**************** 「すみません」 開口一番、伊吹は頭を下げた。「なんで謝るの」「いや、何かとんでもないミスしたのかなと」 本当に? 京介の胸の中で不安がどろどろと渦を巻く。 本当は
ツンデレ姫と美貌の付き人などの恋愛ファンタジー毎日連載。『アルファポリス』『小説家になろう』参加。
男勝り姫君ユーノと美貌の付き人アシャのハーレクインロマンス的なファンジー小説『ラズーン』毎日連載。『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』は出戻り姫シャルンと腹黒王レダンのラブコメディ、時々連載。
**************** ラズーンは滅びるのが定め。我ら『運命(リマイン)』こそ、世界の正しい後継者、その為のこれは聖戦である。愚かな人類はラズーンとともに滅ぶがいい。だが、一時はラズー
**************** ジットーが南へ下るのを押さえ、野戦部隊(シーガリオン)の救援を食い止める。その役をミダス公は自ら請うた。動きが派手すぎると忠告したジュナには虚ろに笑って応じた。
**************** 子どもの瞳が救いを求めるように天空を仰いだ。釣られてミダス公も空を見上げた。 青く深い空だった。昇った月の白さえも青みがかった静かな宵……大気さえも存在を主張しな
**************** 『それ』がいつ、己の心に芽生えたのか、当のミダス公にもわからなかった。ある日ふと囁いた魔性、そう言うしか仕方のないものだったのかも知れない。 陽光眩いミダスの屋敷
**************** 「この世界はどこかおかしいと思わないか、カート」 少年から青年になろうとする時、カートに投げかけたことがあった。「おかしい?」 酒杯を傾けかけていたカートは不審そ
**************** 「そうか…」 セシ公は詰めていた息を細くゆっくり吐き出した。「東が崩れたか」「…申し訳…ございません!」 ジットーが悲痛な声を絞り出す。「我らが『銀羽根』、ユーノ様
18880000ヒット、ありがとうございました!『猫たちの時間+(プラス)』6.鵲、渡るアップ。
**************** 「…失敗した…」 ベッドの上に突っ伏した周一郎はようやく声を絞り出した。 隣室に置き去られた滝はさぞかし意味がわからず困惑しているだろう。昔からそうだ、周一郎の行動
**************** 「ふ…うっ…ううっ…」「アシャ?」 レアナは不意に呻いたアシャを訝しく覗き込んだ。眠っているアシャの額には玉のような汗、濡れた髪が絡んで張り付き、厳しく結ばれた口元に
**************** クサリヲトイテクレ。 その声は遠い彼方の闇より、幼い頃からアシャの心に囁き続けていた。 鎖ヲ解イテクレ。 巨大な力の気配。圧倒的なエネルギー、他者の存在を許さぬ
**************** 急ぎ足に戻ってきた屋敷が、出てきた時と同様の静けさに包まれており、周囲に人が集まってくる様子もないのにほっとした。群衆はまず自らを守る方向に走ったらしい。各々の家
**************** 「諸君も聞いたことがあるはずだ。夜を走る黒い影の噂を。月夜に猛る野獣のような声を」「影…」「…そういや…」「けど…『壁』はあるぞ!」 別の男が反論する。「ラズーンには『
**************** 「時は来たのだ!!」 ラズーンの街角、木箱の壇上で一人の男が叫んでいる。「今こそ真実を知り、救いを求めるべきだ!」 ぼさぼさの髪、白い衣、如何にも修行者風の容貌、だ
**************** 声が聞こえる。 戦乱に巻き込まれて行く人々の呻き声が。救いを捜し求める命の声が。そして、新たに紡がれる祈りの声が。 世の隅々からラズーンの外壁を越え、内の空気を揺
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**************** 「すみません」 開口一番、伊吹は頭を下げた。「なんで謝るの」「いや、何かとんでもないミスしたのかなと」 本当に? 京介の胸の中で不安がどろどろと渦を巻く。 本当は
**************** 大石と別れていささか落ち込みながら部屋に戻った京介は、データ入力に勤しんでるはずの伊吹が、何度もぼうっと手を止めるのに気付いた。 さりげなく近寄って、見つけた名前
**************** 「……ということだと考えています」 大石は細田と京介を前に澱みなく説明を終えた。「もし、データが曖昧なら改めて説明させて頂きますが」 細田がちら、ちら、と神経質な視線
**************** 伊吹と実家に戻ったのが週末。「真崎君はいるかっ」「はぁい」 週明け一番に響き渡った聞き覚えのある声に、京介はやれやれと顔を上げる。「あれ、細田課長、おはようございま
**************** 「圭吾!」 走りながら、上がりそうな息で必死に叫ぶ。周囲を見回して、胸の底でずっと忘れなかった後ろ姿を探す。「圭吾!」 美並の声が響くのに、会社のホールを通る人々が
**************** 「ふぅん」 真崎が目を細めて振り向く。「そうなんだ?」「あの、ずっと前のことです、それに」「今でも好きなんだ」「はい…?」 もう一度繰り返されて、ようやく一連の会話
**************** 「あの、今なんて?」「……聞こえなかったならいいよ」 真崎はむつっとした顔で呟き、また窓の外をじっと見ている。「どうせ、僕とは違うタイプだし」「……はい……??」 またわ
**************** 「何…っ」 いつの間に戻ってきたのか、声に真崎が身を引いた。「す、すみません」「課長、おかしなことしないでくださいよ」 石塚が睨む。「おかしなことなんかしていないよ、
**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
**************** それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか
**************** 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている
**************** 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた
**************** 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前
**************** 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか?」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。
**************** 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸
**************** 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん?」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち
**************** 苦しくて、眠れない。 京介は唇をきつく噛み締めて目を閉じる。 布団に必死に潜り込んで、大丈夫だ、大輔はいない、と言い聞かせるのに、身体が納得してくれない。 ずっと
**************** 何だろう。 何だろう。 更けていく夜に美並はずっと考えている。 何かどこかが妙な感じだ。 真崎の話で行くと、真崎と前後してここから離れた孝はかなり荒れた生活をしてい
**************** 「う~」 頭、痛ー。 眉をしかめる美並の手を引いて、ゆっくり山道を降りながら、真崎は不安そうな顔で覗き込んでくる。「見えるって大変なんだね」 あんなになっちゃうなん
**************** 抱きたいな。 もう、ほんとに駄目だ、伊吹が抱きたい。 けれど。「う~……頭……いたー」 足下をふらつかせながら歩いている伊吹の手を引きながら京介は振り向く。 伊吹の顔
**************** 何を考えているのか。「私が聞きたいところだ」 冷ややかに嗤いながら、リヒャルティを置き去りに、セシ公は自室から持ち出した紫の布包みを手に、パディスへ馬を走らせ