**************** 「あの、今なんて?」「……聞こえなかったならいいよ」 真崎はむつっとした顔で呟き、また窓の外をじっと見ている。「どうせ、僕とは違うタイプだし」「……はい……??」 またわ
ツンデレ姫と美貌の付き人などの恋愛ファンタジー毎日連載。『アルファポリス』『小説家になろう』参加。
男勝り姫君ユーノと美貌の付き人アシャのハーレクインロマンス的なファンジー小説『ラズーン』毎日連載。『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』は出戻り姫シャルンと腹黒王レダンのラブコメディ、時々連載。
**************** コンコン。「…」 コン…コン。「ん……」 夢の中で響いたノックがまだ聞こえてやがる、と思いながら寝返りを打つ。 昼間見た光景のせいか訳のわからない夢で、あの礼拝堂の扉
**************** 「滝さん!」 苛立たしげな声に、我に返る。 バルセローナ、ゴシック地区の一角、大悟の知り合いの家とかを、周一郎は探し当てたらしい。「何をぼうっとしてるんですか」 は
**************** そうやって、過去の傷は時折深く、周一郎の心に口を開けていく。 再会したイレーネは、RETA(ロッホ・エタ)と組んで、周一郎の口からなんとか『青の光景』の行方を引き出そう
**************** バルセローナ。 スベイン北東、カタルーニャ地方の都会。ピカソが育ち、天才建築家ガウディが育んだ街。新しい思想と芸術、植民地戦争の敗北、政治の激動、20世紀末のこの都
**************** 汚れた床の上、倒れたイレーネの側に上尾が膝をついている。左腕に巻いたハンカチを右手で解き、片手で不器用に広げ、無言のままイレーネの顔にかけた。ステンドグラスの破れ目
2010000ヒット、御礼!『ラズーン7』2.羽根の誇り(2)
**************** 「南で『鉄羽根』と『運命(リマイン)』が再びぶつかり出したそうだぞ」「大丈夫なのか、『鉄羽根』は」 与えられた私室の扉の外で、声高に話す者がいる。 アリオは臥せって
**************** 改めて見れば、本当にとびきりの美人、どうしてこんな『忙しい』ときにしか美人と関わらんのだろーか。俺は平時にこそお付き合いしたいと切に切に願っているんだが。まあ、カッ
**************** 仰け反って頭を打ち、泡立った脳味噌の整理にうろたえる俺の耳に、聞き慣れたハスキーヴォイスが届く。(上尾?) どうしてここに、と思うまもなく、上尾は振り返ったイレーネ
**************** それほど大きな丘でなかったにせよ、俺がそこへ辿り着くまでには、数回ルトに指を齧られていた。「ぎゃわ!」 指先に激痛が走って、思わず跳ね上がり立ち止まる。はあはあと
**************** 「けれど、わからないのは」 お由宇の声に我に返る。「どうして、イレーネはあの2人を殺したのかってことね」 俺は、再び、お由宇から丘の上の十字架に目をやった。 俺達がイ
**************** きっ、と軽い音とともに車が止まる。ドアを開けて足を下ろすと、靴の裏で乾いた土が音を立てた。「志郎」「ああ…」 助手席から先に降りたお由宇の白く細い指がさす先、いじ
**************** 回教徒のモスク跡に1402年から100年ほどかかって建てられた116m×76mの規模はスペイン最大のカテドラル、入り口のパロスの門を足元に、『ヒラルダの塔』はある。 高さは97.5m
**************** 「由宇子さん」 唐突に『ランティエ』の声が響いて、俺は我に返った。「『ヒラルダの塔』と言うのは当たってたみたいですよ。残念ながら、すぐには行けそうにないが」「え?」
**************** 「くっ……はっはははは…」「?!」 唐突に『ランティエ』が大笑いを始めてぎょっとした。反対に、高野が苦り切った顔で黙り込む。ただ一人、お由宇が肩越しに視線を投げ、歌うよう
**************** 夜を衝いて走る車の中には、外の闇よりも重苦しい沈黙が満ちていた。ハンドルを握る『ランティエ』、助手席で前方を見つめているお由宇、後ろで暗い表情で体を強張らせて座っ
**************** 「話してもらおうか」 コルドバでも指折りの4ツ星のホテルの最上階の一室で、俺は上尾を睨めつけた。もっとも、俺1人ではたいした凄みはなかっただろうが、手持ち無沙汰な様子
**************** 夜は深々と、家々の壁に、黒い鉄の茎で支えられた8本のカンテラの真下に、その明かりに浮かび上がった十字架のキリスト像の、削げたような頬に、あばらの浮いた体に、その身
**************** 「知り合い?」「知り合いと言うか……確か、上尾旅人とか言う奴だよ」 大学に居たろ、と振ってみたが、お由宇は覚えがなさそうに首を傾げる。「気のせいか、俺達の行く所行く所に
**************** ぽつりぽつりと建つ黄色の塔で弔いの鐘が鳴っている。一本の道を萎れたオレンジの花を頭に乗せた『死』が歌いながら通っていく……不吉でやり切れない、乾いた光景。(読まなき
**************** 「だから、『ランティエ』に贋作を依頼して、それを渡した、と」 考えはお由宇の声に遮られた。「パブロは最後まで気づかなかったでしょう。彼にとって、必要なのは『あの絵』で
**************** 「何?」「その様子じゃ」 お由宇はほ、と軽い溜息をついた。「今度も、訳が分からずに飛び込んで来たみたいね」「今度も、とは何だよ」 むくれて言い返した。「言っとくが、
**************** 彼に続いて恐る恐る小さな暗い間口を潜って入ると、中は小舞台風に中央を空けた、居酒屋のような店だった。まだ時間が早いせいだろう、人影は少なく、外国人の俺達を舐め回す
**************** 「おっ…おいっ…」 俺ははあはあ言いながら、前を歩くアルベーロと高野に呼びかけた。緩やかになったり急になったり曲がりくねる坂道を登り、入り組んだ街並みを通り抜けはじめ
**************** 「ふ…う…っと」 ソファから反動をつけて立ち上がる。スペインに来て、2日目の夜が来ようとしていたが、周一郎の行方は相変わらずわからないまま、最後の頼みの綱と掛けたお由
**************** (人が必死に探していたのに、心配するなとは) 高野もさすがにムッとして周一郎の側に立つと、少年はついと河の方を指差した。「高野」「はい」「もし、ぼくがここに落ちたら
**************** 「…象牙の…歯を……」「滝様!」 高野の声に本を閉じる。 タホ河河畔、乾いたスペインの中で豊かに水をたたえる沃野、アランフェス。そこには、河の蛇行に沿って緑溢れる庭園と
**************** ガタッと音を立てて急に車が止まり、高野は話を止めた。運転手に札を渡す。ちらりとこちらを見た相手は、にっ、と唇の端で笑って見せた。「¡Buen viaje!」「Gracias. どうぞ
**************** 今から約10年前の夏。「その頃、南欧、特にスペインを中心として手を広げている貿易商で、パブロ・レオニと言う者がおりました。もっとも、それは表向きのこと、裏では『青(
**************** 「ぐ、ぐわ…っ」 空港に降りて、寒さに思わず呻く。「だ…誰がスペインを南国だと言った……っ」 周囲の注視を避けて小さくなりながらぼやく。 とにかく冷え込む。日本の冬とと
**************** 「ったく…何だ?」 俺はぼやきながら、受話器を置いた。「お由宇もどっか行ってんのか?」 どうも周一郎のことが気になって(第一、今までの商用旅行に高野が付いて行ったこ
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**************** 「あの、今なんて?」「……聞こえなかったならいいよ」 真崎はむつっとした顔で呟き、また窓の外をじっと見ている。「どうせ、僕とは違うタイプだし」「……はい……??」 またわ
**************** 「何…っ」 いつの間に戻ってきたのか、声に真崎が身を引いた。「す、すみません」「課長、おかしなことしないでくださいよ」 石塚が睨む。「おかしなことなんかしていないよ、
**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
**************** それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか
**************** 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている
**************** 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた
**************** 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前
**************** 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか?」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。
**************** 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸
**************** 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん?」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち
**************** 苦しくて、眠れない。 京介は唇をきつく噛み締めて目を閉じる。 布団に必死に潜り込んで、大丈夫だ、大輔はいない、と言い聞かせるのに、身体が納得してくれない。 ずっと
**************** 何だろう。 何だろう。 更けていく夜に美並はずっと考えている。 何かどこかが妙な感じだ。 真崎の話で行くと、真崎と前後してここから離れた孝はかなり荒れた生活をしてい
**************** 「う~」 頭、痛ー。 眉をしかめる美並の手を引いて、ゆっくり山道を降りながら、真崎は不安そうな顔で覗き込んでくる。「見えるって大変なんだね」 あんなになっちゃうなん
**************** 抱きたいな。 もう、ほんとに駄目だ、伊吹が抱きたい。 けれど。「う~……頭……いたー」 足下をふらつかせながら歩いている伊吹の手を引きながら京介は振り向く。 伊吹の顔
**************** もがいたり逃げたりするかと思っていた伊吹は、抱き竦めても動かなかった。 動けない、ということではない。余分なところに力が入っていない。自分の意志で動こうとしていな
**************** 「………だから見せに来たんですか」「え?」「大輔さんと恵子さんに」「……」 黙り込んだ真崎に、やっぱり、と思った。 ただのイブキの墓参りなら、まっすぐここへ来ればいいだ
**************** 残念ながら、移動先での一休みと食事にはありつけなかった。 周囲を警戒しながら進んでいたはずだが、燃え続けて収まる気配のない『氷の双宮』に皆が気を取られた一瞬、「敵
**************** 大輔は京介が『ぼけ』にかまけて自分と遊ばないとたびたび癇癪を起こしていた。そうして、ある日、『そんなにこいつが大事か』『大ちゃんっ』『こんなちっこいやつが』『やめ
**************** 一群れの軍を制圧した、と言えばいいのだろうか。 戦い方を変えてからは、勝敗はあっさり決した。死屍累々とはまだ早いか、大怪我をしつつ未だ死んでは居ない者も転がる広場
**************** 「ここだよ」 黙って手を繋いだまま山を登って、京介は慣れた場所に辿りつく。「綺麗なところですね」 じっと見ていた伊吹がぽつりと言って、思わず振り向いた。「綺麗? こ
**************** 何を考えているのか。「私が聞きたいところだ」 冷ややかに嗤いながら、リヒャルティを置き去りに、セシ公は自室から持ち出した紫の布包みを手に、パディスへ馬を走らせ