**************** 伊吹が訝しそうに眉を寄せて、ふいに気付いた。『相手は納得しなかった。状況が悪化して、私のせいだと言われた。私は手を引いて……』 ひょっとして、あの話の。 尋ねてみる
ツンデレ姫と美貌の付き人などの恋愛ファンタジー毎日連載。『アルファポリス』『小説家になろう』参加。
男勝り姫君ユーノと美貌の付き人アシャのハーレクインロマンス的なファンジー小説『ラズーン』毎日連載。『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』は出戻り姫シャルンと腹黒王レダンのラブコメディ、時々連載。
**************** 「いらっしゃいませ」 出迎えてくれた村野に、美並はそっと微笑んだ。「お席でお待ちです」「ありがとうございます」 今夜は時間も遅くなりつつあったためか、客の数も少な
**************** 「…早かったのね」 社長室で窓際に立っていた元子は静かに振り返った。「ちょうど良かったわ、私もあなたに話さなくてはいけないことがある」 珍しく紺色のスーツだった。地
**************** いつか赤来が会社の入り口で外を眺めていたことがあった。ついさっきまで話していたのだろう、阿倍野が走り去っていくのを見送っていると見えた。 けれどその後、携帯を取
**************** 『今日、京介の家ではなくて「村野」で会えませんか」 ホール・チェックが終わって急ぎ足に会社に戻っていく間に、伊吹からメールが入ったのを京介はじっと眺めた。 予想は
**************** 「手?」 檜垣が不審そうに覗き込む。「そんなもの、山ほど映ってるって」「いえ、この手は、この中の誰とも一致しない手です」「一致しない?」 有沢も身を乗り出した。「
残酷な描写があります。ご注意ください。 **************** 署内の一室に鍵を掛け、周囲に盗聴器やカメラのないことを確認する徹底ぶりで、檜垣は場所を準備した。美並にも無論わかってい
**************** 美並は有沢に了承の連絡を入れた。 準備にかかると言われて、土曜日を約束した。 土曜日、真崎は11時から『ニット・キャンパス』のホール・イベントのチェックに高崎と出
**************** 「違うよ!」 少し穏やかに話していた口調が激しくなって、京介は瞬きした。「違う、課長はゲイじゃない!」「…えーと…」 一体どうしてそんな話になってるのかな、これは?
**************** (護りたいのは……アシャ) できることなら、体に流れる全ての血を流し尽くしても。その果てにユーノを待っているものはわかりすぎるほどわかりきっているのだが。(姉さまと
**************** カフェや喫茶店のようなところでは逆に人目が気になるだろうと、京介はオープン・イベントが行われる予定の市役所横の公園に高崎を連れて行った。「はい、コーヒー」「…あ
**************** 「イリオール?」 抱えた体から力が抜け、くたくたと膝に崩れ落ち、そのまま眠りについてしまったイリオールを、ユーノはそっと揺さぶってみた。だが、よほど深く眠り込んだ
**************** 強く手首を握られ引きずり上げられる。抵抗は虚しいと知っているから逃げなかったが、容赦無く窓際へ連れていかれてぞっとした。(突き落とされる?!) このまま無防備に
**************** 陽射しは幾分かは陰ってきていた。 ミダス公の屋敷の一角、ユーノの私室では、ベッドで仲良くユーノとレスファートが軽い寝息を立てている。 穏やかな夕暮れ、風が次第に
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第2話 砂糖菓子姫とケダモノ王 31.王の器(5)
**************** 大きな物音と共に開け放たれた扉に、2人とも呆気にとられた。「ルッカ?」「姫様、大変でございます! カースウェルが! レダン王が!」 息を切らせたルッカが珍しく慌て
**************** 「…イリオールの行方はわかったのか、シリオン」 誘いを退けられたことに動じることもなく、シリオンは眉を上げる。「面白いことになっている。ミダス公の屋敷におられるよう
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第2話 砂糖菓子姫とケダモノ王 31.王の器(4)
**************** 「戴冠式は行わなかったんだって?」「国民と共に国を立て直すのが先決です」「それじゃあ、誰もあなたを王だとは認めていないんじゃないの?」「私は捨て石でいい」 シャル
**************** 「おおそうとも」 重く昏い微笑にギヌアは唇を綻ばせた。あやすようにことばを続ける。「あやつらのために、我らの願いが幾度挫かれたか、忘れるではないぞ。一刃のものとに
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第2話 砂糖菓子姫とケダモノ王 31.王の器(3)
**************** 遅い春がハイオルトにもやってきた。 穏やかな日差しをシャルンは楽しんでいたが、「一体レダンは何を考えているんだ!」 突然やってきたサリストアは髪の毛を逆立てんば
『DRAGON NET』メルマガセッティング終了。 4/27ラストで全387話となりました。 長かったなあ。 終わらせられて、本当に良かった。 昔は必ず書き終えていたんですが、書き終わらせていない物語が増え
**************** 「おいおい、大概にしておけよ、レトラデス」 モディスンが呆れたように声をかけた。「『坊や』を可愛がり過ぎるな、この間一人、この世に戻ってこれなくなったのが居ただろ
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第2話 砂糖菓子姫とケダモノ王 31.王の器(2)
**************** きららかな光が馬に跨ったレダンの兜に降り注いでいる。「準備が整いました」 ガストがやってきて楽しげに報告した。「先行軍はすでにバラディオスの手引きによって街道を
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第2話 砂糖菓子姫とケダモノ王 31.王の器(1)
**************** ハイオルトの北の採石場からカースウェルに戻ってまもなく、シャルンは公式にレダンから離縁を申し渡された。 諸国に向けて発表された理由は明瞭だ。 ハイオルトはミディ
**************** 「ジーフォ公が動きました!」 駆け込んできた部下の報告を、ギヌアは満足げに頷いて聞いた。 スォーガとクェトロムトの境にある『運命(リマイン)』本拠、側にはガデロの
**************** テッツェは動かず無言のまま剣を構えて出方を見ていた。もしこれが思っている通りの相手ならば、この挑発は何の意味がある? 今ここで自分達を敵に回すどんな利益があるの
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第2話 砂糖菓子姫とケダモノ王 30.北の採石場(3)
**************** 「そこまでだ」 レダンが面白くなさそうに割って入った。「お前は語り出すと長い」「振ったのはあんたでしょうが」 むっとして唇を尖らせたガストは、「まあ、お陰様で念願
**************** 「む! 何者っ?!」「ジーフォ公 ?!」 突然、厩舎のあたりで叫び声があがり、テッツェははっとした。(まさか、アシャがここにまで手を?) あり得ないと言えないあたりが、
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第2話 砂糖菓子姫とケダモノ王 30.北の採石場(2)
**************** 「着いたぞ、降りろ!」 声が響いて扉が引き開けられ、冷えた風が入り込んできた。 レダンを先頭に、シャルン、ガストと続く。「採石場は?」「初めてです」 シャルンはゆ
**************** ぎらりと光を帯びた目は、テッツェを通り越して憎むべき恋敵の背中を探している。恋人の裏切りに責めるわけにもいかないためらいが、その怒りに火を注いでいる。「馬を出せ
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第2話 砂糖菓子姫とケダモノ王 30.北の採石場(1)
**************** 「あれは想定外ですよね?」「…」 馬車が激しく揺られつつ北の採石場に近づいていく間、誰もがシャルンの話を聞きたがった。 レダンとガストは戸口に控えて、見かけは薄汚い
**************** 「……この手紙を見ろ」 今までの勢いはどこへやら、不穏な気配を満たして重くなった口調で唸り、ジーフォ公は机の上に一枚の紙を投げ出す。「拝見いたします」 ようやく書物
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第2話 砂糖菓子姫とケダモノ王 29.『虹の7伯』(2)
**************** 中には既に数人の男達が乗り込んでいた。ぼろぼろの身なりの下には汚れた筋肉質の体がある。太い腕と足、のっそりとシャルン達を見上げ、すぐにまた怠そうに頭を下げる姿に
おかげさまで、1790000ヒットを記録しました。 本当にありがとうございます。 長く書いていると、自分が何をしているのか、何をしたいのか、度々わからなくなります。 これで本当に良かったのか。 このように
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第2話 砂糖菓子姫とケダモノ王 29.『虹の7伯』(1)
**************** 手はずが整ったとバラディオスが迎えに来たのは2日後だった。「何があっても驚くなよ?」 悪戯っぽい顔で確認してくるのに、レダンは察したようで、「武器の類は渡してくれ
**************** 再びジーフォ公が沈黙した。ゆっくりとテッツェが顔を上げる。ジーフォ公の顔は暗く苛立ち、今にも剣を引き抜きそうだ。事実、この状況下において、未だジーフォ公が相手を
**************** ばんっ!! 激しい音と同時に勢い良く開けられた扉も、怒りの形相凄まじく突っ立っているジーフォ公の姿も、テッツェは振り向こうとしなかった。部屋の窓際に設えられたカイ
**************** ユーノとレスファート同様、リディノとジュナの接近に、リディノの付き人、ジノ・スティルも不安なものを感じていた。(姫さま……一体何を話されている?) リディノは誰か
**************** 「ユーノ」「うん?」 思わず漏らした一言にレスファートが反応したのか、今の独り言は関係がないと続けようとして見下ろし、相手の真剣な眼に口を噤んだ。「何、レス」「……
**************** ミダス公邸は、ラズーンが巻き込まれている運命の奔流とは無関係に、いつものように穏やかに静まり返っていた。陽射しは豊かに部屋部屋を照らし、衣服や寝具を膨らませ、温
**************** 「え…?」 ユーノはイルファ、レスファートと食卓につきながら顔を上げて瞬いた。「シャイラが付いていってくれたの?」 『氷の双宮』で目覚めたのが昨日の夕方、明けてミダ
**************** 『氷の双宮』から『白の流れ』(ソワルド)に沿って南東へ下り、街の視界に入る場所を避けて、アシャとシャイラは急ぎ続けた。 『氷の双宮』に知らせがないとはいえ、アギ
**************** 「どうかなさったのですか」 気がつくと、またシャイラが不安げに覗き込んでいた。「それほど……グードス救出は難しいのですか」「いや…『泥土』について、どの程度知っている
『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』第2話 砂糖菓子姫とケダモノ王 28.『水晶亭』の主人(4)
**************** 「実は、この子はハイオルトの出身だ」「ほう」 興味深くバラディオスはシャルンを眺める。「酷い傷だな」「大火事で家族共々焼けただれた……と聞いていたが」 レダンは声を
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**************** 伊吹が訝しそうに眉を寄せて、ふいに気付いた。『相手は納得しなかった。状況が悪化して、私のせいだと言われた。私は手を引いて……』 ひょっとして、あの話の。 尋ねてみる
**************** 「ふぅん……そうなんだ?」 伊吹が首を傾げて何か言った。「今でも好きなんだ」 自分の声もうまく聞こえない。「今でも伊吹さんは大石のことが好きなんだ」 悲しくて辛くて、
**************** どこまで頑張っても無駄なんだ。 京介はぼんやりと思った。 気持ちを話して、過去を打ち明けて、自分を晒してみたけれど、結局こうやって拒まれるんだ。 きっと大輔と同じよ
**************** 「あの、今なんて?」 まさか、でも、本当に? まさか、でも、ならどうして一体? すぐにそれにすがって喜ぼうとしている気持ちと、だって大石圭吾を知っているじゃないか
**************** 「すみません」 開口一番、伊吹は頭を下げた。「なんで謝るの」「いや、何かとんでもないミスしたのかなと」 本当に? 京介の胸の中で不安がどろどろと渦を巻く。 本当は
**************** 大石と別れていささか落ち込みながら部屋に戻った京介は、データ入力に勤しんでるはずの伊吹が、何度もぼうっと手を止めるのに気付いた。 さりげなく近寄って、見つけた名前
**************** 「……ということだと考えています」 大石は細田と京介を前に澱みなく説明を終えた。「もし、データが曖昧なら改めて説明させて頂きますが」 細田がちら、ちら、と神経質な視線
**************** 伊吹と実家に戻ったのが週末。「真崎君はいるかっ」「はぁい」 週明け一番に響き渡った聞き覚えのある声に、京介はやれやれと顔を上げる。「あれ、細田課長、おはようございま
**************** 「圭吾!」 走りながら、上がりそうな息で必死に叫ぶ。周囲を見回して、胸の底でずっと忘れなかった後ろ姿を探す。「圭吾!」 美並の声が響くのに、会社のホールを通る人々が
**************** 「ふぅん」 真崎が目を細めて振り向く。「そうなんだ?」「あの、ずっと前のことです、それに」「今でも好きなんだ」「はい…?」 もう一度繰り返されて、ようやく一連の会話
**************** 「あの、今なんて?」「……聞こえなかったならいいよ」 真崎はむつっとした顔で呟き、また窓の外をじっと見ている。「どうせ、僕とは違うタイプだし」「……はい……??」 またわ
**************** 「何…っ」 いつの間に戻ってきたのか、声に真崎が身を引いた。「す、すみません」「課長、おかしなことしないでくださいよ」 石塚が睨む。「おかしなことなんかしていないよ、
**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
**************** それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか
**************** 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている
**************** 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた
**************** 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前
**************** 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか?」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。
**************** 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸
**************** 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん?」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち
**************** 何を考えているのか。「私が聞きたいところだ」 冷ややかに嗤いながら、リヒャルティを置き去りに、セシ公は自室から持ち出した紫の布包みを手に、パディスへ馬を走らせ