**************** 「すみません」 開口一番、伊吹は頭を下げた。「なんで謝るの」「いや、何かとんでもないミスしたのかなと」 本当に? 京介の胸の中で不安がどろどろと渦を巻く。 本当は
ツンデレ姫と美貌の付き人などの恋愛ファンタジー毎日連載。『アルファポリス』『小説家になろう』参加。
男勝り姫君ユーノと美貌の付き人アシャのハーレクインロマンス的なファンジー小説『ラズーン』毎日連載。『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』は出戻り姫シャルンと腹黒王レダンのラブコメディ、時々連載。
**************** 「え?」「何を今更…ブレーヌ、シェイカ、テーノティ…」 答えかけたもう1人が詰まる。「他には?」「いや、他には知らん」 畳み掛けられて男は首を振った。他の者も顔を見合わ
**************** 時は少し遡る。 セシ公とアシャから指令書を託されたジットーは、ラズーン中央を離れ、ひたすら東へと急いでいた。 戦局はラズーンに不利だった。西へ兵を取られているラ
**************** 「…」 視線を感じて目を開けると、アシャがこちらを見つめていた。眩いような瞳が淡く笑い、グラスを少し上げる。どうにも飲み干せなかった酒をようやく飲めそうになったらしい
**************** 視線の先にちょうどリディノの姿がある。気づいたのか、手にしていたグラスを上げてにっこりと笑って見せる。特におかしな様子はない、ましてや『運命(リマイン)』の影も感
**************** 「ふ…ぅ」「分かりましたか?」「分かった…分かったけれど」 呆れ返りながらユーノは首を振る。「あなた達って」「大詐欺師と言って頂きましょうか」 セシ公はくすりと妖し
**************** 「東へ出られるのですって?」「ああ」 アシャはグラスを片手にすぐにでもテラスの方へ行きたそうだったが、思い直したのか、近くのテーブルにグラスを置いて優しくレスファ
**************** 「!」 見抜かれて竦んだレスファートは、滲みそうになった涙を慌てて呑み下した。くるりとリディノが背中を向ける。そのまますうっと戸口を抜けようとして、「ジノ…」「姫さま…
**************** 「レス…」 ユーノがアシャと内密の相談をすると言うことで、テラスの端で手持ち無沙汰に立っていたレスファートは、呼ばれて振り返った。 夜目に青白い人の形、淡い月光に浮
**************** 「えっ」 驚いて体を起こすと、アシャはひどく美味しいものを手に入れた獣のように満足そうな表情になっている。煌めいた紫の瞳が、したたかな色を浮かべて微笑んだ。「東へ…
**************** 尋ねてからしまった、と思った。見捨てられて見切られて、レアナを守るため囮に出された自分、そんな問いを投げかけて、よしんば『そう』であったにせよ、アシャが『そう』
1870000ヒットありがとうございました!『猫たちの時間』+(プラス)5.オリエンタル・コンチネンタル・ホテル
**************** 「…あらあら」 携帯からの声に由宇子は溜め息をつく。知らされたホテル名にも。「厄介事吸引器、健在ね」『急ぎかい?』 ベッドに横座りになった海云(ハイ・ユン)が微笑
**************** (同じなんだ……同じことばかり…繰り返してる) また、少しは、期待してしまった。 ジノが随分頑張ってくれたから。 綺麗だと言ってもらえなくてもいい、アシャが何か、ユー
**************** くすくすとユーノは笑う。会話を繋ぐ、機嫌良く、楽しい話題となるように。(あの時と、同じか) 幾つの誕生パーティの時だっただろう。 さすがに主賓がいなくては意
**************** 確かに抱きしめるどころか触れることさえしていない、2人の間には距離があり、互いの熱さえ感じ取れない。それでも、すぐにこの魂は走り出して行ってしまう。アシャのことも
**************** 夜会は今、華やかさを極めていた。 別れの宴と知っているのはほんの一握り、多くは、今ラズーンが直面している危機に気づかぬ平和に慣れた人々、着飾った娘達は代わる代わ
注意 BL場面あります **************** 「あ…うっ」 小さな声を漏らして身を強張らせたイリオールから、ジュナは体を離した。大きく息をしている肩を押さえつけ、再度体を重ね直す。「あ…っ…
**************** (一体、どうしたのかしら、私は) リディノは鏡に映る自分の顔を覗き込みながら考えた。仄白い顔、思い詰めたような薄緑の瞳はどこか昏いものを宿して底光りしているように
**************** 「納得のいかないこと?」 思い詰めたジノの口調が急に変わって、ユーノは瞬いた。「何?」「レスファート様におっしゃられたことばです」 背中を向けたままのジノの声は不
**************** 「はい……こちらをお向きになって下さい」「ジノ…」「手を上げて」「もういいよ」「駄目です」 決まり悪そうな表情で言いなりになっていたユーノに、ジノはきっぱりと首を振っ
****************「……」 ふっと唐突に意識が戻った。 同時に、胸を痛くするような真剣さで、アクアマリンの淡い瞳を精一杯見開いた少年の顔が飛び込んでくる。「…レス……」「…」 少年は応えな
**************** 柔らかな風が頬に触れている。 額と頬、目元からこめかみ、耳元から首筋と、まるで誰かの吐息のように優しく。 体が暖かい。 風に探られた耳から甘い波が生まれて、ゆ
**************** 「戦況は?」 ギヌアがシリオンに問いかけていた頃、アシャも同じく帰り着いた伝令、ジットーに尋ねていた。「は…っ」 疲れ切った表情、目の前に置かれた飲み物にも手を付け
**************** 「戦況は」 冷ややかな声が問う。「西の戦いにてレトラデス、ネハルールが戦死、残りの300名は直ちに引いた『星の剣士』(ニスフェル)の一群を追ったのですが、後一歩のとこ
**************** 「…」 少し唇を舐めた。僅かでも引っかかるような感覚があれば、きっと目覚めてしまうだろう。湿らせた口にユーノの香りがして、胸が苦しい。(目を覚ますな) 祈りながら、キ
**************** 「ん…風が出てきたな」 ユーノの枕元に居たアシャは、窓から吹き込む風にユーノの前髪が揺れるのに気づいた。立って振り返り、窓を閉める。遠く響いていたジェブの葉鳴りがな
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**************** 「すみません」 開口一番、伊吹は頭を下げた。「なんで謝るの」「いや、何かとんでもないミスしたのかなと」 本当に? 京介の胸の中で不安がどろどろと渦を巻く。 本当は
**************** 大石と別れていささか落ち込みながら部屋に戻った京介は、データ入力に勤しんでるはずの伊吹が、何度もぼうっと手を止めるのに気付いた。 さりげなく近寄って、見つけた名前
**************** 「……ということだと考えています」 大石は細田と京介を前に澱みなく説明を終えた。「もし、データが曖昧なら改めて説明させて頂きますが」 細田がちら、ちら、と神経質な視線
**************** 伊吹と実家に戻ったのが週末。「真崎君はいるかっ」「はぁい」 週明け一番に響き渡った聞き覚えのある声に、京介はやれやれと顔を上げる。「あれ、細田課長、おはようございま
**************** 「圭吾!」 走りながら、上がりそうな息で必死に叫ぶ。周囲を見回して、胸の底でずっと忘れなかった後ろ姿を探す。「圭吾!」 美並の声が響くのに、会社のホールを通る人々が
**************** 「ふぅん」 真崎が目を細めて振り向く。「そうなんだ?」「あの、ずっと前のことです、それに」「今でも好きなんだ」「はい…?」 もう一度繰り返されて、ようやく一連の会話
**************** 「あの、今なんて?」「……聞こえなかったならいいよ」 真崎はむつっとした顔で呟き、また窓の外をじっと見ている。「どうせ、僕とは違うタイプだし」「……はい……??」 またわ
**************** 「何…っ」 いつの間に戻ってきたのか、声に真崎が身を引いた。「す、すみません」「課長、おかしなことしないでくださいよ」 石塚が睨む。「おかしなことなんかしていないよ、
**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
**************** それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか
**************** 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている
**************** 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた
**************** 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前
**************** 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか?」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。
**************** 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸
**************** 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん?」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち
**************** 苦しくて、眠れない。 京介は唇をきつく噛み締めて目を閉じる。 布団に必死に潜り込んで、大丈夫だ、大輔はいない、と言い聞かせるのに、身体が納得してくれない。 ずっと
**************** 何だろう。 何だろう。 更けていく夜に美並はずっと考えている。 何かどこかが妙な感じだ。 真崎の話で行くと、真崎と前後してここから離れた孝はかなり荒れた生活をしてい
**************** 「う~」 頭、痛ー。 眉をしかめる美並の手を引いて、ゆっくり山道を降りながら、真崎は不安そうな顔で覗き込んでくる。「見えるって大変なんだね」 あんなになっちゃうなん
**************** 抱きたいな。 もう、ほんとに駄目だ、伊吹が抱きたい。 けれど。「う~……頭……いたー」 足下をふらつかせながら歩いている伊吹の手を引きながら京介は振り向く。 伊吹の顔
**************** 何を考えているのか。「私が聞きたいところだ」 冷ややかに嗤いながら、リヒャルティを置き去りに、セシ公は自室から持ち出した紫の布包みを手に、パディスへ馬を走らせ