**************** 大石と別れていささか落ち込みながら部屋に戻った京介は、データ入力に勤しんでるはずの伊吹が、何度もぼうっと手を止めるのに気付いた。 さりげなく近寄って、見つけた名前
ツンデレ姫と美貌の付き人などの恋愛ファンタジー毎日連載。『アルファポリス』『小説家になろう』参加。
男勝り姫君ユーノと美貌の付き人アシャのハーレクインロマンス的なファンジー小説『ラズーン』毎日連載。『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』は出戻り姫シャルンと腹黒王レダンのラブコメディ、時々連載。
1890000ヒット、ありがとうございました! 『猫たちの時間+(プラス)』7.killing infomation(1)
**************** 面白いじゃないか、高王ヒカル。 滝はふむふむと頷きながら、次の本に手を伸ばす。 『古の約束』は京都を舞台にした伝記物だった。代々一本の扇を守ってきた家の若き当主
**************** 「聞いておきたいんだけど」「え?」 アシャのスープを準備に、自ら調理場にきていたレアナは振り返って、背後にあったアリオの挑戦的な黒い瞳と向き合った。「あなたがどこ
**************** 「アシャ!」 考えに沈んでいたアシャは、不意に部屋を揺るがす大音声と共に、イルファに飛びかかられ、のしかかられて思わず咳き込んだ。「生きてるなら生きてるって言えよ
**************** 目覚めて気づいたのは、この上もなく深く暗い喪失感だった。ついに自分は取り返しのつかぬことをしてしまった、もう償えない。罪悪感と悔恨に胸が潰れそうな気がした。 眉
**************** 策というのはこうだった。 ラズーン外壁の中まで『運命(リマイン)』が浸透して来ている今、既に壁は意味を為さない。だが無闇に開け放つことも出来ない。近郊の国からも
**************** 爽やかな朝だった。 一片の雲もなく澄み渡った青空、伸び上がる樹々の緑、優しく甘い風。 それが束の間の夢であることは、部屋に集まった誰もがわかっていることだった。
**************** 「…あ…」 まさか。 でも確かにこれは。 でも、まさか。「…ア…シャ……?」 ソウダ。 声は嬉しそうに応じた。 ケガハナイカ……キズハダイジョウブカ……ユーノ…。『怪我はない
**************** その夜。 ミネルバを取り敢えず『狩人の山』(オムニド)に帰したユーノは、ふと夜半に目覚めた。 何かの気配が夜闇に動いている。 目を開ける。じっと耳を澄ませる。
**************** 「ユーノ様!」 不意に視界にジノのくしゃくしゃになった顔が飛び込んできて、ユーノははっとした。起き上がり掛け、頭の中心にめまいと痛みが蘇って動きを止める。『大丈夫
**************** 「光栄ですな、聖女王(シグラトル)」 ディオングはお構いなしに話を続け、右手首を引っ張る力を増した。踏ん張るユーノ、馬が耐えきれず、ずずっと蹄を泥土に滑らせる。「さ
**************** 『うおおおお…』 獣のような、暗く不吉な叫びが『泉の狩人』(オーミノ)の、くわっと開かれた歯列、闇を呑む口から吐き出される。ユーノを中心にした左右両翼が『穴の老人』
**************** 「…どうしても…お連れ下さいませんか」 天幕(カサン)の灯皿の光の中、身支度を手伝ってくれていたジノが、耐えかねたように口を開いた。「だめだ」 対するユーノの返事は
**************** 「くそ! …つっ」 激しく叩きつけた手に、ユカルはぐっと眉をしかめた。飢粉(シイナ)を被ったのをすっかり忘れていた。解けかけた包帯を再び右手首に巻き直し始める。利き
**************** 赤い酒がギヌアの手の中で揺れている。ゆったりと重そうに、たっぷりととろみを持って。 それは、これまでギヌアが手に掛けてきた人間達の生き血のようにも見えた。ただ、
**************** 「夜襲…」 ユーノのことばに、カイルーンが呆れた声を上げた。「夜襲をかける…と?」「戦は明け方から日の暮れまでが常道、ましてや『泥土』を含む広範囲の戦線、夜襲などか
**************** 星は『狩人の山』(オムニド)の上にも輝き始めていた。 人の世界、人の命を遥かに超えた時の流れの中、じっと主を待ち続けた高峰、白く雪を頂いた峰々を飾るかのように
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**************** 大石と別れていささか落ち込みながら部屋に戻った京介は、データ入力に勤しんでるはずの伊吹が、何度もぼうっと手を止めるのに気付いた。 さりげなく近寄って、見つけた名前
**************** 「……ということだと考えています」 大石は細田と京介を前に澱みなく説明を終えた。「もし、データが曖昧なら改めて説明させて頂きますが」 細田がちら、ちら、と神経質な視線
**************** 伊吹と実家に戻ったのが週末。「真崎君はいるかっ」「はぁい」 週明け一番に響き渡った聞き覚えのある声に、京介はやれやれと顔を上げる。「あれ、細田課長、おはようございま
**************** 「圭吾!」 走りながら、上がりそうな息で必死に叫ぶ。周囲を見回して、胸の底でずっと忘れなかった後ろ姿を探す。「圭吾!」 美並の声が響くのに、会社のホールを通る人々が
**************** 「ふぅん」 真崎が目を細めて振り向く。「そうなんだ?」「あの、ずっと前のことです、それに」「今でも好きなんだ」「はい…?」 もう一度繰り返されて、ようやく一連の会話
**************** 「あの、今なんて?」「……聞こえなかったならいいよ」 真崎はむつっとした顔で呟き、また窓の外をじっと見ている。「どうせ、僕とは違うタイプだし」「……はい……??」 またわ
**************** 「何…っ」 いつの間に戻ってきたのか、声に真崎が身を引いた。「す、すみません」「課長、おかしなことしないでくださいよ」 石塚が睨む。「おかしなことなんかしていないよ、
**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
**************** それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか
**************** 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている
**************** 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた
**************** 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前
**************** 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか?」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。
**************** 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸
**************** 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん?」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち
**************** 苦しくて、眠れない。 京介は唇をきつく噛み締めて目を閉じる。 布団に必死に潜り込んで、大丈夫だ、大輔はいない、と言い聞かせるのに、身体が納得してくれない。 ずっと
**************** 何だろう。 何だろう。 更けていく夜に美並はずっと考えている。 何かどこかが妙な感じだ。 真崎の話で行くと、真崎と前後してここから離れた孝はかなり荒れた生活をしてい
**************** 「う~」 頭、痛ー。 眉をしかめる美並の手を引いて、ゆっくり山道を降りながら、真崎は不安そうな顔で覗き込んでくる。「見えるって大変なんだね」 あんなになっちゃうなん
**************** 抱きたいな。 もう、ほんとに駄目だ、伊吹が抱きたい。 けれど。「う~……頭……いたー」 足下をふらつかせながら歩いている伊吹の手を引きながら京介は振り向く。 伊吹の顔
**************** もがいたり逃げたりするかと思っていた伊吹は、抱き竦めても動かなかった。 動けない、ということではない。余分なところに力が入っていない。自分の意志で動こうとしていな
**************** 何を考えているのか。「私が聞きたいところだ」 冷ややかに嗤いながら、リヒャルティを置き去りに、セシ公は自室から持ち出した紫の布包みを手に、パディスへ馬を走らせ