**************** 「すみません」 開口一番、伊吹は頭を下げた。「なんで謝るの」「いや、何かとんでもないミスしたのかなと」 本当に? 京介の胸の中で不安がどろどろと渦を巻く。 本当は
ツンデレ姫と美貌の付き人などの恋愛ファンタジー毎日連載。『アルファポリス』『小説家になろう』参加。
男勝り姫君ユーノと美貌の付き人アシャのハーレクインロマンス的なファンジー小説『ラズーン』毎日連載。『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』は出戻り姫シャルンと腹黒王レダンのラブコメディ、時々連載。
**************** 「…シリオンか」 ふっと部屋の隅でいきなり形をとった気配に、ギヌアは目を開けた。半裸の体を起こし、乱れた白髪を掻き上げながら、相手を見つめる。「は」 低い声が嗤いを
**************** 「シャイラ?!」 一瞬、友の声が耳に届いたように感じて、グードスは手近の兵を切り倒しながら振り返った。 夕闇が迫る空、濁った朱の雲が不吉な想いを掻き立てる。(シャイ
**************** 「抜け、シャイラ!」「グードス…」 がらんとした部屋で、グードスと向き合ったシャイラは、相手の語調の激しさに呆然とした。「剣を取れ。抜け、シャイラ……そうせねば…」
**************** 「…そうだと言ったら?」「!」「なんと!」「何を言われる、聖女王(シグラトル)!」 堪えかねた叫びが上がった。互いを見交わし、再びユーノに眼窩を向ける。「聞き捨てなら
**************** おそらくは、水鏡(カーフィ)で様子を見ていたか、どこかに隠れ潜んでいたシズミーから知らせが入ったのだろう。 ユーノとジノを背に、ミネルバに手綱を引かれた金眼の馬
**************** 口をゆっくり開く。 答えは既に決まっていた。それは分かり切ったことだった。「それが、私に出来る、唯一つのことだから」「!」 びくっと、なぜかミネルバが体を震わせた
**************** 「んっ」「どうされました?」 ジノが僅かに息を切らせながら、先を進んでいたユーノが立ち止まるのに問いかけた。 『狩人の山』(オムニド)に入ったばかり、それでも周囲は
**************** 『アシャ…』 遠い闇で呼ぶ声がする。『アシャ…』 いや、呼んではいない。何かを伝えようとしているのだ。『アシャ…私、行くよ』 声には優しい聞き覚えがあった。遥か太古、
**************** ジノがセシ公の元へリディノ死去の顛末を報告しに行った後、ユーノはしばし窓にもたれ、じっと空を見上げていた。 星の光もなく、月もどこに隠れたのか、姿形もない。 暗
**************** 非情な戦の前にこんな泣き言を口にする者を、ユーノは黙って聞いていてくれる。 だからこその懺悔だ。 ジノはリディノの変化に気づいていた、気づいてはいたが、それより
**************** ユーノはしばらく沈黙した。やがて太い息を吐きながら、「…そうか……リディノが入れたのか…」「っ」 ジノがはっと顔を上げる。深い青の、雪白(レコーマー)に似た瞳が、信じら
**************** 「アシャが倒れたですって?!」 けたたましい声をあげて廊下を急ぐ黒髪の美女と、ユーノはすれ違った。「アリオ様! お待ち下さい!」 後から侍女と思われる女が追う。2人の
**************** 「姫さま?!」 ジノは広間から飛び出したリディノを探し回っていた。蒼白になっていたリディノの顔、アシャの倒れたショックだけではない、まるで自分が人を殺したのだと気づ
**************** こんなことがあるはずがない。「ジュナ?!」 こんなことが。「ジュナ、どこです!!」 こんな…ことが。「ジュナ!!」 広間から身を翻したリディノの頭には、そのことばだけが
**************** 「す、既に、我らの半数近くは…」 ジットーはことばを途切らせた。 一度は崩れた『運命(リマイン)』軍も、『穴の老人』(ディスティヤト)の応援を得てみるみる勢いを盛り返
**************** ラズーン動乱史上、第二の規模を持ったこの東の戦いは、ラズーンと『運命(リマイン)』の策の、言い換えればアシャとギヌアの軍師としての才覚が真っ向からぶつかり合った
**************** 「…ってことはだな」「はっはっはっ…」 夜に赤々と燃える炎、浮かれ騒ぐ男達の間をすり抜けるように、黄色のマントを肩に留めた男は一つの天幕(カサン)に入っていった。「よう
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**************** 「すみません」 開口一番、伊吹は頭を下げた。「なんで謝るの」「いや、何かとんでもないミスしたのかなと」 本当に? 京介の胸の中で不安がどろどろと渦を巻く。 本当は
**************** 大石と別れていささか落ち込みながら部屋に戻った京介は、データ入力に勤しんでるはずの伊吹が、何度もぼうっと手を止めるのに気付いた。 さりげなく近寄って、見つけた名前
**************** 「……ということだと考えています」 大石は細田と京介を前に澱みなく説明を終えた。「もし、データが曖昧なら改めて説明させて頂きますが」 細田がちら、ちら、と神経質な視線
**************** 伊吹と実家に戻ったのが週末。「真崎君はいるかっ」「はぁい」 週明け一番に響き渡った聞き覚えのある声に、京介はやれやれと顔を上げる。「あれ、細田課長、おはようございま
**************** 「圭吾!」 走りながら、上がりそうな息で必死に叫ぶ。周囲を見回して、胸の底でずっと忘れなかった後ろ姿を探す。「圭吾!」 美並の声が響くのに、会社のホールを通る人々が
**************** 「ふぅん」 真崎が目を細めて振り向く。「そうなんだ?」「あの、ずっと前のことです、それに」「今でも好きなんだ」「はい…?」 もう一度繰り返されて、ようやく一連の会話
**************** 「あの、今なんて?」「……聞こえなかったならいいよ」 真崎はむつっとした顔で呟き、また窓の外をじっと見ている。「どうせ、僕とは違うタイプだし」「……はい……??」 またわ
**************** 「何…っ」 いつの間に戻ってきたのか、声に真崎が身を引いた。「す、すみません」「課長、おかしなことしないでくださいよ」 石塚が睨む。「おかしなことなんかしていないよ、
**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
**************** それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか
**************** 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている
**************** 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた
**************** 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前
**************** 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか?」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。
**************** 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸
**************** 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん?」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち
**************** 苦しくて、眠れない。 京介は唇をきつく噛み締めて目を閉じる。 布団に必死に潜り込んで、大丈夫だ、大輔はいない、と言い聞かせるのに、身体が納得してくれない。 ずっと
**************** 何だろう。 何だろう。 更けていく夜に美並はずっと考えている。 何かどこかが妙な感じだ。 真崎の話で行くと、真崎と前後してここから離れた孝はかなり荒れた生活をしてい
**************** 「う~」 頭、痛ー。 眉をしかめる美並の手を引いて、ゆっくり山道を降りながら、真崎は不安そうな顔で覗き込んでくる。「見えるって大変なんだね」 あんなになっちゃうなん
**************** 抱きたいな。 もう、ほんとに駄目だ、伊吹が抱きたい。 けれど。「う~……頭……いたー」 足下をふらつかせながら歩いている伊吹の手を引きながら京介は振り向く。 伊吹の顔
**************** 何を考えているのか。「私が聞きたいところだ」 冷ややかに嗤いながら、リヒャルティを置き去りに、セシ公は自室から持ち出した紫の布包みを手に、パディスへ馬を走らせ