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  • 『オキシトシン』 第三話

    満月だったのかもしれない。背中のニキビを、うっかり引っ掻いてしまった。鏡の前で身体をよじる。まあまあの血が出てしまった。「ねぇ、絆創膏貼って。」「うーん。」「背中の、ココ。」「うーん。……ごめん、無理。」「だよねぇ。」それから、しばらく、彼とは会わなかった。*「えー、まぢチョーえらい~!」すごいギャルみたいな褒め方してくる。「え、待って、ねぇココア作ってあげるぅ。」突然現れた彼。ひたすら褒めてくれる。事の始まりは、ついさっき。わたしは、悩みや不安や、過去の傷に引きずられてしまうことが多い。今目の前では何も起きていないのに、頭が余計なことを考えて、身体が反応して、静かにツラくなってしまうことが多い。でも、『どうすれば引きずられないか』を、たくさんたくさん試して、生きる術を身に付けてきた。だから、今朝も『ゆっ...『オキシトシン』第三話

  • 『オキシトシン』 第二話

    淡い緑色のカーテン。タレ目。見れば見るほど、タレ目だ。だからといって、柔らかい印象かといえば、そう単純でもない。眉毛がキリッとしているせいかな。その凛々しさと、目尻の甘やかさ……絶妙に兼ね備えている。ウッカリ、手を伸ばした。彼の眉毛。「……え、なに。」無心に、指でなぞる。「……なにしてんの。」「まゆげ、みてる。」「え、はずいんだけど。」「人間の神秘を感じる。」「ちょ、まじ、やめてよ。」「うん。」「やめてよー。」「うん。」わたしは、艶やかな眉毛に夢中で、見逃した。あなたの赤くなっていく耳を。「……仕返しだ!」彼の指が、目前に迫る。ギュッと目をつむった。ふわり。眉間に、羽にくすぐられるような感触。眉毛をクリクリ撫でられている。「や、やーだ、めっちゃはずい!」彼の気持ちがよーく分かった。眉毛なんて、ダメだ。遠目...『オキシトシン』第二話

  • 『オキシトシン』 第一話

    『オキシトシン』じんわり、膨らんでいく温もり。わたしの体温と、隣の体温が、空気を温めつつ混ざり合っていく。まだ嗅ぎ慣れない匂いだ。これから当たり前になっていく匂いなのだ、と……少し未来を想像して、うっかり口元が乱れた。*彼は、軟派なチャラ男だ。八方美人で(優しくて)、おしゃべりで(明るいムードメーカーで)、ゆるゆるのマイペースで(少し冷めていて慎重で)、……わたしは密かに、「すごい生粋の天秤座だな」と頷いている。そして、「あなたのことをもっと知りたい」と思っている。*オレンジ色の豆電球。じんわり。あたたかく膨らんだ空気に包まれた。意外と静かな空間。彼の呼吸が伝染してきて、楽になる。そのまま、隣で、ただ眠る。*青白いLEDライトの下。わたしの日課は、足のマッサージ。じっと見ていた彼が、わたしの足に触れてくる...『オキシトシン』第一話

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