・ブラウンの作品は、ほんとうに久しぶりだった。ほとんど、前作の『ダ・ヴィンチ・コード』の記憶もなかったが、英語の文章自体は、読みやすいのだが、固有名詞や、背景が、わからないながら、読み飛ばしていった。書評を見ると、評価は、分かれるようだ。正直言って、長くて、冗長で、説明が多くて、大変だった。わかりずらかった。という思いが強い作品だった。THELOSTSYMBOL(DANBROWN)
藤井君のソフトで、将棋初段、2段に上がれて、将棋ウオーズを試したが、時間制限があり、人とやるのは、難しかった。そうしたなかで、次の一手を解いて、初段申請ができる道を見つけた。1.将棋世界一か月で4問。400点。3択無し。初段は、2000点か?一回、過去、出したが、その後、くじけてしまった。連続は、必要なかったか?2.新聞の次の一手問題(読売新聞他)毎週、木曜日に一問だされる。一問、10点。3択式。100点に到達する週で、昇段が決められる。18週以内で、初段。約5か月だが、毎週出さなければならないのが、ちょっと、辛い。提出はしなかったが、試したが、2~3週は、忘れてしまった。17週で、何とか、100点に到達した。一問一問の難易度は、低いと思う。3.NHK将棋口座次の一手一か月2問。200点。5か月連続が必要...将棋初段への道-3
将棋ソフトについて書いてみよう。昔、インベーダーソフトが流行った時期、ゲームセンターで、将棋ソフトもあったが、簡単で、面白くなかった。その後、チェスで、ソフトがチャンピオンに勝ったというニュースが流れた。しかし、将棋は、取った駒をはることができて、複雑なので、ソフトが勝てることはないだろうと言われていた。しかし、ソフトも進歩を重ね、ソフト同士の切磋琢磨を経て、佐藤天彦名人に勝って、人間を超えたと言われるようになった。今では、将棋ソフトでの研究が当たり前になってきている。人間では、考え付きにくい手が、最善手になっていたりすると、不思議な気がする。さて、私が使い始めたのは、10年くらい前だったかも知れない。もちろん、プロが研究用に使うようなソフトは使ったことがない。1.将棋倶楽部24プロも対戦に使うというソフ...将棋初段への道-2
三部作の2つ目だ。雨宮蔵人と咲弥の物語だが、今回も、幅広く、種々の歴史的人物が関わってくる。特に、本作品では、赤穂浪士の吉良家への討ち入りの謎が明かされる。まったくもって、独創的ではあるが、それが、ごく自然に感じられるから不思議だ。前半部分は、やや、重く感じられたが、後半に入り、一気に、加速され、読み進めることができた。あいも変わらず、雨宮蔵人の剣が、冴えわたる。また、武士の生き様も、しかりである。花や散るらん(葉室麟)
山女日記の続編を読んだ。4編からなる。従って、一編が、若干、長く感じた。前半の2編は、ちょっと、いまいちに感じた。後半の2編は、行ったばかりの山のせいか、親近感もあったが、内容的にも、良かった。特に、「立山、剱岳」は、面白かった。娘と母親の登山だが、娘は、登山ガイドを目指す。母は、実は、亡くなった父親と、付き合っていた時に、この山に来ていた。そして..中々、最後は、感動ものの終わり方だった。最後の作品は、二人の手紙による語りだ。この作品に限らず、この山女日記は、二人の主人公が、入れ替わって一人称で語っているようだ。それが、ちょっと、慣れないせいか、混乱するが、面白い試みでもあると思った。最後の作品は、少し、感動を促しているようにも感じた。上の立山・剱岳のように、素直に感動を感じるまでには、いたってなかった...続・山女日記残照の頂(湊かなえ)
平成を代表する超人気時代小説と言われる本作品の第一巻を読んでみた。外伝を除くと、51巻まであるらしい。映画やNHKドラマにもなって、見ている。2019年の映画版は、あまり、人が入らなかったようだが、TVで見て、結構、面白かった。主演は、松坂桃李だった。その映画版とほぼ同じなのだが、若干、異なっていた。NHKドラマの方の主演は、山本耕史だった。何故、これほど、長編になったか、作者のコメントが最後に載っていた。一つは、許嫁との別離。もう一つは、老中との確執。とあった。また、「こんな人物が存在したら..」という作者の気持ちが投影されたのだろうという。おそらく、最後の気持ちが大きかったのだろう。作者も、海外ものを書こうとしたが、売れず、時代劇でも書いたらと書き始めたと聞いたことがある。剣劇の部分は、意外と、特別な...居眠り磐音01陽炎の辻(佐伯泰英)
本当に久しぶりにボブ・ラングレーの本を読んでみた。山岳ものは、非常に面白く、すべて読んだ。そのあとも、何作か、ミステリーを読んだが、これは、いわゆるローラーコースター・サスペンスというやつだ。たぐいまれな美貌をもつ女性が主人公で、人気ニュースキャスターへの道を歩む。一方、過激な極右組織が、合衆国政府を支配しようと、主人公を利用して、メディアを操作しようとするのだ。ローラー・コースターものとしては、非常に面白く読めた。ボブ・ラングレーも、ニュースキャスターだったというから、裏事情なども詳しい。ただ、ちょっと、この極右組織が、陳腐とも言えるのが気になった。しかし、最後のどんでん返しで、若干、取り返したかも知れない。ニュース・キャスター(ボブ・ラングレー)
最近、時代劇小説で、読んだことのない作者のものを読んでみようと思っている。文庫書下ろし小説で話題にあがった奥右筆秘帳シリーズというのを選んでみた。この作者は、珍しい役に付く主人公をもとに、剣豪小説と政治小説という二つの要素を盛り込んでいるとのことだ。この作品も、徳川家の公式文書を一切管理する役職だ。読んでみて、剣豪小説の部分は、非常に面白かった。しかし、政治小説の部分は、少々、複雑で、ミステリーぽっくもあるが、まだるっこしい部分もあると感じた。一話完結ではなく、謎は、続くのだが、ちょっと、続けて読む元気は沸いてこなかった。気分が向けばということか。密封(上田秀人)
2022年の「週間文春ミステリーベスト10」や、2023年の「このミステリーがすごい第4位」等、数々のミステリーランキングの上位になった作品だ。極限状態での密室で、殺人事件が起こる。その密室から脱出するには?誰が犯人なのか?動機は?最後の最後で、まったく予想のつかない結末も待っている。正直言って、あまり、こういった小説は、好みではないのだが、一気に読んでしまったし、面白かった。著者の経歴が驚きだ。カルト宗教を信仰する親のもとでの宗教2世として育ち、高校、大学には通ってないという。この作品も、それを感じさせる設定となっている。この作品は、漫画化もされているとのことだ。方舟(夕木春央)
書評か、広告を見て、この本を選んだと思う。読んだ感想としては、ちょっと、変わった時代劇である。用部屋手附同心というお役目も初めて聞いて、ピンと来ないが、簡単に言えば、市中を見回る普通の同心から、左遷されて内勤専門の同心になった感じだ。しかし、理屈っぽいが、洞察力があり、なぜか、頼りにされたり、相談されたり、事件解決に一役をかってしまう主人公の物語だ。4つの短編集なのだが、主人公の生い立ちや過去もちりばめられており、それぞれに味わいも感じるのだが、地味と言っても良いくらいのストーリーなので、万人の好みに合うかはわからない。春の雪(芝村凉也)
新聞書評で選んだ英国推理作家協会賞受賞のミステリーだ。裏表紙の説明が、ちょっと、やりすぎている。一番、最後のクライマックスの内容が書かれているのだ。巨匠の代表作とも謳っている。確かに、一番、盛り上がるときなのだが...それだけ、ストーリー的には、少々、ごったごった感があった。詰め込みすぎ、ミステリーではあるが、謎解きも無理やりすぎていて、あまり、頭に入ってこない感がある。会話も、英国的な皮肉に満ちていて、わかりずらいくらいになっていた。しかし、魅力がないわけではない。やはり、元スパイだった主人公の魅力は無視できない。また、著者は、飛行士だっただけに、飛行シーンが多々出てくるが、それは、詳細であり、表現も見事だった。最後の戦いのシーンも、面白かった。もっとも危険なゲーム(ギャビン・ライアル)
EMIL AND THE DETECTIVES(ERICH KASTNER)
エリックカストナーの「エミールと探偵たち」を読んでみたいと思っていたら、図書館に英訳本があったので読んでみた。児童文学の傑作とのことだが、なるほどと思わざるおえないストーリー展開だった。1929年に書かれたとのことだが、日本に翻訳本が出たのは、1950年くらいのようだ。江戸川乱歩が、怪人二十面相の中で、少年探偵団を登場させたのは、1936年くらいなので、影響を受けたのではないかも知れない。まして、明智小五郎の助手的なのに対して、エミールと探偵たちの場合は、子供、それも、かなり年齢の低い子供たちだけで、盗人を捕まえる算段を考えるのである。いったいどうやって?という疑問をあっというまに解決してくれるのには、驚いた。EMILANDTHEDETECTIVES(ERICHKASTNER)
最近、故あって、時間つぶしの映画鑑賞をすることがあった。正確には、一か月に一回くらいの割合だ。もともと、映画は、好きなのだが、以前は、見たい映画を見ていた。最近は、その時間帯で見るのに都合の良い上映時間であり、かつ、まあ、面白そうな映画を選んで見ることがある。例えば、7月:キングコングとゴジラゴジラの日本作品が、アカデミー賞を受賞したが見なかったが、この米国版怪獣映画を見てみた。子供の頃、同じ題名の映画を見たことがある。そのころは、ゴジラが悪役で、キングコングがいい者だった気がする。今回も、米国発祥のキングコングが主役だが、結構面白かった。美しいモスラも感動した。8月:デッドプール&ウルバリん昔、XMENを見た時は、まあまあ、面白かった記憶があるが、これは、劣悪かつ、残虐なアクションだけの映画だった。選択...時間つぶしの映画鑑賞
久しぶりに江戸川乱歩賞の受賞作(第68回)を読んだ。中々、面白かった。いわゆる警察小説だ。最後の選評も、面白かった。この作品を、候補作中、一番小説が下手だ。しかし、後から鍛えられないセンスやアイデアを評価するという声が多かったことだ。なるほどと思った。場面の切り替えが、唐突すぎて、前に登場してきた人物なのか読み返してしまった箇所があったし、不要な部分もかなりあるように思えた。わかりずらい部分もあった。また、女性の作者の、女性が主人公、登場人物の場合の、少々、甘ったるさも感じた。上記のような欠点もありながら、後半にかけて、畳みこむようなスピードある展開や、ミステリーの面白さには、並々ならぬ、才能を感じざるおえないと思った。ストーリーは、誘拐事件の未解決事件とだけ書いておこう。北緯43度のコールドケース(伏尾美紀)
風の市兵衛シリーズの4作目を読んだ。読み続けてしまう一つの理由は、剣劇が、必ず期待できるせいかも知れない。今回は、姫君を守る役につく。敵は、地元の地回りのヤクザ30数名と刺客軍団20数名と、いまだかってない数にものを言わせた敵が襲い掛かる。そのうえ、最後には、首切りの剣豪が待ち構えている。過去最高の危機に陥る市兵衛が見られる。また、次も読んでみたくなるから不思議だ。月夜行(辻堂魁)
新聞の書評で興味を持って、古いSFである、本書を読んでみた。(1969年初版)不倫した人妻を追って主人公の医師が、やってきた森は、なぜか、封鎖されていた。その理由は、何等かの理由で、結晶化が進んでいるためだった。無理して、封鎖を搔い潜って友人夫妻の病院を目指す。といったストーリーだ。とにかく、その結晶化していく森の描写が素晴らしい。しかし、ストーリー的には、森の中をぐるぐる回ったり、結晶化の謎は、解決せず、男女の不可思議な関係ばかりに焦点が置かれ、あまり、自分には、合わない世界だった。結晶世界(J.G.バラード)
MICHAELCONNELLYの9DRAGONSを読んだ。HARRYBOSCHシリーズ全24作品のうちの14番目にあたる。数えてみたらシリーズ中、11作品を読んだことになる。シリーズものとしては、1~2番目の数になる。HARRYBOSCHが、性格に合っているのだろう。できれば、順番に読み進めたかったが、そううまくはいかなかった。だが、それほど、違和感がないのが一話完結の事件設定だからだろう。しかし、刑事から私立探偵になり、また、刑事に再雇用され、また、私立探偵になったりと忙しくポジションは変わっている。また、テレビの相棒シリーズに負けずに、相棒も変わっている。さて、今回の9DRAGONSだが、中国人の店主が殺害され、ボッシュは、捜査から手をひけと脅かされる。すると、香港に住む娘が誘拐されたことがわかる。ボ...9DRAGONS(MICHAELCONNELLY)
芦沢央の5編からなる将棋ミステリー集を読んだ。ミステリーと言っても、特別なトリックがあるわけではなく、また、謎解きがあるというのでもなかった。理解できない不可思議とも言えるものに、一緒に答えを考えるような物語だった。自分的には、最初の「弱い者」と「ミイラ」という作品が面白く感じた。特に、「ミイラ」の独特な世界は、興味深かった。詰将棋の投稿に関する物語だ。丁度、今、次の一手問題を毎月投稿しているだけに、気持ちがわかったせいかも知れない。この将棋ミステリーを選んだのもそのためだった。それにしても、この作品を書くにあたって、プロの将棋棋士他に取材したという。大したものだ。神の悪手(芦沢央)
多分、新聞の書評を読んで、読む気になったのだろう。ミステリーで、しかも、絵画の盗難にかかわるのだからと。図書館から借りてきて、その古さに驚いた。1976年に再版されたものだから、50年近いことになる。そして、読み終えて、訳者のあとがきを読んで、もっと、驚いた。あの、「飛ぶ教室」や、「エミールと探偵たち」を書いた作家の著書なのだ。読んだことはないが、その題名には、子供ながら、興味を持った記憶がある。児童文学の傑作であることも。さて、作者は、ドイツ人で、戦中に、ナチスから迫害されたが、老母もおり、亡命せず、ドイツ国内に留まっていた。その中で、何の、政治的な風刺も入れられない、明るいだけの本作品を書いたのだ。そう考えると、何とも、やるせなくもあるが、飽きさせないストーリー展開には、再度、驚かされた。消え失せた密画(エーリヒ・ケストナー)
奥田英朗の「オリンピックの身代金」を読んだ。丁度、パリオリンピックで、連日、熱戦を繰り広げられている中で、何となく、読んでみたくなった。この小説のオリンピックの舞台は、1964年の東京オリンピックだ。東京オリンピック開催のために、全国民が、躍起になって、準備、工事を推進していた。その中で、連続爆破事件の犯人、東大生、島崎国男は、五輪開催を人質に、8千万円を要求する。国家の威信をかけて、阻止すべく死力をつくす捜査陣と、島崎国男の対決を描いている。その動機については、完全に納得できるかというと疑問だが、少なくとも、犯人と捜査陣の攻防については、面白く読めた。パリでも、郊外への列車の線路近くのケーブルで火災が生じる事件があり、何とも、この小説に、真実味を与える結果になったのが不思議だ。オリンピックの身代金(奥田英朗)
将棋の本や、棋譜など、読んだことがなかったが、初段取得のためには、やはり、勉強しなければと思い、何冊かの本を購入し、また、図書館から、かなりの本を借りてきては、流し読みした。一応、記憶にあるものを記録しておこう。購入した本:寄せの手筋200羽生義治の将棋の序盤、中盤強くなる指し方図書館から借りてきた本:初心者が初段になるための将棋学習法将棋初段~会議(by高野棋士他)ネット将棋に強くなる(折田棋士)これだけで勝てる序中盤のコツ(大平棋士)将棋の教科書(羽生棋士)初心者が初段になるための将棋学習法(佐藤氏)読むだけレッスン(山口恵梨子)初段を目指す次の一手(永瀬棋士監修)その他それぞれ、役には立っているのだが、読んだからといって、急に強くなるものでもない。将棋初段への道-1
将棋は、いつ覚えたのだろう?おそらく、4歳~5歳か?兄から教わった。すぐに、父や兄より強くなった。父の知り合いで、将棋アマ2段がいて、飛車角抜きで指したがあっけなく負けた。父は、立派な将棋盤を買ってくれた。うれしくて、小学校の友人二人と指したが、あっけなく負けた。それから、将棋を敬遠してたようだ。学生の頃、学内の将棋大会に出ることになった。3人のチーム対抗だが、自分だけ、前評判で、一番強い相手に奇策で勝った。おそらく、過去、最も嬉しかった勝利だと思う。その後、何十年と、人とは将棋を指してなかったが、暇つぶしに将棋ソフトを楽しむようになっていた。そして、将棋ワーズ3級、将棋クエスト4級までは、取得したが、停滞しているのが現状だ。藤井君が八冠になり、羽生さんが新会長になった機会に、アマチュア初段を取り、二人の...将棋の記憶
NOTHING VENTURED(JEFFREY ARCHER)
JEFFREYARCHERの最近の作品(2019年)、NOTHINGVENTUREDを読んだ。とても、80歳近い作者のものとは思えない作品だった。新しい主人公、WILIAMWarwickの物語だ。父は、悪いやつらを弁護するしたたかな弁護士で、姉もあとをついでいる。主人公は、悪い奴らを捕まえる刑事になるのが夢なのだ。なぜか、西洋絵画の歴史を学んだのち、巡査になるが、試験もトップで通るくらい優秀なのだ。今回、絵画に詳しいところから、絵画盗難事件などを扱う部署に配属される。ややこしいのは、一件の事件だけでなく、複数の事件に関わるので、目が回ってしまう。また、恋愛も絡んでくる。ジェフリー・アーチャーは、絵画にも詳しいらしい。その知識が随所に出てくる。また、法廷シーンも、二つの事件が、並行して描かれるという忙しさだ...NOTHINGVENTURED(JEFFREYARCHER)
本屋の山関係の書籍の棚に、一冊の漫画が置いてあり、以前から気になっていた。今回、購入して、読んでみた。10篇からなる山に関連した短編の漫画集なのだが、一編のみ、ブラックジャックがあった。少年サンデーやジャンプなどに一話完結で1959年から1982年に掲載されたもののようだ。40年~60年前の作品とは思えない質の高さを感じた。山登りに関するのは、最初の「魔の山」だけだが、他の作品も、何等かの形で、山と関わっている。子供の頃、手塚治虫の初めて作品との出会いは、おそらく貸本屋で読んだ「0マン」か、テレビの鉄腕アトムだと思うが、その質の高さに驚くばかりだ。手塚治虫の山
葉室麟の「風かおる」を読んだ。2017年、葉室麟が、亡くなる2年ほど前の作品だ。「妻敵討ち」の旅から帰った養父は、死病に侵されながら妻敵討ちをさとした誰かと果し合いをするという。何とか、思いとどまらることができないかと鍼灸医の娘は、思い悩む。何やら、今までの葉室麟とちょっと違った話のように思えた。後半までは、謎解きに近い形で、延々と続く。なぜ、誰と果し合いをするというのだ。しかし、後半になると一変する。謎が解け始めると同時に、人間の醜さやうす汚さが全面に出くるのだ。そして、最後がなかなか良い。風がかおるように生きなければ。というのが、葉室麟の残したかった言葉なのだろう。風かおる(葉室麟)
STEPHENKINGのLATERを読んでみた。STEPHENKINGのホラーものは、長いが、この作品は、248ページと、比較的、短いので選んでみた。主人公の少年は、死者の幽霊と話すことができた。そのため、亡くなった爆弾魔が、最後に仕組んだ爆弾の場所を、幽霊から聞き出すため、母のレズ友の女警官が、主人公を連れまわす。ちょっと、少年少女もののホラーかと思わせる設定なのだが、そうとばかりは言えない展開となる。この作品も、やはり、意外性のある作品だった。LATER(STEPHENKING)
新聞の書評で、薦められたクリスハマーの「渇きの地」を読んでみた。2021年に英国推理作家協会賞最優秀新人賞を受賞している。とても、新人離れしている濃厚な作品だ。もともと、ジャーナリストとして、30年活動していただけに、謎解きの主人公も、ジャーナリストだ。オーストラリアの教会で、牧師が銃を乱射し、5人を殺害する。一年後、町に訪れた新聞記者の主人公が、牧師をかばう住民の証言に、何故、牧師は、銃を乱射したのか、思いめぐらせる。話の展開が、これでもかというくらい、縦横無尽にめまぐるしく展開するが、よくこれだけの長編を破綻することなく、まとめあげたと思う。最後のエンディングも、中々、良かった。どうも、3部作らしいが、まだ、翻訳はされてないようだ。また、読む機会があるだろうか。原書は、ちょっと、つらそうだ。渇きの地(クリス・ハマー)
湊かなえの「山女日記」を読んだ。湊かなえの作品では、「告白」以来である。この「山女日記」は、山ガールの人生を描きながらそれぞれの山に登る8篇の連作になっている。自分の登ったことのある山も一つあり、前半は、結構、面白く感じたが、後半、特に、一番、長い作品だった「トンガリロ」は、15年前と現在の二部構成が、ちょっと、わかりずらくもあり、退屈に感じてしまった。しかし、普通の山岳小説とは、ちょっと、違った人生模様も描けているのは、さすが、湊かなえと言えるかも知れない。山女日記(湊かなえ)
辻堂魁の風の市兵衛シリーズの第3作目を読んだ。最後の解説で、「読み心地の良さを、これほどまでに味わえる作品にはなかなか出会えまい」という言葉があったが、なるほどなと思った。今回は、抜け荷を暴いて、悪を成敗するといった、やはり、せいせいする市兵衛の活躍が見れる。また、船上の戦いという、はらはらどきどきも味わえる。気が付けば、3作目まで来たが、また、きっと、4作目も読むことになるのかも知れない。帰り船(辻堂魁)
JOHNGRISHAMのTHETESTAMENTを読んだ。ある大富豪が、遺言書を書き換えた後に、飛び降り自殺する。その遺言書によると、すべての財産を、ブラジルのジャングルに宣教師として赴任して、どこにいるかもわからない子供、妻ではない女性に産ませた子供に託すというのだ。二人の元妻に産ませた子供たちは、遺産相続を期待していたから収まらない。それぞれ、弁護士を雇って、書き換えた遺言書は、無効と訴える。一方、大富豪の顧問弁護士は、宣教師の女性をアル中で、リハビリをしていたパートナーに探すように指示するのだ。ジョングリシャム得意の法廷劇もあり、一方、珍しいジャングルクルーズのようなアドベンチャーもありで、楽しめた。THETESTAMENT(JOHNGRISHAM)
荻堂顕の新潮ミステリー大賞受賞作である本書を読んでみた。読売の書評で、この作家のことを知って興味を持った。ちょっと、変わった作品であることはまちがいない。ストーリーとしては、少し前に読んだミッドナイトライブラリーに近いかもしれない。他の地域に逃げたり、現実に絶望して、人生から逃げるのを助けるのが主人公の女性だ。ミッドナイトライブラリーの場合は、自分で、やり直したい人生の分岐を選べたと記憶している。そして、何度となく、試せるのだ。一方、本作では、理想の人生が決められていて、そこにいると、幸福を感じて、満足するというのだ。どうなるのか、気になって、一気に読むことができた。しかし、読後感であるとか、終わり方については、若干、違和感を感じざるおえなかった。自分との相性のようなものだろう。偽傷の鳥はつかまらない(荻堂顕)
映画「碁盤斬り」を見てきた。時代劇であり、草薙ファンであり、かつ、原作が、落語とあっては、見ないわけにいかない。事前に、ユーチューブで、志ん朝の「柳田格之進」を聞いておいた。久しぶりに落語を聞いたのだが、志ん朝の人情噺は、やはり、うまかった。さて、映画だが、かなり、脚色され、登場人物も変えられていた。しかし、上手に変えられていたので、違和感もなく、また、すっきりまとめられていた。時代劇に必要な、剣劇も、十分、楽しめた。さすが、剣道初段の草薙である。身のこなしも速い。囲碁の勝負も、この映画の見どころで、かなり、凝っていたのだが、超初心者の私でも、楽しめたし、緊張感のある映像となっていた。登場人物、キャストもすっかりはまっていた。それぞれが、良い演技をしており、名前の知らない俳優も気になったくらいだ。映像も、...映画「碁盤斬り」
最近、BSなどで、梓林太郎原作の山岳ドラマが再放送されている。もう、20年以上前の作品ながら、結構、楽しめた。梓林太郎氏は、今年の1月に亡くなっている。それを追悼して、かってのドラマを再放送しているのかも知れない。山岳ミステリーは、随分、読んでいたが、梓林太郎氏の作品は、読んでなかったので、今回、読んでみることにした。本作は、本格山岳ミステリーの傑作と言われている。女性登山者の転落死体が発見され、単独登山の事故と見られていたが、後ろ姿だけが写っていた男性の同行者がいることがわかった。しかし、転落した女性を残して、いなくなってしまったのだ。いったい、その男性とは、誰なのか?結構、楽しめたので、また、読んでみたい。北穂高岳殺人山行(梓林太郎)
浅田次郎の「帰郷」を読んだ。いわゆる、戦争小説と言えるものだ。帰還兵の話だったり、高射砲の修理兵の話、父が戦死した息子の話などなど、6篇の短編からなる。一番、最初の「帰郷」が、救いもあり、好きな作品だった。最後の「無言歌」が、何とも、悲しく、救いのない中で、最後にふさわしい作品だった。著者は、私と同じく父母が戦争体験のある戦後第一世代である。それでも、こういった戦争小説が書けるのは、驚きだった。そういえば、私の子供の時にも、まだ、渋谷には、傷痍軍人がいた記憶がある。解説の最後に、戦争小説を非戦小説にねりあげていったとあるが、ちょっと、疑問に感じた。帰郷(浅田次郎)
岩井圭也の山岳小説、「完全なる白銀」を読んだ。中々、面白かった。まず、主要登場人物が3人の女性ということだ。アラスカの温暖化により、いずれ、海の下になって、なくなってしまう島に住む2人の現地人女性と日本人女性が主要登場人物だ。温暖化を世界に訴えるため、まず有名人にならなければならない。そのために、女性で初めて、冬のデナリ(アラスカ最高峰)登山を目指す女性リタ、彼女をサポートするシーラ。それから、写真家として自立を目指す日本人女性,緑里。困難な登山シーンなど、はらはらどきどきものだった。ただ、最後のエピローグは、やや、長すぎた感があった。完全なる白銀(岩井圭也)
百田尚樹の「禁断の中国史」を読んだ。図書館で目についたので、読んでみたのだが、隣の中国という国について思い知らされた。宦官、纏足、科挙制度など、聞いたことのある制度のほか、刑罰や共産党の実態を読むに日本の感覚との違いに恐ろしくなった。それも、遠い昔のことではないのである。書評でも、すべての日本人が読むべきというコメントがあったが、なるほどと思った。禁断の中国史(百田尚樹)
THE ENGLISH PATIENT(MICHAEL ONDAATJE)
映画は見たことがないが、アカデミー賞は取っているし、原作も、ブッカー賞を取っているということで、読んでみた。今までには、もっと、手ごわい作品にもトライしたことがあるだけに、何とか、読み終えた。しかし、どこまで、理解したかは、わからない。一見、読み進めることができそうでいて、頭には、すっきり入ってこないのだ。あとで、他の人の書評を読んで、その点がはっきりした。詩的表現が多く、登場人物の視点も、固定されず、頻繁に変わり、時間軸も前後行き来する。自由奔放な作品ということだ。また、ヘロドトスや歴史、文化、文学への知識も膨大だ。ストーリー的には、戦争で心身に傷を負った4人の人物の心のふれあいが描かれているわけだが、それも、自分の理解力では、少々、あいまいもことした程度だった。THEENGLISHPATIENT(MICHAELONDAATJE)
山本兼一の「命もいらず名もいらず」を読んだ。以前から、読みたい本だったが、上下巻の分厚さに尻込みしていた。内容は、幕末の3舟の一人、山岡鉄舟の史実をもとにしたフィクションだ。山岡鉄舟という人物は、ドラマでも、坂本竜馬や、勝海州にような主役では、あまり見たことがない。しかし、今回、読んでみて、江戸城の無血開城に最終交渉したのは、西郷と勝だが、その前に、西郷に説得に行ったのは、山岡鉄舟であり、そのとんでもない行動力がなければ、歴史も変わっていた可能性が高い。その魅力にあふれた山岡鉄舟の一生を描いた本作は、その長さも忘れて、一気に読んでしまった。酒を9升も飲んだり、とても、常人ではない人間が、明治天皇のお目付け役とも言える侍従になるなど、不思議でたまらなかったが、その謎が本書で解き明かされる。山岡の死は、侍の死...命もいらず名もいらず(山本兼一)
アカデミー賞を受賞したとのことで、再度、映画放映されだしたので、「君たちは,どう生きるか」を、先月、見に行った。平日だったせいか、数えるほどの人数で、しかも、私も含め、中年以上が多かった。映像は、さすがという美しさだった。7人の小人ならず、7人のおばばが出てくるのが面白かった。声優に豪華な俳優陣をふんだんに使っているのも、面白かった。ストーリー的には、今までにない新規性は薄かったが、ジブリ的ファンタジーを楽しめた。表題になった「君たちはどう生きるか」の本が映画の中で、最後に出てくるのだが、著者が、吉野源三郎と山本有三の共著になっているのが気にかかった。山本有三は、中学の頃に読んだ「路傍の石」に感動した記憶がある。調べたところ、山本有三が、体の具合が悪く、吉野に委託して作成されたらしい。当初は、共著と表記さ...君たちはどう生きるか
ユニークな将棋棋士として有名な升田幸三の本エッセイを読んでみたくなった。非常にユニークな部分もあるが、文章は、いたって普通なのに驚いた。将棋と新聞社というのは、今もそうだが、繋がりがあり、本著も新聞に連載されたものだ。あとがきで、当初の意図は、若いサラリーマンに読んでもらいたいとのことだったようだ。印象に残ったのは、有名な話で、戦後、GHQに呼ばれ、将棋は、取った駒を使って、捕虜虐待じゃないかと質問され、反論し、チェスは、王様を助けるために、女王を盾にするのはどういうわけかと逆に質問したという。また、殺気を呼ぶため、対局前に血のりのついた太刀を抜き、素振りをして、勝つのだぞと言い聞かせたことがあるという。それから、奥さんに刀は隠されたそうだが。勝負(升田幸三)
池波正太郎の群像シリーズの忍者群像を読んだ。忍者というと、どうしても、甲賀と伊賀の戦いを思い描いてしまう。また、屋根裏をうごめいたり、堀の中を泳いだり、手裏剣をなげあったりである。しかし、この忍者群像に出てくる忍者は、少し違う。どちらかというと、スパイなのである。敵の中に入り込んで、信用され、必要な情報を得たり、敵の作戦を頓挫させるような戦国時代のスパイとしての活動なのだ。本作は、7作の短編小説からなるが、どれも、面白く読めた。さすが、池波正太郎である、非常な忍者にも、人間味や非情でない部分を見せたりするのがうまい。忍者群像(池波正太郎)
THE MIDNIGHT LIBRARY(MATT HAIG)
MATTHAIGのファンタジー小説、「THEMIDNIGHTLIBRARY」を読んだ。書評で、かなりの評価を得ている作品だ。職場も首になり、ペットの猫も事故で亡くなり、絶望から、死にたいと思ったとき、目の前に不思議な図書館が現れ、その書棚から本を選ぶことで、こうすれば良かったと思う人生のやり直しを試せるのだ。誰でも、あの時、こうすれば、どうなっていただろうとか、想像することがあるかも知れない。それが、何度でも、お試し可能なのだから、お得と言おうか、理想と言おうか。しかし、そう簡単なわけではない。何度も試しているうちに、少々、飽きてきて、うんざりしてきてしまう。いったい、このあと、どうするんだ?しかし、心配は無用だ。ちゃんと、素晴らしいエンディングが待っているのだ。文体も、結構、美しい文体のような気がした。...THEMIDNIGHTLIBRARY(MATTHAIG)
このブログに最もあった題名の小説を読んでみた。ちいさな炭鉱町で、記念碑などの破壊のあと、つぎつぎに人が殺害されていく。行政官の命で、この町民の取材をゆるされた主人公が、正体不明の奇病におかされた町民とインタビューをし、謎をとこうとするのである。今までに読んだことのないミステリーと言っても過言ではない。翻訳家は、大変、苦労しただろうと推測される。編集者も、この作家の熱烈なファンのようだから、翻訳家を励まし続けたのかも知れない。読むのも、結構、大変だったが、つぎつぎに終わることのない謎の多さに驚かされる。ちょっと、変な読後感だった。ミステリウム(エリック・マコーマック)
奥田英朗の「向田理髪店」を読んだ。少し、軽いものを読みたくなると、奥田氏の作品を手に取ることにしている。この作品は、「空中ブランコ」に比べれば、いたって、まじめな作品だ。かっては、炭鉱で栄えたが、今では、寂れ、高齢者ばかりになった北海道の町で、理髪店を営む主人公の物語だ。こんな町では、何の希望もないから、若者は、外に出ていくべきと、悲観的に考える主人公に対して、息子が、帰ってくるという。そして、失敗を恐れず、何かをしなければと考える若者、希望が描かれていく。短編形式で、中国から花嫁がきたり、映画撮影ロケ地になったり、この町にとっては、大きな事件が起きるのだ。ユーモラスに描かれるのだが、リアリティーもあり、最後には、ちょっと、感動もする。向田理髪店(奥田英朗)
玉岡かおるの新田次郎賞、舟橋聖一生ダブル受賞作の「帆神」を読んでみた。新田次郎賞受賞作品は、結構、自分の好みにあうようだ。船乗りでありながら、船の新しい帆布の創造、拡大に貢献して、かつ、港の浚渫までやってのけ、士分にまで上り詰めた工楽松右衛門の歴史小説と言える。また、女性作家のせいか、男女の恋愛の想いについても、描かれている。少々、長く、読むのに苦労したが、工楽松右衛門という人物のスケールの大きさと魅力に魅了された。帆神(玉岡かおる)
FALSE IMPRESSION(JEFFREY ARCHER)
JEFFREYARCHERのFALSEIMPRESSIONを読んだ。何とも、盛りだくさんで、スピーディーな物語だった。英国の旧家が、負債に苦しんでいた。そこで、所持する名画を処分して、借金を返済しようとした。しかし、その女主人が、暗殺され、一番の名画が借金を一手に引き受けている銀行に移動されようとする。さて、それからが、大変だ。何しろ、米国の9.11事件の貿易センタービルにその会社があり、飛行機が突入して、ビルが崩れるシーンが描かれるのだ。何とか、旧家の持つ名画を取り戻し、処分して、借金を返済しようとする女主人公と、女殺し屋を使って、自分の欲しい名画を得ようとする悪玉との対決になるのだ。その中では、いろいろな名画が出てきたり、殺し屋との対決もあり、息も付かせず、面白く読めた。FALSEIMPRESSION(JEFFREYARCHER)
辻堂魁の「雷神」を読んだ。これは、風の市兵衛シリーズの第二弾だ。最後の広告で、何と、既に22巻まで続編が出ていることに驚いた。さすがに、テレビドラマ化しているだけのことはある。テレビドラマのキャストを頭に描いて読むと、頭には入りやすい。主だったキャストについては、うまいこと選んだものだと思う。さて、2巻目だが、内藤新宿で、不当に立ち退きを迫られた老舗に主人公がやとわれ、陰謀に立ち向かうのだ。悪役も、なかなか、怪しく、手ごわく、面白く読めた。機会があれば、また、第3巻も読んでみたいと思う。雷神(辻堂魁)
ときどき松本清張が読みたくなる。正直言って、がっつりは、読んだことがない。最近、テレビで、松本清張の作品をドラマ化したものを見た。「ガラス...」とかの題名だったが、結構、面白かったので、読んでみたくなった。この短編集には、初期作品8作品からなる。一作品、「張り込み」は、読んだことがあると思った。その他の作品は、若干、トリックというか、ネタにこっている感じがした。その辺が、文体などは、総合的には好きなのだが、がっつりはまらない理由かも知れない。「顔」とか「声」とか、なかなか面白い作品だった。ときどき、電話が一家に一台なくて、近くのお店に借りたり、古さを感じるが、それ以外は、ちっとも古さを感じないのがさすがだと思った。電話も一家に一台を通り過ぎて、ひとり一台の携帯電話になっているなど時代の流れを感じた。なぜ「星図」が開いていたか(松本清張)
JOHNGRISHAMのCALICOJOEを読んだ。JOHNGRISHAMの作品には、法廷ものと呼ばれるものが多いが、いくつかの作品は、まったく、法廷には関係しないものもある。この作品がそうであり、プロ野球選手の話だ。新人起用され、すさまじい勢いで、ヒットやホームランを量産して、スーパースターになるJOEという野球選手に、ビーンボールが当たり、昏睡状態になる。死線をさまよい、生き延びたが、片目の視力がなくなり、野球選手をやめざるおえなくなってしまう。そのビーンボールを投げた投手の息子は、その現場を目撃する。その息子の物語なのだ。194ページと比較的、短く、野球用語や野球選手の名前が多く出てくる前半は、ちょっと、大変だったが、慣れてきたら、何とか、読み切ることができた。あたかも、実際にあった話のごとく展開し...CALICOJOE(JOHNGRISHAM)
読売新聞の書評で、興味をもって、本書を読んでみた。山本周五郎賞、直木賞、山田風太郎賞の候補になった作品という。題名が、なかなか、刺激的だ。最強と呼ばれた剣豪、宮本武蔵と対戦した相手側からの物語かなと想像させた。7章に分かれているが、最初の3章は、それに近く、中々、面白く読めた。しかし、4章以降、ちょっと、話が込み入ってきた感じがした。第六章で、4~5章の謎めいたものが整理されていくのだが、小次郎や武蔵の父、無二斎の存在が、あまりに、従来のものと違っており、受け入れるのが難しい感じがした。吉川英治の武蔵像が、多くのフィクションでありながら、イメージとして焼き付いているためだろうとは思うが、新しい武蔵像が、ぴんと来ないのだ。山田風太郎の摩訶不思議な剣豪小説を読んだことがあるが、ちょっと、それに近い感じになって...敵の名は、宮本武蔵(木下昌輝)
サマセット・モームは、うん十年前の学生時代、「人間の絆」を読んで以来だ。あの、サマセット・モームが、小説家が主人公のスパイ小説を書いていたのか?それどころか、ウイキペディアによると、サマセット・モーム自身が、実は、諜報活動をしていたという事実に驚愕して、この本を読んだ。小説家が、諜報活動に関わるという設定は、よくある設定らしい。過去読んだ、ジェフリー・アーチャーの作品の中でも、記憶力抜群の小説家が、ロシアの小説家の作品を口述で聞いて丸暗記して、西側で出版するという話を記憶している。今回の主人公、アシェンデンには、そのような特殊な能力があるわけでもなければ、007のようなアクションがあるわけではない。ただ、非常に、冷静であり、人間観察に優れているというものだ。その結果、信頼され、徐々に、より大きな任務につい...英国諜報員アシェンデン(サマセット・モーム)
やっと、THOMASHARRISのHANNIBALを読み終えた。約2か月かかった。546ページというから、それほど長かったわけではなかった。しかし、結構、大変だった。過去の羊たちの沈黙では感じなかった格調の高さとでもいうのか、語彙も難しく感じた。イタリアの芸術関係の記述が多かったせいかも知れない。ただ、映画を見ていたのは、おおいに助かった。結末以外は、かなり、原作に忠実に描いているように感じた。映画のクラリスは、ジョディ―フォスターに換わって、ジュリアンムーアが演じていたのだが、ジョディ―フォスターのイメージが強くて、いまだに、クラリスというと、ジョディ―フォスターの顔が思い浮かぶ。結末が変わったのは、この二人の意向らしい。Xファイルのジュリアンアンダーソンがクラリス役の候補になったらしいが、契約上、別の...HANNIBAL(THOMASHARRIS)
読売新聞の書評で、ゆったりとした作品という言葉につられて読んでみた。十時半睡事件帖のシリーズの7巻目、最終巻らしい。著者の絶筆でもあるらしい。事件帖とあるが、この巻については、事件らしい事件があるわけではない。海洋ものに比べるとかに、ゆったりとした作品だ。丁度、三島近辺に旅行に行ってきて、箱根八里の街道を知ったばかりのせいか、小田原ー三島ー元箱根ー沼津といった地名や、その街道が、身近に感じることができた。話は、主人公の息子が病気とのことで、江戸から、福岡に一時帰ることになった十時半睡が、道中、わけありの武家の女性と一緒に旅をすることになるというものだ。実際の事件帖も読んでみたいものだ。東海道をゆく(白石一郎)
久しぶりに、山関係の作品を読んだ。読売新聞の書評で見つけた本だ。”世界一不気味な遭難事故”と副題がついている。1959年に、ソ連のウラル山脈に登山した9名の若者がテントから一キロ半ほども離れた場所で、凄惨な死を遂げた。氷点下の中で、衣服もろくに付けていなかったり、靴も履いてなかったのだ。最終報告書では、「未知の不可抗力によって死亡」と記載されていた。地元住民は、「死に山」と名付けた。この事件を知ったアメリカ人ドキュメンタリー映像作家の著者が謎の解明に挑む話だ。ネタバレになるので、あまり言えないが、中々、面白く読めた。死に山(ドニ―・アイカ―)
白石一郎の直木賞受賞作、「海狼伝」を読んだ。白石一郎の作品は、以前にも読んだことがあるが、久しぶりだ。戦国時代、海で育った笛太郎が、村上水軍の海賊と行動をともにするようになり、新しい船を建設して、当時の中国に旅立つまでを描いている。海洋冒険時代小説の最高傑作と言われているが、なるほどと思った。当時の船同士の戦い方や、いろいろな船の種類、操船の仕方など、海流の影響など、詳細に描かれており、見事な作品だ。まさに、男たちの夢とロマンを描いている作品だ。続編「海王伝」も、いずれ、読んでみたいと思う。海狼伝(白石一郎)
長岡弘樹の自薦ミステリー集、「切願」を読んでみた。6つの短編集からなるが、どれも、ユニークで、独特の雰囲気を持っている。長岡氏は、短編ミステリーの名手と言われているらしい。後半のちょっと長めの2作、「迷走」と「真夏の車輪」は、中々、面白かった。予想もつきにくかった。切願(長岡弘樹)
ようやく、米澤穂信の「黒牢城」を読めた。直木賞を受賞して、図書館では、長らく、待ちが続いていた。読んでみて、驚いた。時代小説的なのだが、ミステリー小説でもある。織田信長に反旗を翻し、有岡城に籠城した荒木村重の物語だ。大きな合戦が描かれているわけではないが、籠城している中で、種々の事件が起こり、その一つ一つの事件を解決せねば、士気にかかわると、村重が推理を働かせるのだ。緊迫感もあり、面白く読むことができた。本当に、この作家は、今までに読んだこともない世界を見せてくれる。黒牢城(米澤穂信)
葉室麟の「草雲雀」を読んだ。葉室麟の作品にしては、少し、軽めの奇想天外な物語だ。主人公は、師範代を務める剣客なれど、兄の世話になり、結婚もできず、女中を妾として、同居している。一方、道場仲間から、用心棒になってくれと、頼まれるのだ。元家老の妾腹の子供であることがわかり、もし、家老になれたら、藩の剣道指南役にして、結婚できるようにするというのだ。引き受けたのは良いが、次々に刺客が現れるのだ。この二人の掛け合いが実に面白い。また、他の登場人物も、ユニークなのだ。それにしても、これだけ、奇想天外にもかかわらず、最後の数ページで、ちょっと、ジンとくる葉室麟ワールドに導いてくれるのだから、うれしくなる。草雲雀(葉室麟)
ちょっと、気楽に読めるものが欲しい時に、奥田氏の作品は、ぴったりである。今回の短編集も、よくありそうな日常の中で、おこりうる物語をさらりと描いている。inthepoolなどに比べれば、現実的であるのだが、だからといって、それほど深刻でもない。6作の中で、「家においでよ」が、一番、気に入った。突然、妻に別居された男の行動である。自分の若かりし頃の理想の生活を実践するのだ。終わり方が、良かった。家日和(奥田英朗)
書評で高い評価であり、エドガー賞受賞作の本作品を読んでみた。先日、読んだ佐々木譲の「エトロフ・・」と同じく、真珠湾攻撃の時期を舞台にしているのに興味を持ったのも一つの理由だ。読んでみて、驚いた。自分のイメージしていたものとは、全く、違っていたのだが、自分の好みの文体と、好みのストーリー展開、見事な結末だったのだ。近年、読んだ小説の中でも、5本の指に入る傑作と言っても良いだろう。ストーリーを簡単に述べると、1941年のホノルルが舞台だ。そこで、白人男性と日本人女性の惨殺された死体が発見され、主人公のマグレデイ刑事が捜索にあたる。主人公は、やや、ハードボイルドで、陸軍の狙撃兵も経験した射撃の名手のかっこよさが際立つ。やがて、犯人の手がかりを追って、香港に飛ぶのだが、そこで、仕組まれた罠に落ち、投獄される。そし...真珠湾の冬(ジェイムズ・ケストレル)
浅田次郎「天国までの百マイル」を読んだ。心臓病を患う母の命を救うため、天才的な心臓外科医のいる病院まで、母を車で運ぶ破天荒な末っ子の物語だ。映画やテレビにもなった作品だ。親子の絆、男女の悲しい恋模様を描いた感動の傑作と背表紙にあるが、その通りだと思う。今、何故か、この作品を読んでみたく思った。ちょっと、幸せの黄色いハンカチを連想させるロードムービー的な作品だ。ピーターポール&マリーの500マイルの歌詞が重要な役回りになっている。昔、ギターを覚えたての頃、よく歌っていたが、あらためて、歌詞の意味を確認してしまった。素晴らしい作品に感動したのだが、あまりに、いろいろな思いが込められており、また、自分の今の心境から、言葉で表すのが難しい。天国までの百マイル(浅田次郎)
池波正太郎の鬼平犯科帳の番外編とも言える本書を読んでみた。ちょっと、不思議な作品と言えるのではないか。主人公は、「お松」という薄幸の女性だが、美人でもなんでもないのだ。しかも、亡父から顔に傷を付けられている。捨てられた亭主にも、「不作の生大根」などと怒鳴られていたのだ。この作品では、その「お松」の数奇な人生が描かれていく。並行して、鬼平の盗賊の捕物が描かれていくのが、中々、接点があるようで、結びつかず、並行して話が続くのだ。そして、最後の数ページにやっと、この表題の意味がわかってくるのだ。この終わり方は、素晴らしい。この終わりを味わいたくて、再読みする人もいるというのが、うなずける。乳房(池波正太郎)
THE OVERLOOK(MICHAEL CONNELLY)
MICHAELCONNELLYのTHEOVERLOOKを読んだ。前作が、ECOPARKのようだが、読んだのに、ほとんど、記憶がなかった。書評の中で、短かったというのがあったが、確かに260ページというのは、短い方かも知れない。ストーリーとしては、殺人の上、放射性物質が、盗まれる。FBIは、放射性物質の行方を追うのを、安全保障のための、最優先事項として動く。ハリーボッシュは、自分のやる仕事、殺人犯を突き止めることにまい進する。FBIや新しい相棒との葛藤の中で、真実にたどり着くという感じだ。非常にスピーディーに話が進み、面白いのだが、ちょっと、今までのハリーボッシュとも違う感じがなくもない。ちょっと、あせりすぎという感じだ。THEOVERLOOK(MICHAELCONNELLY)
佐々木譲の「エトロフ発緊急電」を読んでみた。山本周五郎賞受賞作だ。真珠湾攻撃前の情報戦が主なストーリーなのだが、非常に内容が濃密であり、大作とも言えるページ数(623ページ)だった。南京大虐殺も描かれており、残虐な戦争犯罪にぞっとした。一方で、主人公である日系米国人の不思議な魅力と、ハーフの女性や、朝鮮人、アイヌなどが、複雑に絡み合い、人種というものの難しさや、愛憎までも描かれている。面白かったが、少々、疲れた。エトロフ発緊急電(佐々木譲)
池波正太郎の剣客群像を読んだ。8篇の短編からなる剣客の物語なのだが、決して、著名な剣客をとりあげているのではないことが面白い。名もなき剣客、創作上の剣客なのだ。池波正太郎は、女性の剣客が好きなのか、2編は、女性の剣客も取り上げている。どれも、剣技だけでなく、人として、人生として一味も二味もある物語となっているのが、面白い。このシリーズは、忍者群像とか、仇討ち群像もあるようなので読んでみたいものだ。剣客群像(池波正太郎)
アガサ賞最優秀デビュー長編賞受賞の本書を読み終えた。なかなか面白かった。第一容疑者だった主人公が、自分の嫌疑を晴らすために、いつのまにかシロート探偵になっているのだ。場所の設定も、エジプト、ピラミッドの見れる実際に存在する高級ホテル、メナハウスホテルなのだ。登場人物も、それぞれ、過去に明かせない秘密があったり、怪しい人物も多く登場する。若干、話の展開に無理がある気もしないではないが、主人公とその相棒になる二人の関係もばっちりであり、次作以降が楽しみな作者だ。メナハウスホテルの殺人(エリカ・ルース・ノイバウアー)
忙しかったり、途中で、やめた作品があったので、少し、間があいたが、やっと、この作品を読み終えた。異常な暑さのせいで、読書がつらかったせいもある。まず、この作品の出だしのスピーディーさには驚いた。JOHNGRISHAMにしては、珍しいアクション映画でも見ているようなストーリー展開なのだ。厳重な図書館から貴重な直筆原稿を盗み出すという物語だ。5人の一味のうち、2人はあっけなく捕まってしまう。そこで、ガラッと話の展開が変わるのだ。CAMINOISLANDというビーチの町の話になる。そこには、書店があり、その店主はまちに住む作家と交流を持ち、また、貴重な初版本などの収集もしているのだ。この店主が、盗まれた原稿を所持しているとの情報があり、保険会社が秘密裏に調査するのだ。後半は、スローな展開となり、前半とは、ガラッ...CAMINOISLAND(JOHNGRISHAM)
久しぶりに宮部みゆきの時代劇の小説を読んだ。岡っ引きの親分に拾われた孤児で、本業である文庫(本や小間物を入れる箱)売りで生計を立てる少年の物語だ。親分がフグに当たって亡くなってから、周りの人に助けられながら、事件を解決していくのだ。4編からなる中編小説だが、最初の2編は、やや、ゆっくりとした展開だったが、3編から、もう一人のキタさんが登場し、4編目は、スピード感も出てきて、面白く読めた。登場人物もユニークであり、今後が期待できそうに思えた。きたきた捕物帖(宮部みゆき)
新聞書評でお勧めの本書を読んでみた。ウインダム図書館という創設者の本だけを保存している図書館には、おかしな規約があった。一切、本を増やしたり、減らしたりしてはいけない。それを確認するための監査が入ることがあるというのだ。そのウインダム図書館で、学生が殺害される。主人公がユニークだ。大学の学寮付き保健師の女性なのだ。普段から学生の体調や困ったことの相談にのってやることから、警察をいやがる学生も、信頼して、話をしてくるのだ。少々、こみいった設定もあり、やや、まどろっこしい部分もあるが、いかにも、イギリス人が好きな英国ミステリではないかと思う。中々、最後まで、全貌がわからない面白いミステリーだった。ウインダム図書館の奇妙な事件(ジル・ペイトン・ウオルシュ)
新聞の書評で見つけた本書を図書館で見つけて、読んでみた。英国推理作家協会賞ヒストリカル・ダガー賞受賞作とのことだ。インドのボンベイが舞台で、英国外交官が殺害される。はきだめのような警察署の中で、インド初めての女警部が担当となる。女性ということで、警察組織の内外でも逆境に立たされながら、正義感旺盛で、頑固なまでに不屈な主人公が、難事件に挑む。インド、パキスタンの分離独立運動や、共和国化の混沌も描かれており、重厚な作品にもなっている。そして、最後の章での、見事な謎解きは、アガサクリスティーのポアロを思わせる見事さであり、絶賛に値する。作者は、両親はパキスタン人とのことだ。また、読んでみたい。帝国の亡霊、そして殺人(ヴァシーム・カーン)
佐江衆一氏の「江戸職人き譚」を読んでみた。9編からの江戸時代の職人などを主人公にした短編集だ。錠前師、凧師、葛籠師、人形師、大工、化粧師、桶師、女刺青師、引札師などを描いており、そのユニークさに感嘆した。もともと、純文学から初めて、時代小説に移っていったとのことで、文章も素晴らしかった。特に、抑えたエロチシズムとでも言うのであろうか、男女の想いが良く描けていた。気に入ったのは、2番目の笑い凧と最後の思案橋の二人であろうか。江戸職人き譚(佐江衆一)
奥田英朗の伊良部医院シリーズ第3弾を読んだ。すっかり、このおかしなシリーズにはまってしまったようだ。4つの短編からなるが、だんだん、洗練されてきたような気がする。一作目、二作目に負けず劣らずの第三弾だった。第4弾が楽しみだ。町長選挙(奥田英朗)
恩田陸の「ユージニア」を読んだ。傑作ミステリーとのことで読んだのだが、正直言って、自分にとっては、不完全燃焼だった。話の展開や会話のおもしろさは、さすが、恩田陸だと思ったが、これをミステリーと呼ぶには、もやもやっとしたものだが湧いてくる。もちろん、怪しさや、話が前後左右に振られる目まぐるしさなど、まあ、よく書いたなあという感想はあるのだが・・・最後のユージニアノートなるものが付いていたが、これまた、流し読みするのもつらく感じてしまった。ユージニア(恩田陸)
STEPHENKINGのビル・ホッジス3部作の最後を読んだ。STEPHENKINGの時々、わからない単語、造語、スラングなどにも少し慣れてきた。辞書に出てなくても、まあ、だいたいの意味がわかればよいかと読み進めるのが苦痛でなくなったきたのが不思議だ。今回は、メルセデス事件で捕まった犯人が動けない中で、病院のようなところから、ゲーム端末を使って、催眠術で端末使用者をコントロールして自殺に追い込むのを阻止する物語だ。主人公のホッジス、ホリー、ジェロームが活躍する。後半のスピーディーな対決も面白く読めた。この後も、ホリーが活躍する続編があるようなので、読んでみたい。ENDOFWATCH(STEPHENKING)
葉室麟の「大獄」を読んでみた。西郷さんと言えば、維新前後の話が多いところだが、そこまで行く前の若かりし頃の物語だ。新将軍に一橋慶喜を推し、徳川慶福を推す井伊直弼一派の暗躍に敗れ、月照とともに海に飛び込んで死んだことにされ、奄美大島に名前を変えて隠される。井伊直弼は、安政の大獄の反動で、桜田門外の変で、暗殺される。そういった時代の話だが、面白く読めた。それにしても、島津斉彬という人物の先見の明と薩摩藩という大名の藩主ながら、日本国という国を第一に考える姿には、感銘した。当時、外国に威圧されながら開国を迫られた日本のあるべき姿を描けた数少ない人物だったのだろう。大獄・西郷青嵐賦(葉室麟)
ノーベル文学賞作家、ウイリアム・ゴールディングの代表作、「蠅の王」を読んだ。子供の時、ロビンソン・クルーソーや十五少年漂流記を歓喜して読んだ記憶がある。自分の海への憧れは、このころ、形成されたのではないかと思われる。今回、読んだ作品には、まったく、違う少年たちの島での生活が描かれる。最後の解説で、初稿の時に、書かれていた共産主義圏と、自由主義圏の間の核戦争勃発によりイギリスの学童が飛行機で国外へ疎開するシーンは編集者の助言でカットされている。だが、さらっとした表現の中から想像できるようになっている。まるで、現代の世界的な危機的状況でありそうなことなのだ。しかし、飛行機から落下もしくは不時着した少年たちの行動がメインに書かれており、そんなことは忘れてしまいそうになる。むしろ、主題でもある少年たち、人間に潜む...蠅の王(ウイリアム・ゴールディング)
井上荒野の直木賞受賞作、「切羽へ」を読んだ。切羽とは、”せっぱ”と読むと思い込んでいたが、違った。トンネルを掘っていった先のことで、”きりは”と読むらしい。おそらく、このことを知った著者が、両方の意味を含ませて、この作品を作るきっかけになったのではないかと想像する。裏表紙には、繊細で官能的な大人のための恋愛長編とある。恋愛小説を読んだことがあるかと問われたら、おそらく、即座にNOと答えるだろう。もちろん、記憶をたどれば、高校の時に読んだ志賀直哉の「暗夜行路」は、近いかも知れない。英語の授業で読んだチャタレイ夫人は、どうか?この作品についていえば、結構、面白かった。狭い島の中の限られた世界での個性あふれる男女の会話が楽しめた。かたや不倫から抜け出せず、修羅場を見せる同僚の女性教師と対照的に、抑制しながら、た...切羽へ(井上荒野)
奥田秀朗の5編の短編からなる「コロナと潜水服」を読んだ。他の書評でも、後半の2編、「コロナと潜水服」と、「パンダに乗って」の評価が非常に高いが、納得だ。この2編は、傑作と言っても良いと思う。じんわり、感動したり、涙腺が緩んで、心地よい気持ちになれた。前半の3篇も、同じ、霊にまつわる話であり、悪くはないが、後半3篇ほどではなかった。「空中ブランコ」ほど、ふざけた感じがないので、笑いは、抑制されているが、「コロナと潜水服」の題名の潜水服が何に使われるか想像できなかったのはうかつだった。奥田氏の作品が、自分好みなのは、世代が近いせいかも知れない。お勧めである。コロナと潜水服(奥田英朗)
Will You Please Be Quiet,Please?(RAYMOND CARVER)
RAYMONDCARVERの最初の短編集を読んでみた。そもそも、この作家の名前は、前回、読んだスティーブン・キングの小説の中に出てきて、知ったのだ。1938年~1988年に短編小説の活性化に貢献したとある。村上春樹が翻訳して、日本紹介の先鞭をつけたようだ。アメリカの労働者階級の生活の断片を181ページ、22編という、時には10ページ未満の長さで描いている。最初、何か、オチのようなものがあるのかと思って読んでいたが、逆転の落ちとかはない。また、感動するような物語も一切なかった。何が言いたいのか?アルコール依存症でもあった著者の人生、生活、世界を淡々と、時には、不可思議に描いたということか。英語は比較的平易で、詩人でもあることから、文章も悪くないと感じた。この世界が好きな人もいるだろう。WillYouPleaseBeQuiet,Please?(RAYMONDCARVER)
「ブログリーダー」を活用して、thomazさんをフォローしませんか?
指定した記事をブログ村の中で非表示にしたり、削除したりできます。非表示の場合は、再度表示に戻せます。
画像が取得されていないときは、ブログ側にOGP(メタタグ)の設置が必要になる場合があります。
はてなブログへのお引越しをしてきました。よろしくお願いします。気が付いたら、gooで、18年もブログを書いていたとは...良く続いたものです。誰かに読んで欲しくて書いていたわけでもないような。自分の記録を残しておくのに便利なツールだったというだけかも知れません。自分でホームページを作ってた時期もありましたが、ブログは、楽ちんだったということです。移行して、これから、更に続けられるのか、発展していくのか謎です。ブログのお引越し
2021年、第十一回アガサクリステイー賞を受賞し、いまだに本屋にも並んでいる本書を読んでみた。ロシアの女性狙撃手の話ということで、その主人公の意外性には、だれでも、少しは、興味を持つ作品だ。今の、ロシアのウクライナ侵略にも関係するのかしらと思う方もいるかも知れないが、それはない。第二次世界大戦でのナチスドイツとロシアの戦いの中での話だ。4年間の戦いで、ドイツ7百万人、ロシア2000万人の戦死者が出たという。読んでみて、非常に面白く読めたし、銃撃戦の場面の表現には、脱帽するばかりだった。最後にロシア文学者から、感動の書とのコメントがあった。数多くの資料が参考文献として一覧になっており、また、時代背景も監修もされており、しっかりした作品になっている。しかし、どうも、自分には、しっくりこない部分があった。感動も...同志少女よ敵を撃て(逢坂冬馬)
本当に久しぶりに横溝正史の作品を読んだ。これも、新聞のおすすめか何かを見て、選んだものだ。表題の『死仮面』のほか、もうひとつ、逝去直前の作品という『上海氏の蒐集品』という小作品も入っていた。どちらも、そこそこ、面白かった。死仮面のほうは、金田一耕助が登場する。あまり、ストーリーについては、述べるのは、やめにしておこう。死仮面(横溝正史)
『マタギに学ぶ登山技術』という本を流し読みしてみた。マタギには、興味があり、以前、『黄色い牙』という小説を読んだことがある。興味の一つは、どうやって、登山道でもない山を縦横無尽に歩けるのだろうか?熊や他の動物を、どうやって狩猟できるのか?などなどである。本書は、そういった疑問に答えてくれ、かつ、面白い話を聞くことができた。マタギは、無雪期は、猟をしないと聞いて、驚いたが、山菜採りなどには、、山に頻繁に入るらしい。例えば、熊に、銃を持ってなかったとき、突然、出くわしたときである。帽子でも、ザックでも、身の回りのものを放り投げると最初に投げられたものに噛みつく習性があるので、その間に逃げるというのだ。また、熊は、下りに弱いので、下に駆け降りると良いという。マタギに学ぶ登山技術
町田そのこのデビュー作である『カメルーンの青い魚』を含む5編の連作短編集を読んだ。「女による女のためのR-18文学賞」という聞きなれない賞の大賞受賞作なのだが、その選考委員から絶賛されたのがうなづける。素晴らしい才能に満ちあふれた作品群だった。ひさしぶりに文句なしの素晴らしい短編集に出会えた満足感に浸っている。個々にどうこういう必要はないだろう。5編が、どう連作になっているかも面白いし、どんでん返しのような意外性がある作品もあるし、遠藤周作の『私の愛した..』を思い起こす人間愛を感じる作品もある。あえて一つを選ぶとすると『波間に浮かぶイエロー』のどんでん返しと、奇妙な関係が不思議に気に入った。間違いなく別の作品も読んでみたい作家である。夜空に泳ぐチョコレートグラミー(町田そのこ)
やっと、『黒部の山賊』を読むことができた。多分、何かの書評で、この書を知ったのだろうが、表紙のイラストと題名から、興味を持っていた。終戦直後、登山中の学生が、復員兵に撲殺され食料を奪われる事件があった。そんなこともあって、黒部周辺を根城にする山賊がいるという噂が流れた。著者は、山小屋経営に乗り出そうとしていたが、ちょうど、購入した山小屋に、その山賊たちが住んでいたのだ。その山賊たちと、山小屋を再建して奇妙な生活をするようになるのだ。何とも、実話とは、思えないような不思議な話なのだ。いろいろ、面白い話が混ざっており楽しく読めた。定本黒部の山賊(伊藤正一)
オール読物新人賞を受賞して初めての単行本で、書評の評判も良かったので読んでみた。5話も短編集なのだが、どれも、良質の作品に仕上がっている。特に気に入ったのは、幼馴染で、恋人でもある『登』が、活躍する第二話版木どろぼうと第5話火付けだ。母には、捨てられ、父は自殺して、天涯孤独となった主人公のおせんが、周りの人に助けられながら、かつ、気丈な強さを発揮して自活していく姿が描かれる。ちょっと、謎解きのような部分もある。江戸の生活をよく描けている。おせんと登の、淡泊ともいえる男女関係も面白い。最後の『火付け』の終わり方も希望に満ちていてすがすがしい。貸本屋おせん(高瀬乃一)
『このミステリーがすごい!』の文庫グランプリを受賞した本作品を読んでみた。父親が通り魔に殺され、母も失踪。妹も遺体で発見されたうえに、保険金詐欺の疑いもかけられるというどうしようもない状況で、何とか、妹の潔白を信じて、行動する主人公の物語だ。最後の解説の表題で、『二転三転四転五転の力業で読者をねじ伏せてくる』とあるのだが、なるほどとは思うが、ここまで、ひっくり返されるのも、あまり良い気持ちではないなと思った。正直言って、後半は、もう少し、面白い展開を期待したのだが、単に、読者の裏を行くだけをねらった作品になってしまったような気がする。あまり、自分の好みではない。レモンと殺人鬼(くわがきあゆ)
7編からなる短編集『海』を読んでみた。そのうちの2編は、2~3ページと、こんな短い作品読んだことないというものだった。最後の解説で、『スケッチ』という言い方をしていた。それにしても、作品の短さに比べて、最後の解説が、長く感じた。最後には、インタビューも載っていたが、これは、、小川洋子の作品への気持ちが伝わっていた。さて、個々に書き始めると長くなるので、全般を通していえることは、発想や設定が、独創的であることだろう。。また、どんでん返し的な転換も巧みである。でも、最も特筆すべきは、その表現の仕方かもしれない。何とも言えない魅力があるのだ。それほど、ウエットではない、ユーモアもあるのだが、それほど、笑わせたがっているわけでもない。その魅力は、中々、表現が難しいが、はまってしまいそうである。さて、この短編集の中...海(小川洋子)
MICHAELCONNELLYの『THESCARECROW』を読み終えた。ハリーボッシュシリーズに出てくるFBI女性捜査官、レイチェルと新聞記者を首になりそうな元カレの主人公の物語だ。主人公は、ある女性から電話があり、自分の息子は、えん罪を着せられようとしていると訴えてきた。調べているうちに、過去、同じようにビニール袋をかぶせて窒息させられ、車のトランクに遺棄された事件があったことに気が付く。引継ぎのための2週間の期間に、最後のニュースの執筆をすべく、主人公は、過去の事件の犯人の収監される刑務所に飛ぶ。2週間と時間が限られていて、スピーディーな展開であったり、ボッシュとうまくいってないレイチェルとの関係修復など、ハリーボッシュものと、ちょっと違うのだが、結構、面白かった。THESCARECROW(MICHAELCONNELLY)
海外ミステリー(洋書)で読んだものを作家別にご紹介します。追加:THESCARECROW(MICHAELCONNELLY)①PRESTON&L.CHILDTHUNDERHEADCABINETOFCURIOCITYBRIMSTONERIPTIDEDANCEOFDEATHTHEBOOKOFTHEDEADTHEWHEELOFDARKNESSCEMETERYDANCEFEVERDREAMCOLDVENGEANCETWOGRAVESBLUELABYRINTH②DANBROWNDIGITALFORETRESSANGELS&DEMONSDECEPTIONPOINTTHEDAVINCICODETHELOSTSYMBOL③DAVIDBALDACCITHEWINNER④DENNISLEHANEMYSTICRIVER⑤HARL...海外ミステリー(洋書)読書記録2025年3月2日
ジェイムズ・リー・バークのMWA長編賞を受賞した本作品を翻訳で読んだ。正直言って、これを原書で読んだら、かなり、理解に苦しんだであろうと思った。翻訳版で読んでも結構、苦労したのだから。最後の解説で、ジェイムズ・リー・バークは、もともとは、純文畑に身を投じていたとのことだ。それで謎が解けた。何とも、その表現は、複雑で、拡張高く、情景描写が多く、ただのハードボイルド作品、ただのミステリー作品ではないのだ。ストーリーとしては、元警察警部補の主人公が、面倒にまきこまれて、ぶちのめした二人組の一人を殺した罪に問われる。実際に殺した片割れが証人になっており、覆すのが、絶望的な状況なのだ。保釈期間中に、何等かの手を打たねば、有罪になり、刑務所送りになってしまう。限られた時間なのだが、なかなか、スピーディーには、話が運ば...ブラック・チェリー・ブルース(ジェイムズ・リー・バーク)
藤沢周平の本著を読んでみた。最近、NHKの大河ドラマで、『べらぼう』を見始めた。大河ドラマを見るなんて、本当に久しぶりだ。そして、見続けている。理由は、時代劇であること。ストーリーも中々、面白いからだろう。本屋にも、蔦屋の特集本が出回っている。そんな中で、読んでみたくなったのだが、読み終えて驚いた。10年前に読んでいたことがわかったのだ。その時の感想が下記の通りだ。”歌麿の生活を想像して、見事に再現した作品。写楽の謎にも迫る部分があり、浮世絵小説として、興味があった。時代小説として、山本周五郎と比較されるが、山本の天才に比べ、地味であり、題材の妙で読ませる感じがした。その蛋白な雰囲気は、歌麿の生活そのものに現れている気がした。”何とも、10年前と今では、ちょっと、異なる感性になっているのかもしれない。歌麿...喜多川歌麿絵草紙(藤沢周平)
今年初めての洋書として、JAMESLEEBURKEの洋書を読了した。JAMELEEBURKEは、日本では、あまり知られてないかも知れないが、エドガー賞に3度も輝いた、米国のミステリー作家だ。今回の洋書は、図書館にあったのだが、ミステリーとは、ちょっと、異なる南北戦争の中で、南部に住む人間の人間劇を描いた重厚な作品となっている。英語は、情景描写も多く、南北戦争の時代背景などを知らないと、ちょっと、読みにくい感じがした。あたかも、歴史小説?ノンフィクション?とも思えるような登場人物のその後の結末を簡単に書き記すような終わり方をする。エドガー賞受賞作は、翻訳したものしか図書館にはないようなので、今度は、それを読んでみようと思う。WHITEDOVESATMORNING(JAMESLEEBURKE)
宮部みゆきの「孤宿の人」を読了した。裏表紙に著者の時代小説最高峰、感涙の傑作。と書いてあった。なるほどと思わせる作品だ。正直言って、今まで読んだどの作品とも異なる不思議な作品でもあった。不幸な少女、「ほう」が、やさしい人たちに出合いながら生きてゆく姿が描かれる。一方、幕府から押し付けられ幽閉された者を悪霊と領民たちは恐れおののく。その通り、次々に恐ろしい事件が発生する。この二つが、柱になるのだが、いったい、どうなるのか、謎に包まれた話の展開になるのだ。「ほう」という珍しい名前が、感涙につながるから不思議だ。孤宿の人上下(宮部みゆき)
読売新聞の書評で知った本書を読んでみた。玉岡かおるの書は、2度目だが、どちらも設定、発想がユニークだ。本書も、壇之浦で、草薙の剣が、海中に消えたとされるが、その真相を知るため旅に出る若武者の話だ。正直言って、長かったし、少々、緩慢に感じた。冒険旅行記であれば、それなりに、わくわく、どきどきするようなスピーディーな展開が欲しかった。その時代背景の雰囲気を盛り込もうとしたためだろうか?やや、冗長に感じてしまった。魅力のある登場人物と発想であるだけに惜しかった。さまよえる神剣(玉岡かおる)
先日、市川雷蔵の古い映画を3週連続でBSテレビ放映していた。その中で、「剣鬼」というのがあり、思わず見てしまった。少々、荒唐無稽なところがある作品だった。何しろ、犬の子と言われて育ち、馬鹿にされぬように、一芸に秀でろと養父に遺言される。すると、花を育てる特殊な能力を発揮する。更に、馬に負けずに走れる能力もあることに気が付く。更に、居合を練習する武士を見て、居合を習得するのだ。誰の作品かと思えば、柴田錬三郎だったので、その作品が載っている短編集を借りてきたのだ。それは、「人斬り班平」という題になっていた。映画のストーリーと若干、変わっていたが、上記の一芸は、変わらない。上記のほかにも5編の短編があるが、どれも、中々、面白く読めた。剣鬼(柴田錬三郎)
大名倒産(上下)を読み終えた。正直言って、上下巻は、長かった。今まで読んだ、浅田次郎の作品とは、ちょっと、違う世界だった。いわゆる、ドタバタコメディー的とでも言うのか。経営破綻しかけてる小藩で、長男が亡くなったので、突然、4男の主人公がお殿様になって、立て直しをはかる。一方、引退した元藩主は、ある計画を画策していた。一見、普通の時代劇っぽいが、ハチャメチャになってくるのだ。それは、貧乏神やら、七福神が出てくるからだ。これを、カットすれば、随分、すっきりした作品になったと思える。だが、あればこそ、このとてつもない物語が成立するのかも知れない。大名倒産上下(浅田次郎)
JOHNGRISHAMの”SKIPPINGCHRISTMAS"を読んだ。丁度、年末のクリスマスに近くなってきたこと。また、分厚い洋書に疲れたあとで、ちょっと、軽めの本(177ページ)を選びたかったことが主な理由だ。予定通り、年内に読み終えることができた。娘が海外派遣隊に参加で、おそらく、1年くらいは、帰って来ないだろうと考えて、今年は、クリスマスをスキップしてクルーズ旅行に出ようとした夫婦の物語だ。JOHNGRISHAMの本は、随分、読んでいるが、とても、JOHNGRISHAMの本とは思えない物語だった。何しろ、ちょっと、ホームアローンが浮かぶようなコメディータッチなのだから。単語も、裁判関係の単語が出てくるわけではなかった。FROSTYが、雪だるまのような有名なキャラクターで、屋根に着ける飾りにもなって...SKIPPINGCHRISTMAS(JOHNGRISHAM)
笹本稜平の最後の作品とも言える「山狩」を読んだ。笹本稜平と言えば、警察小説や山岳小説が有名だが、両方を併合したような作品だ。舞台は、千葉県の伊予が岳で、登ったこともあり、親しみがあった。しかし、その伊予が岳で、山狩りがなされようとは、.......。さて、伊予が岳で、女性の遺体が発見される。事故として処理されそうになるが、実は、ストーカーされていたことがわかり、事件の可能性も検討される。女性の祖父は、元警察副所長であり、殺人の可能性を示唆する。ストーカーした男の親は、地元の権力者であり、警察のみならず、暴力団ともつながりがあった。ストーカー担当の生活安全課が、警察本部の中で、孤立しながら、警察の良心として、最後まであきらめず、戦う姿には、感動を覚える。少々、長くて、絶望的な状況が続くが、最後は、霧が晴れる...山狩(笹本稜平)
辻堂魁の風の市兵衛シリーズの第3作目を読んだ。最後の解説で、「読み心地の良さを、これほどまでに味わえる作品にはなかなか出会えまい」という言葉があったが、なるほどなと思った。今回は、抜け荷を暴いて、悪を成敗するといった、やはり、せいせいする市兵衛の活躍が見れる。また、船上の戦いという、はらはらどきどきも味わえる。気が付けば、3作目まで来たが、また、きっと、4作目も読むことになるのかも知れない。帰り船(辻堂魁)
JOHNGRISHAMのTHETESTAMENTを読んだ。ある大富豪が、遺言書を書き換えた後に、飛び降り自殺する。その遺言書によると、すべての財産を、ブラジルのジャングルに宣教師として赴任して、どこにいるかもわからない子供、妻ではない女性に産ませた子供に託すというのだ。二人の元妻に産ませた子供たちは、遺産相続を期待していたから収まらない。それぞれ、弁護士を雇って、書き換えた遺言書は、無効と訴える。一方、大富豪の顧問弁護士は、宣教師の女性をアル中で、リハビリをしていたパートナーに探すように指示するのだ。ジョングリシャム得意の法廷劇もあり、一方、珍しいジャングルクルーズのようなアドベンチャーもありで、楽しめた。THETESTAMENT(JOHNGRISHAM)
荻堂顕の新潮ミステリー大賞受賞作である本書を読んでみた。読売の書評で、この作家のことを知って興味を持った。ちょっと、変わった作品であることはまちがいない。ストーリーとしては、少し前に読んだミッドナイトライブラリーに近いかもしれない。他の地域に逃げたり、現実に絶望して、人生から逃げるのを助けるのが主人公の女性だ。ミッドナイトライブラリーの場合は、自分で、やり直したい人生の分岐を選べたと記憶している。そして、何度となく、試せるのだ。一方、本作では、理想の人生が決められていて、そこにいると、幸福を感じて、満足するというのだ。どうなるのか、気になって、一気に読むことができた。しかし、読後感であるとか、終わり方については、若干、違和感を感じざるおえなかった。自分との相性のようなものだろう。偽傷の鳥はつかまらない(荻堂顕)
映画「碁盤斬り」を見てきた。時代劇であり、草薙ファンであり、かつ、原作が、落語とあっては、見ないわけにいかない。事前に、ユーチューブで、志ん朝の「柳田格之進」を聞いておいた。久しぶりに落語を聞いたのだが、志ん朝の人情噺は、やはり、うまかった。さて、映画だが、かなり、脚色され、登場人物も変えられていた。しかし、上手に変えられていたので、違和感もなく、また、すっきりまとめられていた。時代劇に必要な、剣劇も、十分、楽しめた。さすが、剣道初段の草薙である。身のこなしも速い。囲碁の勝負も、この映画の見どころで、かなり、凝っていたのだが、超初心者の私でも、楽しめたし、緊張感のある映像となっていた。登場人物、キャストもすっかりはまっていた。それぞれが、良い演技をしており、名前の知らない俳優も気になったくらいだ。映像も、...映画「碁盤斬り」
最近、BSなどで、梓林太郎原作の山岳ドラマが再放送されている。もう、20年以上前の作品ながら、結構、楽しめた。梓林太郎氏は、今年の1月に亡くなっている。それを追悼して、かってのドラマを再放送しているのかも知れない。山岳ミステリーは、随分、読んでいたが、梓林太郎氏の作品は、読んでなかったので、今回、読んでみることにした。本作は、本格山岳ミステリーの傑作と言われている。女性登山者の転落死体が発見され、単独登山の事故と見られていたが、後ろ姿だけが写っていた男性の同行者がいることがわかった。しかし、転落した女性を残して、いなくなってしまったのだ。いったい、その男性とは、誰なのか?結構、楽しめたので、また、読んでみたい。北穂高岳殺人山行(梓林太郎)
浅田次郎の「帰郷」を読んだ。いわゆる、戦争小説と言えるものだ。帰還兵の話だったり、高射砲の修理兵の話、父が戦死した息子の話などなど、6篇の短編からなる。一番、最初の「帰郷」が、救いもあり、好きな作品だった。最後の「無言歌」が、何とも、悲しく、救いのない中で、最後にふさわしい作品だった。著者は、私と同じく父母が戦争体験のある戦後第一世代である。それでも、こういった戦争小説が書けるのは、驚きだった。そういえば、私の子供の時にも、まだ、渋谷には、傷痍軍人がいた記憶がある。解説の最後に、戦争小説を非戦小説にねりあげていったとあるが、ちょっと、疑問に感じた。帰郷(浅田次郎)
岩井圭也の山岳小説、「完全なる白銀」を読んだ。中々、面白かった。まず、主要登場人物が3人の女性ということだ。アラスカの温暖化により、いずれ、海の下になって、なくなってしまう島に住む2人の現地人女性と日本人女性が主要登場人物だ。温暖化を世界に訴えるため、まず有名人にならなければならない。そのために、女性で初めて、冬のデナリ(アラスカ最高峰)登山を目指す女性リタ、彼女をサポートするシーラ。それから、写真家として自立を目指す日本人女性,緑里。困難な登山シーンなど、はらはらどきどきものだった。ただ、最後のエピローグは、やや、長すぎた感があった。完全なる白銀(岩井圭也)
百田尚樹の「禁断の中国史」を読んだ。図書館で目についたので、読んでみたのだが、隣の中国という国について思い知らされた。宦官、纏足、科挙制度など、聞いたことのある制度のほか、刑罰や共産党の実態を読むに日本の感覚との違いに恐ろしくなった。それも、遠い昔のことではないのである。書評でも、すべての日本人が読むべきというコメントがあったが、なるほどと思った。禁断の中国史(百田尚樹)
映画は見たことがないが、アカデミー賞は取っているし、原作も、ブッカー賞を取っているということで、読んでみた。今までには、もっと、手ごわい作品にもトライしたことがあるだけに、何とか、読み終えた。しかし、どこまで、理解したかは、わからない。一見、読み進めることができそうでいて、頭には、すっきり入ってこないのだ。あとで、他の人の書評を読んで、その点がはっきりした。詩的表現が多く、登場人物の視点も、固定されず、頻繁に変わり、時間軸も前後行き来する。自由奔放な作品ということだ。また、ヘロドトスや歴史、文化、文学への知識も膨大だ。ストーリー的には、戦争で心身に傷を負った4人の人物の心のふれあいが描かれているわけだが、それも、自分の理解力では、少々、あいまいもことした程度だった。THEENGLISHPATIENT(MICHAELONDAATJE)
山本兼一の「命もいらず名もいらず」を読んだ。以前から、読みたい本だったが、上下巻の分厚さに尻込みしていた。内容は、幕末の3舟の一人、山岡鉄舟の史実をもとにしたフィクションだ。山岡鉄舟という人物は、ドラマでも、坂本竜馬や、勝海州にような主役では、あまり見たことがない。しかし、今回、読んでみて、江戸城の無血開城に最終交渉したのは、西郷と勝だが、その前に、西郷に説得に行ったのは、山岡鉄舟であり、そのとんでもない行動力がなければ、歴史も変わっていた可能性が高い。その魅力にあふれた山岡鉄舟の一生を描いた本作は、その長さも忘れて、一気に読んでしまった。酒を9升も飲んだり、とても、常人ではない人間が、明治天皇のお目付け役とも言える侍従になるなど、不思議でたまらなかったが、その謎が本書で解き明かされる。山岡の死は、侍の死...命もいらず名もいらず(山本兼一)
アカデミー賞を受賞したとのことで、再度、映画放映されだしたので、「君たちは,どう生きるか」を、先月、見に行った。平日だったせいか、数えるほどの人数で、しかも、私も含め、中年以上が多かった。映像は、さすがという美しさだった。7人の小人ならず、7人のおばばが出てくるのが面白かった。声優に豪華な俳優陣をふんだんに使っているのも、面白かった。ストーリー的には、今までにない新規性は薄かったが、ジブリ的ファンタジーを楽しめた。表題になった「君たちはどう生きるか」の本が映画の中で、最後に出てくるのだが、著者が、吉野源三郎と山本有三の共著になっているのが気にかかった。山本有三は、中学の頃に読んだ「路傍の石」に感動した記憶がある。調べたところ、山本有三が、体の具合が悪く、吉野に委託して作成されたらしい。当初は、共著と表記さ...君たちはどう生きるか
ユニークな将棋棋士として有名な升田幸三の本エッセイを読んでみたくなった。非常にユニークな部分もあるが、文章は、いたって普通なのに驚いた。将棋と新聞社というのは、今もそうだが、繋がりがあり、本著も新聞に連載されたものだ。あとがきで、当初の意図は、若いサラリーマンに読んでもらいたいとのことだったようだ。印象に残ったのは、有名な話で、戦後、GHQに呼ばれ、将棋は、取った駒を使って、捕虜虐待じゃないかと質問され、反論し、チェスは、王様を助けるために、女王を盾にするのはどういうわけかと逆に質問したという。また、殺気を呼ぶため、対局前に血のりのついた太刀を抜き、素振りをして、勝つのだぞと言い聞かせたことがあるという。それから、奥さんに刀は隠されたそうだが。勝負(升田幸三)
池波正太郎の群像シリーズの忍者群像を読んだ。忍者というと、どうしても、甲賀と伊賀の戦いを思い描いてしまう。また、屋根裏をうごめいたり、堀の中を泳いだり、手裏剣をなげあったりである。しかし、この忍者群像に出てくる忍者は、少し違う。どちらかというと、スパイなのである。敵の中に入り込んで、信用され、必要な情報を得たり、敵の作戦を頓挫させるような戦国時代のスパイとしての活動なのだ。本作は、7作の短編小説からなるが、どれも、面白く読めた。さすが、池波正太郎である、非常な忍者にも、人間味や非情でない部分を見せたりするのがうまい。忍者群像(池波正太郎)
MATTHAIGのファンタジー小説、「THEMIDNIGHTLIBRARY」を読んだ。書評で、かなりの評価を得ている作品だ。職場も首になり、ペットの猫も事故で亡くなり、絶望から、死にたいと思ったとき、目の前に不思議な図書館が現れ、その書棚から本を選ぶことで、こうすれば良かったと思う人生のやり直しを試せるのだ。誰でも、あの時、こうすれば、どうなっていただろうとか、想像することがあるかも知れない。それが、何度でも、お試し可能なのだから、お得と言おうか、理想と言おうか。しかし、そう簡単なわけではない。何度も試しているうちに、少々、飽きてきて、うんざりしてきてしまう。いったい、このあと、どうするんだ?しかし、心配は無用だ。ちゃんと、素晴らしいエンディングが待っているのだ。文体も、結構、美しい文体のような気がした。...THEMIDNIGHTLIBRARY(MATTHAIG)
このブログに最もあった題名の小説を読んでみた。ちいさな炭鉱町で、記念碑などの破壊のあと、つぎつぎに人が殺害されていく。行政官の命で、この町民の取材をゆるされた主人公が、正体不明の奇病におかされた町民とインタビューをし、謎をとこうとするのである。今までに読んだことのないミステリーと言っても過言ではない。翻訳家は、大変、苦労しただろうと推測される。編集者も、この作家の熱烈なファンのようだから、翻訳家を励まし続けたのかも知れない。読むのも、結構、大変だったが、つぎつぎに終わることのない謎の多さに驚かされる。ちょっと、変な読後感だった。ミステリウム(エリック・マコーマック)
奥田英朗の「向田理髪店」を読んだ。少し、軽いものを読みたくなると、奥田氏の作品を手に取ることにしている。この作品は、「空中ブランコ」に比べれば、いたって、まじめな作品だ。かっては、炭鉱で栄えたが、今では、寂れ、高齢者ばかりになった北海道の町で、理髪店を営む主人公の物語だ。こんな町では、何の希望もないから、若者は、外に出ていくべきと、悲観的に考える主人公に対して、息子が、帰ってくるという。そして、失敗を恐れず、何かをしなければと考える若者、希望が描かれていく。短編形式で、中国から花嫁がきたり、映画撮影ロケ地になったり、この町にとっては、大きな事件が起きるのだ。ユーモラスに描かれるのだが、リアリティーもあり、最後には、ちょっと、感動もする。向田理髪店(奥田英朗)
玉岡かおるの新田次郎賞、舟橋聖一生ダブル受賞作の「帆神」を読んでみた。新田次郎賞受賞作品は、結構、自分の好みにあうようだ。船乗りでありながら、船の新しい帆布の創造、拡大に貢献して、かつ、港の浚渫までやってのけ、士分にまで上り詰めた工楽松右衛門の歴史小説と言える。また、女性作家のせいか、男女の恋愛の想いについても、描かれている。少々、長く、読むのに苦労したが、工楽松右衛門という人物のスケールの大きさと魅力に魅了された。帆神(玉岡かおる)
JEFFREYARCHERのFALSEIMPRESSIONを読んだ。何とも、盛りだくさんで、スピーディーな物語だった。英国の旧家が、負債に苦しんでいた。そこで、所持する名画を処分して、借金を返済しようとした。しかし、その女主人が、暗殺され、一番の名画が借金を一手に引き受けている銀行に移動されようとする。さて、それからが、大変だ。何しろ、米国の9.11事件の貿易センタービルにその会社があり、飛行機が突入して、ビルが崩れるシーンが描かれるのだ。何とか、旧家の持つ名画を取り戻し、処分して、借金を返済しようとする女主人公と、女殺し屋を使って、自分の欲しい名画を得ようとする悪玉との対決になるのだ。その中では、いろいろな名画が出てきたり、殺し屋との対決もあり、息も付かせず、面白く読めた。FALSEIMPRESSION(JEFFREYARCHER)
辻堂魁の「雷神」を読んだ。これは、風の市兵衛シリーズの第二弾だ。最後の広告で、何と、既に22巻まで続編が出ていることに驚いた。さすがに、テレビドラマ化しているだけのことはある。テレビドラマのキャストを頭に描いて読むと、頭には入りやすい。主だったキャストについては、うまいこと選んだものだと思う。さて、2巻目だが、内藤新宿で、不当に立ち退きを迫られた老舗に主人公がやとわれ、陰謀に立ち向かうのだ。悪役も、なかなか、怪しく、手ごわく、面白く読めた。機会があれば、また、第3巻も読んでみたいと思う。雷神(辻堂魁)
ときどき松本清張が読みたくなる。正直言って、がっつりは、読んだことがない。最近、テレビで、松本清張の作品をドラマ化したものを見た。「ガラス...」とかの題名だったが、結構、面白かったので、読んでみたくなった。この短編集には、初期作品8作品からなる。一作品、「張り込み」は、読んだことがあると思った。その他の作品は、若干、トリックというか、ネタにこっている感じがした。その辺が、文体などは、総合的には好きなのだが、がっつりはまらない理由かも知れない。「顔」とか「声」とか、なかなか面白い作品だった。ときどき、電話が一家に一台なくて、近くのお店に借りたり、古さを感じるが、それ以外は、ちっとも古さを感じないのがさすがだと思った。電話も一家に一台を通り過ぎて、ひとり一台の携帯電話になっているなど時代の流れを感じた。なぜ「星図」が開いていたか(松本清張)