**************** 伊吹と実家に戻ったのが週末。「真崎君はいるかっ」「はぁい」 週明け一番に響き渡った聞き覚えのある声に、京介はやれやれと顔を上げる。「あれ、細田課長、おはようございま
ツンデレ姫と美貌の付き人などの恋愛ファンタジー毎日連載。『アルファポリス』『小説家になろう』参加。
男勝り姫君ユーノと美貌の付き人アシャのハーレクインロマンス的なファンジー小説『ラズーン』毎日連載。『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』は出戻り姫シャルンと腹黒王レダンのラブコメディ、時々連載。
**************** 夜はしっかり更けたと言うのに、辺り一帯は真昼でもこれほどの騒ぎにはなるまいと言う賑わいだった。「へっへっへえっ」 走り続けて息を切らせ、ようよう工場の一角に飛び
**************** 「…今…どの辺りに…いる…?」 尋ねる声が呼吸で乱れる。「この近くの路地……でも…なぜ追われて……るんだろう…」 周一郎も呼吸を乱して答える。やっと俺から関心が移ってほっと
**************** 「えっ?」 声を張り上げる。シャワーの水音でお由宇の声がうまく聞き取れず、慌ててシャワーを止めた。「だから、名谷は二年ほど前に工場を辞めてるの。もっとも、これは叔父
**************** 「う~~」 俺は唸りながら歩いていた。頭はポップコーンのまんまだし、体は納豆だし、辺りは暗いし、懐中電灯は切れてるし。せめてこの上、お由宇の家に宮田がとぐろを巻いて
**************** 「いや、納屋教授のことを調べ回っている男がいるって聞いたものだからね」 あれ、今何か妙な感じがしたぞ。「君だとは思わなかったな」 厚木警部は例の如く、あちこちポン
**************** 「みっみっみっ…」 息を切らせて、やっと宮田がいると聞いた研究室にたどり着いた。 白衣をだらりと引っ掛けた相手は、飛び込んだ俺を見るなり薄笑いを浮かべて言った。「おれ
**************** 美和子が誘拐されて今日で五日目。 テストのヤマの安売り屋に捕まって、四科目分のヤマとノートを買わされ、なおも押し付けてくる『特売品』から何とか逃れて家に戻って来たの
**************** 次の日の夕方近く。 俺は高揚した気分でお由宇の家へ向かっていた。 納屋教授の助手の中にいたのだ、仁木田俊一という奴が。しかも少々訳ありの男らしく、時々妙に荒ん
**************** 朝倉家に戻ると、高野が俺を待ち構えていた。「坊っちゃまがお待ちです」「周一郎が? 部屋か?」 尋ねて首を捻る。珍しいこともあったもんだ。「いえ、リビングです」「わか
**************** 「入るぞ…また、鍵、かけてないのか」 あいかわらず不用心な戸口から上がり込み、寝室へ向かう。「…あら……なあに」 ベッドから半身起こしたお由宇が邪気なくにっこり笑う。
**************** 「おーい!」 後ろから声が聴こえてきた。 俺は一度安易に振り返ったばかりに危うく退学になりかけた覚えがある。「おいってば!」 今度こそ、ごめんだ。もう、テスト用紙盗
**************** 「…お由宇? 何してるんだ?」 いつものようにお由宇を尋ねてぽかんとする。玄関にも出てくれなかったから、勝手知ったる他人の家、あちこち探してようやくベッドの上で横に
**************** 「はっはっはっはっ…」 荒い息を吐きながら、南島駅のロッカー前で体を折った。 これだけ必死に走ったのは久しぶりだったせいか、なかなか呼吸が元に戻らない。涼しいはずの
**************** 思えば、この日は初めっから妙だった。「、…? んー?……まだ五時じゃないかあ…なんで今頃鳴るかな、おいっ」 目覚まし時計を掴んでまじまじ眺めた後、ぼかりと殴る。「い
1960000ヒットおまけ。『猫たちの時間』番外編8『長い坂』
**************** 「あれ……?」「どしたの?」「うん……おかしいな…」「え…どうしたの」「どうしたの…和男君」 学級委員長の和男が、工作費を集めた袋がないと言い出したのは、2時間目の終わっ
1960000ヒット、ありがとうございました!『猫たちの時間+(プラス)』14.世界のために
**************** 「あっはっはっは!」「おい」「いやもう、ほんと酷い!」 俺は目の前で爆笑しているお由宇という世にも珍しいものに対面している。「いつまで笑う気だ」「ごめん…なさい…
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**************** 伊吹と実家に戻ったのが週末。「真崎君はいるかっ」「はぁい」 週明け一番に響き渡った聞き覚えのある声に、京介はやれやれと顔を上げる。「あれ、細田課長、おはようございま
**************** 「圭吾!」 走りながら、上がりそうな息で必死に叫ぶ。周囲を見回して、胸の底でずっと忘れなかった後ろ姿を探す。「圭吾!」 美並の声が響くのに、会社のホールを通る人々が
**************** 「ふぅん」 真崎が目を細めて振り向く。「そうなんだ?」「あの、ずっと前のことです、それに」「今でも好きなんだ」「はい…?」 もう一度繰り返されて、ようやく一連の会話
**************** 「あの、今なんて?」「……聞こえなかったならいいよ」 真崎はむつっとした顔で呟き、また窓の外をじっと見ている。「どうせ、僕とは違うタイプだし」「……はい……??」 またわ
**************** 「何…っ」 いつの間に戻ってきたのか、声に真崎が身を引いた。「す、すみません」「課長、おかしなことしないでくださいよ」 石塚が睨む。「おかしなことなんかしていないよ、
**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
**************** それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか
**************** 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている
**************** 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた
**************** 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前
**************** 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか?」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。
**************** 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸
**************** 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん?」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち
**************** 苦しくて、眠れない。 京介は唇をきつく噛み締めて目を閉じる。 布団に必死に潜り込んで、大丈夫だ、大輔はいない、と言い聞かせるのに、身体が納得してくれない。 ずっと
**************** 何だろう。 何だろう。 更けていく夜に美並はずっと考えている。 何かどこかが妙な感じだ。 真崎の話で行くと、真崎と前後してここから離れた孝はかなり荒れた生活をしてい
**************** 「う~」 頭、痛ー。 眉をしかめる美並の手を引いて、ゆっくり山道を降りながら、真崎は不安そうな顔で覗き込んでくる。「見えるって大変なんだね」 あんなになっちゃうなん
**************** 抱きたいな。 もう、ほんとに駄目だ、伊吹が抱きたい。 けれど。「う~……頭……いたー」 足下をふらつかせながら歩いている伊吹の手を引きながら京介は振り向く。 伊吹の顔
**************** もがいたり逃げたりするかと思っていた伊吹は、抱き竦めても動かなかった。 動けない、ということではない。余分なところに力が入っていない。自分の意志で動こうとしていな
**************** 「………だから見せに来たんですか」「え?」「大輔さんと恵子さんに」「……」 黙り込んだ真崎に、やっぱり、と思った。 ただのイブキの墓参りなら、まっすぐここへ来ればいいだ
**************** 残念ながら、移動先での一休みと食事にはありつけなかった。 周囲を警戒しながら進んでいたはずだが、燃え続けて収まる気配のない『氷の双宮』に皆が気を取られた一瞬、「敵
**************** 何を考えているのか。「私が聞きたいところだ」 冷ややかに嗤いながら、リヒャルティを置き去りに、セシ公は自室から持ち出した紫の布包みを手に、パディスへ馬を走らせ