**************** 大石と別れていささか落ち込みながら部屋に戻った京介は、データ入力に勤しんでるはずの伊吹が、何度もぼうっと手を止めるのに気付いた。 さりげなく近寄って、見つけた名前
ツンデレ姫と美貌の付き人などの恋愛ファンタジー毎日連載。『アルファポリス』『小説家になろう』参加。
男勝り姫君ユーノと美貌の付き人アシャのハーレクインロマンス的なファンジー小説『ラズーン』毎日連載。『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』は出戻り姫シャルンと腹黒王レダンのラブコメディ、時々連載。
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 4.祈りの館(2)
**************** 「では、ガストは…」「両親が亡くなったのが10歳、叔父に引き取られて、俺の側に来たのが12歳、だから色々捻くれているわけだ。腹に据えかねても許してやってくれ」「…はい、
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 4.祈りの館(1)
**************** 馬車はルシュカの谷を行く。前に滞在の間の荷物を乗せた馬車、後ろにルッカとガストの乗った馬車を従えての、のんびりした道行、いささかのんびり過ぎるほどの速度だ。王宮
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 3.龍と花咲(6)
**************** ルッカがゆっくり話し出す。「姫様は、お小さい頃、ミディルン鉱石の中に『かげ』を見つけられたそうです」「…え?」 シャルンは瞬きする。そんな話は知らない。「…で、で
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 3.龍と花咲(5)
**************** 「……勝敗は」「私が勝ちました」 淡々とした返答にシャルンは息を呑む。「腹を切らせて、気持ちが緩んだ先に腕を落とし、それが元で母は亡くなりました。私は国を出、諸国を
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 3.龍と花咲(4)
**************** その夜。 レダンは出立前に片付ける仕事があるので先に休むようにと言い渡され、シャルンはルッカとともに寝支度をしていた。「…ねえ、ルッカ」「はい、なんでございましょ
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 3.龍と花咲(3)
**************** 「リュハヤ様とはどなたでしょうか」「今夜にでもお話しする予定でしたが」 ルッカはもう一度溜め息を重ねた。「エイリカ湖の湖畔に『祈りの館』と言う建物があり、そこで龍
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 3.龍と花咲(2)
**************** 「まず、龍神とは何か、からお話ししますね」 シャルンの私室に円を描くように集まった女官達の中、カトリシアが口を開いた。彼女の祖母は古い民話をたくさん知っている。テ
**************** ミャアアアアアア。 猫が叫んでいる。 ミャア、あああああああ! 雨の音を背景に悲痛な響きだ。 呼んでいる、呼んでいる。 誰か来て。誰か助けて。間に合わない。間に
**************** 滝の小説の出来は悪いわけじゃない。事実も描写していない。ただ、いつも本質に近すぎる。周一郎と辿った様々な事件の裏側にある動きさえ透けてしまうような的確さだ。『猫た
1900000ヒットありがとうございました!『猫たちの時間+(プラス)』8.クラック・ポイント(1)
**************** 「…」 目を覚まして一瞬、周一郎は朝倉家にいるような錯覚を起こした。夢を見ていたわけではなく、なのに、滝と暮らしていたあの頃の日々にそのまま戻ってしまったような。「
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 3.龍と花咲(1)
**************** 「いや、もう、胸が痛くなるようなイチャイチャっぷりでしたね!」「…悪かった」「『奔流王』改め『溺愛王』あたりはいかがですかね!」「…もう言うな」「ったく、いい加減に
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 2.ガーダスの糸(4)
**************** 「私が…楽しいもの…?」 シャルンがはっとした顔になった。「…私、龍神祭りにふさわしいもの、王妃として正しいもの、とばかり考えておりました」「うん…もちろんそれは必要
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 2.ガーダスの糸(3)
**************** 「…戻ったのかな」 さすがに疲れ切って自室に戻ってお茶でも飲んでいるか。それとも王宮の広間の方から先にとルッカと一緒に選んでいるのか。 踵を返して王宮に戻ろうとした
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 2.ガーダスの糸(2)
**************** リュハヤをどうするか。 レダンは殺気立った頭で考えながら離宮に向かう。 正直さっさと始末してしまえばいいと思わないでもない。レダンの『正しい妃』などと言うふざけ
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 2.ガーダスの糸(1)
**************** 「…ほ」 離宮広間に並べられたドレスの半分をようやく見終えて、シャルンは立ち止まった。「……どれも……素晴らしいわ」 溜め息しか出ずに振り返る。「この中から10着を選ぶ…
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第3話 花咲姫と奔流王 1.水龍の巫女(3)
**************** 「…さて、どうしたものか」 ガストは積み上がった未決済の書類を眺める。 カースウェル=ハイオルト国は考えていたよりずっと上手く回っている。ハイオルトの王家を解体する
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**************** 大石と別れていささか落ち込みながら部屋に戻った京介は、データ入力に勤しんでるはずの伊吹が、何度もぼうっと手を止めるのに気付いた。 さりげなく近寄って、見つけた名前
**************** 「……ということだと考えています」 大石は細田と京介を前に澱みなく説明を終えた。「もし、データが曖昧なら改めて説明させて頂きますが」 細田がちら、ちら、と神経質な視線
**************** 伊吹と実家に戻ったのが週末。「真崎君はいるかっ」「はぁい」 週明け一番に響き渡った聞き覚えのある声に、京介はやれやれと顔を上げる。「あれ、細田課長、おはようございま
**************** 「圭吾!」 走りながら、上がりそうな息で必死に叫ぶ。周囲を見回して、胸の底でずっと忘れなかった後ろ姿を探す。「圭吾!」 美並の声が響くのに、会社のホールを通る人々が
**************** 「ふぅん」 真崎が目を細めて振り向く。「そうなんだ?」「あの、ずっと前のことです、それに」「今でも好きなんだ」「はい…?」 もう一度繰り返されて、ようやく一連の会話
**************** 「あの、今なんて?」「……聞こえなかったならいいよ」 真崎はむつっとした顔で呟き、また窓の外をじっと見ている。「どうせ、僕とは違うタイプだし」「……はい……??」 またわ
**************** 「何…っ」 いつの間に戻ってきたのか、声に真崎が身を引いた。「す、すみません」「課長、おかしなことしないでくださいよ」 石塚が睨む。「おかしなことなんかしていないよ、
**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
**************** それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか
**************** 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている
**************** 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた
**************** 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前
**************** 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか?」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。
**************** 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸
**************** 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん?」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち
**************** 苦しくて、眠れない。 京介は唇をきつく噛み締めて目を閉じる。 布団に必死に潜り込んで、大丈夫だ、大輔はいない、と言い聞かせるのに、身体が納得してくれない。 ずっと
**************** 何だろう。 何だろう。 更けていく夜に美並はずっと考えている。 何かどこかが妙な感じだ。 真崎の話で行くと、真崎と前後してここから離れた孝はかなり荒れた生活をしてい
**************** 「う~」 頭、痛ー。 眉をしかめる美並の手を引いて、ゆっくり山道を降りながら、真崎は不安そうな顔で覗き込んでくる。「見えるって大変なんだね」 あんなになっちゃうなん
**************** 抱きたいな。 もう、ほんとに駄目だ、伊吹が抱きたい。 けれど。「う~……頭……いたー」 足下をふらつかせながら歩いている伊吹の手を引きながら京介は振り向く。 伊吹の顔
**************** もがいたり逃げたりするかと思っていた伊吹は、抱き竦めても動かなかった。 動けない、ということではない。余分なところに力が入っていない。自分の意志で動こうとしていな
**************** 何を考えているのか。「私が聞きたいところだ」 冷ややかに嗤いながら、リヒャルティを置き去りに、セシ公は自室から持ち出した紫の布包みを手に、パディスへ馬を走らせ