先週のことである。高速バスで東京に行った。地下鉄に乗って、六本木ヒルズ森タワーを目指した。52階の森アーツセンターギャラリーに入った。10人の芸術家によるMUCA展を観た。その中にバンクシーの作品が数多く展示されていた。それが目的だった。進みゆくと、奥の方に、あのシュレッダーにかけられた「ガール・ウイズアウト・バルーン」があった。そこだけは警備員が立っていた。正面からじっくり観た。左右の側面からも見た。そ...
エビネが咲いています。風知草の横です。楓の下です。表情のあるかわいい小花です。それが立ち上がる花茎に連なります。なぜかどれもがいつもより少なめです。連休最終日ですね。行楽、お勤め、畑仕事、スポーツ、趣味、制作、あるいは恋人の元へなどなど。皆さん、どう過ごされたのでしょうか。私は……。 もうすこし花に合う愛らしい名はつけられなかったかと海老根を見ている (居山聞涛)...
去年の10月1日に私はヒナゲシの種を蒔いた。そして7ヶ月が経ち、今賑やな様に。長く伸びた茎。その上にいろいろな色の薄いやわらかな花。それは僅かな風にも首を振る。だいぶ散ってきた。その花びらを落とした形もかわいい。七月の作品展の制作をしていた。ダメだダメだ。やめた。次への学びとしよう。ゼロにしてやり直す。 夢見る少女になります麦稈帽子を乗せてポピーの花の中で遠い過去 (奈美あや)...
道で偶然に旧知の女性と出会った。12年ぶりくらいだろうか。立ち止まって少し話をする。2年前に定年退職し、さらに同じ職場で週2日の勤務をしているという。そして我が家から比較的近いところに最近新しく家を建てたとも。「今度お宅にお伺いしたいと思います。家に帰って予定を確かめてから連絡しますがいいですか?」「都合のいい日にいつでもどうぞ」そして15分ほど後に訪問日時を伝えてくれた。梅花空木も咲く。純白の柔和な...
先週からコスモスが咲いている。「えっ、まだ五月なのに……」と驚くやらうれしいやら。そして月は改まり、その数は少しずつふえつつある。「秋桜」書けば情緒もあるが、今は夏に入ったばかりの6月。もしかしてそれは早咲きの品種かもしれないが、それにしてもちょっと早すぎないか。45分ほど車を走らせ、かわいい名の文具店まで出かけて新しい鉛筆削りを買った。これまでのに比べてとても使いやすい。 その文字の並びを見てい...
♪卯の花の 匂う垣根に♪♪ほととぎす 早も来鳴きて♪♪忍音もらす 夏は来ぬ♪うちでは利休梅の下で咲いている。それはほのかに香りがする。ところでホトトギスにはいろいろな字があてられる。不如帰、子規、時鳥、杜鵑、蜀魂、杜宇。そして夭逝の俳人もその一つを号に。その句に 押しあうて又卯の花の咲きこぼれ (正岡子規)昨日は庭に大きな青大将がいた。でーんとして動かない。何しに来たのだろう。苦手なので遠巻きに避けて...
玄関横では鉢植えの赤い孔雀仙人掌が咲いている。艶のある鮮やかなグラデーションの花びらが大きく開く。中にはたくさんの雄しべと長く伸びる雌蕊が1本。蕾があと二つ。いっしょに咲かないところがまたいい。仙人掌の花はどうしてこうも美しいんだろう。さて六月。もう、六月か。そう、六月なんだ。 六月という響きに己を叱咤激励する内向きになるなと (上武旋転子)...
サルナシが放縦に蔓を伸ばす。今それに少し厚みのある小さな白い花がいくつもついている。中に放射状になるユニークな蕊。それはこのあとじっくり時間を掛けて秋には緑の甘い実になる。大きさは人差し指の頭ほどで形はキウイフルーツのような楕円形。消毒などしないので、そのまま生食できる。家人はジャムにもする。下の川からアオサギが飛び立った。魚でもいたのだろうか。...
サクラウツギはその名の通り、桜に似た花。その五弁の花は。形が似て。色も似て。賑わいはさほどではないけど。どことなく安らぎを与えてくれる花。大きくて太い山茱萸の下で咲いている。 やさしと安らぎと慰めの桜空木ああ悔しやるせなしの五月尽 (上武旋転子)...
白い小さな花を密集して咲かせているのはイボタノキ。細長い漏斗状の花からはほんのりと芳香が漂う。蜂がその花を次々渡る。庭をのんびり茶色の野良猫が歩いて行く。多くの地で早い梅雨入りという。そして好きな五月が終わる。...
夏蝋梅があるのは庭の北隅。水の流れるところのすぐそば。上には白木蓮が枝を伸ばす。そこを抜けた木漏れ日が届く中に咲く。花びらは二重になっている。外側はピンクを帯びた白い花びら。小さい内側のはやや厚みのある黄色。いずれも数は10枚前後。気品のある花である。開きかけた蕾の様にもしみじみとした味わいがある。 咲くのはいつも白木蓮の下ひそやかにしとやかに夏蝋梅 (上武旋転子)...
ワイルドストロベリーも収穫できる。大きさは小指の先ほどと小さい。これはワイルドの名が示すように本来は野生種の苺。でもいい香りがし、そして甘い。もともとはハーブとしての葉を楽しむつもりで植えたもの。それがグランドカバーのように向こうまで伸びて広がっている。今ではハーブティーより一面の白い花を楽しみ、赤い実りを喜ぶほうが主となっている。ここ数日家人は毎日それを摘んでいる。そしてジャムを作っている。私は...
白で始まる。それに少しずつ赤みが加わる。白い絵の具に一滴二滴三滴と赤い絵の具が落とされていくように。そして濃い赤になる。ハコネウツギは時間経過と共にこうして色を染めながら咲く。そして最後は茶枯れ色に。それは思邪無き無垢な児が育ちとともに様々な色に染まっていくようにも見え。それは人の人生のようにも思え。たとえば純粋な白い愛が知らず知らずのうちに感情という色で混濁するように。 移ろいのはこねうつぎ...
数メートルに渡ってラズベリーを植えてある。株の高さはおよそ2㍍ほど。四月に咲いた白い花は時を経て今は実に。今年もたくさん生った。小籠に摘む。力を入れてはいけない。ポロポロおちるから。やわらかくて潰れるから。やさしくそっとはずすように。ときどき、口に入れたりしながら。野の味らしい素朴な甘さ。そして食卓に。小皿にデザートで。サラダにも乗せて。小籠の出番はあと数回も。時々ヒヨドリも来ているけれど。 ...
カルミアにたくさんの花。見てはいつも思う。蕾は金平糖、開けばパラソルだと。雌蕊1本に雄蕊が10本。中の赤い線模様も10の角を描く。カルミアは見る者を思わず知らず笑顔にさせる。ホトトギスの声がした。キョッキョ キョキョキョと。今年初めて聞く。なんか嬉しくなった。...
しばらく前から柿の木に花がある。小さなクリーム色でやや厚みがのある。花びらを落としたのはすでに膨らんで実の形を呈している。蔕はすでに実に乗る大きさに。もう今から始まっている甘い秋の実りへの営み。 数羽の燕が横の川の上を軽やかに行きつ戻りつしているいいなあいいなあと思う (居山聞涛)...
黄菖蒲が次郎柿の下にある。その立ち姿はなかなかの趣。日本画のモチーフにもなりそう。でもそれは和の花ではない。外来種が野生化したもの。増えないように気をつけている。六回目のワクチン接種をすませた。義姉も来ていた。 風の歌雲の声を聞きつつ黄菖蒲の立つをしみじみ見ている五月 (奈美あや)...
朝、庭を掃いていたら軽トラが止まり、小松さんが収穫籠を手に降りてきた。「おはようございます」「エンドウを摘んできたけど入れ物ある?」台所からボウルをもってくる。それにザザーッと空ける。「ありがとうございます。いつもいただくばかりですみません」「なあに、うちではたべきれんもんで。じゃあな」また竹箒を動かす。夕方には西山さんの奥さんが、「伊那の道の駅で主人が買ってきてくれた」と南アルプス村のクロワッサ...
三種類の芍薬が隣り合って咲いている。うっすらと紅色を乗せた白い花と。中に赤い模様を忍ばせるたっぷりの白い八重の花と。そして紫がかった赤い花と。それぞれが醸す違う雰囲気があってそれぞれに美しく。少しずつ地にもその花びらが広がり始めた。近くの田には水が張られている。今週末には田植えだろうか。 「人生というのは究極に孤独なんですね」と美術家は語ったきっとそうなんだろう (上武旋転子)...
イチイ(たぶん)の木を登るようにして赤い蔓薔薇がある。枝は上で大きく広がり撓む。これは四季咲きで、この先初冬まで花を咲かせる。高すぎて手に取ることはできないので、剪って部屋に飾ったことがない。花を嗅ぐこともできないので香りがあるかどうかもよく分からない。そこでもう30年以上になるのではないかと思う。品種としての名前を覚えていないのでただツルバラといっては眺めている。「カツをあげるので手伝って」という...
赤いチェリーセージがジャーマンアイリスのそばで咲いている。幼子を思わせるような愛らしい表情をしている。春先に上に伸びた枝を切ってコンパクトにまとめた。中川さんが農作業車を走らせながら手を振っていった。私も手で返した。この時期、果樹農家は忙しそうだ。 黄鶺鴒が嘴で地を突きながら尾を上下させつつ歩いている手を休めて見る (上武旋転子)...
空の青に映える濃いピンクの花。反り上がる艶のある蕊。膨らむつぼみ。石楠花が家の入り口で咲いたのは三月下旬だった。そして玄関横の西洋石楠花は遅れて今。去年は賑やかに咲いたが、今年はその三分の一ほどと少ない。西側にある里山の方からカッコーの声が何度も届いた。今年初めて聞いた。「カッコー カッコー カッコー」と、ひとつずつの声のあとに少しの間があって。癒やしでもあり、諭されるようでもあり。 法師の如...