いい詩を書きたい、その一心で現代詩を書いています。 皆さんに読んでもらって、評価もいただき、 いっそう、いい詩が書けるようになりたい、と思っています。
朝起きる ベッドから抜け出し 両足を床につけ立とうとする 栓の詰まった脊柱管が固く萎える 起きたばかりなのに 暗脈の脳細胞はばらけてしまった 老人をもぬけの殻にしたのは誰だ 倦怠の優しいぬめりが襲う 希望の多くを見たい、 地面を噴き出すような血流が 巡ってくるのを待っている だが、希望を見る眼は砕けてしまった 脳に伝わるのは色のとんだ画像 意味あるものは帰ってこないだろう この重苦しい不用となった惨めな肉体よ 現代詩ランキング
ふる里からの帰り道 電車を降りて自家へと歩きだしたところで いつもの腰痛がやってきた 脊柱管狭窄症というやつだ 体内を巡る血の流れが滞り 腰から下、大腿や下肢を襲い 踏み込むごとに痛む 暫くすると下肢がしびれ 足を前に運べない、 下半身が萎えて足に思いが伝わらない 転倒の危険がきた 人目を避け道端に蹲る じんじんする下肢を抱きしめ耐える いつものことだが きょうは駅から家までという 長距離だ 助けを呼ばず家まで歩こう 決意を自分に言い聞かせる 背中を通りの板塀に寄りかけて休む すると少し回復し、また歩く 大通りに出ると ブロック塀を伝いながら足を引きず..
初夏のある日 勢いを増した用水路のそばに 老人が立っている 流れの早くなった用水は 冬枯れの傷んだ側壁を打ちつけながら ..
住宅が立っている それが重なって街になる 街に行くには道路がついていて 大きな路面が一本 魚の骨のごとく枝わかれする どの道路も ゆくゆくは天空へ上るのか ひとりの老人が 背を見せながら歩いてゆく ハタスタ、パタスタ、 右足がいくらか短い 八十年の歳月が 右と左の格差になった 早くここを歩き去りたい 八十年老人は 自虐にさいなまれ 何をやっても負け続け また、負けたか、 街中の人が 負け姿を相撲のように観戦する 詩・ポエムランキング
優しいひとになろう 何も遺すもののない人よ 優しさを遺そうよ そう、優しいひとになるんだ 君が年老いて 人の世の不要品となり 捨てられそうになったとき 焼き場の待合室で 「でも、あの男は優しかったね」と言われれば それでよい 口先だけで優しいのではない 全身で優しいひとになろう 優しくなるには苦しむことだ 誰もが体験している 犯した罪をひとつひとつ思い起こし 徹底して自分を追い詰める その苦しみを持ちつづけなさい そしたら人は優しくなれる 現代詩ランキング
故郷の山の 裾野に広がったわずかの水田よ その水田にただよう 屋根低き集落よ、 遠く離れて いまこの風景の熱を わが胸の内に称える 障子窓に映る子らのはしゃぎが 暗闇の水面に揺れる 少年は縁側に座って 得意げに足をぶらつかせて お婆のつくったぼたもちを喰う そのうち陽が落ちると 山裾の一帯は 涼やかな空気に包まれる その時を待ってたかのように 水田の蛙たちは 最初は数匹が遠慮がちに鳴きはじめ 暫くすると大合唱となる 三日つづいた田植えは 今日で終わった 部屋の奥では車座になって 男衆の酒の入った声がする その輪のような響きが 高原の集落に..
町内にあった集会所が また一つなくなった 俺のゆくところも またひとつ少なくなった 世の流れに遅れて生きて行くと ろくなことはない まじめなこころがヒネタこころに 容易に移し変えられ ヒネタこころは ヒネタ言葉になって地上に顔を出す 蝉には悪いが まるで蝉のように簡単に穴から出てくる 夏は蝉が生まれ蝉が死ぬ時だ 海の上なら肉体の始末もやりやすいだろう アサギマダラよ お前はいい時に海を渡る 孤独はきついが 老人が死の淵に立つより やさしいだろう 老人は故郷への扉を固く閉じられ 帰ろうに帰れないのだよ 現代詩ランキング
老人の墜ちこぼれ老人が 肩を尖がらせて 稲田の細道を歩いている そのうちひとりは 最後の日まで 俺は詩を書く、 あるいは 詩を書く身でありたいと 内心思っている 角を曲がって 四人の肩もそろって左に曲がった 「オーイ、ヨモギを踏んだぞ」 誰かが大声で叫んだ 「ヨモギをテーマに詩を書かないか」 詩を書いている老人は何も返答しなかった あとで聞いたのだが 喉元を駆け上ってく詩の言葉が 無かったらしい 現代詩ランキング
私の胸のあたり そこは女性であると 丸い乳房のあるあたりだが そこから一直線に伸びて 私という人の形をつくる 採血のために 伸ばした右腕の先の 5本の指の花びら きりっと遠くを見つめているが そんな甘いもんじゃあない 生きる線はいつもあとからついてくる 現代詩ランキング
四人の老いこぼれ老人が 肩を尖がらせて 稲田の細道を歩いている そのうちひとりは 最後の日まで 俺は詩を書く、 あるいは 詩を書く身でありたいと 内心思っている 角を曲がって 四人の肩もそろって左に曲がった きのう八十六歳の男が 仲間に入った 私たちの仲間に入って 詩を書く、と公言した男だ このところ 高齢の老人が増える 「オーイ、ヨモギを踏んだぞ」 誰かが大声で叫んだ 「ヨモギをテーマに詩を書かないか」 詩を書く老人は何も言えなかった 今大切にしている詩の言葉が 沸き起こって 喉元を駆け上ってくることが、無かったものだから 現代詩ラ..
一昨年の10月、「seesaa」Blogsさんのネット紙面で 現代詩の発表をはじめてきました。以来月2,3回、普 通の現代詩や散文詩を発表してきました。 皆さんには、へんてこりんな詩だなあ、むつかしい詩だ なあ、と思われながらもそれなりに読んでいただきありが とうございました。 途中から「人気ブログランキング」にも参加し、より広 くファンに観ててもらうことになりましたが、実はそのご 期待に対し続けて応えられなくなってきました。 このところ足腰がふにゃふにゃになってしまいまして、 皆さんと同じように歩けなくなりました。それで詩を書く 意欲が沸かないのです。詩が書けな..
「詩が書けない」 ようやくこのフレーズを打ち込んだ 迷いに迷い、 書くことが無いところまで追い詰められ 恥ずかしくもなく 「詩が書けない」という詩を 書こうとした この詩句にたどり着いたのは そんな訳だ だが、これが詩句になっているのか 書いたすぐそばから 打消しの悪魔が襲ってきて 「詩が書けない」など どうしようもないクズ・フレーズ 詩の言葉になっていないという 詩人はキーボードを叩きまわって 「それ」を削除した だが、ちょっと待てよ これって面白いじゃあない 馬鹿なことを思って 詩人がパソコンを壊しておる そして詩人は 「詩が書け..
朝の稲田の道を歩いている 年老いて独りになれば いじけたこころも溜まってか 切株にあふれる朝露も汚い 過ぎ去ったことは 思い出さないことにしているのだが 去年の夏 ふる里の山で出会ったアサギマダラ 中国山脈の山々を ひらひらと飛んでいった アサギマダラも独りだった 阿蘇の山もひとっ飛び 潮風受けて沖縄に行った 幾日幾夜があったことか 朝焼けの雲の沸き上がる 色の沸き上がる ピンクが走り空のブルーも流れている 豊かな色のただなかを アサギマダラは いつ落ちるかしらん、 いつ絶えるかしらん、と思って飛んだ 現代詩ランキング
アサギマダラよ、いまどうしている。 私が勧めた宮古島の住み心地は良いか。 お前と出会ったのは去年の夏、の故郷蒜 山への単独山行での出来事だった。荒い息 とともに登ってゆくと、お前はひらり、ひ らりと眼前に舞い込んできた。あつ、アサ ギマダラだ。 お前数メートル先のフジバカマの花枝に 羽を休めた。飯豊連峰あたりから飛び立ち ゆうに千キロを飛んできたお前は疲れてい たのだろう、花枝にぶら下がって羽根を折 りたたみ、浅葱の文様のなまめかしさを惜 しげもなく晒していた。尾根の上手に回っ た私は直下に広がる薄緑の高原の村を背景 ..
白い髯が伸び足腰がふらつくようになって、 この冬から何故か私は二階の部屋で寝るよう になった。3日目の朝だった。カーテンの隙 間から射す柔らかだが力を感じさせる光が静 かに流れているのを見た。 私は窓辺に移動してカーテンを開けた。 およそ1キロはあるであろうか、遠くうかぶ 朝の町の、ある距離から先は三角の屋根やビ ルの林立がいくつも重なり、それらが乳白色 を溶かしたような白の世界に消えていってい た。 この窓辺から見る朝焼けはこの家に住むよ うになって40年ぶりに遭遇した。真っ白の 雲には紅のほか空の色も色を添えている。こ ..
年の暮れの三十一日、特別な日でもないの に朝の散歩の途中、自分の過去を振り返って みた。きっかけになったのは、昨日あたりか ら自家の周辺に数十羽の土鳩が飛来したこと による。 食べ物には事欠かない繁華街で生活してい た土鳩は年末年始の休みに対処して郊外の刈 田の落穂を狙って移動してきた。私は畦道に 腰を下ろし土鳩の群れが集団で飛ぶ様子を眺 めた。 数十羽が低空ではたはたと舞ったかと思う と次には急滑降で刈田に降り、うち数羽は餌 を見つけられずばたばたとしている。しばら くすると土鳩たちは一心に嘴を打ちつける。 土鳩は過去の経験..
胃臓から押し出され、腐った肉襞をかけあ がって吐き出される、声になろうとしてなれ ない呻き。その高齢の友人の呻き声を私は尋 ねていった玄関のドアの隙間から聴いていた。 その老人は奇妙な病気にかかっていた。両 の瞼は一日に数度落ち込み、いったん落ち込 むと一時間はどんなにしても開かなくなる。 その間、家の中でさえ全く赤ん坊のようにハ イハイをせざるを得ない。それだけでない。 顔、胴体から手足まではちきれんばかり、丸 太棒か、風船のように膨らみ、ものを食べる ことが出来ない。 この人を馬鹿にしたような病気に、医師は 原因不明の奇病だと宣告し、友人は死のくさ びを打..
悪い夢を生きているのだろうか ふらりと家を出て ゆく足も定まらぬ まるで糸吊り人形のように 水路沿いの道を歩く 稲田が残る古い道だ 川に架けられた鉄製の梯子が 水面にくっきりと影を付け 天空に上がる階段のよう その影を渡れという 空気の道か 雲も見える 空からの強い誘惑もある 夢なのかとも思えず 雲のちぎれをつかみながら 天空に向かう 現代詩ランキング
「ブログリーダー」を活用して、かんちゃんさんをフォローしませんか?
指定した記事をブログ村の中で非表示にしたり、削除したりできます。非表示の場合は、再度表示に戻せます。
画像が取得されていないときは、ブログ側にOGP(メタタグ)の設置が必要になる場合があります。